• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 産業上利用性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1321723
審判番号 不服2015-12175  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-26 
確定日 2016-12-12 
事件の表示 特願2013-180357「処理装置およびその作動方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-233470、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成15年5月27日に出願された特願2003-149567号の一部を、平成21年7月30日に新たな特許出願とした特願2009-178307号の一部を、平成24年8月28日にさらに新たな特許出願とした特願2012-188075号の一部を、平成25年8月30日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成25年9月26日に上申書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年12月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月19日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年7月30日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月2日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、平成27年3月18日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、その後、平成28年6月22日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それおぞれの発明を「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成28年8月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められる。
そのうち、本願発明1は、分説してA)からE)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

「A)被写体の画像診断の診断レポートとともに出力されるスライス画像を該被写体の医療用画像から選択する処理装置であって、
B)撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像についての該被写体の診断内容を示す診断情報に対応する、該医療用画像における病変の領域に基づいて、該医療用画像に含まれるスライス画像を選択する選択手段と、
C)前記選択手段により選択されるスライス画像を出力する出力手段と、を有し、
D)前記選択手段は、前記医療用画像から前記病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引くことを特徴とする
E)処理装置。」

また、本願発明11は、分説してH)からK)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

「【請求項11】
H)撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像データについての該被写体の診断内容を示す診断情報に基づいて、一部の医療用画像データを前記医療用画像データから選択する選択手段と、
I)前記選択手段により選択される医療用画像データを出力する出力手段と、を有し、
J)前記選択手段は、前記医療用画像データから病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引くことを特徴とする
K)処理装置。」

第3 原査定の理由について

1 原査定の理由の概要

原査定における拒絶の理由は、以下のとおりである。

「[理由1]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1,4,8-17
・引用文献 1
〔備考〕
引用文献1には、X線CTスキャナ、MRI装置などの収集装置3で撮影された医用画像を通信ネットワーク2で計算機1に送り、計算機1の中でデータ保存ユニット16に医用画像を保存し、入力器24でオペレータが入力する画像の収集条件に合致する医用画像を対象画像選択プロセッサ18にて選択し、その選択された医用画像に対して異常候補検出プロセッサ19にてCADを実行して異常領域候補を検出し、その情報を医用画像のファイルに付加してデータ保存ユニット16に保存し、表示器22にて異常領域候補の位置を示すマーカMKを医用画像に重畳して表示する画像処理装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記載されている(【0015】-【0056】及び【図1】-【図8】参照。)。上記入力器24でオペレータが入力する画像の収集条件は、引用文献1の段落【0036】に開示されているように、
(1) 収集装置の機種(X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置など、収集装置の種類、さらには、収集装置の型名(通常、同一種類の収集装置であっても、複数の型名がある))、
(2) 患者体位(収集時の患者の姿勢が仰向けか、うつ伏せかなど)、
(3) 部位名称(患者の収集部位が胸部か、頭部か、または腹部かなど)
(4) 画像観察方向(頭部から、または、足からなど)
(5) 造影剤の有無(X線CT検査では造影剤を注入してデータ収集を行う場合があるので、データ収集時に造影剤を使用したか否か)、
(6) 造影剤の種類(造影剤を使用したときには、その種類)、
(7) 画像マトリクスサイズ(X線CT画像は画素値を有する複数のピクセルで構成されるので、その2次元のピクセル数。例えば縦512×横512のピクセル数)、
(8) ピクセルサイズ(画像を構成する1ピクセルの人体における実際のサイズ)、が各収集装置に共通する項目であり、収集装置がX線CT装置である場合には、とくに、
(9) スキャン方法(例えばX線CTでは、データ収集中に寝台の位置を固定して撮影する通常スキャンと、寝台の位置を移動しながら撮影するヘリカルスキャンなどがある)、
(10) ヘリカルスキャンにおける寝台移動速度(X線CT装置のX線管が1回転する間に移動させる寝台の位置)、
(11) 画像再構成関数(X線CT画像を再構成するための関数)、
(12) X線のビーム幅(X線CT装置のデータ収集時に曝射されるX線ビームの体軸方向の幅)、
(13) ガントリ傾斜角(X線CT装置のX線管球の回転軌道面の寝台移動方向に対する傾斜角度)
(14) X線管電圧(X線CT装置のX線管の管電圧)
(15) 露光量(X線CT装置が曝射するX線の量)
(16) スライス間隔(X線CT画像を再構成する患者の位置間隔)の項目
というものである。

