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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04B |
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管理番号 | 1321708 |
審判番号 | 不服2016-1415 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-29 |
確定日 | 2016-11-29 |
事件の表示 | 特願2014-535986「電力結合式電力増幅器を有するマルチアンテナワイヤレスデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日国際公開、WO2013/056261、平成26年12月 4日国内公表、特表2014-532378、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成24年(2012年)10月15日(パリ条約による優先権主張 2011年10月14日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 平成26年 4月14日 国内書面 平成27年 4月 2日 拒絶理由通知 平成27年 7月 7日 意見書、手続補正書 平成27年 9月15日 拒絶査定 平成28年 1月29日 審判請求、手続補正書 平成28年 3月 3日 前置報告 平成28年 8月16日 拒絶理由通知 平成28年 9月 5日 意見書、手続補正書 第2.特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲の記載は、平成28年9月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 装置であって、 第1の動作モード、第2の動作モード、および第3の動作モードにおい て、第1の入力信号を増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成された第1の電力増幅器と、 第2の電力増幅器であって、 前記第1の動作モードにおいて、第2の入力信号を増幅し、第2のアンテナに第2の出力信号を提供し、 前記第2の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、前記第2のアンテナに第3の出力信号を提供し、 前記第3の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、第4の出力信号を提供する、ここにおいて、前記第4の出力信号は、第5のスイッチにより前記第1の出力信号に電力結合され、前記第1のアンテナに提供される、 ように構成される第2の電力増幅器と、 を備える装置。 【請求項2】 前記第1の動作モードは、多入力多出力(MIMO)送信をサポートす る、請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記第2の動作モードは、送信ダイバーシティをサポートする、請求項1に記載の装置。 【請求項4】 前記第1の動作モードは、キャリアアグリゲーションをサポートし、前記第1の動作モードにおいて、前記第1の電力増幅器は、第1のキャリアのために前記第1の入力信号を増幅し、前記第2の電力増幅器は、第2のキャリアのために前記第2の入力信号を増幅する、請求項1に記載の装置。 【請求項5】 前記第3の動作モードにおいて、前記第1のアンテナに前記第1の出力信号と前記第4の出力信号とが電力結合された出力信号が提供され、前記電力結合された出力信号は、前記第1または前記第4のいずれの出力信号よりも高い最大出力電力を有する、請求項1に記載の装置。 【請求項6】 前記第1の電力増幅器は、第4の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、前記第1のアンテナに第5の出力信号を提供し、前記第2の電力増幅器は、前記第4の動作モードにおいて、ディセーブルにされる、請求項1に記載の装置。 【請求項7】 前記第3および前記第4の動作モードは、異なる無線技術に関連付けら れ、前記第4の出力信号が前記電力結合された前記第1の出力信号は、前記第5の出力信号よりも高い最大出力電力を有する、請求項6に記載の装置。 【請求項8】 前記第1の入力信号を増幅するように構成された第1のドライバ増幅器 と、 前記第1のドライバ増幅器と前記第1の電力増幅器との間に結合された第1の整合回路と、 前記第1または第2の入力信号を増幅するように構成された第2のドライバ増幅器と、 前記第2のドライバ増幅器と前記第2の電力増幅器との間に結合された第2の整合回路と、 をさらに備える、請求項1に記載の装置。 