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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) E04H
管理番号 1321277
判定請求番号 判定2016-600028  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2016-06-14 
確定日 2016-10-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第5294431号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及びイ号図面に示す「車止めブロック」は、特許第5294431号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定請求の趣旨は、判定請求書に添付したイ号写真及びイ号図面(甲第2号証の1ないし甲第2号証の8)に示す「車止めブロック」(以下「イ号物件」という。)は、特許第5294431号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

本件特許に係る手続の経緯は、2003年3月28日に出願された特願2003-90607号の一部を、2008年4月2日に新たな特許出願(特願2008-95892号)とし、さらにその一部を2011年6月28日に新たな特許出願(特願2011-142966号)としたものであって、平成25年6月21日に特許権の設定登録がなされ、平成28年6月14日になされた本件判定請求に対して、平成28年7月27日に被請求人から判定請求答弁書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(構成要件ごとに分説し、記号AないしFを付した。)。

「A 上下方向の貫通孔を有し、
B その上端がホールキャップ用受け孔となっている車止めブロックの該受け孔に、
C 平面形状の上面部と、リフレクターを設けた前面部と、筒状の脚部を有するホールキャップ
D を装着した車止めブロックであって、
E 前記受け孔が車止めブロックの上面及び前面を切欠して形成され、前記受け孔に前記ホールキャップを装着すると、前記前面部が必然的に車止めブロックの前面を向くことを特徴とする
F 車止めブロック。」

第3 イ号物件
1 請求人の主張するイ号物件
判定請求書の「6.(4)」の記載によれば、請求人の主張するイ号物件の構成は、次のとおりである。

「(ア) 上下方向の貫通孔(250)を有し、
(イ) その上端がホールキャップ用受け孔(270)となっている車止めブロック(210)の該受け孔(270)に、
(ウ) 平面形状の上面部(310)と、
(エ) リフレクター(330)を設けた前面部と、
(オ) 筒状の脚部(320)を有する
(カ) ホールキャップ(300)を装着した車止めブロック(210)であって、
(キ) 前記受け孔(270)が車止めブロック(210)の上面(220)及び前面を切欠して形成され、
(ク) 前記受け孔(270)に前記ホールキャップ(300)を装着すると、前記前面部が必然的に車止めブロックの前面を向くことを特徴とする
(ケ) 車止めブロック(210)。」

なお、上記(ウ),(エ)及び(ク)に関して、甲第2号証の5及び甲第2号証の7において、「330リフレクター」の「前面部」の矢印が指し示す面、及び「330リフレクター」の「310上面部」の矢印が指し示す面を、それぞれ「前面部」及び「310上面部」と特定している。

2 被請求人の主張するイ号物件
(1)イ号物件の特定に係る主張の概要
被請求人は、請求人が判定請求書に添付した甲第2号証の1ないし甲第2号証の6の画像、及び甲第2号証の7及び甲第2号証の8の図で示されるイ号物件については認めるものの、甲第2号証の1ないし甲第2号証の8の写真または図に追記された「矢印とイ号物件の構成」については、一部否認するとももに、請求人が主張するイ号物件の構成に対し、分説記号(ア),(イ),(オ)?(キ)及び(ケ)については認めるが、分説記号(ウ),(エ)及び(ク)については否認している。

(2)イ号物件の特定
判定請求答弁書の「7.(3)(3.1)」の記載によれば、請求人が特定した構成(ウ),(エ)及び(ク)に対して、被請求人による特定は、以下の(ウ),(エ)及び(ク)のとおりである。

「(ウ) 前後方向の垂直断面において凸状の上面部と、
(エ) リフレクターを設けた、前側から中央上方に水平面に対して18度で傾斜するとともに前後幅が15.5mmの前側傾斜上面部及び前記前側傾斜上面部に連続した前後幅が5mmの中央水平上面部とからなる前後幅が20.5mmの前側傾斜・中央水平上面部と、
(ク) 前記受け孔に前記ホールキャップを装着すると、前記前側傾斜・中央水平状面部が必然的に車止めブロックの前側上方を向くことを特徴とする」

なお、上記(ウ),(エ)に関して、乙第1号証において、「リフレクター」の「前側傾斜上面部」の引込み線が示す面、及び「リフレクター」の「中央水平上面部」の引込み線が示す面を、それぞれ「前側傾斜上面部」及び「中央水平上面部」と特定し、「リフレクター」全体を「前側傾斜・中央水平上面部」と特定している。

