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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B25F
管理番号 1321460
審判番号 無効2014-800102  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-06-12 
確定日 2016-08-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5534562号発明「電動工具」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第5534562号の明細書,特許請求の範囲を平成27年8月3日付け訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の一群の請求項1ないし8及び9ないし14,並びに請求項15について訂正することを認める。 特許第5534562号の請求項1ないし15に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成22年 7月14日 本件出願
平成26年 5月 9日 特許権の設定登録
平成26年 6月12日 本件無効審判請求
平成26年 9月 1日 答弁書,訂正請求書
平成26年10月 8日 弁駁書
平成26年11月12日 審理事項通知
平成27年 1月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 1月14日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 1月28日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成27年 1月28日 口頭審理
平成27年 2月12日 上申書(被請求人)
平成27年 5月28日 審決の予告
平成27年 8月 3日 上申書(被請求人),訂正請求書
平成27年10月 2日 弁駁書(2)
平成28年 4月 8日 訂正拒絶理由通知
平成28年 5月11日 意見書(請求人)
平成28年 5月12日 答弁書(被請求人),意見書(被請求人)

なお,上記平成26年9月1日付け訂正請求は,上記平成27年8月3日付け訂正請求がされたことから,特許法第134条の2第6項の規定により,取り下げられたものとみなす。

第2.訂正の適否
1.訂正の内容
平成27年8月3日付けの訂正請求(以下,当該訂正請求及び当該訂正請求に係る訂正を,それぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。)は,特許第5534562号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって,その内容を,訂正箇所に下線を付して示すと,以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1及び請求項2について,
「【請求項1】
ハウジングと,
前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,
前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。」
「【請求項2】
前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
とあるのを,
「【請求項1】
ハウジングと,
前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,前記制御部が搭載される回路基板と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,
前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出され,
前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,
前記吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられていることを特徴とする電動工具。」
「【請求項2】
前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,
前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
と訂正し,請求項1又は2を引用する請求項3ないし8も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4及び請求項8について,
「【請求項4】
前記基板部は,前記制御部が搭載される回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,
前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
「【請求項8】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,
前記基板部は,前記制御部が搭載される回路基板を有し,
前記通気口には,前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
とあるのを,
「【請求項4】
前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,
前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
「【請求項8】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,
前記通気口には,前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
と訂正し,請求項4を引用する請求項5ないし7も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正事項1及び2に係る特許請求の範囲の訂正に伴い,願書に添付した明細書の段落【0006】,【0007】,【0012】及び【0015】について,
「【0006】
上記課題を解決するために本発明は,ハウジングと,前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,前記ブラシレスモータを制御する制御部と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と,前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具を提供している。」
「【0007】
また,前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることが好ましい。」
「【0012】
また,前記基板部は,前記制御部が搭載される回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることが好ましい。」
「【0015】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,前記基板部は,前記制御部が搭載される回路基板を有し,前記通気口には,前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることが好ましい。」
とあるのを,
「【0006】
上記課題を解決するために本発明は,ハウジングと,前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,前記ブラシレスモータを制御する制御部と,前記制御部が搭載される回路基板と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と,前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出され,前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,前記吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられていることを特徴とする電動工具を提供している。」
「【0007】
また,前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることが好ましい。」
「【0012】
また,前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることが好ましい。」
「【0015】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,前記通気口には,前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることが好ましい。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9及び請求項10について,
「【請求項9】
上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,
前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,
前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,
前記ハウジングは,吸気口が設けられ,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。」
「【請求項10】
前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,
前記冷却風路は,前記吸気口,前記基板部収容部,前記通気口,前記モータハウジング,前記ファン収容部,前記排気口から形成されることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。」
とあるのを,
「【請求項9】
上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,
前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,
前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,
前記ハウジングは,吸気口が設けられ,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出され,
前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入することを特徴とする電動工具。」
「【請求項10】
前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,
前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,
前記冷却風路は,前記吸気口,前記基板部収容部,前記通気口,前記モータハウジング,前記ファン収容部,前記排気口から形成されることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。」
と訂正し,請求項9を引用する請求項11ないし14も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正事項4に係る特許請求の範囲の訂正に伴い,願書に添付した明細書の段落【0016】及び【0017】について,
「【0016】
本発明の別の観点によると,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,前記ハウジングは,吸気口が設けられ,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具を提供している。」
「【0017】
また,前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,前記冷却風路は,前記吸気口,前記基板部収容部,前記通気口,前記モータハウジング,前記ファン収容部,前記排気口から形成されることが好ましい。」
とあるのを,
「【0016】
本発明の別の観点によると,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,前記ハウジングは,吸気口が設けられ,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出され,前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入することを特徴とする電動工具を提供している。」
「【0017】
また,前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,前記冷却風路は,前記吸気口,前記基板部収容部,前記通気口,前記モータハウジング,前記ファン収容部,前記排気口から形成されることが好ましい。」
と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15について,
「【請求項15】
上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,
前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続される放熱部材を有する基板部と,
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,
前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータ,前記基板部が前記ハウジング内に収容され,
前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され,
前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。」
とあるのを,
「【請求項15】
上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,
前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,を有する基板部と,
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,
前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータ,前記基板部が前記ハウジング内に収容され,
前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され,
前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け,
前記通気口は,前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され,
前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ,
前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に配置され,
前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように設けられ,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。」
と訂正する。

(7)訂正事項7
訂正事項6に係る特許請求の範囲の訂正に伴い,願書に添付した明細書の段落【0025】について,
「【0025】
本発明の別の観点では,上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続される放熱部材を有する基板部と,前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータ,前記基板部が前記ハウジング内に収容され,前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され,前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具を提供している。」
とあるのを,
「【0025】
本発明の別の観点では,上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,を有する基板部と,前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータ,前記基板部が前記ハウジング内に収容され,前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され,前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け,前記通気口は,前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され,前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ,前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に配置され,前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように設けられ,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具を提供している。」
と訂正する。

2.本件訂正請求についての当事者の主張
被請求人が,訂正事項1ないし7について,訂正事項1,4及び6は特許請求の範囲の減縮を目的とし,訂正事項2,3,5及び7は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,いずれも特許法第134条の2第1項ただし書きに規定される目的に該当し,特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない旨主張したのに対して,請求人は,口頭審理陳述要領書(2ページ2ないし5行),弁駁書(2)(5ページ17及び18行,8ページ15ないし16行,11ページ下から4行)において,訂正の可否については争わない旨を主張した。

3.訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の存否の判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は,訂正前の請求項1における「基板部」について,「前記制御部が搭載される回路基板」を有することを付加し,訂正前の請求項1における「隔壁」について,「前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」ることを付加し,訂正前の請求項1における「吸気口」について,「前記吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」ことを付加し,訂正前の請求項2の「電動工具」について,「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」との構成を付加する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
また,訂正事項1における,「基板部」が,「前記制御部が搭載される回路基板」を有するとの事項は,訂正前の請求項4及び8の限定事項であるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
また,訂正事項1における,前記「隔壁」が,「前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」ることを付加する事項は,図1に,回転軸31の下端部が,通気口2bが形成されたモータハウジング2Aの下部にベアリングによって支持されていて,当該ベアリングが,当該モータハウジング2Aの下部のうち,ブラシレスモータ3が収容された部分と基板部9を収容されている部分を隔てる壁に設けられていることが図示されているから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
また,訂正事項1における,「吸気口」が,「前記隔壁よりも下方で且つ前記基板部よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」ことを付加する事項は,本件明細書の段落【0050】に「ハンドルハウジング2Cには,図2,3に示すように,吸気口2cが,左右方向それぞれに上下方向に2箇所,前後方向に2箇所の合計8箇所形成されている。」と記載され,図1に回路基板91が示されており,図1,図2及び図3を参照すれば,吸気口2cが隔壁(図2において通気口2bが形成されている部分)よりも下方で,且つ回路基板91よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている構成が記載されているといえるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして,訂正事項1における,請求項2記載の「電動工具」が,「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」ることを付加する事項について検討する。本件特許の図1に,ブラシレスモータ3の回転軸31が,冷却ファン32の上方であって冷却ファン32と対向する部分において,ベアリングで支持されていることの図示がある。そして,本件明細書の段落【0035】の「ギヤケース2Bアルミ製(金属製)であって,内部に,回転駆動伝達機構4と,ボルトチップ排出機構5等が内蔵されている。回転駆動伝達機構4は前後方向に延び,ギヤ機構7と遊星ギヤ機構8とにより構成される。」との記載,段落【0036】の「ギヤ機構7は,遊星ギヤ機構8とブラシレスモータ3との間に介在しており,ピニオンギヤ31Aと噛合する第一ギヤ71と,第一ギヤ71に噛合する第二ギヤ部72と,第二ギヤ部72と噛合する第三ギヤ部73とから主に構成されている。」との記載,及び,段落【0037】の「遊星ギヤ機構8は,第一遊星ギヤ81,第二遊星ギヤ82,第三遊星ギヤ83,及びこれら第一?第三遊星ギヤ81?83のリングギヤとなる外周部8Aとから構成されている。」との記載と,ギヤ機構7を構成する第一ギヤ71,第二ギヤ部72及び第三ギヤ部73,遊星ギヤ機構8を構成する第一遊星ギヤ81,第二遊星ギヤ82,第三遊星ギヤ83,及び,外周部8A,並びに,ボルトチップ排出機構5が存在する空間の下部を囲んでいる壁体(符番「2a」の引出線の始点がある)が,上記回転軸31を,その上方で支持するベアリングの側面と上面を囲んでいることの図示から,当該ベアリングの側面と上面を囲んでいる当該壁体は,上記金属製のギヤケースの下面を構成するものであることは明らかであり,そうすると,当該ベアリングは,ギヤケースに設けられたものであるといえる。したがって,訂正事項1のうち,訂正前の請求項2の「電動工具」について,「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」とした事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである
以上のとおりであるから,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに,訂正事項1が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項2
訂正事項2は,訂正事項1に係る訂正に伴って,訂正後の請求項1の記載と訂正後の請求項4及び請求項8の記載との整合性を図るため,訂正事項1により,訂正後の請求項1の特定事項に含まれることとなった,請求項4及び8の特定事項を削除するもので,訂正前の請求項4から「前記制御部が搭載される回路基板と,」を削除し,訂正前の請求項8から「前記基板部は,前記制御部が搭載される回路基板を有し,」を削除する訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであることは明らかである。
また,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であることは明らかである。
さらに,当該訂正事項2が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(3)訂正事項3
訂正事項3における段落【0006】,【0007】,【0012】及び【0015】の記載は,本件訂正後の請求項1,請求項2,請求項4及び請求項8にそれぞれ特定される事項と明細書の記載とを,整合させるためのものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し,上記(1)及び(2)に示したとおり,当該訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるし,当該訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(4)訂正事項4
訂正事項4のうち,訂正前の請求項9における「前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分」という構成に,「前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」ることを付加する事項,及び,「吸気口」という構成に,「前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入する」ことを付加する事項は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
また,訂正事項4のうち,訂正前の請求項10における「ハウジング」に,「前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」ることを付加する訂正も,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
訂正事項4のうち,訂正前の請求項9における「前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分」との構成について,「前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」を付加する事項は,図1には上記(1)で示したとおりの図示があり,「ブラシレスモータ3が収容された部分と基板部9を収容されている部分を隔てる壁」は,「基板収容部とモータハウジングとを区画する部分」であるともいえるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また,訂正事項4のうち,訂正前の請求項9の「吸気口」について,「前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入する」を付加する事項は,本件明細書の段落【0050】には「ハンドルハウジング2Cには,図2,3に示すように,吸気口2cが,左右方向それぞれに上下方向に2箇所,前後方向に2箇所の合計8箇所形成されている。」と記載され,図1には基板部9が示されており,図1,図2及び図3を参照すれば,吸気口2cが,区画する部分(図1及び図2において通気口2bが形成されている部分)と,基板部9との間の範囲内に収まるよう設けられている構成が,本件明細書及び図面には示されている。吸気口2cが前記区画する部分と前記基板部9との間の位置にあれば,吸気口2cから吸入された空気は,まずは,前記区画する部分と前記基板部9との間の空間に直接流入されることになることは明らかである。そうすると,流入された空気がその後どこに行くかは別にして,吸気口から吸入された空気の全ては,当該空間に直接流入されると理解できるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また,訂正事項4のうち,訂正前の請求項10に記載された「ハウジング」について,「前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」ることを付加する事項は,上記(1)に示した,本件明細書の段落【0035】ないし【0037】の記載及び図1の図示から,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
以上のとおりであるから,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに,当該訂正事項4が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(5)訂正事項5
訂正事項5に係る本件明細書の段落【0016】及び【0017】の記載は,訂正後の請求項9で特定される事項と明細書の記載とを整合させるためのものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し,上記(4)で示したとおり,当該訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,当該訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(6)訂正事項6
訂正事項6は,訂正前の請求項15の「基板部」について,「前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板」を有するとの事項を付加し,「通気口」に,「前記通気口は,前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され」との事項を付加し,「隔壁」に,「前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ」との事項を付加し,「回路基板」について,「前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に設けられ」との事項を付加し,また,「放熱部材」に,「前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように配置され,」との事項を付加する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
訂正事項6のうち,訂正前の「基板部」について,「前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板」を有することを付加する事項は,訂正前の請求項4及び8の限定事項であるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また,訂正事項6のうち,訂正前の「通気口」について,「前記通気口は,前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され」とした事項は,図1において,「通気口2b」がブラシレスモータ3が収容された部分と基板部9を収容されている部分を隔てる壁に形成されていることが図示されているから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また,訂正事項6のうち,訂正前の「隔壁」について,「前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ」との事項を付加した事項は,図1に,回転軸31の下端部が,通気口2bが形成されたモータハウジング2Aの下部にベアリングによって支持されていて,当該ベアリングが,当該モータハウジング2Aの下部のうち,ブラシレスモータ3が収容された部分と基板部9を収容されている部分を隔てる壁に設けられていることが図示されているから,願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
また,訂正事項6のうち,訂正前の「回路基板」について「前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に設けられ」とした事項は,本件明細書の段落【0050】,図1及び図2の記載に基づいている。すなわち,本件明細書の段落【0050】には,「冷却風路」について,「冷却ファン32が回転することによって吸気口2cから外気が吸入され,通気口2b,空隙35a(図4),隙間36a(図4)を通って基板部9,基板33,ブラシレスモータ3をそれぞれ冷却して排気口2aより排出される(図2の矢印)。」との記載があり,図1には基板部収容部9a内における回路基板91の位置の図示があり,図2には,矢印で示された当該冷却風路の下方に回路基板91が配置されていることの図示がある。したがって,当該事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
そして,訂正事項6のうち,訂正前の「放熱部材」について「前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように設けられ」とした事項は,本件明細書の段落【0066】,図1及び図2の記載に基づいている。すなわち,段落【0066】には,「放熱部材94は吸気口2cと排気口2aとの間に配置されているため,冷却ファン32により発生した吸気口2cと排気口2aとの間を通る冷却風によって放熱部材94を効率的に冷却することができる。」との記載があり,図2には,放熱部材94が回路基板91から冷却風路(図2の矢印)に張り出すように設けられていることの図示がある。そうすると,段落【0066】,図1及び図2の記載から,放熱部材94は冷却風路に張り出すように設けられていることが理解できる。したがって,当該事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって,訂正事項6は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに,訂正事項6が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(7)訂正事項7
訂正事項7における本件明細書段落【0025】の記載は,訂正後の請求項15に対応する事項を記載したものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し,上記(6)で示したとおり,当該訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書の規定に適合し,同条第9項で準用する第126条第5及び6項の規定に適合するものであるので,適法な訂正と認める。したがって,結論のとおり,訂正後の一群の請求項1ないし8及び9ないし14,並びに請求項15について訂正することを認める。

第3.本件特許の請求項1ないし15に係る発明
本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」という。)は,上記のとおり訂正が認められたから,訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
ハウジングと,
前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,前記制御部が搭載される回路基板と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,
前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け,前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出され,
前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,
前記吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,
前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記モータ収容部は,前記冷却ファンを収容するファン収容部を備え,前記ファン収容部には前記排気口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項4】
前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,
前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
前記放熱部材は,前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ冷却風路内に配置されることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記回路基板は前後方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項7】
前記出力部は前記回転軸の軸心と交差すると共に前記回路基板と略平行に延びることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,
前記通気口には,前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項9】
上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,
前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,
前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,
前記ハウジングは,吸気口が設けられ,前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出され,
前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入することを特徴とする電動工具。
【請求項10】
前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ,
前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,
前記冷却風路は,前記吸気口,前記基板部収容部,前記通気口,前記モータハウジング,前記ファン収容部,前記排気口から形成されることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項11】
前記スイッチング素子は前記吸気口の近傍に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項12】
前記スイッチング素子に接続される放熱部材をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の電動工具。
【請求項13】
前記吸気口は前記スイッチング素子よりも前記放熱部材に近接していることを特徴とする請求項12に記載の電動工具。
【請求項14】
前記ハンドルハウジングはD型形状のハンドルを備え,前記ハンドルの下方に電源が接続可能であることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項15】
上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,
前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,を有する基板部と,
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,
前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータ,前記基板部が前記ハウジング内に収容され,
前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され,
前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け,
前記通気口は,前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され,
前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ,
前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に配置され,
前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように設けられ,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。」

