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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1321053
審判番号 不服2015-14199  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-28 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2011-120953「電力供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-249476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年5月30日の出願であって、平成26年12月12日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年2月16日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年7月28日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成28年6月3日付けで拒絶理由の通知をしたところ、平成28年8月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年8月8日にされた手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、同手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「 分散電源の発電電力と、蓄電池の蓄電電力と、商用電力系統から供給される商用電力とを分電盤を介して機器へ供給する電力供給システムであって、
前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズムと、
前記余剰電力を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させる余剰売電モード、前記分散電源の発電電力の全量を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給するピークアシストモードの各モードを有する第2のアルゴリズムと
を切替可能に実行するコントローラを備える
ことを特徴とする電力供給システム。」

第3 引用した出願

1.これに対して、当審における平成28年6月3日付けで通知した拒絶の理由2に引用した、本願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2010-134980号(特開2012-5168号公報参照)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
(ア)「【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの全体構成図である。
【図2】エネルギーマネジメントシステムの全体構成図である。」
(イ)「【0030】
本実施形態に係る発電システム及び電力貯蔵システムを利用したエネルギーマネジメントシステムS(以下「エネルギーマネジメントシステムS」という)は、図1及び図2に示すように、太陽光発電システム1(発電システム)と、蓄電池システム2(電力貯蔵システム)と、充放電制御手段としてのホームサーバ3と、運転モード選択手段としてのモニタ4と、電力検出手段としてのCTセンサ5,15と、分電盤6と、を含んで構成されている。」
(ウ)「【0031】
太陽光発電システム1は、発電手段としての太陽電池(太陽電池モジュール)10、太陽電池用パワーコンディショナ(PCS)11等を有しており、商用電力系統と連系し、太陽光のエネルギーにより発電した電力を建物内の負荷7へ供給する。
本実施形態では、発電手段として太陽光発電システム1を用いたが、その他の自然エネルギーを利用した発電システム、例えば、風力発電システム、水力発電システム等を用いることもできる。
【0032】
太陽電池用パワーコンディショナ11は、主として、昇圧回路12、太陽電池10で発電した直流電力を交流電力に変換するDC-ACインバータ13、連系保護装置14等を有しており、太陽電池10の発電電力を交流電力に変換して建物内の配電線に送り、建物内の負荷7に電力を供給する。また、太陽電池用パワーコンディショナ11は太陽電池10の発電電力を電力系統へ逆潮流する逆潮流機能を備えており、余剰電力が発生した場合には電力会社の配電線へ逆潮流して売電する。太陽電池用パワーコンディショナ11は、系統電圧とインバータ出力電圧の電位差によって系統に電圧を供給する。」
(エ)「【0033】
蓄電池システム2は、蓄電手段としての蓄電池20、蓄電池20の充放電制御を行う蓄電手段制御部としての制御部21、通信インタフェース22、蓄電池用パワーコンディショナ(PCS)25等を有しており、太陽光発電システム1が発電した電力及び商用電力系統から供給された電力を充電して蓄え、または、蓄えた電力を放電して建物内の負荷7へ供給する。
【0034】
制御部21は、本実施形態における蓄電手段制御部であり、蓄電池20の蓄電残量を検出したり、検出した蓄電残量と後述するホームサーバ3からの充放電信号に基づいて蓄電池20の充放電動作制御を行う。制御部21はまた、時間を測定するタイマ機能を有している。通信インタフェース22は、制御部21とホームネットワーク100との接続制御とデータ送受信を行う。なお、本実施形態においては、蓄電池20、制御部21、通信インタフェース22は、共に蓄電池キャビネットに収容されている。
【0035】
蓄電池用パワーコンディショナ25は、主として、双方向インバータ26、及び不図示の昇圧回路や連系保護装置等を有している。双方向インバータ26は、電力系統から受電点(不図示)を介して供給された交流電力や太陽電池10から供給された電力を直流電力に変換して蓄電池20へ蓄電したり、蓄電池20が放電する直流電力を交流電力に変換して放電し、建物内の負荷7へ供給したりする。」
(オ)「【0036】
本実施形態の充放電制御手段としてのホームサーバ3はホームゲートウェイであり、ホームネットワーク100(図1及び図2における破線)に接続された各電気機器の異なるプロトコル間をまたいで、アドレス変換やデータの載せ換え等を行って機器間の通信を可能とするとともに、ホームネットワーク100とインターネット102間の接続を行う。ホームサーバ3はさらに、ホームネットワーク100に接続された各電気機器の制御やインターネット102からホームネットワーク100へのアクセス時の認証等を行うサーバ機能、及び各機器から取得した情報やウェブデータ等の蓄積を行う蓄積機能を有している。ホームサーバ3はインターネット102を介して建築メーカー等のセンターサーバ110に接続されている。」
(カ)「【0042】
運転モード選択手段としてのモニタ4は、本実施形態ではタッチパネルディスプレイを用いたエネルギーマネジメントシステムS専用のモニタである。ユーザは、モニタ4を運転モード選択表示に切換えて、表示されている運用モードのうち、選択したい運用モードをタッチすることにより、エネルギーマネジメントシステムSの運転モードの選択入力を行う。モニタ4は運転モードの選択を受け付けて、選択された運転モードに関する情報をホームネットワーム100を介してホームサーバ3に送信する。
【0043】
本発明のエネルギーマネジメントシステムSでは、太陽光発電システム1の発電電力をどのように運用するかを、ユーザがライフスタイルに応じて選択できることを特徴としている。本実施形態においては、運転モードとして、太陽光発電システム1の発電電力の売電を優先させるモード(以下、「売電優先モード」という)と、太陽光発電システム1の発電電力の負荷への供給を優先させるモード(以下、「地産地消モード」という)の2つのモードが選択可能である。そして、充放電制御手段としてのホームサーバ3を用いて、選択された運転モードに応じて、太陽光発電システム1の発電電力と、蓄電池システム2の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するための制御を行う。」
(キ)「【0044】
なお、本実施形態では、売電優先モード選択時に負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)蓄電池20の放電電力、(2)太陽電池10の発電電力、(3)系統電力、の順としている。すなわち、蓄電池20に蓄電残量がある場合は蓄電池システム2の放電電力を供給し、蓄電池20の放電出力で足りない場合には太陽光発電システム1の発電電力を供給し、それでも足りない場合には系統電力を供給する。このような優先順位で負荷に電力を供給することで、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量よりも大きい場合には太陽電池10の発電電力は全て余剰電力となる。また、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量より不足している場合でも、太陽電池10の発電量がその不足する消費電力量より大きい場合には、太陽電池10から負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となる。この余剰電力は、売電優先モード選択時には、太陽電池用パワーコンディショナ11の逆潮流機能により系統へ売電される。
【0045】
また、本実施形態では、地産地消モード選択時に負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)太陽電池10の発電電力、(2)蓄電池20の放電電力、(3)系統電力、の順としている。すなわち、太陽電池10が発電している場合は太陽光発電システム1の発電電力を供給し、太陽電池10の発電電力で足りない場合には蓄電池システム2の放電を供給し、それでも足りない場合には系統電力を供給する。また、後述するように、地産地消モード選択時は、太陽電池10の発電量が負荷の消費電力量よりも大きい場合にはその余剰電力を蓄電池20に充電するよう制御が行われるため、上記優先順位で負荷に電力を供給することで、余剰電力は先ず蓄電池20に充電され、次に系統に売電される。」
(ク)「【0049】
分電盤6は、建物の電灯やコンセント等に系統電力を供給する電力使用回路を有し、ブレーカを介して配電線を各負荷7へ接続する。各負荷7は、例えば、電灯、共有コンセント、電気自動車給電装置等の電気機器である。」
(ケ)「【0052】
ホームサーバ3のCPU31は、蓄電池20の充放電を制御するための充放電制御処理を行う。CPU31による充放電制御処理の処理フローについて、図4及び図5を用いて説明する。なお、充放電制御処理は、CPU31により常時繰り返し実行される。
CPU31は、負荷側に設けられたCTセンサ5から負荷全体の消費電力量を取得し(ステップS1)、太陽電池10側に設けられたCTセンサ15から、太陽電池10の発電量を取得する(ステップS2)。次に、HDD34を参照して記憶されている運転モード情報を取得し(ステップS3)、選択されている運転モードを判定する(ステップS4)。選択されている運転モードが売電優先モードの場合(ステップS4;売電優先)、夜間電力時間帯か否かを判定する(ステップS5)。夜間電力時間帯である場合(ステップS5;Yes)、充電信号を蓄電池システム2の制御部21へ送信する(ステップS6)。一方、夜間電力時間帯でない、すなわち昼間電力時間帯の場合(ステップS5;No)、放電信号を制御部21へ送信し(ステップS6)、処理を終了する。
【0053】
選択されている運転モードが地産地消モードの場合(ステップS4;地産地消)、太陽電池10の発電量と負荷の消費電力量を比較する(ステップS11)。太陽電池10の発電量が負荷の消費電力量と同じか上回っている場合(ステップS11;Yes)、蓄電池20の充電が必要か否か、すなわち、蓄電池20が満充電か否かを判定し(ステップS12)、満充電でない場合(ステップS12;No)、充電信号を蓄電池システム2の制御部21へ送信し(ステップS13)、処理を終了する。蓄電池20が満充電の場合(ステップS12;Yes)、蓄電池20の制御機能により蓄電池20は充電を受け付けないよう制御されているため、ホームサーバ3では特に処理を行わずに本処理を終了する。
【0054】
一方、負荷の消費電力量が太陽電池10の発電量を上回っている場合(ステップS11;No)、不足する電力量、すなわち消費電力量と発電量の差分を算出し(ステップS14)、不足電力量と放電信号を蓄電池システム2の制御部21へ送信し(ステップS15)、処理を終了する。なお、この不足電力量は、蓄電池20から負荷へ供給する必要がある電力量、すなわち必要放電量である。
【0055】
蓄電池システム2の制御部21は、上記の充放電制御処理においてホームサーバ3から送信された充放電信号及び必要放電量に基づいて、蓄電池20の充放電を行う。必要放電量が送信された場合には、その値に基づいて必要量だけ放電するよう制御する。」
(コ)「【0056】
次に、各運転モードでの負荷供給電力について説明する。
本発明のエネルギーマネジメントシステムSでは、電圧の差による制御、すなわち、電気機器等を系統に連系する際に、電圧差を考慮して電気の流れを自然に制御するように系統連系されている。具体的には、蓄電池システム2,太陽光発電システム1,電力系統のそれぞれと負荷との間のケーブルの長さに関し、ケーブルの長さが短い(負荷からの距離が小さい)順に、蓄電池システム2,太陽光発電システム1,電力系統となるように系統連系されている。このような構成にすることより、これら全てが連系されている場合の負荷側への電力の供給は、蓄電池システム2の放電電力,太陽光発電システム1の発電電力,系統電力の順で行われる。
【0057】
さらに、後述するように、ホームサーバ3のCPU31及び蓄電池システム2の制御部21の制御により、負荷の消費電力量と太陽光発電システム1の発電量に基づいて不足している電力を蓄電池20から負荷へ供給するよう、蓄電池20の充放電を自動的に調整する機能を有している。」
(サ)「【0058】
1.「売電優先モード」が選択されている、且つ太陽光発電システム1が発電している場合。
売電優先モードで昼間電力時間帯の場合は、上記の通り充放電制御処理にて、ホームサーバ3から蓄電池システム2の制御部21へ放電信号が送信されている。放電信号を受信した蓄電池システム2の制御部21は、常に放電するよう蓄電池20に制御信号を送る。よって、蓄電池20の蓄電残量がある場合には、放電が行われる。
【0059】
本電力制御により、建物内の負荷へは、以下の通り電力が供給される。
(1)ホームサーバ3から蓄電池システム2の制御部21へ放電信号が送信されているため、制御部21により蓄電池20からの出力制御が行われ、負荷が必要な消費電力は先ず蓄電池20から放電され負荷へ供給される。
(2)蓄電池システム2の放電出力で不足する場合、太陽光発電システム1の発電電力が供給される。
(3)太陽光発電システム1の発電電力を加えても不足する場合には、商用電力系統からの系統電力が供給される。
【0060】
本電力制御において、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量よりも大きい場合には太陽電池10の発電電力は全て余剰電力となる。また、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量より不足している場合でも、太陽電池10の発電量がその不足する消費電力量より大きい場合には、太陽電池10から負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となる。この余剰電力は、売電優先モード選択時には、太陽電池用パワーコンディショナ11の逆潮流機能により系統へ売電される。」
(シ)「【0063】
4.「地産地消モード」が選択されている、且つ太陽光発電システム1が発電している場合。
地産地消モードの場合は、上記の通り充放電制御処理にて、消費電力量と発電量に応じてホームサーバ3から蓄電池システム2の制御部21へ充電信号、又は放電信号と必要放電量が送信されている。すなわち、発電量が消費電力量と同じか上回っている場合には、充電信号が送信されるため、蓄電池20からの負荷への電力供給は行われず、発電電力のみ負荷へ供給される。一方、消費電力量が発電量を上回っている場合には、放電信号と必要放電量が送信され、蓄電池20からは消費電力に対する発電電力の不足分の電力のみが負荷へ供給されるため、これにより、発電電力は全て負荷へ供給される。
【0064】
本電力制御により、建物内の負荷へは、以下の通り電力が供給される。
(1)太陽光発電システム1の発電電力が供給される。
(2)太陽光発電システム1の発電電力で不足する場合、ホームサーバ3から蓄電池システム2の制御部21へ放電信号が送信されるため、制御部21の制御により蓄電池20からの放電電力が供給される。
(3)蓄電池20の放電出力を加えても不足する場合には、商用電力系統からの系統電力が供給される。
本電力制御において、発電量が消費電力量を上回っている場合には、蓄電池20は充電を行うよう制御されているため、余剰電力は先ず蓄電池20に蓄電される。蓄電池20を充電してもさらに余剰電力が生じる場合は、系統に売電される。」
(ス)エネルギーマネジメントシステムの全体構成図である図1には、太陽光発電システム及び蓄電池システムは分電盤よりも商用電力系統側に接続されている態様が記載されている。

2.前記記載からみて、先願明細書等には、次の技術的事項が記載されている。
(a)前記記載事項(ウ)、(エ)からみて、太陽光発電システムの発電電力が前記太陽電池の発電電力であり、蓄電池システムの放電電力が前記蓄電池の放電電力であることは明らかであるから、さらに前記記載事項(イ)、(カ)、(ス)からみて、先願明細書等には次の技術的事項が記載されている。
「太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するエネルギーマネジメントシステムであって、太陽光発電システム及び蓄電池システムは、分電盤よりも商用電力系統側に接続されている。」
(b)前記記載事項(イ)、(カ)、(ケ)からみて、先願明細書等には次の技術的事項が記載されている。
「エネルギーマネジメントシステムは、充放電制御手段としてのホームサーバを含んで構成され、前記ホームサーバは、「売電優先モード」と「地産地消モード」の2つのモードのうちの選択された運転モードに応じて、太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するため、前記蓄電池の充放電を制御する。
(c)前記のとおり、太陽光発電システムの発電電力が前記太陽電池の発電電力であり、蓄電池システムの放電電力が前記蓄電池の放電電力であることは明らかであるから、さらに前記記載事項(キ)からみて、先願明細書等には次の技術的事項が記載されている。
「地産地消モード選択時に負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)太陽電池の発電電力、(2)蓄電池の放電電力、(3)系統電力、の順としており、前記太陽電池が発電している場合は前記太陽電池の発電電力を供給し、前記太陽電池の発電電力で足りない場合には前記蓄電池の放電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記太陽電池の発電電力が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合にはその余剰電力を前記蓄電池に充電する。」
「売電優先モード選択時に負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)蓄電池の放電電力、(2)太陽電池の発電電力、(3)系統電力、の順としており、前記蓄電池に蓄電残量がある場合は前記蓄電池の放電電力を供給し、前記蓄電池の放電電力で足りない場合には前記太陽電池の発電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には前記太陽電池の発電電力は全て余剰電力となり、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量より不足している場合でも、前記太陽電池の発電電力がその不足する消費電力量より大きい場合には、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となり、この余剰電力は、太陽電池用パワーコンディショナの逆潮流機能により系統へ売電される。」

3.これらのことから、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するエネルギーマネジメントシステムであって、
太陽光発電システム及び蓄電池システムは、分電盤よりも商用電力系統側に接続されており、
前記エネルギーマネジメントシステムは、充放電制御手段としてのホームサーバを含んで構成され、前記ホームサーバは、「売電優先モード」と「地産地消モード」の2つのモードのうちの選択された運転モードに応じて、太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するため、前記蓄電池の充放電を制御し、
前記地産地消モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)前記太陽電池の発電電力、(2)前記蓄電池の放電電力、(3)前記系統電力、の順としており、前記太陽電池が発電している場合は前記太陽電池の発電電力を供給し、前記太陽電池の発電電力で足りない場合には前記蓄電池の放電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記太陽電池の発電電力が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合にはその余剰電力を前記蓄電池に充電し、
