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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1321535
審判番号 不服2015-12144  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-26 
確定日 2016-11-07 
事件の表示 特願2008-293522「フィールドシーケンシャルカラーディスプレイ装置の性能を向上させるための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月20日出願公開、特開2009-186985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年11月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年11月16日 米国)に出願したものであって、平成26年7月2日付けの拒絶理由の通知に対し、平成26年10月6日に意見書が提出されたが、平成27年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年6月26日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

1 本願発明

本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「第1のゾーン及び第2のゾーン(74,76)の各々に設けられた第1の光源及び第2の光源(48、50)を有するディスプレイ装置(10)上に画像を表示するための方法であって、
前記第1のゾーン(74)の前記それぞれ第1及び第2の光源(48、50)に対応する第1及び第2のサブフレーム(58、60)を各々が有する複数のフレーム(56)を備えたビデオ信号を前記ディスプレイ装置(10)に供給する段階と、
前記複数のフレーム(56)の各々の第1のサブフレーム(58)の間の第1の持続時間で前記第1の光源(48)を動作する段階と、
前記複数のフレーム(56)の各々の第2のサブフレーム(60)の間の前記第1の持続時間と異なる第2の持続時間で前記第1のゾーン(74)の前記第2の光源(50)を動作する段階と、
前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を同期させる段階と、
を含む方法。」

2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-290124号公報(平成13年10月19日公開、以下「引用例」という。) には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラットパネルディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等に用いられるライトバルブおよびそれらを使用した液晶表示装置に関する。」

b「【0017】
まず、フィールドシーケンシャル方式における1つ目の問題点は、各フィールド期間における光源点灯時間が短く、その分、表示輝度が低下してしまう点である。すなわち、フィールドシーケンシャル方式においてその表示を行う際、例えば赤色画像を表示するフィールド期間においては、赤色表示期間の画像データ(赤画像を表示させるフィールド期間において液晶パネルに入力される画像データを意味する。以下同じ。)によって液晶パネルに画像が表示されるが、その画像書き換えが完了するまでは赤色光を照射することはできない。その理由は、通常、液晶パネルは、保持駆動されており、書き換え中に光源を点灯した場合、書き換えの終了していない表示部においては例えば前のフィールド期間の表示状態が保持されていることとなり、結果として、適正な階調の赤色画像を得ることができない。この点は、青色画像や緑色画像を表示するときも同様である。すなわち、通常フィールドシーケンシャル方式において、望むべくカラー表示を行うためには、光の照射は、パネル全体の画像書き換えが完了した後に行わなければならず、1フィールド期間内における光源点灯時間は減少し、全体としての表示輝度も低下することとなる。」

c「【0020】
このような問題を解決する方法としては、液晶パネルを幾つかのブロックに分け、各ブロック毎にRGBの光源を配置する方法(以下“光源分割表示方式”とする)が特開平5-80716号公報に提案されている。これは、各R・G・B光源を一組とし、液晶パネルのゲート線に並行するように分割された光源ユニットを有することにより、液晶パネルの表示状態(各フィールド期間)に応じて各色光源の点灯を行うものである。すなわち、液晶パネルの書き込みに同期して、光源ユニットの各色の点灯がなされることとなり、液晶パネルへの各色画像データの書き込みを待つ必要はなく、また、液晶パネルの面内において、あるフィールド期間に統一されている必要もない。さらに、この駆動方法だと、各ブロックにおいて走査電極の数は少なくなり、ある1つのブロックにおいて最初に走査される画素と最後に走査される画素との間での輝度差は少なくなる。
【0021】
図13は、上記駆動方法におけるデータ転送タイミング及び、光源点灯タイミングの一例を示すものであり、図8は、それにより得られる液晶パネルの面内輝度を示す図である。なお、ブロック数(光源分割数)は4ブロックであり、入力された画像データはYellow100%の全面表示とする。」

d「【0024】
しかしながら、光源の点灯は、光源分割領域ごとに同じになされるため、光源分割点灯領域内において、同図の(d) 及び(e) を比較しても分かるように輝度むらが発生する。なお、光源消灯時間設定を、混色防止のため設けているが、点灯時間をフィールド期間内において変更したところで、輝度むらを解消する事はできない。
【0025】
このような点は図12に示した液晶パネルでも同様ではあるが、図13(c) に示すように第一?第四領域に分けて光照射を行うため、結果として、図8に示されるように、液晶パネルにおいて光源分割ブロック毎に、輝度レベルの違う境界線の存在する表示となってしまう。このような表示の場合、光源を分割しない方式に比べ、同一面内における輝度レベルの絶対値は小さくなるものの、その境界部分が隣り合わせに並ぶことにより、違和感のある表示となってしまう。」