第4.請求の趣旨,答弁の趣旨及び証拠方法
(1)請求の趣旨
請求人は,審判請求書において,本件特許発明1ないし15に係る発明についての特許を無効とする,との審決を求め,その無効理由として,以下のとおり主張した。
本件特許発明1ないし15は,甲第1ないし6号証に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,本件特許発明1ないし15に係る発明についての特許は無効とすべきものである。

また,証拠方法として以下の甲第1ないし15号証が提出されている。
審判請求書添付
甲第1号証 特表2000-515435号公報
甲第2号証 特表2005-514888号公報
甲第3号証 特開平10-156745号公報
甲第4号証 特開平11-129162号公報
甲第5号証 特開2005-193310号公報
甲第6号証 特開2008-173712号公報
弁駁書添付
甲第7号証 特開2007-136607号公報
甲第8号証 特開2004-98282号公報
甲第9号証 欧州特許出願公開第2085191号明細書及び和文抄録
口頭審理陳述要領書(2)添付
甲第10号証 特開2008-296306号公報
甲第11号証 特開2008-193865号公報
甲第12号証 特開2009-240023号公報
甲第13号証 特開2009-274195号公報
弁駁書(2)添付
甲第14号証 特開2001-353668号公報
甲第15号証 実願平5-67436号(実開平7-37581号)のCD-ROM

(2)答弁の趣旨
被請求人は,答弁書において,本件無効審判の請求は成り立たない,との審決を求めている。

また,証拠方法として以下の乙第1ないし3号証が提出されている。
平成27年2月12日付け上申書添付
乙第1号証 進歩性検討会報告書 平成19年3月 特許庁審判部
乙第2号証 平成17年(行ケ)第10490号 判決 一部抜粋
乙第3号証 甲第9号証の一部独日翻訳


第5.当事者の主張
1.請求人の主張
(1)弁駁書における主張
ア.甲第1号証や甲第2号証においても,基板部及びブラシレスモータを冷却するための吸気口が設けられている以上,当業者が両発明に基づいて改良を考える際,吸気口を基板部及びブラシレスモータの冷却効率が高まるより効果的な位置に配置することは,当業者が当然なし得る設計事項に過ぎない。(3ページ7?11行)
イ.甲第2号証では,モータハウジングの内面領域を大きく設定してポッティングボート98周りの空間を大きくすることで空気流の改良を図っているが(甲第2号証の11ページ35?40行),このように基板部による空気流の阻害の問題が明記されている以上,当業者が甲第2ないし4号証の発明若しくは甲第2ないし5号証の発明を甲第1号証の発明に適用するに当たり,当該空気流の阻害の問題を解決するために,モータハウジングの形状によらずに吸気口の位置を隔壁と回路基板との間に変更することで,空気流が回路基板に阻害されないように改良を図ることは,単なる設計事項であり,通常の創作能力の発揮に過ぎない。(3ページ下から8行?3ページ最終行)
ウ.仮に,吸気口の位置の変更が単なる設計事項でないとしても,甲第6号証には,モータ30とFETからなる保護手段50との間に設けた側面風窓12a1によって保護手段50とモータ30とを順番に冷却する発明が開示されているから,甲第6号証の記載に基づいて吸気口を隔壁と回路基板との間に収まるように設けることに何ら困難性は認められない。この点被請求人は,側面風窓12a1は右端部が側面視で保護手段50と重なり,左端部がモータ30と重なっているため,側面風窓12a1の右部から導入された外気はモータ30に向かう経路において保護手段50が障害となり,左部から導入された外気は保護手段50を冷却することなくモータ30に向かう旨主張している。
しかし,そのように障害となったり空気が基板部を通らずに冷却が不十分となったりするのであればなおさら,甲第6号証記載の発明を甲第1ないし4号証の発明若しくは甲第1ないし5号証の発明へ適用するに当たり,当業者は,回路基板が障害とならないように吸気口を回路基板と重ならない形状に変更すると共に,基板部の冷却という本来の目的を維持するために吸気口をモータと重ならない形状に設計変更するはずである。(4ページ4?18行)
エ.冷却流が電子部品に阻害されないように吸気口を配置する技術は,甲第7号証ないし甲第9号証において例示するように本件出願前に既に電動工具の分野において周知である。よって,当業者が甲第2ないし4号証の発明若しくは甲第2ないし5号証の発明を甲第1号証の発明に適用するに当たり,この周知技術を参照して空気流が回路基板に阻害されないように吸気口を隔壁と回路基板との間に収まるように設けることは,当業者にとって格別困難なこととは言えない。
したがって,本件特許発明1は,甲第1ないし4号証記載の発明に甲第7ないし9号証に例示される周知技術を適用することで,或いは甲第1ないし5号証記載の発明に甲第7ないし9号証に例示される周知技術を適用することで,当業者が容易に発明できたものである。(4ページ下から8行?5ページ11行)
(2)口頭審理陳述要領書(2)における主張
ア.「設計事項」は,そもそもコストの削減や性能アップというように従前よりも有利な効果の獲得を期待して実施されるのが通常であるから,特徴「(1g)吸気口は隔壁よりも下方で且つ回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」ことが有利な効果を奏するから設計事項に該当しないという被請求人の主張は失当である。(2ページ5?8行)
イ.甲第1号証の6ページ15?19行には,「空気流7は,・・複数の開口8を通ってこのハンドグリップ部分1a内へ達し,かつ,制御電子装置5の表面を擦過した後に,・・壁に設けられた1つの開口9を通ってモータ室10内へ流入し,」との記載がある。
また,同ページ21?24行には,「図面に示された実施例では,制御電子装置5全体が冷却空気流7内に配置されている。さらに,択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,もしくはこの冷却面の一部分のみを冷却空気流7内に配置する一方で,実際的な電子装置構成部分を冷却空気流7の範囲外の一箇所に配置することも可能である。」との記載がある。
すなわち,ここには制御電子装置5が空気流7を阻害しないように開口8との位置関係を変更する構成への示唆があると言える。(5ページ1?11行)
ウ.甲第1号証において,制御電子装置5が回路基板を含むか否か明記されていないが,ブラシレスモータの電子制御のために,スイッチング素子等を搭載した回路基板を有することは,被請求人も自認することである。
従って,「実際的な電子装置構成部分」である回路基板との関係において空気流が阻害されないように吸気口の位置を決定することは当業者に容易になし得る。(5ページ12?20行)
(3)弁駁書(2)における主張
ア.本件訂正後の特許発明1について
甲第2号証の図2及び8の記載から,端壁72に,シャフト50を支持する軸受46が軸受サポートを介して設けられていることが理解できる。(4ページ15?25行)
電動工具の分野において,モータを収容した空間を回転軸の軸線方向で仕切る隔壁に当該回転軸の軸受を設ける点は,例えば甲第9号証及び甲第14号証に記載されているように,従来周知の事項である。(4ページ下から4行?5ページ4行)
イ.本件訂正後の特許発明9について
甲第2号証の図2及び8の記載から,端壁72に,シャフト50を支持する軸受46が軸受サポートを介して設けられていることが理解できる。(7ページ13?23行)
電動工具の分野において,モータを収容した空間を回転軸の軸線方向で仕切る隔壁に当該回転軸の軸受を設ける点は,例えば甲第9号証及び甲第14号証に記載されているように,従来周知の事項である。(7ページ24行?8ページ2行)
ウ.本件訂正後の特許発明15について
甲第1号証に記載された審決予告で認定された第3発明に,甲第3及び4号証に記載された技術的事項を適用するにおいて,上側のモータ収容部と下側の基板主要部とを繋ぐ通気口を隔壁に設ける程度のことは,当業者であれば容易に想到できた事項である。あるいは第3発明に甲第2号証に記載された事項を適用して当業者が容易になし得た事項である。(9ページ4?28行)
また,電動工具の分野において,モータを収容した空間を回転軸の軸線方向で仕切る隔壁に当該回転軸の軸受を設ける点は,例えば甲第9号証及び甲第14号証に記載されているように,従来周知の事項である。(10ページ下から7?5行)
エ.本件訂正後の特許発明2ないし8について
電動工具の分野において,特許発明2の「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」ている構成は,甲第1,6及び15号証の記載から,従来周知の事項である。(11ページ下から9行?12ページ下から11行)
オ.本件訂正後の特許発明10ないし14について
本件特許発明10における「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属ギヤケースをさら有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」ている構成は,電動工具の分野において,第1,6及び15号証の記載から,従来周知の事項である。(13ページ下から12?14ページ下から7行)

2.被請求人の主張
(1)平成26年9月1日付け答弁書における主張
甲第1号証は,電動工具においてケーシング1内部に冷却空気流7を取込むための複数の開口8が,制御電子装置5の下方で且つモータ室10の壁の後方に形成されている構成を開示している(甲第1号証の図1)。しかし,本件特許発明1の「(1g)吸気口は隔壁よりも下方で且つ回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」という特徴は,甲第1号証において開示されていない。甲第1号証に記載の発明においては,複数の開口8が制御電子装置5とモータ室10の壁との間に形成されておらず,本件特許発明1の特徴(1g)とは開口8,制御電子装置5及びモータ室10の壁の位置関係が相違する。また,甲第1号証に記載の発明においては,複数の開口8は前後方向に並んで配置され,前後方向において最前端の開口8は制御電子装置5の前端と略一致し最後端の開口8は制御電子装置5の後端と略一致している(甲第1号証の図1)。当該構成では,複数の開口8のうちの後方の開口8からハンドグリップ部分1a内部に流入した冷却空気流7は,羽根車11の回転に伴って甲第1号証の図1において左上方向に向かって流れようとする。冷却空気流7が左上方向に向かって流れるようとすると制御電子装置5が障害となり,冷却空気流7の円滑な流れが制御電子装置5によって阻害される。このため,当該後方の開口8から流入した冷却空気流7は,開口9を介してモータ室10に円滑に流入することができない。これに対して,本件特許発明1は「(1g)吸気口は隔壁よりも下方で且つ回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」という特徴を有しているため,基板部による当該流れの阻害を抑制することで冷却風の流れがより円滑となり,基板部及びブラシレスモータをより効果的に冷却することができるという有利な効果を奏する。(12ページ13行?13ページ8行)
(2)口頭審理陳述要領書における主張
ア.設計事項とは,技術の具体的適用に伴い,当然考慮せざるを得ない事項であって,その構成自体に格別の技術的意義がない場合に適用されるものであるところ,甲第1ないし5号証のいずれにも開示されていない上記(1)の特徴(1g)は,「冷却風が基板部によって阻害されることを抑制し,冷却風の流れをより円滑とすることで基板部及びブラシレスモータをより効果的に冷却することができる」という有利な効果を奏するため,設計事項には該当せず,吸気口を特徴(1g)のように構成することは通常の創作能力の発揮ではない。従って,本件特許発明1は甲第1ないし5号証記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではないため,請求人の主張は失当である。(3ページ15?23行)
イ.甲第6号証には,空気が基板部を通らずに冷却が不十分となるという課題は記載も示唆もされておらず,且つ,上記(1)の特徴(1g)も開示されていない。このため,甲第1ないし6号証に基づいて吸気口を上記特徴(1g)のように構成することは当業者であっても容易ではない。また,請求人の主張は,単に,課題を認識すれば当該課題を解決可能な構成とするのは当然であると言っているに過ぎず,当然であることの根拠が何ら示されていない。従って,このような請求人の主張は失当である。(4ページ5?11行)
ウ.請求人が上記1.(1)エ.で主張する「冷却風が電子部品に阻害されないように吸気口を配置する技術」とは具体的にいかなる構成により実現されるものであるのか請求人は明言しておらず,このような技術が本件出願前に周知ないし公知であった否かを正確に論じることはできない。(4ページ下から9行?最終行)
甲第7ないし9号証は,冷却流が電子部品に阻害されない構成を開示するものではなく,且つ,上記(1)の特徴(1g)を開示するものでもない。従って,当業者であっても,甲第1ないし5号証記載の発明に甲第7ないし9号証に例示される発明を適用することで本件特許発明1に容易に想到することはできない。すなわち,本件特許発明1はいわゆる進歩性を有する。よって,本件特許発明1は,甲第1ないし4号証記載の発明に甲第7ないし9号証に例示される周知技術を適用することで,或いは甲第1ないし5号証記載の発明に甲第7ないし9号証に例示される周知技術を適用することで,当業者が容易に発明できたものである,という請求人の主張は失当である。(7ページ10?18行)
エ.甲第2号証に記載の発明においてポッティングボード98及び主制御PCB82が冷却風路上に張り出しており,冷却風は通気端部キャップ22から流入してポッティングボード98及び主制御PCB82の外周に回り込んでからモータに流れるものと考えられ,冷却風路を阻害しない技術が甲第2号証に開示されているとは必ずしも言うことができない。このように甲第2号証に記載の発明においては冷却風はポッティングボード98の外周を迂回して流れざるを得ない構成であるにも関わらず,なぜ請求人は甲第2号証に冷却風路を阻害しない技術が開示されていると主張するのか根拠が不明である。
また甲第2号証に記載された発明において,空気はポッティングボード98及び主制御PCB82の後方に配置された通気端部キャップ22から流入してポッティングボード98及び主制御PCB82の外周を迂回してから前方へと流れるのであるから,甲第2号証は本件特許発明15に記載された特徴「(15i)回路基板は,冷却回路よりも下方に配置され,放熱部材は,冷却風路に張り出すように設けられ」たことを開示するものではない。また,設計事項とは,技術の具体的適用に伴い,当然考慮せざるを得ない事項であって,その構成自体に格別の技術的意義がない場合に適用されるものであるところ,甲第1ないし5号証のいずれにも開示されていない特徴(15i)は,「吸気口から吸入された空気の流れを回路基板によって阻害することなく,当該空気の流れがより円滑となり,基板部及びブラシレスモータをより効果的に冷却することができる」という有利な効果を奏するため,設計事項には該当せず,特徴(15i)のように構成することは通常の創作能力の発揮ではない。従って,本件特許発明15に係る発明は甲第1ないし5号証記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではないため,請求人の主張は失当である。(12ページ3?24行)
(3)平成27年2月12日付け上申書における主張
ア.特許庁審判部による進歩性検討会報告書(平成19年3月)の22ページには,「そもそも,設計事項とは文献による示唆や動機付けがなくても,技術の具体的運用に伴い当然考慮せざるを得ない事項であって,その構成自体に格別の技術的意義のない場合には「設計事項」といえるものであり」と記載されているように,「設計事項」か否かを判断するにあたって,有利な効果を奏するか否かは重要な判断要素であり,有利な効果を奏する場合には,「設計事項」ではないと判断されるべきである。したがって,被請求人の主張は失当である。(2ページ下から2行?3ページ11行)
イ.電子部品14について検討すると,甲第7号証の段落【0007】の記載から,電子部品14はFET14aであることが理解できる。また,甲第7号証の図3においてFET14aがE-F方向と直交する方向(図3の上下方向)に延びていないこと,及び,一般的なFETの形状に鑑みると,甲7号証におけるFET14aはE-F方向に一定の寸法を有するものであることは容易に理解でき,図1,図3及び図4並びに明細書の記載からは電子部品14(FET14a)がE-F方向にいかなる寸法を有しているのかは把握することはできない。言い換えれば,FET14aのE方向端部がいかなる位置まで延びているのかは把握できない。
このため,空気Mが電子部品14(FET14a)よりも排気口20側で流れているのか否かを判断することはできず,「甲第7号証の図4において,吸気口19aから導入された空気Mが電子部品14よりも排気口20側で流れる記載がある」とは必ずしも言えない。従って,甲第7号証の当該記載から空気流が電子部品14に阻害されないように吸気口19aを電子部品14よりも排気口20側に配置する技術が当業者によって容易に理解できる,という請求人の主張は失当である。(4ページ11行?下から3行)
ウ.甲第1号証には,制御電子装置5による空気流7の阻害の問題又は課題は記載されておらず,さらに甲第1号証には「択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,?一箇所に配置することも可能である。」と記載されているが,その配置のバリエーションがどのような効果を奏するのかについては記載されておらず,当該記載は,制御電子装置5が空気流7を阻害しないように開口8との位置関係を変更することを示唆しているとまでは言えない。(7ページ8?15行)
(4)平成27年8月3日付け上申書における主張
ア.本件訂正後の特許発明1は,「隔壁には,回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」との構成によって,通気口を通過する冷却風によって第1モータベアリングを効率よく冷却することができ,ベアリングの潤滑油が粘性低下によって第1モータベアリングから流れ出ることを抑制し,ベアリングやモータの寿命を向上させることができるとの作用効果を奏する。(4ページ下から5行?5ページ2行)
イ.本件訂正後の特許発明2は,「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」との構成によって,冷却風によって第2モータベアリングを効率よく冷却することができ,発熱抑制,潤滑油の粘性低下による第2モータベアリングからの流出の抑制,及び,寿命向上をさせることができる,との作用効果を奏する。(6ページ14?22行)
ウ.本件訂正後の本件特許発明9は,「前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」との構成によって,通気口を通過する冷却風によって第1モータベアリングを効率よく冷却することができ,ベアリングの潤滑油が粘性低下によって第1モータベアリングから流れ出ることを抑制することで,ベアリングやモータの寿命を向上させることができるとの作用効果を奏する。(8ページ下から2行?9ページ6行)
エ.本件訂正後の特許発明10は,「前記ハウジングは,前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」との構成よって,冷却風によって第2モータベアリングを効率よく冷却することができ,発熱抑制,潤滑油の粘性低下による第2モータベアリングからの流出の抑制,寿命向上をさせることができる,との作用効果を奏する。(10ページ下から5行?11ページ4行)
オ.本件訂正後の特許発明15は,「通気口は,回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され,前記隔壁には,前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ」との構成によって,通気口を通過する冷却風によって,モータベアリングを効率よく冷却することができ,回転軸の回転に伴うモータベアリングの発熱を抑制することができ,潤滑油の粘性低下によるモータベアリングからの流出を抑制でき,ベアリング,ひいてはブラシレスモータの寿命を向上させることができるとの作用効果を奏する。(13ページ下から12?5行)
(5)平成28年5月12日付け答弁書における主張
ア.本件訂正後の特許発明1について
(ア)甲第1号証の【図1】の「開口9」の図示から,甲第1号証には,本件特許発明1の「モータ収容部と基板部収容部との間を区画する隔壁に設けられた通気口」に相当するものが記載されていない。(9ページ3行?17ページ下から10行)
(イ)甲第1号証記載の電動工具は,モータケーシング1bからの熱や振動が制御電子装置5に伝達されないようにするために,振動緩衝装置12を介してハンドグリップ部分1aの内部に制御電子装置5を収容するものであり,甲第3及び4号証記載のものを適用すると,電子装置5はモータケーシング1bに収容されることになり熱や振動が伝達されやすくなる。よって,当該適用には阻害事由がある。(17ページ下から8行?19ページ3行)
(ウ)甲第2号証の制御電子装置をモータの下方に配置する構成を,甲第1号証記載の発明に適用することは,制御電子装置5への熱や振動が伝達を避けようとする甲第1号証記載の発明の目的の達成を阻害することとなるから,当該適用は困難である。そして,甲第2号証記載の通気端部キャップ22は,主制御PCB82から見てモータ10の反対側に設けられているから,甲第1号証と甲第2号証を組み合わせると,吸気口は,基板部の下方に配置され,本件特許発明1に特定された位置とはならない。(19ページ10行?20ページ7行)
(エ)甲第1号証に記載された発明に,本件訂正後の本件特許発明1の「吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」構成をとることの動機付けはない。甲第1号証記載のものに,甲第3及び4号証に記載の事項を組み合わせたものは,吸気口である開口8は,制御部の下方に位置するから,それをわざわざ削除してモータ2と制御部との間に開口を形成しようとする動機付けはない。(20ページ9行?21ページ下から6行)
イ.本件訂正後の特許発明9について
(ア)甲第1号証には,本件訂正後の特許発明9の「基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分」に相当するものが記載されていない。そして,甲第1号証記載の電動工具に,甲第3及び4号証記載の「制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置する事項」を適用した場合でも,特許発明9に記載された「前記基板収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に,前記基板部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設けた」構成とはならない。(22ページ下から13行?23ページ16行)
(イ)甲第1号証記載の発明に,甲第2号証記載の事項を組み合わせることの動機付けがない。(24ページ4?17行)
ウ.本件訂正後の特許発明15について
(ア)甲第1号証には,本件訂正後の特許発明15の「モータ収容部と基板部収容部とを区画する隔壁」に相当するものが記載されていない。そして,甲第1号証記載の電動工具に,甲第3及び4号証記載の「制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置する事項」を適用することに阻害要因が存在する。(26ページ下から14?6行)
(イ)甲第1号証記載の発明に,甲第2号証記載の事項を組み合わせることに阻害要因が存在する。(27ページ8?10行)
(ウ)甲第1号証記載の開口8は制御部の下方に位置し,制御部の表面に冷却空気流7があたる構成であるから,わざわざ開口8を削除して,本件特許発明15の「回路基板は,冷却風路よりも下方に配置される」ような開口を設ける動機付けはない。(28ページ3?13行)

