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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1321155
審判番号 不服2014-21634  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2016-11-02 
事件の表示 特願2012- 21186「電力の島を使用した集積回路での電力の管理」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日出願公開、特開2012-123823〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年(平成16年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年(平成15年)5月7日、米国)を国際出願日とする特願2006-532832号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成21年8月24日に特願2009-193326号として特許出願し、さらに、同出願の一部を同規定により、平成24年2月2日に特許出願したものであって、平成25年3月1日に手続補正がなされ、平成25年7月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月22日付けで手続補正がなされたが、同年6月24日付けで拒絶の査定がなされ、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされた(平成26年10月24日付け手続補正を、以下、「本件補正」という。)。
その後、当審において、平成27年10月20日付けで拒絶理由を通知し、平成28年4月27日に意見書が提出されたものである。

2.当審が通知した拒絶理由
平成27年10月20日付けで当審が通知した拒絶理由は、
「【本願の出願日について】
本願は、特願2009-193326号(以下「原出願」という。)の分割出願であるところ、以下の【理由A】に示した理由と同様の理由により、本願の特許請求の範囲は、原出願の当初明細書等に記載されていない事項を含むものである。
したがって、本願の出願日は、実際に願書及び当初明細書等が提出された平成24年2月2日と認める。」
という認定を前提としたものであり、当該拒絶理由のうち、請求項1に対して特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことを理由とするものは、次のとおりである。

「A.平成26年10月24日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

【理由A】
1.本件補正後の請求項1、13及びこれらの従属項について

本件補正後の請求項1には、以下の事項が記載されている。
「前記第2の電力マネージャは、
a)前記第1の電力マネージャと通信し、
i)前記第1の電力の島のソース電圧を変更し、
ii)前記変更の後に、前記第1の電力の島の前記ソース電圧が落ち着くのを待機し、
iii)前記待機の後に、前記第1の電力の島のゼロで無いクロック周波数を異なるゼロで無いクロック周波数に変更することにより、
b)前記第1の電力の島の前記第2の消費電力を管理する要求に応答するように構成されるシステム。」

しかしながら、以下のとおり、「第2の電力マネージャ」という1つの機構が、本件補正後の請求項1の上記a)、i)からiii)、b)の全ての動作を行うことは、当初明細書等には記載されておらず、当業者にとって自明な事項ともいえない。

出願当初の明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0045】には、「SPM264はVdd muxを切り替える。ステップ526において、SPM264はクロックmuxを切り替える。ある実施例では、電圧が低下すると、ステップ526はステップ524の前に実行される。ステップ528では、SPM264は関連のトランジスタでVtを変化させる。SPM264が動作を実行した後に、ステップ530において、SPM264は肯定応答又は否定応答を示す状態メッセージをアップストリームで返信する。」との記載があり、この箇所には、SPM(スレーブ電力マネージャ)が電圧やクロックを切り替えることは記載されているが、SPMが電力の島のソース電圧を変更した後に、ソース電圧が落ち着くのを待機することは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。
また、当初明細書の段落【0051】には、「PMCL218は、SPU290にコマンドを送信し、選択された電力ピンでのVddを変更し、影響を受けた領域が“落ち着く”ことを待機する。・・・(略)・・・ステップ822において、電力マネージャ(すなわち、MPM280、IPM、又はSPM264及び274)の1つは、指定の周波数を設定する。」との記載があり、この箇所には、PMCL(電力管理制御レイヤ)が、SPUにコマンドを送信し、選択された電力ピンでのVddを変更し、影響を受けた領域が“落ち着く”ことを待機すること、及び電力マネージャが指定の周波数を設定することは記載されているが、PMCLが周波数を変更すること、又は、電力マネージャが影響を受けた領域が“落ち着く”ことを待機することは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。
また、上記段落【0051】の「PMCL218は、SPU290にコマンドを送信し、選択された電力ピンでのVddを変更し、」という記載及び図2の、PMCL218と各電力の島260、270がSPU290を介して接続されている構成からみて、各電力の島の電圧の変更は、PMCLからコマンドを受信したSPUが行っているものと認められ、PMCLが各電力の島の電圧の変更を行っているものとは認められない。したがって、PMCLが各電力の島の電圧の変更を行っていることは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。