e 図13(a)から、「1Flame」が、「R走査」「G走査」「B走査」にそれぞれ対応する「1Field」を有する点が読み取れる。

f 図13(a)及び図13(c)から、それぞれ「R」「G」「B」光源に、「R走査」「G走査」「B走査」が対応する点が読み取れる。

g 図13(c)から、「第一領域」が「R」「G」「B」光源を有する点が読み取れる。

h 図13(c)から、
「R走査」に対応する「1Field」の期間内に、「第一領域」の「分割光源点灯タイミング」で「R」光源が点灯することと、
「G走査」に対応する「1Field」の期間内に、「第一領域」の「分割光源点灯タイミング」で「G」光源が点灯することと、
「B走査」に対応する「1Field」の期間内に、「第一領域」の「分割光源点灯タイミング」で「B」光源が点灯することが読み取れる。

i 図13(c)から、
「第一領域」の「G」光源が点灯している期間の一部と、「第三領域」の「R」光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
「第二領域」の「G」光源が点灯している期間の一部と、「第四領域」の「R」光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
「第三領域」の「G」光源が点灯している期間の一部と、「第一領域」の「B」光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
「第四領域」の「G」光源が点灯している期間の一部と、「第二領域」の「B」光源が点灯している期間の一部が重なっていることが読み取れる。

ア 上記aの「【0001】・・・本発明は・・・液晶表示装置・・・」との記載及び上記cの「【0020】・・・液晶パネルを幾つかのブロックに分け、各ブロック毎にRGBの光源を配置する・・・【0021】・・・ブロック数(光源分割数)は4ブロックであり」、上記cの「【0025】・・・図13(c) に示すように第一?第四領域に分けて光照射を行うため、結果として、図8に示されるように、液晶パネルにおいて光源分割ブロック毎に・・・」との記載から、引用例には、「液晶表示装置の液晶パネルを第一?第四領域に分け、各領域毎にRGBの光源を配置する」ことが記載されている。

イ 上記cに「【0020】・・・各R・G・B光源を一組とし、液晶パネルのゲート線に並行するように分割された光源ユニットを有することにより、液晶パネルの表示状態(各フィールド期間)に応じて各色光源の点灯を行うものである。」と記載されており、液晶パネルは画像を表示するのものであるから、引用例には、「液晶パネル上に画像を表示するための方法」が記載されている。

ウ 上記cの「【0021】図13は、上記駆動方法におけるデータ転送タイミング及び、光源点灯タイミングの一例を示すものであり、図8は、それにより得られる液晶パネルの面内輝度を示す図である。なお、ブロック数(光源分割数)は4ブロックであり、入力された画像データはYellow100%の全面表示とする。」との記載から、引用例には、「画像データを液晶パネルへ入力する」ことが記載されている。
上記e?gの記載から、引用例には「第一領域のそれぞれR、G及びB光源に対応するR走査、G走査及びB走査の1Fieldを有する1Flame」が記載されているといえる。
そして、液晶パネルへ入力される画像データにおいては、複数のFlameを備えるようにすることは常套手段であるので、引用例には、「「第一領域のそれぞれR、G及びB光源に対応するR走査、G走査及びB走査の1Fieldを各々が有する複数のFlame」を備えた画像データを液晶パネルへ入力する」ことが記載されているということができる。

エ 上記e?g及び上記hの記載から、引用例には、「複数のFlameの各々のR走査に対応する1Fieldの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでR光源が点灯することと、複数のFlameの各々のG走査に対応する1Fieldの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでG光源が点灯することと、複数のFlameの各々のB走査に対応する1Fieldの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでB光源が点灯すること」が記載されている。

オ 上記iの記載から、引用例には、「第一領域のG光源が点灯している期間の一部と、第三領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第二領域のG光源が点灯している期間の一部と、第四領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第三領域のG光源が点灯している期間の一部と、第一領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第四領域のG光源が点灯している期間の一部と、第二領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていること」が記載されている。

カ 図13に記載された「Flame」「Field」は、一般的に「フレーム」「フィールド」と表現される。

したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしカを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、「引用発明」という。)