第6.無効理由についての判断
1.各書証の記載事項
各書証には,以下の記載がある。
(なお,以下の行数により記載箇所を特定する際には,空白行は含まない。)
(1)甲第1号証について
(ア)甲第1号証の特許請求の範囲の請求項1
「【特許請求の範囲】
1.電動モータ(2)によって駆動される,単相交流(4a)に接続可能な手持ち式の工具であって,ケーシング(1)を備えている形式のものにおいて,
-電動モータ(2)がブラシレスかつスリップリングレスのモータであり,該モータの駆動エネルギーが,インプット側で単相交流(4a)で供給される,かつ,アウトプット側で,モータに適合した電流形式(4b)を供給する周波数変換器(5)によって得られ,該周波数変換器(5)が前記電動モータ(2)を,電源周波数に比べて高い周波数を有する電流で駆動し,
-電動工具のケーシング(1)がモータケーシング(1b)とハンドグリップ部分(1a)とを有しており,
-周波数変換器(5)がハンドグリップ部分(1a)内に配置されており,
-モータ(2)の冷却空気流(7)の少なくとも一部が,前記ハンドグリップ部分(1a)を通って,前記周波数変換器(5)の冷却面にわたって案内可能であることを特徴とする,強制冷却式の制御電子装置を備えた電動工具。」

(イ)甲第1号証の5ページ12行?6ページ下から5行
「図示された工具は衝撃式穿孔機であり,この衝撃式穿孔機はケーシング1を有しており,ケーシング1内には電動モータ2が埋設されていて,この電動モータ2は,クランク伝動装置3を備えた詳しくは図示されていない別個の衝撃装置3aを駆動し,この衝撃装置3aは公知の構造形式を有していてよい。
電動モータ2は,ブラシレスかつスリップリングレスなモータであり,このモータの駆動エネルギーは,インプット側で単相交流4aで供給され,アウトプット側で,モータに適合した電流形式4bを供給する制御電子装置5によって得られ,しかもこの制御電子装置5にはモータ2のスイッチ切換えのために,手で操作可能なスイッチ6が前接続されている。
電動モータ2は任意の公知の構造形式により,回転数制御可能な,ブラシレスかつスリップリングレスなモータ,例えばリラクタンスモータまたは三相電動機であってよく,しかも制御電子装置5は例えばマイクロプロセッサによって次のように,つまりその都度の
モータが,このモータの運転のために必要な電流形式4bを前記制御電子装置5によって得られるように制御されている。電動モータ2として三相電動機を使用することに関連して,インプット側で単相交流4aで供給される制御電子装置5は,アウトプット側で有利には制御して変更可能な,かつ,有利には電源周波数に比べて高い周波数の三相電流を供給し,ならびに,公知の構造形式を有する周波数変換器により実現され得る。ただし,周波数変換器は小形化された構成を有していなければならない。なぜならば,この周波数変換器は電動工具内に収納されるからであり,電動工具はその操作性に基づき,制限された重量,および制限されたサイズをとらねばならない。
制御電子装置5は工具のケーシング1内に,この制御電子装置5が,モータ2を取り囲むモータケーシング1bと直接的な熱交換を行うように埋設されており,この場合モータケーシング1bは金属から成っており,および/または,図面に示されているように,制御電子装置5は電動モータ2の冷却空気流7内に配置されている。後者の,制御電子装置5を電動モータ2の冷却空気流7内に配置する目的のために,制御電子装置5は工具ケーシング1のハンドグリップ部分1a内に,モータ2の冷却空気流7が,少なくとも部分的にハンドグリップ1aを貫流して前記制御電子装置5を介して案内されるように埋設され,このため,冷却空気流7は,ハンドグリップ部分1aに設けられた複数の開口8を通ってこのハンドグリップ部分1a内へ達し,かつ,制御電子装置5の表面を擦過した後に,ハンドグリップ部分1aの前の,モータ室10を閉鎖している壁に設けられた1つの開口9を通ってモータ室10内へ流入し,次いでこのモータ室10においてモータ2も冷却するためにこのモータ2を介して案内されている。冷却空気流は,モータシャフト2aに装着された羽根車11によって生ぜしめられる。
図面に示された実施例では,制御電子装置5全体が冷却空気流7内に配置されている。さらに,択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,もしくはこの冷却面の一部分のみを冷却空気流7内に配置する一方で,実際的な電子装置構成部分を冷却空気流7の範囲外の一箇所に配置することも可能である。」

(ウ)甲第1号証の図1の図示
甲第1号証の図1には,前後方向に延び,モータの回転軸の回転が伝達される出力部の図示,ケーシングは,ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,開口8が設けられ制御電子装置を収容する制御電子装置収容部とを有していることの図示及び制御電子装置収容部がブラシレスモータの後方に配置され,モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9は制御電子装置の前方に設けられ,開口8は,制御電子装置よりも下方に設けられ,電動モータが回転軸に同軸に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,開口9には,コイルと制御電子装置とを接続するケーブルが通ることの図示がある。
また,図1には,ハンドルハウジングはD型形状のハンドルを備え,前記ハンドルの下方に電源が接続可能であることが図示されている。

(エ)
吸気口から発熱源があるモータを収容したハウジングに流入した冷却空気は排気されなければ,ハウジング内に熱が蓄積されるとの不具合が生じ,それを避けるために,ハウジングに排気口を設けることは,技術常識である。したがって,甲第1号証に記載されたブラシレスモータを収容するケーシングに排気口が設けられていることは明らかである。

(オ)甲第1号証記載の発明
上記(イ)の記載事項から,電動モータ2は,ブラシレスかつスリップリングレスなモータであることが示されていると理解できる。
そして,上記(イ)の記載事項のうち,「電動モータ2として三相電動機を使用することに関連して,インプット側で単相交流4aで供給される制御電子装置5は,アウトプット側で有利には制御して変更可能な,かつ,有利には電源周波数に比べて高い周波数の三相電流を供給し,ならびに,公知の構造形式を有する周波数変換器により実現され得る。」との記載から,甲第1号証には,ブラシレスモータを制御する制御部を有した制御電子装置5が開示されていると理解できる。
また,上記(イ)の記載事項の「冷却空気流7は,ハンドグリップ部分1aに設けられた複数の開口8を通ってこのハンドグリップ部分1a内へ達し,かつ,制御電子装置5の表面を擦過した後に,ハンドグリップ部分1aの前の,モータ室10を閉鎖している壁に設けられた1つの開口9を通ってモータ室10内へ流入し,次いでこのモータ室10においてモータ2も冷却するためにこのモータ2を介して案内されている。冷却空気流は,モータシャフト2aに装着された羽根車11によって生ぜしめられる。」との記載から,羽根車の回転によって開口8から制御電子装置収容部に流入した冷却風は,制御電子装置を冷却した後に,モータ収容部を閉鎖している壁に設けられた開口9を介してモータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後,排出されることが,甲第1号証には開示されていると理解できる。

上記(ア)及び(イ)の記載事項,上記(ウ)の図示,並びに上記の理解を総合すると,甲第1号証には,次の3つの発明(以下,それぞれ「甲第1号証記載の第1発明」ないし「甲第1号証記載の第3発明」という。)が記載されていると認める。

(カ)甲第1号証記載の第1発明
「ケーシングと,
前記ケーシングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される羽根車と,
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,を有した制御電子装置と,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,
前記ケーシングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,開口8が設けられ前記制御電子装置を収容する制御電子装置収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部との間を区画する壁に前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9を設け,
制御電子装置収容部がブラシレスモータの後方に配置され,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9は制御電子装置の前方に設けられ,開口8は,制御電子装置よりも下方に設けられ,
ブラシレスモータが回転軸に同軸に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,開口9には,コイルと制御電子装置とを接続するケーブルが通り,
前記羽根車の回転によって前記開口8から前記制御電子装置収容部に流入した冷却風は前記制御電子装置を冷却した後に開口9を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出される電動工具。」

(キ)甲第1号証記載の第2発明
「上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される羽根車と,
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,を有した制御電子装置と,
を備え,
ケーシングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,開口8が設けられ前記制御電子装置を収容する制御電子装置収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを区画する部分に,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9を設け,
制御電子装置収容部がブラシレスモータの後方に配置され,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを連通する開口9は制御電子装置の前方に設けられ,開口8は,制御電子装置よりも下方に設けられ,
前記羽根車の回転によって前記開口8から前記制御電子装置収容部に流入した冷却風は前記制御電子装置を冷却した後に開口9を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出され,ハンドルハウジングはD型形状のハンドルを備え,前記ハンドルの下方に電源が接続可能である電動工具。」

(ク)甲第1号証記載の第3発明
「上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される羽根車と,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と
前記ブラシレスモータを制御する制御部と,を有した制御電子装置と,
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記羽根車を収容する部分と,前記制御電子装置を収容する制御電子装置収容部とを有するケーシングを備え,
前記回転軸の軸線上において,上から順に前記羽根車,前記ブラシレスモータが前記ケーシング内に収容され,
ケーシングには排気口が形成されると共に前記制御電子装置収容部には開口8が形成され,
前記開口8から前記排気口までの冷却通路に,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9を設け,
制御電子装置収容部がブラシレスモータの後方に配置され,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ開口9は制御電子装置の前方に設けられ,開口8は,制御電子装置よりも下方に設けられ,
前記羽根車の回転によって前記開口8から前記制御電子装置収容部に流入した冷却風は前記制御電子装置を冷却した後に開口9を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータを冷却し,その後前記排気口から排出される電動工具。」

(2)甲第2号証について
(ア)
「【0025】
主制御PCB82は,プラスチックポッティングボート98内側のエポキシ樹脂内に埋込まれ,該容器は,それぞれがモータハウジング14から延びるプラスチックボス81と他のプラスチックボス(図示されない)との上に取付けられる。加えて,主制御PCB82は,主制御PCB82の対向する周縁部に取付けられる2つの翼状アルミニウム製ヒートシンク102,106を有する。1つの好ましい形態における,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含む4個のスイッチ素子が,ヒートシンク102,106の一方に固定され,かつ主制御PCB82へはんだ付けされる。」

(イ)
図2,図4及び図8から,プラスチックポッティングボート(98)が基板部収容部に収容されている事項,及びヒートシンクが冷却風路内に配置されている事項の図示がある。

(ウ)
上記記載事項(ア)及び図示事項(イ)から甲第2号証には,基板部が,制御部が搭載される主制御PCB(82)と,スイッチング素子に接続されるヒートシンク(102,106)と,主制御PCB(82)を収容しエポキシ樹脂が充填されているプラスチックポッティングボート(98)と,を備える事項及びプラスチックポッティングボート(98)が基板部収容部に収容されている構成及びヒートシンクが冷却風路内に配置されている事項が記載されている。

(3)甲第3号証について
甲第3号証の図2から,回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具において制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置し,前後方向に延びて配置する事項が看取できる。

(4)甲第4号証について
甲第4号証の図1から,回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具において制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置し,前後方向に延びて配置する事項が看取できる。

(5)甲第5号証について
甲第5号証の図1から,冷却ファン(125)収容部に,排気口(127)を設ける事項が看取できる。

(6)甲第6号証について
甲第6号証の図1から,側面風窓(12a1)はモータ(30)と保護手段(FET)(50)との間に設けられている事項が看取できる。

(7)甲第10ないし13号証について
甲第10ないし13号証には,ブラシレスモータの電子制御において,スイッチング素子等を搭載した回路基板を有することが開示されている(たとえば,甲第10号証の【0027】,甲第11号証の【請求項1】,甲第12号証の【請求項1】,甲第13号証の【0017】を参照)。

