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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1321034 |
審判番号 | 不服2015-22456 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-22 |
確定日 | 2016-11-22 |
事件の表示 | 特願2011-210869「雌端子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月22日出願公開、特開2013- 73742、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年9月27日の出願であって、平成27年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年6月25日に意見書が提出されたが、同年11月4日付け(発送日:同年11月10日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年7月6日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月10日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年8月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「雄端子が挿入される端子接続部と、前記雄端子と電気的に接続される電線が接続される電線接続部とを備える雌端子であって、 前記端子接続部は、 前記雄端子の挿入方向に沿って延在する上面、下面、対向する2つの側面を有する本体部と、 前記端子接続部に挿入された前記雄端子を挟み前記雄端子と接触する前記上面に設けられた上側弾性接触片及び前記下面に設けられた下側弾性接触片を有する弾性接触部材と、を備え、 前記端子接続部には、 前記雄端子が挿入される雄端子入口と、 前記雄端子入口を通過した前記雄端子の先端が挿入される雄端子出口と が形成され、 前記雄端子入口及び前記雄端子出口の少なくとも一方には、前記対向する2つの側面の少なくとも1つの側面と一体に形成され、前記雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部が設けられ、 前記支持部は、前記端子接続部に挿入された前記雄端子を前記対向する2つの側面の少なくとも1つの側面側から支持することを特徴とする雌端子。」(下線は、審判請求人が付与。) 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 本願は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等> 1.特開2011-44256号公報 2.特開2011-40249号公報 引用例1に記載された発明と本願の請求項1に係る発明とを対比すると両者は、以下の点で相違する。 [相違点] 本願の請求項1に係る発明の支持部は「雄端子入口及び雄端子出口の少なくとも一方」に設けられるのに対し、引用例1に記載された発明では接続孔24に凸部30Aが設けられていない点。 以下、上記相違点について検討する。 引用例2には、雄端子入口と雄端子出口に、第1突部64と第2突部65を設けた発明(以下「引用例2発明」という。)が記載されている(引用例2の段落[0034]、[図1]。)。そして、引用例1の凸部30Aと引用例2の第1突部及び第2突部とはともに、雄端子の挿入方向に対して交差する方向に外力が作用した場合の雄端子の移動を防止するという機能・作用を有するから(引用例1の段落[0042]、引用例2の段落[0052]。)、引用例1に記載された発明に引用例2発明を適用して、本願の請求項1に係る発明における相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 2 原査定の理由の判断 (1) 引用文献の記載事項 引用文献1:特開2011-44256号公報(特に、段落【0017】?【0043】、及び【図1】?【図15】を参照。)には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、雌端子金具に関して、実施形態1として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「雄端子TAが挿入される端子接続部21と、前記雄端子TAと電気的に接続される被覆電線が接続される電線接続部32とを備える雌端子金具10であって、 前記端子接続部21は、 前記雄端子TAの挿入方向に沿って延在する上下の壁部21A、21C、対向する側壁部21B、21Dを有する角筒状の部分と、 前記端子接続部21に挿入された前記雄端子TAを挟み前記雄端子TAの上下の両側から複数本の接触片43を接触させることができるルーバー端子40と、を備え、 前記端子接続部21には、 前記雄端子TAが挿入される開口部24と、 前記開口部24を通過した前記雄端子TAの先端が挿入される開口部39とが形成され、 前記開口部24及び前記開口部39の少なくとも一方には、上下の壁部21A、21Cと一体に形成され、雄端子TAの端子接続部21への挿入時に、雄端子TAとわずかな隙間を有する凸部30A、30Bが設けられ、 前記凸部30A、30Bは、雄端子TA挿入時における雄端子TAの捻回を防止する雌端子金具10。」 (2) 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「雄端子TA」は、本願発明の「雄端子」に相当する。 以下同様に、「端子接続部21」は、「端子接続部」に、 「被覆電線」は、「電線」に、 「電線接続部32」は、「電線接続部」に、 「雌端子金具10」は、「雌端子」に、 「上下の壁部21A、21C」は、「上面」及び「下面」に、 「側壁部21B、21D」は、「2つの側面」に、 「角筒状の部分」は、「本体部」に、 「開口部24」は、「雄端子入口」に、 「開口部39」は、「雄端子出口」に、それぞれ相当する。 引用発明の「雄端子TAの上下の両側から複数本の接触片43を接触させることができるルーバー端子40」と、本願発明の「雄端子と接触する前記上面に設けられた上側弾性接触片及び前記下面に設けられた下側弾性接触片を有する弾性接触部材」とは、いずれも雄端子に接触するものであるから、「接触部材」という限りで共通している。 引用発明の「上下の壁部21A、21Cと一体に形成され、雄端子TAの端子接続部21への挿入時に、雄端子TAとわずかな隙間を有する凸部30A、30B」と、本願発明の「対向する2つの側面の少なくとも1つの側面と一体に形成され、前記雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部」とは、「凸部」という限りで共通している。 