「液晶表示装置の液晶パネルを第一?第四領域に分け、各領域毎にRGBの光源を配置し、液晶パネル上に画像を表示するための方法であって、
第一領域のそれぞれR、G及びB光源に対応するR走査、G走査及びB走査のフィールドを各々が有する複数のフレームを備えた画像データを液晶パネルへ入力することと、
複数のフレームの各々のR走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでR光源が点灯することと、
複数のフレームの各々のG走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでG光源が点灯することと、
複数のフレームの各々のB走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでB光源が点灯することと、
第一領域のG光源が点灯している期間の一部と、第三領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
第二領域のG光源が点灯している期間の一部と、第四領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
第三領域のG光源が点灯している期間の一部と、第一領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、
第四領域のG光源が点灯している期間の一部と、第二領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていることとを含む方法」

(2)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-44016号公報(平成15年2月14日公開、以下「周知例1」という。) には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0002】
【従来の技術】赤または緑または青の映像を表示し、それに連動してそれぞれの色に応じた照明を全面または背面から任意の順序で照射してカラー表示を行う色順次表示方式(フィールドシーケンシャルカラー方式)の液晶表示装置において、光源(以後バックライト)の点灯期間は、光源の発光効率によらずすべて同一としていた。この様子を図8に示した。ここで401は赤の光源の発光タイミング、402は緑の光源の発光タイミング、403は青の光源の発光タイミング、TR、TG、TBはそれぞれ赤、緑、青の発光期間であり、TR=TG=TBである。」

b「【0038】 コントローラ702には、外部より入力された映像信号を色順次表示方式に適した状態に信号処理するために、1画面分の映像信号を記憶できるフレームメモリを有しており、入力された映像信号を一旦前記フレームメモリへ蓄積する。そして、赤、緑、青の映像信号に分けて、色の順序を固定したまま順番にソースドライバへ送信する。また、それと同時にソースドライバへはクロック信号、ラッチパルス、スタートパルスなどの制御信号も送る。また、ゲートドライバへも走査に必要な制御信号を送る。この様子を図7に示した。図7において、1101が赤のバックライトの制御信号、1102が緑のバックライトの制御信号、1103が青のバックライトの制御信号、1104、1105、1106はそれぞれ液晶に電圧を書きこむ期間、液晶が書きこまれた電圧に応答する期間、バックライトを点灯して映像を表示する期間である。ここで例として赤の映像信号を書きこむ場合の動作について説明する。まず、書きこみ期間1104にて液晶パネルに赤の映像信号を書きこむ。その後、液晶が書きこまれた電圧に応答するまでの期間1105を経て、バックライト照射期間1106のタイミングで赤のバックライトを照射する。同様にして、緑、青の映像信号も処理する。このようにして、各色ごとに順次表示して、カラー表示を行う。バックライトを照射する期間は、光源の発光期間を光源の電力-発光効率特性と必要な輝度に応じて最適化すればよい。」

c 図7には、赤のバックライト照射期間、緑のバックライト照射期間、青のバックライト照射期間を、それぞれの光源ごとに異ならせることが記載されている。

上記記載から周知例1には、
「フィールドシーケンシャルカラー方式の液晶表示装置において、赤のバックライト照射期間、緑のバックライト照射期間、青のバックライト照射期間をそれぞれの光源ごとに異ならせて、光源の発光期間を、光源の電力-発光効率特性と必要な輝度に応じて最適化する技術」
が記載されているということができる。

(3)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-86081号公報(平成16年3月18日公開、以下「周知例2」という。) には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。


a「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個の異なる波長の光を発光する発光素子を順次切り替えて発光させ、人間の目が有する時間軸合成作用を利用してカラー表示を得るフィールドシーケンシャルカラー表示装置の改良に係わり、特に発光する光の白色バランス調整手段を有するカラー表示装置とその調整方法に関する。」

b「【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態であるカラー表示装置のブロック図であり、従来例である図9と同等な構成部分の説明は一部省略するが、20は本発明のカラー表示装置であり、1は光源部であって赤、緑、青の光を発光する発光ダイオード1a、1b、1cを内部に配設して光を出力し、4は液晶パネルであり前記光源部1が発光する出力光(矢印A)を入力して透過遮断制御を行い、透過光(矢印B)を出力して画像や文字を表示する。21は光源駆動回路でありその基本構成は図10の前記光源駆動回路8と類似しているが図10で示した可変抵抗VRは無く固定抵抗によって構成され、光源駆動電流6a?6cをそれぞれ出力して前記光源部1に配設される発光ダイオード1a?1cを駆動し、22は液晶駆動回路であって表示駆動信号7を前記液晶パネル4に出力して液晶パネル4を駆動する。」