[理由2]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-17
・引用文献 1-5
〔備考〕
引用文献1には、X線CTスキャナ、MRI装置などの収集装置3で撮影された医用画像を通信ネットワーク2で計算機1に送り、計算機1の中でデータ保存ユニット16に医用画像を保存し、入力器24でオペレータが入力する画像の収集条件に合致する医用画像を対象画像選択プロセッサ18にて選択し、その選択された医用画像に対して異常候補検出プロセッサ19にてCADを実行して異常領域候補を検出し、その情報を医用画像のファイルに付加してデータ保存ユニット16に保存し、表示器22にて異常領域候補の位置を示すマーカMKを医用画像に重畳して表示する画像処理装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記載されている(【0015】-【0056】及び【図
1】-【図8】参照。)。上記入力器24でオペレータが入力する画像の収集条件は、引用文献1の段落【0036】に開示されているように、
(1) 収集装置の機種(X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置など、収集装置の種類、さらには、収集装置の型名(通常、同一種類の収集装置であっても、複数の型名がある))、
(2) 患者体位(収集時の患者の姿勢が仰向けか、うつ伏せかなど)、
(3) 部位名称(患者の収集部位が胸部か、頭部か、または腹部かなど)
(4) 画像観察方向(頭部から、または、足からなど)
(5) 造影剤の有無(X線CT検査では造影剤を注入してデータ収集を行う場合があるので、データ収集時に造影剤を使用したか否か)、
(6) 造影剤の種類(造影剤を使用したときには、その種類)、
(7) 画像マトリクスサイズ(X線CT画像は画素値を有する複数のピクセルで構成されるので、その2次元のピクセル数。例えば縦512×横512のピクセル数)、
(8) ピクセルサイズ(画像を構成する1ピクセルの人体における実際のサイズ)、が各収集装置に共通する項目であり、収集装置がX線CT装置である場合には、とくに、
(9) スキャン方法(例えばX線CTでは、データ収集中に寝台の位置を固定して撮影する通常スキャンと、寝台の位置を移動しながら撮影するヘリカルスキャンなどがある)、
(10) ヘリカルスキャンにおける寝台移動速度(X線CT装置のX線管が1
回転する間に移動させる寝台の位置)、
(11) 画像再構成関数(X線CT画像を再構成するための関数)、
(12) X線のビーム幅(X線CT装置のデータ収集時に曝射されるX線ビームの体軸方向の幅)、
(13) ガントリ傾斜角(X線CT装置のX線管球の回転軌道面の寝台移動方向に対する傾斜角度)
(14) X線管電圧(X線CT装置のX線管の管電圧)
(15) 露光量(X線CT装置が曝射するX線の量)
(16) スライス間隔(X線CT画像を再構成する患者の位置間隔)の項目
というものである。
また、引用文献2には、X線CT画像の三次元画像処理を行う装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、三次元画像を作成するために使用するX線CTデータの指定と、対象物の空間領域やCT値範囲などのパラメータの指定と、三次元画像表示のための投影処理パラメータの指定を行うと、三次元画像処理サーバーがボリュームレンダリングを行い三次元画像を作成してその結果をパーソナルコンピュータに転送し、パーソナルコンピュータがその結果画像を表示する装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記載されている(段落【0030】-【0067】及び【図1】-【図11】参照。)。
そして、引用文献3には、X線CT画像の三次元画像処理を行う装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、三次元画像を作成する処理の例として、ボリュームレンダリング処理が記載されている(段落【0094】参照。)。
さらに、引用文献4には、医用画像の処理及び表示を行う装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、入力手段1において入力された所見に基づいて記憶手段2に記憶されたテーブルを参照して画像データS0に施す画像処理についての最適画像処理パラメータPを取得する技術(段落【0045】参照。)、及び入力手段1において入力された所見に所見領域
を表すキーワードが含まれている場合に、所見から所見領域を表す領域情報を得る技術(段落【0061】参照。)が開示されている。
そして、引用文献5には、医用画像の処理及び表示を行う装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、医用画像から臓器抽出や任意の領域抽出を行う技術が開示されている(全文、全図参照。)。
上記引用文献2-5は、医用画像の処理及び表示を行う装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムという引用文献1と同一の技術分野に属する文献であるから、引用文献2-5に開示された発明及び技術を、引用文献1に記載された画像処理装置、方法及びその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに適用して、本願の請求項1-17に係る発明とすること
は、当業者ならば容易になし得たことである。
そして、請求項1-17に係る発明の効果は、引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-5に開示された発明及び技術から当業者が予測しうる程度のものに過ぎない。
よって、請求項1-17に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-5に開示された発明及び技術から当業者が容易になし得たことである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2000-20628号公報
2.特開2002-336241号公報
3.特開2002-207824号公報
4.特開2002-324230号公報
5.特開平7-129751号公報」

