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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61B |
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管理番号 | 1321249 |
異議申立番号 | 異議2016-700455 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-19 |
確定日 | 2016-11-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5870473号発明「骨移植用縫合具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5870473号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5870473号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成21年12月28日に特許出願され、平成28年1月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人中野正義により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件特許発明 特許第5870473号の請求項1?8の特許に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などという。また、本件特許発明1?8をまとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3 申立理由の概要 (3-1)特許異議申立人は、主たる証拠として米国特許第3762418号明細書(以下「甲第1号証」という。)とその抄訳、従たる証拠としてオリンパスバイオマテリアル株式会社「ボーンセラム製品一覧表」(2005年12月改)(以下「甲第2号証」という。)及び特開平6-14987号公報(以下「甲第3号証」という。)を提出し、請求項1?8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?8に係る特許を取り消すべきものであると主張している(以下「申立理由1」という。)。 (3-2)特許異議申立人は、特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1?8が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1?8に係る特許を取り消すべきものであると主張している(以下「申立理由2」という。)。 (3-3)特許異議申立人は、特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1?8が不明確であり、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1?8に係る特許を取り消すべきものであると主張している(以下「申立理由3」という。)。 4 判断 (4-1)申立理由2について 最初に、申立理由2について検討する。 (4-1-1)特許異議申立人は、請求項1の「該接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさである」との発明特定事項について、「前記縫合糸として熱可塑性繊維を使用しない場合や、繊維同士の接合部を溶剤を用いて融着する方法によって形成する場合(段落[0028])、又は例えば接着剤によって接着する方法(甲第1号証参照)によって形成する場合には、必ずしも「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とすることができるとは限らない。・・・ 仮に、繊維同士の接合部を、溶剤を用いて融着する方法(段落[0028])や、接着剤によって接着する方法(甲第1号証参照)によって形成してなる構成が本件特許発明1の態様に含まれるとした場合、・・・そのような接合部を形成するための具体的な条件・・・についての記載がないので、いかにして「徒手によって分離可能な接合部」を形成するかが不明である。」(特許異議申立書13?14頁)として申立理由2の主張をしているので、この点について検討する。 (4-1-2)はじめに 特許法第36条第6項第1号は、請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない旨を規定している(以下、この要件を「サポート要件」という。)。したがって、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かの判断は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとを対比し、検討してなされるところ、その検討は、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を越えるものであるか否かをみることによりなされるものである。 そこで、本件特許発明は、「該接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさである」との発明特定事項に関し、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を越えるものであるか否かについて検討する。 (4-1-3)発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。 (a)「【0001】・・・本発明は、骨移植用縫合具に関するものである。」 (b)「【0005】・・・骨補填材と自家骨とを容易に締結することができる骨移植用縫合具を提供することを目的としている。」 (c)「【0018】・・・ 接合部1cは、例えば、縫合糸1a,1bの端部を揃えて金型内に収納した状態で加熱することにより融着して形成される。