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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 F21S 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S |
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管理番号 | 1320825 |
審判番号 | 不服2015-9383 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-20 |
確定日 | 2016-11-18 |
事件の表示 | 特願2010-263924号「面照明装置およびバックライト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-114039号、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年11月26日の出願であって、平成26年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月14日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年2月17日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、同年5月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成28年7月6日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月20日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?15に係る発明は、平成28年9月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子と、 コヒーレント光が前記光学素子の表面を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射する照射装置と、 前記光学素子の表面で反射され、または前記光学素子を透過したコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する導光板と、を備え、 前記照射装置は、コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させるものであり、 前記導光板は、前記光学素子からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、 前記被照明領域は、前記光取り出し部の内部に、または前記第1の端面に沿って、または前記第2の端面に沿って設けられ、 前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であり、 前記照射装置は、前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され、 前記照射装置は、 コヒーレント光を放射する光源と、 前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させる走査デバイスと、を有し、 前記光学素子は、前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させることを特徴とする面照明装置。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 原査定の理由は、平成26年8月14日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由であり、その概要は、本願発明は、その出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 そして、次の引用文献1?3が示されている。 引用文献1:国際公開第2009/116224号 引用文献2:国際公開第2009/147808号 引用文献3:国際公開第2008/108068号 2 原査定の理由の判断 (1)引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1には、「面状光を出射する面光源装置に関し、特に、レーザ光源から面状光を生成する面光源装置」に関する技術について開示されているところ(段落[0001])、その実施の形態について、 (ア)面光源装置100は、レーザ光源110、反射式拡散板120、および導光板130を有すること(段落[0018])、 (イ)レーザ光源110は、導光板130の裏側に配置されること(段落[0020]) (ウ)レーザ光源110は、赤色、青色、および緑色のレーザ光を生成し、ダイクロイックプリズムにより、生成した各色のレーザ光を混合させて白色レーザ光を生成し、生成した白色レーザ光を所定の入射方向910から反射式拡散板120に入射させること(段落[0021])、 (エ)反射式拡散板120は、所定の入射方向910から入射したレーザ光を、拡散板反射面121において反射させ、その反射光を、導光板130の第1の端面132に入射させるものであって、レーザ光を、拡散させながら反射させることにより、Z軸方向に広げる形で円弧状に放射させ、放射状の出射方向920を有する線状光として出射すること(段落[0022])、(オ)導光板130は、長方形断面を有する矩形平板状の光学的に透明な樹脂であり、出射面131に対向する裏面133には微細な凹凸形状構造が形成され、第1の端面132から入射した線状光を、内部で反射させながら伝搬させ、出射面131または裏面133の凹凸形状構造により、内部伝搬する光を出射面131側に偏向させ、出射面131から出射される面状光に変換すること(段落[0023])、 (カ)反射式拡散板120は直線振動または回転振動すること(段落[0147])、が明らかである。 