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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1321241
異議申立番号 異議2016-700018  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-13 
確定日 2016-08-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第5748896号発明「成形品取出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5748896号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 特許第5748896号の請求項3に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第5748896号(設定登録時の請求項の数は3。以下、「本件特許」という。)は、平成26年12月4日に特許出願され、平成27年5月22日に設定登録された。
特許異議申立人 平野晃一(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年1月13日付けで、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当合議体において、平成28年3月16日付けで取消理由を通知したところ、特許権者からは、何ら応答はなかった。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
樹脂成形用の金型から成形品を取り出す成形品取出装置において、
前記成形品を保持する取出ヘッドを有する取出部と、前記取出部を移動させるエアシリンダと、前記取出部を移動可能に保持する保持部と、前記エアシリンダを動作させるエア回路と、前記取出部および前記保持部のいずれか一方に取り付けられ前記取出部を停止させる際に生じる衝撃を緩和するショックアブソーバとを備え、
前記取出部および前記保持部のいずれか他方には、前記エアシリンダのシリンダロッドがそのストローク限界に達する前に前記ショックアブソーバに接触するストッパ部材が固定または形成され、
前記エア回路は、前記取出部を停止させる際に前記ショックアブソーバに作用する衝撃を緩和するために前記エアシリンダの動作の途中で前記エアシリンダの動作速度を減速させる減速手段を備え、
前記減速手段は、空気の流量が互いに異なる第1排気経路および第2排気経路を備えるとともに、前記エアシリンダからの空気の排出経路である第3排気経路と前記第1排気経路とが接続される第1接続状態と、前記第3排気経路と前記第2排気経路とが接続される第2接続状態とに前記第3排気経路の接続状態を切り替える切替手段を備え、
前記第1排気経路の空気の流量は、前記第2排気経路の空気の流量よりも小さくなっており、
前記エアシリンダの動作開始時には、前記第3排気経路の接続状態は、前記第2接続状
態となっており、
前記切替手段は、前記エアシリンダの動作の途中で、前記第3排気経路の接続状態を前記第1接続状態に切り替えることを特徴とする成形品取出装置。
【請求項2】
前記第1排気経路には、スピードコントローラが設けられ、
前記第1排気経路は、前記スピードコントローラおよびサイレンサを介して、または、前記スピードコントローラを介して大気開放され、
前記第2排気経路は、サイレンサを介して、または、直接、大気開放されていることを特徴とする請求項1記載の成形品取出装置。
【請求項3】
前記切替手段は、単動操作式の電磁弁であり、
前記電磁弁は、前記電磁弁の非通電時に前記第3排気経路の接続状態を前記第1接続状態にし、前記電磁弁の通電時に前記第3排気経路の接続状態を前記第2接続状態にすることを特徴とする請求項1または2記載の成形品取出装置。」

第4 取消理由
平成28年3月16日付けで通知した取消理由は、本件発明1及び2は、いずれも、下記刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきである。

刊行物1 : 実願平3-61615号(実開平5-7429号)のCD-ROM(異議申立人の証拠方法である甲第1号証、以下、単に「甲1」という。)
刊行物2 : 実願平2-42738号(実開平4-3105号)のマイクロフィルム(異議申立書の証拠方法である甲第2号証。以下、単に「甲2」という。)

第5 当合議体の判断
以下述べるように、本件特許の本件発明1及び2は取消理由で通知した甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきものであり、また、本件発明3には、以下のように取消理由はない。

1 本件発明1について
(1)刊行物
甲1及び甲2

(2)刊行物の記載事項
本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲1には、以下の事項が記載されている。

ア 「【産業上の利用分野】
本考案は成形品取出装置に関し、一層詳細には成形機に沿って配置され、成形品取出機構を介して成形品を前記成形機から取り出す成形品取出装置に関する。」(段落【0001】)

