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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1321674
審判番号 不服2016-1112  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-26 
確定日 2016-11-10 
事件の表示 特願2010-173058「ロールシュリンクラベル付き容器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日出願公開、特開2012- 32657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、平成22年7月30日の出願であって、平成26年6月23日付け及び平成27年4月6日付けで手続補正がなされ、同年10月21日付けで前記平成27年4月6日付けの手続補正が却下されると同時に拒絶の査定がなされ、これに対し、平成28年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書と特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年1月26日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正後の本願の発明

(1)本件補正の内容
平成28年1月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成26年6月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、本件補正の前後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
始端部と終端部との重ね合わせ部を熱溶着してから容器に装着し熱収縮させるロールシュリンクラベルにおいて、
縦一軸延伸熱収縮フィルムからなり、前記縦一軸延伸熱収縮フィルムの始端部の表面および終端部の裏面の少なくとも一方にヒートシール剤が塗布され、該ヒートシール剤を介して熱溶着させることを特徴とするロールシュリンクラベル。
【請求項2】
前記熱溶着された部分が線状であり、かつ、前記熱収縮フィルムの延伸方向に対して垂直である請求項1記載のロールシュリンクラベル。
【請求項3】
前記始端部および前記終端部以外の表面および裏面の少なくとも一方にデザイン印刷を施された請求項1または2記載のロールシュリンクラベル。
【請求項4】
前記熱溶着における加熱手段がインパルスシールまたはヒートシールである請求項1?3のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項5】
前記ヒートシール剤が、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、エチレンアクリレート系、ポリアクリレート系、またはポリエステル系の有機溶剤型ヒートシール剤である請求項1?4のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項6】
前記ヒートシール剤が、エチレンアクリレート系、エチレン酢酸ビニル系、またはエチレンアクリレート系樹脂を含む変性ポリオレフィン系の水性型ヒートシール剤である請求項1?4のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項7】
前記ヒートシール剤が、アンカーコート剤またはプライマーである請求項1?4のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項8】
前記縦一軸延伸熱収縮フィルムが、延伸ポリプロピレン系フィルム、延伸環状ポリオレフィン系フィルム、延伸ポリオレフィン系フィルム、延伸スチレン系フィルム、延伸ポリエステル系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、延伸ポリ塩化ビニル系フィルム、発泡ポリオレフィン系フィルム、発泡ポリスチレン系フィルム、ポリエステルーポリスチレン共押出フィルムからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の単層または多層フィルムであり、かつ、100℃における縦方向の熱収縮率が5?85%である請求項1?7のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項9】
前記熱溶着する部分の幅が1?20mmである請求項1?8のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベル。
【請求項10】
請求項1?9のうちいずれか一項記載のロールシュリンクラベルを容器に装着し、熱収縮させる熱処理をしてなることを特徴とするロールシュリンクラベル付き容器。
【請求項11】
ロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程と、前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程と、得られたシュリンクラベルの始端部と終端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を熱溶着させる溶着工程と、得られたロールシュリンクラベルの上部側または下部側から容器を挿入してロールシュリンクラベルを装着させる装着工程と、装着したロールシュリンクラベルを熱収縮させる熱収縮工程と、を有するロールシュリンクラベル付き容器の製造方法において、
前記ロールシュリンクラベル原反が縦一軸延伸熱収縮フィルムであり、かつ、前記溶着工程の前に、前記始端部の表面および前記終端部の裏面の少なくとも一方にヒートシール剤を塗布し、前記熱溶着をヒートシール剤を介して行うことを特徴とするロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。
【請求項12】
前記熱溶着における加熱手段がインパルスシールまたはヒートシールである請求項11記載のロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。」
(以下、上記引用の請求項各項を、「補正前の請求項」という。)

(補正後)
「【請求項1】
ロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程と、前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程と、得られたシュリンクラベルの始端部と終端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を熱溶着させる溶着工程と、得られたロールシュリンクラベルの上部側または下部側から容器を挿入してロールシュリンクラベルを装着させる装着工程と、装着したロールシュリンクラベルを熱収縮させる熱収縮工程と、を有するロールシュリンクラベル付き容器の製造方法において、
前記ロールシュリンクラベル原反が縦一軸延伸熱収縮フィルムであり、かつ、前記溶着工程の前に、前記始端部の表面および前記終端部の裏面の少なくとも一方に塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系のヒートシール剤を塗布し、前記熱溶着をヒートシール剤を介して行い、前記熱溶着を、エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながらフィルム流れと一致するように該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け、重ね合わせ部を形成して行うことを特徴とするロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。
【請求項2】
前記熱溶着における加熱手段がインパルスシールまたはヒートシールである請求項1記載のロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。」
(以下、上記引用の請求項各項を、「補正後の請求項」という。また、下線は補正個所を示すために審決で付した。以下の下線も同様に審決で付した。)。

