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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1320926
審判番号 不服2015-8004  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-30 
確定日 2016-11-17 
事件の表示 特願2011-520633「3次元撮像超音波プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日国際公開、WO2010/013175、平成23年12月15日国内公表、特表2011-529715、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21年7月22日(パリ条約による優先権主張 平成20年8月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月11日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月17日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書が提出されたが、同年12月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、その後、平成28年2月22日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成28年8月23日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められる。
そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、分説してA)からJ)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

「【請求項1】
A)アレイトランスデューサの運動によりボリュメトリック領域をスキャンする超音波プローブであって、
B)遠位端部において流体コンパートメントを持ち、エンドキャップを備えるプローブケースと、
C)前記流体コンパートメントにおいてキャリッジアセンブリに取り付けられるアレイトランスデューサと、
D)前記キャリッジアセンブリが前記流体コンパートメントにおいて移動するためのレールのペアと、
E)前記キャリッジアセンブリの各端部に配置されるローラーのペアであって、前記ローラーのペアが、前記レールの上部に乗るローラーと、前記レールの下部に当たるローラーとを含む、ローラーのペアと、
F)前記キャリッジアセンブリに接続されるドライブケーブルと、
G)前記ドライブケーブルが巻かれる回転可能なカムと、
H)前記レール上で前記キャリッジアセンブリ及びアレイトランスデューサを動かすために動作可能に結合されるモーターとを有し、
I)前記回転可能なカムが、前記カムの回転軸の方向が前記エンドキャップに向かって延在するよう、方向付けられ、
J)前記回転可能なカムのカム面に、前記ドライブケーブルが巻かれ、前記モーターにより前記カムが回転されることによって、前記カム面に巻かれた前記ドライブケーブルにより前記キャリッジアセンブリが前後に引かれる、
超音波プローブ。」

第3 原査定の理由について

1 原査定の理由の概要

原査定における拒絶の理由は、以下のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


請求項1-14について
下記引用例1-5
引用例1.特開2007- 21170号公報
引用例2.特開平 6- 38962号公報
引用例3.特開2008- 18247号公報
引用例4.特開平 7-327990号公報
引用例5.特開昭61-191348号公報 」

2 原査定の理由の判断

(1)各引用例の記載事項

ア 引用例1の記載事項
上記引用例1には、以下の記載がある(下線は当審において付加したものである。以下、同様。)。

(引1-ア)「【請求項1】
本体と、前記本体の内部に移動可能に収納されて超音波信号と電気信号を相互変換するトランスデューサを備える超音波プルーブにおいて前記トランスデューサを駆動させるための装置であって、前記本体の内部に設けられるフレームと、前記フレームに固定され、前記トランスデューサを移動させる駆動力を発生させるためのモータと、前記フレームに回転可能に設けられる縦動軸と、前記トランスデューサの移動をガイドするためにフレームに設けられる一対のガイドレールと、前記モータの駆動力を前記縦動軸に伝達して前記縦動軸を回転させるための手段と、前記縦動軸の回転力を前記トランスデューサに伝達して前記トランスデューサを移動させるための手段とからなることを特徴とする超音波プルーブのトランスデューサ駆動装置。」

(引1-イ)「【0001】
本発明は超音波プルーブに関するものであり、より詳細には被検体内3次元領域のエコーデータを得ることができる超音波プルーブのトランスデューサ駆動装置に関するものである。」

(引1-ウ)「【0023】
これらに示した通り、本発明による超音波プルーブ10(以下プルーブという)の本体は相互接合して外観をなす超音波透過性カバー12とケース14を備える。カバー12内にはトランスデューサ20がカバー12の内面に隣接して備えられ、ケース14内にはプルーブの各種構成要素を支持するためのフレーム30と、トランスデューサ20を移動させるための駆動力を発生させる駆動モータ40と、駆動モータ40の駆動力をトランスデューサ20に伝達させるための動力伝達手段が設けられる。