したがって、引用文献1には、 「レーザ光源110、反射式拡散板120、および導光板130を有する、面光源装置100において、 前記レーザ光源110は、導光板130の裏側に配置され、 前記レーザ光源110は、赤色、青色、および緑色のレーザ光を生成し、ダイクロイックプリズムにより、生成した各色のレーザ光を混合させて白色レーザ光を生成し、生成した白色レーザ光を所定の入射方向910から反射式拡散板120に入射させ、 前記反射式拡散板120は、所定の入射方向910から入射したレーザ光を、拡散板反射面121において反射させ、その反射光を、導光板130の第1の端面132に入射させるものであって、レーザ光を、拡散させながら反射させることにより、Z軸方向に広げる形で円弧状に放射させ、放射状の出射方向920を有する線状光として出射し、 前記導光板130は、長方形断面を有する矩形平板状の光学的に透明な樹脂であり、出射面131に対向する裏面133には微細な凹凸形状構造が形成され、第1の端面132から入射した線状光を、内部で反射させながら伝搬させ、出射面131または裏面133の凹凸形状構造により、内部伝搬する光を出射面131側に偏向させ、出射面131から出射される面状光に変換し、 前記反射式拡散板120は直線振動または回転振動する、面光源装置100。」 の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 (2)対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「レーザ光」及び「白色レーザ光」は、その技術的意義において本願発明の「コヒーレント光」に相当する。 したがって、引用発明1の「赤色、青色、および緑色のレーザ光を生成し、ダイクロイックプリズムにより、生成した各色のレーザ光を混合させて白色レーザ光を生成し、生成した白色レーザ光を所定の入射方向910から反射式拡散板120に入射させ」る「レーザ光源110」は、本願発明の「コヒーレント光を放射する光源」に相当するものといえる。 イ 引用発明1の「反射式拡散板120」は、「所定の入射方向910から入射したレーザ光を、拡散板反射面121において反射させ、その反射光を、導光板130の第1の端面132に入射させるものであって、レーザ光を、拡散させながら反射させることにより、Z軸方向に広げる形で円弧状に放射させ、放射状の出射方向920を有する線状光として出射」するものであり、また、「直線振動または回転振動する」ことで、レーザ光のスペックルパターンを時間的に変化させるものであるから(段落[0147])、反射式拡散板120の各点に入射されたレーザ光を、少なくとも導光板17の被照明領域に拡散可能に入射させることは明らかである。 してみると、引用発明1の「反射式拡散板120」と本願発明の「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」とは、「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域に対して拡散可能な光学素子」の限度で共通するものといえる。 ウ 引用発明1の「レーザ光源110」は、「生成した白色レーザ光を所定の入射方向910から反射式拡散板120に入射させ」るものであり、白色レーザ光を照射する照射装置を構成することが技術的に明らかであるから、かかる照射装置は、本願発明の「コヒーレント光が前記光学素子の表面を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射する照射装置」と、「前記光学素子に前記コヒーレント光を照射する照射装置」の限度で共通するとともに、本願発明の「前記照射装置は、コヒーレント光を放射する光源と、前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させる走査デバイスと、を有し」とする構成と、「前記照射装置は、コヒーレント光を放射する光源を有する」との構成の限度で共通するものといえる。 エ 引用発明1の「導光板130」は、その機能、構造に照らして、本願発明の「導光板」に相当し、前者の「導光板130」は、「拡散板反射面121において反射さ」れた「その反射光」であって「第1の端面132から入射した線状光」を、「内部で反射させながら伝搬させ、・・・出射面131から出射される面状光に変換」するものであるから、後者の「前記光学素子の表面で反射され、または前記光学素子を透過したコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する導光板」に相当するものといえる。 また、引用発明1の「出射面131」は、図3にも示されているとおり第1の端面132と第1の端面132に対向配置される端面に連なる面を構成することが明らかであるから、かかる出射面131の構成は、本願発明の「前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であり」という構成に相当するものといえる。 さらに、引用発明1の「導光板130」は、「長方形断面を有する矩形平板状」に形成されており、「出射面131に対向する裏面133には微細な凹凸形状構造が形成され、第1の端面132から入射した線状光を、内部で反射させながら伝搬させ、出射面131または裏面133の凹凸形状構造により、内部伝搬する光を出射面131側に偏向させ、出射面131から出射される面状光に変換」するものであるから、かかる導光板130の構成は、本願発明の「前記光学素子からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、前記被照明領域は、前記光取り出し部の内部に、または前記第1の端面に沿って、または前記第2の端面に沿って設けられ」るという構成に相当するものといえる。 オ 引用発明1の「レーザ光源110」は、「導光板130の裏側に配置され」るものであるところ、導光板130の裏側とは、出射面131に対向する裏面133の裏側を意味することから(段落[0023])、かかるレーザ光源110の配設態様は、本願発明の「前記照射装置は、前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され」という構成に相当するものといえる。 