• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1321165
審判番号 不服2015-15326  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-17 
確定日 2016-11-02 
事件の表示 特願2013-149985「クロマトグラフィーアッセイシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-242326〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年5月3日(パリ条約による優先権主張 平成15年5月2日 米国)を国際出願日とする出願(特願2006-514257号)の一部を,平成21年11月30日に新たな特許出願(特願2009-271148号)として出願したものの一部を,さらに平成25年7月19日に新たな特許出願(特願2013-149985号)として出願したものであって,平成26年4月22日付けで拒絶理由が通知され,同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成27年4月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年8月17日付けの手続補正書(以下,「本件手続補正書」という。)による補正について
1 本件手続補正書による補正の内容
本件手続補正書による補正は,請求項1を次のように補正する事項を含むものである。

補正前の請求項1(平成26年11月6日付けの手続補正による)の,
「少なくとも1つのリザーバ領域および1つのウイッキング膜を備え,特異的結合パートナーと共有結合し並びに単一粒子中に300,000?1,000,000個のランタニド(lanthanide)(III)キレートを含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されており,および少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分が前記ウイッキング膜上に固定化されている,側方流動アッセイ形式の検体検出装置。」
とあったのを,
「少なくとも1つのリザーバ領域および1つのウイッキング膜を備え,特異的結合パートナーと共有結合し並びに単一粒子中に300,000?1,000,000個のランタニド(lanthanide)(III)キレート又はユーロピウム(europium)(III)を含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されており,および少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分が前記ウイッキング膜上に固定化されている,側方流動アッセイ形式の検体検出装置。」(下線は補正箇所を示す。)と補正する。

2 補正の目的及び新規事項
(1)標識粒子に含まれるものが,補正前は「ランタニド(lanthanide)(III)キレート」だけであったところ,補正後に「ランタニド(lanthanide)(III)キレート又はユーロピウム(europium)(III)」とユーロピウム(europium)(III)も含み得ることが追加された。
よって,該補正事項は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないし,誤記の訂正とも明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとも認められない。

また,本願明細書の発明の詳細な説明の記載には,標識粒子に含まれる「ユーロピウム(europium)(III)」は,蛍光標識となり得る「キレート」として含まれることが記載されているだけであるから,キレート以外の化合物として「ユーロピウム(europium)(III)を含む」標識粒子は,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものではない。

(2)請求人の主張
請求人は,当該補正事項について,審判の請求の理由において,
「(2)請求項の補正
補正前請求項1に補正前請求項2の構成要件の一部を追加する補正を致しました。また,補正前請求項2-15を削除する補正をしました。」と主張しており,補正前の請求項2は,次のとおりのものである。
「前記ランタニド(lanthanide)(III)キレートが,ユーロピウム(europium)(III),テルビウム(terbium)(III),サマリウム(samarium)(III),またはジスプロシウム(dysprosium)(III),あるいはそれらの組み合わせである,請求項1に記載の装置。」
と主張している。
そうすると,本件手続補正書による請求項1の補正は,「ランタニド(lanthanide)(III)キレート又はユーロピウム(europium)(III)キレートを含む標識粒子」の誤記の可能性も考えられるものである。

3 小括
本件手続補正書による補正前後において,その特許請求の範囲の請求項1の記載は,標識粒子が「ランタニド(lanthanide)(III)キレートを含む標識粒子」である場合を含むものである点については何ら変更されていないから,標識粒子が「ランタニド(lanthanide)(III)キレートを含む標識粒子」である場合の当該請求項1に係る発明が特許を受けることができない場合には,本件手続補正書による補正の適否にかかわらず,本願は特許を受けることができないこととなる。
このような事情に鑑み,本件手続補正書による請求項1についての補正の適否についての検討を差し措き,標識粒子が「ランタノイド(III)キレート」を含むものであることが特定されるところの補正後の請求項1に係る発明(以下,この発明を「本願発明」という。)について検討することとする。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,本件手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,上記第2の2で述べたとおり,本願発明は,以下のとおりのものと認めることとする。
「少なくとも1つのリザーバ領域および1つのウイッキング膜を備え,特異的結合パートナーと共有結合し並びに単一粒子中に300,000?1,000,000個のランタニド(lanthanide)(III)キレートを含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されており,および少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分が前記ウイッキング膜上に固定化されている,側方流動アッセイ形式の検体検出装置。」

第4 引用例の記載事項
1 刊行物1:特開2003-83970号公報(以下,「刊行物1」という。)
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日(以下,「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物1には,「試験片を用いた被検物質の測定方法及び装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下,同様。)
(刊1ア)「【特許請求の範囲】
(略)
【請求項8】毛管現象により液体試料を展開することができる領域を少なくとも一部に有し,第1,第2及び第3の領域がこの順序に設定された担体と,担体上の第1の領域に,液体とともに展開可能に担持され,検出可能な標識を有する第1の物質と,担体上の第2の領域に固定された,被検物質に特異的に結合する第2の物質とを有し,前記第1の物質は,被検物質に特異的に結合するか,又は被検物質と競合して第2の物質に特異的に結合する試験片を用いて,液体試料中の被検物質の濃度を測定するための装置であって,
試験片の第1の領域から第3の領域までの標識を光学的に検出する検出器と,
第2の領域において検出された標識の量を,担体の第2の領域以外の領域の一部または全部において検出された標識の量に基づいて補正する補正手段とを備えた装置。」