2 原査定の理由の判断

(1)各引用文献の記載事項

ア 引用文献1の記載事項
上記引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審において付加したものである。以下、同様。)。

(引1-ア)
「【請求項1】 医用画像の医学的に異常と思われる領域の候補を画像処理アルゴリズムで検出し、その検出結果を提示して診断支援を行うコンピュータ支援診断システムにおいて、
前記医用画像を入力する画像入力手段と、その入力した医用画像および前記検出結果を含むデータを保存するデータ保存手段と、前記画像処理アルゴリズムの処理対象である検査単位分の医用画像が入力完了したことを判定する入力完了判定手段と、その入力完了が判定されたときに、その入力した医用画像から前記画像処理アルゴリズムの処理対象である医用画像を画像収集条件に基づいて自動的に選択する画像選択手段と、その選択された医用画像の前記異常領域候補を検出する異常候補領域検出手段と、この検出結果の表示を手動で指示する表示指示手段と、この表示指示があったときに前記検出結果をモニタに表示する表示手段と、を備えたことを特徴とするコンピュータ支援診断システム。」

(引1-イ)
「【0031】ここで、医用画像が胸部X線CT画像であると仮定して、入力完了判定処理を図4に基づき説明する。
【0032】胸部X線CT画像は、図5に示す如く、1人の患者当たり複数の断層画像で形成される。つまり、この所定数の複数枚の断層画像が、その患者1人分の検査単位分の画像データということになり、後述するように、異常候補検出プロセッサ19では、この複数枚の断層画像が異常領域候補の検出処理に処せられる。そして、この検出処理が済むと、データ保存ユニット16の対応するファイルには図3(b)に模式的に示す如く、そのファイルは検出処理済みであることを示す情報(検出処理済み情報)が既に付加されている。」

(引1-ウ)
「【0035】このようにして入力完了が判定されると、対象画像選択プロセッサ18によって、後述する検出処理の対象となる画像の選択処理に移行する(図2ステップS4、図1:d参照)。この選択処理は本発明の特徴の1つを成すものであり、各ファイルの画像データに付帯する「収集条件」を参照して行われる。異常領域候補の検出処理は、画質の影響を受け、その影響により検出結果も変わってくる。このため、以下に示す「収集条件」の各項目について、オペレータから入力器24を介して指定された「収集条件」の項目内容と合致するかどうかをチェックし、全ての項目について合致するファイルを対象画像として選択する(図2ステップS4、図1:d参照)。
【0036】このための「収集条件」の項目としては、(1) 収集装置の機種(X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置など、収集装置の種類、さらには、収集装置の型名(通常、同一種類の収集装置であっても、複数の型名がある))、(2) 患者体位(収集時の患者の姿勢が仰向けか、うつ伏せかなど)、(3) 部位名称(患者の収集部位が胸部か、頭部か、または腹部かなど)
(4) 画像観察方向(頭部から、または、足からなど)
(5) 造影剤の有無(X線CT検査では造影剤を注入してデータ収集を行う場合があるので、データ収集時に造影剤を使用したか否か)、(6) 造影剤の種類(造影剤を使用したときには、その種類)、(7) 画像マトリクスサイズ(X線CT画像は画素値を有する複数のピクセルで構成されるので、その2次元のピクセル数。例えば縦512×横512のピクセル数)、(8) ピクセルサイズ(画像を構成する1ピクセルの人体における実際のサイズ)、が各収集装置に共通する項目であり、収集装置がX線CT装置である場合には、とくに、(9) スキャン方法(例えばX線CTでは、データ収集中に寝台の位置を固定して撮影する通常スキャンと、寝台の位置を移動しながら撮影するヘリカルスキャンなどがある)、(10) ヘリカルスキャンにおける寝台移動速度(X線CT装置のX線管が1回転する間に移動させる寝台の位置)、(11) 画像再構成関数(X線CT画像を再構成するための関数)、(12) X線のビーム幅(X線CT装置のデータ収集時に曝射されるX線ビームの体軸方向の幅)、(13) ガントリ傾斜角(X線CT装置のX線管球の回転軌道面の寝台移動方向に対する傾斜角度)
(14) X線管電圧(X線CT装置のX線管の管電圧)
(15) 露光量(X線CT装置が曝射するX線の量)
(16) スライス間隔(X線CT画像を再構成する患者の位置間隔)の項目が収集条件に加えられる。」

