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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1321527
審判番号 不服2015-4324  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-04 
確定日 2016-11-08 
事件の表示 特願2011-545370「無線電力の配電方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日国際公開、WO2010/080673、平成24年 6月28日国内公表、特表2012-514970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件の出願(以下、「本願」という。)は、2009年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年1月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月30日付け(発送日:11月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月4日付けで拒絶査定不服審判が請求され、さらに、当審において、平成27年12月18日付け(発送日:同月21日)で拒絶理由が通知され、平成28年4月21日付けで意見書(以下、「本件意見書」という。)が提出されるとともに、手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年4月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものと認められる。

「【請求項1】
無線チャージに関する課金用プロセッサによって実行されるプログラム命令をあらわすデータを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
機器が検出されると、無線チャンネルを提供するために前記機器に対して確認要求を提供すること、
前記検出があると自動的に、無線チャージのための要求を含む前記確認要求に対する応答を前記機器から受信すること、
前記応答の受信があると自動的に、前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別することであって、前記アカウントはチャージ値を含むこと、
受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、
前記無線電力が前記機器に提供されるとき、前記チャージ値を修正すること、
を実行させるためのプログラム命令を記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」

3.引用例
当審における平成27年12月18日付け拒絶理由通知で示した特開2006-353042号公報(以下、「引用例」という。)には、「送電装置、受電装置、認証課金代行装置、充電システム、送電方法、受電方法、充電方法」として、図面とともに次の記載がある(下線部は当審で付加。)。

ア.「【発明の効果】
【0022】
従来技術では携帯電子装置の利用者が意識して充電をする必要があるのに対し、本発明によれば、充電目的以外の非接触型処理動作の中で同時に高速充電することによって、利用者が充電を意識する負担を低減することができる(後述する第1充電システム)。
また、充電判断の際に携帯電子装置の利用者と電力提供者の充電ポリシを用いることで、詳細な料金設定やセキュリティ設定が可能となり、利用者に明示的な充電許可を逐次得ることなく柔軟な充電が可能となる(後述する第2充電システム)。また、充電中の広告配信など新しいビジネスモデルを構築できる。」

