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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1321594
審判番号 不服2015-15554  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-21 
確定日 2016-11-09 
事件の表示 特願2012-541017「多孔性フィルム付きメンブレンバイオセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 3日国際公開、WO2011/065751、平成25年 4月11日国内公表、特表2013-512429〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月24日(パリ条約による優先権主張:平成21年11月24日 韓国,平成22年11月24日 韓国)を国際出願日として出願された外国語特許出願であって、平成26年8月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月14日付けで拒絶査定がなされ、その謄本は同月21日に請求人に送達された。
これに対し、平成27年8月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年8月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年8月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正(下線は補正箇所を示す。)する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)をその一部に含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10?5000μmであり、さらに各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサー。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、前記多孔性フィルム上に信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布された接合体パッドが、前記接合体パッド上に分析対象物質の異物質を取り除く役割をするサンプルパッドがそれぞれさらに形成されており、前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10?5000μmであり、さらに各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーであって、前記メンブレンバイオセンサーに用いられる試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含むことを特徴とするメンブレンバイオセンサー。」(下線は、本件補正による補正箇所を示す。)

2 本件補正の適法性についての検討
(1)上記1(2)の本件補正後の請求項1に係る発明について
上記1(2)の発明特定事項によれば、本件補正後の請求項1に係る発明は、
ア 「メンブレンの上に多数の孔を有する多孔性フィルム、その上に接合体パッド、その上にサンプルパッドが形成されたメンブレンバイオセンサー」であること、
イ 接合体パッドは、「信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布され」たものであること、
ウ サンプルパッドは、「分析対象物質の異物質を取り除く役割」をするものであること、
エ 試料は、「分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含む」ものであること、
が、それぞれ特定されているものと認められるところ、当該アないしエによれば、本件補正後の請求項1に係る発明は、「信号発生物質」又は「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が塗布された「接合体パッド」を備えるものであって、かつ用いられる「試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含む」「メンブレンバイオセンサー」の発明が包含されるものであると認めることができる。

(2)特許法第184条の4第1項に規定する国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)、請求の範囲の翻訳文及び国際出願日における図面(以下、「本願当初明細書等」という。)に記載された事項
本願当初明細書等には、「信号発生物質」、「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」に関して、つぎの事項が記載されている。(下線は、強調のため、当審により付加したもの。)
ア 「【0015】
本発明は、他の観点において、レセプターが固定されているメンブレン上に多孔性フィルムが付いており、前記多孔性フィルム上に接合体パッドが形成されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサーに関するものである(図2)。」
イ 「【0027】
本発明において、前記メンブレンバイオセンサーに使用される試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体をさらに含むことを特徴とし得る。
【0028】
つまり、本発明のメンブレンバイオセンサーに使用される試料は、例えば、分析対象物質が含まれたり含まれない任意の試料であり得、このような分析対象物質が含まれたり含まれない試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が混合された試料でもあり得る。前者の場合、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体は、試料と別途に試料注入後にメンブレンバイオセンサーに注入してもよく、接合体パッド又はサンプルパッドに塗布した後、乾燥させて利用してもよい。後者の場合は、別途の接合体パッド又はサンプルパッドを用いずメンブレン及び多孔性フィルムだけで構成されたバイオセンサーに適用でき、試料内で予め分析対象物質-分析対象物質に選択的に結合する物質-信号発生物質の接合体が生成されてメンブレン上に固定されたレセプターと選択的に結合することにより、分析対象物質の検出ができる。
【0029】