(引1-エ)「図1



(引1-オ)「【0024】
フレーム30はトランスデューサ20を支持するための支持部32と、支持部32の一側底面に一体に形成される収容部34を備える。支持部32は略四角形の枠を有する。
【0025】
フレーム30の支持部32の上側には、トランスデューサ20の移動をガイドするための一対のガイドレール33がトランスデューサ20の両端に対向して形成される。トランスデューサ20の端部に対向するガイドレール33の側面にガイド溝33aが長手方向に形成されてガイドレール33は略“匸”形状の断面を有する。トランスデューサ20の両端にはこの円滑な移動のためにガイドレール33のガイド溝33a内に収容されて転がり接触されるベアリング22が設けられる。ガイド溝33aは、被検体側に向かう方向に凸(convex)、直線(linear)または凹(concave)形態の中から選択された一つの形に形成できる。
【0026】
駆動モータ40はフレーム30の収容部34の外側面に設けられる。望ましくは、駆動モータ40は入力信号に対して一定の角度を回転するステップモータである。これはステップモータが正確な角度制御及びモータドライバの特性によってフルステップ、ハーフステップ及びマイクロステップなど多様な駆動が可能であり、他のモータに比べて停止トルクに優れて角度誤差が累積しないという長所を有するためである。駆動モータ40の駆動軸42は収容部34の側壁を貫通して収容部34の内部に収容される。」

(引1-カ)「図2



(引1-キ)「【0027】
図3に示した通り、駆動モータ40の駆動軸42には駆動プーリ52が結合する。駆動プーリ52の上側には中間プーリ54と縦動プーリ56が順に位置する。中間プーリ54は第1タイミングベルト53により駆動プーリ52と連動する第1プーリ54aと、第1プーリ54aと同軸結合されて第2タイミングベルト55により縦動プーリ56と連動する第2プーリ54bを備える組立体からなる。
【0028】
駆動プーリ52、中間プーリ54及び縦動プーリ56の外周面には歯が形成され、第1及び第2タイミングベルト53、55にはプーリ52、54、56の歯と噛合う歯が形成される。縦動プーリ56の中心には縦動軸58の一端が結合し、縦動プーリ56と縦動軸58が共に回転可能にされ、縦動軸58の他端はフレーム30の支持部32の内側壁に回転可能に結合する。
【0029】
このように駆動モータ40と縦動軸58間に第1及び第2タイミングベルト53、55により連動する駆動プーリ52、中間プーリ54及び縦動プーリ56を設けることは、駆動モータ40の回転速度に対する適切な減速比を得るためであり、これらプーリ52、54、56の直径を調節することによって所望の減速比を得る方式は既に広く公知となった技術であるのでこの詳細な説明は省略する。
【0030】
縦動軸58の一側にはワイヤ60が巻かれるリール(reel)62が結合して縦動軸58と共に回転可能になる。リール62の外周面には螺旋形のグルーブ63が形成され、グルーブ63に沿ってリール62の外周面にワイヤ60が数回巻かれることによって縦動軸58及びリール62の回転時ワイヤ60のスリップと絡みが防止されて正確な動力伝達がなされるようにする。上述したプーリ52、54、56の直径はもちろんリール62の直径サイズによっても駆動モータ40の回転速度に対して所望の減速比でワイヤ60の移動速度を調節することができるという特徴がある。
【0031】
フレーム30の支持部32の枠上には縦動軸58と同一の回転軸方向を有して相互対向するように一対のローラ64が回転可能に設けられる。リール62から延びるワイヤ60の両端部は一対のローラ64にそれぞれ架けられた後、トランスデューサ20の前面20aと後面20bに向かうように方向が転換される。
【0032】
トランスデューサ20の前面20aと後面20bにはワイヤ60が架けられる係止部24と、係止部24に隣接してワイヤ60に張力を印加するための張力印加手段26が設けられる。ローラ64からトランスデューサ20の前面20aと後面20bに向かってそれぞれ延びるワイヤ60の両端部は係止部24に架けられた後、張力印加手段26側に方向が転換される。」