イ.「【0028】
(第2充電システム:ポリシによる自動認証・充電・課金)
また、第2充電システムでは、上記第1充電システムにおける携帯電子装置の受電制御モジュールに、さらに利用者側ポリシを加え、任意で、利用者識別情報と、携帯電子装置識別情報と、それらの正当性を証明するための認証情報(電子署名やPIN(Personal Identity Number)コードなど)と、利用者および携帯電子装置の属性情報(メーカや通信事業者など)と、認証課金代行装置用通信機能を加えた受電制御モジュール、を備えた携帯電子装置を用いる。
【0029】
さらに、その対向となる、第1充電システムにおける送電装置の送電制御モジュールに、さらに電力提供者側ポリシを加え、任意で、電力提供者識別情報と、送電装置識別情報と、それらの正当性を証明するための認証情報と、電力提供者および送電装置の属性情報と、認証課金代行装置用通信機能を加えた送電制御モジュール、を備えた送電装置を用いる。また、必要に応じて、携帯電子装置認証機能と、認証記録保存機能と、送電装置との通信機能を備え、任意に、送電装置認証機能と、携帯電子装置との通信機能と、課金機能を備えた、認証課金代行装置を備える。
【0030】
利用者側ポリシは、利用者が携帯電子装置を自動的に充電するに当たって、充電可能な条件を記述したものである。電力提供者側ポリシも同様に、電力提供者が携帯電子装置へ自動的に電力を提供するに当たって、送電可能な条件を記述したものである。
この第2充電システムによって、携帯電子装置内に利用者側の充電ポリシを持ち、送電装置内に電力提供者側の送電ポリシを持つことで、双方の装置を確認し、双方のポリシを照合し、利用者および電力提供者側の明示的な充電許可を逐次得ることなく、充電可能となる。上述の、利用者識別情報、携帯電子装置識別情報、利用者および携帯電子装置の属性情報、および、電力提供者識別情報、送電装置識別情報、電力提供者および送電装置の属性情報は、充電システムが任意に具備することが可能で、利用者側ポリシおよび電力提供者側ポリシは、それらの情報を任意に利用してポリシを記述することができる。例えば、利用者側ポリシでは、「無料の場合だけ充電可」などの場合分けで記述され、電力提供者側ポリシは、「A社製の携帯電話なら無料、その他は1円/秒」のような場合分けを記述できる。
【0031】
利用者側側ポリシには、料金設定、課金方式設定、充電方式設定、充電判断設定、セキュリティ設定などを記述する。電力提供者側ポリシにも同様に、料金設定、課金方式設定、充電方式設定、充電判断設定、セキュリティ設定などを記述する。利用者側ポリシおよび電力提供者側ポリシの詳細については後述する実施例において説明する。
【0032】
さらに第2充電システムでは、送電装置は、利用者もしくは携帯電子装置の正当性を判断し、また代行課金を依頼するために、任意で認証課金代行装置を利用することができる。同様に携帯電子装置は、電力提供者もしくは送電装置の正当性を判断するために、任意で認証課金代行装置を利用することができる。認証課金代行装置は、携帯電子装置又は送電装置の電子署名やPINコードなど、正当性を保証できる情報を管理し、また、各装置の課金情報や充電履歴情報を管理する。そして各装置から要求があるごとに、正当性を認証し、または課金する。
【0033】
利用者側ポリシと電力提供者側ポリシとを照合し、充電判断をするにあたり、利用者もしくは携帯電子装置と、電力提供者もしくは送電装置を認証し、正当性の確認を必要とする場合がある。それは、利用者もしくは携帯電子装置を認証する場合、電力提供者もしくは送電装置を認証する場合、またその両方を相互認証する場合が考えられる。上述の認証課金代行装置での代行認証も1つの方法ではあるが、携帯電子装置と送電装置の組み合わせが固定的であれば、認証課金代行装置の認証機能を送電装置が実装することで、認証課金代行装置を介さずに、携帯電子装置と送電装置との間で閉じた認証の方法をとることもできる。
【0034】
第2充電システムでは、充電判断のフェーズを2つに分離する。1つは、利用者側と電力提供者側のポリシを照合する、第1次充電判断である。もう1つは、第1次充電判断成功後に、認証を行うなどの、ポリシ照合だけでは判断できない処理を行うフェーズで、これを第2次充電判断と呼ぶ。
この第2充電システムにより、利用者および電力提供者へ明示的な許可を得ることなく、ポリシによって自動的に認証・充電・課金することができる。」

ウ.「【実施例2】
【0071】
(充電システムの説明)
図9は、本発明による充電システムを採用した、第1、2、3、4、5充電システムを包含する構成例を示すブロック図である。同図に示されている充電システムは、図1の構成に、携帯電話サービス提供会社など認証課金代行者側に設けられている認証課金代行装置3が追加された構成になっている。本システムでは携帯電子装置2が、送電装置1により充電され、必要に応じて認証課金代行装置3にて課金される。
【0072】
送電装置1は、FeliCa(登録商標)リーダなどの非接触型処理モジュール13と、非接触型送電モジュール12と、送電制御モジュール11とを含んで構成されている。
携帯電子装置2は、FeliCa(登録商標)等の非接触型処理動作のための非接触型処理モジュール23と、充電のための非接触型受電モジュール22と、充電の判断と制御をする受電制御モジュール21と、高速に充電可能な大容量蓄電モジュール20とを含んで構成されている。
認証課金代行装置3は、認証モジュール31と、課金モジュール32とを含んで構成されている。」