カ 引用発明1の「面光源装置100」は、本願発明の「面照明装置」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域に対して拡散可能な光学素子と、 前記光学素子に前記コヒーレント光を照射する照射装置と、 前記光学素子の表面で反射され、または前記光学素子を透過したコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する導光板と、を備え、 前記導光板は、前記光学素子からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、 前記被照明領域は、前記光取り出し部の内部に、または前記第1の端面に沿って、または前記第2の端面に沿って設けられ、 前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であり、 前記照射装置は、前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され、 前記照射装置は、 コヒーレント光を放射する光源有する、面照明装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 本願発明は、光学素子が「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」であって、「前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ものとして構成され、また、照射装置が「コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させるものであり」、「前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させる走査デバイス」を有するものであって、「コヒーレント光が前記光学素子の表面を走査するように」構成されているのに対し、引用発明1の光学素子は「レーザ光を、拡散させながら反射させることにより、Z軸方向に広げる形で円弧状に放射させ、放射状の出射方向920を有する線状光として出射」し、「直線振動または回転振動する」ものとして構成され、また、照射装置は走査デバイスを具備するものではない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 ア 本願発明の光学素子は、「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」であって、「前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ものとして構成されたものであるところ、かかる光学素子の意義について、本願明細書には、「ホログラム記録媒体55上の各記録領域r1?rn内の各点に入射されたコヒーレント光は、拡散光となって、被照明領域LZ内の対応領域に線像LZ1?LZnを形成する。例えば、n個(nは2以上の整数)の記録領域r1?rnが存在する場合は、被照明領域LZ内のn個の対応領域のそれぞれに線像LZ1?LZnが形成される。」(段落【0021】、下線は当審で付与。以下同様。)及び「走査デバイス65は、ホログラム記録媒体55上の各位置に、当該位置でのブラッグ条件を満たす入射角度で、対応する特定波長のコヒーレント光を入射させる。この結果、各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、ホログラム記録媒体55に記録された干渉縞による回折により、被照明領域LZの対応領域内の全域に重ねて散乱板6の像5を再生する。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光はそれぞれ、光学素子50で拡散されて(拡げられて)、被照明領域LZの対応領域内の全域に入射するようになる。例えば、記録領域r1内の任意の位置に入射したコヒーレント光は、被照明領域LZ内の対応領域内の全域に重ねて線像LZ1を再生することになる。」(段落【0072】)と記載されている。 イ 他方、引用発明1の光学素子(反射式拡散板120)は「レーザ光を、拡散させながら反射させることにより、Z軸方向に広げる形で円弧状に放射させ、放射状の出射方向920を有する線状光として出射」し、「直線振動または回転振動する」ものであるから、各点に入射されたコヒーレント光は、「被照明領域に対して拡散可能」に構成したものということはできるが、被照明領域内の対応領域に線像を形成するものであって、被照明領域内の対応領域内の全域に重ねて線像を再生するように構成されたものではないから、「被照明領域内の対応領域の全域に対して」拡散可能に構成されたものということはできない。 ウ ここで、引用文献2(段落[0018]?段落[0021])には、複数のレーザ光11を出射する複数の光源12と、複数のレンズ21と、複数のミラー13と、回転多面鏡14と、走査レンズ15と、折り返しミラー16と、導光板17と、光学定盤18とからなる、液晶バックライト10において、光源12から出射されたレーザ光11を、回転多面鏡14で反射しつつ偏向することで走査光として折り返しミラー16に照射し、その向きを変えて導光板17に入射すること、すなわち、走査デバイスで走査したコヒーレント光を導光板に入射する技術が記載されており、同様な技術は引用文献3(段落[0037]?段落[0042])にも記載されている。 そこで、引用発明1の照射装置として、上記引用文献2及び3に記載された走査デバイスを具備する照射装置の適用を検討しても、上記イで述べたとおり、引用発明の光学素子(反射式拡散板120)は「被照明領域内の対応領域の全域に対して」拡散可能に構成されたものということはできないから、そのような光学素子に、走査デバイスを具備する照射装置によりコヒーレント光を走査させたとしても「前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ことはできない。 したがって、引用発明1に引用文献2及び3に記載された技術事項を適用しても、上記相違点に係る本願発明の構成に至るものではない。 