【請求項9】 前記第1の入力信号を前記第1の電力増幅器へとルーティングするように構成された第1のスイッチと、 前記第2の入力信号を前記第2の電力増幅器へとルーティングするように構成された第2のスイッチと、 前記第1の入力信号を前記第2の電力増幅器へとルーティングするように構成された第3のスイッチと、 をさらに備える、請求項1に記載の装置。 【請求項10】 前記第2の入力信号を前記第1の電力増幅器へとルーティングするように構成された第4のスイッチをさらに備え、前記第1のスイッチおよび前記第3のスイッチは、第1の入力ポートに結合され、前記第2および前記第4のスイッチは、第2の入力ポートに結合される、請求項9に記載の装置。 【請求項11】 前記第1の電力増幅器に結合された第3の整合回路と、 前記第2の電力増幅器に結合された第4の整合回路と、 前記第1および前記第2の整合回路に結合され、前記第3の動作モードにおいて前記第1および前記第2の電力増幅器を電力結合するように構成された第5の整合回路と、 をさらに備える、請求項1に記載の装置。 【請求項12】 前記第1の電力増幅器と前記第1のアンテナとの間に結合され、前記第1の出力信号を前記第1のアンテナにルーティングするように構成された第6のスイッチと、 前記第2の電力増幅器と前記第2のアンテナとの間に結合され、前記第2の出力信号を前記第2のアンテナにルーティングするように構成された第7のスイッチと をさらに備える、請求項1に記載の装置。 【請求項13】 前記第1および前記第2の電力増幅器は、単一の集積回路(IC)上に組み立てられる、請求項1に記載の装置。 【請求項14】 信号増幅を実行する方法であって、 第1の動作モード、第2の動作モード、および第3の動作モードにおい て、第1のアンテナのための第1の出力信号を得るために、第1の電力増幅器を用いて第1の入力信号を増幅することと、 第2の電力増幅器を用いて入力信号を増幅することであって、 前記第1の動作モードにおいて、第2のアンテナのための第2の出力信号を得るために第2の入力信号を増幅し、 前記第2の動作モードにおいて、前記第2のアンテナのために第3の出力信号を得るために、前記第1の入力信号を増幅し、 前記第3の動作モードにおいて、第4の出力信号を得るために前記第1の入力信号を増幅し、ここにおいて、前記第4の出力信号は、第5のスイッチにより前記第1の出力信号に電力結合され、前記第1のアンテナに提供される、 ように構成される入力信号を増幅することと、 を備える方法。 【請求項15】 前記第1の動作モードは、多入力多出力(MIMO)送信をサポートす る、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記第2の動作モードは、送信ダイバーシティをサポートする、請求項14に記載の方法。 【請求項17】 装置であって、 第1の動作モード、第2の動作モード、および第3の動作モードにおい て、第1の入力信号を増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成された、増幅するための第1の手段と、 増幅するための第2の手段であって、 前記第1の動作モードにおいて、第2の入力信号を増幅し、第2のアンテナに第2の出力信号を提供し、 前記第2の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、前記第2のアンテナに第3の出力信号を提供し、 前記第3の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、第4の出力信号を提供する、ここにおいて、前記第4の出力信号は、第5のスイッチにより前記第1の出力信号に電力結合され、前記第1のアンテナに提供される、 ように構成される増幅するための第2の手段と、 を備える装置。 【請求項18】 前記第1の動作モードは、多入力多出力(MIMO)送信をサポートす る、請求項17に記載の装置。 【請求項19】 前記第1の動作モードは、送信ダイバーシティをサポートする、請求項17に記載の装置。 【請求項20】 第5の動作モードにおいて、前記第1の入力信号を増幅し、前記第1のアンテナに第6の出力信号を提供するように構成されたドライバ増幅器をさらに備え、前記第1の入力信号は、前記第5の動作モードにおいて、前記第1および第2のいずれの電力増幅器によっても増幅されない、請求項1に記載の装置。」 第3.