c「【0037】
次に光源駆動回路21の動作を説明する。図1で示す光源駆動回路21は、図10の従来例で説明した光源駆動回路8の可変抵抗VRが固定抵抗(図示せず)に置き換わったものであるので詳細な説明は省略するが、入力信号である前記光源タイミング信号LED-R、LED-G、LED-Bが論理’0’のときは図10で示すトランジスタTrはOFFであるので発光ダイオード1a?1cには光源駆動電流6a?6cは流れず該発光ダイオード1a?1cは消灯し、光源タイミング信号LED-R、LED-G,LED-Bが論理’1’の期間は図10で示すトランジスタTrがONするので発光ダイオード1a?1cには光源駆動電流6a?6cが流れて各発光ダイオード1a?1cは点灯し、この結果、光源タイミング信号LED-R、LED-G,LED-Bのそれどれが論理‘1’となる時間が発光ダイオード1a?1cの点灯時間に等しい。
【0038】
ここで、各発光ダイオード1a?1cの発光量はその点灯時間に比例するので、例えば赤の発光ダイオード1aの点灯時間が他の点灯時間より長ければ人間の目に見える混合色は赤味を帯びた色相となり、また、緑の発光ダイオード1bの点灯時間が他の点灯時間より長ければその混合色は緑の強い色相となり、また、青の発光ダイオード1cの点灯時間が他の点灯時間より長ければその混合色は青味の強い色相となるので、それぞれの発光ダイオード1a?1cの点灯時間を調整することによって合成された光の白色バランスを調整することが出来る。」

d 図10には、光源タイミング信号LED-R、LED-G,LED-Bが論理’1’の期間が、それぞれ光源ごとに可変とすることが記載されている。

上記記載から周知例2には、
「カラー表示を得るフィールドシーケンシャル表示装置の液晶パネルにおいて、発光ダイオード1a?1cの点灯時間をそれぞれの光源ごとに可変とし、光源の点灯時間を調整することによって白色バランスを調整する技術」
が記載されているということができる。

3 対比

本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「液晶パネル」、「領域」、「フィールド」、「画像データ」は、本願発明の「ディスプレイ装置」、「ゾーン」、「サブフレーム」、「ビデオ信号」にそれぞれ相当する。

(2)
a 引用発明は「複数のフレームの各々のR走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでR光源が点灯することと、複数のフレームの各々のG走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでG光源が点灯することと、複数のフレームの各々のB走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでB光源が点灯すること」とを含むものであって、フィールドの間の分割光源点灯タイミング時間で第一領域の光源が点灯するので、引用発明の「第一領域」は、本願発明の「第1のゾーン」に相当する。

b 引用発明の「第一領域」は、本願発明の「第1のゾーン」に相当するのであるから、引用発明の「第二領域」、「第三領域」及び「第四領域」のいずれかの領域が、本願発明の「第2のゾーン」に相当する。

c 引用発明の「RGBの光源」のうちいずれか一色の「光源」が、本願発明の「第1の光源」に相当し、他の一色の「光源」が、本願発明の「第2の光源」に相当する。

d 上記a?cから、引用発明の「液晶パネルを第一?第四領域に分け、各領域毎にRGBの光源を配置し、液晶パネル上に画像を表示するための方法」は、
本願発明の「第1のゾーン及び第2のゾーン(74,76)の各々に設けられた第1の光源及び第2の光源(48、50)を有するディスプレイ装置(10)上に画像を表示するための方法」に相当する。

(3)
a 上記(2)aより、引用発明の「第一領域」は、本願発明の「第1のゾーン」に相当する。

b 引用発明の「R、G及びBの光源に対応するR走査、G走査及びB走査のフィールド」のうちいずれか一色の「光源」及び「走査のフィールド」が、本願発明の「第1の光源」及び「第1のサブフレーム」に相当し、他の一色の「光源」及び「走査のフィールド」が、本願発明の「第2の光源」及び「第2のサブフレーム」に相当する。

d 上記a、bから、引用発明の「第一領域のそれぞれR、G及びB光源に対応するR走査、G走査及びB走査のフィールドを各々が有する複数のフレームを備えた画像データを液晶パネルへ入力すること」は、
本願発明の「前記第1のゾーン(74)の前記それぞれ第1及び第2の光源(48、50)に対応する第1及び第2のサブフレーム(58、60)を各々が有する複数のフレーム(56)備えたビデオ信号を前記ディスプレイ装置(10)に供給する段階」に相当する。