エ そして、本願発明は、上記相違点に係る「照射装置」と「光学素子」との組合せによって、「スペックルが目立たないようにすることができ、且つ被照明領域内の明るさのムラの発生を効果的に抑制できる面照明装置およびバックライト装置を提供できる。」(段落【0012】)との効果、より具体的には、「被照明領域LZの各位置において時間的にコヒーレント光の入射方向が変化していき、且つ、この変化は、人間の目で分解不可能な速さである。したがって、仮に被照明領域LZにスクリーンを配置したとすると、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられ平均化されて観察者に観察されることから、スクリーンに表示されている映像を観察する観察者に対して、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。」(段落【0081】)という格別の効果を奏するものである。 (4)小活 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2?15に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、平成28年7月6日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由(以下「拒絶の理由I」という。)、及び平成28年9月20日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由(以下「拒絶の理由II」という。)であり、その概要は以下のとおりである。 (1)拒絶の理由I [理由1]平成27年5月20日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 [理由2]この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 [理由3]この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 そして上記[理由3]に関し、次の引用文献A及びBが示されている。 引用文献A:国際公開第2009/147808号 引用文献B:特開2002-169480号公報 (2)拒絶の理由II この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 2 当審拒絶理由の判断 2-1 拒絶理由Iの[理由3]について (1)引用文献Aに記載された発明 引用文献Aには、「液晶テレビなどの非自発光型表示装置に用いられる薄型で高輝度の液晶バックライトと、これを用いた液晶表示装置」に関する技術について開示されているところ(段落[0001])、その実施の形態について、 ア 液晶バックライト10は、複数のレーザ光11を出射する複数の光源12と、複数のレンズ21と、複数のミラー13と、回転多面鏡14と、走査レンズ15と、折り返しミラー16と、導光板17と、光学定盤18とから構成されていること(段落[0018])、 イ 光源12から出射した各レーザ光11は、レンズ21で集光されながらミラー13に入射するとともに回転多面鏡14に向かって反射されること、及び、回転多面鏡14に入射したレーザ光11は、反射されつつ偏向され、走査光として走査レンズ15に入射されること(段落[0020])、 ウ 走査レンズ15を透過したレーザ光11は、走査されながら折り返しミラー16によりその向きを180度変えて、導光板17の側面17bから導光板17に入射すること(段落[0021])、及び、 エ 導光板17の側面17bから入射したレーザ光11は、導光板17の出射面17aから面状の照明光として出射されること(段落[0023])、が明らかである。 以上によれば、引用文献Aには、 「複数のレーザ光11を出射する複数の光源12と、複数のレンズ21と、複数のミラー13と、回転多面鏡14と、走査レンズ15と、折り返しミラー16と、導光板17と、光学定盤18とからなる、液晶バックライト10において、 前記光源12から出射した各レーザ光11は、前記レンズ21で集光されながら前記ミラー13に入射するとともに前記回転多面鏡14に向かって反射され、前記回転多面鏡14に入射したレーザ光11は、反射されつつ偏向され、走査光として前記走査レンズ15に入射され、 前記走査レンズ15を透過したレーザ光11は、走査されながら前記折り返しミラー16によりその向きを180度変えて、前記導光板17の側面17bから導光板17に入射し、 前記導光板17の側面17bから入射したレーザ光11は、前記導光板17の出射面17aから面状の照明光として出射される、液晶バックライト10。」 の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているといえる。 (2)対比 本願発明と引用発明Aとを対比する。 ア 引用発明Aの「レーザ光11」、「光源12」及び「回転多面鏡14及び走査レンズ15」は、その機能、構造に照らして、本願発明の「コヒーレント光」、「光源」及び「走査デバイス」に相当する。 また、引用発明Aの上記「レーザ光11」、「光源12」及び「回転多面鏡14及び走査レンズ15」がレーザ光を照射する照射装置を構成することは技術的に明らかであるから、かかる照射装置は、本願発明の「照射装置」に相当するものといえる。 イ 引用発明Aの「導光板17」は、その機能、構造に照らして、本願発明の「導光板」に相当する。 ウ 本願発明の「光学素子」は、「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能」とするものであるところ、本願明細書の段落【0072】の記載によれば、上記「各点に入射されたコヒーレント光」は、被照明領域の対応領域内の全域に「入射」されることが明らかである。 他方、引用発明Aの「折り返しミラー16」は、「前記走査レンズ15を透過したレーザ光11」を「走査されながら前記折り返しミラー16によりその向きを180度変えて、前記導光板17の側面17bから導光板17に入射」させるものであるから、折り返しミラー16の各点に入射されたレーザ光11を、少なくとも導光板17の被照明領域に「入射」させるように機能することは明らかである。 