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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1321130
審判番号 不服2016-4767  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-01 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2011- 37289「ディスプレイ装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 27897、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月23日(優先権主張、2010年7月19日、大韓民国)の出願であって、平成27年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年4月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年4月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
タッチセンサーパッドと、該タッチセンサーパッドの下に少なくとも一つのスイッチとを持つ使用者入力部と、
前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断し、前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記スイッチのプレスが開始された位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第1の位置の情報を保存し、所定時間内に前記スイッチのプレスがリリースされると、前記スイッチのプレスがリリースされた位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第2の位置の情報を保存し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が予め設定された範囲内に存在すれば、前記タッチセンサーパッドの前記第1の位置から前記スイッチがクリックされたと判断し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が前記予め設定された範囲以上であれば、前記スイッチがクリックされていないと判断する、制御部と、
を含み、
前記第1の位置が座標(X,Y)を有し、前記第2の位置が座標(X’,Y’)を有し、
前記制御部は、|X-X'|が予め設定された第一臨界値以下であり、|Y-Y'|が予め設定された第二臨界値以下であることに応答して、前記タッチセンサーパッドが前記第1の位置でクリックされたと判断する、ことを特徴とするディスプレイ装置。」(下線は補正事項を示す。)とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

(2)請求項9について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項9を、
「【請求項9】
タッチセンサーパッドと該タッチセンサーパッドの下に少なくとも一つのスイッチとを持つ使用者入力部を含むディスプレイ装置の制御方法にあって、
前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断する段階と、
前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記スイッチのプレスが開始された位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第1の位置の情報を保存し、所定時間内に前記スイッチのプレスがリリースされると、前記スイッチのプレスがリリースされた位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第2の位置の情報を保存する段階であって、前記第1の位置が座標(X,Y)を有し、前記第2の位置が座標(X’,Y’)を有する、段階と、
前記第1の位置と前記第2の位置との差が予め設定された範囲内に存在するか判断し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が予め設定された範囲内に存在すれば、前記タッチセンサーパッドの前記第1の位置から前記スイッチがクリックされたと判断し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が前記予め設定された範囲以上であれば、前記スイッチがクリックされていないと判断する段階であって、|X-X'|が予め設定された第一臨界値以下であり、|Y-Y'|が予め設定された第二臨界値以下であることに応答して、前記タッチセンサーパッドが、前記第1の位置でクリックされたと判断する段階と、
を含む、ディスプレイ装置の制御方法。」(下線は補正事項を示す。)とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
(1)補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項3を独立記載形式とし、さらに「前記スイッチのプレスが発生した第1の位置」及び「前記スイッチのリリースが発生した第2の位置」について、それぞれ「前記スイッチのプレスが開始された位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第1の位置」及び「前記スイッチのプレスがリリースされた位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第2の位置」と限定するものであって、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

A.刊行物の記載事項
A1.引用文献1・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5666113号明細書(以下、引用文献1」という。)には、FIG.1?3とともに以下の事項が記載されている。
a.第3欄第28行乃至38行
「There is shown in FIG. 1 computer system 10 including the system of this invention. System 10 employs standard computer 12 and display 16, which may be, for example, an Apple Macintosh SE Personal Computer. Touchpad input device 14 having touch-sensitive surface 18 is employed as an input device for computer 12. Touchpad 14 may employ any of the touch-sensing technologies known to those skilled in the art, for example, capacitive sensing, or resistive membrane sensing. Touchpad 14 is typically operated with a passive conductive stylus, a corded active stylus, or a human finger.」
(当審訳:図1は、本発明のシステムを含む計算機システム10を示す。システム10は、標準的なコンピュータ12及び表示装置16が採用されており、例えば、アップル Macintosh SEパーソナルコンピュータであってもよい。タッチセンシティブ表面18を有するタッチパッド入力装置14が、コンピュータ12の入力装置として採用されている。タッチパッド14は、当業者に知られているタッチセンシング技術のいずれか、例えば、静電容量感知、抵抗膜検出を採用することができる。タッチパッド14は、典型的には受動的な導電性スタイラス、コード付きのアクティブスタイラス、または人間の指で操作される。)