(刊1イ)「【0010】<1>ステップ(A)及び(a)
このステップでは,毛管現象により液体試料を展開することができる領域を少なくとも一部に有し,第1,第2及び第3の領域がこの順序に設定された担体と,担体上の第1の領域に,液体とともに展開可能に担持され,検出可能な標識を有する第1の物質と,担体上の第2の領域に固定された,被検物質に特異的に結合する第2の物質とを有する試験片を用いる。サンドイッチ法においては,前記第1の物質としては,被検物質に特異的に結合する物質が用いられる。また,競合法においては,被検物質と競合して第2の物質に特異的に結合する物質が用いられる。本明細書において,前記第1の領域及び第2の領域は,それぞれリリース部位,及び捕捉部位ともいう。
【0011】上記試験片は,通常イムノクロマトグラフィーに用いられる試験片と同様にして製造することができる。本発明に用いる試験片の一例を,図1に示す。この試験片は,試料適用部位,リリースパッド(標識した第1の物質を担持する部材),クロマトグラフィー媒体,及び吸収パッドを,各々一部が重なるように張り合わせられて,担体を構成している。ポリビニルアルコールコート・グラスファイバは,試料を適用する部位を構成する。リリースパッドには,標識した第1の物質を担持するリリース部位が設定されている。クロマトグラフィー担体には,第2の物質を固定した捕捉部位が設定されている。第2の領域と第3の領域は,図2に示すように,同一のメンブレン上にあってもよい。
【0012】試料適用部位は,その上に液体試料を滴下するか,あるいは試料適用部位を液体試料に浸漬させる等して,液体試料をリリース部位及びクロマトグラフィー媒体まで展開させるためのものである。試料適用部位には,ポリビニルアルコールコート・グラスファイバ,セルロースメンブレン等を用いることができる。
【0013】リリースパッドは,その一部又は全体に設定されたリリース部位に,被検物質に特異的に結合する第1の物質を,液体試料とともに展開可能に担持することができるものであればよく,グラスファイバ等が挙げられる。市販の素材(例えば,コンジュゲート・リリース,F075-17, Whatman社)を用いてもよい。
【0014】クロマトグラフィー媒体は,その上に設定された捕捉部位に,被検物質に特異的に結合する第2の物質を固定化することができ,さらに,第1の物質が保持する標識の検出を妨げないものであって,毛管現象により液体試料を展開することができるものであれば,特に制限されない。通常,溶媒に不溶性の多孔性物質が用いられる。具体的には例えば,ガラスやシリカなどの無機繊維からなる濾紙,又は,ニトロセルロース等の変性セルロースからなる濾紙が挙げられる。」

(刊1ウ)「【0016】担体のリリース部位には,検出可能な標識を有する第1の物質を担持させておく。第1の物質は,リリースパッドの表面に担持させても,リリースパッドの内部に染み込ませてもよい。第1の物質は例えば,サンドイッチ法においては,被検物質がタンパク質,ペプチド等の抗原の場合には,それに結合する抗体が挙げられ,被検物質が抗体である場合には,それに対する抗原又は当該抗体の調製に用いた動物のイムノグロブリンに結合する抗体等が挙げられる。

(刊1エ)「【0018】第1の物質は,検出可能な標識物質を用いて標識される。標識物質としては,被検物質に結合したまま担体上を展開することができ,被検物質が第2の物質により捕捉部位に捕捉されたときに,被検物質とともに捕捉部位に留まるものであって,何らかの手段によって検出可能なものである限り,特に制限されない。例えば,色素,発光物質,生物発光物質,蛍光物質,発色反応を触媒する酵素等が挙げられる。
【0019】また,標識物質は,単独で用いてもよいし,複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば,目視による定性的な検出が可能な標識物質で標識した第1の物質と,光学系機器を用いて定量的な検出が可能な標識物質で標識した第1の物質を混合して用いることができる。具体的には,色素と蛍光体を封入したラテックスのミクロカプセルを用いる方法や,金コロイドで標識した第1の物質と蛍光物質で標識した第1の物質を混合して用いる方法等が挙げられる。あるいは,フルオロセインのように,蛍光性を有する色素を用いると,目視による検出と,蛍光による機器分析が可能となる。さらに,標識物質として,ユーロピウム(Eu)錯体を封入したラテックスと,カラーラテックスを用い,これらに第1の物質を結合させたものを混合して用いると,目視及び蛍光の測定が可能になる。すなわち,Eu錯体は白色であるため白い試験片上では見えないが,カラーラテックスと混合することにより,目視による検出が可能となる。」