2.本件特許発明1について
2-1.本件特許発明1と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明1と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,
甲第1号証記載の第1発明の「ケーシング」,「羽根車」,「開口8」,「壁」,「開口9」が,その機能からみて,本件特許発明1の「ハウジング」,「冷却ファン」,「吸気口」,「隔壁」,「通気口」にそれぞれ相当することは,明らかである。
また,甲第1号証記載の第1発明の「制御電子装置」は,ブラシレスモータを制御する制御部を有しており,制御部を実装するために基板を用いることは技術常識であることをあわせると,本件特許発明1の「基板部」に相当するといえるし,同様に,「制御電子装置収容部」は「基板部収容部」に相当する。
以上から,本件特許発明1と,甲第1号証記載の第1発明とは,以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
ハウジングと,
前記ハウジングに収容され,上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータを制御する制御部を有した基板部と,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,を備え,
前記ハウジングは,排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と,を有し,
前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を設け,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り,その後前記排気口から排出された電動工具。

<相違点1>
基板部について,本件特許発明1は,「前記制御部が搭載される回路基板と,前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と,を有し」ているのに対して,甲第1号証記載の第1発明は,回路基板及びスイッチング素子を有しているか不明である点。
<相違点2>
本件特許発明1は,「基板部が回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置され」ており,「通気口を前記基板部の上方に設け」ており,「前記吸気口は,前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられている」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,制御電子装置収容部がブラシレスモータの後方に配置され,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ通気口は制御電子装置の前方に設けられ,吸気口は,基板部よりも下方に設けられている点。
<相違点3>
本件特許発明1の「隔壁」は,「前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」たものであるのに対して,甲第1号証記載の第1発明の「壁」は,「ブラシレスモータ」の「回転軸」を回転可能に支持するものではない点。

2-2.本件特許発明1についての判断
まず,上記<相違点1>について検討すると,ブラシレスモータの電子制御において,制御部を搭載した回路基板を備えることは,本件出願時において技術常識である(例えば,甲第10ないし13号証の,「ブラシレスモータの電子制御において,スイッチング素子等を搭載した回路基板を有すること」を参照)。また,甲第1号証記載の第1発明はブラシレスモータを用いた発明であるから,従来ブラシによって行っていたモータのコイルに流れる電流を切り換えるためのスイッチングの機能を奏しモータを駆動するためのスイッチング素子が必要であることは明らかである。甲第1号証記載の第1発明において相違点1に係る構成とすることは,上記技術常識を踏まえてブラシレスモータが当然に有するスイッチング素子を設けることで,当業者が容易に想到し得たことである。
次に,上記<相違点2>について検討すると,甲第3及び4号証に,回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具において制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置する事項が開示されているように,本件特許発明1に係る出願前に当該配置は従来周知の技術事項(以下,「周知技術1」という。)であって,甲第1号証記載の第1発明も回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具であるから,甲第1号証記載の第1発明において,制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置することを採用することは,当業者にとって容易になしえたことである。そして,甲第1号証記載の第1発明に上記周知技術1を適用して基板部をブラシレスモータの下方に配置した場合,隔壁に設けたモータ収容部と基板部収容部とを繋ぐ通気口は当然基板部の上方に位置することになる。
さらに,甲第1号証には,「図面に示された実施例では,制御電子装置5全体が冷却空気流路7内に配置されている。さらに,択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,もしくはこの冷却面の一部分のみを冷却空気流内に配置する一方で,実際的な電子装置構成部分を冷却空気流7の範囲外の一箇所に配置することも可能である」(上記第6.1.(1)(イ))と記載されており,制御電子装置の全体を冷却空気流内に配置するのではなく,制御電子装置の冷却面の一部だけを冷却空気流内に配置すること,すなわち冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるよう配置することの示唆があるといえる。そして,制御電子装置が,スイッチング素子や回路基板から構成されることや,主にスイッチング素子の方が回路基板よりも多く発熱すること,吸気口から流入した空気はブラシレスモータへ向かって流れることなどを考慮した上で,当業者が上記の示唆にしたがえば,冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるように,発熱の少ない回路基板が冷却空気流内に配置されないようにすること,すなわち吸気口を回路基板よりも上方の範囲内に収めるように設けることを当然に試みたはずである。
したがって,甲第1号証記載の第1発明において上記相違点2に係る構成を採用することは,上記周知技術1及び上記の示唆に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点3>について検討する。電動工具内に収容されたモータの回転軸を軸方向の両端でベアリングにより回転可能に支持しなければならないことは技術常識であることを踏まえると,甲第1号証の図1の,伝動モータ2の回転軸が,その上下において,ベアリングによって支持されていることの図示から,甲第1号証記載の第1発明において,回転軸の下方において回転軸を支持するためのベアリングを設けることの動機があるといえる。ここで,電動工具の内部にモータを設置するために,当該モータが収容された空間を覆う壁体のうち,モータの回転軸が当該壁体と交叉する部分にベアリングを設けることは,例えば,甲第9号証(Fig.2に図示された,Lager24(軸受24)が,壁状のBoden14(床14)に設けられている点。)及び甲第14号証(図1に図示された,ブラシレスロータ5の軸が図上右において,壁状のものに軸受を介して支持されている点。)に記載されているように従来周知である(以下,「周知技術2」という。)。そして,甲第1号証記載の第1発明に上記周知技術1を適用したものは,上記で説示したように,「甲第1号証記載の第1発明に上記周知技術1を適用して基板部をブラシレスモータの下方に配置した場合,隔壁に設けたモータ収容部と基板部収容部とを繋ぐ通気口は当然基板部の上方に位置する」から,モータ収容部,ひいてはブラシレスモータの回転軸の下方であって,基板部収容部の上方に,当該回転軸と交叉するように隔壁が存在することは明らかである。そうすると,上記周知技術1が適用された甲第1号証記載の第1発明について,基板部収容部上方の隔壁にベアリングを設けることは,上記動機にしたがって,上記周知技術2を適用して基板部収容部上方の隔壁にベアリングを設けたにすぎず,甲第1号証記載の第1発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易になし得た事項である。

効果について検討する。本件特許発明1の奏する効果である,「基板の冷却効率を高めた電動工具を提供する」という効果(本件特許明細書の【0029】段落)は,甲第1号証記載の第1発明において上記相違点2に係る構成を採用することにより,同様の効果を奏するといえるから,甲第1号証記載の第1発明及び周知の技術事項から予測できる程度の効果であって,格別のものではない。
また,被請求人は,本件訂正後の特許発明1は,上記第5.の2.(4)に示したように,「隔壁には,回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」との構成によって,「通気口を通過する冷却風によって第1モータベアリングを効率よく冷却することができ,ベアリングの潤滑油が粘性低下によって第1モータベアリングから流れ出ることを抑制し,ベアリングやモータの寿命を向上させることができるとの作用効果を奏する」と主張している。しかし,本件訂正後の特許発明1の隔壁に設けた通気口を,冷却風が通過すれば,当該隔壁に設けられたベアリングが冷却されることは,当業者にとって自明であるから,上記作用・効果は,甲第1号証記載の第1発明に対して,上記周知技術1及び2を適用することで当然に奏する効果に過ぎず,当業者が容易に予測し得る範囲内のものに過ぎない。

以上から,本件特許発明1は,甲第1号証記載の第1発明及び従来周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

被請求人は,「甲第1号証には,制御電子装置5による空気流7の阻害の問題又は課題は記載されておらず,さらに甲第1号証には『択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,?一箇所に配置することも可能である。』と記載されているが,その配置のバリエーションがどのような効果を奏するのかについては記載されておらず,当該記載は,制御電子装置5が空気流7を阻害しないように開口8との位置関係を変更することを示唆しているとまでは言えない。」旨主張(第5.2.(3)ウ)している。しかし,甲第1号証には,電子装置の一部分のみを冷却空気流内に配置し実際的な電子装置構成部分を冷却空気流の範囲外に配置することが上記のとおり示唆されており,制御装置によって冷却流の流れを阻害しないようにすることの明記はないが,電子装置の一部分のみを冷却流に配置することは,電子装置の全部を冷却流に配置することに比較して,冷却流の流れを阻害しないことは明らかである。したがって,被請求人の当該主張は採用できない。
また,平成28年5月12日付け答弁書における本件特許発明1についての被請求人の主張は,この審決の最後に説示するように,いずれも採用できない。

3.本件特許発明2について
3-1.本件特許発明2と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明2と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点4>
本件特許発明2は,「前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられている」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,吸気口は,基板部よりも下方に設けられている点。

<相違点5>
本件特許発明2の「ハウジング」は,「前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」たものであるのに対し,甲第1号証記載の第1発明の「ケーシング」がギヤケースを有するか否かや,ブラシレスモータの回転軸の上方が,どのように支持されているかについて,甲第1号証には明記されていない点

3-2.本件特許発明2についての判断
まず,<相違点4>について検討する。上記2.2-2で検討したとおり,基板部をブラシレスモータの下方に配置して,通気口を基板部の上方に設けることは当業者が容易に発明できたことであるところ,そのように基板部を配置して通気口を設ければ,通気口は,ブラシレスモータと基板部との間に設けられることになるといえる。
次に,<相違点5>について検討する。甲第1号証記載の第1発明は,「前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部」を収容する「ケーシング」を有する「電動工具」である。そうすると,作業時にブラシレスモータによって回転する力を,出力部を介して,作業対象物に伝えることを考えた場合,当該ケーシングのうち出力部を収容する部分は,作業の容易性を考えて,電動工具の最も上の部分に配置することは技術常識である。そして,甲第1号証の図1には,羽根車11の上方で羽根車11と対向するようにクランク伝動装置3を収容する空間をケーシング1が囲むことの示唆,及び,当該空間を構成する壁のうち羽根車11に対向する部分にベアリングを設けることの示唆がなされている。さらに,甲第1号証には,「モータケーシング1bが金属またはプラスチックから製造されている」(6ページ下から2行)との記載があるから,当該クランク伝動装置3を囲む構成を金属製とすることの示唆もある。また,電動工具において,モータの回転を伝えるための伝動装置を収容する領域を囲むものを金属製とし,冷却ファンと対向する部分に回転軸のベアリングを設けることは,例えば甲第6号証(特に,「【0015】本体ケーシング10は,アルミ等のフレームから構成されており,モータハウジング11と,ギヤハウジング13と,ハンドル15とを有する。」との記載,及び,図3において,冷却ファン40に対向する位置にある壁体に出力軸31を支持するベアリングを設けることの図示。)及び甲第15号証(特に,「外枠ケースA2,外枠ケースB3及び外枠ケースC4は強度的にアルミ鋳物となっている。」(6ページ5ないし6行)の記載,及び,図3の回転子13の出力軸が,冷却ファン15に対向する壁体に設けられた軸受に支持されていることの図示。)の記載から,従来周知の事項(以下,「周知技術3」という。)である。そうすると,甲第1号証記載の第1発明において<相違点5>に係る構成を備えることは,上記甲第1号証の示唆にしたがって,ケーシングのうち少なくとも伝動装置3を覆うものについての材質を周知技術3の材料である金属を採用し,回転軸を支持する構成として上記周知技術3のものを採用したに過ぎず,甲第1号証記載の第1発明及び周知技術3に基づいて当業者が容易になし得た事項である。

また,当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明2は,甲第1号証記載の第1発明及び周知技術1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

4.本件特許発明3について
4-1.本件特許発明3と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明3と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,甲第1号証記載の第1発明の羽根車が収容されている部分がファン収容部に相当するから,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点6>
本件特許発明3は,「ファン収容部には排気口が形成されている」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,排気口についてどこに形成されるかは不明である点。

4-2.本件特許発明3についての判断
上記1.(5)に示すように,甲第5号証には,ファン収容部には排気口が形成されている事項が記載されている。
甲第5号証は電動ハンマに関する文献であって,甲第1号証記載の第1発明と同様に電動工具に関する技術分野に属するといえるから,甲第1号証記載の第1発明のファン収容部に排気口を設けることは,当業者にとって容易である。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明3は,甲第1号証記載の第1発明,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

5.本件特許発明4について
5-1.本件特許発明4と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明4と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点7>
本件特許発明4は,「前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と,を備え,前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されている」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,基板部がどのような構成か不明である点。

5-2.本件特許発明4についての判断
上記1.(2)(ウ)に示すように,甲第2号証には,基板部が,制御部が搭載される主制御PCB(82)と,スイッチング素子に接続されるヒートシンク(102,106)と,主制御PCB(82)を収容しエポキシ樹脂が充填されているプラスチックポッティングボート(98)と,を備え,プラスチックポッティングボート(98)は基板部収容部に収容されている事項が記載されている。
甲第1号証記載の第1発明と甲第2号証に記載の事項は,ともに制御電子装置を冷却する技術に属するから,甲第1号証記載の第1発明の冷却のための構成として,甲第2号証に記載されたスイッチング素子に接続されるヒートシンクを適用すれば,自ずから,前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材を備えることになる。そうすると,甲第1号証記載の第1発明において相違点7に係る構成に想到することは,当業者が容易になし得たことである。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明4は,甲第1号証記載の第1発明,甲第2号証に記載の事項,並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

6.本件特許発明5について
6-1.本件特許発明5と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明5と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,また,相違点7を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点8>
本件特許発明5は,「前記放熱部材は,前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ冷却風路内に配置される」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,基板部がどのような構成か不明である点。

6-2.本件特許発明5についての判断
上記1.(2)(ウ)に示すように,甲第2号証には,ヒートシンクは,冷却風路内に配置されている事項が記載されている。
甲第1号証記載の第1発明と甲第2号証に記載された事項は,ともに制御電子装置を冷却する技術に属するから,甲第1号証記載の第1発明に甲第2号証に記載の事項を適用して,冷却風路内に,放熱部材を設けることは,容易である。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明5は,甲第1号証記載の第1発明,甲第2号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

7.本件特許発明6について
7-1.本件特許発明6と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明6と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,また,相違点7を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点9>
本件特許発明6は,「回路基板は前後方向に延びるように配置される」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,回路基板の配置が不明である点。

7-2.本件特許発明6についての判断
甲第1号証記載の第1発明においてスペース効率のため回路基板を前後方向に延びるように配置することは考え得るところ,甲第3及び4号証には,制御部が前後方向に延びて配置されていることが記載されているから,当該制御部に設けられる回路基板も,前後方向に延びるように配置されることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,甲第1号証記載の第1発明に,甲第3及び4号証に記載された従来周知の技術事項(以下,「周知技術4」という。)を適用して,回路基板を前後方向に延びるように配置することは,容易に想到し得たことである。
また,当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明6は,甲第1号証記載の第1発明,甲第2号証に記載の事項,並びに周知技術1,2及び4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

8.本件特許発明7について
8-1.本件特許発明7と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明7と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,両者は,2.2-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,また,相違点7,相違点9を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点10>
本件特許発明7は,「出力部は前記回転軸の軸心と交差すると共に前記回路基板と略平行に延びる」のに対して,甲第1号証記載の第1発明は,出力部は前記回転軸の軸心と交差するが,回路基板との関係が不明である点。

8-2.本件特許発明7についての判断
甲第1号証記載の第1発明においてスペース効率のため回路基板を前後方向に延びるように配置することは考え得るところ,甲第3及び4号証には,出力部は前記回転軸の軸心と交差すると共に制御部と略平行に延びることが記載されているから,当該制御部に設けられる回路基板も,出力部と平行に延びるように配置されることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,甲第1号証記載の第1発明に,甲第3及び4号証に記載の事項を適用して,出力部と平行に延びるように配置することは,容易に想到し得たことである。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明7は,甲第1号証記載の第1発明,甲第2号証に記載の事項,甲第3及び4号証に記載の事項,並びに周知技術1,2及び4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

9.本件特許発明8について
9-1.本件特許発明8と甲第1号証記載の第1発明との対比
本件特許発明8と,甲第1号証記載の第1発明とを対比すると,甲第1号証記載の第1発明も,ブラシレスモータが回転軸に同軸に固定されたロータと,コイルを有するステータと,を有し,開口9には,コイルと制御電子装置5とを接続するケーブルが通るものであるから,本件特許発明8と甲第1号証記載の第1発明との相違点は,本件特許発明1との相違点である相違点1ないし3である。

9-2.本件特許発明8についての判断
相違点1ないし3について検討した上記2.2-2で判断したとおり,本件特許発明8は,当業者が容易になし得た事項である。
また,当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明8は,甲第1号証記載の第1発明並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