イ 「【実施例】
以下、本考案の好適な実施例について添付図面と共に詳述する。
まず、構成について説明する。
図1において、10は成形品取出装置であり、成形機12の側方に設置されている。
14は成形品取出機構である取出アームであり、下端部に開閉可能なチャック部16が設けられ成形機12で成形された成形品(不図示)を把持および解放可能になっている。また、取出アーム14は上下動も可能になっている。取出アーム14のチャック部16の開閉動および取出アーム14の上下動は詳しくは図示しないが圧縮空気の給排により行われる。
18はガイド機構であり、枠体20、ガイドバー22から成る。枠体20は長方形状に形成され、その内側の長手方向にガイドバー22が2本平行に固定されている。ガイドバー22は取出アーム14の上部に挿通されており、取出アーム14はこのガイドバー22上を矢印A-B方向へ移動可能になっている。ガイド機構18は取出アーム14を成形機12上方の成形品取出位置と、取り出した成形品を解放する成形品解放位置との間に亘り案内する
24は取付部材であり、やはり、ガイドバー22が挿通され、ガイドバー22上を矢印A-B方向へ移動可能になっている。取付部材24はボルト等適宜な固定手段を介して枠体20に対する位置を固定可能になっている。
26はエアシリンダであり、先端が取付部材24に固定されている。エアシリンダ26のロッド28は取付部材24を挿通してB方向へ突出している。そのロッド28の先端は取出アーム14の上部に連結固定されている。従って、エアシリンダ26へ圧縮空気が給排され、ロッド28が伸縮すると取出アーム14がA-B方向に移動する。
30は規制部材であるストッパであり、取付部材24に設けられている。ストッパ30は取付部材24よりB方向に突出した先端部で取出アーム14の上部と当接可能になっており、この当接により取出アーム14のA方向への移動を規制可能になっている。ストッパ30の取付部材24よりB方向への突出量Cはモータ機構32により調整可能になっている。
ここでストッパ30およびモータ機構32等について図2と共に詳しく説明する。
ストッパ30は円筒状に形成され、外周面は雄螺部34に形成されている。一方、取付部材24には雌螺部36が形成されており、雄螺部34はその取付部材24の雌螺部36に螺合されている。ストッパ30は内側が空間のシリンダ状になっており、不図示のピストンや緩衝スプリング等を含む公知のショックアブソーバが構成されている。つまり、ストッパ30の先端から突出しているピストンロッド38の先端の当接体40に取出アーム14の上部が当接してもその衝撃を直接ストッパ30の本体が受けるのではなく、衝撃は当接体40が2点鎖線に示すように当接しながら後退して当接体40、ピストンロッド38等を含む前記ショックアブソーバが殆ど吸収するようになっている。取出アーム14のA方向への移動量をストッパ30で調整するにはストッパ30の取付部材24からの突出長Cを調整すればよい。」(段落【0006】?【0007】)

ウ 「

」(図1)

本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲2には、以下の事項が記載されている。

エ 「この考案は、エアーシリンダの空気圧式緩衝装置に関し、ピストンを所望の停止位置に、衝撃を少なくしてかつ衝突後にバウンドを生じさせることなく、精度良く停止させるための技術に係るものである。」(明細書第1頁17行目?第2頁2行目)

オ 「近年における産業機械のロボット化などの進展に伴い、エアーシリンダの利用も増大し、・・・・シリンダストロークの長大化と作動スピードの高速化とに従って、慣性によりピストン等の可動部が持つ運動エネルギーも増大することになるため、ストロークエンド等のピストン停止位置付近で如何に効果的に慣性負荷を少なくして、シリンダのエンドや停止片等との衝突時における衝撃を少なくする・・・かが重要な課題となっている。この種の目的で使用される緩衝器として、・・・最近では、外部緩衝器としての油圧式のショックアブソーバも性能が向上し、広く利用されるようになってきた。」(明細書第2頁4行目?第3頁7行目)

カ 「また、外部緩衝器として油圧式のショックアブソーバを用い、例えばその外部緩衝器をシリンダストロークの途中位置に固設し、それを位置決め停止部材として可動作業体を停止させるように構成したとき、シリンダの作動速度が大きく、また可動作業体の荷重が大きくて、その慣性負荷が大きい場合には、停止片である緩衝器に対する衝突時の衝撃力が非常に大きくなって、緩衝器を破壊してしまう、といったことも起こる可能性がある。」(明細書第4頁2行目?同頁11行目)

キ 「この考案は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、従来の緩衝器における上記諸問題点を解決し、可動部の当接停止時における衝撃を少なくし、・・・ショックアブソーバなどの外部緩衝器と併用するようにすれば、装置の大型化を避けながら緩衝器を破壊から守り、スムーズな位置決め停止を実現することができるエアーシリンダの空気圧式緩衝装置を提供することを課題とする。」(明細書第4頁19行目?第5頁10行目)

ク 「第1図及び第2図は、この考案の1実施例を示し、複動エアーシリンダに空気圧式緩衝装置を配設した装置の空気回路図である。」(明細書第7頁18行目?同頁20行目)

