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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1321573
審判番号 不服2014-21581  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2016-11-09 
事件の表示 特願2012-513872「繊維強化樹脂ボルトおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月9日国際公開、WO2010/140845、平成24年11月15日国内公表、特表2012-528746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年6月3日(パリ条約に基づく優先権主張 2009年6月3日 大韓民国(KR))を国際出願日とする特許出願であって、平成25年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日に意見書及び特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたが、平成26年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年12月11日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたので、特許法162条所定の審査がされた結果、平成27年3月23日付けで同法164条3項所定の報告がされたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成26年10月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成26年10月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容

本件補正は、特許請求の範囲を変更する補正であって、本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は、それぞれ以下のとおりである。

・ 本件補正前(請求項2?9の記載省略)

「【請求項1】
第1の強化繊維および合成樹脂を一緒に引抜成形して製造され、ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材の表面に、第2の強化繊維および前記第2の強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂を含むプリプレグを巻回するステップと、
前記プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップと、
前記繊維強化樹脂丸棒の表面にネジ山を形成するステップと、
を含む繊維強化樹脂ボルトの製造方法。」

・ 本件補正後(請求項2?4の記載省略)

「【請求項1】
第1の強化繊維および合成樹脂を一緒に引抜成形して製造され、ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材の表面に、第2の強化繊維および前記第2の強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂を含むプリプレグを巻回するステップと、
前記プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップと、
切削具を用いて、前記の熱硬化させたプリプレグの外表面にネジ山を形成するステップと、
を含む繊維強化樹脂ボルトの製造方法であって、
前記プリプレグの熱硬化ステップが、前記プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである、前記製造方法。」

2 本件補正の目的

本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「繊維強化樹脂丸棒の表面にネジ山を形成するステップ」について「切削具を用いて、前記の熱硬化させたプリプレグの外表面にネジ山を形成するステップ」へ補正すること(補正事項イ)、及び、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップ」における「プリプレグを熱硬化するステップ」について、「プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである」と特定すること(補正事項ロ)である。
当該補正事項イについて検討すると、補正前のネジ山を形成するステップにおいては、何を利用して行うかを特定されていなかったものが、補正により「切削具を用いて」行われる点が特定されるとともに、ネジ山を形成する部位が「繊維強化樹脂丸棒の表面」であったものが、補正により繊維強化樹脂丸棒を形成している「熱硬化させたプリプレグの外表面」に特定されている。
補正事項ロについて検討すると、補正前のプリプレグを熱硬化するステップにおいては、どのように硬化させるのかを特定されていなかったものが、補正により「プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである」と特定されている。
しかも、補正の前後で、請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらないから、当該補正事項イ及びロは、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

なお、本件補正の請求項1についてする補正は、いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。

3 独立特許要件違反の有無について

上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。下記4)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ、本件補正は当該要件に違反すると判断される。

すなわち、本願補正発明は、下記引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献 : 特公昭48-37932号公報

以下、特許を受けることができない理由を、下記5において詳述する。

なお、引用文献は、平成25年7月23日付け拒絶理由通知における引用文献1である。

4 本願補正発明

本願補正発明は、平成26年10月24日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

本願補正発明
「第1の強化繊維および合成樹脂を一緒に引抜成形して製造され、ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材の表面に、第2の強化繊維および前記第2の強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂を含むプリプレグを巻回するステップと、
前記プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップと、
切削具を用いて、前記の熱硬化させたプリプレグの外表面にネジ山を形成するステップと、
を含む繊維強化樹脂ボルトの製造方法であって、
前記プリプレグの熱硬化ステップが、前記プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである、前記製造方法。」

5 本願補正発明が特許を受けることができない理由

(1) 刊行物
刊行物1:特公昭48-37932号公報(平成25年7月23日付け拒絶理由通知における引用文献1)
刊行物2:特開2000-301612号公報(周知技術を示す文献:平成25年7月23日付け拒絶理由通知における引用文献2)
刊行物3:特開昭59-158223号公報(周知技術を示す文献:平成26年6月17日付け拒絶査定において提示された文献)
刊行物4:特開昭61-114840号公報(周知技術を示す文献:平成26年6月17日付け拒絶査定において提示された文献)
刊行物5:特開平10-44254号公報(周知技術を示す文献:平成26年6月17日付け拒絶査定において提示された文献)
刊行物6:特開2003-201800号公報(周知技術を示す文献:平成26年6月17日付け拒絶査定において提示された文献)