前記の「分析対象物質に選択的に結合する物質」は、分析対象物質と特異的な結合反応をする物質であって、例えば、抗体、抗原、酵素、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、PNA(peptide nucleic acids)及びアプタマー(aptamer)で構成された群から選ばれ得る。前記の「分析対象物質に選択的に結合する物質」は、バイオセンサーのメンブレンに固定されたレセプターと同一な物質でもよく、レセプターとは相違する物質でもよい。
【0030】
本発明において、前記信号発生物質は、金属ナノ粒子、量子ドット(quantum dot)ナノ粒子、磁気ナノ粒子、酵素、酵素基質、酵素反応生成物質、吸光物質、蛍光物質又は発光物質であることを特徴とし得る。
【0031】
前記信号発生物質が金属ナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による金属ナノ粒子の色変化を通じて分析対象物質を検出でき、メンブレン上でレセプターに選択的に結合された分析対象物質と金属ナノ粒子の結合体の吸光度、電気伝導度等を測定することにより分析対象物質を定量的に分析することもできる。このような金属ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子等であり得るが、これに制限されるのではない。
【0032】
前記信号発生物質が量子ドットナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による量子ドットナノ粒子の蛍光を通じて分析対象物質を検出できる。
【0033】
前記信号発生物質が磁気ナノ粒子の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による磁気場の変化を通じて分析対象物質を検出できる。
【0034】
前記信号発生物質が、酵素、酵素基質又は酵素反応生成物質の場合は、レセプターと分析対象物質の選択的な反応によって分析対象物質又はレセプターと前記酵素、酵素基質又は酵素反応生成物質が反応して酸化還元反応等のような酵素反応を起こすことになるが、このとき前記酵素反応による生成物の吸光、蛍光、発光等を測定することにより、分析対象物質を検出できる。このような酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等であり得るが、これに制限されるのではなく、酵素基質は、例えば、グルコース、過酸化水素等であり得るが、これに制限されるのではない。
【0035】
これ以外にも、前記信号発生物質として当業界に公知の吸光物質、蛍光物質又は発光物質を使用でき、具体的な種類は当業者によって適切に選択され得る。本発明の一実施例によると、ルミノール(luminol)を使用できるが、これに制限されるのではない。
【0036】
本発明において分析対象物質が蛋白質抗原の場合、レセプターとして前記蛋白質に選択的な抗体がメンブレンに固定され、試料は前記蛋白質抗原と前記蛋白質抗原に選択的な抗体-金ナノ粒子接合体の混合物を使用することができる。前記接合体の抗体とメンブレンに固定された抗体は、それぞれ分析対象物質である蛋白質抗原と選択的に結合し、メンブレンに固定された抗体の位置でサンドイッチ形態(メンブレンに固定された抗体-蛋白質抗原-接合体の抗体-接合体の金ナノ粒子)で金ナノ粒子が結合され、前記金ナノ粒子の色変化によって分析対象物質を検出できる。このとき、多孔性フィルムの各孔毎に異なるレセプターを固定させると、各孔毎に異なる分析対象物質を検出できるため、孔の個数によって多成分の分析対象物質を測定できる。」
ウ 「【0037】
本発明において、前記多孔性フィルム上に接合体パッドが形成されており、前記接合体パッドには信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されていることを特徴とし得る。
【0038】
前記接合体パッドに信号発生物質が塗布されて乾燥されている場合は、例えば、前記信号発生物質が、酵素、酵素基質又は化学発光物質の場合、メンブレン上にレセプターと共に前記信号発生物質に反応する酵素基質又は酵素等を予め注入又は吸着させた後、試料を注入することにより酵素反応による信号発生物質の信号で分析対象物質を測定できる。前記接合体パッドに、分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されている場合は、メンブレンセンサーに分析対象物質だけを垂直に落とすと、「レセプター-分析対象物質-接合体パッドに塗布されて乾燥されている分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」の順序で結合されて、レセプターと分析対象物質の選択的な反応による信号発生物質の信号で分析対象物質を測定できる。
【0039】
本発明において、前記接合体パッドとしては、接合体を塗布して乾燥した後、前記接合体パッドが液体にぬれると、接合体が接合体パッドから離れ易くなる物質であれば何れも使用でき、LFAシステムで一般的に使用される接合体パッドであれば全て使用できる。」
エ 「【0040】
本発明において、前記接合体パッド上にサンプルパッドが形成されていることを特徴とし得る。サンプルパッドは分析対象物質の異物質を取り除く役割をしてセンサーによるものより正確な測定を可能にする。例えば、分析対象物質が血液の場合、サンプルパッドは血液に含まれている血球又は血小板を取り除く役割をする(図2)。本発明においてサンプルパッドは、LFAシステムで使用するサンプルパッドを何れも使用できる。
【0041】
本発明において、前記サンプルパッドには、信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて乾燥されていることを特徴とし得る。
【0042】
本発明において、メンブレンバイオセンサーは前記接合体パッドと多孔性フィルム間に流体の流れを良くするメンブレンを嵌めることを特徴とし得る。本発明の一実施例によると、例えば、スクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、vividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation-GR)等を使用できるが、これに制限されるのではなく、当業者によって適切に選択できる。」
オ 「【0047】
例えば、グルコースを測定するために、多孔性フィルム下のメンブレンにレセプターとしてグルコース酸化酵素とペルオキシダーゼを固定し、ペルオキシダーゼの発色基質(例えば、ルミノール)が塗布されて乾燥された接合体パッドを前記多孔性フィルム上に形成した後、グルコースが含まれている試料を垂直に落とすと、グルコース酸化酵素によって生成された過酸化水素水と前記発色基質がペルオキシダーゼによって発光を誘発しグルコースを測定できる。」