ケ 「複動エアーシリンダ10のシリンダ内はピストン12によって2室に画され、それぞれのシリンダ室14、14’に給排気用配管16、16’が連通接続されている。ピストン12には、それと一体的にシリンダ外面に沿って摺動するスライダ18が付設されており、スライダ18に作業体20が取着されている。各シリンダ室14、14’のエンド位置には、オイルショックアブソーバ22、22’がそれぞれ固定されており、シリンダストロークの各終端位置においてスライダ18と当接し、当接時の衝撃力を吸収するとともに、作業体20を正確に位置決め停止させるようになっている。」(明細書第8頁5行目?同頁16行目)

コ 「一方、排気用配管28には、空気圧操作弁からなる流路切換え弁36が流路接続されており、その流路切換え弁36により、排気用配管28と排気管38又は緩衝排気管40が択一的に交互に連通接続されるようになっている。また、シリンダストロークの終端近くには、スライダ18の一部と接触することによって駆動され、スライダ18と接触している期間その状態に保持されて、空気源から圧力Pの空気を前記流路切換弁36のパイロット弁に送給する位置検知用機械操作弁44が配設されている。この機械操作弁44が駆動されて、前記流路切換弁36のパイロット弁に空気圧Pが入力されることによって流路切換弁36が駆動させられ、排気用配管28を排気管38から緩衝排気管40へ切換え接続させるようになっている。緩衝排気管40には排出流量制御弁42が介設されており、この排出流量制御弁42により、シリンダ排気側からの排出空気の流量が調節されて制限されることになる。」(明細書第10頁3行目?第11頁1行目)

サ 「第1図に示すように、・・・ピストン12、スライダ18及び作業体20を図の右方向へ移動させている場合を考える。・・・この過程では、第1図に示すように、機械操作弁44は駆動されておらず、流路切換弁36のパイロット弁には空気圧が作用していないため、排出空気は、排気用配管28から流路切換弁36のPポートへ流入し、そのBポートから排気管38へ流出し、大気へ開放されている。」(明細書第11頁8行目?第12頁6行目)

シ 「第1図に示した状態から、第2図に示したようにピストン12等がシリンダストロークの終端近くまで移動してくると、スライダ18が機械操作弁44の接触子に当接し、機械操作弁44が切換え駆動され、空気源から圧力Pの空気が機械操作弁44のINポートに流入し、そのOUTポートから流出して、流路切換弁36のパイロット弁に空気圧Pがかかる。これによって流路切換弁36が切換え駆動され、シリンダ室14からの排出空気が排気用配管28から緩衝排気管40の方へ流れる。そして、緩衝排気管40には排出流量制御弁42が介設されているため、この排出流量制御弁42によって排出空気の流量が調節されて制限されることになり、・・・これにより、シリンダ室14の背圧が高められて、ピストン12、スライダ18及び作業体20の運動エネルギーが吸収され、シリンダの慣性負荷が一挙に減少する。この後に、スライダ18がオイルショックアブソーバ22に当接してピストン等の可動部が停止する。このように、シリンダの慣性負荷を少なくした状態でスライダ18をオイルショックアブソーバ22に当接させて停止させるようにしているため、作業体20の停止時における衝撃も少なく、また衝突後においてバウンド現象も起こらず、作業体20を所望の停止位置に精度良く停止させることができる。」(明細書第12頁7行目?第13頁14行目)

ス 「また、上記した説明では、ピストン等の可動部をシリンダストロークの終端位置まで移動させて停止させるようにしているが、シリンダストロークの途中位置にオイルショックアブソーバを固設し、それを位置決め停止部材として用い、そのショックアブソーバの近くに位置検知用機械操作弁を配設することにより、シリンダストロークの途中位置に上記と全く同様の動作でピストン等の可動部を停止させるようにすることもできる。」(明細書第14頁2行目?同頁11行目)

セ 「上記実施例では、ロッドレスの複動エアーシリンダを例に挙げて説明したが、ピストンロットを有するエアーシリンダや単動シリンダにもこの考案が適用されることは言うまでもない。また、空気圧回路の構成やそれに使用される空気圧制御機器についても、上記実施例のものに限定されるものではなく、さらに、ピストン位置検知手段も、実施例で示した機械操作弁に限らず、例えば光電的に位置を検知して電気信号により切換弁を駆動させるような構成としてもよい。」(明細書第15頁13行目?第16頁3行目)