(4)
a 上記(2)aより、引用発明の「第一領域」は、本願発明の「第1のゾーン」に相当する。

b 上記(3)bより、引用発明の「R、G及びBの光源」及び「R走査、G走査及びB走査に対応するフィールド」のうちいずれか一色の「光源」及び「走査に対応するフィールド」が、本願発明の「第1の光源」及び「第1のサブフレーム」に相当し、他の一色の「光源」及び「走査に対応するフィールド」が、本願発明の「第2の光源」及び「第2のサブフレーム」に相当する。

c 引用発明の「光源が点灯する」ことは、本願発明の「光源を動作する」ことに相当する。

d 引用発明の「分割光源点灯タイミング」と、本願発明の「第1の持続時間」及び「第2の持続時間」とは、光源の「動作時間」であることで共通する。

e 上記a?dから、引用発明の「複数のフレームの各々のR走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでR光源が点灯することと、複数のフレームの各々のG走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでG光源が点灯することと、複数のフレームの各々のB走査に対応するフィールドの期間内に、第一領域の分割光源点灯タイミングでB光源が点灯すること」と、
本願発明の「前記複数のフレーム(56)の各々の第1のサブフレーム(58)の間の第1の持続時間で前記第1の光源(48)を動作する段階と、前記複数のフレーム(56)の各々の第2のサブフレーム(60)の間の前記第1の持続時間と異なる第2の持続時間で前記第1のゾーン(74)の前記第2の光源(50)を動作する段階」とは、
「前記複数のフレーム(56)の各々の第1のサブフレーム(58)の間の動作時間で前記第1の光源(48)を動作する段階と、前記複数のフレーム(56)の各々の第2のサブフレーム(60)の間の動作時間で前記第1のゾーン(74)の前記第2の光源(50)を動作する段階」である点で共通する。

(5)
a 上記(2)a,bより、引用発明の「第一領域」は、本願発明の「第1ゾーン」に相当し、引用発明の「第二領域」、「第三領域」及び「第四領域」のいずれかの領域が、本願発明の「第2のゾーン」に相当する。

b 上記(2)cより、引用発明の「R光源」「G光源」「B光源」のうちいずれか一色の「光源」が、本願発明の「第1の光源」に相当し、他の一色の「光源」が、本願発明の「第2の光源」に相当する。

c 上記(4)dより、引用発明の「光源が点灯している期間」と、本願発明の「第1の持続時間」及び「第2の持続時間」とは、「光源の動作時間」である点で共通する。

d 引用発明は「第一領域のG光源が点灯している期間の一部と、第三領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第二領域のG光源が点灯している期間の一部と、第四領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第三領域のG光源が点灯している期間の一部と、第一領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第四領域のG光源が点灯している期間の一部と、第二領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていること」とを含むものであって、必ず任意の領域で一の光源が点灯している期間の一部と、他の領域で他の光源が点灯している期間の一部が重なっているということができる。

e 本願発明は「第1のサブフレーム(58)の間の第1の持続時間で前記第1の光源(48)を動作する段階」とあるので、本願発明の「第1の持続時間」は、第1の光源(48)を動作する時間である。