カ 「【実施例1】
【0051】
メンブレンバイオセンサーの製造及びこれを用いたcTnI分析
【0052】
1-1.金ナノ粒子-抗体接合体の合成
【0053】
金ナノ粒子コロイド溶液(20nm,BBInternational,GB)1mLに0.1MのBoratebuffer(pH8.5)0.1mLを入れ、1mg/mLのanti-cTnI抗体(Hytest,FIN)10μlを入れて30分間反応させた。前記反応後、1%(w/v)のBSA(Bovine serum albumin,Sigma,DE)をリン酸緩衝食塩水(PBS,Gibco,USA)に溶かした溶液0.1mLを添加して15分常温で反応させた。前記反応後、10,000rpm、4℃で20分間遠心分離して3回に亘って10mMのPBSに溶かした1mg/mLのBSA溶液1mLを入れて精製・回収し、金ナノ粒子-抗体接合体を合成した。
【0054】
1-2.メンブレンバイオセンサーの製造
【0055】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,180sec Nitrocellulose)を横、縦約2.5cm大の正方形に切断した。その後、0.1mm厚のポリアクリル両面テープを横、縦約1cm大の正方形に切断し、直径約0.4mm大の孔3つを開けて孔を形成し多孔性フィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。
【0056】
前記メンブレンに結合された多孔性フィルムの3つの孔を通じて、レセプターとしてcTnI抗体(anti-troponin Iポリクローナル抗体,Hytest,FIN)0.1mg/mL、anti-mouse IgG(Sigma,DE)0.1mg/mL及びBSA 1.0mg/mLをそれぞれ0.5μlずつ注入して乾燥した。1.0mg/mL濃度のBSAで前記多孔性フィルムが結合されたメンブレンを濡らして再度乾燥することにより、多孔性フィルムを含むメンブレンバイオセンサーを製造した。
【0057】
1-3.cTnI分析
【0058】
0、0.1、1及び10ng/mLの濃度でcTnIを溶かした仮想血漿(10mM PBS,1mg/mL HSA,10mM EDTA-2Na)15μlと、前記1-1で製造された金ナノ粒子-抗体接合体溶液10μlを混合して10分間静置し試料溶液を製造した。前記試料溶液を1-2で製造されたメンブレンバイオセンサーの多孔性フィルムに垂直に注入した。前記多孔性フィルムの孔を通じて試料溶液が注入され、3分程度過ぎたらほぼ全ての試料溶液が孔を通じて注入された。」
キ 「【実施例2】
【0062】
メンブレンバイオセンサーの製造及びこれを用いたC-reactive protein(CRP)濃度分析
【0063】
2-1.金ナノ粒子-抗体接合体の合成及び接合体パッドの製造
【0064】
金ナノ粒子コロイド溶液(20nm,BBInternational,GB)1mLに0.1Mのホウ酸バッファ(pH8.5)0.1mLを入れ、1mg/mLのanti-CRP抗体(Abcam)10μlを入れて30分間反応させた。前記反応後、1%(w/v)のBSA(protease free Bovine serum albumin,Fitzerald)をリン酸緩衝食塩水(PBS,Gibco,USA)に溶かした溶液0.1mLを添加して60分間4℃で反応させた。前記反応後、10,000rpm、4℃で20分間遠心分離して3回に亘り10mMのPBSに溶かした1mg/mLのBSA溶液1mLを入れて精製・回収し金ナノ粒子-抗体接合体を合成した。合成された金ナノ粒子-抗体接合体を2.5倍濃縮させた後、約7.5×3.5mmに切断された接合体パッド(fusion 5,whatman)に10uLずつ注入して乾燥した。 【0065】
2-2.メンブレンバイオセンサーの製造
【0066】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚のポリアクリル両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左、右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。このようなことを行う理由は、二つの孔を通じて液体試料が流れるとき、各流れに影響を与え合わないようにするためである。前記メンブレンに結合された接着フィルムの一つの孔には、レセプターとしてanti-CRPポリクローナル抗体(Abcam)0.2mg/mLを、また別の孔にはanti-mouse IgG(Sigma)0.2mg/mLをそれぞれ5μlずつ注入し、PBSバッファに10mg/mLの濃度に溶かしたBSAを5μl、PBSバッファを10μlの順で注入し乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断したスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、7.5×3.5mm大のvividメンブレン、2-1で製造された金ナノ粒子-抗体接合体が乾燥された接合体パッド(fusion 5,whatman)、7.5×3.5mm大のサンプルパッド(Millipore)の順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0067】
2-3.CRPの分析及び信号の分析
【0068】
0、0.01、0.1、1、5及び10μg/mLの濃度にCRPを溶かしたヒト血漿(CRP free serum)50μlをセンサーに注入し、反応時間の経過による吸光度を測定した。」
ク 「【実施例3】
【0083】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素-化学発光(Enzymatic Chmemiluminescence)を用いたC-Reactive Protein(CRP)濃度分析
【0084】
3-1.バイオセンサーの製造
【0085】
D-グルコース(Duchefa Biochemie)とルミノール(Sigma)をそれぞれ50mMになるように0.1Mカーボネートバッファ(pH9.0)に溶かした後、7.5×3.5mmに切断したサンプルパッド(Milipore)に20μlずつ注入して乾燥した。anti-CRP抗体-ペルオキシダーゼ複合体(Abcam)をPBSバッファに20μg/mLの濃度に溶かした後、約7.5×3.5mmの大きさに切断したVividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation-GR)に約7μlを注入して乾燥した。