このときに、縫合糸1a,1bを構成する熱可撓性繊維の融点と同程度またはそれより若干低い温度まで、縫合糸1a,1bを加熱する。・・・これにより、各縫合糸1a,1bは隣接した表面が接合し、縫合糸1a,1bの引っ張り強度より十分に小さい接合力で接合されるので、十分に硬化した後でも接合された部分を徒手により容易に引き剥がすことができる。」 (d)「【0023】・・・あらかじめ体外において一方の接合部1cを骨補填材Dの貫通孔Eに通し、骨補填材Dの両側に接合部1cを配置しておく。そして、骨補填材Dを体外に置いた状態で各接合部1cを体内の椎弓Aの各貫通孔Cに切開面B側から通し、その後、骨補填材Cを椎弓Aの切開部に挿入する。次に、接合部1cにおいて接合されている縫合糸1a,1bを2本に引き剥がし、・・・各縫合糸1a,1bを上下に分岐させて骨補填材C上で互いに交差するように同色の縫合糸1a,1bの両端を結ぶことにより、骨補填材Cを椎弓Aに締結することができる。」 (e)「【0028】・・・溶剤を用いて縫合糸1a,1bを融着することとしてもよい。 熱可塑性繊維は溶剤によっても溶解可能なものが多い。したがって、溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより、2本の縫合糸1a,1bを接合させつつ、これらを後で徒手で引き剥がすことができるように容易に接合することができる。」 (4-1-4)上記(a)?(e)の記載から、発明の詳細な説明には、本件特許発明が骨補填材と自家骨とを締結する骨移植用縫合具に関するものであること、及び、骨補填材D(本件特許発明の「骨補填材」に相当する。)の貫通孔と椎弓A(同じく「自家骨」に相当する。)の貫通孔とに挿入された2本の接合された縫合糸を徒手で引き剥がすことによりそれらの締結を容易になし得ることが記載されている。 そして、徒手で引き剥がすことのできる2本の縫合糸の接合は、熱可撓性繊維の融点と同程度またはそれより若干低い温度まで加熱することや、溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより実施できることが記載されている。 したがって、発明の詳細な説明には、2本の接合した縫合糸からなる骨移植用縫合具について、骨補填材と自家骨とを容易に締結できるようにするという課題と、その解決手段が「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」であることが記載されている。そして、その接合力の大きさが、熱可撓性繊維の融点と同程度またはそれより若干低い温度まで加熱することや、溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより実現できることが記載されている。 よって、本件特許発明は、「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさである」との発明特定事項に関し、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えるものではない。 (4-1-5)申立理由2の主張についての検討 特許異議申立人は、縫合糸として熱可塑性繊維を使用しない場合と、繊維同士の接合部を溶剤を用いて融着する方法によって形成する場合と、接着剤によって接着する方法によって形成する場合とを挙げて、必ずしも「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とすることができるとは限らないと主張し、また、繊維同士の接合部を、溶剤を用いて融着する方法や、接着剤によって接着する方法について、いかにして「徒手によって分離可能な接合部」を形成するかが不明であると主張している。 しかしながら、上記したとおり、本件特許発明の、骨補填材と自家骨とを容易に締結できるようにするという課題に対する解決手段は、「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とすることであって、どのようにして「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」の接合部を得るかではないから、特許異議申立人の上記主張は理由がない。 (4-1-6)小括 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1?8が発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、申立理由2により請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 (4-2)申立理由3について 次に、申立理由3について検討する。 (4-2-1)特許異議申立人は、(a)「縫合糸として熱可塑性繊維を使用しない場合や、溶剤を用いて融着する方法によって接合部を形成する場合(段落「0028」)には、どういった条件で接合部を形成すれば「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とすることができるのかが、本件明細書を参酌しても理解できず不明確である。」、(b)「本件特許発明1には、骨移植用縫合具が「複数本の生体親和性材料からなる縫合糸のみからなり」(下線追加)と記載されているものの、例えば、接合部を接着剤により形成した場合、得られる骨移植用縫合具は、縫合糸と接着剤とからなるものであり、縫合糸のみからなるものではないが、このような縫合糸と接着剤とからなる骨移植用縫合具が本件特許発明1に含まれるのかどうかが不明確である。」、(c)「本件特許発明1に記載の接合力の大きさを測定する方法について、明細書中に具体的な記載がないことと、「徒手によって分離可能な大きさ」という記載は機能的な表現であり、徒手による引っ張り強さは人によって大きく変わってくるものであるので、具体的にどの程度の接合力であるのかが不明確であることから、「接合力の大きさ」がどの程度のものかが定義できず発明を具体的に判断することができない。・・・本件特許発明3は本件特許発明1の下位概念であるので、本件特許発明1には「縫合糸の引張強度よりも大きいが、徒手によって分離可能な態様」が含まれると考えられる。