f 本願発明の「前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を同期させる」ことについて、本願明細書には「【0030】・・・LCDパネル68の上側セクション74及びバックライト70の上側群88が、他のセクション及び群が赤色サブフレーム58下で依然として動作している間に、緑色及び青色サブフレーム60及び62によって指示されるような動作を継続して実行することである。」との記載をされており、
「前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を同期させる」は、少なくとも「第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1ゾーンの第1の持続時間の発生を生じさせる」ことに対応するものということができる。
上記a?eから、引用発明の「第一領域のG光源が点灯している期間の一部と、第三領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第二領域のG光源が点灯している期間の一部と、第四領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第三領域のG光源が点灯している期間の一部と、第一領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていることと、第四領域のG光源が点灯している期間の一部と、第二領域のB光源が点灯している期間の一部が重なっていること」と、
本願発明の「前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を同期させる段階」は、
「前記第2のゾーンの第2の光源の動作の動作時間の発生が生じている間、第1の光源の動作時間の発生を生じさせる段階」である点で共通する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「第1のゾーン及び第2のゾーン(74,76)の各々に設けられた第1の光源及び第2の光源(48、50)を有するディスプレイ装置(10)上に画像を表示するための方法であって、
前記第1のゾーン(74)の前記それぞれ第1及び第2の光源(48、50)に対応する第1及び第2のサブフレーム(58、60)を各々が有する複数のフレーム(56)備えたビデオ信号を前記ディスプレイ装置(10)に供給する段階と、
前記複数のフレーム(56)の各々の第1のサブフレーム(58)の間の動作時間で前記第1の光源(48)を動作する段階と、
前記複数のフレーム(56)の各々の第2のサブフレーム(60)の間の動作時間で前記第1のゾーン(74)の前記第2の光源(50)を動作する段階と、
前記第2のゾーンの第2の光源の動作の動作時間の発生が生じている間、第1の光源の動作時間の発生を生じさせる段階と、
を含む方法。」

<相違点>
(ア)光源の動作時間について、本願発明は、第1の光源が「第1の持続時間」で、第2の光源が「第1の持続時間と異なる第2の持続時間」であるのに対して、引用発明は、R光源、G光源、B光源の分割光源点灯タイミングの記載があるが、光源ごとの分割光源点灯タイミングの持続時間が不明である点。

(イ)第2のゾーンの第2の光源の動作の動作時間の発生が生じている間、第1の光源の動作時間の発生を生じさせる段階について、本願発明は、前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を「同期させる」のに対して、引用発明は、「同期」との特定がない点。

4 判断

<相違点>(ア)について
フィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置(液晶パネル)において、R光源、B光源、G光源の点灯時間をそれぞれの光源ごとに異ならせ、発光特性や必要な輝度に応じて最適化することは周知技術である(周知例1(上記2(2))、周知例2(上記2(3)))。
したがって、フィールドシーケンシャル方式の液晶パネルに関する引用発明においても(上記2(1)b)、発光特性や輝度の最適化のために、上記周知技術を適用し、R光源、G光源、B光源の分割光源点灯タイミングの持続時間を、それぞれの光源ごとに異ならせることにより、第1の光源が「第1の持続時間」、第2の光源が「第1の持続時間と異なる第2の持続時間」と規定することは、当業者が容易になし得る事項である。

<相違点>(イ)について
引用発明は、必ず任意の領域で一の光源が点灯している期間の一部と、他の領域で他の光源が点灯している期間の一部が重なっているので(上記3(5)d)、
引用発明において、上記<相違点>(ア)で検討したように、光源の動作時間を光源ごとに異ならせ、第1の光源が「第1の持続時間」、第2の光源が「第1の持続時間と異なる第2の持続時間」としたものにおいても、
第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の期間の一部と、第1ゾーンの第1の持続時間の期間の一部が重ならせることは、当業者が容易になし得る事項である。
そして、請求人は、平成26年10月6日付けの意見書において「「前記第2のゾーンの第2の光源の動作の第2の持続時間の発生と、前記第1のゾーンの前記第1の光源の動作の第1の持続時間の発生とを同期させる」との記載については、「第1の持続時間が続いている時間と第2の持続時間が続いている時間が一部重なっていること」を表しています。」(3.(2))と主張しており、
第2の持続時間の期間の一部と、第1の持続時間の期間の一部を重ねたものにおいて、第2の持続時間の発生が生じている間、第1の持続時間の発生を「同期させる」とすることは、格別なことではない。

したがって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成とすることは格別なことでない。

そして、請求人が、平成27年8月5日付けの手続補正書(方式)で主張する「赤及び緑のサブフレーム58及び60の発生の同期は、2つの色が一度に発せられ、かくしてディズプレイ全体の輝度を増大させます。」等の効果は、引用発明の「第一領域のG光源が点灯している期間の一部と、第三領域のR光源が点灯している期間の一部が重なっている」ことなどから、当業者が十分に予測できたものであり、
また、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-13 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-28 
出願番号 特願2008-293522(P2008-293522)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 健二西島 篤宏  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 須原 宏光
大和田 有軌
発明の名称 フィールドシーケンシャルカラーディスプレイ装置の性能を向上させるための方法及びシステム  
代理人 夫馬 直樹  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  

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