(刊1オ)「【0021】第2の物質は,例えば,被検物質がタンパク質,ペプチド等の抗原の場合には,それに結合する抗体が,被検物質が抗体である場合には,それに対する抗原又は当該抗体の調製に用いた動物のイムノグロブリンに結合する抗体等が挙げられる。抗体としては,イムノグロブリン分子であってもよく,その派生物であるF(ab’)2,Fab’,Fab等の断片であってもよい。その他,第2の物質としては,被検物質に結合性を有する核酸,人工ポリマ,糖質,脂質,無機物質又は有機配位子,ウィルス,各種薬物等が挙げられる。第2の物質は,被検物質に第1の物質が結合する部位と異なる部位に結合するものであることが好ましい。例えば,被検物質がタンパク質,ペプチド等である場合は,第1の物質及び第2の物質は,それぞれエピトープが異なる抗体を用いる。また,第1の物質をモノクローナル抗体とし,第2の物質をポリクローナル抗体とすることもできる。」

(刊1カ)「【0053】
・・・
【符号の説明】
・・・
14.クロマトグラフィー媒体(ポリエステルサポート付きニトロセルロース・メンブレン)」

(刊1キ) 図1


(刊1ク) 図2


[刊行物1に記載された発明]
(1) 図1(刊1キ)及び図2(刊1ク)は,(刊1イ)の【0011】に図1及び図2の言及があるように,上記記載(刊1イ)で説明されているものである。該図に記載の試験片の構造と(刊1イ)の記載を照らし合わせると,「試料適用部位」上に「液体試料を滴下するか,あるいは試料適用部位を液体試料に浸漬させる等して」適用された液体試料を,試料適用部位に一部重なった「リリース部位及びクロマトグラフィー媒体」まで試験片の長手方向へと展開させる試験片であることが理解される。

(2) 図の符号について記載された(刊1カ)に「14.クロマトグラフィー媒体(ポリエステルサポート付きニトロセルロース・メンブレン)」と記載されており,図1(刊1キ)及び図2(刊1ク)記載のものにおいては,ニトロセルロース・メンブレンからなるクロマトグラフィー媒体が用いられていることが理解される。

(3) 「第1の物質は例えば,サンドイッチ法においては,被検物質がタンパク質,ペプチド等の抗原の場合には,それに結合する抗体が挙げられ」(刊1ウ)と記載され,「第2の物質は,例えば,被検物質がタンパク質,ペプチド等の抗原の場合には,それに結合する抗体」(刊1オ)が挙げられている。さらに,「被検物質がタンパク質,ペプチド等である場合は,第1の物質及び第2の物質は,それぞれエピトープが異なる抗体を用いる。」(刊1オ)とされている。
そうすると,被検出物質としてタンパク質及びペプチド等の抗原を測定する際には,第1の物質及び第2の物質は,共に被検物質に結合するそれぞれエピトープの異なる抗体であることが理解される。

(4) 小括
これらの記載を含め摘記事項に付した下線の事項を整理すると,刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「試料適用部位,リリースパッド,ニトロセルロース・メンブレンからなるクロマトグラフィー媒体及び吸収パッドをこの順序でそれぞれ重なり合わせて有する試験片であって,
タンパク質及びペプチド等の抗原を被検出物質とし,
被検出物質に特異的に結合する第1の物質である抗体及びユーロピウム錯体を含む標識粒子がリリースパッドに含浸されており,
クロマトグラフィー媒体には,第2の物質として,被検出物質に特異的に結合する,第1の物質である抗体とはエピトープの異なる抗体を固定し,
試料適用部位上に滴下して適用された液体試料を,該試験適用部位と一部重なったリリース部位及びクロマトグラフィー媒体まで試験片の長手方向へと展開させる試験片。」(以下,「刊行物1発明」という。)

2 刊行物2:特開平11-108926号公報(以下,「刊行物2」という。)
同じく原査定の拒絶の理由に引用され,本件優先日前に頒布された刊行物2には,「物質の測定方法」について,次の事項が記載されている。
(刊2ア)「【0012】(2)固相担体
本発明に用いる固相担体は,測定対象物質を捕捉するためのものであり,該担体上には,かかる捕捉反応を行うために,通常,前記測定対象物質と特異的に結合しうる物質を固定化(担持)する。
・・・
【0017】前記測定対象物質が抗原であり,該抗原を測定する免疫測定法を行う場合は,固相担体に固定化する抗体として,好ましくはIgGが用いられるが,ペプシン,パパインなどの消化酵素あるいはジチオスレイトール,メルカプトエタノールなどの還元剤を用いて,F(ab’)_(2),Fab’,Fabなどの低分子化したものを用いてもよい。また,IgGだけでなくIgMあるいはこれをIgGと同様の処理で低分子化したフラグメントを用いてもよい。また,モノクローナル抗体,ポリクローナル抗体のいずれも適用できる。」