以上のとおり、「第2の電力マネージャ」という1つの機構が、本件補正後の請求項1の上記a)、i)からiii)、b)の全ての動作を行うことは、当初明細書等には記載されておらず、当業者にとって自明な事項ともいえない。 」

3.請求人の主張
平成28年4月27日付け意見書における上記【理由A】の項目1についての請求人の主張は、次のとおりである。
「理由Aの項目1にてご指摘の事項は当たらないものと思料いたします。
まず、理由Aの項目1においては、
「SPMが電力の島のソース電圧を変更した後に、ソース電圧が落ち着くのを待機することは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。」
と指摘されております。しかしながら、明細書の【0051】段落には、
「ステップ812において、PMCL218は、MPM280にコマンドを送信し、SPM264及び274(及びIPM)にVdd変化の準備をさせる。ステップ814において、PMCL218はMPM280からの肯定応答を待機する。ステップ816において、PMCL218は、SPU290にコマンドを送信し、選択された電力ピンでのVddを変更し、影響を受けた領域が"落ち着く"ことを待機する。ステップ818において、PMCL218は、MPM280に"指定の周波数での動作をレジュームする"コマンドを送信する。ステップ820において、MPM280は、全ての影響を受けるSPM264及び274(及びIPM)にレジュームコマンドを伝搬する。ステップ822において、電力マネージャ(すなわち、MPM280、IPM、又はSPM264及び274)の1つは、指定の周波数を設定する。ステップ824において、IPユニットの動作は、クロックが落ち着いた後にレジュームする。図8はステップ826で終了する。ある実施例では、ユーザアプリケーションは、全体の動作が終了又は継続することを待機する選択肢を有し、動作の進行に関してPMCLに問い合わせ、又はPMCL218から"終了"の割込みを待機する。」(下線追加)
と記載しております。ここで、PMCL218が「第1の電力マネージャ」の一部であり、SPU290が「第1の電力マネージャ」の一部であることは、当業者にとって自明です。
また、理由Aの項目1においては、
「PMCLが周波数を変更すること、又は、電力マネージャが影響を受けた領域が"落ち着く"ことを待機することは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。」
と指摘されております。しかしながら、第1の電力の島のソース電圧が落ち着くのを待つ「第2の電力マネージャ」は、SPU290とSPMの両方を包含しますので、請求項1及び13において、影響を受けた領域が安定するまでPMCL218および/またはMPMが落ち着くか否かは関係ありません。そして、第1の電力の島のソース電圧が落ち着くのを待つ点は、上述の通り、明細書の【0051】段落に記載されております。
さらに、理由Aの項目1においては、
「PMCLが各電力の島の電圧の変更を行っているものとは認められない。したがって、PMCLが各電力の島の電圧の変更を行っていることは記載されておらず、この事項が当業者にとって自明であるともいえない。」
と指摘されております。しかしながら、上述の通り、「第2の電力マネージャ」は、SPU290とSPMの両方を包含するものであって、PMCL218とMPMの両方を包含する第1の電力マネージャとは相違します。
したがいまして、理由Aの項目1にてご指摘の事項は当たらないものと思料いたします。」

4.当審の判断
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
〈本件補正後の請求項1〉
「【請求項1】
動作中に消費電力を生じる集積回路であり、前記消費電力は、第1及び第2の消費電力を含む集積回路と、
関連する消費電力を有する第1の電力の島を含む前記集積回路の複数の電力の島であり、前記第1の電力の島の前記関連する消費電力は、前記第2の消費電力である複数の電力の島と、
前記集積回路のニーズ及び動作に基づいて前記第1の消費電力を管理するように構成された第1の電力マネージャと、
第2の電力マネージャと
を有し、
前記第2の電力マネージャは、
a)前記第1の電力マネージャと通信し、
i)前記第1の電力の島のソース電圧を変更し、
ii)前記変更の後に、前記第1の電力の島の前記ソース電圧が落ち着くのを待機し、
iii)前記待機の後に、前記第1の電力の島のゼロで無いクロック周波数を異なるゼロで無いクロック周波数に変更することにより、
b)前記第1の電力の島の前記第2の消費電力を管理する要求に応答するように構成されるシステム。」

