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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1321042
審判番号 不服2015-675  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-13 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2011-168742「ノビレチンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日出願公開、特開2012- 56938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は、平成23年8月1日(優先権主張平成22年8月11日)の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成26年 6月16日付け 拒絶理由通知
平成26年 8月25日 意見書提出・手続補正
平成26年10月 6日付け 拒絶査定
平成27年 1月13日 審判請求
平成28年 4月 8日付け 拒絶理由通知
平成28年 6月13日 意見書提出・手続補正

第2 本願発明の認定

この出願の発明は、平成28年6月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「ノビレチンを含む食品から成る原料を0%?30%エタノール水溶液から成る溶媒中でナノメートルオーダーまで微細化して、前記ノビレチンを前記溶媒中に抽出し、使用した前記溶媒を循環させて抽出することを、特徴とするノビレチンの製造方法。」

第3 当審における拒絶の理由の概要

平成28年4月8日付けで当審が通知した拒絶の理由は、その拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)における理由4を含むものであり、その概要は、この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

そして、刊行物1?5として、以下の刊行物が引用されている。
刊行物1:特開2006-327998号公報
刊行物2:特開2010-149120号公報
刊行物3:特開2005-145824号公報
刊行物4:社団法人日本化学会 編、「第5版 実験化学講座1?基礎編I 実験・情報の基礎?」(平成15年9月25日)丸善株式会社発行、p189-194
刊行物5:特開2008-263946号公報

第4 当審の判断

当審は、本願発明は、前記刊行物2、3に記載された発明及び本願優先日前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。その理由は、以下のとおりである。

1 刊行物

刊行物1:特開2005-145824号公報(当審拒絶理由通知における刊行物3)
刊行物2:特開2010-149120号公報(当審拒絶理由通知における刊行物2)
刊行物3:社団法人日本化学会 編、「第5版 実験化学講座5?化学実験のための基礎技術?」(平成17年2月28日)丸善株式会社発行、p6-12
刊行物4:社団法人化学工学協会 編、「化学工学便覧」(昭和48年5月15日)丸善株式会社発行、p751-752

刊行物3、4は、周知技術を示すために引用するものである。

2 刊行物に記載された事項

この出願の優先日前に頒布された刊行物である刊行物1?4には、以下の事項がそれぞれ記載されている。

(1)刊行物1
1a「【請求項1】下記工程(a)?(c)を含むノビレチンの製造方法。
(a)柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する工程
(b)前記工程(a)で得られた抽出液を多孔性吸着樹脂に通液する工程
(c)前記多孔性吸着樹脂に吸着したノビレチンを溶出する工程」

1b「【背景技術】【0002】柑橘類には、ノビレチン、タンゲレチン、ペンタメトキシフラボン、テトラメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン等のポリアルコキシフラボノイドが含まれており、柑橘類に含まれているポリアルコシキフラボノイドは、マトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害活性(特許文献1参照)、神経突起伸長活性(特許文献2参照)、プロスタグランジンE2産生抑制活性(特許文献3参照)等を有することが知られている。
・・・・・
【発明が解決しようとする課題】【0004】本発明は、工業的生産に適したノビレチンの製造方法を提供することを目的とする。
・・・・・
【発明の効果】【0006】柑橘類の抽出溶媒としてエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液を使用することにより、柑橘類から高収率でノビレチンを抽出することができる。
また、柑橘類の抽出溶媒としてエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液を使用することにより、柑橘類抽出液の濃縮時に析出物の発生を防止することができ、析出物により柑橘類抽出液の多孔性吸着樹脂への通液が阻害されることを防止することができる。
したがって、柑橘類の抽出溶媒としてエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液を使用することにより、ノビレチンの工業的生産が可能となる。」

1c「【発明を実施するための最良の形態】
【0007】工程(a)
工程(a)は、柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する工程である。
柑橘類としては、ミカン科に属するシークワーシャー(Citrus depressa)・・ポンカン(C.retuculata)・・等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の柑橘類を抽出原料として使用することができるが、ポンカンを抽出原料として使用することが好ましい。
【0008】抽出原料として使用できる柑橘類の部位としては、例えば、果実、果皮、葉等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を抽出原料として使用することができるが、果実又は果皮を抽出原料として使用することが好ましい。果実としては、果皮を含む果実全体を使用することが好ましい。果実又は果皮としては、未熟な果実(摘果果実)又はその果皮及び成熟した果実又はその果皮のいずれを使用してもよい。抽出原料には、切断、破砕、乾燥等の前処理を行うことができる。
【0009】エタノール水溶液におけるエタノール濃度は0?40容量%の範囲内で適宜変更することができる。なお、エタノール濃度が0容量%のエタノール水溶液とは、水を意味する。水には、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、滅菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。
【0010】抽出処理は、柑橘類に含まれるノビレチンを抽出できる限り特に限定されず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の1?20倍量(質量比)の抽出溶媒に抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で0.1?3時間抽出した後、濾過して残渣を除去することにより、ノビレチンを含有する抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、常法に従って濃縮してもよい。また、得られた抽出液は、脱色等を目的として活性炭処理してもよい。」