10.本件特許発明9について
10-1.本件特許発明9と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明9と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,
甲第1号証記載の第2発明の「羽根車」,「開口8」,「開口9」が,その機能からみて,本件特許発明9の「冷却ファン」,「吸気口」,「通気口」にそれぞれ相当することは,明らかである。
上記1.(1)(ア)にあるように,ケーシングは,モータケーシングと,ハンドグリップで構成されており,それぞれが本願のモータハウジングと,ハンドルハウジングに相当する。
また,モータケーシングには,羽根車を収容する部分があるから,当該部分が,ファン収容部に相当する。
また,甲第1号証記載の第2発明の「制御電子装置」は,ブラシレスモータを制御する制御部を有しており,制御部を実装するのに基板を用いることは技術常識であるから,本件特許発明9の「基板部」に相当するし,同様に,「制御電子装置収容部」が「基板部収容部」に相当する。
以上から,本件特許発明9と,甲第1号証記載の第2発明とは,以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部と,
前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと,前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容するファン収容部と,前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと,を備えるハウジングと,を備えた電動工具であって,
前記ハウジングは,吸気口が設けられ,基板部を収容する基板部収容部を有し,
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分に,前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出される電動工具。

<相違点11>
基板部について,本件特許発明9は,「ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子」を有しているのに対して,甲第1号証記載の第2発明は,スイッチング素子を有しているか不明である点。
<相違点12>
排気口が,本件特許発明9は,ファン収容部に設けられているのに対して,甲第1号証記載の第2発明では,ハウジングのどこに設けられるか不明である点。
<相違点13>
本件特許発明9は,「基板部」が「回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に」配置され,「通気口」を「基板部」の上方に設け,「前記吸気口から吸入された空気の全ては,前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入する」のに対して,甲第1号証記載の第2発明は,基板部がブラシレスモータの後方に配置され,通気口を基板部の前方に設け,吸気口から吸入された空気がどのように流れるのか不明な点。
<相違点14>
本件特許発明9の「前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分」には,「前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ」たものであるのに対し,甲第1号証記載の第2発明の「制御電子装置収容部」と「ケーシング」とを区画する部分は,そのようなものではない点。

10-2.本件特許発明9についての判断
まず,上記<相違点11>について検討すると,甲第1号証記載の第2発明はブラシレスモータを用いた発明であるから,従来ブラシによって行っていたモータのコイルに流れる電流を切り換えるためのスイッチングの機能を奏しモータを駆動するためのスイッチング素子が必要であることは明らかである。甲第1号証記載の第2発明において相違点11に係る構成とすることは,上記技術常識を踏まえてブラシレスモータが当然に有するスイッチング素子を設けることで,当業者が容易に想到し得たことである。
次に,上記<相違点12>について検討すると,排気口をファン収納部に設けることは,甲第5号証に記載されているとおり,本件特許発明9に係る出願前に知られた事項である。
甲第5号証は電動ハンマに関する文献であって,甲第1号証記載の第2発明と同様に電動工具に関する技術分野に属するといえるから,甲第1号証記載の第2発明のファン収容部に排気口を設けることは,当業者にとって容易である。
そして,上記<相違点13>について検討すると,回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具において制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置する構成は上記周知技術1であって,甲第1号証記載の第2発明も回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具であるから,甲第1号証記載の第2発明において,制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置することを採用することは,当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。そして,甲第1号証に記載の第2発明において周知技術1を適用することによって基板部をブラシレスモータの下方に配置した場合,通気口は基板部の収容部とモータハウジングとを区画する部分であって基板部の上方に位置することになる。
さらに,甲第1号証には,「図面に示された実施例では,制御電子装置5全体が冷却空気流路7内に配置されている。さらに,択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,もしくはこの冷却面の一部分のみを冷却空気流内に配置する一方で,実際的な電子装置構成部分を冷却空気流7の範囲外の一箇所に配置することも可能である」(上記1.(1)(イ))と記載されており,制御電子装置の全体を冷却空気流内に配置するのではなく,制御電子装置の冷却面の一部だけを冷却空気流内に配置すること,すなわち冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるよう配置することの示唆があるといえる。そして,制御電子装置が,スイッチング素子や回路基板から構成されることや,主にスイッチング素子の方が回路基板よりも多く発熱すること,吸気口から流入した空気はブラシレスモータへ向かって流れることなどを考慮した上で,当業者が上記の示唆にしたがえば,冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるように,発熱の少ない回路基板が冷却空気流内に配置されないようにすること,すなわち吸気口を回路基板よりも上方の範囲内に収めるように設けることを当然に試みたはずである。また,当該範囲に吸気口があれば,自ずと,吸気口から吸入された空気の全ては,区画する部分と基板部との間の空間に直接流入することになる。
したがって,甲第1号証記載の第2発明において上記相違点13に係る構成を採用することは,上記周知技術1及び上記の示唆に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
次に,<相違点14>について検討する。電動工具内に収容されたモータの回転軸を軸方向の両端でベアリングにより回転可能に支持しなければならないことは技術常識であることを踏まえると,甲第1号証の図1の,伝動モータ2の回転軸が,その上下において,ベアリングによって支持されていることの図示から,甲第1号証記載の第2発明において,回転軸の下方において回転軸を支持するためのベアリングを設けることの動機があるといえる。ここで,電動工具の内部にモータを設置するために,当該モータが収容された空間を覆う部分のうち,モータの回転軸が当該部分と交叉する部分にベアリングを設けることは,上記周知技術2である。そして,甲第1号証記載の第2発明に周知技術1を適用したものは,基板部をブラシレスモータの下方に配置した場合,通気口は基板部の収容部とモータハウジングとを区画する部分であって基板部の上方に位置するから,モータ収容部,ひいてはブラシレスモータの回転軸の下方に,当該回転軸と交叉するようにブラシレスモータを収容した空間を覆う部分が存在することは明らかである。そうすると,上記周知技術1が適用された甲第1号証記載の第2発明について,上記周知技術2を適用することは,上記動機にしたがって,上記周知技術1の適用によって生じた回転軸と交叉する上記部分を,周知技術2に倣ってベアリングを設ける場所として選択して適用したにすぎず,甲第1号証記載の第2発明並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易になし得た事項である。

効果について検討すると,本件特許発明9の奏する効果である,「基板の冷却効率を高めた電動工具を提供する」という効果(本件特許明細書の【0029】段落)は,甲第1号証記載の第2発明において上記相違点13に係る構成を採用することにより,同様の効果を奏するといえるから,甲第1号証記載の第2発明,甲第5号証に記載の事項及び周知技術1及び2から予測しうる範囲内のものであって,格別のものではない。

以上から,本件特許発明9は,甲第1号証記載の第2発明,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

11.本件特許発明10について
11-1.本件特許発明10と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明10と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,甲第1号証記載の第2発明も,ハウジングには冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され,前記冷却風路は,吸気口,基板部収容部,通気口,モータハウジング,ファン収容部,排気口から形成されるものであるから,本件特許発明10と甲第1号証記載の第2発明との一致点及び相違点は,10.10-1で示したとおりの一致点を有し,本件特許発明9との相違点である相違点11ないし14を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点15>
本件特許発明10の「ハウジング」は,「前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し,前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には,前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ」たものであるのに対し,甲第1号証記載の第2発明の,「ケーシング」がギヤケースを有するか否かや,ブラシレスモータの回転軸の上方が,どのように支持されているかについて,甲第1号証には明記されていない点。

11-2.本件特許発明10についての判断
上記10.10-2で検討したとおり,相違点11ないし14は,当業者が容易になし得た事項である。
次に,<相違点15>について検討する。甲第1号証記載の第2発明は,「前後方向に延び,前記回転軸の回転が伝達される出力部」を有する「電動工具」である。そうすると,作業時にブラシレスモータによって回転する力を,出力部を介して,作業対象物に伝えることを考えた場合,作業の容易性を考慮して,当該出力部を電動工具の最も上の部分に配置すること,そして,安全性を考えて回転が伝達される出力部を覆うことは技術常識である。そして,甲第1号証の図1には,羽根車11の上方で羽根車11と対向するようにクランク伝動装置3を収容する空間をケーシング1が有していることの示唆,及び,当該空間を構成する壁のうち羽根車11に対向する部分にベアリングを設けることの示唆がなされている。さらに,甲第1号証には,「モータケーシング1bが金属またはプラスチックから製造されている」(6ページ下から2行)との記載があるから,当該クランク伝動装置3を囲むもの金属製とすることの示唆もある。ここで,電動工具において,モータの回転を伝えるための伝動装置を収容する部分を金属製とし,当該伝動装置を収容する部分をモータを収容する部分と一体にし,かつ,冷却ファンと対向する部分に回転軸のベアリングを設けることは,上記周知技術3である。そうすると,甲第1号証記載の第2発明において<相違点15>に係る構成を備えることは,上記甲第1号証の示唆にしたがって,出力部を覆うものとして上記周知技術3のモータを収容するケーシングを採用し,当該ケーシングのうち少なくとも伝動装置3を覆う部分についての材質を周知技術3の材料である金属を採用し,回転軸を支持する構成として上記周知技術3を採用したに過ぎず,甲第1号証記載の第2発明及び周知技術3に基づいて当業者が容易になし得た事項である。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明10は,甲第1号証記載の第2発明,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

12.本件特許発明11について
12-1.本件特許発明11と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明11と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,両者は,10.10-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点16>
本件特許発明11は,「スイッチング素子は吸気口の近傍に配置されている」のに対して,甲第1号証記載の第2発明は,吸気口は,基板部よりも下方に設けられている点。

12-2.本件特許発明11についての判断
上記10.10-2で検討したとおり,スイッチング素子を冷却する必要性が高いことから,吸気口をスイッチング素子の近傍に設けることは,当業者が容易に想到し得たことである。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明11は,甲第1号証記載の第2発明,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

13.本件特許発明12について
13-1.本件特許発明12と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明12と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,両者は,12.12-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点17>
本件特許発明12は,「スイッチング素子に接続される放熱部材をさらに備える」のに対して,甲第1号証記載の第2発明は,放熱部材を備えているかどうか不明な点。

13-2.本件特許発明12についての判断
甲第2号証には,基板部が,制御部が搭載される主制御PCB(82)と,スイッチング素子に接続されるヒートシンク(102,106)と,主制御PCB(82)を収容しエポキシ樹脂が充填されているプラスチックポッティングボート(98)と,を備え,プラスチックポッティングボート(98)は基板部収容部に収容されている事項が記載されており,当該事項のヒートシンクが放熱部材に相当することは明らかである。
甲第1号証記載の第2発明と甲第2号証に記載の事項は,ともに制御電子装置を冷却する技術に属するから,甲第1号証記載の第2発明に甲第2号証に記載の事項を適用して,スイッチング素子に接続される放熱部材を設けることは,容易である。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明12は,甲第1号証記載の第2発明,甲第2号証に記載の事項,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

14.本件特許発明13について
14-1.本件特許発明13と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明13と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,両者は,13.13-1において前記したとおりの一致点及び相違点を有し,さらに以下の点で相違している。
<相違点18>
本件特許発明13は,「吸気口は前記スイッチング素子よりも前記放熱部材に近接している」のに対して,甲第1号証記載の第2発明は,そのようになっていない点。

14-2.本件特許発明13についての判断
放熱部材は,気流にさらすことによって熱を放出するものであるからその性能をより発揮させるためには放熱部材及び他の部材の設置位置を放熱部材がより気流に接するようなものとする必要があり,吸気口に近い位置の方がより気流と接することができることは明かである。そうすると,吸気口をスイッチング素子よりも放熱部材に近接させることは,当業者が容易に想到し得たことである。
当該構成によって作用・効果の点で当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明13は,甲第1号証記載の第2発明,甲第2号証に記載の事項,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

15.本件特許発明14について
15-1.本件特許発明14と甲第1号証記載の第2発明との対比
本件特許発明14と,甲第1号証記載の第2発明とを対比すると,本件特許発明14と甲第1号証記載の第2発明との相違点は,本件特許発明9との相違点である相違点11ないし14である。

15-2.本件特許発明14についての判断
上記10.10-2で検討したとおり,相違点11ないし14は,当業者が容易になしえた事項である。
当該構成によって生じる作用・効果は,当業者が予測できる程度のものであって,格別なものではない。
以上から,本件特許発明14は,甲第1号証記載の第2発明,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

16.本件特許発明15について
16-1.本件特許発明15と甲第1号証記載の第3発明との対比
本件特許発明15と,甲第1号証記載の第3発明とを対比すると,
甲第1号証記載の第3発明の「ケーシング」,「羽根車」,「開口8」,「開口9」が,その機能からみて,本件特許発明15の「ハウジング」,「冷却ファン」,「吸気口」,「通気口」にそれぞれ相当することは,明らかである。
また,甲第1号証記載の第3発明の「羽根車を収容する部分」が,本件特許発明15の「ファン収容部」に相当する。
また,甲第1号証記載の第3発明の「制御電子装置」は,ブラシレスモータを制御する制御部を有しており,制御部を実装するのに基板を用いることは技術常識であるから,本件特許発明15の「基板部」に相当するし,同様に,「制御電子装置収容部」が「基板部収容部」に相当する。
以上から,本件特許発明15と,甲第1号証記載の第3発明とは,以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと,
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と,
基板部と,
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と,前記冷却ファンを収容するファン収容部と,前記基板部を収容する基板部収容部と,を有するハウジングと,を備え,
前記回転軸の軸線上において,上から順に前記冷却ファン,前記ブラシレスモータが前記ハウジング内に収容され,
前記基板部収容部には吸気口が形成され,
前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に,前記モータ収容部と前記基板部収容部とを連通する通気口を設け,
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は,前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し,その後,前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出される電動工具。」

<相違点19>
基板部の構成要素について,本件特許発明15は,「前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と,前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と,前記スイッチング素子に接続される放熱部材と,を有」するのに対して,甲第1号証記載の第3発明は,スイッチング素子,回路基板,放熱部材を有しているか不明である点。
<相違点20>
排気口が,本件特許発明15は,ファン収容部に設けられているのに対して,甲第1号証記載の第3発明では,ハウジングのどこに設けられるか不明である点。
<相違点21>
本件特許発明15は,基板部が,前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び,前記基板部が回転軸の軸線上において配置され,前記モータハウジングと前記基板部収容部とを連通する通気口が上下に連通するよう設け,前記回路基板は,前記冷却風路よりも下方に配置され,前記放熱部材は,前記冷却風路に張り出すように設けられるのに対して,甲第1号証記載の第3発明は,基板部がブラシレスモータの後方に配置され,前記モータ収容部と前記制御電子装置収容部とを繋ぐ通気口はあるものの基板部の前方に設けている点。
<相違点22>
本件特許発明15は,モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられているのに対し,甲第1号証記載の第3発明は,モータ収容部と制御電子装置収容部との間に隔壁にモータベアリングが設けられていない点。