本件補正後の請求項1のうち、
「前記第2の電力マネージャは、
a)前記第1の電力マネージャと通信し、
i)前記第1の電力の島のソース電圧を変更し、
ii)前記変更の後に、前記第1の電力の島の前記ソース電圧が落ち着くのを待機し、
iii)前記待機の後に、前記第1の電力の島のゼロで無いクロック周波数を異なるゼロで無いクロック周波数に変更することにより、
b)前記第1の電力の島の前記第2の消費電力を管理する要求に応答するように構成される」という技術的事項(以下、「技術的事項A」という。)について、それが、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものといえるか否かについて検討する。

まず、請求人は、上記平成28年4月27日付け意見書において、「PMCL218が「第1の電力マネージャ」の一部であり、SPU290が「第1の電力マネージャ」の一部であることは、当業者にとって自明です。」、「「第2の電力マネージャ」は、SPU290とSPMの両方を包含するものであって、PMCL218とMPMの両方を包含する第1の電力マネージャとは相違します。」と主張しているので、それを前提に検討する。
請求人が、平成28年4月27日付け意見書において、補正の根拠と主張している当初明細書等の段落【0051】には、請求人が主張するとおり、「ステップ812において、PMCL218は、MPM280にコマンドを送信し、SPM264及び274(及びIPM)にVdd変化の準備をさせる。ステップ814において、PMCL218はMPM280からの肯定応答を待機する。ステップ816において、PMCL218は、SPU290にコマンドを送信し、選択された電力ピンでのVddを変更し、影響を受けた領域が“落ち着く”ことを待機する。ステップ818において、PMCL218は、MPM280に“指定の周波数での動作をレジュームする”コマンドを送信する。ステップ820において、MPM280は、全ての影響を受けるSPM264及び274(及びIPM)にレジュームコマンドを伝搬する。ステップ822において、電力マネージャ(すなわち、MPM280、IPM、又はSPM264及び274)の1つは、指定の周波数を設定する。ステップ824において、IPユニットの動作は、クロックが落ち着いた後にレジュームする。図8はステップ826で終了する。ある実施例では、ユーザアプリケーションは、全体の動作が終了又は継続することを待機する選択肢を有し、動作の進行に関してPMCLに問い合わせ、又はPMCL218から"終了"の割込みを待機する。」と記載されている。
しかしながら、上記記載から導かれる技術的事項は、第1の電力マネージャであるPMCL218はSPU290に島の電圧を変更させ、第1の電力マネージャであるPMCL218は、島の電圧が落ち着くまで待機し、第1の電力マネージャであるPMCL218は、MPM280を介して第2の電力マネージャであるSPM264,274に対して、周波数の指定のコマンドを送信し、第2の電力マネージャであるSPM264,274は島の周波数の設定を行うといった程度のことまでで、上記技術的事項Aのうちの、「第2の電力マネージャが、第1の電力の島のソース電圧を変更し、第2の電力マネージャが、第1の電力の島のソース電圧の変更の後に、第1の電力の島のソース電圧が落ち着くのを待機する」という技術的事項までは、上記段落【0051】の記載からは導出されない。そして、そのような技術的事項は、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。

また、当初明細書等のその他の箇所を精査しても、「第2の電力マネージャ」という1つの機構が、本件補正後の請求項1の上記a)、i)からiii)、b)の全ての動作を行うことを示す記載は見当たらず、そうすることが、当業者にとって自明な事項ともいえない。
したがって、上記技術的事項Aは、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項に該当するものであり、特許請求の範囲をその新たな技術的事項を含むものとする本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の要件を満たさないものである。
したがって、本願は、他の拒絶の理由を検討するまでもなく、特許法第49条第1号の規定により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-02 
結審通知日 2016-06-07 
審決日 2016-06-21 
出願番号 特願2012-21186(P2012-21186)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三浦 みちる猪瀬 隆広  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山田 正文
高瀬 勤
発明の名称 電力の島を使用した集積回路での電力の管理  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 緒方 和文  
代理人 黒瀬 泰之  

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