当審の拒絶理由の概要 平成28年8月16日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の請求項の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないというものである。 上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載したように、本願の特許請求の範囲の請求項の記載は、補正によって明確なものとなり、また、発明の詳細な説明に記載された実施例との対応も明確になったので、当審の拒絶理由は解消した。 第4.原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、本願の請求項1-20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 刊行物1.国際公開第2008/117400号 刊行物2.特開平10-107685号公報 刊行物3.国際公開第2010/132618号 第5.当審の判断 1.引用発明 上記刊行物1(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の記載がなされている。(下線は当審が付与した。) (1)「[0001] 本発明は、通信方式が異なる複数の通信システムに対応したデュアルモード無線端末の送信装置として有用な無線送信装置に関する。」 (2)「[0011] 図3は、定包絡線信号生成部21の動作を直交変面座標上で、信号ベクトルを用いて表したものである。図3に示すように、入力信号S(t)は、振幅がVmax/2の二つの定包絡線信号S1(t)、S2(t)のベクトル和で表されることが分かる。二つの定包絡線信号S1(t)、S2(t)をそれぞれ第1の及び第2の増幅器22,23で増幅した場合、第1及び第2の増幅器22,23の利得をGとすると、第1及び第2の増幅器22,23の出力の信号は、それぞれG×S1(t)、G×S2(t)となる。そして、これらの信号G×S1(t)、G×S2(t)を合成器24によりベクトル合成すると、出力信号G×S(t)を得ることができる。ここで、第1及び第2の増幅器22,23は、振幅方向が定数の定包絡線信号S1(t)、S2(t)を増幅するので、入力信号を非線形領域、つまり飽和領域で増幅することが可能となり、それぞれの電力効率を高くして使用することができる。このように、このLINC方式の増幅回路20では、第1の及び第2の増幅器22,23として非線形増幅器を用いることができるので、高効率化が可能となる。」 (3)「発明が解決しようとする課題 [0012] ところで、近年の通信システムには、MIMO(Multi Input Multi Output)や送信ダイバーシチの通信技術を用いたものがある。このMIMOや送信ダイバーシチの通信技術を用いた無線送信装置では、複数のアンテナを用いて信号の送信を行っている。従って、この無線送信装置では、送信ダイバーシチやMIMOを必要としない最大送信電力が高い通信システムでは1本のアンテナで信号を送信し、送信ダイバーシチやMIMOを必要とする最大送信電力が低い通信システムでは2本のアンテナで信号を送信するように構成することで、送信性能を向上させることができる。 [0013] しかしながら、このように最大送信電力が異なる二つの通信システムの信号を、二つのアンテナを用いて送信する無線送信装置を、前記従来のLINC方式の増幅回路を用いて構成した場合には、それぞれの通信システムに対応した増幅器もしくは送信回路を別途実装する必要があるた め、回路規模が大きくなってしまうという課題がある。 [0014] また、このような構成の無線送信装置では、最大送信電力が低い通信システムの信号を出力する場合にバックオフ(最大電力を与える入力電力の、所望の直線性を得る入力電力に対する比率)を大きくする必要があるため、増幅器として線形増幅器を用いると、電力効率が低下して消費電力が大きくなってしまうという課題がある。 [0015] 本発明は、最大送信電力が異なる二つの通信システムに対応した小型で電力効率のよい無線送信装置を提供することである。」 (4)「発明の効果 [0017] 本発明によれば、第1の通信システムの信号を送信する場合には、定包絡線信号生成部で生成した第1及び第2の定包絡線信号を、第1及び第2の増幅器を非線形増幅器として動作させて増幅した後、合成器で合成して1本の第1のアンテナで送信するので、送信信号を電力効率よく増幅することができる。また、最大送信電力が低い第2の通信システムの信号を送信する場合には、第2の信号変調部が出力する変調信号を、第1及び第2の増幅器を線形増幅器として動作させて増幅した後、2本の第1及び第2のアンテナで送信するので、各通信システムに対応した増幅器もしくは送信回路を別途実装する必要が無いので、小型で電力効率よく効率劣化が少ない通信方式が異なる二つの通信システムに対応した無線送信装置を実現することができる。」 (5)「[0022] 本例の無線送信装置100においては、変調選択部101が、入力信号(データ)を、第1通信システム(GSM/EDGEシステム)又は第2の通信システム(UMTS/3G-LTEシステム)の何れの通信システムの信号を送信するかを選択する。 [0023] まず、変調選択部101が第1の通信システム、つまり最大送信電力が高いGSM/EDGEシステムの信号を送信するように選択した 場合について説明する。この場合には、変調選択部101が入力されたデータをGSM/EDGE変調部102に送信する。また、この場合には、図4 に示すように、変調選択部101が、第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bに対して第1及び第2の増幅器106a,106bの出力端と合成器108の入力端とを接続するように、アンテナ入力切替ス イッチ109に対して合成器108の出力端とアンテナ110aの入力端とを接続するように制御情報を送る。 [0024] そして、GSM/EDGE変調部102は、変調選択部10 1から入力されるデータを変調し、この変調信号Sを定包絡線信号生成部104へ出力する。定包絡線信号生成部104は、GSM/EDGE変調部1 02から入力される変調信号Sから二つの定包絡線信号S1及びS2を生成し、これらの定包絡線信号S1及びS2を、それぞれIQ信号として第1及び第2の直交変調部105a,105bへ出力する。 [0025] 第1及び第2の直交変調部105a,105bは、定包絡線信号生成部104から入力されるIQ信号S1I,S1Q,S2I,S2Qを、DA変換器(不図示)でDA変換した後、直交変調器で直交変調し、これらの変調信号S1,S2を第1及び第2の増幅器106a,106bにそれぞれ出力する。 [0026] 第1及び第2の増幅器106a,106bは、第1及び第2の直交変調部105a,105bから入力される変調信号S1,S2を増幅し、これらを第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bを介して合成器108にそれぞれ出力する。 [0027] このとき、第1及び第2の増幅器106a,106bは、例えばF級アンプのような非線形増幅器として動作するように電源電圧が制御される。これにより、第1及び第2の増幅器106a,106bは、第1及び第2の直交変調部105a,105bから入力される定包絡線信号S1,S2を高効率で増幅することができる。 [0028] 合成器108は、第1及び第2の増幅器106a,106bから第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bを介して入力される変調信号S1,S2の増幅信号を合成し、これを、アンテナ入力切替スイッチ109を介して第1のアンテナ110aに送る。第1のアンテナ110aは、合成器108から入力される増幅されて合成された変調信号Sを送信する。 [0029] このように、本例の無線送信装置100においては、変調選択部101が第1の通信システム(最大送信電力が高いGSM/EDGEシ ステム)の信号を送信するように選択した場合には、第1及び第2の増幅器106a,106bが、LINC方式のF級アンプのような非線形増幅器として動作する。 [0030] 次に、変調選択部101が第2の通信システム、つまり最大送信電力が低いUMTS/3G-LTEシステムの信号をMIMO送信するように選択した場合について説明する。この場合には、変調選択部101が入力されたデータをUMTS/3G-LTE変調部103に送信する。ま た、この場合には、図5に示すように、変調選択部101が、第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bとアンテナ入力切替スイッチ109とに対して、第1及び第2の増幅器106a,106bの出力端と第1及び第2のアンテナ110a,110bの入力端とをそれぞれ接続するように制御情報を送る。 [0031] そして、UMTS/3G-LTE変調部103は、変調選択部101から入力されるデータから二つの変調信号を生成し、二つの変調信号をそれぞれIQ信号I1,Q1,I2,Q2として第1及び第2の直交変調部105a,105bへ出力する。 [0032] 第1及び第2の直交変調部105a,105bは、UMTS/3G-LTE変調部103から入力されるIQ信号I1,Q1,I2,Q2を、DA変換器(不図示)でDA変換した後、直交変調器で直交変調し、これらの変調信号S1,S2を第1及び第2の増幅器106a,106bにそれぞれ出力する。 [0033] 第1及び第2の増幅器106a,106bは、第1及び第2の直交変調部105a,105bから入力される変調信号S1,S2を増幅し、これらを第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bとアンテナ入力切替スイッチ109とを介して第1及び第2のアンテナ110a,110bにそれぞれ出力する。第1及び第2のアンテナ110a,110bは、第1及び第2の増幅器106a,106bから第1及び第2のアンプ出力切替スイッチ107a,107bとアンテナ入力切替スイッチ109とを介して入力される増幅された変調信号S1,S2を送信する。 [0034] このとき、第1及び第2の増幅器106a,106bは、例えばAB級増幅器のような線形増幅器として動作するように電源電圧が制御される。これにより、第1及び第2の増幅器106a,106bは、バックオフは最小限でよいので、第1及び第2の直交変調部105a,105bから入力される変調信号S1,S2を効率劣化なく増幅することができる。 [0035] このように、本例の無線送信装置100においては、GSM/EDGEシステムのような最大送信出力が高い第1の通信システムの信号を、図4に示すように1本の第1のアンテナ110aのみで送信する場合には、第1及び第2の増幅器106a,106bを、F級アンプのような非線形増幅器とし、LINC方式により飽和領域で使うように動作させるので、高効率な増幅が行える。また、UMTS/3G-LTEシステムのような最大送信電力が低い第2の通信システムの信号を、図5に示すように2本の第1及び第2のアンテナ110a,110bでMIMO送信する場合には、第1及び第2の増幅器106a,106bを、AB級増幅器のような線形増幅器として動作させるので、効率劣化の少ない増幅が行える。」 (6)「[0038] また、本例の無線送信装置100では、2本のアンテナ110a,110bで送信する通信システムとして、MIMOの送信技術を用いた場合を示したが、2本のアンテナ110a,110bで送信する通信システムとしては、送信ダイバーシチの通信技術を用いた場合でも同様の効果を得ることができる。」 (7)「 請求の範囲 [1] 第1の通信システムと、当該第1の通信システムよりも最大送信電力が低い第2の通信システムとに対応した無線送信が可能な無線送信装置であって、 前記第1の通信システムの変調方式で入力信号を変調する第1の変調部 と、 前記第2の通信システムの変調方式で入力信号を変調する第2の変調部 と、 前記入力信号を、前記第1又は第2の変調部の何れに入力するかを選択する変調選択部と、 前記第1の変調部が出力する変調信号から第1及び第2の定包絡線信号を生成する定包絡線信号生成部と、 増幅器をそれぞれ有する第1及び第2の送信回路と、 第1及び第2のアンテナと、 前記第1及び第2の送信回路の出力を合成する合成器と、 前記第1の通信システムの信号を送信する場合には、前記第1及び第2の送信回路の出力を前記合成器に入力し、当該合成器の出力を前記第1のアンテナのみに入力し、 前記第2の通信システムの信号を送信する場合には、前記第1及び第2の送信回路の出力を前記第1及び第2のアンテナの両方に入力するように伝送線路を切り替える切り替え部と、 を具備する無線送信装置。」 したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 第1の通信システムと、当該第1の通信システムよりも最大送信電力が低い第2の通信システムとに対応した無線送信が可能な無線送信装置であっ て、 前記第1の通信システムの変調方式で入力信号を変調する第1の変調部 と、 前記第2の通信システムの変調方式で入力信号を変調する第2の変調部 と、 前記入力信号を、前記第1又は第2の変調部の何れに入力するかを選択する変調選択部と、 前記第1の変調部が出力する変調信号から第1及び第2の定包絡線信号を生成する定包絡線信号生成部と、 増幅器をそれぞれ有する第1及び第2の送信回路と、 第1及び第2のアンテナと、 前記第1及び第2の送信回路の出力を合成する合成器と、 前記第1の通信システムの信号を送信する場合には、前記第1及び第2の定包絡線信号を前記第1及び第2の送信回路の増幅器でそれぞれ増幅し、前記第1及び第2の送信回路の出力を前記合成器に入力し、当該合成器の出力を前記第1のアンテナのみに入力し、 前記第2の通信システムの信号を送信する場合には、前記第2の変調部が出力する変調信号を前記第1及び第2の送信回路の増幅器でそれぞれ増幅 し、前記第1及び第2の送信回路の出力を、MIMO送信または送信ダイ バーシチするように、前記第1及び第2のアンテナの両方に入力するように伝送線路を切り替える切り替え部と、 を具備する無線送信装置。 