3 当審によるイ号物件の特定
(1)甲第2号証の1ないし甲第2号証の8
甲第2号証の1ないし甲第2号証の8によれば、以下アないしエが看取できる。

ア イ号物件は、少なくとも、上面と、傾斜面を含む前面と、底面が形成された、車止めブロックである。

イ 車止めブロックは、上面から底面に向かって貫通する貫通孔を有し、貫通孔の上端には、車止めブロックの上面と前面の傾斜面を切り欠いて形成した受け孔が設けられている。
該受け孔は、前方が略方形、後方が略半円形であって、ホールキャップが嵌め込まれている。

ウ ホールキャップは、その平面形状が、前側が略方形、後側が略半円形となっており、その上部は上方に凸形状で、その前部は下方に垂下する面が形成され、その裏側には筒状の脚部が形成されている。
また、ホールキャップの上部の前側にリフレクターが取り付けられ、該リフレクターは、略水平に対して前方にやや傾斜した上方を向く面と、該やや傾斜した上方を向く面の後側に連続し、前後方向の幅が狭い略水平な面が形成されている。

エ 受け孔は、前方が略方形、後方が略半円形であって、ホールキャップの平面形状も、前側が略方形、後側が略半円形であるから、受け孔にホールキャップを嵌め込むと、ホールキャップの前後方向が必然的に決まることは明らかである。
そして、受け孔にホールキャップが嵌め込まれた状態で、略水平に対して前方にやや傾斜した上方を向く面は、車止めブロックの上方やや前面を向き、前部の下方に垂下する面は、車止めブロックの前面を向いている。

(2)上記(1)を踏まえて、イ号物件を、上記構成要件A?Fに対応させて整理すると、イ号物件は以下のとおり分説した構成を具備するものと認められる(構成ごとに記号aないしfを付した。)。
「a 上面から底面に貫通する貫通孔を有し、
b その上端がホールキャップが嵌め込まれる受け孔となっている車止めブロックの前記受け孔に、
c その上部は、凸形状となっており、前側には、略水平に対して前方にやや傾斜した上方を向く面と、前記やや傾斜した上方を向く面の後側に連続し、前後方向の幅が狭い略水平な面とからなるリフレクターが取り付けられ、
その前部は、下方に垂下する面が形成され、
その裏側に筒状の脚部を有する
ホールキャップを
d 嵌め込んだ車止めブロックであって、
e 前記受け孔が、車止めブロックの上面と前面の傾斜面を切り欠いて形成され、前記受け孔に前記ホールキャップを嵌め込むと、ホールキャップの前後方向が必然的に決まり、前記略水平に対して前方にやや傾斜した上方を向く面は、車止めブロックの上方やや前面を向き、前記下方に垂下する面は、車止めブロックの前面を向く
f 車止めブロック。」

(3)請求人の主張に対して
ア 請求人は、判定請求書に添付された甲第2号証の5及び甲第2号証の7の「前面部」の矢印が指し示す「前面部」と特定した部分(判定において認定したイ号物件の構成cの「略水平に対して前側にやや傾斜した上方を向く面」。)が、本件特許発明の構成Cの「リフレクター(33)を設けた前面部」に該当し、同じく「310上面部」の矢印が指し示す「上面部」と特定した部分(同じく「前後方向の幅が狭い略水平な面」。)が、「平面形状の上面部」に該当する旨、主張する。

イ まず、イ号物件の構成cの「略水平に対して前側にやや傾斜した上方を向く面」について検討する。
イ号物件の構成cにおいて、「リフレクター」の一部である「略水平に対して前側にやや傾斜した上方を向く面」は、その傾斜角度が「略水平に対して前側にやや傾斜し」ている程度であって、水平に近いものであるから、ホールキャップの上部の一部とみるのが自然である。
よって、請求人が「前面部」と特定した部分は、「前面部」とはいえない。