(2) 刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特公昭48-37932号公報(以下、単に「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付した。)

ア 「樹脂を含浸せしめたロービングを長手方向に配した芯材の外周に樹脂を含浸せしめたグラス・クロスを被覆し、一体的に成形硬化し、外周に雄ネジ部を設けて成る合成樹脂製ボルト。」(特許請求の範囲)

イ 「本発明は合成樹脂製ボルト、特に硝子繊維補強樹脂体で構成したボルトに関するものである。
海水や酸等の腐蝕性雰囲気で使用される各種機械、器具を組み立てるのに、耐蝕性のボルトが広く使用されている。
例えば、ポリエステル樹脂、ベークライト、塩化ビニール、ポリカーボネート等の合成樹脂のみにより構成されたものが提案されているが、これらはいづれも剪断応力が低く、機械的強度に乏しい欠点がある。
そして、強度を保たせるために芯部に例えば鉄等の強度の強い金属材を用い、外皮に合成樹脂を積層したボルトも提案されているが、芯部と外皮とのなじみが悪く、この部分で剥離が生じ、機械的強度も下り、耐蝕性にも乏しくなる欠点がある。
本発明は前記の点に鑑み、芯材と外皮とを異なる強化合成樹脂硝子繊維いわゆるFRPで構成することにより、剥離しがたく強度があり、且つ耐腐蝕性を有する合成樹脂製ボルトを提供するのを目的とする。」(1頁左欄17行?36行)

ウ 「本発明の構成要旨は、樹脂を含浸せしめロービングを長手方向に配した芯材の外周に、樹脂を含浸せしめクロスを被覆して外皮と一体成形し、外皮に雄ネジ部を設けて成る合成樹脂製ボルトにある。
本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明すると、ほぼ円形に揃えた硝子繊維のロービングにポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂を含浸せしめた芯材1(以下FRPグラス・ロービングの芯材1と称す)の外周に、硝子繊維製目抜平織クロスにポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂を含浸せしめたグラス・クロス2(以下FRPグラス・クロス2と称す)を何層にも捲き込で所定径の外皮3を形成し、これを熱硬化させて芯材1と一体成形する。その後、両端をネジ切りして雄ネジ部4、4′を設ける。」(1頁左欄37行?右欄15行)

エ 「本発明は、前記のように構成したもので、芯材1にロービングを用いているので、剪断応力が強大である。又、外皮3には目抜平織のFRPグラス・クロスを用いているので、ネジ切りの際に繊維が切断されにくく、ネジ部が破損する虞れがない。又、芯材1と外皮3とをFRPで構成するため、成形の際、両者がよくなじみ剥離することがなく十分な強度を発揮する。」(1頁右欄29行?36行)

オ 「

」(第1?3図)

本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開2000-301612号公報(以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

カ 「【請求項1】筒体の内側中空部とほぼ同じ形状をなすマンドレルを用意し、
前記マンドレルの外周面上にマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維プリプレグを巻付け、
半径方向外周側に向って凸形状でない部分または曲率半径が大きい曲面部分に熱膨張性の補助型をあてがい、
補助型の外側から熱収縮テープを巻装して前記マトリックス樹脂を加熱硬化させる、
ことを特徴とする筒体の製造方法。
【請求項2】マンドレルに巻付けられた強化繊維プリプレグの上から熱収縮テープを巻装し、その外側に補助型をあてがうことを特徴とする請求項1に記載の筒体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1、2)

キ 「【従来の技術】中空の筒体を合成樹脂によって成形する一般的な方法は、金型を用いた射出成形である。すなわち筒体の断面形状またはその半分の形状のキャビティを形成した金型の上記キャビティ内に溶融樹脂を射出して硬化させるものである。
・・・
円形の筒体を強化繊維プリプレグによって成形する別の方法として、マンドレルを用いた方法が提案されている。この方法は円形のマンドレルの外周面上にプリプレグを巻付け、このプリプレグの外側に熱収縮テープを巻装して加熱硬化させるものである。」(段落【0002】?【0004】)