(引1ーク)「【0037】
従って、リール62からローラ64を経由して延び、係止部24及び張力印加手段26により両端が固定されたワイヤ60によりトランスデューサ20は矢印方向(図5を基準に左側)へ移動する。この時、トランスデューサ20の両側面に装着され、ガイドレール33のガイド溝33a内に収容されて転がり接触するベアリング22によりトランスデューサ20はガイド溝33aに沿って円滑に移動する。」

(引1-ケ)「図3



(引1-コ)
上記図2、図3を参照すると、トランスデューサ20は、超音波透過性カバー12の内面に隣接した部分と、該隣接した部分を支持し、駆動される支持部分からなる点が見て取れる。

上記(引1-ア)ないし(引1-コ)の記載より、引用例1には、

「a)本体と、前記本体の内部に移動可能に収納されて超音波信号と電気信号を相互変換するトランスデューサを備える被検体内3次元領域のエコーデータを得ることができる超音波プルーブであり、
b)超音波プルーブ10の本体は超音波透過性カバー12とケース14を備え、
c)カバー12内にはトランスデューサ20がカバー12の内面に隣接して備えられ、
d)トランスデューサ20は、超音波透過性カバー12の内面に隣接した部分と、該隣接した部分を支持し、駆動される支持部分からなり、
e)ケース14内にはプルーブの各種構成要素を支持するためのフレーム30と、トランスデューサ20を移動させるための駆動力を発生させる駆動モータ40と、駆動モータ40の駆動力をトランスデューサ20に伝達させるための動力伝達手段が設けられ、
f)フレーム30の支持部32の上側には、トランスデューサ20の移動をガイドするための一対のガイドレール33がトランスデューサ20の両端に対向して形成され、
g)トランスデューサ20の端部に対向するガイドレール33の側面にガイド溝33aが長手方向に形成され、
h)トランスデューサ20の両端にはこの円滑な移動のためにガイドレール33のガイド溝33a内に収容されて転がり接触されるベアリング22が設けられ、
i)駆動モータ40はフレーム30の収容部34の外側面に設けられ、
j)駆動モータ40の駆動軸42には駆動プーリ52が結合され、
k)駆動プーリ52の上側には中間プーリ54と縦動プーリ56が順に位置し、
l)中間プーリ54は第1タイミングベルト53により駆動プーリ52と連動する第1プーリ54aと、第1プーリ54aと同軸結合されて第2タイミングベルト55により縦動プーリ56と連動する第2プーリ54bを備える組立体からなり、
m)縦動プーリ56の中心には縦動軸58の一端が結合し、縦動プーリ56と縦動軸58が共に回転可能にされ、縦動軸58の他端はフレーム30の支持部32の内側壁に回転可能に結合し、
n)縦動軸58の一側にはワイヤ60が巻かれるリール(reel)62が結合して縦動軸58と共に回転可能になり、
o)ワイヤ60の両端部はトランスデューサ20の前面20aと後面20bに向かい、トランスデューサ20の前面20aと後面20bにはワイヤ60が架けられる係止部24が設けられ、
p)リール62から延び、係止部24により両端が固定されたワイヤ60によりトランスデューサ20が移動する、
超音波プルーブ10。」

の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

イ 引用例2
引用例2には、以下の記載がある。

(引2-ア)
「【請求項1】 超音波診断装置に対してケーブルによって接続され、生体表面に当接されて超音波の送受波を行う三次元データ取込み用超音波探触子であって、
本体ケースと、
前記本体ケースの中に収納された可動体であって、超音波の送受波面に沿って内部にアレイ振動子が配列された振動子ユニットと、
前記振動子ユニットに対し、その生体表面近傍に設定される仮想的な軸を回転軸として、前記振動子ユニットの前記送受波面を前記回転軸に向けさせつつ、前記振動子ユニットを円弧状経路に沿って機械的にアーク走査するアーク走査機構と、
を含み、
前記アレイ振動子を電子走査することにより形成される走査面が、その面内に存在する前記仮想的な軸を回転軸として機械的に走査されることを特徴とする三次元データ取込み用超音波探触子。」