ソ 「また、この空気圧装置をショックアブソーバなどの外部緩衝器と併用するようにしたときは、装置の大型化を避けながら緩衝器を破壊から守り、スムーズな位置決め停止を実現することができる。」(明細書第16頁12行目?同頁16行目)

タ 「

」(図1、2)

(3) 甲1に記載された発明
甲1の上記摘示ア?ウの記載において、エアシリンダ26は、圧縮空気の給排によって動作するものとされており、しかも、エアシリンダヘの圧縮空気の給排がエア回路によるものであることは、当業者にとって自明な事項である。してみると、「エアシリンダ26を動作させるエア回路」は、甲1に記載されているに等しい事項といえる。
また、ショックアブソーバを備えたストッパ30が、エアシリンダ26のロッド28の伸縮により取出アーム14がA-B方向に移動する際に、取出アーム14の上部との当接により取出アーム14のA方向への移動を規制するものであること、及び、ストッパ30のピストンロッド38の先端の当接体40に取出アーム14の上部が当接した際に、当接体40が2点鎖線(図2参照)に示すように当接しながら後退して、その衝撃は、当接体40、ピストンロッド38等を含む前記ショックアブソーバによって殆ど吸収されるようになっていることからすれば、前記取出アーム14の上部が、前記エアシリンダ26のロッド28がそのストローク限界に達する前に、前記ストッパ30に接触するものであることは明らかである。

そうすると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「a 成形機12から成形品を取り出す成形品取出装置10において、
b 前記成形品を保持するチャック部16を有する取出アーム14と、前記取出アーム14を移動させるエアシリンダ26と、前記取出アーム14を移動可能に保持するガイド機構18と、前記エアシリンダを動作させるエア回路と、前記ガイド機構18に取付部材24によって取り付けられ前記取出アーム14を停止させる際に生じる衝撃を緩和するショックアブソーバを備えたストッパ30とを備え、
c 前記取出アーム14の上部が、前記エアシリンダ26のロッド28が、そのストローク限界に達する前に、前記ストッパ30に接触する成形品取出装置10。」

(4) 甲2に記載された技術事項
甲2の上記摘示エ?タの記載において、流路切換弁36は、第1図及び第2図の空気回路図における図記号から、本件発明1における「単動操作式」の切換弁であることが見て取ることができる。そして、「電気信号により切換弁を駆動させるような構成としてもよい」との記載により、この流路切換弁36として「電磁弁」を使用することも示唆されている。よって、甲2には、前記流路切換弁36が「単動操作式の電磁弁」である点が実質的に開示されている。
さらに、上記のように、前記空気圧式緩衝装置においては、緩衝排気管40に排出流量制御弁42が介設され、この排出流量制御弁42によって排出空気の流量が調節されて制限されることより、シリンダ室14の背圧が高められて、ピストン12、スライダ18及び作業体20の運動エネルギーが吸収され、シリンダの慣性負荷が一挙に減少するようになっている。よって、この空気圧式緩衝装置が、前記緩衝排気管40の空気の流量を、前記排気管38の空気の流量よりも小さくすることにより、前記エアーシリンダ10の動作の途中で前記エアーシリンダ10の動作速度を減速させるものであることは明らかである。
以上のことを踏まえると、甲2には以下のエアー回路に関する技術事項が開示されている。

「ピストン12を有するエアーシリンダ10と、ピストン12に付設されてシリンダ外面に沿って該ピストン12と一体的に摺動するスライダ18と、スライダ18を当接させて停止させる際に生じる衝撃を緩和するオイルショックアブソーバ22、22’と、エアーシリンダ10に対して作動空気を給排する空気圧回路とを備えた産業用空気圧装置において、
d 前記空気圧回路は、前記スライダ18を停止させる際に前記オイルショックアブソーバ22、22’に作用する衝撃を緩和するために前記エアーシリンダ10の動作の途中で前記エアーシリンダ10の動作速度を減速させる空気圧式緩衝装置を備え、
e 前記空気圧緩衝装置は、空気の流量が互いに異なる緩衝排気管40および排気管38を備えるとともに、前記エアーシリンダ10からの空気の排出経路である排気用配管28と前記緩衝排気管40とが接続される第1接続状態と、前記排気用配管28と前記排気管38とが接続される第2接続状態とに前記排気用配管28の接続状態を切り替える流路切換弁36を備え、
f 前記緩衝排気管40の空気の流量は、前記排気管38の空気の流量よりも小さくなっており、
g 前記エアーシリンダ10の動作開始時には、前記排気用配管28の接続状態は、前記第2接続状態となっており、
h 前記流路切換弁36は、前記エアーシリンダ10の動作の途中で、前記排気用配管28の接続状態を前記第1接続状態に切り替えるもの」