(刊2イ)「【0018】これらの物質を固相担体へ固定化する方法としては,物理的吸着法や,共有結合法,イオン結合法といった化学的に担持させる方法などが用いられる。物理的吸着法としては,担体粒子に抗体又は抗原を直接固定化する方法,アルブミンなどの他のタンパク質に化学的に結合させてから吸着させて固定化する方法などが挙げられる。
【0019】化学的に担持させる方法としては,担体表面に存在するアミノ基,カルボキシル基,メルカプト基,ヒドロキシル基,アルデヒド基,エポキシ基などを化学的に修飾することにより抗体,抗原等の分子と結合させることができる官能基を利用して,直接担体上に固定化する方法,担体と抗体,抗原等の分子との間にスペーサー分子(カルボジイミド化合物など)を化学結合で導入して固定化する方法,アルブミンなどの他のタンパク質に抗体,抗原等を結合させた後,そのタンパク質を担体に化学結合させる方法などが挙げられる。」

3 刊行物3:Harri Harma,Tero Soukka & Timo Lovgren,Clinical Chemistry,47:3,pp.561-568(2001)(当審注:「Harma」の2つのaの上には「・・」が付く。また,「Lovgren」のoの上には「・・」が付く。)(以下,「刊行物3」という。)
同じく原査定の拒絶の理由に引用され,本件優先日前に頒布された刊行物3は,「Europium Nanoparticles and Time-resolved Fluorescence for Ultrasensitive Detection of Prostate-specific Antigen 」(当審訳:前立腺特異抗原の超高感度検出のためのユーロピウムナノ粒子及び時間分解蛍光)と題する論文であって,図面と共に次の事項が記載されている。
なお,刊行物3は,本願明細書に蛍光標識についての従来技術を示す文献として例示されているものである(段落【0008】)。

(刊3ア)「Background: Nanoparticle-based detection technologies have the potential to improve detection sensitivity in miniature as well as in conventional biochemical assays. We introduce a detection technology that relies on the use of europium(III) nanoparticles and time-resolved fluorometry to improve the detection limit of biochemical assays and to visualize individual molecules in a microtiter plate format.
Methods: Streptavidin was covalently coated on 107-nm nanoparticles containing 30 000 europium molecules entrapped with β-diketones. In a model assay system, these nanoparticles were used to trace biotinylated prostate-specific antigen (PSA) in a microtiter plate format.
Results: The detection limit (mean + 3 SD of the zero calibrator) of biotinylated PSA was 0.38 ng/L, corresponding to 10 fmol/L or 60 zeptomoles (60 × 10^(-21)moles) of PSA. Moreover, single nanoparticles, representing individual PSA molecules, were visualized in the same microtiter wells with a time-resolved fluorescence microscope using a ×10 objective. Single nanoparticles, possessing high specific activity, were also detected in solution by a standard time-resolved plate fluorometer.
Conclusions: The universal streptavidin-coated europium(III) nanoparticle label is suitable for detection of any biotinylated molecule either in solution or on a solid phase. The europium(III) nanoparticle labeling technology is applicable to many areas of modern biochemical analysis, such as immunochemical and multianalyte DNA-chip assays as well as histo- and cytochemistry to improve detection sensitivities. 」(561頁左欄1行?31行)
(当審訳: 背景:ナノ粒子に基づいた検知技術には,従来の生化学の分析と同様に小型での検知感度を改善する可能性がある。私たちは,生化学の分析の検出限界を改善し,かつマイクロプレート・フォーマット方法の個々の分子を視覚化するために,ユーロピウム(III)ナノ粒子および時間分解蛍光測定法の使用に関連する検知技術を導入する。
方法: ストレプトアビジンは,β-ジケトンで捕捉された>30000ユーロピウム分子を含んでいる107nmのナノ粒子上に共有結合で被覆された。モデルアッセイシステムでは,これらのナノ粒子は,マイクロタイタープレート・フォーマットでビオチン付加された前立腺特異性抗原(PSA)を追跡するために使用された。
結果: ビオチン付加されたPSAの検出限界(ゼロ校正液の平均+3SD)は,PSAの10fmol/Lあるいは60zeptomoles(60×10^(-21)モル)に対応する,0.38ng/Lであった。さらに,個々のPSAの分子を表わす単一のナノ粒子は,×10対物レンズを使用する時間分解蛍光顕微鏡で,同じマイクロタイターウエル中で視覚化された。高い特異的活性を有する単一のナノ粒子も,標準時間分解プレート蛍光光度計によって溶液中で検出された。
結論: 汎用のストレプトアビジン-被覆ユーロピウム(III)ナノ粒子標識は,溶液中あるいは固相上のいずれでも任意のビオチン付加された分子の検出に適している。ユーロピウム(III)ナノ粒子標識化技術は,検出感度を改善するために,組織化学および細胞化学と同様に,免疫化学および多重アナライトDNAチップ分析のような,現代の生化学分析の多くの領域に適用可能である。)