(2)本件補正についての検討

本件補正を整理すると以下のとおりである。

〈補正事項1〉
補正前の請求項1?10を削除し、それに伴い補正前の請求項11?12の項番を繰り上げて補正後の請求項1?2とすること。

〈補正事項2〉
補正前の請求項11の「ヒートシール剤」を、補正後の請求項1の「塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系のヒートシール剤」とすること。

〈補正事項3〉
補正前の請求項11の「前記熱溶着をヒートシール剤を介して行うこと」を、補正後の請求項1の「前記熱溶着をヒートシール剤を介して行い、前記熱溶着を、エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながらフィルム流れと一致するように該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け、重ね合わせ部を形成して行うこと」とすること。

以下、補正事項1?3について検討する。

〈補正事項1について〉
補正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、補正事項1が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。

〈補正事項2について〉
補正事項2は、補正前の請求項11に係る発明を特定するために必要な事項である「ヒートシール剤」に関して、「塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系の」との限定事項を付加するものであって、補正前の請求項11に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、補正事項2により追加された構成は、当初明細書等に記載されており、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

〈補正事項3について〉
補正事項3は、補正前の請求項11に係る発明を特定するために必要な事項である「熱溶着」に関して「前記熱溶着を、エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながらフィルム流れと一致するように該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け、重ね合わせ部を形成して行」うとの限定事項を付加するものであって、補正前の請求項11に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、補正事項3により追加された構成は、当初明細書等に記載されており、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。

そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、前記に記載された事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例

(1)原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2001-322646号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 透明のラベル基材(7)に印刷層(8)と隠蔽層(10)が積層されてなるラベル本体(11)の両端部に、接着剤(13a),(13b)がそれぞれ塗布され、前記ラベル本体(11)の一端側が接着剤(13a)を介して容器本体(3)の表面に接着され、且つ、前記ラベル本体(11)の他端側が接着剤(13b)を介して一端側に重ねて接着されたラベル付き容器において、前記両方の接着剤(13a),(13b)は、互いに重なり合わないようにずれた位置に設けられていることを特徴とするラベル付き容器。」
(なお、「容器本体(11)」は「容器本体(3)」の明らかな誤記であるので、誤記を正して摘記した。)

イ.「【0024】また、本発明は、図5に示すように、筒状に形成されたシュリンクラベル1を容器本体3に装着したものにも適用することができる。ここで、シュリンクラベル1は、ラベルの周方向に熱収縮性を有するフィルムからラベル基材7を構成し、前記該ラベル基材7に、前記印刷層8及び隠蔽層10が積層されている。」

ウ.「【0026】かかるシュリンクラベル1は、容器本体3に熱収縮させて装着すると、前記図1(ロ)または図4(ロ)に示したように、ラベル1を容器本体3に接着させる感熱接着剤13aと、ラベル本体11の他端側をその接着剤の設けられていない部分に接着させる接着剤13bとの位置がずれていることから、前記接着剤13aの塗布された一端部に、前記ラベル本体11の他端側に設けられた隠蔽層10が重なり合うように、ラベル本体11を容器本体11に装着することができる。従って、隠蔽層10や容器本体3内の内容物等が透けて黒ずんで見えるのを防止できる。尚、他端側を接着剤13bを介してラベル本体11の所定位置に接着したが、該接着剤13bは必ず設ける必要はなく、接着剤を使用しない方法として、溶着法や熱融着法などが使用される場合が挙げられる。」
(なお、「ラベル本体7」、「容器本体11」はそれぞれ「ラベル本体11」、「容器本体3」の明らかな誤記であるので、誤記を正して摘記した。)

エ.上記ウには「かかるシュリンクラベル1は、容器本体3に熱収縮させて装着すると、前記図1(ロ)または図4(ロ)に示したように、(中略)ラベル本体11を容器本体3に装着することができる。」と記載されているから、図1(ロ)及び図4(ロ)に示されたものは、上記イ及びウ記載の「シュリンクラベル1」を「容器本体3」に装着したものであると認められる。
そして、図1(ロ)からは、ラベル本体11の他端側と一端側が重なり合い、重なり合った部分に接着剤13bが設けられていること、及び、ラベル本体11の他端側の裏面に接着剤13bが設けられていることが看取できる。