ク 「マンドレルを用いて熱収縮テープでマンドレルに巻付けられた強化繊維プリプレグを押付けるようにする成形方法は、複雑な金型を必要としない利点がある。・・・」(段落【0007】)

ケ 「本発明の好ましい態様は、断面形状が直線または直線に近い曲率半径が大きな円弧と該円弧より曲率半径が小さなと円弧とから成る異形断面の筒体を繊維強化複合材料によって製造する方法である。すなわちマンドレルに強化繊維プリプレグである一方向プリプレグまたは強化繊維織物プリプレグを積層した後に、熱収縮テープをこのプリプレグ上に直接巻回する。そしてこの後に熱膨張性の補助型を上記熱収縮テープを巻装した上からあてがうようにする。このときに補助型の外周側が凹がない凸の曲面を構成するようにする。より好ましくは補助型の外周面がほぼ円形となるようにする。そしてこの後にまた熱収縮テープを巻装する。そしてこのような状態において上記強化繊維プリプレグに含浸されているマトリックス樹脂を加熱硬化させることによって、マンドレルの外径が内径となるような筒体が製造されることになる。」(段落【0017】)

本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開昭59-158223号公報(以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

コ 「又、近年米国において、ガラス繊維ロービングの8000 Tex 前後のロービングをまとめ、樹脂を含浸させ、加熱金型を通して、引き抜いて作製した、いわゆる引き抜き不形の丸棒の表面に、ガラス繊維を1”?2”にカットして、マット状にしたチョツプドストランドマットを巻きつけ、再度引き抜くか、又はプレス成形して、いわゆる2重構造のロツドを作製し、このチョツプドストランドマットの層にネジ切を施したボルトが登場した。
従来FRP製のボルトの最大の問題点は、ネジ山でガラス繊維が寸断され、特にガラス長繊維がボルトの軸方向に走っている場合は、これにネジ山加工を施すとガラス繊維が寸断されるため、ネジ山が欠けてしまう点にあった。この欠点を克服するために、縦横に糸の入ったヤーンクロスを使用したり、又は、先の米国における場合のように、ガラス繊維をカットしたチョツプドストランド層を作製したり、又はネジ山のピッチに合せ軸心のFRPロツドの上に長繊維を巻きつけて硬化させ、しかる後にネジ加工を施す等の手段が講じられて来た。」(2頁右上欄5行?左下欄5行)

本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開昭61-114840号公報(以下、「周知文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

サ 「母材1が中実の棒状体である場合には、母材1は、たとえば、樹脂含浸繊維を引抜きダイス中を通過させて引き抜いた後、樹脂含浸繊維をさらにフィラメントワインディング法により巻き付け、オーブンにて加熱硬化させることにより得られる。」(2頁右上欄17行?左下欄2行)

本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開平10-44254号公報(以下、「周知文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

シ 「一方、肉厚物の別な引抜成形法としては、芯部を半硬化後被覆層を配し、引きつづいて一体に熱硬化する方法が特開平7-32497号公報に開示されている。また、特開平2-248559号公報及び特開平4-89346号公報にはこれら特許請求の範囲に記載されている事項の後半部を除けば前記公開公報に開示されている事項に記載されている事項が提案されている。」(段落【0003】)

本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特開2003-201800号公報(以下、「周知文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

ス 「必要数の複数個の連続繊維巻束6(図では2本のみ示す)から引き出された第1の連続繊維7は、液状の熱硬化性樹脂材料が入った含浸槽8を通過することで熱硬化性樹脂材料が含浸される。熱硬化性樹脂材料が含浸された第1の連続繊維7の先端は、ローラ10により駆動され図面を右側に進行する軸状のマンドレル9に固定されている。第1の連続繊維7は、マンドレル9の進行により引き出され、ガイドプレート11によって、マンドレル9の周囲にその軸方向に配向するように引きそろえられる。マンドレルの軸方向に引きそろえられた第1の連続繊維7は、ヒータ12で加熱される。これにより、軸方向に配向する連続繊維を含んだ繊維強化樹脂からなる中空管形状の内層13が引き抜き成形される。引き抜き成形された内層13は、ヒータ12の温度調整により少なくとも部分硬化の状態に保たれている。部分硬化の状態とは、内層13のマトリックスをなす樹脂材料のべたつきが解消されているが、未だ可塑性を有する状態を指す。このような状態であれば、樹脂材料は未だ架橋反応が可能であり、内層13の外部表面に中間層を形成し、その後加熱した際に、中間層のマトリックスをなす樹脂材料との間で架橋反応を行い、両層が一体的に結合する。この一方で、内層13は自立で中空管形状を維持でき、その外側に中間層を形成するのに好都合である。」(段落【0052】)