(刊3イ)「Materials and Methods
NANOPARTICLES
Europium chelate (β-diketone)-incorporated polystyrene nanoparticles, 107, 210, and 408 nm in diameter (1% solids), were obtained from Seradyn, Inc. The nanoparticles contained carboxyl groups on the surface for covalent bioconjugation.
The number of europium(III) ions in a single nanoparticle was determined by adding the nanoparticles to a 1 mL/L Triton X-100 solution or to the enhancement solution (DELFIA; Perkin-Elmer Life Sciences). The signals obtained by the Victor 1420 multilabel counter were compared with a europium calibrator in the enhancement solution.
The time-resolved fluorescence excitation and emission spectra of nanoparticles (3 pmol/L) in 1 mL/L Triton X-100 and the spectra of europium ions (1 nmol/L) in the enhancement solution were measured with the LS5 spectrofluorometer (Perkin-Elmer Instruments). 」(562頁左欄26行?下から8行)
(当審訳: 材料と方法
ナノ粒子
直径107,210,および408nm(1%の固体)のユーロピウム・キレート化合物(β-ジケトン)-組込みポリスチレンナノ粒子が,Seradyn社から得られた。ナノ粒子は,共有結合バイオコンジュゲーションのために表面上にカルボキシル基を含んでいた。
単一のナノ粒子中のユーロピウム(III)イオンの数は,1mL/LのTriton X-100溶液あるいは増強溶液(DELFIA; パーキン・エルマー・ライフサイエンス)にナノ粒子を加えることにより決定された。Victor1420マルチラベルカウンターによって得られた信号は,増強溶液でのユーロピウム校正液と比較された。
1ml/L Triton X-100中のナノ粒子(3pmol/L)の時間分解蛍光励起および放射スペクトル,および増強溶液中のユーロピウム・イオン(1nmol/L)のスペクトルは,LS5分光蛍光光度計(パーキン・エルマー・インスツルメンツ)で測定された。)

(刊3ウ)「 Results and Discussion
NANOPARTICLES
The number of chelated europium(III) ions in a single nanoparticle was determined by comparing the signal of a known number of particles in the 1 mL/L Triton X-100 solution or in the enhancement solution to an europium(III) calibrator (in the enhancement solution). We found 3.1 × 10^(4)chelated europium(III) ions in a single 107-nm nanoparticle, which was independent of the solution used: the chelating enhancement solution or the nonenhancing Triton X-100 solution. Therefore, the signal originated solely from the nanoparticles and not from free europium(III) ions in the solutions. The number of chelated europium(III) ions in the larger nanoparticles, 210 and 408 nm in diameter, were 2.5 × 10^(5)and 2 × 10^(6), respectively. Fig. 1 shows that no significant difference was observed in the excitation and emission spectra of europium(III) ions in the enhancement solution or the nanoparticles in the Triton X-100 solution because the chelating ligand was the same in both solutions. The difference in the far-ultraviolet region of the excitation spectra can be attributed to the absorbance of the polystyrene polymer matrix of the nanoparticles. In addition to the measured spectra, decay times were determined for the 107-nm nanoparticle suspension in the 1 mL/L Triton X-100 solution as well as for europium(III) in the enhancement solution. Decay times of ?720 μs were measured for both solutions, indicating identical coordination site occupancy of europium(III) ions in the two systems.
The signals of lanthanide chelates are known to be low, as low as 1000-fold lower than signals of rapidly decaying fluorophores, mainly because the emission light is temporally resolved and only a fraction of the emitted light is collected. The concentration of chelated europium(III) ions in the nanoparticles was ?80 mmol/L, which would apparently cause an inner-filter effect when applied to rapidly decaying fluorophores (11). It is not uncommon that rapidly decaying fluorophores self-quench in micromolar concentrations. However, when lanthanide chelates are used, no such effect has been found even in high (millimolar) concentrations. Therefore, the loss in signal attributable to the temporally resolved emission can be effectively compensated by use of nanoparticles containing a high concentration of lanthanide chelates.
The detection limits of the nanoparticles were measured in 200 μL of the 1 mL/L Triton X-100 solution with the standard time-resolved plate fluorometer. As shown in Fig. 2? , one single 408-nm nanoparticle was detected in solution, and the detection limits for the 210- and 107-nm particles were 8 and 75, respectively. 」(564頁左欄下から4行?565頁右欄5行)
(当審訳: 結果と議論
ナノ粒子
単一のナノ粒子中のユーロピウム(III)イオンの数は,1mL/L Triton X-100溶液あるいは増強溶液中の既知数の粒子の信号を,ユーロピウム(III)校正液(増強溶液中の)と比較することにより決定された。私たちは,107nmの単一のナノ粒子中に3.1×10^(4)キレート化ユーロピウム(III)イオンを見つけた。それは使用される溶液:キレーティング増強溶液あるいは非増強Triton X-100溶液に依存しなかった。したがって,信号は,もっぱらナノ粒子から発し,溶液中の自由なユーロピウム(III)イオンからは発生しなかった。直径210と408nmのより大きなナノ粒子の中のキレート化ユーロピウム(III)イオンの数は,それぞれ2.5×10^(5)と2×10^(6)であった。図1は,キレーティング配位子が両方の溶液で同じだったので,増強溶液中のユーロピウム(III)イオンあるいはTriton X-100の溶液中のナノ粒子の励起と放射のスペクトルに重要な違いが観察されなかったことを示す。励起スペクトルの遠紫外線領域の違いは,ナノ粒子のポリスチレン・ポリマーマトリクスの吸光度に帰することができる。測定されたスペクトルに加えて,減衰時間が,増強溶液中のユーロピウム(III)と同様に1mL/L Triton X-100溶液中の107nmのナノ粒子について決定された。?720μsの減衰時間が両方の溶液について測定された。それは,2つのシステムでのユーロピウム(III)イオンの同定的同等サイト占有を示している。
ランタニドキレートの信号は,急速に減衰する発蛍光団の信号より1000倍低いと知られている。その理由は主として,放射光が一時的に分解されるので,放射された光の一部分しか集光されないからである。ナノ粒子の中のキレート化されたユーロピウム(III)イオン濃度は,急速に減衰する発蛍光団に適用された時,あきらかに内部-フィルタ効果を引き起こし得る?80mmol/Lだった。(11)。急速に減衰する発蛍光団がμモル濃度で自己-消光することは珍しくないことではない。しかしながら,ランタニドキレート化合物が使用される場合,そのような効果は高(ミリモル)濃度においてさえ見つかっていない。したがって,時間分解される放射に起因する信号ロスは,高濃度のランタニドキレート化合物を含んでいるナノ粒子の使用によって,有効に補償することができる。
ナノ粒子の検出限界は,200μlの1mL/L TritonX-100溶液中で標準時間分解プレート蛍光光度計を用いて測定された。図2に示されるように,1つの単一408nmのナノ粒子が溶液中で検出された。そして,210nmと107nmの粒子に対する検出限界は,それぞれ8と75であった。)