しかし、このような態様があるとすれば、縫合糸の引張強度が徒手によって切断可能な程度である場合になり、そうすると、接合部がどのような構造になっていても構わないことになる。従って本件の特許請求の範囲に記載された発明は明確でない。」として申立理由3を主張しているので、これら(a)?(c)について検討する。 (4-2-2)上記(a)について 特許請求の範囲の「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」との記載に係る発明特定事項は、その記載から把握されるとおりの事項、すなわち、接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、何らの道具等を用いることなく、徒手によって分離可能な大きさを意味すると認められる。 そして、このことは、発明の詳細な説明の「【0018】・・・各縫合糸1a,1bは隣接した表面が接合し、縫合糸1a,1bの引っ張り強度より十分に小さい接合力で接合されるので、十分に硬化した後でも接合された部分を徒手により容易に引き剥がすことができる。」、「【0028】・・・溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより、2本の縫合糸1a,1bを接合させつつ、これらを後で徒手で引き剥がすことができるように容易に接合することができる。」等の記載とも整合する。 したがって、上記発明特定事項は明確である。 特許異議申立人は熱可塑性繊維を使用しない縫合糸を挙げて上記発明特定事項は不明確であると主張しているが、当該縫合糸は特許請求の範囲にも発明の詳細な説明にも記載されている事項ではない。したがって、上記縫合糸は上記発明特定事項が明確かどうかの判断を左右するものでなく、この点についての主張は理由がない。 また、特許異議申立人は、溶剤を用いて融着する方法によって接合部を形成する場合を挙げて、どういった条件で接合部を形成すれば「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とすることができるのかが本件明細書を参酌しても理解できないと主張しているが、溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより、2本の縫合糸1a,1bを接合させつつ、これらを後で徒手で引き剥がすことができるように容易に接合することができるように調整できることは技術常識であるから、この点についての当該主張も理由がない。 (4-2-3)上記(b)について 特許請求の範囲の「複数本の生体親和性材料からなる縫合糸のみからなり」との記載に係る発明特定事項は、その記載から把握されるとおりのものと認められ、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 したがって、上記発明特定事項は明確である。 特許異議申立人は、縫合糸の接合部を接着剤により形成した場合を挙げて、このような縫合糸と接着剤とからなる骨移植用縫合具が本件特許発明1の「複数本の生体親和性材料からなる縫合糸のみからなり」に含まれるのかどうかが不明確である、と主張しているが、縫合糸の接合部を接着剤により形成することについては、特許請求の範囲にも発明の詳細な説明にも記載がないから、このことが上記発明特定事項が明確であるか否かの判断を左右するといえない。また、縫合糸と接着剤とからなる骨移植用縫合具が本件特許発明1の「複数本の生体親和性材料からなる縫合糸のみからなり」に含まれるのかどうかは、本件特許発明1が明確かどうかの判断と関係する事項でもない。 したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。 (4-2-4)上記(c)について 上記(4-2-2)欄に記載したとおり、特許請求の範囲の「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」との記載に係る発明特定事項は、その記載から把握されるとおりの事項、すなわち、接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、何らの道具等を用いることなく、徒手によって分離可能な大きさを意味すると認められる。しかも、この「接合力の大きさ」は、「【0018】・・・各縫合糸1a,1bは隣接した表面が接合し、縫合糸1a,1bの引っ張り強度より十分に小さい接合力で接合されるので、十分に硬化した後でも接合された部分を徒手により容易に引き剥がすことができる。」、「【0028】・・・溶剤の種類や濃度を適切に選択することにより、2本の縫合糸1a,1bを接合させつつ、これらを後で徒手で引き剥がすことができるように容易に接合することができる。」との記載や技術常識から十分把握できるものである。 したがって、発明の詳細な説明に接合力の大きさを測定する方法についての記載がないことや、本件特許発明1には「縫合糸の引張強度よりも大きいが、徒手によって分離可能な態様」が含まれるからといって、上記発明特定事項は不明確であるといえない。 したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。 (4-2-5)小括 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1?8が明確であり、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、申立理由3により請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 (4-3)申立理由1について 次に、申立理由1について検討する。 (4-3-1)刊行物の記載 (a)甲第1号証には、「アイレス針2と、2本の縫合糸とからなり、両端部に2本の縫合糸が融着した融着端部4,6を有する外科用縫合糸1。」の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されている(3欄第47?58行(訳文については抄訳文[1]を参照。以下同様。)及びFig.1?5を参照。)。 