そして、前記技術事項のエアー回路によれば、ショックアブソーバ(外部緩衝器)を破壊から守り、スムーズな位置決め停止を実現することができる、という効果を奏するとされている。

また、前記d?hの事項に加えて、甲2においては、
i 前記緩衝排気管40には、排出流量制御弁42が設けられ、
j 前記緩衝排気管40は、前記排出流量制御弁42を介して大気に開放され、
k 前記排気管38は、直接、大気に開放されており、
さらに、
l 流路切換弁36が、単動操作式の電磁弁である。
点についても開示されている。

(5) 本件発明1と甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「チャック部16」が本件発明1における「取出ヘッド」に相当しており、同じく「取出アーム14」が「取出部」に、「エアシリンダ26」が「エアシリンダ」に、「ガイド機構18」が「保持部」に、「ストッパ30」が「ショックアブソーバ」に、「ロッド28」が「シリンダロット」にそれぞれ相当している。
さらに、甲1発明における「取出アーム14の上部」が、本件発明1における「ストッパ部材」に相当している。
そうしてみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違しており、その余の点で一致している。

<相違点1>
本件発明1における「成形品取出装置」は、「樹脂成形用の金型から成形品を取り出す」と特定するのに対して、甲1発明においては、この点を特定しない点。
<相違点2>
本件発明1は、エア回路として「前記取出部を停止させる際に前記ショックアブソーバに作用する衝撃を緩和するために前記エアシリンダの動作の途中で前記エアシリンダの動作速度を減速させる減速手段を備え、前記減速手段は、空気の流量が互いに異なる第1排気経路および第2排気経路を備えるとともに、前記エアシリンダからの空気の排出経路である第3排気経路と前記第1排気経路とが接続される第1接続状態と、前記第3排気経路と前記第2排気経路とが接続される第2接続状態とに前記第3排気経路の接続状態を切り替える切替手段を備え、前記第1排気経路の空気の流量は、前記第2排気経路の空気の流量よりも小さくなっており、前記エアシリンダの動作開始時には、前記第3排気経路の接続状態は、前記第2接続状態となっており、前記切替手段は、前記エアシリンダの動作の途中で、前記第3排気経路の接続状態を前記第1接続状態に切り替える」と特定するのに対して、甲1発明のエア回路は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
本件特許の明細書の【0002】に、甲1発明と同様の「成形機から成形品を取り出す成形品取出装置」が開示された実開平5?26280号公報(異議申立人の証拠方法である甲第3号証)を例に挙げて、「従来、樹脂成形用の金型から成形品を取り出す成形品取出装置が知られている。」と記載されていることからすれば、成形機から成形品を取り出す成形品取出装置が、樹脂成形用の金型から成型品を取り出すものであることは、当業者にとって自明な事項に過ぎない。また、たとえそれが当業者に自明な事項といえなかったとしても、成形品取出装置によって成形品を成形機の何処から取り出すかは、当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。よって、甲1発明において、成形品取出装置を、樹脂成形用の金型から成形品を取り出すものとすることは容易想到である。
相違点2について
甲2には、上記(4)に記載の技術事項が記載されている。
甲1には、本件発明1の課題であるエアシリンダに利用するショックアブソーバの交換頻度を低減することや、ショックアブソーバの寿命が近づいても成形品取出装置の各構成部品の損傷を防止することに関する記載はない。しかし、産業用機械等の機械装置の分野において、装置の各構成部材の交換頻度を低減することや装置の構成部材の寿命が近づいたときにも装置全体としての機能が保たれるようにすることは、記載がなくとも当業者において自明あるいは装置において当然に内在している技術課題といえる。
そうすると、甲1発明においても、利用されているショックアブソーバの交換頻度を抑えるためのに、甲2に記載のエア回路を採用することは当業者において想到容易である。
そして、そのことによる効果も、甲2の記載から当業者の予測の範囲内のものである。

以上のことから、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

2 本件発明2について
(1) 本件発明2と甲1発明との対比・判断
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記1(5)の相違点1に加えて、以下の点(エア回路としての相違点2を含むもの)で相違する。