第5 本願発明と刊行物1発明との対比・判断
1 対比
ア 刊行物1発明の「被検出物質に特異的に結合する第1の物質及びユーロピウム錯体を含む標識粒子が」「含浸されて」いる「リリースパッド」は,本願発明における「リザーバ領域」に相当する。

本願発明の「ウイッキング膜」について,本願明細書の段落【0033】に「乾燥多孔質担体」であり,「使用する代表的な材料としては,ナイロン(nylon),・・・ガラス繊維,およびニトロセルロース(nitrocellulose)が挙げられる」と記載されている。
他方,刊行物1に記載された発明の「クロマトグラフィー媒体」は,(刊1イ)の段落【0014】に「毛管現象により液体試料を展開することができるもの」で,「通常,溶媒に不溶性の多孔性物質が用いられる」と記載されている。
よって,刊行物1発明の「ニトロセルロース・メンブレンからなるクロマトグラフィー媒体」は,上記したように材質,構造及び機能が一致するものであって,本願発明の「ウイッキング膜」に相当する。

そうすると,刊行物1発明の「リリースパッド,ニトロセルロース・メンブレン」は,本願発明の「少なくとも1つのリザーバ領域および1つのウイッキング膜」に相当する。

イ 刊行物1発明の「被検出物質に特異的に結合する第1の物質である抗体」は,その機能からみて,本願発明の「特異的結合パートナー」に相当する。
また,刊行物1発明の「ユーロピウム錯体」は,ユーロピウムが三価,すなわち,(III)であるか不明であるが,ユーロピウムはランタニド系列の元素の一つである。そして,刊行物1発明の「ユーロピウム錯体」の錯体は,キレートとも呼ばれるものである。
さらに,刊行物1発明の「ユーロピウム錯体」は,「リリースパッドに含浸され」ている。
そうすると,刊行物1発明の「被検出物質に特異的に結合する第1の物質である抗体及びユーロピウム錯体を含む標識粒子がリリースパッドに含浸されて」いることと,本願発明の「特異的結合パートナーと共有結合し並びに単一粒子中に30,0000?1,000,000個のランタニド(lanthanide)(III)キレート又はユーロピウム(III)を含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されて」いることとは,「特異的結合パートナー及びランタニド(lanthanide)キレートを含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されて」いる点で共通する。