エ.「【0097】
図13において、携帯電子装置側の処理は、送電装置を検出した場合に開始される(ステップS801)。まず、充電処理の開始を送電装置と相互に確認する(ステップS802)。その後、電力者提供装置から電力提供者情報を通知され、利用者情報と利用者ポリシの問い合わせを受ける(ステップS803)。そして、携帯電子装置側の第1次充電判断部の判断処理に移行する(ステップS804)。
【0098】
携帯電子装置側の第1次充電判断部の判断処理が図14に示されている。同図において、認証履歴情報に履歴があり、ポリシのバージョンが一致するか判断される(ステップS823)。この判断の結果、バージョンが一致する場合、前回の第1次充電判断結果を採用する(ステップS824)。一方、バージョンが一致しない場合、利用者側ポリシの充電判断設定と電力提供者情報とを照合し、その結果を第1次判断とする(ステップS825)。
【0099】
図13に戻り、第1次充電判断で充電不可と判断されなければ、セキュリティ設定に基づき、利用者情報と利用者ポリシの一部を通知する(ステップS805→S806)。そして、電力提供者側のポリシによって先行充電が開始される(ステップS807)。
その後、イベントが起こるまで待機状態となる(ステップS808)。待機状態において、認証情報の要求があった場合、認証情報を通知する(ステップS809→S810)。符号化情報を受信した場合、携帯電子装置側の高速認証部による処理に移行する(ステップS811→S812)。この高速認証部による処理については後述する。
【0100】
電子マネー残高の照会があった場合、電子マネー残額を通知する(ステップS813→S814)。電子マネー決済の要求があった場合、電子マネー決済処理を行う(ステップS815→S816)。
充電実施内容を受信した場合には、充電処理に移行する(ステップS817→S818)。なお、充電処理においては、同時に、高速認証用鍵情報を受信することができる。携帯電子装置が送電装置から離れたことを検知するか、充電が完了したら、受電量を計算する(ステップS819)。代行課金の場合で通信可能な場合、認証課金代行装置へ受電量を通知し(ステップS820)、処理は終了となる(ステップS821)。」

オ.「図15において、送電装置側の処理は、携帯電子装置を検出した場合に開始される(ステップS901)。まず、充電処理の開始を携帯電子装置と相互に確認する(ステップS902)。そして、携帯電子装置に電力提供者情報を通知し、利用者情報及び利用者ポリシを問い合わせる(ステップS903)。その後、携帯電子装置から利用者情報及び利用者ポリシを受取る(ステップS904)。そして、送電装置側の第1次充電判断部の判断処理に移行する(ステップS905)。
【0102】
送電装置側の第1次充電判断部の判断処理が図16に示されている。同図において、相手側が充電不可と判断したか判断し、そうであれば充電不可と判断する(ステップS916→S917)。認証履歴情報に履歴があり、ポリシのバージョンが前回と一致すれば、前回の第1次充電結果を採用する(ステップS918→S919)。
相手側が充電不可と判断しておらず、かつ、ポリシのバージョンが前回と一致しなければ、電力提供者側ポリシの充電判断設定と利用者情報とを照合する(ステップS916→S918→S920)。この照合の結果、充電不可であれば、充電不可と判断する(ステップS921→S922)。そうでなければ、双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする(ステップS921→S923)。
【0103】
図15に戻り、第1次充電判断で充電不可とされたか判断し(ステップS906)、そうでなればポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される(ステップS906→S907)。その後、第2次充電判断が必要であるか判断される(ステップS908)。第2次充電判断が必要である場合、認証部による認証処理に移行する(ステップS909)。
【0104】
認証部による認証処理が図17に示されている。同図において、最初に、認証処理が必要かどうか判断し(ステップS924)、必要な場合は送電装置側の高速認証部による高速認証が行われる(ステップS925)。
高速認証に成功した場合、認証情報に基づいた充電実施内容を選定する(ステップS926→S927)。この充電実施内容には、例えば個人別のサービスなどが考えられる。
【0105】
一方、高速認証に成功しなかった場合、携帯電子装置の認証情報を取得する(ステップS926→S928)。そして、トランザクション識別情報を生成し、認証課金代行装置へ認証依頼を行う(ステップS929)。この認証に成功した場合、上記のステップS927と同様の処理に移行する(ステップS930→S927)。これに対し、認証に成功しなかった場合、第1次充電判断だけで充電可能か判断し(ステップS931)、処理は終了となる。
【0106】
図15に戻り、第2次充電判断が必要でない場合、又は、認証部による認証処理が終了した場合、課金部による課金処理に移行する(ステップS910)。課金部による課金処理が図18に示されている。同図において、最初に、課金処理が必要かどうか判断し(ステップS932)、必要な場合は次に電子マネー決済が必要か判断する(ステップS933)。
【0107】
電子マネー決済が必要な場合、電子マネーの残額を照会する(ステップS933→S937)。この照会の結果、電子マネー決済が可能であれば、電子マネー決済の場合の充電実施内容を選定する(ステップS938→S939)。この充電実施内容には、例えば料金の設定などが考えられる。その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS933)、処理は終了となる。
【0108】
一方、ステップS937の照会の結果、電子マネー決済が不可である場合や、電子マネーによる決済が必要ない場合、認証済みで代行課金が可能か判断される(ステップS934)。代行課金が可能であれば、代行課金の場合の充電実施内容を選定する(ステップS934→S935)。この充電実施内容には、例えば料金の設定などが考えられる。その後、処理は終了となる。
【0109】
代行課金が不可であれば、先行充電の中止などの処理が行われ(ステップS934→S936)、処理は終了となる。
図15に戻り、充電開始の旨と共に、上記の充電実施内容が携帯電子装置に通知される(ステップS910→S911)。その後、充電が行われる(ステップS912)。充電中には、必要に応じて広告配信や、高速認証用鍵情報の取得処理、その転送が行われる。
送電装置から携帯電子装置が離れたことを検知した場合、又は、充電が完了した場合、送電量を計算する(ステップS913)。そして、必要に応じて、ポイント加算などの特典を与える(ステップS914)。代行課金の場合、認証課金代行装置へ送電量を通知する(ステップS915)。」