(引2-イ)
「【0012】なお、ケース内部には、振動子ユニットの送受波面とケース内壁と間に媒質槽を設ける。また、アーク走査位置を検出する検出器を設ける。」

(引2-ウ)
「【0026】アーム36R,36Lには、それぞれ3つのローラ40?42,43?45が回転自在に設けられており、各ローラは、ガイドプレートの上辺又は下辺に回転接触する。」

ウ 引用例3
引用例3には、以下の記載がある。

(引3-ア)「【請求項1】 超音波診断装置に対してケーブルによって接続され、生体表面に当接されて超音波の送受波を行う三次元データ取込み用超音波探触子であって、
本体ケースと、
前記本体ケースの中に収納された可動体であって、超音波の送受波面に沿って内部にアレイ振動子が配列された振動子ユニットと、
前記振動子ユニットに対し、その生体表面近傍に設定される仮想的な軸を回転軸として、前記振動子ユニットの前記送受波面を前記回転軸に向けさせつつ、前記振動子ユニットを円弧状経路に沿って機械的にアーク走査するアーク走査機構と、
を含み、
前記アレイ振動子を電子走査することにより形成される走査面が、その面内に存在する前記仮想的な軸を回転軸として機械的に走査されることを特徴とする三次元データ取込み用超音波探触子。」

(引3-イ)「【0021】
駆動装置(120)の一部、例えば、ロープ駆動プーリ(123)とワイヤロープ(124)のみがハウジング(112)内部に配置されていると示されているが、ハウジング(112)は駆動装置(120)全体を収納するように構成されることができる。また、図1に示された駆動装置(120)は、ワイヤロープを用いて超音波素子組立体(111)を回転往復運動させているが、駆動装置(120)の駆動機構として平ギア、ウォームギア、ラック-ピニオン、カム等が採用されてもよい。」

エ 引用例4
引用例4には、以下の記載がある。

(引4-ア)
「【0020】図1において、本体部14のケース16内には、モータ18、カム用従動片22、駆動ワイヤ26、駆動トロッコ28などで構成される駆動機構100が設けられている。これについて詳述すると、モータ18は、超音波振動子54を機械的に走査するための駆動力を発生し、その駆動力がモータ18に内蔵されたギヤによって所定速度に変換された後、偏心カム20に伝達され、この偏心カム20によりカム用従動片22がスライド軸24上を往復運動する。」

オ 引用例5
引用例5には、以下の記載がある。

(引5-ア) 第1頁左下欄第5行-第15行
「被検体内を超音波振動子からの超音波ビームによってセクタ状に走査し、被検体内の超音波反響断層像を表示する超音波診断装置用の超音波プローブにおいて、前記セクタ形状の中心を回転中心として一定速度で回転する板カムと、該板カムに押圧されて摺動する摺動部材と、該摺動部材に軸受を介して摺動自在に保持されるアームと、該アームに保持されると共に外枠内壁に回動自在に軸支され前記板カムの回転に連動して等角速度で往復回動する超音波振動子と、超音波伝達媒体とを前記外枠内に具備してなる超音波プローブ。」