(2)刊行物2
2a「【請求項1】中央部に流体の流入口を形成した板状の第1混合エレメントに、板状の第2混合エレメントを対向させて配置すると共に、両混合エレメントの間に、上記流入口から流入した流体を放射線方向に流動させて分流させる複数の分流部と、分流部で分流された流体を放射線方向に流動させて合流させる複数の合流部とを具備する混合流路を形成した混合ユニットを構成し、混合ユニットには、前記混合流路を通過した流体を流出させる流出口を設けている静止型流体混合装置であって、
前記第1混合エレメントは、板状に形成したエレメント本体の一側面の周縁部に、周壁部を全周にわたって突出状に一体的に形成して、周壁部とエレメント本体とで凹み部を形成し、
前記凹み部内には、前記第2混合エレメントを上記エレメント本体と対面状態に配置して、第1混合エレメントの周壁部の内周面と第2混合エレメントの外周端面との間に、全周にわたって略一定間隔にてリング状に開口する環状流出路を形成し、環状流出路の終端開口部を流出口となして混合ユニットを構成し、
前記混合ユニットは、筒状のケーシング本体内にその軸線方向に間隔を開けて複数配置すると共に、ケーシング本体の内周面と第1混合エレメントの周壁部の外周面とを密着状態に面接触させて、隣接する混合ユニットとケーシング本体とで上記環状流出路と連通する流路形成用空間を形成し、
前記流路形成用空間内には、前記混合流路を通過した流体が、リング状に開口する流出口の全周から略均等に流出して、ケーシング本体の軸芯側に流動して集合する集合流路が形成されるようにしていることを特徴とする静止型流体混合装置。
・・・・・
【請求項8】請求項1に記載の静止型流体混合装置の前記流入口に、固体と液体とが混合された状態の固液混合流体を供給する固液混合流体供給管が接続されてなることを特徴とする静止型固液混合装置。
【請求項9】前記固液体混合流体は、フコイダンを含有する海藻類を含むものであることを特徴とする請求項8に記載の静止型固液混合装置。」

2b「【技術分野】【0001】本発明は、流体、例えば、液体と液体、液体と酸素等の気体、水等の改質対象液体、液体とローヤルゼリー等の水性流体、及び、海藻類等の固体と液体、を超微細化かつ均一化して混合する静止型流体混合装置に関する。
・・・・・
【0006】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、より圧力損失が小さく流体漏れを生じることのない静止型流体混合装置を提供することを課題とする。」

2c「【発明の効果】【0017】本発明に係る静止型流動混合装置では、流体成分をより微細化することができると共に均一化(超微細化かつ均一化)することができる。しかも、本発明では、混合流路を通過した流体を流出口から集合流路に流出させるに際して、全周にわたって略一定間隔にてリング状に開口する環状流出路の終端開口部を流出口としているため、同流出口は、全周にわたって略均等幅で存在することになって、同流出口の全周から略均等に流出される流体の流線が大きく乱れことがなくなる。そのため、流体の圧力にばらつきが発生しにくくなる。その結果、流体圧力が均一化されて流路抵抗が低下する。流路抵抗が低下すると圧力損失が低減されて、供給する流体の圧力を高圧にしなくても処理量を増大させることができる。
【0018】そして、環状流出路と連通する流路形成用空間は、隣接する混合ユニットとケーシング本体とで形成して、同流路形成用空間内には混合流路を通過した流体が、略均等幅でリング状に開口する流出口の全周から拡径状の流路形成用空間内に流出される。このように、略均等幅の流路から拡径された流路に流体が流出されるようにしているため、大幅な圧力損失低減効果が得られる。
【0019】圧力損失が低減されると、低圧で流体混合処理を行なうことができるようになって、シール部における流体漏れ防止を図る必要性、すなわち、パッキンなどのシール部材を使用する必要性がなくなる、ないしは大幅に低減される。その結果、シール部材の交換などの作業が不要、ないしは大幅に削減されるため、本発明に係る静止型流体混合装置自体のメンテナンス作業の簡易化と迅速化を図ることができて、作業効率を向上させることができる。
【0020】また、本発明に係る静止型流体混合装置では、上記したように圧力損失が低減されるため、同じ量の処理流体を供給する際に、ポンプなどの処理流体供給手段の出力を小さくすることができる。また、同じ出力を維持するのであれば、処理能力が増大する。
【0021】圧力損失の低減も一因であると考えられるが、流体混合処理に伴い発生する騒音が小さくなり、静粛性が向上すると共に、振動が小さくなる。そして、流体混合処理時の騒音や振動が小さくなれば、例えば病院など、静粛性等が要求されるような場所への設置が可能になる。」

2d「【0071】また、静止型流体混合装置の前記流入口に、固体と液体とが混合された状態の固液混合流体を供給する固液混合流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型固液混合装置として用いることができる。
【0072】固液体混合流体としては、例えば、フコイダンを含有する褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、アルギン酸を含む昆布、ひじきあるいはモズクなどの褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、β-グルカンを含むきのこ類を固形物として含む固液体混合流体や、ジンセノサイドを含む高麗人参や田七人参を固形物として含む固液体混合流体や、アリインおよび/またはアリシンを含むにんにくを固形物として含む固液体混合流体や、イソフラボンを含む大豆を固形物として含む固液体混合流体や、ジンゲロールを含む生姜を固形物として含む固液体混合流体や、アロインを含むアロエを固形物として含む固液体混合流体や、クルクミンを含むウコンを固形物として含む固液体混合流体や、その他の野菜や果物を固形物として含む固液体混合流体や、粉末などの微粒子と水とからなる固液体混合流体など、種々の流体を挙げることができる。
【0073】このような固液体混合流体を静止型固液混合装置で処理すると、フコイダンなどの上記成分を効率よく抽出することができる。
【0074】本発明に係る静止型固液混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって、固体粒子などの固体成分および水などの液体成分を微細化して両者を均一に混合させることができ、分散させることができる」

2e「【0076】〔第1実施形態の静止型流体混合装置〕
まず、第1実施形態の静止型流体混合装置について、図1?図8を参照しながら詳細に説明する。
【0077】図1に示すように、第1実施形態の静止型流体混合装置10は、処理対象の流体について混合処理を施す流体混合器11と、同流体混合器11の流体導入口11aに接続した流体導入管13と、流体混合器11の流体導出口11bに接続した流体導出管14とを備えている。そして、流体導入管13の中途部には流体混合器11に処理流体を供給する第1ポンプ12を設けている。このようにして、第1ポンプ12で流体導入管13を通して流体を流体混合器11に導入し、同流体混合器11で混合処理を施すことができるようにしている。また、混合処理が施された流体は流体導出管14から導出できるようにしている。
【0078】また、静止型流体混合装置10の流体導入管13には第1三方弁13aを介して流体戻り管15の一端を接続する一方、流体導出管14には第2三方弁14aを介して流体戻り管15の他端を接続している。そして、流体戻り管15の中途部には、第2三方弁14aで回収した流体を第1三方弁13aの位置に戻すように供給するための第2ポンプ16を設けている。
【0079】従って、第2ポンプ16が設置された流体戻り管15を使用することによって、同じ流体を繰り返し流体混合器11に供給して混合処理することができる。
【0080】このようにして、流体成分をより超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)できると共に均一な大きさに微細化することができる。
【0081】図2に示すように、流体混合器11は、両端が開口している円筒形状のケーシング本体21を有する。ケーシング本体21の両端の各開口部にはフランジ21a、21bが形成されており、各フランジ21a、21bにケーシング本体21の蓋体22、23が着脱自在に取り付けられている。各蓋体22、23には、静止型流体混合装置10の被処理流体(以下、単に流体と称することがある)の出入口である開口22a、23aが形成されている。
【0082】本実施形態では、図2において左側に位置する蓋体22の開口を流体導入口22aとして用いる一方、右側に位置する蓋体23の開口を流体導出口23aとして用いている。ここで、本実施形態では、図2に示すように、流体Rがケーシング本体21内を左側の上流側である流体導入口22a側から右側の下流側である流体導出口23aに流動するようにしている。
【0083】そして、ケーシング本体21内には、流体Rに混合処理を施す複数組(本実施形態では5組)の混合ユニット24をケーシング本体21の軸線方向に沿って間隔を開けて配置することで収容している。この際、ケーシング本体21の内周面と各混合ユニット24の外周面とは、隙間のない密着状態となしている。
【0084】図3に示されるように、各混合ユニット24は、いずれも同様の構造であり、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2混合エレメント30、40を備えている。2枚の第1・第2混合エレメント30、40のうち、流体導入口側(上流側)に配置される第1混合エレメント30は、円板状のエレメント本体31の中央部に、流体R(図2等において矢印で示す)の流入口32が貫通状態で形成されている。
【0085】そして、エレメント本体31の外周縁部には、全周に亘って肉厚の周壁部33が下流側に突出状に形成されて、エレメント本体31と周壁部33とにより、下流側に向けて円形の開口を有する凹み部34が形成され、同凹み部34内に円板状の空間が形成されている。なお、符号「31a」は、エレメント本体31の流体導入口22a側に向けられる上流側面であり、符号「31b」は、エレメント本体31の流体導出口23a側に向けられる下流側面(第2混合エレメント40と対向する側の面)である。
【0086】図4に示されるように、エレメント本体31の下流側面31bには、開口形状が正六角形の凹部35が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部35が形成されている。なお、符号「36」は、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40をねじ留めにより固定する際に用いられるねじ用の挿通孔である。
【0087】図3および図5に示されるように、2枚の混合エレメントのうち、流体導出口側(下流側)に配置される第2混合エレメント40は、第1混合エレメント30よりも小径である。そして、第2混合エレメント40の直径は、第1混合エレメント30の凹み部34の直径よりも小径であり、凹み部34に第2混合エレメント40が対面状態に嵌入されて配置される。
【0088】また、第2混合エレメント40の、第1混合エレメント30との対向面、すなわち流体導入口22a側に向けられる上流側面(第1混合エレメントと対向する面)40aには、第1混合エレメント30のエレメント本体31と同様に、開口形状が正六角形の凹部41が隙間のない状態で複数形成されている。そして、上流側面とは反対の下流側面40bの面には、3つの円柱状の突起42が下流側に突出状に形成されている。なお、符号「43」は、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40をねじ留めにより固定する際に用いられる雌ねじが形成されたねじ穴である。
【0089】そして、両混合エレメント30、40は、図6および図7に示されるような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1混合エレメント30の凹み部34内に、第2混合エレメント40を対面状態に配置する。このとき、第1混合エレメント30の下流側面31bのハニカム状の多数の凹部35の開口面と、第2混合エレメント40の上流側面40aのハニカム状の多数の凹部41の開口面とが対面状態に当接するように、第2混合エレメント40の向きを定める(図7参照)。第2混合エレメント40をこの向きに向けると、突起42が形成された面が外から見える状態になる(図6参照)。この状態で、第1混合エレメント30の挿通孔36と、第2混合エレメント40のねじ穴43の位置を整合させてねじ44でねじ止めして組み付ける。
【0090】図6に示されるように、第2混合エレメント40の直径は、第1混合エレメント30の凹み部34の直径よりも小径に形成されている。ただし直径の違いは僅かである。
【0091】従って、両混合エレメント30、40を組み付けると、第1混合エレメントの周壁部33の内周面33aと第2混合エレメント40の外周端面40cとの間に、第2混合エレメント40の外周端面に沿って全周に亘りリング状の間隙が環状流出路24aとして形成され、同環状流出路24aの下流側に位置する終端開口部が流体Rの流出口であり、下流側に向けてリング状に開口されている。
【0092】そして、第1混合エレメント30の流入口32に供給された流体Rは、後述する混合流路25(図2参照)を通過した後、この流出口から放出される。環状流出路24aの流出幅tは、全周にわたって略一定間隔(略均等幅)に形成されており、例えば、第2混合エレメント40の半径の20分の1前後(もっと具体的には1.5mm前後)の幅で形成される(図8参照)。
【0093】このように、第2混合エレメント40の外周に全周に亘る環状流出路24aの流出口を略均等幅に形成すると、全周に亘って流体Rを略均等に流出させることができるため、流出口から流出される流体Rの圧力にばらつきが発生しにくくなり、混合ユニット24の外周部の位置によって流体の流出量に偏りが生ずるような不具合が防止される。流出量の偏りが防止されれば、流路抵抗が低下し、また局所的に流体Rの圧力が高圧になる場所が生ずることが防止される。
【0094】また、本実施形態では、環状流出路24aの大きさ、すなわち間隙の幅tが全周に亘って略均等になっている。これにより、より確実に流路抵抗を低下させることができて、局所的高圧領域の発生、特に環状流出路24a近傍における局所的高圧領域の発生を防止できる。
【0095】ここで、各混合エレメント30、40の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部35、41の相互関係について説明する。
【0096】図8に示されるように、両混合エレメント30、40の当接面は、第1混合エレメントの凹部35の中心位置に、第2混合エレメント40の凹部41の角部41aが位置する状態で当接している。
【0097】このような状態で当接させると、第1混合エレメント30の凹部35と第2混合エレメント40の凹部41との間で流体Rを流動させることができる。また、角部41aは3つの凹部41の角部41aが集まっている位置である
【0098】従って、例えば、第1混合エレメント30の凹部35側から第2混合エレメント40の凹部41側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、2つの流路に分流されることになる。
【0099】つまり、第1混合エレメント30の凹部35の中央位置に位置された第2混合エレメント40の角部41aは、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2混合エレメント40側から第1混合エレメント30側に流体Rが流れる場合を考えると、2方から流れてきた流体Rが1つの凹部35に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2混合エレメント40の中央位置に位置された角部41aは、合流部として機能する。
【0100】また、第2混合エレメント40の凹部41の中心位置にも、第1混合エレメント30の凹部35の角部35aが位置する。この場合は、第1混合エレメント30の角部35aが上述した分流部や合流部として機能する。
【0101】このように、相互に対向状態に対面配置された両混合エレメント30、40の間には、中央の流入口32から両混合エレメント30、40(ケーシング本体21)の軸線方向に供給された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両混合エレメント30、40の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する混合流路25(図2参照)が形成されている
【0102】この混合流路25を流体Rが流動する過程で、同流体Rに混合処理が施される。そして、混合流路25を通過した流体Rは、その後、混合ユニット24の背面側外周部に下流側に向けてリング状に開口した環状流出路24aの流出口から混合ユニット24の外部に流出される。
【0103】図2に示されるように、本実施形態の流体混合器11では、ケーシング本体21内に5つの混合ユニット24が設置されている。複数の混合ユニット24を設置すると、上流側に位置する混合ユニット24の第2混合エレメント40の突起42が下流側に設置された混合ユニット24の第1混合エレメント30の(エレメント本体31の)上流側面31aに当接する。
【0104】これにより、隣接して配置される混合ユニット24、24とケーシング本体21とにより形成される円板状の流路形成用空間Sが確保され、環状流出路24aの流出口から流出した流体を、流路形成用空間Sを通して下流側の混合ユニット24の流入口32に流す集合流路26が確保される。
【0105】このようにして、流路形成用空間S内には混合流路25を通過した流体Rが、略均等幅でリング状に開口する流出口の全周から拡径状の流路形成用空間S内に流出されるようにしている。このように、略均等幅の流路から拡径された流路に流体Rが流出されるようにしているため、大幅な圧力損失低減効果が得られる。
【0106】なお、最も下流側に配置された混合ユニット24の第2混合エレメント40の突起42は、ケーシング本体21の下流側の蓋体23に当接する。
【0107】これにより、混合ユニット24と蓋体23とケーシング本体21とにより形成される流路形成用空間Sが確保され、最下流側の混合ユニット24の環状流出路24aから流出した流体Rを、流路形成用空間Sを通してケーシング本体21の下流側の流体導出口23aに流す集合流路26が確保される。
【0108】この静止型流体混合装置10を用いて流体Rに混合処理を施す場合について説明する。ここでは、静止型流体混合装置10を気液混合流体に混合処理を施す静止型気泡発生装置として用いる場合を例に説明する。
【0109】静止型流体混合装置10を静止型気泡発生装置として用いる場合、静止型流体混合装置10の流体導入口11aに気液混合流体供給管としての流体導入管13を接続している。ここでは、水と空気の気液混合流体を供給する場合について説明する。
【0110】まず、図1に示したキャビテーションポンプである第1ポンプ12を作動させて、処理対象の流体Rを気体である空気と液体である水とが混合された状態の気液混合流体にして、流体混合器11の流体導入口11aに供給する。
【0111】すると、図2に示されるように、流体混合器11に供給された気液混合流体は、ケーシング本体21内の最も上流側に配置された第1混合ユニット24の第1混合エレメント30の流入口32に流入され、第1混合ユニット24の混合流路25に送られる。
【0112】混合流路25に送られた気液混合流体は、ここで分流と合流を繰り返しつつ、混合ユニット24の外周側に形成された環状流出路24aに流れる。つまり、分流と合流を繰り返す過程で蛇行しながら流動するので、概略的には、円板形状の混合ユニット24の中心から外周側に放射状に広がる方向に流動しつつ、分流と合流を繰り返し、その過程で気液混合流体に混合処理が施される。この際、気液混合流体内の空気が微細(ナノレベルから数μmレベルまで)かつ均一な大きさの気泡が生成される。
【0113】第1混合ユニット24の環状流出路24aから流出した流体は、第1混合ユニット24と、その下流に配置された第2混合ユニット24との間の集合流路26を流れて、第2混合ユニット24の流入口32に送られる。なお、各混合ユニット24における流体Rの流れは、いずれも、第1混合ユニット24における流体Rの流れと同様であるので、その説明については省略するが、混合ユニット24を複数設置して、分流と合流を繰り返すことによって、より確実に流体混合処理が施され、より微細で均一な大きさの気泡を流体内に生成することができるようになる。
【0114】また、次のようにしてもよい。図1において、流体混合器11の流体導出口11bから導出された流体が戻り管15に流れ込むように、第2三方弁14aの開閉状態を操作すると共に、戻り管15の流体が流体導入管13に流れ込むように第1三方弁13aの開閉状態を操作する。
【0115】そして、第2ポンプ16を作動させて流体を循環的に流体混合器11に送り込むようにする。このようにすると、流体混合処理回数を適宜増大させることができるため、さらに確実に流体混合処理が施されて、さらに超微細で均一な所望の大きさの気泡を流体R内に生成することができる。
【0116】さらに、必要に応じた時間だけ循環させた後、三方弁13a、14aを操作して、処理流体を流体導出管14から導出させる。
【0117】ここで、分流総数は、各混合エレメント30、40に形成した凹部35、41の数と、流体混合器11のケーシング本体21内に設置された混合ユニット24の数と、流体混合器11に何回循環させるかという繰り返し回数とによって決定される。
【0118】例えば、凹部35、41が平面視六角形状の開口を有するものであれば、凹部の室数が12室、18室、18室(計48室)の3列状の第1混合エレメント30と、室数が15室、15室(計30室)の2列状の第2混合エレメント40とを重合させた場合では、合計した分流総数は千五百回?千六百回にも達することになる。なお、ここでいう分流総数とは、第1混合エレメント30と第2混合エレメント40の間に形成された混合流路25の分流部において分流される数のことである。」

2f「【0241】また、静止型流体混合装置の前記流入口32に、固体と液体とが混合された状態の固液混合流体を供給する固液混合流体供給管としての流体導入管13を接続することで、静止型流体混合装置を静止型固液混合装置として用いることができる。
【0242】固液体混合流体としては、例えば、フコイダンを含有する褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、アルギン酸を含む昆布、ひじきあるいはモズクなどの褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、β-グルカンを含むきのこ類を固形物として含む固液体混合流体や、ジンセノサイドを含む高麗人参や田七人参を固形物として含む固液体混合流体や、アリインおよび/またはアリシンを含むにんにくを固形物として含む固液体混合流体や、イソフラボンを含む大豆を固形物として含む固液体混合流体や、ジンゲロールを含む生姜を固形物として含む固液体混合流体や、アロインを含むアロエを固形物として含む固液体混合流体や、クルクミンを含むウコンを固形物として含む固液体混合流体や、その他の野菜や果物を固形物として含む固液体混合流体や、粉末などの微粒子と水とからなる固液体混合流体など、種々の流体を挙げることができる。
【0243】静止型固液混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって、固体粒子などの固体成分および水などの液体成分を微細化して両者を均一に混合させることができ、固体成分を分散させることができる。」

2g「







(3)刊行物3
3a「1.1.1 抽出
抽出はある化合物が互いに混ざりにくい(非混和性)2相間に分配する現象を利用する分離法であり、古くから、沈殿、結晶化、蒸発とともに主要な物質分離法として用いられている.固相-液相間、液相-液相間および気相-液相間の抽出があり、いずれも液相へ抽出するので溶媒抽出ともいわれる. ・・・・・
c.微量物質の固-液抽出
固-液抽出法は、固体試料中の特定成分だけを適当な溶媒中に選択的に溶出させるものである.
(i)バッチ抽出法:・・・・固体試料は液との接触をよくするためにできるだけ細かく粉砕または切断し、適当な溶媒に浸して、低温又は室温下で静置または攪拌するか、煮沸乾留する.」(6頁1?5行、11頁下から6行?12頁4行)

(4)刊行物4
4a「11.3 固体抽出
・・・・・
固体抽出とは液体抽剤を用いて固体中の有用成分を物理的に、あるいは化学反応を利用して溶出させる操作をいう.・・・固体抽出に際しては、抽出速度を上げるために固体原料の粉砕、フレーキングなどの前処理が一般的に行われている。」(751頁15行?752頁2行)