オ.図5からは、シュリンクラベル1の下部側から容器本体3を挿入していることが看取できる。

カ.上記イの「筒状に形成されたシュリンクラベル1を容器本体3に装着したもの」、及び、上記ウの「シュリンクラベル1は、容器本体3に熱収縮させて装着する」との記載は、シュリンクラベル1を容器本体3に装着する手順についてのものであるから、引用例1には上記アの「ラベル付き容器」の製造方法が記載されていると認められる。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「シュリンクラベル1の下部側から容器本体3を挿入して筒状に形成されたシュリンクラベル1を容器本体3に装着したもので、シュリンクラベル1は、容器本体3に熱収縮させて装着するもので、ラベル本体11の他端側と一端側が重なり合い、重なり合った部分に接着剤13bが設けられており、ラベルの周方向に熱収縮性を有するフィルムからラベル基材7を構成したものであり、ラベル本体11の他端側の裏面に接着剤13bが設けられている、ラベル付き容器の製造方法。」

(2)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-12781号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

キ.「【0056】
(ii)ラベルの筒状成形
本発明の筒状シュリンクラベルは、縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、前記押さえ具側から前記重ね部(37)と、重ね部近傍の下ラベルからなる前記レーザー光照射幅(3)とにレーザー光を照射して前記重ね部に溶着部(35)を形成して筒状シュリンクラベルを成形し、筒状シュリンクラベルを製造することができる。この方法によれば、フィルム搬送方向と延伸方向とが同方向であるから、切断したラベルを筒状に成形して切断端を重ねると延伸方向の両端部を溶着することができる。すなわち、フィルムを水平方向に移動させるだけでフィルム切断、ラベル筒状溶着を行うことができるために、横一軸延伸フィルムを使用する場合のように、ラベルを90度回転させる工程が不要となる。また、ラベル上前の切断端の端部が下ラベルに溶着されるため、熱収縮後にも外観に優れる筒状シュリンクラベルとなる。また、半導体などのレーザー光で溶着するため、接着剤を使用することなく接着でき、短時間で効率的な溶着が行える。また、容器リサイクル時にラベルを剥がした際、接着剤で接着する場合と相違して、溶着部分が汚れることがなくリサイクル性に優れる。」

ク.「【0057】
より具体的には図4に示すように、鉛直に配置されたシリンダ(20)にまきつけるように前記熱収縮性基材フィルム(10)を繰り出し、所定のラベル長に切断し、ラベル(30)の前端部からシリンダ(20)を回転させながらまきつけ、前記ラベル前端部の上にラベル後端部を重ね、ラベル後端部をガラス板やSUS板などの押さえ具で固定し、斜線で示す、重ね部(35)と、重ね部近傍の前記下ラベルとからなるレーザー照射幅(36)を、押さえ具側からレーザー光を照射して溶着し、溶着幅0.5?10mmのレーザー溶着部(35)部を形成し、筒状シュリンクラベル(100)を製造することができる。使用するシリンダ(20)は、その表面に空気を吸引しまたは排出する空気孔(25)が多数設けられたものであれば、切断されたラベル(30)を前記シリンダ表面で吸引しながら安定してまき付けることができる。また、シリンダ(20)を鉛直方向を軸として回転させればラベル(30)のまき付けが容易となる。一般には重ね部は、幅3?20mmである。この重ね部は、ガラス板などの押さえ具で固定することでレーザー光の照射を安定して行うことができる。」

ケ.「【0061】
(4)筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法
本発明の筒状シュリンクラベル付き容器は、上記で製造した筒状シュリンクラベルに、ラベルの上部または下部から容器を挿入して容器に筒状シュリンクラベルを装着し、ついで熱収縮処理することで製造することができる。」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、前記重ね部に溶着部(35)を形成して筒状シュリンクラベルを成形し、筒状シュリンクラベルに、ラベルの上部または下部から容器を挿入して容器に筒状シュリンクラベルを装着し、ついで熱収縮処理することで製造する筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法において、
使用するシリンダ(20)は、その表面に空気を吸引しまたは排出する空気孔(25)が多数設けられたものであって、切断されたラベル(30)を前記シリンダ表面で吸引しながら安定してまき付けることができ、鉛直に配置されたシリンダ(20)にまきつけるように前記熱収縮性基材フィルム(10)を繰り出し、所定のラベル長に切断し、ラベル(30)の前端部からシリンダ(20)を回転させながらまきつける、筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法。」