ウ 本願発明の「ウイッキング膜」上に固定化される「少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分」は,本願明細書に「【0022】・・・この特異的結合パートナーは非限定的に,抗原,抗体,核酸,ビオチンもしくはビオチンアナログ,ストレプトアビジン,アビジンまたはハプテンであってもよい。そしてこの化学成分は,抗原,抗体,核酸,ビオチンもしくはビオチンアナログ,ストレプトアビジン,アビジンまたはハプテンであってもよい。」という記載からみて,特異的結合パートナーとなる「抗体」を包含しているものと解される。
そうすると,刊行物1発明の「第2の物質として,被検出物質に特異的に結合する,第1の物質である抗体」は,本願発明の「少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分」に相当する。
よって,刊行物1発明の「クロマトグラフィー媒体には,第2の物質として,被検出物質に特異的に結合する,第1の物質である抗体とはエピトープの異なる抗体を固定」することは,本願発明の「少なくとも1つの化学成分又は生物学的成分が前記ウイッキング膜上に固定化されている」ことに相当する。

エ 本願明細書には,本願発明の「側方流動アッセイ形式」に関して,その段落【0043】?【0045】に試験デバイスまたはカードまたは小片の説明が記載されており,「試験デバイス」等に「1または2滴の試料を加えた」後に,試料は「試験デバイス等を横切って運ばれる」ことが記載されており,同段落【0046】に「例えば,側方流動アッセイの形式のクロマトグラフィーアッセイは,増幅システムである。液体試料中の標的抗原は,毛管力により膜を通って移動するとき,膜上に固定された高親和性抗体によって次第に濃縮される。」と記載されている。
他方,刊行物1発明の「試料適用部位上に滴下して適用された液体試料を,該試験適用部位と一部重なったリリース部位及びクロマトグラフィー媒体まで試験片の長手方向へと展開させる試験片」は,試料を滴下した後に,長手方向,すなわち,側方に当該試料を展開させるものであることは明らかであり,上記本願明細書に記載された側方流動アッセイの形式に属するものということができる。
してみると,刊行物1発明の「試料適用部位上に滴下して適用された液体試料を,該試験適用部位と一部重なったリリース部位及びクロマトグラフィー媒体まで試験片の長手方向へと展開させる試験片」は,その機能及び構造からみて,本願発明の「側方流動アッセイ形式の検体検出装置」に相当するものといえる。

2 一致点,相違点
本願発明と刊行物1発明とを対比した上記の1を踏まえると,両者は,
(一致点)
「少なくとも1つのリザーバ領域および1つのウイッキング膜を備え,特異的結合パートナー及びランタニド(lanthanide)キレートを含む標識粒子が,前記リザーバ領域に含浸されており,および少なくとも1つの生物学的成分が前記ウイッキング膜上に固定化されている,側方流動アッセイ形式の検体検出装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
標識粒子が,本願発明では,「特異的結合パートナーと共有結合し」ているのに対し,刊行物1発明では,特異的結合パートナーを含むものとはいえるものの,共有結合しているものとは特定されない点。

(相違点2)
ランタニド(lanthanide)が,本願発明においては「(III)」,すなわち3価のランタニドであって,「単一粒子中に30,0000?1,000,000個」を含むものであるのに対し,刊行物1発明では,ランタニド系列のユーロピウムであるが価数が不明であり,また,標識粒子中の数まで規定していない点。

3 相違点についての検討
(1)相違点1について
ア 刊行物3には,「Seradyn社」(刊3イ)から得られる「生化学分析」(刊3ア)用の「直径107,210,および408nm(1%の固体)のユーロピウム・キレート化合物(β-ジケトン)-組込みポリスチレンナノ粒子」(刊3イ)について開示されており,このナノ粒子が,「共有結合バイオコンジュケーションのために表面上にカルボキシル基を含んでいた」(刊3イ)ことについて記載されている。

イ また,刊行物2には,「固相担体」(刊2ア)において「抗体」(刊2ア)を「固定化する」(刊2ア)ことが記載されている。さらに,抗体を「固相担体に固定化する方法」(刊2イ)として「共有結合法」(刊2イ)といった化学的に担持させる方法を用いること,そして,抗体を固相担体に化学的に担持させる際に「カルボジイミド化合物」(刊2イ)をスペ-サ分子として使用することが記載されている。

ウ 上記ア及びイによれば,本件優先権主張日前,粒子に抗体を共有結合により固定化することは周知の技術であるといえるから,試験片に係る刊行物1発明において,ユーロピウム錯体を含有する標識粒子へ,抗体を共有結合して,固定,担持するようなことは,当業者が容易になし得る範囲内の事項に過ぎない。

(2)相違点2について
ア 上記刊行物3には,イムノアッセイに使用される蛍光標識粒子として「ユーロピウムキレートを含む標識粒子」として,直径107nmの単一粒子中に31,000個のキレート化ユーロピウム(III)を含むポリスチレン粒子,直径210μmの単一粒子中に250,000個のキレート化ユーロピウム(III)を含むポリスチレン粒子,直径408nmの単一粒子中に2000,000個のキレート化ユーロピウム(III)を含むポリスチレン粒子が記載されているように,本願優先権主張日前に,このような標識粒子は公知であるものといえるし,また,刊行物3の記載によれば,このような標識粒子は市販されているものであるから,容易に入手可能なものであったといえる。(上記記載(刊3ア),(刊3ウ),(刊3エ)参照)。