(2)対比

本願発明1と引用発明1を対比する。

ア 本願発明1のA)の特定事項について
(ア)引用発明1の「超音波プルーブ」は、本願発明1の「超音波プローブ」に相当する。
(イ)引用発明1の「被検体内3次元領域」は、本願発明1の「ボリュメトリック領域」に相当する。
(ウ)引用発明1の「トランスデューサ」は、移動可能にされることによって「被検体内3次元領域のエコーデータを得る」ものであり、3次元領域のエコーデータを得るためには、「トランスデューサを構成する素子をアレイ状に配置したもの」を有することは当業者にとって明らかであり、引用発明1のトランスデューサが有することが明らかな「トランスデューサを構成する素子をアレイ状に配置したもの」は、本願発明1の「トランスデューサアレイ」に相当する。
(エ)引用発明1も、「被検体内3次元領域のエコーデータを得る」ためにはスキャンが必要であることは明らかであるから、引用発明1も、移動可能な「トランスデューサを構成する素子をアレイ状に配置したもの」を運動させ、スキャンを行っていることは、当業者にとって明らかである。
(オ)よって、本願発明1と引用発明1は、「アレイトランスデューサの運動によりボリュメトリック領域をスキャンする超音波プローブ」である点で一致する。

イ 本願発明1のB)の特定事項について
(ア)引用発明1の超音波透過性カバー12は、超音波が透過されるものであるから、被検体に密着する部位に設けられるとともに、超音波プルーブの先端に設けられるものであることは明らかであるから、遠位端部に設けられるものといえる
(イ)引用発明1のケース14は、本願発明1のプローブケースに相当する。
(ウ)よって、本願発明1と引用発明1は、「遠位端部において、エンドキャップを備えるプローブケース」を有する点で一致する。

ウ 本願発明1のC)の特定事項について
(ア)引用発明1のトランスデューサ20は、超音波透過性カバー12の内面に隣接する、超音波を発生させる「トランスデューサを構成する素子をアレイ状に配置したもの」からなる部分と、該隣接した部分を支持し、駆動される「支持部分」から成るものである。一方、本願発明1も、アレイトランスデューサは、キャリッジアセンブリに取り付けられるものである。
(イ)したがって、引用発明1の「支持部分」は、本願発明1の「キャリッジアセンブリ」に相当する。
(ウ)よって、本願発明1と引用発明1は、「キャリッジアセンブリに取り付けられるアレイトランスデューサ」を有する点で一致する。

エ 本願発明1のD)の特定事項について
引用発明1の「トランスデューサ20の移動をガイドするための一対のガイドレール33」は、本願発明1の「キャリッジアセンブリが」「移動するためのレールのペア」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明1は、「キャリッジアセンブリが」「移動するためのレールのペア」を有する点で一致する。

オ 本願発明1のE)の特定事項について
(ア)引用発明1の「トランスデューサ20の両端」は、本願発明1の「キャリッジアセンブリの各端部」に相当し、また、引用発明1の「円滑な移動のためにガイドレール33のガイド溝33a内に収容されて転がり接触されるベアリング22」と、本願発明1の「前記レールの上部に乗るローラーと、前記レールの下部に当たるローラーとを含む、ローラーのペア」は、「レール」に案内される転動部材である点で両者は一致する。
(イ)よって、本願発明1と引用発明1は、「キャリッジアセンブリの各端部に配置される」「レール」に案内される転動部材を有する点で一致する。

カ 本願発明1のF)の特定事項について
(ア)引用発明1は、「o)ワイヤ60の両端部はトランスデューサ20の前面20aと後面20bに向かい、トランスデューサ20の前面20aと後面20bにはワイヤ60が架けられる係止部24が設けられ」ものである。ここにおける「ワイヤ」は、本願発明1の「ドライブケーブル」に相当し、「トランスデューサ20の前面20aと後面20b」は、「トランスデューサ20」の「支持部分」の面である。
(イ)よって、本願発明と引用発明1は、「キャリッジアセンブリに接続されるドライブケーブル」を有する点で一致する。