(3)引用文献に記載された発明
引用文献には、上記(2)ア?オ、特にウの記載からみて、
「ほぼ円形に揃えた硝子繊維のロービングにポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂を含浸せしめた芯材の外周に、硝子繊維製目抜平織クロスにポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂を含浸せしめたグラス・クロスを何層にも捲き込で所定径の外皮を形成し、これを熱硬化させて芯材と一体成形し、その後、両端をネジ切りして外皮に雄ネジ部を設ける、合成樹脂製ボルトの製造方法。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(4)本願補正発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「硝子繊維のロービング」、「硝子繊維製目抜平織クロス」は、それぞれ、本願補正発明の「第1の強化繊維」、「第2の強化繊維」に相当する。
引用発明における芯材に含浸せしめる「ポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂」、硝子繊維製目抜平織クロスに含浸せしめる「ポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂」は、それぞれ、本願補正発明の「合成樹脂」、「熱硬化性樹脂」に相当することは明らかである。
引用発明における「合成樹脂製ボルト」は、硝子繊維と一体に製造されているものであるから、本願補正発明の「繊維強化樹脂ボルト」に相当する。
引用発明における「ほぼ円形に揃えた硝子繊維のロービングにポリエステル、エポキシ等適宜な合成樹脂を含浸せしめた芯材」は、「樹脂を含浸せしめたロービングを長手方向に配した」(上記(2)ア)との記載及び図2(上記(2)オ)から、本願補正発明における「ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材」に相当する。
引用発明における「グラス・クロス」は、当業者の技術常識から、本願補正発明の「プリプレグ」に相当する。
引用発明における「グラス・クロスを何層にも捲き込で所定径の外皮を形成」する工程は、本願補正発明の「プリプレグを巻回するステップ」に相当する。
引用発明における「これを熱硬化させて芯材と一体成形」されたものは、本願補正発明の「繊維強化樹脂丸棒」に相当するから、当該一体成形する工程は、本願補正発明の「プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップ」に相当する。
引用発明における「両端をネジ切りして外皮に雄ネジ部を設ける」ことは、引用発明の「外皮」は、グラス・クロス(本願補正発明の「プリプレグ」)を何層にも巻き込で一体成形されたものであるから、本願補正発明の「熱硬化させ」た「プリプレグの外表面にネジ山を形成する」ことに相当する。
さらに、引用発明の「雄ネジ部」は、「ネジ切りして」設けられている(上記(2)ウ)から、引用発明においても、本願補正発明と同様に「切削具を用いて」ねじ山が形成されていることは明らかである。
そうすると、両者は、

「ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材の表面に、第2の強化繊維および前記第2の強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂を含むプリプレグを巻回するステップと、
前記プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップと、
切削具を用いて、前記の熱硬化させたプリプレグの外表面にネジ山を形成するステップと、
を含む繊維強化樹脂ボルトの製造方法。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
芯材に関し、本願補正発明においては「第1の強化繊維および合成樹脂を一緒に引抜成形して製造され」と特定するのに対して、引用発明は、芯材はグラス・クロスと一体成形されるものであって、その製造方法について特定がない点。

<相違点2>
プリプレグの熱硬化ステップに関して、本願補正発明においては「プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである」と特定するのに対して、引用発明はこの点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。

相違点1について
この出願の優先日前の当業者にとって、樹脂製ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた芯材の製造方法として、強化繊維及び合成樹脂を一緒に引抜成形して製造することは、周知の製造方法であった(要すれば、上記周知文献2,3の上記(2)コ、サ参照。)。そして、引抜成形には、軸方向に沿って一方向に引揃えられた繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させ、金型を通すことで半硬化又は硬化(すなわち、完全硬化させるもののみを意味するもではない。)させるものである(要すれば、上記周知文献4,5の上記(2)シ、ス参照。)。
してみれば、明記のない芯材の製造方法として、当該周知の製造方法を採用することは当業者において想到容易である。また、そのことにより、格別な効果が奏されるとも認められない。