また、甲第1号証には、「融着端部4,6を、糸5a,5bを接着剤による方法、シリコンコーティングを結合剤又は融着剤として用いた方法、ナイロン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる糸を超音波接合で融着させる方法等によって形成する技術」(以下「甲第1号証記載事項A」という。)が記載されている(4欄1?19行(抄訳文[2])を参照。)。 また、甲第1号証には、「融着端部4,6の長さを、融着端部4と融着端部6との間に広がる中間部分5よりも短くかつ執刀医が中間部分5を手術中に結束し、適切な外科結びを形成するためにつかむのに十分な長さとする技術」(以下「甲第1号証記載事項B」という。)が記載されている(4欄38?42行(抄訳文[3])を参照。)。 また、甲第1号証には、「外科用縫合糸1のアイレス針2を融着部分4,6で切り離す技術」(以下「甲第1号証記載事項C」という。)が記載されている(4欄53?56行(抄訳文[4])及びFig.3を参照。)。 (b)甲第2号証には、「赤及び青の2種類の糸により人工骨を自家骨に固定する」ことについて記載されている(以下「甲第2号証記載事項」という。)。 (c)甲第3号証には、「ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、生体分解吸収性素材であるポリグリコール酸、ポリ乳酸、及び、これのブレンド、或は共重合体、ポリパラジオキサノン、ポリカプロラクトン等からなる縫合糸」(段落番号【0006】を参照。)について記載されている(以下「甲第3号証記載事項」という。)。 (4-3-2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比すると、甲第1号証発明は、本件特許発明1のうちの「該接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさである」との発明特定事項を有していない。 この点について、特許異議申立人は、「相違点2 ・・・「徒手によって分離可能な大きさ」という限定そのものが不明確であることである。・・・請求項1では「縫合糸の引張り強度」よりも大きいものであっても、「徒手によって分離可能な大きさ」に含まれることを前提として、以下の検討を行う。」として、「甲第1号証に記載の接着剤又は熱融着によって形成された融着端部は、本件特許発明1に記載された方法と同様の方法で形成されたものであると言えるので、本件特許発明1に記載された「接合部」に相当するものと考えられる。」、「甲第1号証における融着部の強度(二重結束を形成する際に複数の撚糸がばらばらにならない程度の強度)と、本件特許発明における「接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」とは、実質的に相違しないものと考えられる。」、「甲第1号証に記載のシリコンコートを融着剤として用いて形成された融着端部は、本件「接合部」と同様の方法によって形成されたものなので、その結合力は徒手によって分離可能な大きさである蓋然性が高い。」と主張している(特許異議申立書8?10頁)。 しかしながら、上記「(4-2)申立理由3」欄に記載したとおり、特許請求の範囲の「接合部における前記縫合糸間の接合力の大きさが、徒手によって分離可能な大きさ」との記載に係る発明特定事項は明確であるから、特許異議申立人の上記主張はその前提において理由がない。 また、この点をおくとしても、本件特許発明1は、当該発明特定事項を有することにより、徒手で引き剥がすことができるように容易に接合することができるとの作用効果を有するものであるところ、特許異議申立人が指摘する甲第1号証に記載のいずれの接合部についても、どのように分離されるものであるか記載がないから不明である。 したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。 そして、甲第1号証には、甲第1号証発明のほかに、甲1号証記載事項A?Cが記載されているにすぎない。 よって、甲第1号証には、上記発明特定事項についての記載も示唆も認められない。 甲第2号証及び甲第3号証には、それぞれ、甲第2号証記載事項及び甲第3号証記載事項が記載されているにすぎないから、これらにも上記発明特定事項についての記載も示唆も認められない。 以上のとおりであるから、甲第1号証?甲第3号証のいずれにも、本件特許発明1の上記発明特定事項についての記載も示唆もあるといえない。 したがって、本件特許発明1は、甲第1号証発明と、甲第1号証?甲第3号証に記載された技術事項に基づいて同業者が容易になし得るものではない。 (4-3-3)本件特許発明2?8について 本件特許発明2?8は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証発明と、甲第1号証?甲第3号証に記載された技術事項に基づいて同業者が容易になし得るものではない。 (4-3-4)小括 以上のとおり、本件特許発明1?8は、甲第1号証発明と、甲第1号証?甲第3号証に記載された技術事項に基づいて同業者が容易になし得るものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。 5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-10-26 |
出願番号 | 特願2009-298967(P2009-298967) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61B)
P 1 651・ 537- Y (A61B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 哲男 |
特許庁審判長 |
山口 直 |
特許庁審判官 |
高木 彰 田中 成彦 |
登録日 | 2016-01-22 |
登録番号 | 特許第5870473号(P5870473) |
権利者 | オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 |
発明の名称 | 骨移植用縫合具 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 上田 邦生 |