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審決分類 |
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 F04C 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) F04C 審判 全部申し立て 2項進歩性 F04C 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F04C |
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管理番号 | 1321225 |
異議申立番号 | 異議2015-700175 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-11-12 |
確定日 | 2016-08-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5717139号発明「気体圧縮機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5717139号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3-8〕、9、10について訂正することを認める。 特許第5717139号の請求項3ないし10に係る特許を維持する。 特許第5717139号の請求項1及び2に係る特許について申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5717139号の請求項1ないし10に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成23年5月27日に特許出願され、平成27年3月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 有限会社アモニータ(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年3月4日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年5月6日に特許権者 カルソニックカンセイ株式会社(以下、単に「特許権者」という。)により意見書及び訂正特許請求の範囲が添付された訂正請求書の提出があり、平成28年5月19日付けの通知書により特許異議申立人に期間を設定して意見書を提出する機会が与えられ、その指定期間内である平成28年6月23日に異議申立人により意見書の提出がされたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正は、特許第5717139号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし10について訂正するものであって、その内容は以下のアないしカのとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1、請求項2を削除する。 イ 訂正事項2 (ア)訂正事項2のうち請求項3に関する訂正事項 特許請求の範囲の請求項3に、「…、前記油分離器から気体が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気体圧縮機。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改めるとともに、「当該吐出室の圧力を検知する部分が、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように」とあるのを、「回転軸の軸方向の矢視で、当該吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記気体の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように」に訂正する。 (イ)訂正事項2のうち請求項6に関する訂正事項 特許請求の範囲の請求項6に、「…、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられていることを特徴とする請求項1ないし5に記載の気体圧縮機。」とあるうち、請求項1を引用するもの及び請求項2を引用するものを削除して、「…、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられていることを特徴とする請求項3ないし5に記載の気体圧縮機。」に訂正する。 (ウ)訂正事項2のうち請求項8に関する訂正事項 特許請求の範囲の請求項8に、「前記吐出室の圧力を検知する部分が、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように」とあるのを、「前記回転軸の軸方向の矢視で、前記吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記油分の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「…、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の気体圧縮機。」とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改める。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「…、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4に記載の気体圧縮機。」とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改める。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に、「…、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項6ないし8に記載の気体圧縮機。」とあるうち、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用するものについて、独立形式に改める。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に、「…、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項6ないし9に記載の気体圧縮機。」とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改める。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1は特許請求の範囲の請求項1及び請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2について (ア)訂正事項2のうち請求項3に関する訂正事項について 訂正事項2のうち請求項3に関する訂正事項に関連する記載として、本件出願の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0091】には、「トリガーバルブ66の開口66fが、サイクロンブロック60から断続的に噴出する冷媒ガスGの動圧の影響を受けない位置で開口していて、ボール弁体66bはその動圧による影響を受けず」と記載されており、また、段落【0093】には、「なお、図3に示すように、この開口66fが吐出室21に臨んでいる向きVが、サイクロンブロック60から噴出する冷媒ガスGの向きや冷凍機油Rの向きに対して、それぞれ略直交する向きであるため、これら冷媒ガスGの動圧による影響と冷凍機油Rの動圧による影響とを効果的に同時に受けにくくすることができる」と記載されている。 また、図3の説明である段落【0022】の【図3】には、「【図3】(a)は図1における矢視Bによるサイクロンブロック及びリヤサイドブロックを示す図であり」との記載がされており、図1には、矢視Bとして回転軸の軸方向にみる方向が記載されている。 以上のことから、訂正事項2のうち請求項3に関する訂正事項は特許明細書及び図面に記載されているものと認められる。 そして、訂正事項2のうち請求項3に関する訂正事項は、特許明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内において吐出室の圧力を検知する部分の吐出室に臨んでいる向きを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項2のうち請求項6に関する訂正事項について 訂正事項2のうち請求項6に関する訂正事項は、上記訂正事項1により請求項1及び2が削除されたのにともない、訂正前の請求項6の記載が訂正前の請求項1ないし5の記載を引用するものであったのを、請求項3ないし5の記載を引用する記載としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)訂正事項2のうち請求項8に関する訂正事項について 上記(ア)での検討と同様の理由により、訂正事項2のうち請求項8に関する訂正事項は特許明細書及び図面に記載されているものと認められる。 