3.対比

本願補正発明と引用発明1とを対比すると、

引用発明1の「シュリンクラベル1」又は「ラベル本体11」は本願補正発明の「シュリンクラベル」に相当し、同様に、「筒状に形成されたシュリンクラベル1」は「ロールシュリンクラベル」に相当する。

引用発明1の「他端側」、「一端側」及び「重なり合った部分」は、それぞれ本願補正発明の「終端部」、「始端部」及び「重ね合わせ部」に相当する。
また、本願補正発明における「熱溶着」は、「ヒートシール剤を塗布し、前記熱溶着をヒートシール剤を介して行」うものであるから、「接着」の一種であるといえ、同様に「ヒートシール剤」は「接着剤」の一種であるといえる。
引用発明1は「ラベル本体11の他端側と一端側が重なり合い、重なり合った部分に接着剤13bが設けられて」いるものであるから、引用発明1はラベル本体11の他端側と一端側を重ね合わせ、重なり合った部分に接着剤13bを設ける工程を有しているといえる。この点は本願補正発明の「シュリンクラベルの始端部と終端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を」接着させる工程、及び、接着を「重ね合わせ部を形成して行う」ことに相当する。

引用発明1の「シュリンクラベル1の下部側から容器本体3を挿入して筒状に形成されたシュリンクラベル1を容器本体3に装着した」ことは、本願補正発明の「ロールシュリンクラベルの」「下部側から容器を挿入してロールシュリンクラベルを装着させる装着工程」に相当する。

引用発明1の「シュリンクラベル1は、容器本体3に熱収縮させて装着するもの」であるから、引用発明1はシュリンクラベル1を容器本体3に熱収縮させて装着する工程を有しているといえる。この点は本願補正発明の「装着したロールシュリンクラベルを熱収縮させる熱収縮工程」に相当する。

引用発明1は「ラベル本体11の他端側の裏面に接着剤13bが設けられている」ものであるから、引用発明1はラベル本体11の他端側の裏面に接着剤13bを設ける工程を有しているといえる。この点と本願補正発明の「ヒートシール剤を塗布し、前記熱溶着をヒートシール剤を介して行」うとは、「前記終端部の裏面」に接着剤を塗布し、接着を接着剤を介して行うとの概念で共通する。また、接着剤の塗布が、接着させる工程の前に行われることは自明な事項である。

引用発明1の「ラベル付き容器の製造方法」は、「ラベル」が「筒状に形成されたシュリンクラベル1」であることは明らかであるので、本願補正発明の「ロールシュリンクラベル付き容器の製造方法」に相当する。

したがって、両者は、

「得られたシュリンクラベルの始端部と終端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を接着させる工程と、得られたロールシュリンクラベルの下部側から容器を挿入してロールシュリンクラベルを装着させる装着工程と、装着したロールシュリンクラベルを熱収縮させる熱収縮工程と、を有するロールシュリンクラベル付き容器の製造方法において、
前記接着させる工程の前に、前記終端部の裏面に接着剤を塗布し、前記接着を接着剤を介して行い、前記接着を重ね合わせ部を形成して行うロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明が「ロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程と、前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程」を有するのに対し、引用発明1はその点につき明らかでない点。

[相違点2]
本願補正発明では「ロールシュリンクラベル原反が縦一軸延伸熱収縮フィルム」であるのに対し、引用発明1のフィルムはラベルの周方向に熱収縮性を有するものの、縦一軸延伸熱収縮フィルムであるか否かが明らかでない点。

[相違点3]
「前記接着させる工程の前に、前記終端部の裏面に接着剤を塗布し、前記接着を接着剤を介して行い」に関して、本願補正発明の接着剤が「塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系のヒートシール剤」であり、接着に際して「熱溶着をヒートシール剤を介して行」っているのに対し、引用発明1の接着剤は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系のヒートシール剤ではなく、接着に際して熱溶着をヒートシール剤を介して行っていない点。

[相違点4]
「前記接着を重ね合わせ部を形成して」に関して、本願補正発明では「熱溶着を、エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながらフィルム流れと一致するように該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け」て行うのに対し、引用発明1はその点につき明らかでない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