【0086】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚のポリアクリル両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左・右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。前記メンブレンに結合されたフィルムの2つの孔を通じて一方の孔にはレセプターとしてanti-CRPポリクローナル抗体(Abcam)0.5mg/mLと250U/mLのグルコースオキシダーゼ(Sigma)混合液を、他方の孔には0.5mg/mL、anti-mouse IgG(Sigma,DE)と250U/mLのグルコースオキシダーゼ混合液を1μlずつ注入し、PBSバッファに10mg/mLの濃度に溶かしたBSAを5μl、PBSバッファを10μlの順に注入して乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断したスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、前記の製造されたanti-CRP抗体-ペルオキシダーゼ複合体が乾燥されたvividメンブレン、前記の製造されたD-グルコース、ルミノールが乾燥されたサンプルパッドの順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0087】
3-2.発光反応を用いたCRP信号分析
【0088】
0、0.01、0.1、1、5及び10μg/mLの濃度にCRPを溶かしたPBSバッファを50μlをセンサーに垂直に注入し、発光測定器(LAS-3000,FUJI PHOTO FILM CO.,LTD)を用いて時間経過による発光信号を測定した。 」
ケ 「【実施例4】
【0092】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素-化学発光(Enzymatic Chmemiluminescence)を用いたヒト血清におけるD-グルコース濃度分析
【0093】
4-1.バイオセンサーの製造
【0094】
ルミノール(Sigma)をそれぞれ50mMになるように0.1M Carbonateバッファ(pH9.0)に溶かした後、7.5×3.5mmに切断されたサンプルパッド(Milipore)に20μLずつ注入して乾燥した。
【0095】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンにI字形の線を引いた。0.1mm厚の両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、0.5mm大の孔を左・右に2つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付けた。この場合、接着剤の二つの孔が前記メンブレンに刻まれたI字形の左右それぞれに配置されるようにした。前記メンブレンに結合されたフィルムの2つの孔を通じて一方の孔にはグルコース分解酵素として250U/mLのグルコースオキシダーゼ(Sigma)と250U/mLのペルオキシダーゼ(Toyobo)混合液を、他方の孔には250U/mLのペルオキシダーゼ溶液を1μLずつ注入して乾燥した。乾燥されたニトロセルロースメンブレンに6×3mm大に切断されたスクリーンメッシュ(Zonyl FSN 100,SEFAR)、約7.5×3.5mmの大きさに切断されたVividメンブレン(Pall,Vivid Plasma Separation-GR)、前記の製造されたルミノールが乾燥されたサンプルパッドの順でメンブレンの孔を覆うように積層してバイオセンサーを製造した。
【0096】
4-2.発光反応を用いたD-グルコース信号分析
【0097】
0、0.04、0.2、1、5及び30mMの濃度にD-グルコースを溶かした正常ヒト血清(NHS)(Fitzgerald)50μLをセンサーに垂直に注入し、発光測定器(LAS-3000,FUJI PHOTO FILM CO., LTD)を用いて測定試料注入後、1分後にD-グルコースの発光信号を測定した。 」
コ 「【実施例5】
【0099】
メンブレンバイオセンサーの製造及び酵素-発色反応(Enzymatic Color reaction)を用いた対照血清のレベル1,レベル2の総コレステロール(Total cholesterol)反応の比較
【0100】
5-1.バイオセンサーの製造
【0101】
ニトロセルロースメンブレン(Millipore,240sec Nitrocellulose)を約15×15mmの大きさに切断し、レーザー加工機でメンブレンに直径が2mmになるように正三角形配列で3つの円を描いた。レーザー加工が完了したニトロセルロースメンブレンに、総コレステロールを測定するための反応溶液を製造してそれぞれの円に2μLずつ注入して乾燥した。
【0102】
総コレステロール測定のために使用された反応溶液の組成及び含量は下記表5の通りである。
・・・
【0104】
乾燥されたメンブレンの上に、0.1mm厚の両面接着剤テープを10×10mm大に切断し、1mm大の孔をそれぞれの円の中央に位置するように3つ開けて孔を形成するようにフィルムを製造した後、前記メンブレンに付け、5×5mm大に切断されたサンプルパッド(Milipore)を積層して製造した。
【0105】
5-2.対照血清レベル1、レベル2を用いた酵素発色反応の確認
【0106】
製造されたバイオセンサーに50μLのLipids control human serum レベル1とレベル2(LiquichekTM,BIO-RAD)をそれぞれ注入してレベル1とレベル2の発色の程度を比較した。使用されたレベル1とレベル2のControl serumは精度管理用血清であり、レベル1は正常範囲、レベル2は非正常範囲の高濃度コレステロールを含む。
【0107】
図12のように、発色反応を通じてレベル1、レベル2の発色反応程度の差を確認した。
総コレステロール濃度がより高いレベル2試料の色がより濃いことを確認した。」

サ 「特許請求の範囲
【請求項1】
メンブレン上に多数の孔を有する多孔性フィルムが付いており、各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサー。
【請求項2】
前記多孔性フィルム上に接合体パッドがさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項3】
前記レセプターは、抗体、抗原、酵素、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、PNA及びアプタマーで構成された群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項4】