b.第3欄第11乃至27行
「This invention may be accomplished in a system for using a touch-sensitive computer input touchpad for both computer cursor control and keypad control in which the system senses the touch of a finger or another object on the touchpad surface and by resolving any lateral touch movement after the touch determines if that user wishes the touch action to be used for cursor control or for the selection of a keypad function. Cursor control is deemed to be the intent if sufficient lateral movement is detected, preferably about 1/16", while keypad control is established in one embodiment by operation of a separate mechanical switch under the touchpad before such lateral movement takes place, or in a second embodiment by sensing a touch lift-off from the touchpad before any minimum lateral motion takes place, both preferably within a short pre-established time period after touchdown. 」
(当審訳:本発明では、コンピュータのカーソル制御とキーパッド制御にタッチ感応コンピュータが用いられており、タッチパッド表面への指または他のオブジェクトのタッチを検出して、タッチ動作が、カーソル制御を行うために用いられるか、キーパッド機能を選択するのに用いられるかは、タッチの後のタッチの横方向移動を検出することで決定する。カーソル制御は、十分な横方向移動、好ましくは約1/16インチの横方向の動きで選択され、一方、キーパッド制御は、一実施形態ではタッチの横方向移動が起こる前に、タッチパッド下部に設けられた機械的スイッチの操作により行われるか、または、第二実施形態では、タッチの最小の横方向移動が起こる前にタッチパッドからタッチのリフトオフを検知することにより行われ、いずれも、好ましくはタッチダウンから予め設定した時間内に行われる。)

c.第3欄第39乃至50行
「As shown in FIG. 2A, capacitive touchpad 14 includes conductive coating 24 (the touch surface) on transparent glass substrate 22. Keypad template 28 is inserted under substrate 22 and above non-active template holder 26 so that template 28 is visible through the sensor. Mechanical switch 30 is a second means of computer input, similar to the mechanical switch on a mouse. For resistive touch-sensing technology, FIG. 2B, touchpad 14a includes plastic membranes 32 and 34 having conductive surfaces 33 and 35, respectively, separated by insulating spacers 36. Template 28a is placed on the surface of the sensor. Mechanical switch 30a is provided as a second means of computer input. 」
(当審訳:図2aに示すように、容量性タッチパッド14は、透明なガラス基板22上の導電性コーティング24(タッチ面)を有している。キーパッドテンプレート28は、基板22の下で非活性テンプレートホルダ26の上に挿入され、センサをとおして視認される。機械的スイッチ30は、コンピュータ入力の第2の手段、マウスの機械的スイッチと同様である。抵抗式タッチ検出技術については、図2bには、タッチパッド14aは、絶縁スペーサ36によって分離された、導電面33および35を有するプラスチック膜32及び34を含む。テンプレート28aがセンサの表面に配置されている。機械的スイッチ30aは、コンピュータ入力の第2の手段として設けられている。)