してみると、引用発明Aの「折り返しミラー16」と本願発明の「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」とは、「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域に入射させる光学部材」の限度で共通するものといえる。 エ 上記アのとおり、引用発明Aの「レーザ光11」、「光源12」及び「回転多面鏡14及び走査レンズ15」は、コヒーレント光を照射する照射装置を構成することが明らかであるところ、「前記回転多面鏡14に入射したレーザ光11は、反射されつつ偏向され、走査光として前記走査レンズ15に入射され」るものであり、さらに、引用文献Aの段落[0018]及び図1の記載に照らして、上記照射装置は、導光板17の出射面17aとは反対側に配置された「光学定盤18」に支持されることが明らかであるから、かかる照射装置の機能・構造と、本願発明の照射装置における「コヒーレント光が前記光学素子の表面を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射する」、「コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させるものであり」、「前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され」及び「コヒーレント光を放射する光源と、前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させる走査デバイスと、を有する」こととは、上記ウをも踏まえると、「コヒーレント光が前記光学部材の表面を走査するように、前記光学部材に前記コヒーレント光を照射する」、「コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学部材の表面上で走査させるものであり」、「前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され」及び「コヒーレント光を放射する光源と、前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学部材の表面上で走査させる走査デバイスと、を有する」限度で共通するものといえる。 オ 引用発明Aの「導光板17」は、「導光板17の側面17bから入射したレーザ光11」を「前記導光板17の出射面17aから面状の照明光として出射」するものであるから、導光板17の側面17bが被照明領域として位置づけられること、導光板17内でコヒーレント光が伝搬されること、及び導光板17の出射面17aが光取り出し面として位置づけられるとともにコヒーレント光が外部に取り出されることが明らかである。さらに、導光板17には、側面17bと対向配置される端面が存在し、かかる端面と側面17bに連なるように上記出射面17bが存在することも図1に示されるとおり明らかである。 してみると、かかる導光板17の機能・構造と、本願発明の導光板の「前記光学素子の表面で反射され、または前記光学素子を透過したコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する」こと、及び「前記光学素子からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、前記被照明領域は、前記光取り出し部の内部に、または前記第1の端面に沿って、または前記第2の端面に沿って設けられ、前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であり」とすることとは、上記ウをも踏まえると、「前記光学部材の表面で反射されたコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する」及び「前記光学部材からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、前記被照明領域は、前記第1の端面に沿って設けられ、前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であ」る限度で共通するものといえる。 カ 引用発明Aの「液晶バックライト10」は、「前記導光板17の側面17bから入射したレーザ光11は、前記導光板17の出射面17aから面状の照明光として出射される」ものであり、面状の照明光を出射する構成を含むことが明らかであるから、本願発明の「面照明装置」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明Aとは、 「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域に入射させる光学部材と、 コヒーレント光が前記光学部材の表面を走査するように、前記光学部材に前記コヒーレント光を照射する照射装置と、 前記光学部材の表面で反射されたコヒーレント光を伝搬させると共に、該コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し面を有する導光板と、を備え、 前記照射装置は、コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学部材の表面上で走査させるものであり、 前記導光板は、前記光学部材からのコヒーレント光を入射する第1の端面と前記第1の端面に対向配置される第2の端面との間で、コヒーレント光を伝搬させながら、コヒーレント光を外部に取り出す光取り出し部を有し、 前記被照明領域は、前記第1の端面に沿って設けられ、 前記光取り出し面は、前記第1および第2の端面に連なる第3の端面であり、 前記照射装置は、前記光取り出し部の前記光取り出し面とは反対側の第4の端面の裏側に配置され、 前記照射装置は、 コヒーレント光を放射する光源と、 前記光源から放射された前記コヒーレント光の進行方向を変化させて、該コヒーレント光を前記光学部材の表面上で走査させる走査デバイスと、を有する面照明装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 