前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10?5000μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項5】
前記メンブレンは、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項6】
前記メンブレンバイオセンサーに用いられる試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と、信号発生物質の接合体をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項7】
前記信号発生物質は、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、酵素、酵素基質、酵素反応生成物質、吸光物質、蛍光物質又は発光物質であることを特徴とする請求項6に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項8】
前記接合体パッドには、信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されていることを特徴とする請求項2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項9】
前記接合体パッド上にサンプルパッドが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項10】
前記接合体パッドと多孔性フィルム間に流体の流れを良くするメンブレンを嵌めることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項11】
前記メンブレンを多孔性フィルムの各孔を含む領域に区画することを特徴とする請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサー。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む免疫反応測定方法。
【請求項13】
前記メンブレンバイオセンサーの各孔毎に相違する種類のレセプターが固定されていることを特徴とする請求項12に記載の測定方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のメンブレンバイオセンサーを用いるが、前記メンブレンバイオセンサーに試料を垂直に注入することを含む酵素反応の測定方法。
【請求項15】
前記メンブレンバイオセンサーの各孔毎に相違する種類のレセプターが固定されていることを特徴とする請求項14に記載の測定方法。」

(3)判断
ア 上記(2)イには、「試料」が「分析対象物質」を含むか含まないものであり、さらに「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体をさらに含む」こと、を特徴とし得ることが記載されているが、当該記載箇所において、「分析対象物質が含まれたり含まれない任意の試料」である「前者」の場合は「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が「試料と別途」に「試料注入後にメンブレンバイオセンサーに注入」されるか、「接合体パッド」又は「サンプルパッド」に「塗布」された後、乾燥させて利用するものであることが、また、「分析対象物質が含まれたり含まれない試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が混合された試料」である「後者」の場合は、「別途の接合体パッド又はサンプルパッドを用いずメンブレン及び多孔性フィルムだけで構成されたバイオセンサー」に適用でき、「試料内で予め分析対象物質-分析対象物質に選択的に結合する物質-信号発生物質の接合体が生成されてメンブレン上に固定されたレセプターと選択的に結合することにより、分析対象物質の検出ができる」ものであることが記載されている。
すなわち、上記(2)イの記載からは、「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が、「試料」か「接合体パッド」又は「サンプルパッド」の何れかにのみに含まれている態様が記載されているのみであって、これらの記載から、当業者が「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が含まれる「接合体パッド」を備えるものにおいて、それに用いられる「試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含む」態様を把握することができるものとはいえない。
イ 上記(2)ウには、「接合体パッド」に、また同(エ)には、「サンプルパッド」に、「信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が含まれている態様がそれぞれ記載されているが、これらの態様において用いられる試料は、いずれも「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」を含まないものである。
ウ その他、上記(2)カの【実施例1】は、「金ナノ粒子-抗体接合体」を含む「試料」を用いるものであるものの、ここでのメンブレンバイオセンサーは、「接合体パッド」を有さないものである。
また、同キの【実施例2】には「金ナノ粒子-抗体接合体」を含む「接合体パッド」を備える態様、同クの【実施例3】には「anti-CRP抗体-ペルオキシダーゼ複合体が乾燥されたvividメンブレン、前記の製造されたD-グルコース、ルミノールが乾燥されたサンプルパッド」を備える態様、同ケの【実施例4】には、「ルミノールが乾燥されたサンプルパッド」そ備える態様のメンブレンバイオセンサーについて記載されているところ、これらに用いられる試料は、いずれも「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」を含まないものが用いられている。
そして、同コの【実施例5】も、「接合体パッド」を備える態様のものとはいえない。
エ 上記(2)サの、請求項6には、「メンブレンバイオセンサーに用いられる試料は、分析対象物質に選択的に結合する物質と、信号発生物質の接合体をさらに含む」「メンブレンバイオセンサー」について特定されており、請求項8には、「接合体パッドには、信号発生物質;又は分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体が塗布されて」いる「メンブレンバイオセンサー」について特定されているものの、請求項6と請求項8は、互いに引用、被引用の関係にないものであるから、請求項6又は8の特定事項のうちのいずれか一方の特定事項を含むところの「メンブレンバイオセンサー」については規定されているものの、請求項6及び8の特定事項を両方備える「メンブレンバイオセンサー」が規定されているということはできない。