d.第3欄第51行乃至第4欄第46行
「An example of a template which may be used to allow touchpad 14 to be used like a calculator keypad is shown in FIG. 2C. When such a template is placed under or over the surface of touchpad 14 as appropriate, system 10 is enabled to recognize a touch in each designated template area as a command to input the appropriate number or accomplish the appropriate mathematical function, as would be apparent to those skilled in the art.
Flowchart 50, FIG. 3, illustrates the system of this invention which uses the touchpad and computer system as described above. If a touch is sensed on the touchpad surface, step 52, the system preferably starts a "button timer", which is a preestablished time within which the operator must press the mouse emulation button 30, FIG. 2A, or liftoff from the surface if no button is present, in order for the system to recognize the button push or tap. Meanwhile, the system in step 56 is looking for lateral movement of the touch device on the touch screen. In one embodiment, lateral movement may be defined as movement in any direction greater than a preestablished distance, for example 1/16", so that the operator does not have to keep the finger or stylus absolutely still on the screen while accomplishing the button click or screen tap. If lateral movement of at least the predetermined distance is sensed, the system enters the cursor control mode in which the input device movement across the sensor surface causes cursor movement. Such cursor control is enabled until the stylus is lifted from the screen, step 59, at which time operation may return to the start. Alternatively, system 50 could interpret a screen tap or touch within a predetermined short time after liftoff, at approximately the same location where the liftoff occurred, as a click or push of button 30, which then accomplishes a function at the original liftoff cursor location, such as icon selection or menu pulldown, as is typically accomplished in a mouse driven system by the operator pushing the mouse button.
If the system does not sense the sufficient lateral movement after touchdown, step 56, the system proceeds to step 60. If the button timer has expired, the system enters cursor control mode, step 58. If the button timer has not expired, the system monitors for either operation of button 30 or a screen tap, step 62. If the button is pushed or the screen is tapped within the button timer period, the system enters the keypad emulation control mode, step 64, and executes the command associated with that touch location, step 66. If the button has not been pushed, or the screen has not been tapped, operation returns to step 56 in which lateral movement is monitored.
Accordingly, if the operator within the "button timer" period after touchdown pushes down or taps on device 14, the system interprets the operation of switch 30 or the tap as a stroke of the keypad. The system of this invention thus allows a touchpad to be used in both the traditional manner (for cursor movement) and as a keypad, without the need for the operator to choose one of the two modes through some selection means.
Alternatively, when there is a click button an algorithm can be devised allowing the user to stay in keypad mode (once entered) as long as contact with the touch surface is maintained. In other words, the user could slide around on the glass pressing different keypad buttons, as accomplished with steps 68 and 70, once in keypad mode. 」
(当審訳:タッチパッド14を計算機のキーパッドのように使用することができるテンプレートの一例が図2cに示されている。このようなテンプレートがタッチパッド14の表面の下または上に適切に配置されると、当業者には明らかなように、システム10は、指定された各テンプレート領域におけるタッチを、適切な数を入力するコマンド、または適切な数学的機能を達成するためのコマンドとして認識することができる。
フローチャート50(図3)は、上述したように、タッチパッドとコンピュータシステムを使用する本発明のシステムを示す図である。タッチパッドの表面においてタッチが検出された場合(ステップ52)、システムは、好ましくは、システムがボタン押下やタップを認識するために、操作者がマウスエミュレーションボタン30(図2a)を押圧すべき、または、ボタンが存在しない場合、表面からリフトオフすべき範囲の所定時間が設定されている「ボタンタイマ」をスタートする。一方、ステップ56において、システムは、タッチ・スクリーン上のタッチデバイスの横方向の動きを探している。一実施形態では、横方向の動きは、所定距離より大きい任意の方向の移動、例えば1/16インチとして定義することができ、ボタンクリックまたは画面タップを行っているとき、オペレータがスクリーン上に指またはスタイラスを全く静止しなくてもよい。少なくとも所定距離の横方向の動きが検出された場合、システムは、センサ表面を横切る入力デバイス移動がカーソル移動を起こす、カーソル制御モードに入る。このようなカーソル制御は、スタイラスがスクリーンからリフトされるまでイネーブルされ(ステップ59)、リフトされたとき操作がスタートに戻る。あるいは、システム50は、リフトオフが発生した場所と略同じ位置における、リフトオフ後の所定の短時間内のスクリーンタップやタッチを、元のリフトオフカーソル位置における機能を実現するようなボタン30のクリック又は押圧として解釈することができ、それは、従来のマウス駆動システムにおいて典型的に行われる操作者がマウスボタンを押すことによって、アイコン選択やメニュープルダウンをするような機能である。
システムは、タッチダウン後、十分な横方向の動きを検知(ステップ56)しない場合には、ステップ60に進む。ボタンタイマが満了した場合、システムは、カーソル制御モードに入る(ステップ58)。ボタンタイマが満了していない場合、システムは、ボタン30の操作やスクリーンタップのいずれかを監視する(ステップ62)。ボタンタイマ期間内にボタンが押されるか、スクリーンがタップされた場合には、システムは、キーパッドエミュレーション制御モードに入り(ステップ64)、そのタッチ位置に関連するコマンドを実行する(ステップ66)。ボタンが押されていないか、スクリーンがタップされていなければ、処理は横方向の動きを監視するステップ56に戻る。
タッチダウン後の「ボタンタイマ」期間内に、操作者がデバイス14上で押し下げまたはタップした場合は、それに応じて、システムは、スイッチ30の操作やタップをキーパッドのストロークとして解釈する。本発明のシステムは、いくつかの選択手段を介して2のモードの1つを選択することを操作者に必要とすることなしに、タッチパッドを(カーソル移動のための)状態とキーパッドの両方で使用されることを可能にする。
あるいは、クリックボタンがあるときのアルゴリズムは、タッチ表面との接触が維持される限り、ユーザは、(一度入った)キーパッドモードに留まることを考案することができる。換言すれば、一度キーパッドモードに入ると、ユーザは、ステップ68及びステップ70で行われるように、異なるキーパッドボタンを押し下げながらガラス上をスライドできる。)