<相違点3>
本件発明2は、エア回路として「前記取出部を停止させる際に前記ショックアブソーバに作用する衝撃を緩和するために前記エアシリンダの動作の途中で前記エアシリンダの動作速度を減速させる減速手段を備え、前記減速手段は、空気の流量が互いに異なる第1排気経路および第2排気経路を備えるとともに、前記エアシリンダからの空気の排出経路である第3排気経路と前記第1排気経路とが接続される第1接続状態と、前記第3排気経路と前記第2排気経路とが接続される第2接続状態とに前記第3排気経路の接続状態を切り替える切替手段を備え、前記第1排気経路の空気の流量は、前記第2排気経路の空気の流量よりも小さくなっており、前記エアシリンダの動作開始時には、前記第3排気経路の接続状態は、前記第2接続状態となっており、前記切替手段は、前記エアシリンダの動作の途中で、前記第3排気経路の接続状態を前記第1接続状態に切り替えるものであり、前記第1排気経路には、スピードコントローラが設けられ、前記第1排気経路は、前記スピードコントローラおよびサイレンサを介して、または、前記スピードコントローラを介して大気開放され、前記第2排気経路は、サイレンサを介して、または、直接、大気開放されている」と特定するのに対して、甲1発明のエア回路は、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討するに、相違点1については上記1(5)の相違点1での検討のとおりである。
相違点3について検討する。
甲2における「排出流量制御弁42」は、本件発明2における「スピードコントローラ」に相当しているので、甲2には、相違点3に係る減速手段も開示されている。
してみれば、上記1(5)の相違点2での検討のとおり、甲1発明に甲2に記載のエア回路を採用することは当業者において想到容易である。
また、エアシリンダの排気経路をサイレンサを介して大気に開放することは、異議申立書の証拠方法である甲第4?6号証に示されているように周知慣用技術といえる。
そうすると、甲2に記載の第1排気経路においてスピードコントローラ及びサイレンサを介するようにすること、及び、甲2に記載の第2排気経路において、サイレンサを介して大気に開放するようにすることは、単なる周知技術の付加といえ、甲2に記載されているに等しい事項である。

以上のことから、本件発明2は、甲1発明及び甲2に記載の技術事項並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

3 本件発明3について
(1) 本件発明3と甲1発明との対比・判断
本件発明3と甲1発明とを対比すると、本件発明3が本件発明1を引用する場合には、上記1(5)の相違点1、相違点2に加えて以下の点で、本件発明3が本件発明2を引用する場合には上記1(5)の相違点1、上記2(1)の相違点3に加えて以下の点で相違する。

<相違点4>
本件発明3においては、「前記切替手段は、単動操作式の電磁弁であり、前記電磁弁は、前記電磁弁の非通電時に前記第3排気経路の接続状態を前記第1接続状態にし、前記電磁弁の通電時に前記第3排気経路の接続状態を前記第2接続状態にする」と特定するのに対し、甲1発明においては、エア回路についての記載はなく、このような特定もなされていない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1ないし3については、上記1、2に記載のとおりである。
相違点4について
甲2に記載の技術事項における電磁弁(流路切替弁)と排気通路(42、38)の関係は、電磁弁の非通電時には電磁弁(流路切替弁)に流入する流体は、そのまま大気に放出される流路38に連通するようになっているから、相違点4で特定する関係とは逆の関係となっている。
また、異議申立人の提示したいずれの証拠にも、電磁弁を介した排気経路において、非通電時に相違点4に係る流路構成としたものは記載されていない(甲7号証の第6図に記載のものは、2つの排気経路の一方に電磁弁が設けられている構造であるから、本件発明3の流路構造と異なっている)。
さらに、当該相違点4に係る構成により、電磁弁に不具合が生じて電磁弁を通電状態とすることができなくなったときのエアシリンダの動作速度を遅くすることが可能となり、構成部品に作用する衝撃を小さくすることができる(本件特許の明細書の段落【0028】)との効果を奏するとされている。
そうすると、甲1発明におけるエア回路として相違点4に係る特定をすることは、当業者であっても容易に想到し得たものとはいえない。

以上のことから、本件発明3は、甲1発明及び甲2に記載の技術事項及びその他の証拠によっても当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、本件発明1及び2については、甲1発明及び甲2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠方法によっては、本件発明3に係る特許を取り消すことができない。さらに、本件発明3に係る特許が特許法第113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-12 
出願番号 特願2014-245649(P2014-245649)
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (B29C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 長谷部 智寿  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大島 祥吾
前田 寛之
登録日 2015-05-22 
登録番号 特許第5748896号(P5748896)
権利者 株式会社ハーモ
発明の名称 成形品取出装置  
代理人 小平 晋  
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