本願発明は、「光学部材」が「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」であって、「前記光学素子は、前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ものであるのに対し、引用発明Aは、「光学部材」が「折り返しミラー16」である点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 ア 本願発明の光学素子は、上記「第3 2(3)ア」で述べたとおり、「各点に入射されたコヒーレント光を少なくとも被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能な光学素子」として構成されるものであって、「前記光学素子は、前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ように構成されたものであるところ、本願明細書には、その意義について「ホログラム記録媒体55上の各記録領域r1?rn内の各点に入射されたコヒーレント光は、拡散光となって、被照明領域LZ内の対応領域に線像LZ1?LZnを形成する。」(段落【0021】)及び「照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光はそれぞれ、光学素子50で拡散されて(拡げられて)、被照明領域LZの対応領域内の全域に入射するようになる。例えば、記録領域r1内の任意の位置に入射したコヒーレント光は、被照明領域LZ内の対応領域内の全域に重ねて線像LZ1を再生することになる。」(段落【0072】)と記載されている。 イ 他方、引用発明Aの液晶バックライト10は、「複数のレーザ光11を出射する複数の光源12と、複数のレンズ21と、複数のミラー13と、回転多面鏡14と、走査レンズ15と、折り返しミラー16と、導光板17と、光学定盤18」とからなり、「前記走査レンズ15を透過したレーザ光11は、走査されながら前記折り返しミラー16によりその向きを180度変えて、前記導光板17の側面17bから導光板17に入射し、前記導光板17の側面17bから入射したレーザ光11は、前記導光板17の出射面17aから面状の照明光として出射される」というものであるから、引用発明Aの「折り返しミラー16」は、走査レンズ15を透過したレーザ光11の向きを導光板17の側面17bの方向に変換することにその技術的意義を有するものといえるが、それは、被照明領域内の対応領域に線像を形成し、被照明領域内の対応領域内の全域に重ねて線像を再生するように構成されたものではない。 ウ ここで、引用文献Bの段落【0013】?【0015】には、コリメートされた光を出射するレーザ光源10と、反射型体積ホログラム22を含む反射部材20と、導光体31を含む偏向部材30とを備えたレーザ光平面光源の構造について記載されている。 上記反射型体積ホログラム22は、所望の角度範囲内で拡散する拡散光と平行光を体積ホログラム記録用感光材料の両面から入射させて干渉させることにより形成されるもので、その記録のときの斜めに入射させた平行光203と同じ入射角αで平行な照明光311を入射させると、記録のときの他方の拡散光205と同じ拡散角度θの拡散光312が反射型ホログラム310から反射回折される、というものであるから、各点に入射されるコヒーレント光を少なくとも被照明領域内に拡散可能に入射させるもの、ということはできるが、被照明領域内の対応領域に線像を形成し、被照明領域内の対応領域内の全域に重ねて線像を再生するように構成されたもの、とまで断ずることはできないことから、本願発明のように「被照明領域内の対応領域の全域に対して拡散可能」な構成であって、「前記光学素子は、前記走査デバイスが前記光源から放射されたコヒーレント光を前記光学素子の表面上で走査させたときに、前記被照明領域内の各点に入射されるコヒーレント光の入射角度を経時的に変化させる」ように構成されたものということはできない。 そうすると、引用発明Aの折り返しミラー16として、引用文献Bに記載された反射型体積ホログラム22を含む反射部材20を適用しても、上記相違点に係る本願発明の構成に至るものではない。 エ そして、本願発明は、上記「第3 2(3)エ」で述べたとおりの効果を奏するものである。 (4)小活 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明A及び引用文献Bに記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2?15に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に引用発明A及び引用文献Bに記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2-2 拒絶理由Iの[理由1]、[理由2]及び拒絶理由IIについて 平成28年9月30日付けの手続補正によりかかる理由は解消した。 2-3 小活 したがって、当審の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-07 |
出願番号 | 特願2010-263924(P2010-263924) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WY
(F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S) P 1 8・ 537- WY (F21S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓、中村 則夫 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
氏原 康宏 尾崎 和寛 |
発明の名称 | 面照明装置およびバックライト装置 |
代理人 | 川崎 康 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |