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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F24F
管理番号 1320912
審判番号 無効2014-800198  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-28 
確定日 2016-11-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3497738号発明「加湿器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3497738号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第3497738号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成10年 7月29日 本件特許出願
平成15年11月28日 設定登録
平成26年11月28日 審判請求書
平成27年 3月 6日 答弁書
同年 7月 2日 口頭審理陳述要領書(両者)
同年 7月 2日 上申書(請求人、関連侵害訴訟の書面)
同年 7月16日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 7月16日 口頭審理
同年 8月 7日 上申書(被請求人、関連侵害訴訟の書面)
同年 8月31日 審決の予告
同年11月18日 上申書(被請求人、関連侵害訴訟の書面)
なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まず、「……」は記載の省略を意味する。証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲1?甲13を提出し、次の無効理由を主張する。

(1)本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件特許の請求項3に係る発明は、甲1?甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

<証拠方法>
甲1 :特開平4-335943号公報
甲2 :特開平6-42798号公報
甲3 :特開平1-118043号公報
甲4 :実願昭56-196122号(実開昭58-102124号)のマ
イクロフィルム
甲5 :平成14年12月5日付け拒絶理由通知書
甲6 :特開平5-52392号公報
甲7 :特開平9-101048号公報
甲8 :平成15年2月17日付け意見書
甲9 :平成15年2月17日付け手続補正書
甲10:平成15年7月3日付け拒絶査定
甲11:平成15年9月2日付け手続補正書(審判請求書の補正)
甲12:平成15年9月2日付け手続補正書(明細書の補正)
甲13:本件特許公報
甲1?甲13の成立につき当事者間に争いはない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、無効理由がいずれも成り立たないと主張する。

第4 本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】(本件発明1)
室内湿度を検出する湿度センサーと、室内温度を検出する温度センサーと、加湿用の水蒸気を発生する水蒸気発生装置とからなる加湿器において、
上記室内温度での湿度設定に使用者の湿度の希望の高め・低めとを加味した加湿程度を選択可能な加湿程度選択手段と、選択された該加湿程度及び検出された該室内温度に基づいて加湿度を設定し、該加湿度に基づいて該水蒸気発生装置を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする加湿器。

【請求項2】(本件発明2)
前記加湿程度選択手段は、選択可能な複数の加湿運転モードを設けたことを特徴とする請求項1に記載の加湿器。

【請求項3】(本件発明3)
前記温度センサーと、前記湿度センサーとを制御回路基板上に配設すると共に、該温度センサー及び該湿度センサーを室内空気取り入れ通路内に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿器。

【請求項4】(本件発明4)
運転停止中に、凍結防止のための保温手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の加湿器。

【請求項5】(本件発明5)
前記保温手段を動作させるスイッチを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかひとつに記載の加湿器。

第5 当審の判断
1 甲1?甲4の記載
(1)甲1の記載
甲1には、図面と共に、以下の記載がある(下線は当審による。以下同じ。)。

「【請求項1】部屋の加湿を行う加湿部と、部屋の温度を検出する室温センサと、部屋の相対湿度を検出する相対湿度センサと、前記室温と相対湿度のデータから単位時間の絶対湿度変化率を演算する第1の演算器と、その室温に対応して予め定められた目標相対湿度と現在の相対湿度との湿度偏差を演算する第2の演算器と、前記室温センサ、第1の演算器および第2の演算器の出力を入力するファジー推論部とを備え、前記ファジー推論部は、室温、絶対湿度変化率、湿度偏差のデータからファジー推論を用いて最適加湿量を演算し、求めた最適加湿量に応じて前記加湿部を能力制御するようにした加湿装置。」

「【0006】
【作用】本発明は上記した課題解決手段により、室温に対応して予め定められた目標相対湿度(その温度に於ける快適湿度)を設定し、また、絶対湿度変化率によって部屋の広さや密閉度合を測定し、湿度偏差に応じて徐々に加湿量を制御するようにこれらデータを用いてファジー推論を行い、部屋の総合的な状況に応じて最適加湿量を求め、湿度変動もなく、結露状態もない安定した快適状態を作り出すよう加湿制御ができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1から図3に基づいて説明する。
【0008】図に示すように、室温センサ1は部屋の温度を検出するものであり、相対湿度センサ2は部屋の相対湿度を検出するもので、いずれも本発明の加湿装置を有する温風暖房器の本体内部に装着している。 ……
【0009】温風暖房器には、加湿吹き出口11、加湿水を供給するカートリッジタンク12および暖房用温風の吹き出口13を設けており、暖房制御部6は暖房の切換えをヒータの通電本数で強・弱・切の3段階としている。また、加湿部は加熱方式を用いており、カートリッジタンク12より供給された水を図3に示すような金属管14の周りをマイカシート15で覆い、その上からヒータ線16を巻き付けた加熱ヒータ10に導き、これを加熱蒸発させて加湿を行うようにしている。」

「【0012】15分間の100%加湿期間が終了すると、つぎに室温データと相対湿度データは第2の演算器4に入力される。第2の演算器4には室温に応じて予め定めた目標相対湿度(快適湿度)が保持されており、現在の相対湿度との湿度偏差E0が演算される。ここで、室温に応じた目標相対湿度の値は、一般に低温状態では飽和水蒸気量が少ないため、乾燥していると感じやすいことから、図4に示すように低温領域で高めに、高温領域になるにしたがって快適湿度と言われている40?50%になるような曲線に定めている。」

「【0021】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように本発明によれば、室温、絶対湿度変化率、湿度偏差のデータからファジー推論を用いて最適加湿量を演算し、求めた最適加湿量に応じて加湿部を能力制御するようにしたから、過度の加湿による不快状態や結露状態を招くことが解消され、室温に応じた快適湿度に制御されるため、どの温度領域においても快適湿度が実現される。さらに、部屋の広さや密閉度に応じた最適な制御が行われ、速やかに快適湿度に収束しまた変動の少ない安定した湿度状態が実現できる。」

「 【図4】



したがって、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「部屋の相対湿度を検出する相対湿度センサと、
部屋の温度を検出する室温センサと、
水を加熱蒸発させて加湿を行う加湿部とからなる加湿装置において、
その室温に対応して予め定められた目標相対湿度と現在の相対湿度との湿度偏差を演算し、
ファジー推論部が、湿度偏差を含むデータから最適加湿量を演算し、求めた最適加湿量に応じて前記加湿部を能力制御するようにした加湿装置。」

(2)甲2の記載
甲2には、図面と共に、以下の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、室内の湿度を所望の最適湿度に制御する暖房加湿制御装置に関する。」

「【0015】図2は、図1に示す暖房加湿制御装置の更に詳細な回路構成を示すブロック図である。本実施例の暖房加湿制御装置は、図2に示すように、前記温度センサ2、湿度センサ3、加湿器5、外気温センサ6に加えて、温度センサ2および湿度センサ3からの室内温度情報および室内湿度情報から相対湿度を計算する湿度計算回路7、この湿度計算回路7で計算された相対湿度を前記外気温センサ6からの外気温情報で補正する湿度補正回路8、前記リモコン4を含む操作部11から使用者によって所望の設定湿度が入力される湿度設定回路10、前記湿度補正回路8からの補正された湿度情報と前記湿度設定回路10からの設定湿度との差に基づいて加湿量を計算する加湿量計算回路9、該加湿量計算回路9で計算された加湿量情報を加湿器5に無線信号で送信する発信回路12を有する。」

「【0019】加湿強運転が所定時間行われて、時刻t1になると、次に加湿量が少ない加湿微運転が行われる。そして、この加湿微運転を行って、前記温度センサ2で検知した室内温度が所望の設定温度に近い温度に達した時、例えば設定温度より3度低い温度に達した時、すなわち図3では、時刻t2になった時、前記湿度センサ3で検知した室内湿度が使用者によって設定された所望の設定湿度になるように室内湿度と設定湿度との差による加湿量の制御が行われる。」

「【0024】ここで、設定湿度の補正方法を説明する前に、湿度の設定方法について説明する。使用者は、例えば相対湿度55%等のように湿度何%といっても、数値ではよく分からない場合が多いので、「高湿(または強湿)」、「標準」、「低湿(または弱湿)」等のボタンをリモコン4または操作部11に設ける。使用者はこれらのボタンの1つを押して、所望の湿度を選択し、これにより設定湿度を決める。そして、「高湿」ボタンが押された場合には、この高湿に対して、例えば55%の湿度が設定湿度として選択される。また、標準に対しては、例えば45%、低湿に対しては、35%が設定されるようにする。あるいは、高湿に対しては、60%、標準に対しては、50%、低湿に対しては、40%と設定してもよい。なお、人間の体感では、35?60%の湿度が快適であり、40?50%の湿度が快適度が高くなっている。」

「【0030】次に、設定湿度を上述したように高湿55%というように決定するのでなく、人間の体感に応じて湿度を変える方法について説明する。
【0031】この方法は、例えば基準湿度Hsoを設定しておき、設定湿度として「もっと加湿(または強湿)」という体感湿度を使用者から入力された場合には、前記基準湿度Hsoに対して湿度を15%増やしたり、また「少し加湿(または弱湿)」という体感湿度を入力された場合には、基準湿度Hsoに対して湿度を5%増やすというように制御するものである。」

(3)甲3の記載
甲3には、図面と共に、以下の記載がある。

「前記吸込口12と送風用ファンモーター11の間には温度を検出する温度センサー13と、湿度を検出する湿度センサー14が設けられ、さらに両センサーの信号を取り込んで超音波発振回路8の制御と、縦6列、横5列の発光素子(以下LEDと呼ぶ)を取り付けた表示回路15の該当LEDを点滅させる制御回路16が配設されている。」(2頁左下欄1行?7行)

「第1図



(4)甲4の記載
甲4には、図面と共に、以下の記載がある。

「本案はかゝる点に鑑み考案されたもので、加湿スイッチと連動するヒータスイッチのオン・オフにより通電するヒータを水槽の底部もしくは側壁に設け、超音波加湿器の水槽の内部の水の凍結を防止するようにしたものである。」(1頁17行?2頁1行)

「夜間など長い時間使用しないと超音波加湿器の水2が凍結する怖れのある場合には、加湿スイッチ11のみをオフとし、メインスイッチをオンしたまゝにしておけばヒータ15がオンし水2が凍結するのを防ぐことが出来る。」(3頁15行?20行)


2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「部屋の相対湿度を検出する相対湿度センサ」、「部屋の温度を検出する室温センサ」、「水を加熱蒸発させて加湿を行う加湿部」、「加湿装置」は、それぞれ、本件発明1の「室内湿度を検出する湿度センサー」、「室内温度を検出する温度センサー」、「加湿用の水蒸気を発生する水蒸気発生装置」、「加湿器」に相当する。
甲1発明の「予め定められた目標相対湿度と現在の相対湿度との湿度偏差を演算し」、「湿度偏差を含むデータから最適加湿量を演算し、求めた最適加湿量に応じて前記加湿部を能力制御する」ことは、結局のところ、目標相対湿度を設定して、該目標相対湿度に基づいて加湿部を制御することを意味するから、本件発明1の「加湿度を設定し、該加湿度に基づいて該水蒸気発生装置を制御する」ことに相当する。
甲1発明の「ファジー推論部」は、「加湿部を能力制御する」から、本件発明1の「水蒸気発生装置を制御する制御手段」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
室内湿度を検出する湿度センサーと、室内温度を検出する温度センサーと、加湿用の水蒸気を発生する水蒸気発生装置とからなる加湿器において、
加湿度を設定し、該加湿度に基づいて該水蒸気発生装置を制御する制御手段とを設けた加湿器。

[相違点1]
本件発明1では、「上記室内温度での湿度設定に使用者の湿度の希望の高め・低めとを加味した加湿程度を選択可能な加湿程度選択手段」を有し、また、加湿度は、「選択された該加湿程度及び検出された該室内温度に基づいて」設定するのに対し、甲1発明では、そのような加湿程度選択手段を有するとはされておらず、また、目標相対湿度は「室温に対応して予め定められ」る点。

(2)判断
甲2には、暖房加湿制御装置において、使用者が所望の設定湿度を入力すること(【0015】、【0019】)、その設定方法として、数値ではなく、「高湿(または強湿)」、「標準」、「低湿(または弱湿)」等のボタンにより所望の湿度を選択することや(【0024】)、「もっと加湿(または強湿)」、「少し加湿(または弱湿)」のような基準湿度に対する相対的な変化量を入力すること(【0030】)が記載されている。そして、人によって快適と感じる湿度が異なることは普通に想定されるところ、上記使用者が所望の設定湿度を入力する構成によれば、使用者が自らの好みに応じた湿度を選択できるため、利便性が高まることが明らかである。
これに対し、甲1発明の「その室温に対応して予め定められた目標相対湿度」は、「その温度に於ける快適湿度」として設定されるものではあるが、「一般に低温状態では飽和水蒸気量が少ないため、乾燥していると感じやすいことから、図4に示すように低温領域で高めに、高温領域になるにしたがって快適湿度と言われている40?50%になるような曲線に定めている」(【0012】)というように、一般に快適湿度と言われている範囲で、温度毎に固定値として設定されるものであり、使用者の好みにより、該固定値を変更することは記載されていない。
しかしながら、加湿器において使用者の好みにより湿度の設定値を変更することは普通に行われていること(甲2、甲6【0005】、甲7【0035】)、甲1においても快適湿度には幅(40?50%)があること、人により快適と感じる湿度が異なるため、使用者の好みにより湿度の設定値を変更できないことは利便性に劣ること、を考慮すれば、甲1発明の温度毎に固定されている「その室温に対応して予め定められた目標相対湿度」を、利便性を高めるために、使用者の好みにより変更できるようにすることの動機付けが存在するといえる。
そして、甲2には、使用者が所望の湿度を設定する方法として、「高湿(または強湿)」、「標準」、「低湿(または弱湿)」等のボタンにより選択することや、基準湿度に対して「もっと加湿(または強湿)」、「少し加湿(または弱湿)」のような相対的な変化量を入力することが記載されていることを参酌すれば、甲1発明の「その室温に対応して予め定められた目標相対湿度」に対して、高め、低めを使用者の希望で選択して、最終的な目標湿度とする構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。このような構成において、高め、低めを使用者の希望で選択する手段は、本件発明1の「上記室内温度での湿度設定に使用者の湿度の希望の高め・低めとを加味した加湿程度を選択可能な加湿程度選択手段」に相当し、最終的な目標湿度を設定することは、本件発明1の「選択された該加湿程度及び検出された該室内温度に基づいて加湿度を設定」することに相当する。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲2に記載された技術事項を参酌して甲1発明を設計変更することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明1が、甲1発明及び甲2に記載された技術事項から予測できない格別顕著な効果を奏するとも認められない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 本件発明2について
(1)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とは、前記2(1)に示した[一致点]で一致し、[相違点1]で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点2]
本件発明2は「前記加湿程度選択手段は、選択可能な複数の加湿運転モードを設けた」ものであるのに対し、甲1発明は、そのような加湿程度選択手段を有するとされていない点。

(2)判断
相違点1についての判断は、前記2(2)に示したとおりであり、当業者が容易に想到し得たものである。
相違点2について検討する。
前記2(2)に示したとおり、甲1発明の「その室温に対応して予め定められた目標相対湿度」に対して、高め、低めを使用者の希望で選択して、最終的な目標湿度とする構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことであり、該構成は、予め定められた目標相対湿度、高め、低めの3つのモードを選択可能であるから、本件発明2の「前記加湿程度選択手段は、選択可能な複数の加湿運転モードを設けた」にも相当する。
よって、相違点2に係る本件発明2の構成も、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4 本件発明3について
(1)本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とは、前記2(1)に示した[一致点]で一致し、[相違点1]で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点3]
本件発明3は「前記温度センサーと、前記湿度センサーとを制御回路基板上に配設すると共に、該温度センサー及び該湿度センサーを室内空気取り入れ通路内に設けた」ものであるのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。

(2)判断
相違点1についての判断は、前記2(2)に示したとおりであり、当業者が容易に想到し得たものである。
相違点3について検討する。
甲3には、温度センサー13と湿度センサー14を制御回路16上に設けるとともに、吸込口12と送風用ファンモーター11の間に設けることが示されている。
甲1発明の室温センサと湿度センサは、加湿部を制御するために設けられたものであって、それぞれ部屋の温度と湿度を検出するためのものであるから、甲3の例に倣って、これらを制御回路基板上に配設するとともに、室内空気取り入れ通路内に設けること、すなわち、相違点3に係る本件発明3の構成となすことは、当業者が普通に想到し得た設計事項にすぎない。
したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5 本件発明4について
(1)本件発明4と甲1発明との対比
本件発明4と甲1発明とは、前記2(1)に示した[一致点]で一致し、[相違点1]で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点4]
本件発明4は「運転停止中に、凍結防止のための保温手段を設けた」ものであるのに対し、甲1発明は、そのような保温手段を設けたものとされていない点。

(2)判断
相違点1についての判断は、前記2(2)に示したとおりであり、当業者が容易に想到し得たものである。
相違点4について検討する。
甲4には、加湿器において、長い時間使用しない場合にヒータをオンして水の凍結を防止する技術事項が記載されている。
甲1発明についても、寒冷地で使用する場合等、甲4と同様に凍結の問題を生じることが予想されるから、上記甲4の技術事項を採用して凍結防止のためのヒータを付加すること、すなわち、相違点4に係る本件発明4の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲2、甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6 本件発明5について
(1)本件発明5と甲1発明との対比
本件発明5と甲1発明とは、前記2(1)に示した[一致点]で一致し、[相違点1]で相違し、更に次の点で相違している。
[相違点5]
本件発明5は「前記保温手段を動作させるスイッチを設けた」ものであるのに対し、甲1発明は、保温手段を動作させるスイッチを設けたものとされていない点。

(2)判断
相違点1についての判断は、前記2(2)に示したとおりであり、当業者が容易に想到し得たものである。
相違点5について検討する。
甲4には、加湿器において、長い時間使用しない場合に、メインスイッチをオンにしてヒータをオンし、水の凍結を防止する技術事項が記載されている。
甲1発明についても、寒冷地で使用する場合等、甲4と同様に凍結の問題を生じることが予想されるから、上記甲4の技術事項を採用して凍結防止のためのヒータを付加し、該ヒータをオンするスイッチを設けること、すなわち、相違点5に係る本件発明5の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明5は、甲1発明及び甲2、甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 結び
したがって、本件発明1?5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求人が主張する無効理由により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-24 
結審通知日 2015-11-27 
審決日 2015-12-09 
出願番号 特願平10-213584
審決分類 P 1 113・ 121- Z (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 窪田 治彦
紀本 孝
登録日 2003-11-28 
登録番号 特許第3497738号(P3497738)
発明の名称 加湿器  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 毒島 光志  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 鎌田 邦彦  
代理人 吉田 昌司  
代理人 岡 始  
代理人 吉井 剛  
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