上記記載から次のことがいえる。(なお、以降の記載は、当審訳に基づく。)
ア.記載aによれば、引用文献1には、標準的なコンピュータ12、表示装置16、コンピュータ12の入力装置としてタッチセンシティブ表面18を有するタッチパッド入力装置14を備えるシステムが記載されている。
イ.記載b、cによれば、タッチパッド入力装置14は、タッチパッド表面への指または他のオブジェクトのタッチを検出すること、及び、機械的スイッチ(ボタン)30が、コンピュータ入力の第2の手段として、タッチパッド下部に設けられていることが記載されている。
ウ.記載cによれば、システムは、タッチパッドの表面においてタッチが検出された場合(ステップ52)、操作者がボタン30を押圧すべき範囲の所定時間が設定されているボタンタイマをスタートし、所定距離の横方向のタッチの動きが検出された場合にカーソル制御モードに入り、所定距離の横方向のタッチの動きが検出されず、ボタンタイマ期間内にボタン30が押された場合には、キーパッド(キーパッドエミュレーション制御モード)に入り、そのタッチ位置に関連するコマンドを実行する(ステップ66)ことが記載されている。
エ.記載dによれば、システムは、テンプレートがタッチパッド14の表面の下または上に配置されると、各テンプレート領域におけるタッチを、適切な数を入力するコマンド、または適切な数学的機能を達成するためのコマンドとして認識することができ、一度キーパッドモードに入ると、ユーザは、タッチパッド上で指等をスライドして異なるキーパッドボタンを押すことができることが記載されている。

そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「標準的なコンピュータ12、表示装置16、コンピュータ12の入力装置としてタッチセンシティブ表面18を有するタッチパッド入力装置14を備えるシステムであって、
タッチパッド入力装置14は、タッチパッド表面への指または他のオブジェクトのタッチを検出するものであり、
機械的スイッチ(ボタン)30が、コンピュータ入力の第2の手段として、タッチパッド下部に設けられており、
タッチパッド14の表面の下または上に配置されたテンプレートの各領域におけるタッチを、適切な数を入力するコマンド、または適切な数学的機能を達成するためのコマンドとして認識し、
タッチパッドの表面においてタッチが検出された場合(ステップ52)、操作者がボタン30を押圧すべき範囲の所定時間が設定されているボタンタイマをスタートし、ボタンタイマ期間内に所定距離の横方向のタッチの動きが検出されるとカーソル制御モードに入り、所定距離の横方向のタッチの動きが検出されずに機械的スイッチ(ボタン)30が押された場合には、キーパッド(キーパッドエミュレーション制御モード)に入り、そのタッチ位置に関連するコマンドを実行し(ステップ66)、
一度キーパッドモードに入ると、ユーザは、タッチパッド上で指等をスライドして異なるキーパッドボタンを押すことができるシステム。」

A2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-252241号公報(以下、引用文献2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光ポインティング装置を含む端末機に関し、より詳細には、別のボタンを用いずに光ポインティング装置を用いてクリックイベントを感知することができるクリック認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)のような個人携帯端末機は、キーパッドを用いたユーザインターフェースを採用しており、数字や文字を入力するための複数のボタンと方向ボタンとで構成されたキーパッドを備えている。
・・・中略・・・
【0005】
従来の個人携帯端末機に用いられる光ポインティング装置は、一般的に、ポインタおよびカーソルの移動のみが可能である。したがって、ユーザは、光ポインティング装置を用いてポインタまたはカーソルを所望する位置に移動させた後に、光ポインティング装置の周辺または下部に提供される別のボタンを押す、いわゆる「クリック」または「ダブルクリック」を実行することができる。ここで、ボタンは、機械的ボタンまたは電気的ボタンのように多様なボタンの使用が可能である。
【0006】
しかしながら、別のボタンをクリックしなくても、光ポインティング装置上における指の垂直運動(Z軸上の運動)でクリックと類似した結果を得るための技術が米国特許7,313,255(2007年12月25日登録)で開示されている。
・・・中略・・・
【0008】
前記の米国特許では、指の上げが感知された後に指の下げが感知されれば、指の上げと指の下げとの時間間隔が所定の時間範囲内(例えば、0.1?0.3秒)であるかを判断する。もし、指の上げと指の下げとの間の時間が該当する時間範囲内であれば、クリックと見なすことができる。
【0009】
しかしながら、指が垂直運動(Z軸上の運動)と同時に水平運動(X-Y平面上の運動)をする場合がある。このような運動をするユーザの意図は、クリック動作をしようとするのではなく、カーソル移動の動作中に指がイメージ感知領域(イメージ入力ウィンドウ:2.2mm×2.2mm)から外れるようになって、指をイメージウィンドウ上に再配置させると同時にカーソル移動をさせようとするものである。例えば、スクローリング(scrolling)動作中には、このような動作が繰り返し起こるようになる。前記の米国特許では、クリック動作を指の垂直運動(Z軸上の運動)のみを考慮してクリックの可否を判断するため、垂直運動(Z軸上の運動)と同時に水平運動(X-Y平面上の運動)が伴う場合には、ユーザが意図しないクリックイベントが起きるという問題点がある。すなわち、前記の米国特許で定義されたプロセスによれば、スクローリングのための指の動きとクリックのための指の動きが混同する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、別のボタンを用いずに光ポインティング装置上における指の動きだけでクリックを感知すると共に、ポインタの移動のための指の動きとクリックのための指の動きとを区分することができるクリック認識方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、ポインタの移動のための指の動きとクリックのための指の動きとを区分することができる多様なクリック認識方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、光ポインティング装置は感知領域上で指の動きを感知し、光ポインティング装置でクリックを認識する方法は、感知領域を介して指のイメージを受け取るステップと、指のイメージの変化を感知するステップと、イメージの変化から指の水平移動を分析するステップと、指の水平移動(horizontal movement)が所定の範囲内である場合にクリック信号を生成するステップとを含む。」

「【0051】
図7は、本発明の一実施形態に係るクリック認識方法を説明するためのフローチャートであり、図8は、本発明の他の実施形態に係るクリック認識方法を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図7を参照すれば、光ポインティング装置におけるクリック認識方法は、感知領域を介して指のイメージを取得するステップ201と、指のイメージの変化を感知するステップ202と、イメージの変化から指の水平移動を分析するステップ203と、指の水平移動が所定の範囲内であるか否かを判断し(ステップ204)、この場合にクリック信号を生成するステップ205とを含む。
・・・中略・・・
【0054】
すなわち、シャッタ値の急増および急減によってそれぞれ指の下げおよび指の上げが感知されても、指の移動量によって水平移動(horizontal movement)を測定し、これを所定の比較値と比較することができる。
【0055】
より具体的には、図9に示すように、指の下げ時間T1および指の上げ時間T2の間は数え切れないほど多くの時間単位間隔で区分されるようになり、イメージセンサおよび制御部は、各時間単位間隔で現在のイメージと以前のイメージとを比較してイメージの変化値を算出することができる。例えば、指の指紋を比較して指紋の移動変位を各時間単位間隔で算出することができるが、これは指の各変位量(Δxn,Δyn)で代表することができる。

(数式1)
【0056】
水平移動(D)=Σ|Δxn|+Σ|Δyn|
(数式2)
【0057】
水平移動(D)=Σ(|Δxn|2+|Δyn|2)1/2
(数式3)
【0058】
水平移動(D)=Σ(Δxn)+Σ(Δyn)
【0059】
前記の数式1?3は指の変位量(Δxn,Δyn)であって、指の下げ時間T1および指の上げ時間T2間のクリック持続時間ΔT1の間の指の移動量を算出するための方法のうち、何種類かの例を記載したものである。指移動量は、前記のような方法を介して算出することができるが、この他の多様な論理を介して算出することもできる。
【0060】
算出された指の水平移動Dが定められた範囲DL≦D≦DHであるか否かを確認することができ(ステップ204)、この結果、定められた範囲内であれば、移動量が小さいものとして把握し、ポインタの移動ではなくクリックであると判断してクリック信号を生成することができる(ステップ205)。一般的に、水平移動の境界のうちの下限であるDLは、0(zero)になると言える。
【0061】
また、点線で示すように、クリック信号を生成した後に、次のクリックイベントを感知するための過程を繰り返すことができ、上述したダブルクリックやその他のマルチクリックを感知することができる。
【0062】
図8を参照すれば、光ポインティング装置におけるクリック認識方法は、感知領域を介して指のイメージを取得するステップ301と、指の下げを認識するステップ302と、指の下げ時間T1を確認するステップ303と、指の上げが発生したか否かを判断し(ステップ304)、この後に指の上げが認識されれば、指の上げ時間T2を確認するステップ305とを含む。
【0063】
上述のように、シャッタ値などの比較によって指の上げおよび指の下げを感知することができ、室内および室外条件に応じてシャッタ値による指の下げと指の上げの条件を相違することができる。
【0064】
もし、クリック持続時間ΔT1が所定の時間範囲TL≦ΔT1≦THであるか否かを確認した後(ステップ306)、クリック持続時間ΔT1が所定の時間範囲内であれば水平移動Dを分析する(ステップ307)が、所定の時間範囲外であれば水平移動Dを分析せずに次のクリックが発生するまで待つことができる。
【0065】
クリック持続時間ΔT1が所定の時間範囲内であれば、水平移動Dを分析するようになるが、上述した方式で算出された水平移動Dが定められた範囲(DL≦D≦DH)であるか否かを確認することができ(ステップ308)、この結果、定められた範囲内であれば移動量が小さいものと把握し、ポインタの移動ではなくクリックと判断してクリック信号を生成することができる(ステップ309)。しかしながら、算出された水平移動Dが定められた範囲DL≦D≦DH外であれば移動量が大きいものとして把握し(図5参照)、クリックではなくポインタの移動と判断してクリック信号を生成しない場合もある。」

上記記載によれば、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
「感知領域を介して、指の下げを認識し、その後に指の上げが認識されれば、指の下げ時間T1および指の上げ時間T2間のクリック持続時間ΔT1を算出し、クリック持続時間ΔT1が所定の時間範囲TL≦ΔT1≦THであれば、クリック持続時間ΔT1の間の指の水平移動量Dを算出し、算出された指の水平移動Dが定められた範囲DL≦D≦DHであれば、移動量が小さいものとして、ポインタの移動ではなくクリックであると判断する光ポインティング装置におけるクリック認識方法。」

B.対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
・引用発明の「タッチパッド入力装置14」、タッチパッド下部に設けられた「機械的スイッチ(ボタン)30」は、それぞれ補正発明1の「タッチセンサーパッド」及びタッチセンサーパッドの下の「少なくとも一つのスイッチ」に相当し、引用発明「タッチパッド入力装置14」及び「機械的スイッチ(ボタン)30」は、補正発明1の「タッチセンサーパッドと、該タッチセンサーパッドの下に少なくとも一つのスイッチとを持つ使用者入力部」に相当する。
・引用発明の「ボタンタイマ期間内に」、「所定距離の横方向のタッチの動きが検出されずに機械的スイッチ(ボタン)30が押された場合には、キーパッド(キーパッドエミュレーション制御モード)に入り、そのタッチ位置に関連するコマンドを実行」することを司る部分は、補正発明1の「前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断し、前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記スイッチのプレスが開始された位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第1の位置の情報を保存し、所定時間内に前記スイッチのプレスがリリースされると、前記スイッチのプレスがリリースされた位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第2の位置の情報を保存し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が予め設定された範囲内に存在すれば、前記タッチセンサーパッドの前記第1の位置から前記スイッチがクリックされたと判断し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が前記予め設定された範囲以上であれば、前記スイッチがクリックされていないと判断する、制御部」と「前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断し、前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記タッチセンサーパッドの前記タッチが発生した位置から前記スイッチがクリックされたと判断する、制御部」である点では共通するといえる。
・引用発明の「標準的なコンピュータ12、表示装置16、コンピュータ12の入力装置としてタッチセンシティブ表面18を有するタッチパッド入力装置14を備えるシステム」は、補正発明1と同様に「ディスプレイ装置」といい得る。