キ 本願発明1のG)の特定事項について
(ア)引用発明1は、「n)縦動軸58の一側にはワイヤ60が巻かれるリール(reel)62が結合して縦動軸58と共に回転可能にな」るものであるから、「ワイヤ60が巻かれる」「回転可能」な「リール(reel)」を有するものである。
(イ)よって、本願発明1と引用発明1とは、「ドライブケーブルが巻かれる回転可能な」部材を有する点で一致する。

ク 本願発明1のH)の特定事項について
引用発明1の「トランスデューサ20を移動させるための駆動力を発生させる駆動モータ40」は、「前記レール上で前記キャリッジアセンブリ及びアレイトランスデューサを動かすために動作可能に結合されるモーター」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明1は、「レール上で」「キャリッジアセンブリ及びアレイトランスデューサを動かすために動作可能に結合されるモーター」を有する点で一致する。

ケ 本願発明1のI)の特定事項について
引用発明1は、本願発明1のI)の特定事項を具備していない。

コ 本願発明1のJ)の特定事項について
(ア)上記キにおいて指摘したように、引用発明1は、「ワイヤ60が巻かれる」「回転可能」な「リール(reel)」を有しており、また、引用発明1は、「p)リール62から延び、係止部24により両端が固定されたワイヤ60によりトランスデューサ20が移動する」ものである。
(イ)また、引用発明1のj)ないしn)の構成より、「リール(reel)」は、駆動モータ40の駆動力を動力伝達手段により伝達させて回転されるものであることは明らかである。
(ウ)引用発明1において、トランスデューサ20の移動が往復動であることは当業者にとって明らかである。したがって、引用発明1の「トランスデューサ20」の「移動」は、前後方向のものといる。
(エ)したがって、本願発明1と引用発明1は、「回転可能な」部材に、「ドライブケーブルが巻かれ」、「モーターにより」回転可能な部材「が回転されることによって、」前記回転可能な部材「に巻かれた」「ドライブケーブルにより」「キャリッジアセンブリが前後に引かれる」点で一致する。

よって、本願発明1と引用発明1は、以下の点で一致する。

「アレイトランスデューサの運動によりボリュメトリック領域をスキャンする超音波プローブであって、
遠位端部において、エンドキャップを備えるプローブケースと、
キャリッジアセンブリに取り付けられるアレイトランスデューサと、
前記キャリッジアセンブリが移動するためのレールのペアと、
前記キャリッジアセンブリの各端部に配置される、レールに案内される転動部材と、
前記キャリッジアセンブリに接続されるドライブケーブルと、
前記ドライブケーブルが巻かれる回転可能な部材と、
前記レール上で前記キャリッジアセンブリ及びアレイトランスデューサを動かすために動作可能に結合されるモーターとを有し、
前記回転可能な部材に、前記ドライブケーブルが巻かれ、前記モーターにより前記回転可能な部材が回転されることによって、前記回転可能な部材に巻かれた前記ドライブケーブルにより前記キャリッジアセンブリが前後に引かれる
超音波プローブ。」

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1は、プローブケースが遠位端部において流体コンパートメントを持ち、前記流体コンパートメントにおいてアレイトランスデューサがキャリッジアセンブリに取り付けられ、さらに、レールのペアが、前記キャリッジアセンブリが前記流体コンパートメントにおいて移動するためのものであるのに対して、引用発明1は、流体コンパートメントの存在が不明である点。

<相違点2>
レールに案内される転動部材が、本願発明1は、レールの上部に乗るローラーと、前記レールの下部に当たるローラーとを含む、ローラーのペアであるのに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。

<相違点3>
ドライブケーブルが巻かれる回転可能な部材が、本願発明1は、回転可能なカムであって、該カムのカム面に、前記ドライブケーブルが巻かれるものであり、前記回転可能なカムが、前記カムの回転軸の方向が前記エンドキャップに向かって延在するよう、方向付けられるものであるのに対して、引用発明1は、そのような構成となっていない点。