そして、訂正事項2のうち請求項8に関する訂正事項は、特許明細書等に記載した事項の範囲内において吐出室の圧力を検知する部分の吐出室に臨んでいる向きを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1ないし3の記載を引用する記載であったものを、請求項1ないし3の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1の記載のみを含む独立形式請求項へ改めるための訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1ないし4の記載を引用する記載であったものを、請求項1ないし4の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1の記載のみを含む独立形式請求項へ改めるための訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項9の記載が訂正前の請求項6ないし8の記載を引用する記載であったものを、請求項6ないし8の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項6の記載のみを含む独立形式請求項へ改めるための訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項10の記載が訂正前の請求項6ないし9の記載を引用する記載であったものを、請求項6ないし9の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項6の記載のみを含む独立形式請求項へ改めるための訂正といえるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2、〔3-8〕、9、10について訂正を認める。 第3 特許異議の申し立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1ないし10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記油分離器から気体が噴出する領域と異なる領域に設けられ、 前記圧力調整弁は、前記吐出室の圧力を検知する部分を有し、 回転軸の軸方向の矢視で、当該吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記気体の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記油分離器から気体が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項4】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項5】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項6】 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられていることを特徴とする請求項3ないし5に記載の気体圧縮機。 【請求項7】 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記油分離器から遠心分離された油分が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の気体圧縮機。 【請求項8】 前記回転軸の軸方向の矢視で、前記吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記油分の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記油分離器から遠心分離された油分が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の気体圧縮機。 【請求項9】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項10】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし3及び6ないし8に係る特許に対して平成28年3月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 請求項1ないし3及び6ないし8に係る発明は甲1号証に記載された発明、甲2号証に記載された技術、周知技術及び周知課題に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同項に係る特許は、取り消されるべきものである。 3 引用発明、引用技術、周知技術及び周知課題 (1)甲第1号証:特開2004-44414号公報 甲第1号証には、段落【0004】、【0005】、【0018】ないし【0020】、【0024】、【0028】、【0030】、【0037】、【0038】及び図1の記載からみて、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「 フロントハウジング1、シリンダハウジング3及びリアハウジング5の内部に、気体を圧縮する、作動室91を形成するベーン9を押し出すベーン背圧円環溝42を有する圧縮機と、オイルセパレータ55とを備え、 フロントハウジング1、シリンダハウジング3及びリアハウジング5の内部に、オイルセパレータ55が設けられた吐出室56が形成され、 オイルセパレータ55は、油分を分離するものであり、 リアサイドプレート4に、吐出室56内の吐出圧に応じて、ベーン背圧円環溝42の圧力を調整するチャタリング防止バルブ44が設けられ、 チャタリング防止バルブ44は、リアサイドプレート4に、オイルセパレータ55の側方位置に設けられている可変容量型流体機械。」 (2)甲第2号証:特開2008-223526号公報 甲第2号証には、段落【0019】ないし【0023】、【0033】、【0037】、【0040】、【0043】、【0044】、【0049】、【0050】及び【0059】並びに図1の記載からみて、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認める。 「 ハウジング10の内部に、冷媒ガスGを圧縮する、圧縮室48を画成するベーン58を突出させる軸背圧空間79を画成する圧縮機本体60及びサイクロンブロック70と、サイクロンブロック70とを備え、 ハウジング10の内部に、サイクロンブロック70を通じて冷媒ガスGが吐出される吐出室21が形成され、 サイクロンブロック70は冷凍機油Rを分離するものであり、 サイクロンブロック70に、吐出室21の圧力に応じて、軸背圧空間79の圧力を調整する圧力調整弁76が設けられている気体圧縮機において、 ベーン背圧室設計自由度が高く、製造も容易化するため、圧力調整弁76を、圧縮機本体60よりも余裕スペースを多く有するサイクロンブロック70に設けるという技術。」 (3)甲第3号証:特開2010-48099号公報 甲第3号証は遠心分離方式の油分離器が周知技術であることを示す文献であり、段落【0041】には「吐出室13d(吐出空間Da)に吐出された冷媒ガスは、絞り部15gによって絞られ、その後、溝部15fに流入する。冷媒ガスは、溝部15fから連通通路41aへ流入し、連通通路41aから油分離器40に供給される。そして、冷媒ガスは油分離筒44の外周面に吹き付けられるとともに、油分離筒44の外周面及びケース42の内周面を旋回しながら油分離室43の下方へ導かれる。このとき、遠心分離によって冷媒ガスから潤滑油が分離され、潤滑油は油分離室43の下部に向けて滴下する。潤滑油と分離された冷媒ガスの一部は油分離筒44内を上方へ向けて流れ、ガス排出口42aからベーン圧縮機10の外部(例えば、外部冷媒回路)へ吐出される。」と記載されている。 (4)甲第4号証:特開2010-163976号公報 甲第4号証は遠心分離方式の油分離器が周知技術であることを示す文献であり、段落【0033】には「吐出室16内にはエンドフレーム17が固定されており、エンドフレーム17には上下に延びる油分離室17aが形成されている。油分離室17aの上端には筒状をなすセパレータ18が固定されている。エンドフレーム17には、吐出室16と連通してセパレータ18の周面に吐出ガスを周回させる分離口17bが形成されている。また、エンドフレーム17の下端には油分離室17aの底面を吐出室16に連通させる排出口17cが形成されている。リヤハウジング2にはセパレータ18の上端を外部に接続するための吐出口2aが形成されている。吸入口1bと吐出口2aとの間には、図示しない配管によって蒸発器、膨張弁、凝縮器等が接続されている。