オ 上記アないしエのとおりであるから、本願当初明細書等には、本件補正事項による補正後の請求項1に係る発明が包含するところの「信号発生物質」又は「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が塗布された「接合体パッド」を備えるものであって、かつ用いられる「試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含む」「メンブレンバイオセンサー」が記載されているということはできない。
カ そして、本件補正事項である「信号発生物質」又は「分析対象物質に選択的に結合する物質と信号発生物質の接合体」が塗布された「接合体パッド」を備えるものであって、かつ用いられる「試料に分析対象物質に選択的に結合する物質と、金属ナノ粒子、量子ドットナノ粒子、磁気ナノ粒子、吸光物質、蛍光物質又は発光物質から選択される信号発生物質の接合体をさらに含む」「メンブレンバイオセンサー」を追加することは、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。
キ してみると、本件補正事項は、本願当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものとはいえない。
(4)小括
上記のとおりであるから、本件補正は、本願当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないから、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用される同法第17条の2第3項に規定する要件に違反するものである。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用される同法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成26年11月19日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明は、上記第2の1(1)のとおりのものである。

2 引用例及びその記載事項
(1)引用例1(特開2006-189304号公報)
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-189304号公報(以下、「引用例1」という。)には、つぎの事項が記載されている。(下線は、当審において付加したものである。)
ア 「【0020】
本明細書にいうメンブランを含むアッセイ装置(メンブランアッセイ装置ともいう)とは、検出しようとする複数の被検出物質に特異的に結合する捕捉試薬がそれぞれ離れた位置に固相化されたメンブランを含むフロースルー式メンブランエンザイムイムノアッセイ法を利用するアッセイ装置であることが好ましい。
【0021】
フロースルー式メンブランエンザイムイムノアッセイ装置は、具体的には、例えば図1及び2に示されるような装置である。図1および図2に示す装置は、後述の検体試料添加用デバイスを別体として含む装置である。
【0022】
図1は装置の平面図であり、図2は、図1のI-I'切断断面図である。図1及び2において、aは、調製した検体試料を酵素標識試薬部を備えた検体試料添加用デバイスを用いて濾過して滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための穴(Aホール及びBホール)を備えたアダプターである。bは被検出物に特異的に結合する捕捉試薬が結合したメンブランであり、cは液体を吸収する部材(液体吸収部材)である。
【0023】
アダプターaの底面部の検体試料が通過するための穴の数を増やすことにより、更に多くの項目の同時試験に対応することができ、その数は1?5項目程度、例えば2項目、3項目、4項目または5項目が好ましいが、これらに限定されない。」
イ 「【0024】
メンブランアッセイ装置中のメンブランの材質としては、不織布、紙、ニトロセルロース、ガラス繊維、シリカ繊維、セルロースエステル、ナイロン6、6及びセルロースエステルとニトロセルロースの混合物からなる群が挙げられ、特に好ましくはニトロセルロースから作られた微多孔性物質があげられる。また、前記セルロースエステルとニトロセルロースの混合物も好適に用いることができる。上記メンブランの孔径あるいは保留粒子径は濾過フィルターの孔径または保留粒子径以上であり、かつ1?12μmであることが好ましく、3?5μmが特に好ましい。また、メンブランの厚さは特に限定されないが、通常、100?200μm程度である。
【0025】
メンブランアッセイ装置のメンブラン表面には、捕捉試薬が固相化(結合)される。捕捉試薬としては、被検出物と抗原抗体反応により特異的に結合し抗原抗体複合体を形成することにより被検出物を捕捉する抗原または抗体が挙げられるが、抗原または抗体に限定されず、リガンド-レセプターの関係で互いに結合し得る物質の場合、一方を他方を捕捉するための捕捉試薬として用いることができる。従って、被検出物に応じて、それに結合し得る異なる捕捉抗原または抗体を使用すればよい。例えば、被検出物が細菌、ウイルス、ホルモン、その他臨床マーカー等の場合には、これらに対し特異的に反応して結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。捕捉試薬は、メンブラン装置のアダプターaの底面部の穴部分に対応する部位のメンブラン表面に固相化すればよい。このように固相化することにより、アダプターaに添加した検体試料および/または酵素標識試薬は、アダプターa底面の穴を通りメンブラン上の捕捉試薬を固相化した部位に到達するので、該部位で効率的に結合反応が生じる。
【0026】
このような捕捉試薬を上述したメンブランに結合させる方法としては、物理的吸着であってもよく、または化学的な結合によるものであってもよい。捕捉試薬が結合したメンブランの調製は、例えば、捕捉試薬を緩衝液等で希釈した溶液をメンブランに塗布して、その後乾燥することにより行われる。」
ウ 「【0027】
本発明において、複数の被検出物を1回のアッセイで同時に検出し得る。このため、メンブラン上には、それぞれの被検出物に結合し得る複数の捕捉試薬が結合される。この際、それぞれの捕捉試薬は、メンブラン上で離れて結合される。ここで、「離れて結合」とは、メンブラン上のそれぞれの捕捉試薬が結合した部位同士が重なることも接触することもないことをいう。この場合、固相化された捕捉試薬部位に対応するメンブラン装置のアダプターaの底面部の穴部分もアダプターaの底面部において離れて設けられる。」