イ 刊行物3には,ユーロピウム(III)キレートを含む標識粒子を,刊行物1発明の試験片のような側方流動アッセイ形式の検体検出装置において使用することは記載されていないが,上記記載(刊3ア)に「ユーロピウム(III)ナノ粒子ラベル化技術は,検出感度を改善するために,組織化学および細胞化学と同様に,免疫化学および多重アナライトDNAチップ分析のような,現代の生化学分析の多くの領域に適用可能である。」と免疫化学を含め様々なバイオ分野の検出において,検出感度を改善するために適用可能であることが示唆されている。

ウ してみると,抗体を用いた免疫化学系の発明である刊行物1発明において,ユーロピウムキレートを含む標識粒子として,刊行物3に教示されているユーロピウム(III)キレートを含む標識粒子を使用してみようとすることは,当業者が困難性なくなし得たことといえる。

エ ここで,刊行物3に記載の各直径のポリスチレン粒子の一粒子中に含まれるキレート化ユーロピウム(III)の個数に鑑みると,単一粒子中に含まれる個数は,大きさにより異なるものであることが見て取れるから,刊行物1発明の標識粒子として,刊行物3に記載されている標識粒子を用いる際に,その標識粒子の一粒子中に含まれるキレート化ユーロピウム(III)の個数が本願発明の「30,0000?1,000,000個」程度のものとなる標識粒子を採用することに格別の困難性は認められない。

オ そして,本願発明の詳細な説明には,標識粒子の一粒子中に含まれるランタノイド(III)キレートの個数を「30,0000?1,000,000個」とすることの臨界的意義を見い出すことができる記載はなく,また,本願優先権主張日前の技術常識を参酌してもその臨界的意義を見い出すことはできない。
してみると,本願発明において該個数を「300,000?1,000,000個」としたことは,当該標識粒子を用いて検出する対象物質の濃度に応じて必要とされる検出感度等を考慮して定められるところの最適な範囲を規定した程度のものと解するほかない。

カ 以上のことを総合すると,刊行物1発明のランタニド系列の元素であるユーロピウム錯体を含む標識粒子として,刊行物3に記載の「キレート化ユーロピウム(III)を含む標識粒子」を用いることは,当業者が容易に想到し得ることであり,その際に,一粒子中のキレート化ユーロピウム(III)の個数を「300,000?1,000,000個」程度のものを採用することは,検出対象物質の濃度に応じて必要とされる検出感度等を考慮して適宜定める設計的事項にすぎず,さらに,標識粒子の一粒子中に含まれる個数がそのような範囲のものとなる標識粒子は容易に得ることができるものであるから,上記相違点2は,当業者が容易になし得る程度のことというべきである。

4 本願発明の効果について
刊行物3の記載から,当業者は,キレート化ユーロピウム(III)を含む標識粒子を使用することにより検出感度の改善が期待できることが理解できること,及び,抗体を標識粒子へ固定化する場合,共有結合による標識粒子への抗体の固定化は,吸着などにより固定化する場合と比較して,その固定は強固なものとなる結果,標識粒子からの抗体の脱離の可能性が少ないことは技術常識である。
してみると,本願発明の効果は,当業者が刊行物1?3から予測し得る程度のものであって,格別顕著なものとはいえない。

第6 審理終結後に提出された上申書について
本件審理終結後の平成28年6月2日に請求人は上申書を提出し,審尋も拒絶理由通知も出されること無く審理終結したことに不服を述べ,拒絶理由を出し,弁論の機会を与えて欲しい旨を主張する。そして,平成28年6月9日付けで補正案を記した上申書を提出した。
上申書に審理再開についての明示の記載は無いが,補正案を提出していることから,審尋も拒絶理由通知も出されることが無かったことを審理再開の理由とし,補正案についての審理を要望しているものと解される。

しかしながら,合議体は,審理に必要な事実は全て集まり,審決をするのに熟した,すなわち,原査定の結論の当否を判断できる状態に十分達したと判断し,審理を終結したものであるから,審理の再開の必要を認めない。(審判請求書において既に主張は十分なされており,他に主張べき事項があったのであれば審理終結までに上申書等を提出することもできたにもかかわらず,審理終結までに上申書等の提出は無かった。)
そもそも,審尋及び拒絶理由を出していないということは,審理再開の理由となるものではないし,上申書の内容は,これまでの審理と無関係な新たな補正案の審理を要望するものであって,これまでの審理に影響を及ぼすものではないことを付言する。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,本件優先日前に頒布された上記刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本件手続補正書による請求項1についての補正の適否のいかんにかかわらず,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-23 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-16 
出願番号 特願2013-149985(P2013-149985)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
郡山 順
発明の名称 クロマトグラフィーアッセイシステム  
代理人 庄司 隆  
代理人 庄司 隆  
代理人 庄司 隆  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