したがって、両者は、
「タッチセンサーパッドと、該タッチセンサーパッドの下に少なくとも一つのスイッチとを持つ使用者入力部と、
前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断し、前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記タッチセンサーパッドの前記タッチが発生した位置から前記スイッチがクリックされたと判断する、制御部と、
を含むことを特徴とするディスプレイ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
補正発明1は、制御部が、「前記タッチセンサーパッドの使用者のタッチ入力に応じて、タッチが発生した場合、前記タッチが発生した状態でスイッチがプレスされているかを判断し、前記スイッチがプレスされたと判断した場合、前記スイッチのプレスが開始された位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第1の位置の情報を保存し、所定時間内に前記スイッチのプレスがリリースされると、前記スイッチのプレスがリリースされた位置に対応する、前記タッチセンサーパッドの第2の位置の情報を保存し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が予め設定された範囲内に存在すれば、前記タッチセンサーパッドの前記第1の位置から前記スイッチがクリックされたと判断し、前記第1の位置と前記第2の位置との差が前記予め設定された範囲以上であれば、前記スイッチがクリックされていないと判断する」ものであり、「前記第1の位置が座標(X,Y)を有し、前記第2の位置が座標(X’,Y’)を有し、前記制御部は、|X-X'|が予め設定された第一臨界値以下であり、|Y-Y'|が予め設定された第二臨界値以下であることに応答して、前記タッチセンサーパッドが前記第1の位置でクリックされたと判断する」のに対し、引用発明は、制御部が、機械的スイッチ(ボタン)30がクリックされたか否かについて上記のような判断処理をするものではない点。

C.判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記「A2.引用文献2」の項に記したように、「感知領域を介して、指の下げを認識し、その後に指の上げが認識されれば、指の下げ時間T1および指の上げ時間T2間のクリック持続時間ΔT1を算出し、クリック持続時間ΔT1が所定の時間範囲TL≦ΔT1≦THであれば、クリック持続時間ΔT1の間の指の水平移動量Dを算出し、算出された指の水平移動Dが定められた範囲DL≦D≦DHであれば、移動量が小さいものとして、ポインタの移動ではなくクリックであると判断する光ポインティング装置におけるクリック認識方法。」(引用文献2記載事項)が記載されているが、該引用文献2記載の技術は、「別のボタンを用いずに光ポインティング装置上における指の動きだけでクリックを感知する」(【0010】の記載。)ことを課題としており、機械的スイッチ(ボタン)30によってクリックを感知する引用発明に適用する動機付けはない。
さらに、引用発明は、機械的スイッチ(ボタン)30のプレスとリリースでクリックを感知するものでない点を鑑みれば、引用発明に引用文献2記載の技術を適用することが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

また、拒絶査定において引用された他の引用文献にも、上記相違点に係る補正発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。

ほかに、引用発明において上記相違点に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。

以上のとおりであるから、補正発明1は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ほかに、補正発明1を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
本件補正後の請求項9に係る発明(以下、「補正発明9」という。)についても補正発明1と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができたものであって、補正事項2についても補正事項1と同様に、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?12に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、補正発明1、補正発明9は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、補正発明1を直接又は間接的に引用する請求項2?8に係る発明は、補正発明1に係る発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
補正発明9を直接的に引用する請求項10?12に係る発明は、補正発明9をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-07 
出願番号 特願2011-37289(P2011-37289)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桜井 茂行中野 裕二  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
和田 志郎
発明の名称 ディスプレイ装置及びその制御方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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