ウ 次に、イ号物件の構成cの「前後方向の幅が狭い略水平な面」について検討する。
(ア)イ号物件の構成cにおいて、「前後方向の幅が狭い略水平な面」は、「略水平に対して前側にやや傾斜した上方を向く面」と連続したリフレクターの一部であって、さらに該リフレクターは、凸形状の上部に取り付けられたものであるから、該「前後方向の幅が狭い略水平な面」は、略水平な部分の幅の狭さや、凸形状の一部であることからすると、単にホールキャップの上部の凸形状の一部とみるのが自然である。
(イ)ここで、本件特許発明の「平面形状の上面部」の意味について確認する。本件特許明細書において、「平面形状の上面部」の実施形態である「キャップ上面31」について、「【0008】・・・ホールキャップの上面とブロックの上面とが平坦で突設しているものがないので、・・・」、「【0017】・・・キャップ上面31は平面形状であり、ホルダー頭部2に被嵌したときに、当該キャップ上面31とブロック上面22とは平坦になる。キャップがブロック上面より突出していないことにより、・・・」と記載され、【図2】等を参照しても、キャップ上面31は、全面が平坦な形状となっていることからみて、本件特許発明の「平面形状の上面部」は、少なくとも、ホールキャップの上面全体の中で大きな比率の面積を有した平坦な面ということができる。
(ウ)したがって、イ号物件の構成cの「前後方向の幅が狭い略水平な面」は、上記(ア)で説示したとおりの構成であって、かつ本件特許発明の「平面形状の上部」が上記(イ)で説示したとおりの意味と認められるから、該「前後方向の幅が狭い略水平な面」は、「平面形状の上面部」とはいえない。


第4 属否の判断
1 本件特許発明とイ号物件の対比・判断
イ号物件が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。
(1)構成要件A,B,D及びFについて
イ号物件の構成a,構成b,構成d及び構成fが、それぞれ、本件特許発明の構成要件A,構成要件B,構成要件D及び構成要件Fに該当することは明らかであるから、イ号物件の構成a,構成b,構成d及び構成fは、それぞれ、本件特許発明の構成要件A,構成要件B,構成要件D及び構成要件Fを充足する。

(2)構成要件Cについて
イ号物件の構成cの「筒状の脚部」及び「ホールキャップ」は、それぞれ「筒状の脚部(32)」及び「ホールキャップ(30)」に該当する。
一方 イ号物件の構成cの「前部」に形成された「下方に垂下する面」は、「リフレクター」を設けたことの特定がないから、本件特許発明の構成要件Cの「前面部」には該当するものの、「リフレクターを設けた前面部」には該当しない。
また、イ号物件の構成cの「前後方向の幅が狭い略水平な面」は、上記 「第3 3(3)ウ」で説示したとおり、凸形状の一部であるから、本件特許発明の構成要件Cの「平面形状の上面部」に該当しない。
以上のことから、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

(3)構成要件Eについて
ア イ号物件の構成eの「前記受け孔が、車止めブロックの上面と前面の傾斜面を切り欠いて形成され」たことは、本件特許発明の構成要件Eの「前記受け孔(27)が車止めブロック(21)の上面(22)及び前面を切欠して形成され」たことに該当する。

イ イ号物件の構成eの「前記受け孔に前記ホールキャップを嵌め込むと、ホールキャップの前後方向が必然的に決まり、」「下方に垂下する面は、車止めブロックの前面を向く」ことは、本件特許発明の構成Eの「前記受け孔(27)に前記ホールキャップ(30)を装着すると、前記前面部位が必然的に車止めブロック(21)の前面を向くこと」に該当する。

ウ 被請求人は、本件特許発明の構成要件Eは、「前記前面部が必然的に車止めブロックの前面を向く」であり、「前記前面部は、平面形状の上面部から下方に略90度で垂下する前方を向いた垂下面(垂直面)であるから、車止めブロックの水平前方を向く」と解するのが妥当であって、イ号物件は、「前記前側傾斜・中央水平上面が必然的に車止めブロックの前側上方を向く」構成であるから、充足しないことは明らかである旨、主張する。
しかしながら、イ号物件の構成eにおいて、「リフレクター」の「略水平に対して前方にやや傾斜した上方を向く面」ではなく、「前部の」「下方に垂下する面」に着目すれば、リフレクターの有無に関わらず、当該「下方に垂下する面」は、本件特許発明の「前面部」に該当し、「ホールキャップ」を「受け孔」に嵌め込むことによって、当該面が車止めブロックの前面を向くことから、被請求人の主張は採用することができない。

エ したがって、イ号物件の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足する。


第5 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cを充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

 
判定日 2016-10-20 
出願番号 特願2011-142966(P2011-142966)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲野 一秀渋谷 知子  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 赤木 啓二
住田 秀弘
登録日 2013-06-21 
登録番号 特許第5294431号(P5294431)
発明の名称 車止めブロック  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 杉本 勝徳  
代理人 岡田 充浩  
復代理人 内山 邦彦  
代理人 布施 行夫  

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