3 刊行物1に記載された発明

刊行物1の請求項1には、「下記工程(a)?(c)を含むノビレチンの製造方法。
(a)柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する工程
(b)前記工程(a)で得られた抽出液を多孔性吸着樹脂に通液する工程
(c)前記多孔性吸着樹脂に吸着したノビレチンを溶出する工程」(1a)が記載されている。

したがって、刊行物1には、
「(a)柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する工程
(b)前記工程(a)で得られた抽出液を多孔性吸着樹脂に通液する工程
(c)前記多孔性吸着樹脂に吸着したノビレチンを溶出する工程
を含むノビレチンの製造方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4 本願発明と引用発明との対比

(1)本願発明について
ア 本願発明の「ナノメートルオーダーまで微細化して」について
本願発明の「ナノメートルオーダーまで微細化して」とは、「微細化したものにナノメートルオーダーのものが含まれるまで微細化すること」を意味するものとする。なお、このことは平成28年6月13日付け意見書における請求人の主張とも整合する。

イ 本願発明の「使用した前記溶媒を循環させて」について
本願発明の「使用した前記溶媒を循環させて」とは、文言どおり解釈される、ノビレチンを抽出して含有している溶媒を循環させることを意味するものする。なお、このことも平成28年6月13日付け意見書における請求人の主張とも整合する。

(2)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「柑橘類」は、ノビレチンを含む食品であり(1b【0002】)、ノビレチンの抽出原料であるから、本願発明の「ノビレチンを含む食品から成る原料」に相当する。
イ 引用発明の「(a)柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する」ことは、ノビレチンを含んでいる柑橘類を抽出溶媒である0?40容量%のエタノール水溶液で抽出処理することである。この抽出処理は、抽出溶媒に抽出原料を浸漬、常温等で抽出後濾過し残渣を除去することであり(1c【0010】)、この抽出処理を経て最終的にノビレチンを製造していることから、抽出原料の柑橘類を0?40容量%エタノール水溶液の溶媒中で処理しノビレチンを溶媒中に抽出しているといえる。
そうすると、前記(1)で述べたことを踏まえると、本願発明の「ノビレチンを含む食品から成る原料を0%?30%エタノール水溶液から成る溶媒中でナノメートルオーダーまで微細化して、前記ノビレチンを前記溶媒中に抽出し」と、引用発明の「(a)柑橘類をエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液で抽出する」とは、ノビレチンを含む食品から成る原料を0%?30%エタノール水溶液から成る溶媒中で処理して、前記ノビレチンを前記溶媒中に抽出する点で共通する。

そうすると、両者は、
「ノビレチンを含む食品から成る原料を0%?30%エタノール水溶液から成る溶媒中で処理して、前記ノビレチンを前記溶媒中に抽出する、ノビレチンの製造方法」
ある点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:ノビレチンを含む食品から成る原料の0%?30%エタノール水溶液から成る溶媒中での処理につき、本願発明では、該原料をナノメートルオーダーまで微細化するのに対し、引用発明では、該原料をナノメートルオーダーまで微細化していない点
相違点2:ノビレチンを溶媒中に抽出する際、本願発明では、使用した溶媒を循環させているのに対し、引用発明では、使用した溶媒を循環させていない点

5 判断

(1)相違点について
ア 相違点1について
刊行物1は、柑橘類から高収率でノビレチンを抽出することが示唆されているものであるから(1b【0006】)、引用発明の「ノビレチンの製造方法」には、柑橘類から高収率でノビレチンを抽出しようという動機付けがあるものと認められる。

一般に、固体原料中の有用物質を溶媒中へ溶出させる抽出方法において、有用物質を溶媒中へ効率的に溶出させる手段として、固体原料と溶媒との接触を良くするために固体原料をできるだけ細かく粉砕又は切断して溶媒に浸漬することは、刊行物3の「固-液抽出法・・固体試料は液との接触をよくするためにできるだけ細かく粉砕または切断し、適当な溶媒に浸して、低温又は室温下で静置または攪拌する・・」(3a)との記載や、刊行物4の「固体抽出に際しては、抽出速度を上げるために固体原料の粉砕・・などの前処理が一般的に行われている」(4a)との記載から理解されるように、本願優先日時点で周知技術であったといえる。