(3)判断
上記の相違点3について、以下に検討する。

上記「(1)各引用例の記載事項」の「ウ 引用例3」、「エ 引用例4」、及び、「オ 引用例5」を参照すると、引用例3、引用例4、及び、引用例5には、超音波探触子等の駆動に、「カム」を採用した構成は開示されている。
しかしながら、回転可能なカムのカム面にドライブケーブルが巻かれる構成とし、かつ、前記カムの回転軸の方向が前記エンドキャップに向かって延在するようにした構成は、引用例2ないし5のいずれにも記載も示唆もされていない。
してみると、引用例1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点3係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。

そして、本願発明1は、上記の構成を採用することにより、請求人が審判請求書において主張するように、コンパクトな設計を可能とするという作用効果を奏するものである。

(4)小括
したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、引用例1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願の請求項2ないし13に係る発明は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明1、引用例1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について

1 当審の平成28年2月22日付け拒絶理由

当審の平成28年2月22日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりである。

「 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1において、「前記ドライブケーブルが巻かれる回転可能なカム」との記載があり、また、「前記回転可能なカムが、前記モーターにより回転されるよう構成され、前記キャリッジアセンブリは、前記回転可能なカムに巻かれた前記ドライブケーブルにより前後に引かれるよう構成される」との記載があるが、ドライブケーブルがカムにどのように巻かれているのか、また、前記カムがモーターにより回転されることで、前記カムに巻かれたドライブケーブルにより、どのようにしてキャリッジアセンブリが前後に引かれるのかが不明であり、請求項1に係る発明が明確に把握できない。
請求項1の記載を引用する請求項2?14に係る発明についても同様である。
よって、請求項1?14に係る発明は明確でない。

(2)請求項4は、間接的に請求項1の記載を引用していることから、請求項4に係る発明は、請求項1において特定された「前記キャリッジアセンブリの各端部に配置されるローラーのペアであって、前記ローラーのペアが、前記レールの上部に乗るローラーと、前記レールの下部に当たるローラーとを含む、ローラーのペア」を備えるものである。
そして、請求項4において、「前記レールが、逃げ溝領域を更に有し、各レールの前記逃げ溝領域に乗る第3及び第4のローラーを更に有する」との特定がなされていることから、請求項4に係る発明は、「レールの上部に乗るローラー」と「前記レールの下部に当たるローラー」に加えて、さらに、「各レールの前記逃げ溝領域に乗る第3及び第4のローラー」を備えることになり、そのような「第3及び第4のローラー」を備えたものが、どのような構成であるのか不明であることから、請求項4に記載された事項によって特定される構成が不明確である。
よって、請求項4に係る発明は明確でない。

(3)請求項5において、「前記モーターが、前記モーターと前記キャリッジアセンブリとの間で結合されるケーブルにより、前記キャリッジアセンブリを動かすよう動作可能に結合される」と記載されていることから、ケーブルが、モーターとキャリッジアセンブリとの間で結合されている点が特定されている。一方、請求項5が引用する請求項1では、「前記回転可能なカムが、前記モーターにより回転されるよう構成され、前記キャリッジアセンブリは、前記回転可能なカムに巻かれた前記ドライブケーブルにより前後に引かれるよう構成される」と記載されていることから、ドライブケーブルが、モーターにより回転されるよう構成された回転可能なカムに巻かれている点が特定されている。
これらの記載において、ドライブケーブルとケーブルが同一の部材であるのか否かが不明であり、また、それらが同一の部材とした場合に、ケーブルが、モータに直接結合しているのか、モータにより回転される回転可能なカムに結合されるのか不明であり、請求項5の記載と、請求項5が引用する請求項1の記載との整合が取られておらず、請求項5に記載された事項によって特定される構成が明確に把握できない。
請求項5の記載を引用する請求項6?10に係る発明についても同様である。
よって、請求項5?10に係る発明は明確でない。