2.対比 本願の請求項1-20に係る発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載された事項により特定されるとおりのものである。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明において、第1の通信システムの信号を送信する場合は、第1及び第2の送信回路の増幅器でそれぞれ増幅した出力を、第1のアンテナのみに入力する。 本願発明の第3の動作モードでは、第1の電力増幅器及び第2の電力増幅器は、どちらも、第1の入力信号を増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成されている。 したがって、引用発明の第1の通信システムの信号を送信する場合と、本願発明の第3の動作モードとは対応するものである。 (イ)本願発明の第1の動作モードでは、第1の電力増幅器は、第1の入力信号を増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成されており、第2の電力増幅器は、第2の入力信号を増幅し、第2のアンテナに第2の出力信号を提供するように構成されているので、「多入力多出力(MIMO)送信をサポートする」(請求項2)ことができるものである。 本願発明の第2の動作モードでは、第1の電力増幅器は、第1の入力信号を増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成されており、第2の電力増幅器は、第1の入力信号を増幅し、第2のアンテナに第3の出力信号を提供するように構成されているので、「送信ダイバーシティをサポートする」(請求項3)ことができるものである。 したがって、引用発明のMIMO送信または送信ダイバーシチする第2の通信システムの信号を送信する場合と、本願発明の第1の動作モード(MIMO送信のとき)または第2の動作モード(送信ダイバーシチのとき)とは対応するものである。 (ウ)引用発明の「第1の送信回路」が有する「増幅器」及び「第2の送信回路」が有する「増幅器」は、本願発明の「第1の電力増幅器」及び「第2の電力増幅器」にそれぞれ対応する。 (エ)引用発明の「第1の変調部が出力する変調信号」は、本願発明の「第3の動作モード」における「第1の入力信号」に対応する。 (オ)引用発明の「第2の変調部が出力する変調信号」は、MIMO送信のとき、本願発明の「第1の動作モード」における「第1の入力信号」及び 「第2の入力信号」に対応し、送信ダイバーシチのとき、本願発明の「第2の動作モード」における「第1の入力信号」に対応する。 (カ)引用発明の「第1及び第2の定包絡線信号」は、本願発明の「第3の動作モード」における「第1の入力信号」に対応する「第1の変調部が出力する変調信号」から生成されたものであり、本願発明の「第4の出力信号」は、「第3の動作モード」において「第1の入力信号」を増幅したものである。そして、上記(エ)のとおり引用発明の「第1の変調部が出力する変調信号」は、本願発明の「第3の動作モード」における「第1の入力信号」に対応するので、上記引用発明の「第1及び第2の定包絡線信号」を増幅した「第1及び第2の送信回路の出力」は、「第1の変調部が出力する変調信 号」から生成されたもの(本願発明の「第3の動作モード」における「第1の入力信号」に対応する。)に基づく点で、本願発明の「第3の動作モー ド」における「第1の出力信号」及び「第4の出力信号」と共通する。 (キ)引用発明の「切り替え部」は、「前記第1の通信システムの信号を送信する場合には、前記第1及び第2の送信回路の出力を前記合成器に入力 し、当該合成器の出力を前記第1のアンテナのみに入力し」とするように伝送線路を切り替える点、すなわち、2つの出力を電力結合するように切り替える機能の点で、本願発明の「第5のスイッチ」と共通する。 したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。 (1)一致点(MIMO送信のとき) 装置であって、 第1の動作モードにおいて、第1の入力信号を増幅し、および第3の動作モードにおいて、第1の入力信号に基づいて増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成された第1の電力増幅器と、 第2の電力増幅器であって、 前記第1の動作モードにおいて、第2の入力信号を増幅し、第2のアンテナに第2の出力信号を提供し、 前記第3の動作モードにおいて、前記第1の入力信号に基づいて増幅 し、第4の出力信号を提供する、ここにおいて、前記第4の出力信号は、前記第1の出力信号に電力結合され、前記第1のアンテナに提供される、 ように構成される第2の電力増幅器と、 を備える装置。 (2)一致点(送信ダイバーシチのとき) 装置であって、 第2の動作モードにおいて、第1の入力信号を増幅し、および第3の動作モードにおいて、第1の入力信号に基づいて増幅し、第1のアンテナに第1の出力信号を提供するように構成された第1の電力増幅器と、 第2の電力増幅器であって、 前記第2の動作モードにおいて、前記第1の入力信号に基づいて増幅 し、前記第2のアンテナに第3の出力信号を提供し、 前記第3の動作モードにおいて、前記第1の入力信号に基づいて増幅 し、第4の出力信号を提供する、ここにおいて、前記第4の出力信号は、前記第1の出力信号に電力結合され、前記第1のアンテナに提供される、 ように構成される第2の電力増幅器と、 を備える装置。 (3)相違点1 引用発明は、前記「(1)一致点(MIMO送信のとき)」及び前記 「(2)一致点(送信ダイバーシチのとき)」のいずれの場合でも、その第3の動作モードに相当する第1の通信システムに対応した場合において、本願発明の「第1の入力信号」に対応する「第1の変調部が出力する変調信号」から、「定包絡線信号生成部」で生成された「第1及び第2の定包絡線信号」を、本願発明の「第1の電力増幅器」と「第2の電力増幅器」に対応する「第1及び第2の送信回路の増幅器」でそれぞれ増幅し、それらの出力を「合成器」に入力して電力結合するように、「切り替え部」が伝送線路を切り替えるものである。 これに対して、本願発明は、第3の動作モードにおいて、「第1の電力増幅器」と「第2の電力増幅器」は、同じ「第1の入力信号」をそれぞれ増幅し、それらの出力信号を「第5のスイッチ」により電力結合するものである点。 (4)相違点2 引用発明は、前記「(1)一致点(MIMO送信のとき)」及び前記 「(2)一致点(送信ダイバーシチのとき)」のように、第2の通信システムの信号を送信する場合には、本願発明の「第1の動作モード」に相当するMIMO送信と、「第2の動作モード」に相当する送信ダイバーシチの、いずれか一方の場合を備えるのに対して、本願発明は、「第1の動作モード」と「第2の動作モード」の両方を備える点。 3.判断 上記相違点1について検討する。 引用発明は、「定包絡線信号生成部」及び「合成器」を備え、「第1の変調部が出力する変調信号」から、「定包絡線信号生成部」で生成された「第1及び第2の定包絡線信号」を、「第1及び第2の送信回路の増幅器」でそれぞれ増幅し、それらの出力を「合成器」に入力して合成することで、前記「1.引用発明」の(3)「発明が解決しようとする課題……」を解決し て、(4)「発明の効果 …… 小型で電力効率よく効率劣化が少ない通信方式が異なる二つの通信システムに対応した無線送信装置を実現することができる。」という効果を得るものである。 引用発明の第1の通信システムに対応するGSMシステムにおいて、2つの電力増幅器で同じ入力信号を増幅してスイッチを介して電力結合することが、前記「第4.原査定の理由の概要」の刊行物3のように、知られているとしても、引用発明において「定包絡線信号生成部」及び「合成器」を用いることなく、刊行物3のように電力結合することは、上記の引用発明が解決しようとする課題が解決できなくなるので、そのようにすることは、当業者が容易にできることとはいえない。 したがって、上記相違点2、及び送信ダイバーシチを行う高信頼伝送モードとMIMO送信を行う高速伝送モードとを切り替えることが記載された前記刊行物2を検討するまでもなく、本願発明は、刊行物1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 他の請求項に係る発明についても同様である。 第6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1-20に係る発明は、前記刊行物1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-14 |
出願番号 | 特願2014-535986(P2014-535986) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04B)
P 1 8・ 537- WY (H04B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原田 聖子、小池 堂夫 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
加藤 恵一 吉田 隆之 |
発明の名称 | 電力結合式電力増幅器を有するマルチアンテナワイヤレスデバイス |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |