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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1321058
審判番号 不服2015-17645  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-29 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 特願2013-549360「組立効率の良い冷却部材及びそれを用いたバッテリーモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日国際公開,WO2012/102496,平成26年 3月27日国内公表,特表2014-507760〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願(以下,「本願」と言う。)は,2012年(平成24年)1月5日(優先権主張外国庁受理 2011年(平成23年)1月26日 大韓民国)を国際出願日とする特許出願であって,平成27年5月25日付けで拒絶査定がされ(この謄本の送達日は平成27年6月1日),これに対して,平成27年9月29日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

2.平成27年9月29日付け手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年9月29日付け手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願補正発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。
ア.本件補正前
「バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される冷却部材であって,前記バッテリーモジュールは,それぞれが一つ以上のバッテリーセルからなる複数のユニットモジュールが,横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールが横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーセルの充放電の間に該バッテリーセルから生じる熱を除去することができ,
前記冷却部材は,
前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される熱伝導部材を有し,該熱伝導部材は互いに分離された上部プレート及び下部プレートを有し,
内部を冷却液が流れる中空な構造を持った第1の流路と第2の流路を有する冷却液流路を有し,前記第1の流路は,前記上部プレートと下部プレートの間に配置さており,前記第2の流路は前記第1の流路と一体的に接続されており,前記第2の流路は前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの両側に配置されており,
前記第1の流路と第2の流路は,垂直断面が円形の形状を有している,
ことを特徴とする,冷却部材。」(平成26年12月11日受付の手続補正書参照。)
イ.本件補正後
「バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される冷却部材であって,前記バッテリーモジュールは,それぞれが一つ以上のバッテリーセルからなる複数のユニットモジュールが,横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールが横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーセルの充放電の間に該バッテリーセルから生じる熱を除去することができ,
前記冷却部材は,
前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される熱伝導部材を有し,該熱伝導部材は互いに分離された上部プレート及び下部プレートを有し,
内部を冷却液が流れる中空な構造を持った第1の流路と第2の流路を有する冷却液流路を有し,前記第1の流路は,前記上部プレートと下部プレートの間に配置さており,前記第2の流路は前記第1の流路と一体的に接続されており,前記第2の流路は前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの両側に配置されており,
前記第1の流路と第2の流路は,垂直断面が円形の形状を有しており,
前記第1の流路に対応した形状を有する溝が,前記第1の流路が装着される前記上部プレートと下部プレートに,前記熱伝導部材の長手方向に形成されている,
ことを特徴とする,冷却部材。」
ウ.上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「上部プレート」「下部プレート」について,「前記第1の流路に対応した形状を有する溝が,前記第1の流路が装着される前記上部プレートと下部プレートに,前記熱伝導部材の長手方向に形成されている」と言う限定事項を付加したものであって,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
エ.そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」と言う。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
ア.原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された特開2001-23703号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 バッテリを冷却または加温するバッテリ温調装置において,バッテリを載置する第1の伝熱板と,該伝熱板に立設しバッテリの側面に密着する第2の伝熱板と,第1の伝熱板の下面に密着せしめた管路とを有するバッテリ保持フレームを具備し,かつ,断熱材で構成され,バッテリ保持フレームをバッテリを保持した状態で格納する密閉ケースと,上記管路内に管壁を介して上記伝熱板と熱交換する熱輸送物質を流通せしめる流通手段とを具備することを特徴とするバッテリ温調装置。」
・「【0002】
【従来の技術】近年,電気自動車やハイブリッド車が省エネ,環境への配慮などから注目されている。電気自動車やハイブリッド車はバッテリを多数搭載し動力源としているので,バッテリの性能は重要である。バッテリがその性能を十分に発揮し維持するにはバッテリを適正な温度に温調することが必要である。特に,バッテリが充電時や放電時に多くの熱を発生し高温になることがあるため,冷却を行うことが必要になる。」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記特開平7-6796号公報の技術では,ケースの底壁や仕切り壁が中空構造であり,また,冷却能力を上げるのに,バッテリを囲む壁全体に冷媒配管を挿通し,また送風ファンを用いているから,構成が複雑で,大型化するのは否めない。
【0005】本発明は上記実情に鑑みなされたもので,温調効率がよく,しかも簡単な構成でコンパクトなバッテリ温調装置を提供することを目的とする。」
・「【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明では,バッテリの保持を,バッテリを載置する第1の伝熱板と,該伝熱板に立設しバッテリの側面に密着する第2の伝熱板と,第1の伝熱板の下面に密着せしめた管路とを有するバッテリ保持フレームにより行う。かつ,断熱材で構成された密閉ケースにより,バッテリ保持フレームをバッテリを保持した状態で格納する。流通手段により,上記管路内に管壁を介して上記伝熱板と熱交換する熱輸送物質を流通せしめる。
【0007】熱輸送物質は,管路の管壁,伝熱板を介してバッテリと熱交換し,バッテリを温調する。この時,バッテリから管路への伝熱は,熱伝導の悪い空気を介さずに伝熱板における伝導のみで行われる。しかもバッテリ保持フレームそのものが密閉ケースにより断熱されているから,ケース外雰囲気温度の影響を受けない。したがって,効率よくバッテリを温調することができる。
【0008】また,第1の伝熱板の下面に密着した管路自身がバッテリ保持フレーム全体の強度を高めており,また,ケース壁内部に通風路や送風ファンを設けないので,全体構成を簡単にかつコンパクトにすることができる。」
・「【0019】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1,図2に本発明を車両用に適用した,第1実施形態になるバッテリ温調装置を示す。バッテリ温調装置はバッテリ1を温調するための冷凍サイクルを備えており,コンプレッサ21,コンデンサ22,レシーバ23,膨張弁24a,バッテリ保持フレームたるバッテリ冷却器3aを備え,これらはこの順に冷媒配管4により接続されている。」
・「【0025】バッテリ冷却器3aはバッテリ1を格納する密閉ケース6にバッテリ1とともに格納されている。ケース1は蓋をしたとき密閉状態となる構成のもので,バッテリ冷却器3aへの冷媒の往復は,ケース6の外壁面に付設した冷媒配管4のジョイント部43を介して行われ,ジョイント部43から,バッテリ冷却器3aに冷媒を供給する往路配管41と,バッテリ冷却器3aから冷媒を回収する復路配管42とが伸び,ケース6壁を貫通している。ケース6は断熱材により構成してあり,密閉構造としたことと相まってケース6内の断熱性を高めている。
【0026】バッテリ冷却器3aは2種類のアルミニウム製の部材31,32によりバッテリ1を保持する。第1の部材31はケース6の平面形状よりも一回り小さい長方形の板状部材で水平に設置される。第2の部材32は略部材31と等幅のもので,断面L字に加工されている。第2の部材32は複数用いられ,その第2の伝熱板である長辺部321が,第1の伝熱板である部材31の上面に,衝立状に間隔をおいて立設する。部材31と部材32とは,部材31の表面に部材32の短辺部322がロウ付けされて一体化している。以下,部材31は伝熱基板といい,部材32の長辺部321は伝熱フィンという。
【0027】伝熱フィン321の形状および配置間隔はバッテリ1の形状に合わせてあり,相隣れる2枚の伝熱フィン321間に1つずつバッテリ1が配置され,バッテリ1の底面が部材32の短辺部322と当接し,バッテリ1の側面101が伝熱フィン321と当接する。これら伝熱フィン321とバッテリ1の外周を囲み2つのコ字状のステー34が設けてある。両ステー34の端部341はL字に屈曲し,それぞれ他方のステー34の端部341と互いに対向している。対向する1対の端部341にボルト35を挿通しボルト35とナット36とを螺結することにより,バッテリ1をバッテリ冷却器3aに固定するとともに,バッテリ1と伝熱フィン321との対向面同志を互いに密着せしめて伝熱性を高めている。なお,バッテリ1と伝熱フィン321との対向面には伝熱グリスを塗布し,さらに伝熱性を高めるのもよい。また,伝熱フィン321に絶縁コーティングを形成し,バッテリ1が複数箇所で液漏れを生じたとき,良電導性である伝熱フィン321を介して生じる短絡に対する耐性を高めるのもよい。
【0028】伝熱基板31の下方には,6本のフィンチューブ331,332が配設してある。フィンチューブ331,332は断面が矩形の管状部材で,その上面が伝熱基板31の下面にロウ付けしてある。フィンチューブ331,332の内周面からは多数のフィンが突出し受熱面積を広げてある。なお,フィンチューブ331,332と伝熱基板31との密着が十分であれば,フィンチューブ331,332,伝熱基板31をそれぞれケース6に固定するのでもよい。フィンチューブ331,332は等間隔に伝熱フィン321を交叉する方向に互いに平行に取り回してあり,バッテリ1の下方に均等に配置される。相隣れるフィンチューブ331とフィンチューブ332とはそれぞれ一方の端部にてターンパイプ333により繋いであり,これらはロウ付けにより一体化している。これら2本のフィンチューブ331,332およびターンパイプ333を1組として1本のU字状の熱交換用の管路33が形成される。
【0029】この3組の管路33はそれぞれ一端が共通の往路配管41と接続され,往路配管41を介して膨張弁24aに通じている。また,他端が共通の復路配管42と接続され,復路配管42を介してコンプレッサ21に通じている。すなわち,膨張弁24aからの低温低圧冷媒は,往路配管41から3つの管路33に分流し,再び復路配管42で合流するようになっている。
【0030】本バッテリ温調装置の作動を説明する。バッテリ1を冷却するには電磁弁5aを「開」にして,冷媒がコンプレッサ21からコンデンサ22?レシーバ23?膨張弁24a?バッテリ冷却器3aを経て再びコンプレッサ21に戻る冷媒回路を開く。これにより,バッテリ冷却器3aのフィンチューブ331,332内を低温低圧の液化冷媒が図2中,矢印にて示すように流通する。液化冷媒は,伝熱基板31,フィンチューブ331,332壁を介して,または,伝熱フィン321,伝熱基板31,フィンチューブ331,332壁を介してバッテリ1が発生する熱を受熱し,バッテリ1を冷却する。この時,バッテリ1からフィンチューブ331,332への伝熱は,伝熱フィン321,伝熱基板31における伝導のみで行われる。しかもバッテリ冷却器3aそのものがケース6により断熱され,さらにケース6とバッテリ冷却器3aとの間に空隙601を設けてケース6壁からバッテリ冷却器3aへの熱の移動を規制している。したがって,効率よくバッテリ1を冷却することができる。
【0031】また,熱交換用の管路33をU字状に形成することで,隣接するフィンチューブ331とフィンチューブ332とで冷媒の流れ方向が逆になり,往路配管41に近い上流部と復路配管42に近い下流部とが近接し,往路配管41,復路配管42のいずれからも離れている中流部同志が近接する。冷媒は熱交換を行いながら管路33内を流れ,冷媒の熱交換能力は管路33の下流にいくにしたがって低下するので,往路配管41,復路配管42に近い部分での熱交換能力と,往路配管41,復路配管42から離れた部分での熱交換能力とが略等しくなる。これにより,いずれのバッテリ1においても均等に冷却をすることができ,冷却不足や過冷却を防止することができる。
【0032】しかも,伝熱基板31の下面に密着した管路33自身が伝熱基板31に梁を入れるかたちで補強しバッテリ冷却器3a全体の強度を高めており,また,ケース壁を中空構造とせず送風ファンも設けないので,全体構成を簡単にかつコンパクトにすることができる。」
(ア)上記記載事項及び図面の記載内容から,以下の事項が把握できる。
a.バッテリ保持フレーム(3a)は,バッテリ(1)を載置する伝熱基板(31)と,当該伝熱基板(31)の下面に密着せしめた管路(33)とを有する。
b.管路(33)は,フィンチューブ(331,332),ターンパイプ(333)を備え,当該フィンチューブ(331,332)は,ターンパイプ(333)並びに往路配管(41)及び復路配管(42)との間で冷媒等の熱輸送物質を漏れがないように流通させるものであるから,これらは一体的に接続されたものと理解される。ターンパイプ(333)並びに往路配管(41)及び復路配管(42)は,バッテリ(1)の両側に配置されている。フィンチューブ(331,332),ターンパイプ(333),往路配管(41)及び復路配管は,その内部を伝熱基板(31)と熱交換する熱輸送物質が流れる中空な構造を持ったものである。
c.バッテリ保持フレーム(3a)は,バッテリ(1)の底部に装着される。
d.熱輸送物質として冷媒を用いることで,バッテリ保持フレーム(3a)をバッテリ冷却器として構成することができる。
(イ)上述した事項をふまえると,刊行物1には,次の発明が記載されていると認めることができる(以下,この発明を「刊行物1記載の発明」と言う。)。
「バッテリ(1)の底部に装着されるバッテリ冷却器であって,
前記バッテリ(1)の底部に装着される伝熱基板(31)と該伝熱基板(31)に密着される内部を冷媒が流れるフィンチューブ(331,332)並びに内部を冷媒が流れるターンパイプ(333),往路配管(41)及び復路配管(42)とを有し,前記ターンパイプ(333)並びに往路配管(41)及び復路配管(42)は前記フィンチューブ(331,332)と一体的に接続されており,前記ターンパイプ(333)並びに往路配管(41)及び復路配管(42)は前記バッテリ(1)の両側に配置されている,
冷却部材。」
イ.原査定の拒絶の理由に引用文献1とともに引用文献12として示された特開平6-338344号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燃料電池を冷却する燃料電池の冷却板及び冷却システムに係り、特に、冷却板の冷却特性を向上させた燃料電池の冷却板及び冷却システムに関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、天然ガス等を改質して得られた水素と酸化剤である空気とを燃料電池本体内に供給して、リン酸液等の電解質を介して電気化学反応を行なって電気エネルギーを発生させるものである。また、燃料電池の発電時に発生する熱を冷却水によって冷却する際に、取り除かれた熱エネルギーを回収し、利用することによって効率的なエネルギー発生システムが実現できる。
【0003】このような燃料電池は、上述した発電機能を有する一つの単電池(以下単セルという)が積層された積層体構造(セルスタック構造)になっている。
【0004】燃料電池のセルスタック構造を図8に示す。燃料電池本体の単セル1は、電解質を保持したマトリックス層11と、矢印Aの方向から燃料である水素が供給される燃料極12と、矢印Bの方向から空気が供給される酸化剤極13と、リブ付き電極基材14、15と、セパレータ16より構成され、この単セルが多数個積層されている。また、単セルが5?10枚積層される毎に、水冷式の冷却板3が積層され1つのサブスタック2を構成し、このサブスタック2を数十枚積層してセルスタックが構成されている。このセルスタックは、最上部と最下部に設けられた締め板17によって保持されている。
【0005】図9に示したように、冷却板3は、上下二つのホルダー4a、4bに分割可能な冷却基板4と、冷却基板4の層内に設けられた溝5に、例えば特開昭61-22573号公報、特開平1-175173号公報、及び特開平2-207458号公報で提案されている良熱伝導充填材6を介して埋設され、例えば蛇行ループ状に形成された金属製の冷却管7とから構成されている。この冷却管7の一方の端部は図8に示すように給水ヘッダ8に、他方の端部は排水ヘッダ9に絶縁ホース10を介して接続されている。」
(3)対比・判断
ア.本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比する(以下,「本願補正発明」を「前者」,「刊行物1記載発明」を「後者」と言うことがある。)。
(ア)後者における「バッテリ(1)」は,電気自動車やハイブリッド車に搭載されることが想定されたものであって(段落【0002】参照),単位となるモジュールが多数組み合わされたものと考えることができる。そして,刊行物1の図面の記載からも,そのような構成が把握でき,さらに具体的に,単位となるモジュールが横方向に配置された構造も理解できる。
したがって,後者における「バッテリ(1)」は,前者の「それぞれが一つ以上のバッテリーセルからなる複数のユニットモジュールが,横方向に配置された構造を持って」いる「バッテリーモジュール」又は「複数のバッテリーモジュールが横方向に配置された構造を持って」いる「バッテリーパック」に相当する。
(イ)後者の「バッテリ冷却器」がバッテリーセルの充放電の間に該バッテリーセルから生じる熱を除去できるものであることは当業者にとって自明であって,後者の「バッテリ冷却器」は,前者の「冷却部材」に相当する。そして,後者の「バッテリ(1)の底部に装着されるバッテリ冷却器」は,前者の「バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される冷却部材」に相当する。
(ウ)後者の「前記バッテリ(1)の底部に装着される伝熱基板(31)と該伝熱基板(31)に密着される,内部を冷媒が流れるフィンチューブ(331,332),並びに内部を冷媒が流れるターンパイプ(333),往路配管(41)及び復路配管(42)」は,前者の「前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される熱伝導部材」に対応する。
そして,後者の「フィンチューブ(331,332)」は,前者の「第1の流路」に相当し,後者の「ターンパイプ(333)並びに往路配管(41)及び復路配管(42)」は,前者の「第2の流路」に相当する。
(エ)以上を踏まえると,両者の一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される冷却部材であって,前記バッテリーモジュールは,それぞれが一つ以上のバッテリーセルからなる複数のユニットモジュールが,横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールが横方向に配置された構造を持っており,前記バッテリーセルの充放電の間に該バッテリーセルから生じる熱を除去することができ,
前記冷却部材は,
前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの上部又は底部に装着される熱伝導部材を有し,該熱伝導部材は,
内部を冷却液が流れる中空な構造を持った第1の流路と第2の流路を有する冷却液流路を有し,前記第2の流路は前記第1の流路と一体的に接続されており,前記第2の流路は前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの両側に配置されている,
冷却部材。」
[相違点]
熱伝導部材について,本願補正発明では,互いに分離された上部プレート及び下部プレートを有し,第1の流路は,当該上部プレートと下部プレートの間に配置されており,前記第1の流路と第2の流路は,垂直断面が円形の形状を有しており,前記第1の流路に対応した形状を有する溝が,前記第1の流路が装着される前記上部プレートと下部プレートに,前記熱伝導部材の長手方向に形成されているのに対して,刊行物1記載の発明では,伝熱基板を有し,フィンチューブ(第1の流路)がそれに密着されるものとなっている点。
イ.相違点について検討する。
(ア)刊行物2は,燃料電池の単セルを複数枚積層して形成される電池積層体を冷却するための冷却板に関するものであるが,先に摘記した記載事項及び図面の記載内容をふまえると,特に次の構成を備えたものが記載されていると認めることができる。
「互いに分離されており,垂直断面が円形の形状を有する冷却管に対応した形状を有する溝が形成されている,上下二つのプレートと,内部を冷却水が流れる中空な構造を持った前記冷却管並びに当該冷却管と一体的に接続される給水ヘッダ及び排水ヘッダを有し,前記冷却管は,前記上下二つのプレートの間に配置されており,前記給水ヘッダ及び排水ヘッダは前記バッテリーモジュール又はバッテリーパックの両側に配置されている冷却板。」
これにおいて,単セルで発生した熱は,上下二つのプレートを介して冷却管に伝わるものと理解することができる。
そして,そのような熱の伝達に際しプレートと冷却管が密着することが望ましいことは当業者にとって自明であるが,刊行物2記載の発明は,それを垂直断面円形形状の冷却管をそれに対応する溝を有する二つのプレートで挟むことにより実現したものと言える。
このように,物品の冷却の目的で,物品に垂直断面円形形状の冷却管をそれに対応する溝を有する二つのプレートで挟んだ物を取り付けること自体は,刊行物2以外にも,例えば,原査定で提示された特開2003-243591号公報や特開2003-243593号公報にも記載されているように,周知の技術的事項である(以下,このような冷却の手法を「刊行物2等に記載された周知の技術的事項」と言う。)。
(イ)刊行物1記載の発明にあっても,フィンチューブにバッテリで発生した熱を効率的に伝える必要があり,そのために,当該フィンチューブは伝熱基板に密着させるべきものである。
刊行物2等に記載された周知の技術的事項は,冷却管の全周にわたってプレートと密着する構造であって,熱を効率的に伝える構成を備えたものであるのだから,刊行物1記載の発明において,この刊行物2等に記載された周知の技術的事項を考慮して相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することには,当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせるものではない。なお,刊行物1記載の発明においても,そのフィンチューブは,バッテリ全体の長手方向に形成されている。
しかも,本願補正発明の発明特定事項によって,刊行物1記載の発明及び刊行物2等に記載された周知の技術的事項からみて格別顕著な効果が奏されると言うこともできない。
ウ.以上を踏まえると,本願補正発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2等に記載された周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
エ.まとめ
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成27年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の各請求項に係る発明は,原審において提出された平成26年12月11日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ,その請求項1は「2.(1)ア.」に記載したとおりである。以下,この請求項1に係る発明を「本願発明」という。
(2)刊行物
刊行物1,2及びその記載事項並びに刊行物1記載の発明は,「2.(2)」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明は,「2.」で検討した本願補正発明から前記の限定事項を省いたものに相当する。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,「2.(3)」において検討したとおり,刊行物1記載の発明及び刊行物2等に記載された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1記載の発明及び刊行物2等に記載された周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと言うことができる。

4.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-10 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-27 
出願番号 特願2013-549360(P2013-549360)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 新海 岳
前田 浩
発明の名称 組立効率の良い冷却部材及びそれを用いたバッテリーモジュール  
代理人 相田 京子  
代理人 鄭 元基  
代理人 相田 伸二  
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