16-2.本件特許発明15についての判断
まず,上記<相違点19>について検討すると,ブラシレスモータの電子制御において,スイッチング素子等を搭載した回路基板を有することは,本件出願時において技術常識である(例えば,甲第10ないし13号証の,「ブラシレスモータの電子制御において,スイッチング素子等を搭載した回路基板を有すること」を参照)。
甲第2号証には,基板部が,制御部が搭載される主制御PCB(82)と,スイッチング素子に接続されるヒートシンク(102,106)と,主制御PCB(82)を収容しエポキシ樹脂が充填されているプラスチックポッティングボート(98)と,を備え,プラスチックポッティングボート(98)は基板部収容部に収容されている事項が記載されている。甲第1号証記載の第3発明と甲第2号証に記載の事項は,ともに制御電子装置を冷却する技術に属するから,甲第1号証記載の第3発明に,甲第2号証に記載されたスイッチング素子に接続されるヒートシンクを適用すれば,前記基板部は,前記スイッチング素子に接続される放熱部材を備えることになり,相違点19に係る構成にすることは当業者が容易に想到し得たことである。
次に,上記<相違点20>について検討すると,排気口をファン収納部に設けることは,甲第5号証に記載されているとおり,本件特許発明に係る出願前に知られた構成である。
甲第5号証は電動ハンマに関する文献であって,甲第1号証記載の第3発明と同様に電動工具に関する技術分野に属するといえるから,甲第1号証記載の第3発明のファン収容部に排気口を設けることは,当業者にとって容易である。
そして,上記<相違点21>について検討する。回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具において制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置する構成は,上記周知技術1である。そして,甲第1号証記載の第3発明も回転軸が上下に延び,出力部が前後に延びる電動工具であるから,甲第1号証記載の第3発明において,制御部をモータの下方で回転軸の軸線上に配置することを採用することは,当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。そして,甲第1号証記載の第3発明において,周知技術1を適用することによって基板部をブラシレスモータの下方に配置した場合,モータハウジングと基板部収容部とを上下に連通する通気口を設けることは,当業者にとって容易に想到できた事項といえる。
さらに,甲第1号証には,「図面に示された実施例では,制御電子装置5全体が冷却空気流路7内に配置されている。さらに,択一的には,制御電子装置5の冷却面のみ,もしくはこの冷却面の一部分のみを冷却空気流内に配置する一方で,実際的な電子装置構成部分を冷却空気流7の範囲外の一箇所に配置することも可能である」(上記1.(1)(イ))と記載されており,制御電子装置の全体を冷却空気流内に配置するのではなく,制御電子装置の冷却面の一部だけを冷却空気流内に配置すること,すなわち冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるよう配置することの示唆があるといえる。そして,制御電子装置が,スイッチング素子や回路基板から構成されることや,主にスイッチング素子の方が回路基板よりも多く発熱すること,吸気口から流入した空気はブラシレスモータへ向かって流れることなどを考慮した上で,当業者が上記の示唆にしたがえば,冷却空気流に曝露される制御電子装置の面積・体積が限定的になるように,発熱の少ない回路基板が冷却空気流内に配置されないようにすること,すなわち吸気口を回路基板よりも上方の範囲内に収めるように設けることを当然に試みたはずである。放熱部材は冷却するために設けられることを考慮すれば,放熱部材を冷却風路に張り出すように設け,回路基板は,冷却風路よりも下方に配置されることは,当業者が容易に想到し得たことである。
次に,<相違点22>について検討する。電動工具内に収容されたモータの回転軸を軸方向の両端でベアリングにより回転可能に支持しなければならないことは技術常識であることを踏まえると,甲第1号証の図1の,伝動モータ2の回転軸が,その上下において,ベアリングによって支持されていることの図示から,甲第1号証記載の第3発明において,回転軸の下方において回転軸を支持するためのベアリングを設けることの動機があるといえる。ここで,電動工具の内部にモータを設置するために,当該モータを収容する空間を回転軸の軸線方向で,他の空間と仕切る壁体に,当該回転軸を支持するためのベアリングを設ける構成は,上記周知技術2である。そして,甲第1号証記載の第3発明に上記<相違点21>に係る構成を適用したものは,モータ収容部の下に制御電子装置収容部を備えるものであるところ,モータ収容部内のモータの回転軸の下側をベアリングで支持できるようにするために,モータ収容部と下側の制御電子装置収容部との間に隔壁を設けて,当該隔壁にベアリングを設けるようにして,上記<相違点22>に係る構成をも備えたものとしたことは,上記動機にしたがって周知技術2を,上記周知技術1の適用によって生じたモータ収容部と下側の制御電子装置収容部との間に適用することで,当業者が容易になし得た事項である。

効果について検討すると,本件特許発明15の奏する効果である,「基板の冷却効率を高めた電動工具を提供する」という効果(本件特許明細書の【0029】段落)は,甲第1号証記載の第3発明において上記相違点21に係る構成を採用することにより,同様の効果を奏するといえるから,甲第1号証記載の第3発明,甲第5号証に記載の事項及び周知技術1及び2から予測できる程度の効果であって,格別のものではない。

以上から,本件特許発明15は,甲第1号証記載の第3発明,甲第2号証に記載の事項,甲第5号証に記載の事項並びに周知技術1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

17.被請求人の平成28年5月12日付け答弁書での主張に対する検討
被請求人は,上記答弁書において,本件訂正後の各発明について,上記第5.の2.(5)に示したとおりの主張をしているから検討する。

ア.被請求人は,甲第1号証には,モータ収容部と基板部収容部との間を区画する隔壁に設けられた通気口」に相当するものが記載されていない,と主張している。被請求人の当該主張は,甲第1号証記載の開口9の上端部の構成が,上記当該答弁書11ページの参考図3に記載されたような,梁状のものが両端部を残して切り欠かれた形状であることを根拠とするものである。そこで検討する。甲第1号証の図1には,電流形式4bの線状体が,開口9の上端部で下方向へ湾曲し迂回していることの図示がある。そうすると,開口9の上端部は,上記参考図3に示されたような梁の両端部以外が切り欠かれたようなものではなく,当該線状体が下方向へ迂回せざるを得ないような構成であること,すなわち開口9の上端部の全体に亘って梁状のものが設けられたものであると理解するほうが自然である。さらに,甲第1号証の明細書6ページ下から12行には,「モータ室10を閉鎖している壁」と明記されているところ,被請求人の主張のような梁状のものは,「モータ室10を閉鎖」することにはならず,明細書の記載に反することになる。
したがって,上記被請求人の主張を採用することはできない。
イ.被請求人は,甲第1号証記載の電動工具は,モータケーシング1bからの熱や振動が制御電子装置5に伝達されないようにするために,振動緩衝装置12を介してハンドグリップ部分1aの内部に制御電子装置5を収容するものであり,甲第3及び4号証記載のものを適用すると,電子装置5はモータケーシング1bに収容されることになり熱や振動が伝達されやすくなるから,当該適用には阻害事由がある,と主張している。そこで検討する。振動緩衝装置12について,甲第1号証には,「制御電子装置5に損傷を与える振動が、3aおよび,図示を省いた工具から,ケーシング1を介して制御電子装置5に伝達せしめられないようにするために,有利には,制御電子装置5は,振動緩衝して工具ケーシング1もしくはハンドグリップ部分1a内に埋設される。ケーシング1をモータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとに分割することによって,振動緩衝のために,モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとを,振動緩衝装置12,例えばゴム緩衝装置を介在させて結合することが可能である。」(7ページ3ないし10行)との記載及び「振動緩衝装置を周波数変換装置自体に,すなわち制御電子装置5に設置することも可能である」(7ページ下から2及び1行)との記載がある。そうすると甲第1号証に記載されたものにおいては,モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとの間で振動緩衝装置12を設けること自体は,有利であるかもしれないが必須の構成とまではいうことはできず,さらに,振動緩衝装置を制御電子装置5に設けるならば,モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとの間に振動緩衝装置を介するようにする必要のないことが理解できる。そうすると,甲第1号証記載の電動工具を,モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとの間に振動緩衝装置12を介したものであることを前提とする上記被請求人の主張は採用することはできない。
ウ.被請求人は,甲第2号証記載の通気端部キャップ22は,主制御PCB82から見てモータ10の反対側に設けられているから,甲第1号証と甲第2号証を組み合わせると,吸気口は,基板部の下方に配置され,本件特許発明1に特定された位置とはならない,と主張している。しかし,甲第2号証の通気端部キャップ22について,甲第2号証の図1,2,4及び8には,通気端部キャップ22に形成されたスリット状の多数の開口が,通気端部キャップ22の底部ではなく,底部の周囲から湾曲して立ち上がった側面に並んで形成されていることの図示がある。そうすると,甲第1号証記載の発明に対して,甲第2号証記載の事項を適用した際の吸気口を設ける位置は,基板部の下方ではなく,むしろ少なくとも本件基板部の側方とするほうが自然である。よって,被請求人の上記主張を採用することはできない。