刊行物2には、「・・固体と液体、を超微細化かつ均一化して混合する静止型流体混合装置」(2a請求項1、8、2b、2g図1?8)、「固体と液体とが混合された・・固液混合流体を供給・・することで、静止型流体混合装置を静止型固液混合装置として用いることができる」(2d【0071】)、「野菜や果物を固形物として含む固液体混合流体・・このような固液体混合流体を静止型固液混合装置で処理すると・・成分を効率よく抽出することができる」(2d【0072】、【0073】)、「・・静止型固液混合装置によれば・・固体成分および・・液体成分を微細化して両者を均一に混合させることができる」(2d【0074】)及び「流体成分をより超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)できると共に均一な大きさに微細化することができる」(2e【0080】)と記載されている。
これらの記載より、刊行物2には、効率的な固体微細化手段として、果物等を固形物として含む固液体混合流体を超微細化かつ均一化して混合処理する静止型固液混合装置を用いて固液体混合流体を混合処理し得ること、及び、この混合処理により「流体成分」すなわち固液体混合流体成分をより超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)でき、成分を効率よく抽出できることが示されているといえる。この混合処理により固液体混合流体成分はナノレベルから数μmレベルまで超微細化されることから、この超微細化は、微細化したものにナノメートルオーダーのものが含まれるまで微細化することと理解される。

そうすると、引用発明において、高収率でノビレチンを抽出することが動機付けられているところ、固体原料の微細化が効率的な抽出手段であることが技術常識であったことを踏まえると、そのような効率的な固体微細化手段として、刊行物2記載の固液体混合流体を超微細化して混合処理する静止型固液混合装置を適用し、原料と溶媒とを混合処理して微細化したものにナノメートルオーダーのものが含まれるまで微細化すること、すなわち、原料をナノメートルオーダーまで微細化することは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
刊行物2には、さらに「第2ポンプ16が設置された流体戻り管15を使用することによって、同じ流体を繰り返し流体混合器11に供給して混合処理することができる」(2e【0079】)及び「・・このようにすると、流体混合処理回数を適宜増大させることができるため、さらに確実に流体混合処理が施され」(2e【0115】)ることが記載されている。
これらの記載より、固体と液体を微細化かつ均一化して混合する静止型固液混合装置(2a 請求項1、8、2b、2g図1?8)を用い、同じ固液体混合流体を循環させて混合処理することができること、それにより流体混合処理回数を増大させることができるため、さらに確実に流体混合処理が施されることが示されているといえる。
そうすると、アで述べた、引用発明において、効率的固体微細化手段として、刊行物2記載の固液体混合流体を超微細化して混合処理する静止型固液混合装置を使用し原料と溶媒とを混合処理する際、さらに確実に流体混合処理が施されノビレチン含有物を効率的に取得できるよう、同じ固液体混合流体すなわちノビレチンを抽出し含有しているエタノール水溶液を循環させて混合処理することに格別の困難性はない。

(2)効果について
本願発明の効果は、本願明細書の段落【0019】に記載されるように、ノビレチン及び関連成分を短時間で抽出可能で、抽出コストを低減できるノビレチンの製造方法を提供できることである。
しかしながら、刊行物1には、「【発明の効果】【0006】柑橘類の抽出溶媒としてエタノール濃度が0?40容量%のエタノール水溶液を使用することにより柑橘類から高収率でノビレチンを抽出することができる」(1b)、さらに「【0010】抽出処理は・・例えば・・常温・・で抽出し・・ノビレチンを含有する抽出液を得ることができる」(1c)と記載されていることから、引用発明は、室温で行い得るものである。そうすると、ノビレチンを高収率で抽出するのに必ずしも加熱抽出する必要はなく、加熱抽出をしないことによるコストの低減は、当業者の予測し得る効果である。
また、前記(1)アで述べたように、固体原料の微細化は効率的抽出手段であるから、引用発明に効率的固体微細化手段として刊行物2記載の静止型固液混合装置を適用した方法は、ノビレチンを効率的に抽出し得るので、時間的にも短時間でなし得ると予測される。
さらに、引用発明の抽出工程では原料として柑橘類を用いており、抽出液にはノビレチンのみならず関連成分も含まれていると考えられるから、引用発明の抽出処理で得られるノビレチンを含有する抽出液がノビレチンや関連成分の効果効能を得ることができることも予測し得る効果である。
したがって、本願発明の効果は、刊行物1の記載及び周知技術から予測される効果であり、格別顕著なものとはいえない。

6 まとめ

したがって、本願発明は、その優先日前に頒布された刊行物1、2記載された発明及び本願優先日時点の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-05 
結審通知日 2016-09-06 
審決日 2016-09-21 
出願番号 特願2011-168742(P2011-168742)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増山 慎也  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齊藤 真由美
瀬良 聡機
発明の名称 ノビレチンの製造方法  
代理人 楠 修二  
代理人 須田 篤  
代理人 須田 篤  
代理人 楠 修二  

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