(4)請求項6において、「前記ケーブルが、前記キャリッジアセンブリに対する相対的な線形運動を提供するよう、少なくともカム面の部分の周りを通過する」との記載があるが、「カム面の部分の周りを通過する」とは、どのような態様を表現しているのか不明であり、請求項6に記載された事項によって特定される構成が明確に把握できない。
請求項6の記載を引用する請求項7?9に係る発明についても同様である。
よって、請求項6?9に係る発明は明確でない。

(5)請求項11において、「超音波エネルギーが、前記アレイトランスデューサへ/から進み、」とあるが、「へ/から」をどのように解釈すればよいのか明確でなく、請求項11に記載された事項によって特定される構成が不明確である。
よって、請求項11に係る発明は明確でない。

(6)請求項13において、「前記アレイトランスデューサが移動されるとき、前記円弧状の移動経路により、前記アレイトランスデューサの前記画像平面が前記立面図方向において分岐することがもたらされる」との記載があるが、この記載以前に「画像平面」及び「立面図方向」の記載が存在しないことから、「前記画像平面」及び「前記立面図方向」が何をさすのか不明である。
また、「前記アレイトランスデューサの前記画像平面が前記立面図方向において分岐することがもたらされる」の記載において、「分岐」がどのような意味で使われているのか不明であり、「前記画像平面が前記立面図方向において分岐すること」とは、どのような態様を表現しているのか不明である。
よって、請求項13に記載された事項によって特定される構成が不明であり、請求項13に係る発明は明確でない。」

2 当審拒絶理由の判断

(1)当審拒絶理由(1)に関して
平成28年8月23日に提出された誤訳訂正書(以下、「誤訳訂正書」という。)によって、補正前の請求項1の「前記回転可能なカムが、前記モーターにより回転されるよう構成され、前記キャリッジアセンブリは、前記回転可能なカムに巻かれた前記ドライブケーブルにより前後に引かれるよう構成される」の記載が、「前記回転可能なカムのカム面に、前記ドライブケーブルが巻かれ、前記モーターにより前記カムが回転されることによって、前記カム面に巻かれた前記ドライブケーブルにより前記キャリッジアセンブリが前後に引かれる」に補正された。
よって、記載は明確になり、当審拒絶理由における理由(1)は解消した。

(2)当審拒絶理由(2)に関して
誤訳訂正書により、補正前の請求項4の「各レールの前記逃げ溝領域に乗る第3及び第4のローラーを更に有する」の記載が、「前記レールの下部に当たる前記ローラーが前記逃げ溝領域に乗るよう構成される」に補正された。
よって、記載は明確になり、当審拒絶理由における理由(2)は解消した。

(3)当審拒絶理由(3)に関して
誤訳訂正書によって、補正前の請求項5に係る発明が削除された。
よって、補正前の請求項5を対象とする当審拒絶理由の(3)は解消された。

(4)当審拒絶理由(4)に関して
誤訳訂正書によって、補正前の請求項6の「少なくともカム面の部分の周りを通過する」の記載が、「少なくとも前記カム面の部分に巻かれている」に補正された。
よって、記載は明確になり、当審拒絶理由における理由(4)は解消した。

(5)当審拒絶理由(5)に関して
誤訳訂正書によって、補正前の請求項11の「前記アレイトランスデューサへ/から進み、」の記載が、「前記アレイトランスデューサへ及び前記アレイトランスデューサから進み、」に補正された。
よって、記載は明確になり、当審拒絶理由における理由(5)は解消した。

(6)当審拒絶理由(6)に関して
誤訳訂正書により、補正前の請求項13の「前記アレイトランスデューサの前記画像平面が前記立面図方向において分岐することがもたらされる」の記載が、「前記アレイトランスデューサの画像平面がエレベーション方向において末広がりとなる」に補正された。
よって、記載は明確になり、当審拒絶理由における理由(6)は解消した。

以上のことから、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-07 
出願番号 特願2011-520633(P2011-520633)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
田中 洋介
発明の名称 3次元撮像超音波プローブ  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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