エ 「【0029】
本明細書にいう被検出物は、何ら限定されず、例えば、それに対応する抗体を作製することができるあらゆる抗原物質が挙げられる。例として、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)、ライノウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、HAV、HBs、HCV、HIV、EBV等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス、溶連菌、百日咳菌、ヘリコバクター・ピロリ、レプトスピラ、トレポネーマ・パリダム、トキソプラズマ・ゴンディ、ボレリア、レジオネラ属菌、炭疽菌、MRSA等の細菌抗原、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ脂質抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピン等のペプチドホルモン、ステロイドホルモン等のステロイド、エピネフリンやモルヒネ等の生理活性アミン類、ビタミンB類等のビタミン類、プロスタグランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等を挙げることができる。また、被検出物としてこれらに対する抗体も挙げられる。」
オ 図1


カ 図2


(2)引用例1に記載された発明
ア 図1及び図2によれば、「メンブランアッセイ装置」の「アダプター」は、「メンブラン」の上に配置されている様が見て取れる。
イ してみると、上記(1)アないしエ並びに図1及び図2によれば、引用例1には、つぎの発明が記載されているものと認められる。
「調製した検体試料を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための1?5項目の穴を備えたアダプターと、被検出物に特異的に結合する捕捉試薬が結合したメンブランとを備え、アダプターがメンブランの上に配置されたメンブランアッセイ装置であって、メンブラン表面には、被検出物と抗原抗体反応により特異的に結合し抗原抗体複合体を形成することにより被検出物を捕捉する抗原または抗体などの捕捉試薬が、アダプターの底面部の穴部分に対応する部位のメンブラン表面に固相化されており、それにより、アダプターに添加した検体試料は、アダプター底面の穴を通りメンブラン上の捕捉試薬を固相化した部位に到達するので該部位で効率的に結合反応が生じるようにされているメンブランアッセイ装置」(以下、「引用発明」という。)

3 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「メンブラン」、「捕捉試薬」は、それぞれ、本願発明の「メンブレン」、「レセプター」に相当する。
(2)引用発明の「アダプター」は「底面部に試料が通過するための1?5項目の穴を備え」るものであって「メンブランの上に配置されている」ものであるから、本願発明の「メンブレン上」に「付いて」いる「多数の孔を有する多孔性フィルム」とは、「メンブレン上」に「存在」する「複数の孔を有する」「部材」である点で共通するものといえる。
(3)上記(2)を踏まえると、引用発明の「メンブラン表面」に「被検出物を捕捉する」「捕捉試薬」が「アダプターの底面部」の「1?5項目」の「穴部分に対応する部位」に「固相されて」いることと、本願発明の「各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されている」こととは、「メンブレン上」に「存在」する「複数の孔を有する」「部材」の「各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されている」点で共通するものである。
(4)引用発明の「メンブランアッセイ装置」は、 「被検出物と抗原抗体反応により特異的に結合し抗原抗体複合体を形成することにより被検出物を捕捉する抗原または抗体などの捕捉試薬」を用いるものであるから、本願発明とは「メンブレンバイオセンサー」である点で共通するものといえる。
(5)してみると、本願発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、つぎの各相違点において相違するものである。
<一致点>
メンブレン上に複数の孔を有する部材が存在しており、部材の各孔の位置に該当するメンブレン上にレセプターが固定されていることを特徴とするメンブレンバイオセンサー」

<相違点1>メンブラン上に存在する複数の孔を有する部材が、本願発明では「多数の孔を有する多孔性フィルム」であって、「メンブレン上に付いている」ものであるのに対して、引用発明では「調製した検体試料を滴下する開口部を有し、底面部に試料が通過するための1?5項目の穴を備えた」「アダプター」が「メンブラン上」に「配置されている」ものである点
<相違点2>本願発明の「多孔性フィルムの孔の大きさ」が「10?5000μm」であるのに対して、引用発明の「アダプター底面部」の「穴」の大きさが不明である点

4 当審の判断
(1)相違点1について
ア 本願発明の「多数の孔」と引用発明の「1?5項目の穴」について
(ア)本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】には、「多孔性」が多数の孔を有するという意味で有り、多孔性フィルムは多数の孔が形成されているフィルムを意味するものであることが記載されている。
(イ)しかしながら、上記の記載における「多数」が、どの程度の数を包含するものであるのかは、なお明らかではないから、さらに検討すると、図3の実施例1においては、フィルムの孔が3個のものが示されており、図4の実施例2や図8の実施例3においては、フィルムの孔が2個のものが示されていることからみて、本願発明の「多数の孔」の個数には、数個程度のものが含まれるものと解するのが相当である。
(ウ)してみると、本願発明の「多孔性」である「多数の孔」と引用発明の「1?5項目の穴」は、実質的に相違するものではない。
イ 本願発明の「フィルム」と引用発明の「アダプター」について
(ア)引用発明の「アダプター」を形成する材質は明らかでないものの、引用発明の「アダプター」に試料を受ける開口部を備えるようにするか否かは、測定対象として受け入れる試料の広がりの防止などを勘案して適宜定めるべき設計的要素にすぎない。