カ.「【0113】
以上、図12?図20を参照して説明した各装置の処理により、本システムにおいて実現できる処理は以下の通りである。
充電開始のきっかけは複数ある。送電装置が定期的にビーコンを送信し、携帯電子装置がそれに反応して充電開始要求を送出する場合や、送電装置と携帯電子装置がFeliCa(登録商標)などの非接触型処理を開始したことを検出し、携帯電子装置が充電開始要求を送出する場合もある。また逆に、送電装置側が携帯電子装置に対して充電開始要求をする場合もある。どちらの場合も、携帯電子装置と送電装置の双方が充電処理の開始を確認する(図12のステップS701)。
・・・・・・・途中省略・・・・・・
【0122】
課金ポリシが一致せず、課金方式がない場合は、先行充電を中止し、処理を終了する。
課金処理が終了した後、送電装置は、選定された充電実施内容を携帯電子装置へ通知するとともに、充電を開始または先行充電を継続する(図12のステップS712)。」

上記オ.の、「【0103】・・・・認証部による認証処理に移行する(ステップS909)。【0104】・・・認証部による認証処理が図17に示されている。同図において、・・・必要な場合は送電装置側の高速認証部による高速認証が行われる(ステップS925)。高速認証に成功した場合、認証情報に基づいた充電実施内容を選定する(ステップS926→S927)。・・・【0105】一方、高速認証に成功しなかった場合、・・・・認証課金代行装置へ認証依頼を行う(ステップS929)。この認証に成功した場合、上記のステップS927と同様の処理に移行する(ステップS930→S927)。・・・・【0106】・・・認証処理が終了した場合、課金部による課金処理に移行する(ステップS910)。」の、「認証処理に移行する(ステップS909)」は、送電装置の行う認証処理であるから、上記イ.に「利用者もしくは携帯電子装置を認証する場合」と示される「利用者もしくは携帯電子装置」の認証処理への移行処理に対応するものであって、「利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理に移行する処理(ステップS909)」であるといえる。
また、上記オ.の、「認証処理が終了した場合、課金部による課金処理に移行する(ステップS910)」の処理は、認証が成功した場合に課金処理に移行する処理であるから「認証処理が成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)」といえる。