圧縮機、蒸発器等が車両用空調装置を構成している。」と記載されている。 (5)周知技術 気体圧縮機に用いる油分離器において、外周壁を有する本体部と外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、圧縮機本体から吐出された気体を外周壁とパイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するとともに、気体を吐出室に噴出する遠心分離方式のものは本件特許の出願前周知の技術(以下、「周知技術」という。必要ならば、甲第3号証の段落【0041】及び図1、甲第4号証の段落【0033】並びに図1及び図3等を参照。)である。 (6)周知課題 甲2技術が解決する課題である設計自由度の向上や、製造の容易化は気体圧縮機が有する普遍的な課題(以下、「周知課題」という。)である。 4 対比・判断 ア 本件発明3及び8について 本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、「回転軸の軸方向の矢視で、吐出室の圧力を検知する部分の、吐出室に臨んでいる向きが、油分離器から噴出される気体の向きに対して略直交して」「設けられている」という構成を備えていない。 また、甲2技術及び周知技術も当該構成を備えていない。 そして、当該構成により、本件発明3は、圧力調整弁が有する吐出室の圧力を検知する部分が、油分離器から噴出される気体の影響を受けないようになるという顕著な効果を奏するものであり、本件発明3は甲1発明、甲2技技術、周知技術及び周知課題から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、同様の理由により、本件発明8は当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明4、5、9及び10について 本件発明4と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、「油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、圧力調整弁の周囲に油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられている」という構成を備えていない。 また、甲2技術及び周知技術も当該構成を備えていない。 そして、当該構成により、本件発明4は、圧力調整弁が有する吐出室の圧力を検知する部分が、油分離器から噴出される気体の影響を受けないようになるという顕著な効果を奏するものであり、本件発明4は甲1発明、甲2技技術、周知技術及び周知課題から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明4は、甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 同様の理由により、本件発明5、9及び10は、甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 ウ 本件発明6及び7について 上記ア及びイで検討したとおり、本件発明3ないし5は甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 そして、本件発明6は本件発明3ないし5のいずれかを更に減縮したものであるから、甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 また、本件発明7は本件発明6を更に減縮したものであるから、甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 エ 小括 上記アないしウで検討したとおり、本件発明3ないし10は甲1発明、甲2技術、周知技術及び周知課題から、当業者が容易になし得るものではない。 第4 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項3ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項3ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記油分離器から気体が噴出する領域と異なる領域に設けられ、 前記圧力調整弁は、前記吐出室の圧力を検知する部分を有し、 回転軸の軸方向の矢視で、当該吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記気体の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記油分離器から気体が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項4】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項5】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される気体を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項6】 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられていることを特徴とする請求項3ないし5に記載の気体圧縮機。 【請求項7】 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記油分離器から遠心分離された油分が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の気体圧縮機。 【請求項8】 前記回転軸の軸方向の矢視で、前記吐出室の圧力を検知する部分の、前記吐出室に臨んでいる向きが、前記油分離器から噴出される前記油分の向きに対して略直交して、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記油分離器から遠心分離された油分が噴出する領域と異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の気体圧縮機。 【請求項9】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記圧力調整弁の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 【請求項10】 ハウジングの内部に、気体を圧縮する、圧縮室を形成するベーンを突出させるベーン背圧空間を有する圧縮機本体と、遠心分離方式の油分離器とを備え、 前記ハウジングの内部に、前記油分離器から気体が噴出される吐出室が形成され、 前記油分離器は、外周壁を有する本体部と前記外周壁の内部空間に設けられたパイプとを有し、前記圧縮機本体から吐出された気体を前記外周壁と前記パイプとの間の空間を螺旋状に移動させて油分を分離するものであり、 前記油分離器に、前記吐出室の圧力に応じて、前記ベーン背圧空間の圧力を調整する圧力調整弁が設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器に、前記油分離器から噴出される気体の影響を受けないように設けられ、 前記圧力調整弁は、前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように設けられ、 前記油分離器から噴出される油分の影響を受けないように、前記吐出室の圧力を検知する部分の周囲に前記油分離器から噴出される油分を遮蔽する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする気体圧縮機。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-08-15 |
出願番号 | 特願2011-119552(P2011-119552) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(F04C)
P 1 651・ 841- YAA (F04C) P 1 651・ 121- YAA (F04C) P 1 651・ 857- YAA (F04C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 尾崎 和寛 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
槙原 進 梶本 直樹 |
登録日 | 2015-03-27 |
登録番号 | 特許第5717139号(P5717139) |
権利者 | カルソニックカンセイ株式会社 |
発明の名称 | 気体圧縮機 |
代理人 | 西脇 民雄 |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所 |
代理人 | 西脇 民雄 |
代理人 | 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所 |