以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 「雄端子が挿入される端子接続部と、前記雄端子と電気的に接続される電線が接続される電線接続部とを備える雌端子であって、 前記端子接続部は、 前記雄端子の挿入方向に沿って延在する上面、下面、対向する2つの側面を有する本体部と、 前記端子接続部に挿入された前記雄端子を挟み前記雄端子と接触する接触部材と、を備え、 前記端子接続部には、 前記雄端子が挿入される雄端子入口と、 前記雄端子入口を通過した前記雄端子の先端が挿入される雄端子出口とが形成され、 前記雄端子入口及び前記雄端子出口の少なくとも一方には、 凸部が設けられた雌端子。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 接触部材に関して、本願発明では「雄端子と接触する前記上面に設けられた上側弾性接触片及び前記下面に設けられた下側弾性接触片を有する弾性接触部材」であるのに対して、 引用発明では、「雄端子TAの上下の両側から複数本の接触片43を接触させることができるルーバー端子40」である点。 [相違点2] 凸部に関して、本願発明では「対向する2つの側面の少なくとも1つの側面と一体に形成され、前記雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部」であり、「端子接続部に挿入された前記雄端子を前記対向する2つの側面の少なくとも1つの側面側から支持する」のに対して、 引用発明では「上下の壁部21A、21Cと一体に形成され、雄端子TAの端子接続部21への挿入時に、雄端子TAとわずかな隙間を有する凸部30A、30B」であり、「雄端子TA挿入時における雄端子TAの捻回を防止する」点。 (3) 判断 上記相違点2について検討する。 引用文献2:特開2011-40249号公報(特に、段落【0023】?【0034】、【0052】及び【図1】を参照。)には、端子金具に関して、端子金具1の電気接触部5は、筒状の端子本体部6を備え、該端子本体部6は、底壁61の長手方向の両端部の2つの第1突部64と、天井壁62の長手方向の両端部の2つの第2突部65とを備えており、挿入子8を第1突部64と、第2突部65との間に侵入させた(挟み込まれた)状態で、挿入子8の侵入方向に対して交差する方向に外力が作用すると、前記第1突部64及び前記第2突部65と、前記挿入子8とは、当接可能に設けられ、これによって、それ以上の移動が阻止されることが記載されている(以下「引用文献2記載の事項」という。)。 ここで、上記引用文献2記載の事項における「挿入子8」、「侵入」、「挿入子8を第1突部64と、第2突部65との間に侵入させた(挟み込まれた)状態」及び「当接」は、それぞれ本願発明の「雄端子」、「挿入」、「雄端子が前記端子接続部に挿入されたとき」及び「支持」に相当する。 すると、引用文献2記載の事項には、本願発明の用語を用いて表現すると、雄端子が端子接続部に挿入されたときに、雄端子の挿入方向に対して交差する方向に外力が作用すると、第1突部64及び第2突部65が雄端子を支持することが示唆されているといえる。 しかし、引用文献2記載の事項における第1突部64及び第2突部65は、雄端子が端子接続部に挿入されたときには雄端子を支持しておらず、挿入方向に対して交差する方向に外力が作用したときに雄端子を支持するものであるから、本願発明の「雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部」を示唆するものではない。 すると、たとえ引用発明に引用文献2記載の事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明の構成に至るものではない。 本願に対して平成28年2月26日付けで作成された前置報告書において、引用文献3として引用された特開2007-149504号公報(特に、段落【0006】、【0041】?【0049】、【0053】?【0060】及び【図1】?【図11】を参照。)には、雌端子及びコネクタに関して、雌端子3は、挿入子5が侵入する筒状の筒部11を有する電気接触部8を備え、筒部11の側壁14に突起25を備えており、該突起25には、筒部11内に挿入された挿入子5が挿入方向に交差した方向に沿って、接触突出部15即ち天井壁13の内面13aから離れる方向に移動すると、該挿入子5が当接し、このため、突起25は、挿入子5が当接することで、挿入子5が筒部11の一つの内面としての天井壁13の内面13aから一定以上離間することを規制することが記載されている(以下「引用文献3記載の事項」という。)。 ここで、上記引用文献3記載の事項における「挿入子5」、「筒部11内に挿入された挿入子5」の状態及び「当接」は、それぞれ本願発明の「雄端子」、「雄端子が前記端子接続部に挿入されたとき」及び「支持」に相当する。 すると、引用文献3記載の事項には、本願発明の用語を用いて表現すると、雄端子が端子接続部に挿入されたときに、雄端子が挿入方向に交差した方向に移動すると、突起25が雄端子を支持することが示唆されているといえる。 しかし、引用文献3記載の事項における突起25は、雄端子が端子接続部に挿入されたときには雄端子を支持しておらず、雄端子が挿入方向に交差した方向に移動すると雄端子を支持するものであるから、本願発明の「雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部」を示唆するものではない。 すると、たとえ引用発明に引用文献3記載の事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明の構成に至るものではない。 (4) 小括 このように、上記相違点2に係る本願発明の構成に至るのが容易であるとはいえないから、上記相違点1について検討するまでもなく、上記相違点2に係る本願発明の構成を備える本願発明は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3記載の事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3記載の事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1及び2において、「支持する」こと、及び「支持部」の定義が明確でない。 2 当審拒絶理由の判断 平成28年8月10日の手続補正によって、手続補正前の請求項1の「前記対向する2つの側面の少なくとも1つの側面と一体に形成され前記端子接続部に挿入された前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部が設けられ、」との記載は、「前記対向する2つの側面の少なくとも1つの側面と一体に形成され、前記雄端子が前記端子接続部に挿入されたときに前記雄端子と当接して前記雄端子を支持する支持部が設けられ、」(下線は、審判請求人が付与。)と補正された。このことにより、請求項1及び2に係る発明は明確となった。 よって、当審拒絶理由の理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-07 |
出願番号 | 特願2011-210869(P2011-210869) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 小関 峰夫 |
発明の名称 | 雌端子 |
代理人 | 三好 秀和 |