相違点2について
引用文献には、グラス・クロス(プリプレグ)の熱硬化ステップに関して、どのように硬化させるかについての記載はないが、引用発明は、芯材にグラス・クロス(プリプレグ)を巻いて熱硬化させて芯材に一体成形しているから、芯材とプリプレグを加熱して硬化が行われているものであることは明らかである。ここで、この出願の優先日前の当業者にとって、芯体の外周に巻かれたプリプレグを硬化させる方法として、プリプレグの周りを熱収縮フィルムで被覆し、当該熱収縮フィルム及びプリプレグを加熱して行うことは周知であった(上記周知文献1の上記(2)カ?ケ参照。)。
してみれば、明記のないグラス・クロスと芯材の一体成形(硬化)の方法として、当該周知の方法を採用することは当業者において想到容易である。
また、熱収縮フィルムが熱により収縮しながら熱硬化されるのであるから、熱収縮フィルムを利用して硬化させることでプリプレグが芯材に強固に一体的に貼り付けられることになるのは当業者において自明な事項であるし、周知文献1には、熱収縮フィルムを利用した硬化をおこなうことにより「複雑な金型を必要としない利点がある」(上記(2)ク)ことが記載されているから、相違点2に係る本願補正発明の効果も当業者の予測の範囲内といえ、格別な効果が奏されるとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(5)本願補正発明の効果に関する請求人の主張の検討
審判請求人は、審判請求書において、
「引用文献1に記載の発明のように芯材とグラス・クロスとを一体成形する方法の場合には、・・・芯材1及び外皮3を熱硬化する過程で、樹脂の流動によって一方向に配向していた芯材1の繊維が乱れる恐れがあります。したがって、繊維の配向が乱れることによって、「合成樹脂製ボルト」の成形後に、そのボルトが長手方向に曲がる欠点が生じてしまいます。一方、本願発明方法では、芯材を予め引抜成形して硬化させておき、次の工程でプリプレグを硬化させていますので、上記の欠点は生じません。」と主張している。

そこで、上記主張について検討する。
芯材を引抜成形することにより芯材に配向されている繊維が固定されることは、当業者において当然の効果にすぎないから、請求人の主張する効果は、引抜成形を採用することでの当業者が予測可能な効果であって、格別なものとはいえない。
なお、本件補正発明は、「第1の強化繊維および合成繊維を一緒に引抜成形して製造され、ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材」と特定されているのみであって、引抜成形後の硬化状態は特定されておらず、引抜成形は完全硬化させるものに限られないから、請求人の主張に係る発明の効果は、特許請求の範囲の記載に基づかないものともいえる。

(6)まとめ
本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 補正の却下の決定のむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成26年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成25年10月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「第1の強化繊維および合成樹脂を一緒に引抜成形して製造され、ボルトの軸方向に沿って一方向に引揃えられた前記第1の強化繊維および前記第1の強化繊維に含浸された前記合成樹脂を含む芯材の表面に、第2の強化繊維および前記第2の強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂を含むプリプレグを巻回するステップと、
前記プリプレグを熱硬化させて繊維強化樹脂丸棒を製造するステップと、
前記繊維強化樹脂丸棒の表面にネジ山を形成するステップと、
を含む繊維強化樹脂ボルトの製造方法。」

2 引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特公昭48-37932号公報及び特開2000-301612号公報の記載事項及び引用発明は、上記第2の5(2)及び(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記第2の2で述べたとおり、本願補正発明における「ネジ山を形成するステップ」及び「プリプレグを熱硬化するステップ」について、前者について「切削具を用いて」を限定することをなくすとともに「熱硬化させたプリプレグの外表面に」をその上位概念である「繊維強化樹脂丸棒の表面に」とし、後者については「プリプレグの周縁に熱収縮フィルムを巻回し、前記熱収縮フィルムおよび前記プリプレグを加熱して行われるものである」と限定することをなくしたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2の5(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-10 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-28 
出願番号 特願2012-513872(P2012-513872)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深谷 陽子  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大島 祥吾
菊地 則義
発明の名称 繊維強化樹脂ボルトおよびその製造方法  
代理人 森田 憲一  
代理人 山口 健次郎  
代理人 山口 健次郎  
代理人 森田 憲一  
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