上記オ.の、「【0106】・・・・次に電子マネー決済が必要か判断する(ステップS933)。【0107】電子マネー決済が必要な場合、電子マネーの残額を照会する(ステップS933→S937)。この照会の結果、電子マネー決済が可能であれば、電子マネー決済の場合の充電実施内容を選定する(ステップS938→S939)。この充電実施内容には、例えば料金の設定などが考えられる。その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS933)、処理は終了となる。」の一連の処理は電子マネー決裁処理である。
この記載に対し、上記エ.に、携帯電子装置側の電子マネー決済処理として示された「【0100】電子マネー残高の照会があった場合、電子マネー残額を通知する(ステップS813→S814)。電子マネー決済の要求があった場合、電子マネー決済処理を行う(ステップS815→S816)。」を対応させると、上記オ.の、「電子マネーの残額を照会する(ステップS933→S937)」処理は、携帯電子装置側に対して電子マネーの残額を照会する処理であって、その応答として送電装置側には「電子マネー残額が通知され」るものである。
なお、上記オ.の、「その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS933)」は、図18を参照すると、「その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS940)」の誤記と認められる。
したがって、上記オ.の、「【0106】・・・・次に電子マネー決済が必要か判断する(ステップS933)。【0107】電子マネー決済が必要な場合、電子マネーの残額を照会する(ステップS933→S937)。この照会の結果、電子マネー決済が可能であれば、電子マネー決済の場合の充電実施内容を選定する(ステップS938→S939)。この充電実施内容には、例えば料金の設定などが考えられる。その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS933)、処理は終了となる。」には、「電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)」が示されているといえる。

上記オ.の「・・・・【0107】・・・・・ その後、電子マネーによる決済が行われ(ステップS933)、処理は終了となる。・・・・【0109】・・・・・ 図15に戻り、充電開始の旨と共に、上記の充電実施内容が携帯電子装置に通知される(ステップS910→S911)。その後、充電が行われる(ステップS912)。」における「その後、充電が行われる(ステップS912)」の処理は、先行充電が開始された後に「充電」が行われるものであるから、上記カ.の、「課金処理が終了した後、送電装置は、選定された充電実施内容を携帯電子装置へ通知するとともに、充電を開始または先行充電を継続する(図12のステップS712)。」における、「充電を開始または先行充電を継続する」処理を行うことであり、上記オ.の「その後、充電が行われる(ステップS912)」の処理は、「充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)」といえる。

これらの記載事項及び図面の記載内容をふまえれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「送電装置と携帯電子装置との非接触型処理動作の中で同時に非接触型の充電を行う充電システムにおける送電装置で実行される処理であって、
送電装置が携帯電子装置を検出した場合に、送電装置側の処理を開始する処理(ステップS901)と、
携帯電子装置に電力提供者情報を通知し、利用者情報及び利用者ポリシを問い合わせる処理(ステップS903)と、
携帯電子装置から利用者情報及び利用者ポリシを受取る処理(ステップS904)と、
双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする処理(ステップS921→S923)と、
第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される処理(ステップS906→S907)と、
第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理に移行する処理(ステップS909)と、
認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、
電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、
携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、
電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、
充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)と、
からなる充電システムにおける送電装置の処理。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「携帯電子装置」は、充電対象の電子機器であるから、本願発明の「機器」に相当する。

(2)引用発明の「非接触型の充電」は、非接触型処理動作の中で同時に充電のための無線経路(無線チャンネル)を携帯電子装置に提供して充電を行う無線充電(無線チャージ)である。
そうすると、引用発明の「非接触型の充電」は、本願発明の「無線チャージ」に相当し、引用発明の「非接触型処理動作の中で同時に非接触型の充電を行う」ことは、本願発明の「無線チャンネルを提供」に相当する。

(3)引用発明の、「送電装置が携帯電子装置を検出した場合」は、本願発明の「機器が検出される」ことに相当する。

(4)引用発明の「利用者ポリシ」は、上記引用例記載事項イ.の「利用者が携帯電子装置を自動的に充電するに当たって、充電可能な条件を記述したもの」であって、携帯電子装置の充電条件を記述した情報である。
したがって、引用発明の「利用者情報及び利用者ポリシを問い合わせる処理(ステップS903)」は、充電条件を確認するために、送電装置が行う、携帯電子装置側への利用者ポリシの要求であって、本願発明の「無線チャンネルを提供するために機器に対して確認要求を提供すること」に相当する。

(5)引用発明において、「送電装置が携帯電子装置を検出した場合に、送電装置側の処理を開始する処理(ステップS901)と、携帯電子装置に電力提供者情報を通知し、利用者情報及び利用者ポリシを問い合わせる処理(ステップS903)と、携帯電子装置から利用者情報及び利用者ポリシを受取る処理(ステップS904)」は、送電装置が携帯電子装置を検出した場合に「自動的」に処理が開始され、かつ、以降の処理ステップも、その処理ステップの前に人為的な操作が記載されていない限り「自動的」に進行されると解するのが普通である。
そして、引用発明の「利用者ポリシ」は、上記(4)の、「利用者が携帯電子装置を自動的に充電するに当たって、充電可能な条件を記述したもの」であるから、充電のための送電装置側への「要求」を含むものである。
したがって、引用発明の「送電装置が携帯電子装置を検出した場合に、送電装置側の処理を開始する処理(ステップS901)と、携帯電子装置に電力提供者情報を通知し、利用者情報及び利用者ポリシを問い合わせる処理(ステップS903)と、携帯電子装置から利用者情報及び利用者ポリシを受取る処理(ステップS904)」は、本願発明の「機器が検出されると、無線チャンネルを提供するために前記機器に対して確認要求を提供すること、前記検出があると自動的に、無線チャージのための要求を含む前記確認要求に対する応答を前記機器から受信すること」に相当する。

(6)引用発明の「電子マネーの残額」は、電子マネーとしてチャージされている額を示すものであるので、本願発明の「チャージ値」に相当する。

(7)引用発明の「電子マネーによる決済」は、無線電力に対する対価を電子マネーの残額から差し引いて決裁するものであるから、本願発明の「チャージ値を修正」に相当する。

(8)引用発明の「双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする処理(ステップS921→S923)と、第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される処理(ステップS906→S907)と、第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理に移行する処理(ステップS909)と、認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)」について、
(a)まず、「双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする処理(ステップS921→S923)」は、上記(5)の処理結果に続き自動的に開始される処理であり、この処理における「その結果」は、「料金設定と課金方式設定」とを照合した結果であって、以降で処理が行われる「電子マネーによる決済」を用いた課金方式を受け入れることを送電装置と携帯電子装置との双方で「受諾」したものであり、送電装置側からみれば、携帯電子装置側からの応答に課金の受諾が含まれるものである。
(b)続く、「第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される処理(ステップS906→S907)と、第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理に移行する処理(ステップS909)」は、引用例記載事項イ.に「第2充電システムでは、充電判断のフェーズを2つに分離する。1つは、利用者側と電力提供者側のポリシを照合する、第1次充電判断である。もう1つは、第1次充電判断成功後に、認証を行うなどの、ポリシ照合だけでは判断できない処理を行うフェーズで、これを第2次充電判断と呼ぶ。この第2充電システムにより、利用者および電力提供者へ明示的な許可を得ることなく、ポリシによって自動的に認証・充電・課金することができる。」と記載されるように、ポリシ照合による第1次充電判断で先行充電を開始しながら、自動的に認証処理のフェーズに移行する処理である。
(c)そして、「認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)」は、電子マネー決済が可能であるという判断の基で、電子マネーの決裁処理と、充電の開始または継続の処理が実行されるから、充電電力が携帯電子装置に提供されるときには、電子マネーの決裁が行われるものといえる。
そうすると、引用発明の「双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする処理(ステップS921→S923)と、第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される処理(ステップS906→S907)と、第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理に移行する処理(ステップS909)と、認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)」と、本願発明の、「前記検出があると自動的に、無線チャージのための要求を含む前記確認要求に対する応答を前記機器から受信すること、前記応答の受信があると自動的に、前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別することであって、前記アカウントはチャージ値を含むこと、受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、前記無線電力が前記機器に提供されるとき、前記チャージ値を修正すること」とは、上記(5)の処理においてなされた「前記応答」の「受信があると、自動的に、受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、前記無線電力が前記機器に提供されるとき、前記チャージ値を修正すること」を実行する点において共通する。

(9)引用発明の「送電装置と携帯電子装置との非接触型処理動作の中で同時に非接触型の充電を行う充電システムで実行される送電装置の処理」と、本願発明の「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」に「データ」として「記憶」した「無線チャージに関する課金用プロセッサによって実行されるプログラム命令」とは、前者が、充電システムの送電装置の処理として「課金処理」を含むものであるから、「無線チャージに関する手段で実行される、課金処理を含む処理」である点において共通する。

したがって、両者は、
「無線チャージに関する手段で実行される、課金処理を含む処理であって、
機器が検出されると、無線チャンネルを提供するために前記機器に対して確認要求を提供すること、
前記検出があると自動的に、無線チャージのための要求を含む前記確認要求に対する応答を前記機器から受信すること、
前記応答の受信があると自動的に、
受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、
前記無線電力が前記機器に提供されるとき、チャージ値を修正すること、
を実行する処理。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
・相違点1
「前記応答の受信があると自動的に、受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、前記無線電力が前記機器に提供されるとき、チャージ値を修正すること」に関し、本願発明は、「前記応答の受信があると自動的に、前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別することであって、前記アカウントはチャージ値を含むこと、受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること」を実行するのに対して、引用発明は、「双方のポリシの料金設定と課金方式設定とを照合し、その結果を第1次充電判断とする処理(ステップS921→S923)と、第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され、その旨が携帯電子装置に通知される処理(ステップS906→S907)と、第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理に移行する処理(ステップS909)と、認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば、電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)」を実行するものである点。

・相違点2
無線チャージに関する手段で実行される、課金処理を含む処理に関し、本願発明は、「無線チャージに関する課金用プロセッサによって実行されるプログラム命令をあらわすデータを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」であるのに対し、引用発明は、「送電装置と携帯電子装置との非接触型処理動作の中で同時に非接触型の充電を行う充電システムにおける送電装置で実行される処理」である点。

5.判断
・相違点1について検討する。
(ア)「前記応答の受信があると自動的に、前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別すること」に関して
(a)一般に、コンピュータを利用する技術分野における「アカウント」とは、システムの利用者がシステムを利用する権利を意味するものである。
そして、本願発明の「アカウントを識別する」も、上記一般的な意味のとおり、システムの利用者が、システムを利用する権利を有しているか否かを識別することを意味している。
(b)それに対して、引用発明の「認証部による認証処理」の「認証」は、引用例記載事項イ.に「利用者もしくは携帯電子装置の正当性を判断する」と記載されるように、充電システムの利用の正当性を判断するもの、すなわち、利用者もしくは携帯電子装置が充電システムを利用する正当な権利を有しているか否かを識別するものである。
(c)そうすると、引用発明の「認証部による認証処理」の「認証」は、実質的に本願発明の「アカウントを識別する」に相当するものである。
(d)また、上記引用発明の「認証部による認証処理」の「認証」で「利用者もしくは携帯電子装置の正当性を判断する」ためには、対象となる「携帯電子装置」自体が識別されて特定されていることは当然である。
そうすると、引用発明の「利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理」は、「携帯電子装置」自体が識別され、利用者もしくは携帯電子装置が充電システムを利用する正当な権利を有しているか否かを識別するものであって、本願発明の「機器及び機器に関連するアカウントの識別」を実行することと相違しないものである。

(イ)「前記アカウントはチャージ値を含むこと」に関して
(a)「アカウント」の意味は、上記(ア)(a)記載のとおりのものであるので、本願発明の「前記アカウントはチャージ値を含むこと」は、システムの利用者がシステムを利用する権利にチャージ値が含まれること、すなわち、システムの利用を可能とするチャージ値を有しているか否かが含まれるものであることを意味している。
(b)それに対して、引用発明は「認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば」という判断処理を行うものであるから、利用者の認証と、電子マネー残高を有しているか否かの判断とを処理するものであることは自明である。
(c)そうすると、引用発明の「認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能であれば」という判断処理が電子マネー残高を有しているか否かの判断をともなっていることは、本願発明の「前記アカウントはチャージ値を含む」ことに相当するものであり、この点においては、両者は実質的に相異するものではない。

(ウ)「受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、前記無線電力が前記機器に提供されるとき、前記チャージ値を修正すること」に関して
(a)本願発明は、「前記応答の受信があると自動的に、前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別することであって、前記アカウントはチャージ値を含むこと」、「受信した前記応答が課金の受諾を含む場合、無線電力を前記機器に提供すること、」の順で無線電力を機器に提供するものであるが、引用発明は、「第1次充電判断で充電不可でなければ、ポリシにより先行充電が開始され」、「第2次充電判断」による、認証処理、及び、電子マネーによる決済が行われる処理の後、充電を開始または先行充電を継続する処理(ステップS912)が行われるものである。
(b)ところで、引用発明における「先行充電」は、充電時間が短い場合においても、認証処理に要する時間も充電に利用するために、先行して充電を行うもの(引用文献の段落【0005】、【0006】を参照。)であるが、一般に充電装置は必ずしも、先行充電を必ず要する程のごく短時間の充電を行うものに限定されるものではない。
そうすると、先行充電を行うか否かは、認証処理や電子マネー決裁の必要性の判断処理に要する時間が、全体の充電時間に対してどれくらいの影響を与えるか等に応じて当業者が適宜選択可能な事項であるといえる。
(c)そして、引用発明において、先行充電を行うことなく、「第2次充電判断が必要である場合、利用者もしくは携帯電子装置の認証処理である、認証部による認証処理に移行する処理(ステップS909)と、認証処理に成功した場合、課金部による課金処理に移行する処理(ステップS910)と、電子マネー決済が必要か判断する処理(ステップS933)と、携帯電子装置側に電子マネーの残額を照会する処理(ステップS933→S937)と、電子マネー残額が通知され、電子マネー決済が可能」であることの判断が行われた後(本願発明における「前記機器及び当該機器に関連するアカウントを識別することであって、前記アカウントはチャージ値を含むこと、受信した前記応答が課金の受諾を含む場合」の判断が行われた後)、「電子マネーによる決済が行われる処理(ステップS940)と、充電を開始する処理(ステップS912)」(本願発明の「無線電力を前記機器に提供すること、前記無線電力が前記機器に提供されるとき、前記チャージ値を修正すること」)を実行するものとすることは当業者が適宜なし得たことである。

(エ)小括
そうすると、引用発明の「先行充電」を行わない構成として、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について検討する。
引用発明の「充電システムにおける送電装置の処理」は、情報処理に関する処理ステップであるといえ、プロセッサで処理すること、プログラム命令をあらわすデータを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体で坦持することは、情報処理の技術分野において周知慣用されていることであって、引用発明の処理ステップを当該周知慣用の坦持手段に記憶させて坦持するとともに、周知慣用の実行手段で実行するものとして、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[請求人の主張についての検討]
請求人は、平成28年4月21日付け意見書において、
「引用例の場合、識別情報の自動送信については記載がありません。つまり、受電装置が機器の識別を電力供給側である『無線電力ソース』に自動的に送信することについては何ら開示がありません。むしろ、引用例は、受電装置に関して、段落【0097】には、『図13において、携帯電子装置側の処理は、送電装置を検出した場合に開始される(ステップS801)。まず、充電処理の開始を送電装置と相互に確認する(ステップS802)。その後、電力者提供装置から電力提供者情報を通知され、利用者情報と利用者ポリシの問い合わせを受ける(ステップS803)。そして、携帯電子装置側の第1次充電判断部の判断処理に移行する(ステップS804)。』とあります。電力者提供装置は利用者情報と利用者ポリシに関する問い合わせを送信することから明らかなとおり、引用例は、本願発明の特徴である、受電装置が機器の識別を電力供給側である『無線電力ソース』に自動的に送信する構成になっておりません。」
と主張している。
しかし、そもそも本願発明は、「無線チャージに関する課金用プロセッサによって実行されるプログラム命令をあらわすデータを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」であって、「受電装置が機器の識別を電力供給側である『無線電力ソース』に自動的に送信する」旨特定されたものではない。
さらに、引用例の記載は、充電目的以外の非接触型処理動作の中で、同時に充電を実現することにより、利用者が意識せず充電できるようにすることを目的とし(段落【0004】)、充電判断の際に携帯電子装置の利用者と電力提供者の充電ポリシを用いることで、詳細な料金設定やセキュリティ設定が可能となり、利用者に明示的な充電許可を逐次得ることなく柔軟な充電が可能となる(段落【0022】)ものであるから、携帯電子装置側と、電力提供者側の双方共に、識別のための情報を自動的に送信するものということができるものである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の構成により、引用発明から予期される以上の顕著な効果が奏されるとも言えない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-13 
結審通知日 2016-06-15 
審決日 2016-06-29 
出願番号 特願2011-545370(P2011-545370)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 前田 浩
矢島 伸一
発明の名称 無線電力の配電方法  
代理人 越柴 絵里  
代理人 須田 洋之  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 近藤 直樹  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  

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