ア.相違点1について
引用発明2の「縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送」すること及び「前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断」することは、それぞれ本願補正発明におけるロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程」及び「前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程」に相当する。
そして、引用発明1と引用発明2とは、シュリンクラベル付き容器の製造という共通の技術分野に属しており、引用発明1においても、筒状に形成されたシュリンクラベル1を容器本体3に装着するにあたっては、事前に所要のシュリンクラベル1を用意する必要があり、そのような用意のための工程が存在することは明らかであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明1に引用発明2を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ.相違点2について
引用発明2の「縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルム」は、本願補正発明における「縦一軸延伸熱収縮フィルム」に相当する。
そして、引用発明1と引用発明2とは、シュリンクラベル付き容器の製造という共通の技術分野に属し、シュリンクラベルを熱収縮させるという共通の作用・機能を奏するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明1に引用発明2を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

ウ.相違点3について
容器におけるフィルムやシート等の薄膜状物の接着に際して、ヒートシール剤を介して熱溶着すること、そして、ヒートシール剤として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系の剤を用いることは、例えば、特開平9-24972号公報(段落【0007】?【0009】及び図1?3)、特開平11-288223号公報(段落【0008】、【0019】、【0025】)、特開2005-14950号公報(段落【0019】?【0020】、【0026】及び図3)に記載されているように、本願出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明1と上記周知の技術事項とは、容器という共通の技術分野に属し、容器における薄膜状物の接着という共通の作用・機能を有するものであるから、引用発明1に上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明1に上記周知の技術事項を適用することにより、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

エ.相違点4について
引用発明2の「使用するシリンダ(20)は、その表面に空気を吸引しまたは排出する空気孔(25)が多数設けられたものであって、切断されたラベル(30)を前記シリンダ表面で吸引しながら安定してまき付けることができる」ことは、本願補正発明における「エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながら」「該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け」ることに相当する。
また、引用発明2は「鉛直に配置されたシリンダ(20)にまきつけるように前記熱収縮性基材フィルム(10)を繰り出し、所定のラベル長に切断し、ラベル(30)の前端部からシリンダ(20)を回転させながらまきつけ」るものであるから、所定のラベル長に切断した後のラベル(30)も熱収縮性基材フィルム(10)を繰り出す方向にシリンダ(20)にまきつけられるものといえ、この点は、本願補正発明におけるシュリンクラベルを「フィルム流れと一致するように」巻き付けることに相当する。

そして、引用発明1と引用発明2とは、シュリンクラベル付き容器の製造という共通の技術分野に属し、シュリンクラベルを筒状にするという共通の作用・機能を奏するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明1に引用発明2を適用することにより、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び2、並びに、上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び2、並びに、上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび

以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願の発明について

1.本願の発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年6月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項11】
ロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程と、前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程と、得られたシュリンクラベルの始端部と終端部を重ね合わせ、重ね合わせ部を熱溶着させる溶着工程と、得られたロールシュリンクラベルの上部側または下部側から容器を挿入してロールシュリンクラベルを装着させる装着工程と、装着したロールシュリンクラベルを熱収縮させる熱収縮工程と、を有するロールシュリンクラベル付き容器の製造方法において、
前記ロールシュリンクラベル原反が縦一軸延伸熱収縮フィルムであり、かつ、前記溶着工程の前に、前記始端部の表面および前記終端部の裏面の少なくとも一方にヒートシール剤を塗布し、前記熱溶着をヒートシール剤を介して行うことを特徴とするロールシュリンクラベル付き容器の製造方法。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2.1.本件補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明に係る「ヒートシール剤」について「塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系の」の限定を省くとともに、「熱溶着」について「前記熱溶着を、エアバキューム状円筒シリンダーを用いて、前記シュリンクラベルをエアーで吸引しながらフィルム流れと一致するように該エアバキューム状円筒シリンダーに円筒状に巻き付け、重ね合わせ部を形成して行」うとの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、上記「第2.3.対比」で挙げた相違点における「ロールシュリンクラベル原反を搬送する搬送工程と、前記ロールシュリンクラベル原反を所定の長さに裁断してする裁断工程」の点、「ロールシュリンクラベル原反が縦一軸延伸熱収縮フィルム」である点、及び、接着に際して「熱溶着をヒートシール剤を介して行う」点のみとなるから、上記「第2.4.判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-07 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2010-173058(P2010-173058)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 洋允  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
森次 顕
発明の名称 ロールシュリンクラベル付き容器の製造方法  
代理人 本多 一郎  

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