第7. むすび
したがって,本件特許発明1ないし15は,本件特許発明1ないし15に係る出願前に頒布された刊行物である甲第1号証記載の第1ないし3発明,甲第2ないし5号証に記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,本件特許発明1ないし15についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電動工具
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具に関する。この電動工具の一例として、例えば、高張力ボルトを締め付けるボルト締付機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、橋梁、鉄骨建築物等の工事において、構造材料同士を接合する方法として、高張力ボルトを用いた摩擦接合による施工方法がある。この高張力ボルトを締結する工具としては、特許文献1に記載されているボルト締付機が例示される。
【0003】
従来のシャーレンチにおいては、トリガが押下されることにより、モータハウジング内の整流子モータが回転する。この回転力が回転駆動伝達機構によってインナーソケット及びアウターソケットに伝達し、高張力ボルトのチップとナットとに係合して、互いに逆回転することにより高張力ボルトを締結する。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004?001233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のシャーレンチは、連続的な使用により整流子モータの温度及び基板上の部品の温度が上昇してそれらの部材が破損する虞があった。そこで本発明は、基板の冷却効率を高めた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに収容され、上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと、前記ブラシレスモータを制御する制御部と、前記制御部が搭載される回路基板と、前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と、を有し、前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と、前後方向に延び、前記回転軸の回転が伝達される出力部と、を備え、前記ハウジングは、排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と、吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と、を有し、前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け、前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り、その後前記排気口から排出され、前記隔壁には、前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ、前記吸気口は、前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられていることを特徴とする電動工具を提供している。
【0007】
また、前記ハウジングは、前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し、前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ、前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、前記モータ収容部は前記冷却ファンを収容するファン収容部を備え、前記ファン収容部には前記排気口が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記基板部は、前記スイッチング素子に接続される放熱部材と、前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と、を備え、前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることが好ましい。
【0013】
また、前記放熱部材は、前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ冷却風路内に配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記回路基板は前後方向に延びるように配置されることが好ましい。また、前記出力部は前記回転軸の軸心と交差すると共に前記回路基板と略平行に延びることが好ましい。
【0015】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと、コイルを有するステータと、を有し、前記通気口には、前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることが好ましい。
【0016】
本発明の別の観点によると、上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、前後方向に延び、前記回転軸の回転が伝達される出力部と、前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と、前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と、前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと、を備えるハウジングと、を備えた電動工具であって、前記ハウジングは、吸気口が設けられ、前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し、前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に、前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け、前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ、前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は、前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し、その後、前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出され、前記吸気口から吸入された空気の全ては、前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入することを特徴とする電動工具を提供している。
【0017】
また、前記ハウジングは、前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し、前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ、前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され、前記冷却風路は、前記吸気口、前記基板部収容部、前記通気口、前記モータハウジング、前記ファン収容部、前記排気口から形成されることが好ましい。
【0018】
また、前記スイッチング素子は前記吸気口の近傍に配置されていることが好ましい。
【0019】
また、前記スイッチング素子に接続される放熱部材をさらに備えることが好ましい。
【0020】
このような構成によると、放熱部材がスイッチング素子に接続されているため、スイッチング素子の発熱を効果的に放熱することができる。
【0021】
また、前記吸気口は前記スイッチング素子よりも前記放熱部材に近接していることが好ましい。
【0022】
このような構成により、放熱部材がスイッチング素子よりも吸気口側にあるので、放熱部材を介して効果的にスイッチング素子の発熱を放熱できるようになる。
【0024】
また、前記ハンドルハウジングはD型形状のハンドルを備え、前記ハンドルの下方に電源が接続可能であることが好ましい。
【0025】
本発明の別の観点では、上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと、前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と、前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び、前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と、前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と、前記スイッチング素子に接続される放熱部材と、を有する基板部と、前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と、前記冷却ファンを収容するファン収容部と、前記基板部を収容する基板部収容部と、を有するハウジングと、を備え、前記回転軸の軸線上において、上から順に前記冷却ファン、前記ブラシレスモータ、前記基板部が前記ハウジング内に収容され、前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され、前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に、前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け、前記通気口は、前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され、前記隔壁には、前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ、前記回路基板は、前記冷却風路よりも下方に配置され、前記放熱部材は、前記冷却風路に張り出すように設けられ、前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は、前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し、その後、前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具を提供している。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電動工具によれば、基板の冷却効率を高めた電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の側面断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の正面部分断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の図2のIII-IIIに沿った断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の図1のIV-IVに沿った断面図
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機であって高張力ボルトと嵌合した状態のソケット部近傍の部分断面図
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機であって高張力ボルトを締め付けた状態のソケット部近傍の部分断面図
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の前側斜視図
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の後側斜視図
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の平面図
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の背面図
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の正面図
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の右側面図
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の左側面図
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の前側斜視図
【図15】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の後側斜視図
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の平面図
【図17】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の背面図
【図18】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の正面図
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の右側面図
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の左側面図
【図21】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の前側斜視図
【図22】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の後側斜視図
【図23】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の平面図
【図24】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の背面図
【図25】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の正面図
【図26】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の右側面図
【図27】本発明の第3の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の左側面図
【図28】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の前側斜視図
【図29】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の後側斜視図
【図30】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の平面図
【図31】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の背面図
【図32】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の正面図
【図33】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の右側面図
【図34】本発明の第4の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の左側面図
【図35】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の前側斜視図
【図36】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の後側斜視図
【図37】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の平面図
【図38】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の背面図
【図39】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の正面図
【図40】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の右側面図
【図41】本発明の第5の実施の形態に係るボルト締付機の基板部の左側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の実施の形態に係る電動工具について図1から13に基づき説明する。以下、電動工具の一例として、ボルト締付機をもとに説明する。ボルト締付機たるシャーレンチ1は、ハウジング2と、ブラシレスモータ3と、回転駆動伝達機構4と、ボルトチップ排出機構5と、ソケット部6と、基板部9とから構成される。
【0032】
ハウジング2は、シャーレンチ1の外郭を成し、主にモータハウジング2Aと、ギヤケース2Bと、ハンドルハウジング2Cとから構成されている。モータハウジング2Aは、ギヤケース2Bの長手方向と略直交する方向にギヤケース2Bから延出されて構成されている。以下、ギヤケース2Bからモータハウジング2Aが延出される方向を下方向と定義し、反対側を上方向と定義する。ギヤケース2Bの長手方向であってギヤケース2Bに対してソケット部6が設けられている方向を前方向と定義し、反対側を後方向と定義する。上下方向、前後方向と直交する方向(図1の紙面と直交する方向)を左右方向と定義する。
【0033】
モータハウジング2Aは、上下方向に延びる筒状の樹脂部材によって構成されていて、上部に外部と連通する排気口2aが形成され、下部にハンドルハウジング2Cと連通する通気口2bが形成されている。モータハウジング2Aは、ハンドルハウジング2Cの前側でギヤケース2Bから下側に延出しており、その内部にはブラシレスモータ3が内蔵されている。ブラシレスモータ3は、上下方向に延びる回転軸31と、冷却ファン32と、基板33と、ロータ34と、ステータ35とから主に構成される。回転軸31はモータベアリング36に回転可能に支承されていて、回転軸31の先端(上端)にはピニオンギヤ31Aが設けられている。冷却ファン32は回転軸31上に同軸的に固定されている。基板33は、ブラシレスモータ3の下方に設けられていて、基板33上にはロータ34の位置検出のためのホール素子33Aが設けられている。基板33と基板部9とは、通気口2bを通る電源ケーブル33B及び通信ケーブル33Cによって電気的に接続されている。電源ケーブル33Bは基板33上の図示せぬコイルに電源を供給するための配線であり、通信ケーブル33Cは基板部9がホール素子33Aからの信号を取得するための配線である。
【0034】
図4に示すように、ロータ34は回転軸31に同軸的に固定されており、4つの永久磁石34Aが設けられている。ステータ35は、モータハウジング2Aの内周面に設けられた複数のリブに支持されるとともに、コイル35Aを有する。コイル35Aは6つのコイル35A1?35A6から成り、6つのコイル35A1?35A6はステータ35に対して、コイル35A1の対極にコイル35A4が位置するように、コイル35A2の対極にコイル35A5が位置するように、コイル35A3の対極にコイル35A6が位置するように配置される。それぞれのコイル35Aの間には空隙35aが形成されている。ステータ36の外周面とモータハウジング2Aとの間にも隙間36aが形成されている。この空隙35a及び隙間36aを冷却ファン32による冷却風が流れることにより、ブラシレスモータ3が冷却される。
【0035】
図1に示すように、ギヤケース2Bはアルミ製(金属製)であって、内部に、回転駆動伝達機構4と、ボルトチップ排出機構5等が内蔵されている。回転駆動伝達機構4は前後方向に延び、ギヤ機構7と、遊星ギヤ機構8とにより構成される。ギヤケース2B内の後部には、ロッドカバー21が配置されている。ロッドカバー21には、後述のロッド51の後端部が挿入される挿入孔21aが前後方向に貫通して形成される。挿入孔21aは、その内径が後述のロッド51の外径より僅かに大きくなるように形成されている。ギヤケース2Bとモータハウジング2Aとは、図示せぬネジ(ビス)で互いに固定されている。
【0036】
ギヤ機構7は、遊星ギヤ機構8とブラシレスモータ3との間に介在しており、ピニオンギヤ31Aと噛合する第一ギヤ71と、第一ギヤ71に噛合する第二ギヤ部72と、第二ギヤ部72と噛合する第三ギヤ部73とから主に構成されている。第一ギヤ71は平ギヤであり、回転軸31の回転軸と平行な回転軸を有し、ハウジング2に回転可能に支持されている。第二ギヤ部72は、平ギヤであり第一ギヤ71と噛合する第二ギヤ72Aと第二ギヤ72Aと同軸一体回転する第一傘歯ギヤ72Bとを有している。第二ギヤ部72の回転軸は、第一ギヤ71と平行で、ハウジング2にベアリングを介して回転可能に支承されている。また第二ギヤ部72には、内部に後述のプレートロッド55が挿通される孔が上下方向に貫通している。第三ギヤ部73は、傘歯ギヤであり第一傘歯ギヤ72Bと噛合する第二傘歯ギヤ73Aと、第二傘歯ギヤ73Aの前側に位置し第二傘歯ギヤ73Aと同軸一体回転する第一太陽ギヤ73Bとを有している。第3ギヤ部73は、ベアリングを介してロッドカバー21に回転可能に支承されている。第三ギヤ部73は、その回転軸中心位置に前後方向に貫通する貫通孔が形成され、後述のロッド51が挿入されている。
【0037】
遊星ギヤ機構8は、第一遊星ギヤ81、第二遊星ギヤ82、第三遊星ギヤ83、及びこれら第一?第三遊星ギヤ81?83のリングギヤとなる外周部8Aとから構成されている。第一遊星ギヤ81は、第三ギヤ部73の前方に配置され、第一太陽ギヤ73Bを太陽ギヤとし外周部8Aをリングギヤとして公転しており、第一太陽ギヤ73Bの回転を減速して出力する第二太陽ギヤ81Aを有している。第二遊星ギヤ82は、第一遊星ギヤ81の前方に配置され、第二太陽ギヤ81Aを太陽ギヤとし外周部8Aをリングギヤとして公転しており、第二太陽ギヤ81Aの回転を減速して出力する第三太陽ギヤ82Aを有している。第三遊星ギヤ83は、第二遊星ギヤ82の前方に配置され、第三太陽ギヤ82Aを太陽ギヤとし外周部8Aをリングギヤとして公転しており、第三太陽ギヤ82Aの回転を減速して出力する出力部83Aを有している。
【0038】
出力部83Aは前端が開口しており、内部に後述のインナーソケット61を収容可能であって後述するウエイト52が収容されているソケット収容空間83aを有している。ソケット収容空間83aの内周には、前後方向に延びる複数の凹部から構成されるスプライン受部83Bが設けられている。また内周において、前端部分には後述の押さえボール61Cを受入れ可能なボール受部83bが形成されている。第一?第三遊星ギヤ81?83には、それぞれ前後方向に貫通する貫通孔が形成されており、第三遊星ギヤ83の貫通孔はソケット収容空間83a内に開口し、第一遊星ギヤ81の貫通孔の後端は第一太陽ギヤ73B前端側に開口し、第三ギヤ部73の貫通孔に連通している。
【0039】
外周部8Aは、第一?第三遊星ギヤ81?83とのそれぞれと噛合するギヤを有し、第三遊星ギヤ83にベアリングを介して支持されている。故に外周部8Aは、ハウジング2に対して回転可能であると共に前後動不能である。
【0040】
ボルトチップ排出機構5は、ロッド51と、ウエイト52と、ウエイト52を前方に付勢するウエイト付勢バネ53と、バネ54と、プレートロッド55と、プレート56とから主に構成されている。ロッド51は、外径が挿入孔21aより略小径の棒状に構成されており、先端がウエイト52に固定される。ロッド51の後端側には凹部51aが形成され、凹部51aを含む後端がソケット収容空間83a内から第一?第三遊星ギヤ81?83に形成された貫通孔、及び第三ギヤ部73に形成された貫通孔を貫通して、挿入孔21a内に配置されている。ウエイト52は、ウエイト付勢バネ53を受ける座部52Aと、座部52Aの前端に位置する付勢部52Bとから構成されており、ソケット収容空間83a内に配置されている。ウエイト付勢バネ53は、ソケット収容空間83a内に配置され、前端が座部52Aに着座すると共に後端がソケット収容空間83aの後端面に着座してウエイト52を前側へと付勢している。
【0041】
ギヤケース2Bの後方に位置するバネ54は、ロッドカバー21に支持されている。プレートロッド55は棒状に構成されており、第二ギヤ部72に形成された孔内に長手方向を上下方向として配置されており、上端が後述のプレート56の一端と当接可能であり、下端が後述のレバー23と当接可能な位置に配置されている。
【0042】
プレート56は、バネ54とプレートロッド55との間に設けられていて、バネ54によって下側に付勢されている。プレート56には挿入孔21aより僅かに大きい貫通孔56aが形成されており、ロッド51が挿通可能となっている。
【0043】
ソケット部6は主にインナーソケット61とソケット付勢バネ62とアウターソケット63とから構成されている。インナーソケット61は、スプライン部61Aと、チップ付勢部61Bと、押さえボール61Cとを有し、ソケット収容空間83a内に収容可能に構成されている。インナーソケット61の前方にはチップ保持空間61aが形成されている。インナーソケット61の外周面における前後方向の略中心位置に、後述のインナーソケット規制部材63Aと当接する段部が設けられている。
【0044】
図5に示すように、チップ保持空間61aはインナーソケット61前端に開口して高張力ボルト11のボルトチップ11A(bolt tip)を収容・保持する構成を採っており、内周面にボルトチップ11Aのスプライン形状と嵌合するスプライン溝が形成されている。故にインナーソケット61とボルトチップ11Aとは共回りすることが可能になる。インナーソケット61においてチップ保持空間61aの底面となる部分には、ウエイト52の付勢部52Bが貫通してチップ保持空間61a内に突出可能な開孔61bが形成されている。またインナーソケット61において開孔61bの後方には、ウエイト52の座部52Aを収容可能な座部収容空間61cが形成されている。
【0045】
スプライン部61Aは、インナーソケット61外周の後端側に設けられており、ソケット収容空間83a内のスプライン受部83Bと係合している。これにより、インナーソケット61は出力部83Aに対して前後動可能かつ回転不能となり、インナーソケット61は出力部83Aと一体回転する。
【0046】
チップ付勢部61Bは、チップ保持空間61a内周面に開口する孔内に配置されたボールと該ボールを付勢するバネとから構成されている。このボールがバネにより付勢されてチップ保持空間61a内に突出することによりチップ保持空間61a内に収容されたボルトチップ11Aと当接してボルトチップ11Aを保持することができる。
【0047】
押さえボール61Cは、インナーソケット61の外周面と座部収容空間61c内周面とを貫通する孔内に上下方向に移動可能に配置されている。座部52Aが座部収容空間61c内に収容された状態で、押さえボール61Cが座部52A外周と当接してインナーソケット61外周面から突出する構成を採っている。よって、インナーソケット61が出力部83Aの前方に位置した状態で座部52Aが座部収容空間61c内に位置することにより、押さえボール61Cの一部がインナーソケット61外周面より突出してボール受部83bに挿入される(図1に示す状態)。この状態でインナーソケット61をソケット収容空間83a内に挿入しようとしても、ボール受部83bに受入れられた押さえボール61Cの一部がスプライン受部83Bに引っ掛かるため、インナーソケット61の後方への移動が規制される。座部52Aを座部収容空間61cから退出させることにより、押さえボール61Cが座部収容空間61c内に突出可能になると共にボール受部83bから退出可能になり、インナーソケット61の後方への移動が可能になる(図6に示す状態)。
【0048】
ソケット付勢バネ62は、内部にウエイト52及びウエイト付勢バネ53を収容した状態でソケット収容空間83aに収容される。ソケット付勢バネ62は、前端がインナーソケット61に当接し、後端がソケット収容空間83aの後端面に当接するように構成されている。ソケット付勢バネ62によりインナーソケット61は前方へと付勢される。
【0049】
アウターソケット63は、外周部8Aの前端部分に装着されて外周部8Aと一体回転し、ナット保持空間63aが形成され、インナーソケット規制部材63Aを備えている。ナット保持空間63aは、アウターソケット63前端に開口して内部にナット12と係合可能である。故にアウターソケット63とナット12とは共回りすることができる。インナーソケット規制部材63Aはナット保持空間63aの後端面位置に規定されており、インナーソケット61の前端部分のみが挿通可能な開孔63bを有している。インナーソケット61の前端部分が開孔63bを貫通した状態では、インナーソケット61の段部がインナーソケット規制部材63Aに当接するため、インナーソケット規制部材63Aによってインナーソケット61がソケット付勢バネ62の付勢力によりナット保持空間63a内に脱落することを防止している。
【0050】
ハンドルハウジング2Cは断面形状略L字状であって、上部で図示せぬネジ(ビス)によってギヤケース2Bに固定されており、下部でネジ(ビス)22によってモータハウジング2Aの下端部に固定されている(図2)。ハンドルハウジング2Cには、図2、3に示すように、吸気口2cが、左右方向それぞれに上下方向に2箇所、前後方向に2箇所の合計8箇所形成されている。冷却ファン32が回転することによって吸気口2cから外気が吸入され、通気口2b、空隙35a(図4)、隙間36a(図4)を通って基板部9、基板33、ブラシレスモータ3をそれぞれ冷却して排気口2aより排出される(図2の矢印)。ハンドルハウジング2C内には、基板部9が収容される基板部収容空間9aが形成されており、基板部収容空間9a内にブラシレスモータ3を制御する基板部9が配置される。