前記売電優先モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)前記蓄電池の放電電力、(2)前記太陽電池の発電電力、(3)前記系統電力、の順としており、前記蓄電池に蓄電残量がある場合は前記蓄電池の放電電力を供給し、前記蓄電池の放電電力で足りない場合には前記太陽電池の発電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には前記太陽電池の発電電力は全て余剰電力となり、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量より不足している場合でも、前記太陽電池の発電電力がその不足する消費電力量より大きい場合には、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となり、この余剰電力が太陽電池用パワーコンディショナの逆潮流機能により系統へ売電される、
エネルギーマネジメントシステム。」

第4 対比

1.本願発明と先願発明を対比する。
(ア)先願発明の「太陽電池」、「商用電力」及び「負荷」は、それぞれ、本願発明の「分散電源」、「系統電力」及び「機器」に相当する。
先願発明において、前記太陽光発電システム及び前記蓄電池システムは、分電盤よりも前記商用電力系統側に接続されているから、前記太陽電池の発電電力、前記蓄電池の放電電力及び前記系統電力は、分電盤を介して前記負荷へ供給されると認められる。
そして、前記蓄電池の放電電力が当該蓄電池に蓄電された電力を放電したものであることは明らかであるから、先願発明の「分電盤」は、「分散電源の発電電力と、蓄電池の蓄電電力と、商用電力系統から供給される商用電力とを分電盤を介して機器へ供給する」点において、本願発明の「分電盤」と共通している。
そうすると、先願発明の「太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するエネルギーマネジメントシステムであって、太陽光発電システム及び蓄電池システムは、分電盤よりも商用電力系統側に接続されて」いる態様は、本願発明の「分散電源の発電電力と、蓄電池の蓄電電力と、商用電力系統から供給される商用電力とを分電盤を介して機器へ供給する電力供給システム」に相当する。
(イ)先願発明の「負荷の消費電力量」は、本願発明の「機器の使用電力」に相当する。そして、先願発明は、地産地消モード選択時であって、前記太陽電池の発電電力が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には、前記太陽電池の発電電力を前記負荷へ供給するとともに、その余剰電力を前記蓄電池に充電しており、この場合における前記余剰電力が前記太陽電池の発電電力から前記負荷の消費電力量を差し引いたものとなることは明らかである。
また、先願発明は、地産地消モード選択時であって、前記負荷へ供給する電力が前記太陽電池の発電電力で足りない場合、前記太陽電池の発電電力に加えて前記蓄電池の放電電力を前記負荷へ供給し、それでも足りない場合にはさらに前記系統電力を供給するが、この場合に前記太陽電池の発電電力から前記負荷の消費電力量を差し引いたものである前記余剰電力がないことは明らかである。
そうすると、先願発明の「前記地産地消モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)太陽電池の発電電力、(2)蓄電池の放電電力、(3)系統電力、の順としており、前記太陽電池が発電している場合は前記太陽電池の発電電力を供給し、前記太陽電池の発電電力で足りない場合には前記蓄電池の放電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記太陽電池の発電電力が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合にはその余剰電力を前記蓄電池に充電」する態様は、本願発明の「前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズム」に相当する。
(ウ)先願発明は、売電優先モード選択時であって、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には、前記蓄電池の放電電力を前記負荷に供給するとともに、前記太陽電池の発電電力の全てを系統へ売電する。そうすると、先願発明における、売電優先モード選択時であって前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合の制御は、本願発明の「ピークアシストモード」と、「分散電源の発電電力の全量を、商用電力系統に逆潮流させるように、蓄電池の蓄電電力を機器へ供給する」態様である点において共通する。
また、先願発明は、売電優先モード選択時であって、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量より不足する場合には、前記蓄電池の放電電力に加えて前記太陽電池の発電電力を前記負荷に供給するとともに、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りを系統へ売電する。そして、前記蓄電池の蓄電残量が0である場合、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りが前記太陽電池の発電電力から前記負荷の使用電力量を差し引いたものと等しくなることは明らかである。そうすると、先願発明における、売電優先モード選択時であって前記蓄電池の蓄電残量が0である場合の制御は、本願発明の「余剰売電モード」と、「(分散電源の発電電力から機器の使用電力を差し引いた)余剰電力を、商用電力系統に逆潮流させる」態様である点において共通する。
してみれば、先願発明の「売電優先モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)前記蓄電池の放電電力、(2)前記太陽電池の発電電力、(3)前記系統電力、の順としており、前記蓄電池に蓄電残量がある場合は前記蓄電池の放電電力を供給し、前記蓄電池の放電電力で足りない場合には前記太陽電池の発電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には前記太陽電池の発電電力は全て余剰電力となり、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量より不足している場合でも、前記太陽電池の発電電力がその不足する消費電力量より大きい場合には、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となり、この余剰電力が太陽電池用パワーコンディショナの逆潮流機能により系統へ売電される」態様と、本願発明の「前記余剰電力を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させる余剰売電モード、前記分散電源の発電電力の全量を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給するピークアシストモードの各モードを有する第2のアルゴリズム」とは、「前記余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様、前記分散電源の発電電力の全量を前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給する態様の各態様を有する」点において共通する。
(エ)先願発明のホームサーバは、直接的には、「売電優先モード」と「地産地消モード」の2つのモードのうちの選択された運転モードに応じて、前記蓄電池の充放電を制御しており、また、先願発明において、前記太陽電池の発電電力の系統への売電は太陽電池用パワーコンディショナの逆潮流機能により行われる。しかしながら、先願発明は、前記ホームサーバによる前記蓄電池の充放電の制御により、前記太陽電池の発電電力、前記蓄電池の放電電力及び前記系統電力の前記負荷への供給が制御され、前記売電が行われるか否かも前記ホームサーバによる前記制御に依存する。そうすると、先願発明の「ホームサーバ」と、本願発明の「コントローラ」とは、「前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズムと、前記余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様、前記分散電源の発電電力の全量を前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給する態様の各態様を有する第2のアルゴリズムとを切替可能に実行する」点において共通する。
してみれば、先願発明の「前記エネルギーマネジメントシステムは、充放電制御手段としてのホームサーバを含んで構成され、前記ホームサーバは、「売電優先モード」と「地産地消モード」の2つのモードのうちの選択された運転モードに応じて、太陽電池の発電電力と、蓄電池の放電電力と、系統電力とを負荷へ供給するため、前記蓄電池の充放電を制御し、
前記地産地消モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)前記太陽電池の発電電力、(2)前記蓄電池の放電電力、(3)前記系統電力、の順としており、前記太陽電池が発電している場合は前記太陽電池の発電電力を供給し、前記太陽電池の発電電力で足りない場合には前記蓄電池の放電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記太陽電池の発電電力が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合にはその余剰電力を前記蓄電池に充電し、
前記売電優先モード選択時に前記負荷へ供給する電力の優先順位は、(1)前記蓄電池の放電電力、(2)前記太陽電池の発電電力、(3)前記系統電力、の順としており、前記蓄電池に蓄電残量がある場合は前記蓄電池の放電電力を供給し、前記蓄電池の放電電力で足りない場合には前記太陽電池の発電電力を供給し、それでも足りない場合には前記系統電力を供給し、また、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量よりも大きい場合には前記太陽電池の発電電力は全て余剰電力となり、前記蓄電池の蓄電残量が前記負荷の消費電力量より不足している場合でも、前記太陽電池の発電電力がその不足する消費電力量より大きい場合には、前記太陽電池から前記負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となり、この余剰電力が太陽電池用パワーコンディショナの逆潮流機能により系統へ売電される」態様と、
本願発明の「前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズムと、
前記余剰電力を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させる余剰売電モード、前記分散電源の発電電力の全量を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給するピークアシストモードの各モードを有する第2のアルゴリズムと
を切替可能に実行するコントローラを備える」態様とは、
「前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズムと、
前記余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様、前記分散電源の発電電力の全量を前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給する態様の各態様を有する第2のアルゴリズムと
を切替可能に実行するコントローラを備える」点において共通する。

2.以上のことから、本願発明と先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「 分散電源の発電電力と、蓄電池の蓄電電力と、商用電力系統から供給される商用電力とを分電盤を介して機器へ供給する電力供給システムであって、
前記分散電源の発電電力を前記機器へ供給し、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力で前記蓄電池を充電し、前記余剰電力がない場合、前記蓄電池の蓄電電力を前記分散電源の発電電力とともに前記機器へ供給し、前記機器の使用電力から前記分散電源の発電電力および前記蓄電池が供給する電力を差し引いた不足電力は、前記商用電力系統から供給する第1のアルゴリズムと、
前記余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様、前記分散電源の発電電力の全量を前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給する態様の各態様を有する第2のアルゴリズムと
を切替可能に実行するコントローラを備える
電力供給システム。」
【相違点1】
本願発明は、前記余剰電力の前記商用電力系統への逆潮流及び前記分散電源の発電電力の全量の前記商用電力系統への逆潮流が「前記分電盤を介して」行われるのに対し、先願発明は、前記分電盤を介さない点。
【相違点2】
前記第2のアルゴリズムが有する、前記余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様及び前記分散電源の発電電力の全量を前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給する態様の2つの態様について、本願発明は、余剰売電モードとピークアシストモードという、別個のモードとして有しているのに対し、先願発明は、別個のモードではなく、前記蓄電池の蓄電残量に応じて自ずと生じる態様として有している点。

第5 当審の判断

以下、相違点について検討する。

1.相違点1について
分散電源の発電電力と、蓄電池の蓄電電力と、商用電力系統から供給される商用電力とを分電盤を介して機器へ供給する電力供給システムであって、前記分散電源の発電電力を前記商用電力系統に逆潮流させることが可能であるものにおいて、前記逆潮流が分電盤を介して行われるものは周知である(例えば特開平10-248180号公報(例えば明細書段落0019?0021,図1参照。発電-売電がACスイッチ13を介して行われる点。)、特開2007-124811号公報(例えば明細書段落0029,図1参照。太陽光発電パネルから電力会社に電力を売電する場合,家庭用分電盤を介して行われる点。)参照)。そして、本願明細書を参照しても、本願発明において、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力の前記商用電力系統への逆潮流及び前記分散電源の発電電力の全量の前記商用電力系統への逆潮流が前記分電盤を介して行われることによる新たな効果は見いだせない。
そうすると、前記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差であって、実質的な相違点ではない。

2.相違点2について
前記第4 1.(ウ)において検討したとおり、本願発明の余剰売電モードと先願発明の売電優先モード選択時であって前記蓄電池の蓄電残量が0である場合とは、いずれも前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力を商用電力系統に逆潮流させるという結果において異なるところはなく、さらに本願発明のピークアシストモードと先願発明の売電優先モード選択時であって前記蓄電池の蓄電残量が前記機器の使用電力よりも大きい場合とは、いずれも、前記分散電源の発電電力の全量を商用電力系統に逆潮流させるという結果において異なるところはない。
そして、本願の請求項1には、前記第2のアルゴリズムが前記余剰売電モードと前記ピークアシストモードとを有することは記載されているが、いかなる場合に前記2つのモードの一方又は他方が選択されるかは記載されていない。
そうすると、本願発明において前記コントローラが第2のアルゴリズムを実行する場合と、先願発明において前記売電優先モードが選択された場合とで,制御の結果において異なるところはない。
してみれば、前記相違点2は、実質的な相違点ではない。

3.むすび
以上のとおり、前記相違点1及び2は、いずれも、実質的な相違点ではないから、本願発明と先願発明は実質的に同一である。
そして、本願の請求項1?5に係る発明の発明者は、先願に係る発明をした者と同一ではなく、本願の出願の時において、本願の出願人は、先願の出願人と同一ではない。

なお、審判請求人は、平成28年8月8日に提出された意見書において、
「まず、本願の新請求項1に係る発明(以下、本願発明という)と特許出願aおよび引用例b?dとを比較すると、本願発明には特許出願aおよび引用例b?dにはない次のA構成が存在します。
A「前記余剰電力を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させる余剰売電モード、前記分散電源の発電電力の全量を、前記分電盤を介して前記商用電力系統に逆潮流させるように、前記蓄電池の蓄電電力を前記機器へ供給するピークアシストモードの各モードを有する第2のアルゴリズム」
上述のA構成を備える本願発明は、分電盤を介して商用電力系統に電力(分散電源の発電電力から機器の使用電力を差し引いた余剰電力、または分散電源の発電電力の全量)が逆潮流されるものです。
さらに、本願発明は、分散電源の発電電力から機器の使用電力を差し引いた電力を余剰電力としており、余剰売電モードにおいては、この余剰電力を分電盤を介して商用電力系統に逆潮流させるものです。
一方、特許出願aでは、分電盤6よりも商用電力系統側に、太陽光発電システム1および蓄電池システム2が接続されています(図1、図2)。すなわち、特許出願aは、分電盤を介して商用電力系統に電力が逆潮流されるものではなく、本願発明とは異なるものです。
さらに、特許出願aでは、売電優先モード選択時において、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量よりも大きい場合には太陽電池10の発電電力は全て余剰電力となります(段落0044,0060)。また、売電優先モード選択時において、蓄電池20の蓄電残量が負荷の消費電力量より不足している場合でも、太陽電池10の発電量がその不足する消費電力量より大きい場合には、太陽電池10から負荷へ供給した電力の残りが余剰電力となります(段落0044,0060)。すなわち、特許出願aでは、売電優先モード選択時に商用電力系統に逆潮流させる余剰電力は、分散電源(太陽電池10)の発電電力から、蓄電池20の蓄電電力で賄いきれない機器(負荷)の使用電力を差し引いた電力になります。つまり、特許出願aにおいて、売電優先モード選択時に商用電力系統に逆潮流させる余剰電力は、分散電源(太陽電池10)の発電電力から機器(負荷)の使用電力を差し引いた電力ではなく、この点でも本願発明と異なります。
(中略)
結局、特許出願aには、本願発明の上記A構成を備えることについて何ら記載がないため、特許出願aに係る発明は本願発明と異なるものです。」
と主張している。
審判請求人の当該主張について検討する。
前記分散電源の発電電力の前記商用電力系統への逆潮流を前記分電盤を介して行うことが実質的な相違点ではないことは、前記第5 1.において検討したとおりである。
そして、先願発明が、前記売電優先モードの選択時において、前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた余剰電力を前記商用電力系統に逆潮流させる態様と前記分散電源の全量を前記商用電力系統に逆潮流させる態様を有していることは、前記第4 1.(ウ)において述べたとおりである。さらに、前記2つの態様を第2のアルゴリズムにおける別個のモードとして有するか否かが実質的な相違点ではないことは、前記第5 2.において検討したとおりである。
したがって、先願発明は、前記A構成を備えていないため本願発明と異なる旨の審判請求人の前記主張は採用することできない。
また、審判請求人は、前記意見書において,
「また、特許出願aでは、地産地消モード選択時において、太陽電池10の発電量が負荷の消費電力量よりも大きい場合には、その余剰電力は先ず蓄電池20に充電され、次に系統に売電されます(段落0045)。すなわち、特許出願aでは、地産地消モード選択時において、分散電源(太陽電池10)の発電電力は、先ず機器(負荷)に供給され、その残りが蓄電池(蓄電池20)に充電され、その残りが商用電力系統に売電されます。つまり、特許出願aにおいて、地産地消モード選択時に商用電力系統に逆潮流させる余剰電力は、分散電源(太陽電池10)の発電電力から機器(負荷)の使用電力を差し引いた電力ではなく、この点でも本願発明と異なります。」とも主張している。
しかしながら、前記第4 1.(イ)において検討したとおり、先願発明における地産地消モード選択時の制御は本願発明の第1のアルゴリズムに相当するものである。そして、本願の請求項1には、コントローラが前記第1のアルゴリズムを実行しているときにおける前記分散電源の前記商用電力系統への逆潮流について何ら特定されていない。そうすると、先願発明において、地産地消モード選択時に前記商用電力系統に逆潮流させる電力が前記分散電源の発電電力から前記機器の使用電力を差し引いた電力ではない点は、本願発明との相違点にはならない。
したがって、審判請求人の当該主張も採用することができない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張はいずれも採用することができない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規程により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-02 
結審通知日 2016-09-06 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2011-120953(P2011-120953)
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
久保 竜一
発明の名称 電力供給システム  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  

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