(イ)引用発明において、アダプターの底面に穴を形成する目的は、「アダプター」の「底面の穴を通りメンブラン上の捕捉試薬を固相化した部位に到達する」ようにして「該部位で効率的に結合反応が生じる」ようにすること(上記2(1)イの段落【0025】)、及び、「検出しようとする複数の被検出物質に特異的に結合する捕捉試薬がそれぞれ離れた位置に固相化されたメンブランを含むフロースルー式メンブランエンザイムイムノアッセイ法を利用するアッセイ装置」を実現するためである(上記2(1)ア)ところ、この目的を達成するには、開口部を備えなくても支障がないことは技術的に明らかである。
(ウ)してみると、引用発明の「アダプター」の開口部を形成しないこと、すなわちアダプターの形状を板状のものとすることに格別の困難性はない。
ウ 本願発明の「メンブレン上に付いているフィルム」と引用発明の「メンブレン上に配置されたアダプタ」について
上記イで検討したように、引用発明のアダプターの形状を板状のものとすることに格別の困難性はないから、引用発明のアダプターをフィルム状に形成し、メンブレン上に配置するにおいて、本願発明のフィルムのようにメンブレン上に付くように接着剤等で固定するようにすることも適宜なし得る程度のことにすぎない。
エ 相違点1についての小括
以上のとおりであるから、引用発明の「アダプター」を「1?5項目の穴」を有する板状の部材として形成することにより、本願発明の「多数の孔を有する多孔性フィルムがメンブレン上に付いているもの」の如く形成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項というべき程度のことにすぎない。

(2)相違点2について
ア 本願発明の「多孔性フィルムの孔の大きさ」を「10?5000μm」の範囲とする技術的意義について
(ア)本願の発明の詳細な説明には、本願発明の「多孔性フィルムの孔の大きさ」に関して次のような記載がある。
a 「【0005】
そこで本発明者等は、従来技術で具現できなかった技術を用いて高感度のメンブレンバイオセンサーを製作するために鋭意努力した結果、レセプターが固定されているメンブレンに多孔性フィルムを結合させたメンブレンバイオセンサーを製作した後、それを用いて試料を分析すれば少量の試料だけでも早い時間内に試料分析ができるということを確認し、本発明を完成するに至った。」
b 「【0012】
本発明によると、多孔性フィルムの孔の大きさを調節してメンブレンバイオセンサーの感度を調節でき、少量の試料だけを用いて高感度で分析対象物質を測定でき、メンブレンセンサーに様々な種類のレセプターを付けて様々な種類の分析対象物質を同時に測定できる。」
c 「【0021】
本発明において、前記多孔性フィルムの孔の大きさは、10μm?5000μmであることを特徴とし得るが、これに制限されるのではなく、10?4000μm、10?3000μm、10?2000μm、10?1000μm、50?5000μm、50?4000μm、50?3000μm、50?2000μm、50?1000μm、100?5000μm、100?4000μm、100?3000μm、100?2000μm、100?1000μm、200?5000μm、200?4000μm、200?3000μm、200?2000μm又は200?1000μmであり得る。前記多孔性フィルムの孔の大きさが小さい程試料が狭い領域でレセプターと反応してセンサーの感度は高く出るが、10μm未満の場合は孔の大きさがより小さくなると試料の流れに障害が生じ得、5000μmを超えるとセンサーの感度が著しく低くなるという問題点がある。よって、多孔性フィルムの孔の大きさを10μm?5000μmにし、センサーの感度を調節することが好ましい。」
(イ)上記(ア)の記載によれば、本願発明の「多孔性フィルムの孔の大きさ」が「10μm?5000μm」とすることは、感度を調節するためのものであり、孔の大きさが小さい程試料が狭い領域でレセプターと反応してセンサーの感度が高くなるが、小さすぎると試料の流れに障害が生じ得ることを勘案して定められた範囲を規定したものと解することができる。なお、5000μmを超えるとセンサーの感度が著しく低くなるという問題点がある旨記載されているが、当該数値にその程度の臨界的意義があるのかは不明である。
イ 引用発明の「アダプタ」の「底面」の穴の技術的意義について
引用発明のアダプタの底面の穴は、上記(1)イ(イ)で説示したように「アダプター」の「底面の穴を通りメンブラン上の捕捉試薬を固相化した部位に到達する」ようにして「該部位で効率的に結合反応が生じる」ようにすることであるから、この穴の技術的意義は、本願発明と同様に「感度を調節するためのものであり、孔の大きさが小さい程試料が狭い領域でレセプターと反応してセンサーの感度が高くなる」ものであることは明らかであるといえる。
ウ 検討
上記ア及びイにそれぞれ説示したように、本願発明の「孔」と引用発明の「穴」とは、共に、その大きさによりメンブレン上のレセプターと反応する領域を調整することで、その感度を調節するためのものである点でその技術的意義を共通のものとし、また、測定する試料についても、同じ生体試料をその対象とするものである点で共通するものと認められる。
してみると、引用発明の「穴」の大きさを、大きさが小さい程試料が狭い領域でレセプターと反応してセンサーの感度が高くなるが、小さすぎると試料の流れに障害が生じ得ることを勘案して定められた範囲を規定した程度の大きさとすることにより、上記相違点2に係る本願発明の「孔」の大きさの如く構成することは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。
エ 相違点2についての小括
以上のとおりであるから、相違点2は、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用例1に記載の事項から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認めることができない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上検討したように、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-10 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-27 
出願番号 特願2012-541017(P2012-541017)
審決分類 P 1 8・ 562- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 尾崎 淳史
▲高▼見 重雄
発明の名称 多孔性フィルム付きメンブレンバイオセンサー及びこれを用いた免疫反応又は酵素反応の測定方法  
代理人 井上 誠一  
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