【0051】
ハンドルハウジング2Cとギヤケース2Bとの接続部分にはレバー23が配置され、その一部がハンドルハウジング2Cの外部に突出している。レバー23は、ボルトチップ排出機構5を操作するために設けられており、作業者に引かれることにより上方へと回動して、プレートロッド55をバネ54の付勢力に抗して上方に移動させる。具体的には、図1に示す状態(レバー23が回動していない状態)では、貫通孔56aの中心と挿入孔21aの中心はずれていて、プレート56の一部が挿入孔21aの一部を塞いでいる。この状態でレバー23が引かれて上方に回動することにより、プレートロッド55がレバー23に押されて上方へ移動し、プレート56はバネ54に抗って上方へと移動する。プレート56が上方へと移動することにより貫通孔56aの中心と挿入孔21aの中心とが一致する。
【0052】
ハンドルハウジング2Cにはブラシレスモータ3への電源の供給を切替えるトリガ24が設けられており、トリガ24はスイッチ機構24Aと接続している。下部からは、図示せぬ外部電源に接続される電源コード25が延出している。
【0053】
図7から13に示すように、基板部9は、回路基板91と(図1)、回路基板支持部92と、スイッチング素子93と、放熱部材94と、ダイオードブリッジ95と、コンデンサ96とを備えている。回路基板91は、前後方向に延びるように配置され、槽状の回路基板支持部92に収容されている。回路基板91は、電源ケーブル91Aを介して電源コード25と電気的に接続されており、電源ケーブル91Bを介してスイッチ機構24Aと電気的に接続されている。回路基板91上には、ブラシレスモータ3の駆動を制御する図示せぬマイクロコンピュータが搭載されている。回路基板支持部92は、左右方向に直交する断面がU字状をなし、回路基板91を収容できる程度の深さを有する。回路基板支持部92には、ウレタン樹脂92Aが充填されており、このウレタン樹脂92Aよって回路基板91を回路基板支持部92に固定するとともに、回路基板91の防振性を高め、回路基板91上の素子の絶縁を確保している。回路基板支持部92は、図示せぬリブによってハンドルハウジング2Cに支持されている。本実施の形態では、スイッチング素子93として、FET(FIELD EFFECT TRANSISTOR)を用いている。また、ダイオードブリッジ95はブリッジダイオードとも呼ばれ、公知のダイオードを4つ組み合わせたものであり、交流の商用電源を直流に整流するためのものである。
【0054】
スイッチング素子93は、ステータ35への給電を行うことによってブラシレスモータ3の回転を制御するための素子であり、回路基板91の右側の吸気口2cの近傍に6つ配置される(図3)。より詳細には、図9に示すように、スイッチング素子93A1?93A3は前後方向に並ぶように配置され(以下、列Aという)、列Aの左側に所定距離を空けてスイッチング素子93A4?93A6が前後方向に並ぶように配置される(以下、列Bという)。列Aのスイッチング素子93A1?93A3が、それぞれコイル35A1?35A3と接続され、列Bのスイッチング素子93A4?93A6が、それぞれコイル35A4?35A6と接続されている。スイッチング素子93A1とスイッチング素子93A4とは、同時にコイル35A1とコイル35A4とに通電し、スイッチング素子93A2とスイッチング素子93A5とは、同時にコイル35A2とコイル35A5とに通電し、スイッチング素子93A3とスイッチング素子93A6とは、同時にコイル35A3とコイル35A6とに通電する。スイッチング素子93は上下方向と直交する断面が長方形をなし、長辺が前後方向に延びるように、短辺が左右方向に延びるように配置される。これにより、図3に示すように、吸気口2cに対向するように長辺側の側面が配置されることとなり、スイッチング素子93の冷却効率をより高めることができる。
【0055】
スイッチング素子93の表層は導電性のある金属で覆われている。図7及び8に示すように、スイッチング素子93の上部には、左右方向に貫通する孔93aが形成されている。列Bに位置するスイッチング素子93の左側側面は、孔93aを通るボルト93Aによって放熱部材94と接続されている(図9)。スイッチング素子93と放熱部材94との接触面には、両者の密着性を高めてスイッチング素子93の熱が放熱部材94に伝わり易くするために、放熱グリスが塗布されている。列Bのスイッチング素子93が放熱部材94と接続されていることにより、列Aのスイッチング素子93が障壁となって吸気口2cからの冷却風が当たりにくい場合であっても、列Bのスイッチング素子93は十分な冷却効果を得ることができる。さらに、列Aの近傍に列Bを配置することによりスイッチング素子93が回路基板91上の1箇所に集まるため、効率的な回路配置が可能となり回路基板91を小型化することができる。
【0056】
放熱部材94は、アルミ製であって上下方向に直交する断面が略コ字状をなし、スイッチング素子93と接続するスイッチング素子接続部94Aと、ダイオードブリッジ95と接続するダイオードブリッジ接続部94Bと、スイッチング素子接続部94Aとダイオードブリッジ接続部94Bとを繋ぐ横架部94Cとを有する。図10及び11に示すように、放熱部材94の上面はスイッチング素子93の上面と面一であって、図1及び8に示すように、スイッチング素子93の下面は回路基板91(ウレタン樹脂92A)と離間している。これにより、図2に示すようなスイッチング素子93の上方の空間(図示せぬ配線等が配置される)を確保するとともに、放熱部材94の熱が回路基板91に伝達することを防止している。
【0057】
ダイオードブリッジ95は、交流を直流に変換するための整流回路であって、回路基板91上の左側の吸気口2cの近傍に配置される(図3)。ダイオードブリッジ95は上下方向に直交する断面が長方形をなし、長辺が前後方向に延びるように、短辺が左右方向に延びるように配置される。これにより、図3に示すように、吸気口2cに対向するように長辺側の側面が配置されることとなり、ダイオードブリッジ95の冷却効率を高めることができる。ダイオードブリッジ95の右側側面は、ボルト95Aによって放熱部材94のダイオードブリッジ接続部94Bと接続されている(図9)。これにより、ダイオードブリッジ95の発熱を効果的に放熱することができる。
【0058】
コンデンサ96は、電源コード25からの電力を平滑化するために設けられており、回路基板91のスイッチング素子93とダイオオードブリッジ95との間に配置される。
【0059】
次にシャーレンチ1の高張力ボルト11締め付け動作について説明する。高張力ボルト11及びナット12(図5)をチップ保持空間61a及びナット保持空間63aに挿入していない状態においては、図1に示されるように、インナーソケット61がソケット付勢バネ62により前方へと付勢されてインナーソケット61の前端部分がナット保持空間63a内に突出している。またウエイト52及びロッド51がウエイト付勢バネ53により前方へと付勢されて座部52Aが座部収容空間61c内に収容されると共に付勢部52Bがチップ保持空間61a内に突出している。
【0060】
図5に示されるように、被加工部材たる鋼板Sに高張力ボルト11及びナット12を仮止めした状態で、ボルトチップ11Aをチップ保持空間61a内に挿入すると共にナット12をナット保持空間63a内に挿入する。ボルトチップ11Aをチップ保持空間61aに収容することにより、ボルトチップ11Aが付勢部52Bに当接し、ウエイト付勢バネ53の付勢力に抗してロッド51及びウエイト52を後方へ移動させる。これによって、座部52Aが座部収容空間61c内から退出するため、インナーソケット61がアウターソケット63に対して後方へと移動可能になる。この状態で、ナット12がナット保持空間63a内に挿入されることにより、ナット12がインナーソケット61に当接し、ソケット付勢バネ62の付勢力に抗してインナーソケット61及びウエイト52、ロッド51が後方へと移動する。この移動に伴ってロッド51の後端部分に位置する凹部51aがプレート56の貫通孔56aに引っ掛かり、ウエイト52、ロッド51の前方への移動が規制される。
【0061】
この状態でトリガ24を引くことによりブラシレスモータ3が駆動して冷却ファン32も回転する。これにより、吸気口2cから吸入された冷却風は基板部9、基板33、及びブラシレスモータ3を冷却し、排気口2aから外部に排出される。
【0062】
同時に、ブラシレスモータ3の駆動力が回転駆動伝達機構4を介してソケット部6に伝達し、アウターソケット63に対しインナーソケット61を相対回転させる。そして、高張力ボルト11に対してナット12を締め付け、更にブラシレスモータ3を駆動して図6に示されるように、ボルトチップ11Aを高張力ボルト11からネジ切るように剪断する。この剪断により、高張力ボルト11に対してナット12を所定のトルクで締め付けることが可能になる。
【0063】
高張力ボルト11にナット12を締め付けた後に、シャーレンチ1を高張力ボルト11から外すと、インナーソケット61はソケット付勢バネ62により前方へと付勢されるが、ウエイト52はロッド51の凹部51aが貫通孔56aに引っ掛かることで前方への移動が規制されているため、ナット12を締め付けた状態の位置と同じ位置に止まる。よって図6に示されるように、インナーソケット61からウエイト52までの間に隙間が発生する。またチップ保持空間61aに収容されているボルトチップ11Aは、チップ付勢部61Bにより付勢されているため、チップ保持空間61aから脱落することが抑制されている。
【0064】
この状態でレバー23を引き、バネ54の付勢力に抗ってプレート56を上方へと移動させることにより、貫通孔56aと凹部51aとの引っ掛かりが解かれる。ウエイト付勢バネ53の付勢力によりウエイト52が瞬間的に前進して付勢部52Bがチップ保持空間61a内のボルトチップ11Aに接触し、ボルトチップ11Aをチップ保持空間61a内から叩き出し、次の締め付けに備えることができる。
【0065】
このような構成によると、放熱部材94がスイッチング素子93及びダイオードブリッジ95に接続されているため、回路基板91上の限られたスペースを有効的に利用してスイッチング素子93及びダイオードブリッジ95を効率的に冷却することができる。これにより、スイッチング素子93及びダイオードブリッジ95の熱による破損を防止できる。
【0066】
さらに、放熱部材94は吸気口2cと排気口2aとの間に配置されているため、冷却ファン32により発生した吸気口2cと排気口2aとの間を通る冷却風によって放熱部材94を効率的に冷却することができる。
【0067】
さらに、横架部94Cが設けられていることによって放熱部材94の表面積が増加するため、スイッチング素子93及びダイオードブリッジ95を効率的に冷却することができる。
【0068】
さらに、スイッチング素子93A1?93A6は、対極に位置するコイル35A同士が同時に通電されるようにコイル35A1?35A6の通電を制御している。そうすると、スイッチング素子93A1とスイッチング素子93A1の対極に位置するスイッチング素子93A4とが電気的に接続されている場合は、スイッチング素子同士のショートが起こる可能性がある。しかし、放熱部材94は、スイッチング素子93A4?93A6にのみ接続されているため、スイッチング素子同士のショートが起きない。このため、一つの放熱部材94でスイッチング素子93A4?93A6を放熱することができる。
【0069】
次に、第2の実施形態の電動工具の一例たるシャーレンチ201について図14から20に基づき説明する。第1の実施形態と同一の構成によるものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
図14から20に示すように、放熱部材294は、アルミ製であって上下方向に直交する断面が略コ字状をなし、スイッチング素子93と接続するスイッチング素子接続部294Aと、ダイオードブリッジ95と接続するダイオードブリッジ接続部294Bと、スイッチング素子接続部294Aとダイオードブリッジ接続部294Bとを繋ぐ横架部294Cとを有する。図16に示すように、スイッチング素子接続部294Aはボルト93Aによって列Bのスイッチング素子93の右側側面と接続されていて、ダイオードブリッジ接続部294Bはボルト95Aによってダイオードブリッジ95の右側側面と接続されている。第1の実施形態と同様に、スイッチング素子93とスイッチング素子接続部294Aとの接触面には、放熱グリスが塗布されている。このように、スイッチング素子接続部294Aが列Bのスイッチング素子93の右側側面と接続していることにより、スイッチング素子接続部294Aが吸気口2cの近傍に位置することとなり、吸気口2cからの冷却風を効率よく受けることができるためスイッチング素子93の発熱を効果的に放熱することができる。これにより、スイッチング素子93及びダイオードブリッジ95の熱による破損を防止できる。さらに、横架部294Cが設けられていることによって放熱部材294の表面積が増加するため、スイッチング素子93及びダイオードブリッジ95の発熱を効果的に放熱することができる。
【0071】
次に、第3の実施形態の電動工具の一例たるシャーレンチ301について図21から27に基づき説明する。第1の実施形態と同一の構成によるものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
図21から27に示すように、放熱部材394は、アルミ製であって、スイッチング素子93と接続するスイッチング素子接続部394Aと、ダイオードブリッジ95と接続するダイオードブリッジ接続部394Bと、スイッチング素子接続部394Aとダイオードブリッジ接続部394Bとを繋ぐ横架部394Cと、コンデンサ96と接続するコンデンサ接続部394Dとを有する。図23に示すように、スイッチング素子接続部394Aは、ボルト93Aによって列Bのスイッチング素子93の左側側面と接続されていて、ダイオードブリッジ接続部394Bはボルト95Aによってダイオードブリッジ95の右側側面と接続されている。図22に示すように、コンデンサ接続部394Dは、ダイオードブリッジ接続部394Bの上端から延出され屈曲してコンデンサ96の上面と接続するように設けられている。このように、コンデンサ接続部394Dとコンデンサ96とが接続していることにより、コンデンサ96の発熱を効果的に放熱することができる。これにより、コンデンサ96の熱による破損を防止できる。また、コンデンサ接続部393Dがコンデンサ96の上面を覆っていることにより、ハウジング2の内部の変形によりハウジング2の一部とコンデンサ96とが接触してしまうことを防ぐことができる。
【0073】
次に、第4の実施形態の電動工具の一例たるシャーレンチ401について図28から34に基づき説明する。第1の実施形態と同一の構成によるものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図28から34に示すように、放熱部材494は、スイッチング素子93と接続するスイッチング素子接続部494Aと、ダイオードブリッジ95と接続するダイオードブリッジ接続部494Bとを有する。図28に示すように、スイッチング素子接続部494Aとダイオードブリッジ接続部494Bとは互いに分断されている。図30に示すように、スイッチング素子接続部494Aはボルト93Aによって列Bのスイッチング素子93の左側側面と接続されていて、ダイオードブリッジ接続部494Bはボルト95Aによってダイオードブリッジ95の右側側面と接続されている。このように、スイッチング素子接続部494Aとダイオードブリッジ接続部494Bとが分断されていることにより回路基板91上の空間が広くなるため、回路基板91上に素子を配置する際の作業性が向上する。
【0075】
次に、第5の実施形態の電動工具の一例たるシャーレンチ501について図35から41に基づき説明する。第1の実施形態と同一の構成によるものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
図37に示すように、回路基板91上には6つのスイッチング素子593と、放熱部材594とが設けられている。スイッチング素子593A1?593A3は前後方向に並ぶように配置され(以下、列Aという)、列Aの左側に所定距離を空けてスイッチング素子593A4?593A6が前後方向並ぶように配置される(以下、列Bという)。第5の実施形態での所定距離は、第1?4の実施形態の所定距離よりも小さく設定されている。具体的には、所定距離は放熱部材594の厚みと略同一に設定されている。
【0077】
図35から41に示すように、放熱部材594は、アルミ製であって上下方向に直交する断面が略コ字状をなし、スイッチング素子593と接続するスイッチング素子接続部594Aと、ダイオードブリッジ95と接続するダイオードブリッジ接続部594Bと、スイッチング素子接続部594Aとダイオードブリッジ接続部594Bとを繋ぐ横架部594Cとを有する。図37に示すように、スイッチング素子接続部594Aは、ボルト593Aによって列Aのスイッチング素子593の左側側面及び列Bのスイッチング素子593の右側側面と接続されている。スイッチング素子593とスイッチング素子接続部594Aとの接触面には、両者の密着性を高めるとともに列Aのスイッチング素子593と列Bのスイッチング素子593との電気絶縁性を確保するための絶縁性を有するゴムにより構成されるシート状部材が設けられている。ダイオードブリッジ接続部594Bは、ボルト95Aによってダイオードブリッジ95の右側側面と接続されている。これにより、列Aのスイッチング素子593も放熱部材594と接続しているため、列Aのスイッチング素子593の発熱を効果的に放熱することができる。これにより、スイッチング素子93及びダイオードブリッジ95が熱によって破損することを防止できる。
【0078】
本発明によるシャーレンチは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
本実施形態では、放熱部材としてアルミを用いたが、銅やステンレスなどの他の金属材料を用いてもよい。
【0080】
本実施形態では、放熱部材とスイッチング素子との接触面に放熱グリスが塗布されていたが、放熱グリスを塗布せずに直接両者を接触させても良い。
【0081】
本実施形態では、放熱部材は表面が平滑なものを用いたが、放熱部材の表面に凹凸をつけてもよい。これによって、放熱部材の表面積が増加してより高い冷却効率を得ることができる。
【0082】
本実施形態では、ダイオードブリッジの右側側面に放熱部材を接続したが、ダイオードブリッジの左側側面に放熱部材を接続してもよい。これにより、放熱部材が吸気口の近傍に位置することとなるため、より高い冷却効率をえることができる。」
【0083】
本実施形態では、スイッチング素子としてFETを6つ用いたが、FETの数は2つでも良い。また、4つでも、8つでも良い。
【0084】
本実施形態では、ダイオードブリッジとして公知のダイオードが4つ組み合わせたものを用いたが、ダイオードブリッジ以外の整流素子を用いてもよい。例えば、ダイオードを一つのみ用いても良い。
【0085】
本実施形態では、放熱部材はスイッチング素子に固定されていたが、基板に対してネジで固定するものであっても良い。
【0086】
また、本発明は電動工具の一例としてシャーレンチを用いたが、シャーレンチ以外の電動工具、例えばハンマやハンマドリルに適用してもよい。
【0087】
また、ブラシレスモータへの給電は、電源コードによって行う構造としたが、繰返し充電可能な充電池(バッテリ)によって給電する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1・・シャーレンチ 2・・ハウジング 2A・・モータハウジング 2B・・ギヤケース 2C・・ハンドルハウジング 3・・ブラシレスモータ 4・・回転駆動伝達機構5・・ボルトチップ排出機構 6・・ソケット部 7・・ギヤ機構 8・・遊星ギヤ機構9・・基板部 32・・冷却ファン 34・・ロータ 35・・ステータ 35A・・コイル 91・・回路基板 93・・スイッチング素子 94・・放熱部材 95・・ダイオードブリッジ 96・・コンデンサ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容され、上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータの上方で前記回転軸に固定される冷却ファンと、
前記ブラシレスモータを制御する制御部と、前記制御部が搭載される回路基板と、前記ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子と、を有し、前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に配置される基板部と、
前後方向に延び、前記回転軸の回転が伝達される出力部と、を備え、
前記ハウジングは、排気口が設けられ前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と、吸気口が設けられ前記基板部を収容する基板部収容部と、を有し、
前記モータ収容部と前記基板部収容部との間を区画する隔壁に前記モータ収容部と前記基板部収容部とを繋ぐ通気口を前記基板部の上方に設け、前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部に流入した冷却風は前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に流入して前記ブラシレスモータの内部を通り、その後前記排気口から排出され、
前記隔壁には、前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ、
前記吸気口は、前記隔壁よりも下方で且つ前記回路基板よりも上方の範囲内に収まるよう設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し、
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ、
前記吸気口は前記ブラシレスモータと前記基板部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記モータ収容部は、前記冷却ファンを収容するファン収容部を備え、前記ファン収容部には前記排気口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項4】
前記基板部は、前記スイッチング素子に接続される放熱部材と、前記回路基板を収容し絶縁材が充填されている回路基板支持部と、を備え、
前記回路基板支持部は前記基板部収容部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ冷却風路内に配置されることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記回路基板は前後方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項7】
前記出力部は前記回転軸の軸心と交差すると共に前記回路基板と略平行に延びることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記ブラシレスモータは前記回転軸に同軸的に固定されたロータと、コイルを有するステータと、を有し、
前記通気口には、前記コイルと前記回路基板とを接続するケーブルが通ることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項9】
上下に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、
前後方向に延び、前記回転軸の回転が伝達される出力部と、
前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と、
前記ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、前記モータハウジングの上方で前記回転軸に固定された冷却ファンを収容し排気口を有するファン収容部と、前記モータハウジングに連結されるハンドルハウジングと、を備えるハウジングと、を備えた電動工具であって、
前記ハウジングは、吸気口が設けられ、前記回転軸の軸線上で前記ブラシレスモータの下方に前記スイッチング素子を搭載した基板部を収容する基板部収容部を有し、
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分であって前記基板部の上方に、前記基板部収容部と前記モータハウジングとを連通する通気口を設け、
前記基板部収容部と前記モータハウジングとを区画する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第1モータベアリングが設けられ、
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は、前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータハウジングに導入されて前記ブラシレスモータを冷却し、その後、前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出され、
前記吸気口から吸入された空気の全ては、前記基板部収容部内における前記区画する部分と前記基板部との間の空間に直接流入することを特徴とする電動工具。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記冷却ファンの上方に位置し前記冷却ファンと対向する金属製のギヤケースをさらに有し、
前記ギヤケースの前記冷却ファンに対向する部分には、前記回転軸を回転可能に支持する第2モータベアリングが設けられ、
前記ハウジングには前記冷却ファンの回転によって生じる空気が通る冷却風路が形成され、
前記冷却風路は、前記吸気口、前記基板部収容部、前記通気口、前記モータハウジング、前記ファン収容部、前記排気口から形成されることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項11】
前記スイッチング素子は前記吸気口の近傍に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項12】
前記スイッチング素子に接続される放熱部材をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の電動工具。
【請求項13】
前記吸気口は前記スイッチング素子よりも前記放熱部材に近接していることを特徴とする請求項12に記載の電動工具。
【請求項14】
前記ハンドルハウジングはD型形状のハンドルを備え、前記ハンドルの下方に電源が接続可能であることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項15】
上下方向に延びる回転軸を有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前記回転軸に固定される冷却ファンと、
前記ブラシレスモータの上方側に配置されて前後方向に延びる出力部と、
前記ブラシレスモータの下方側に配置されて前後方向に延び、前記ブラシレスモータを駆動するスイッチング素子と、前記ブラシレスモータを制御する制御部が搭載された回路基板と、前記スイッチング素子に接続される放熱部材と、を有する基板部と、
前記ブラシレスモータを収容するモータ収容部と、前記冷却ファンを収容するファン収容部と、前記基板部を収容する基板部収容部と、を有するハウジングと、を備え、
前記回転軸の軸線上において、上から順に前記冷却ファン、前記ブラシレスモータ、前記基板部が前記ハウジング内に収容され、
前記ファン収容部には排気口が形成されると共に前記基板部収容部には吸気口が形成され、
前記吸気口から前記排気口までの冷却風路に、前記モータ収容部と前記基板部収容部とを上下に連通する通気口を設け、
前記通気口は、前記回路基板の上方に設けられ前記モータ収容部と前記基板部収容部とを区画する隔壁に形成され、
前記隔壁には、前記回転軸を回転可能に支持するモータベアリングが設けられ、
前記回路基板は、前記冷却風路よりも下方に配置され、
前記放熱部材は、前記冷却風路に張り出すように設けられ、
前記冷却ファンの回転によって前記吸気口から前記基板部収容部内に吸入された空気は、前記基板部を冷却した後に前記通気口を介して前記モータ収容部に導入されて前記ブラシレスモータを冷却し、その後、前記ファン収容部に導入されて前記排気口から排出されることを特徴とする電動工具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-07-05 
結審通知日 2016-07-07 
審決日 2016-07-20 
出願番号 特願2010-159551(P2010-159551)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (B25F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 亀田 貴志金本 誠夫  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
久保 克彦
登録日 2014-05-09 
登録番号 特許第5534562号(P5534562)
発明の名称 電動工具  
代理人 小泉 伸  
代理人 市川 朗子  
代理人 上田 恭一  
代理人 小泉 伸  
代理人 北澤 一浩  
代理人 牛田 竜太  
代理人 石田 喜樹  
代理人 福本 鉄平  
代理人 福本 鉄平  
代理人 北澤 一浩  
代理人 市川 朗子  
代理人 牛田 竜太  
代理人 城臺 顕  
代理人 城臺 顕  
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