(引1-エ)
「【0037】このように対象画像の選択が終わると、対象画像選択プロセッサ18は選択したファイル名を異常候補検出プロセッサ19に通知するとともに、処理対象外であったファイルに処理対象外であることを示す情報(対象外情報)および前記検出処理済み情報を付加する(図2、ステップS5,S6、図1:e,f参照)。異常候補検出プロセッサ19は、対象画像選択プロセッサ18から通知を受けると、その通知されたファイル名の画像データをデータ保存ユニット16から読出し(図2ステップS7、図1:矢印g参照)、次いで、その読み出した画像データに対して、与えられた画像処理アルゴリズムにより異常領域候補の検出処理を実行する(図2ステップS8、図1:h参照)。この検出処理の一例としては、文献「 "Computer Aided Diagnosis System for Lung Cancer Based On Heli-cal CT Images", by Keizo Kanazawa, Mitsuru Kubo et al., Proceedings ofICPR '96」が知られており、その手順の概要は、(手順1) 胸部X線CT画像から肺野領域を抽出する、(手順2) 抽出した肺野領域において、しきい値処理により画素値の大きい領域を抽出する、(手順3) 抽出した画素値の大きい領域の円形度などの特徴量を演算する、(手順4) その特徴量から異常領域候補を特定し、その領域の重心位置を演算して位置特定する、ものである。
【0038】次いで、異常候補検出プロセッサ19は、検出処理したファイルに、その画像のスライス番号、画像毎の異常領域候補の数および重心位置座標、処理対象画像の枚数などの処理結果、および、前述した検出処理済み情報を付加して、ファイルをデータ保存ユニット16に保存する(図2ステップS9、図1:i参照)。また、この検出処理の途中で、データ読み込みになどに伴うエラーが発生し、検出処理を続行できないことから、検出処理を不正終了せざるを得ない場合、これに該当するファイルに不正終了した旨の情報(不正終了情報)と、前述した検出処理済み情報を付加して、ファイルをデータ保存ユニット16に保存する(図2ステップS10、図1:j参照)。
【0039】また、表示器22には、図6に示す如く、表示コントローラ20により患者選択のための患者選択リスト(GUIで提供される)LT、および、そのリストLTを更新させる更新ボタンBTudが表示されている(図2ステップS11、図1の矢印k参照)。そこで、オペレータがマウスなどの入力器24を操作して患者選択リストLT上で患者を選択すると(図2ステップS12、図1の矢印l参照)、表示コントローラ20はデータ保存ユニット16からその選択された患者の画像データおよび検出結果を読み出して表示する(図2ステップS12,S13、図1のm,n参照)。この表示の一例を図6に概念的に示す。複数の断層画像がスライス番号と供に表示され、異常領域候補の位置を示すマーカMKが画像に重畳して表示される。」

(引1-オ)「図5



(引1-カ)「図6



(引1-キ) 上記(引1-ア)に示した「請求項1」に係る発明の実施例に関する上記(引1-イ)ないし(引1-エ)の記載において、「異常候補検出プロセッサ19」、「対象画像選択プロセッサ18」、「データ保存ユニット16」、「表示コントローラ20」、「表示器22」は、それぞれ、上記(引1-ア)の記載における、「異常候補領域検出手段」、「画像選択手段」、「データ保存手段」、「表示指示手段」、「モニタ」に相当する。

(引1-ク) 上記(引1-イ)の記載、及び、上記(引-オ)に示した図5の記載より、医用画像は、複数の断層画像で形成され、被写体の三次元領域を撮影して得られるものであることが見て取れる。

(引1-ケ) 上記(引1-カ)に示した図6に、「複数の断層画像がスライス番号と供に表示され、異常領域候補の位置を示すマーカMKが画像に重畳して表示され」ていることから、表示器22に、選択された断層画像がスライス番号と供に表示されていることが見て取れる。

よって、上記(引1-ア)ないし(引1-ケ)に記載された事項を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「a)医用画像の医学的に異常と思われる領域の候補を画像処理アルゴリズムで検出し、その検出結果を提示して診断支援を行うコンピュータ支援診断システムにおいて、
b)前記医用画像は、複数の断層画像で形成され、被写体の三次元領域を撮影して得られるものであり、
c)前記医用画像を入力する画像入力手段と、
d)その入力した医用画像および前記検出結果を含むデータを保存するデータ保存手段と、
e)前記画像処理アルゴリズムの処理対象である検査単位分の医用画像が入力完了したことを判定する入力完了判定手段と、
f)その入力完了が判定されたときに、その入力した医用画像から前記画像処理アルゴリズムの処理対象である医用画像を画像収集条件に基づいて自動的に選択する画像選択手段と、
g)その選択された医用画像の前記異常領域候補を検出する異常候補領域検出手段と、
h)この検出結果の表示を手動で指示する表示指示手段と、
i)この表示指示があったときに前記検出結果をモニタに表示する表示手段と、を備え、
j)前記画像選択手段による選択処理は、各ファイルの画像データに付帯する「収集条件」を参照して行われ、オペレータから指定された「収集条件」の項目内容と合致するかどうかをチェックし、全ての項目について合致するファイルを対象画像として選択するものであり、
k)対象画像の選択が終わると、前記画像選択手段は選択したファイル名を異常候補領域検出手段に通知し、
l)前記異常候補検出手段は、与えられた画像処理アルゴリズムにより異常領域候補の検出処理を実行し、
m)前記異常候補検出手段は、検出処理したファイルに、その画像のスライス番号、画像毎の異常領域候補の数および重心位置座標を付加して、ファイルをデータ保存手段に保存し、
n)前記表示指示手段はデータ保存手段から画像データおよび検出結果を読み出し、モニタに選択された断層画像がスライス番号と供に表示される、
コンピュータ支援診断システム。」

イ 引用文献2
上記引用文献2には、以下の記載がある。

(引2-ア)
「【請求項1】 操作用コンピュータ装置からの指示に基づいて,三次元画像作成に使用する画像データを取得する手段と,画像データに前処理を行ってこれを三次元ボクセルに格納する手段と,被検体を構成する複数の対象物の空間領域と不透明度と色を指定する対象物パラメータを三次元ボクセルの画素値に作用させて一つの三次元データを作成する手段と,三次元データに投影処理パラメータを作用させて三次元画像を作成する手段とを具備する三次元画像処理装置と,三次元画像作成に使用する画像データを指定する手段と,被検体を構成する複数の対象物の空間領域と不透明度と色を指定する対象物パラメータを設定する手段と,三次元データから三次元画像を作成する投影処理パラメータを設定する手段と,これらを三次元画像処理装置に指示する手段と,三次元画像処理装置が作成した三次元画像を表示する手段とを具備する複数の操作用コンピュータ装置と,この三次元画像処理システムと複数の操作用コンピュータ装置とをネットワーク経由して接続する手段とを具備したネットワーク環境における三次元画像表示装置。」

(引2-イ)
「【0030】
【発明の実施の形態】以下,本発明によるネットワーク環境における三次元画像表示装置について説明する。図4は本発明のネットワーク環境における三次元画像表示装置とそのネットワーク環境を示すブロック図である。X線CT装置101は被検体の複数断面のX線CTデータを収集し,画像データを再構成する。PACSサーバー102はX線CT装置101をはじめとする複数のモダリティで収集し,再構成した画像データを保管し,必要に応じて利用者のもとに転送する画像保管転送システムのサーバーである。三次元画像処理サーバー103はX線CT装置101およびPACSサーバー102から画像データを取得・保管するサーバー機能と,このデータを使用して三次元画像を作成する三次元画像処理機能を有し,パーソナルコンピュータ131,132,133,・・・からの指示によって指定された画像データの三次元画像処理を行い,作成した三次元画像をパーソナルコンピュータ131,132,133,・・・に転送する機能を有している。
【0031】パーソナルコンピュータ131,132,133,・・・は,三次元画像処理サーバー103で処理を行う画像データの指定と三次元画像処理のパラメータの指定を行い,作成・転送された三次元画像を表示する機能を有している。ネットワーク111はX線CT装置101またはPACSサーバー102から大量の画像データを三次元画像処理サーバー103に転送する大容量・高速ネットワークである。ネットワーク112はパーソナルコンピュータ131,132,133,・・・から三次元画像処理サーバー103への指示と,三次元画像処理サーバー103からパーソナルコンピュータ131,132,133,・・・に転送される三次元画像の転送に使用するネットワークである。」

上記(引2-ア)及び(引2-イ)より、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。

「三次元画像作成に使用する被検体の複数断面のX線CTデータを収集し、
再構成した画像データを保管し、
三次元画像処理装置で処理を行う画像データの指定と三次元画像処理のパラメータの指定を行い、
指定された画像データの三次元画像処理を行い、
作成された三次元画像を表示する構成。」

ウ 引用文献3
上記引用文献3には、以下の記載がある。

(引3-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線診断装置、X線CT装置、磁気共鳴診断装置、核医学診断装置、超音波診断装置等の医用画像診断装置、医用画像処理装置、医用ワークステーション、医療情報装置等の医療業務に関わる装置の動作を、ネットワークを利用して総合的に管理する医療業務管理システムに関する。」

(引3-イ)「【0094】次の画像処理プロセスでは、画像フィルタ処理と、MPR自動作成と、3D自動作成が行われる。画像フィルタ種や、MPR作成条件(断面角度、作成位置、作成間隔、画像厚み、枚数など)、3D作成条件(レンダリングタイプ(ボリュームレンダリング、MIP、Xray表示など)、不透明度、カラー、作成角度、作成位置、画像厚み、枚数など)は、テンプレートやプロトコルとしてあらかじめ定義してあるものが、ストリームに保持されているか、画像処理プロセスに入った段階で、インタラクティブに、操作者が選択するか、既に、ストリームに保持してある患者、検査情報をもとに、テンプレート、プロトコルを自動選択するか、それら情報と、画像の内容を調査しての自動調整あるいは、手動調整にて、画像が作成される。ここで、画像を作成する場合と、作成条件の模索のみの場合がある。作成条件の模索とは、例えば、CT装置やワークステーションで、操作者1がある程度画像処理条件を調整し、その後、同じ装置あるいは別の装置にて、操作者2が操作者1が作成した画像処理条件で画像を表示あるいは、出力するなどの操作を可能とする。ここで、一般的には、操作者1は、放射線科技師で、操作者2は放射線科医師となる場合が多い。MPR作成や、3D像作成には、診断行為自体も含まれる場合があるので、基本的には医師による作成がよいが、時間的都合や、操作性などの理由で、技師に全部あるいは一部を作成させる場合がある。本発明は、これに対応するべく、医師が作成あるいは承認したテンプレート、プロトコルを用いての技師による作成や、技師がおおまかなところまで、作成条件を定め、医師が見るときに微調整を可能とすることを、同一装置あるいは別装置でシームレスに行うことを可能とする。」

上記(引3-ア)及び(引3-イ)より、引用文献3には、以下の事項が記載されていると認められる。
「X線CT装置の画像処理プロセスにおける処理としてボリュームレンダリング処理が例示される点。」

エ 引用文献4
上記引用文献4には、以下の記載がある。

(引4-ア)
「【0009】本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、患者に対する診断結果の説明を容易に行うようにすることを目的とするものである。」

(引4-イ)
「【0045】画像処理手段3は、入力手段1において入力された所見に基づいて、記憶手段2に記憶されたテーブルTを参照して画像データS0に施す画像処理についての最適画像処理パラメータPを取得し、取得された最適画像処理パラメータPにより画像データS0に対して画像処理を施して処理済み画像データS1を得るものである。なお、第1の実施形態においては、画像処理手段1においては、1種類の画像処理が画像データS0に対して施される。」

上記(引4-ア)及び(引4-イ)より、引用文献4には、以下の事項が記載されていると認められる。
「入力された所見に基づいて、画像処理についての最適画像処理パラメータPを取得し、取得された最適画像処理パラメータPにより画像データS0に対して画像処理を施して処理済み画像データS1を得る点。」

オ 引用文献5
上記引用文献5には、以下の記載がある。

(引5-ア)
「【0004】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、表示された医用画像から臓器抽出や任意の領域抽出を行う際にその抽出のための画素値のしきい値を最適に選択することができる医用画像処理装置を提供することを目的とする。」

(引5-イ)
「【0006】
【作用】このように構成された医用画像処理装置は、画素度数面積計算回路でグラフ作成回路から出力されたグラフのデータを入力して指定された画素値の上限と下限のしきい値内で画素度数の面積を計算し、しきい値選択回路により入力装置で入力されたしきい値の上限及び下限をグラフ上に標示線として表示し、領域抽出回路で上記しきい値選択回路により選択された範囲の画素値のみの領域を抽出して表示するように動作する。これにより、表示された医用画像から臓器抽出や任意の領域抽出を行う際にその抽出のための画素値のしきい値を最適に選択して、特定領域を抽出することができる。」

上記(引5-ア)及び(引5-イ)より、引用文献5には、表示された医用画像から臓器抽出や任意の領域抽出を行う際のしきい値の上限及び下限の選択方法が記載されていると認められる。

(2)対比

[本願発明1について]
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 本願発明1のA)とE)の特定事項について
(ア)引用発明の「医用画像」及び「断層画像」は、本願発明1の「被写体の医療用画像」及び「スライス画像」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明は「医用画像」を形成する「複数の断層画像」より、「対象画像」を選択する「画像選択手段」を備えるものであるから、「医用画像」の選択を行う処理装置であるといえる。
(ウ)よって、本願発明1と引用発明は、「スライス画像を」「被写体の医療用画像から選択する処理装置」といえる点で共通する。

イ 本願発明1のB)の特定事項について
(ア)引用発明の「医用画像」は、b)「被写体の三次元領域を撮影して得られるもの」であり、当然に撮影装置により得られるものであることは明らかであるから、本願発明1と引用発明は、「医療用画像」が「撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる」ものである点で共通する。
(イ)引用発明は、f)「画像処理アルゴリズムの処理対象である医用画像を画像収集条件に基づいて自動的に選択する画像選択手段」を有している。そして、b)「前記医用画像は、複数の断層画像で形成され」ているから、引用発明は、断層画像を画像収集条件に基づいて自動的に選択する画像選択手段を有している。一方、本願発明1は、「医療用画像における病変の領域に基づいて、該医療用画像に含まれるスライス画像を選択する選択手段」を有している。よって、本願発明1と引用発明は、「スライス画像を選択する選択手段」を備える点で共通する。

ウ 本願発明1のC)の特定事項について
引用発明の「モニタ」は、n)「選択された断層画像がスライス番号と供に表示される」ものであり、「モニタ」は断層画像を出力する出力手段といえる。一方、本願発明1は「選択手段により選択されるスライス画像を出力する出力手段」を有している。
よって、本願発明1と引用発明は、「選択手段により選択されるスライス画像を出力する出力手段」を有する点で一致する。

エ 本願発明1のD)の特定事項について
引用発明は、本願発明1のD)の特定事項を具備していない。

よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
スライス画像を被写体の医療用画像から選択する処理装置であって、
撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像について、
スライス画像を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されるスライス画像を出力する出力手段と、を有する、
処理装置。

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1は、処理装置により選択されるスライス画像が、被写体の画像診断の診断レポートとともに出力されるものであるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

<相違点2>
医療用画像に含まれるスライス画像を選択する選択手段が、本願発明1は、被写体の診断内容を示す診断情報に対応する、該医療用画像における病変の領域に基づいて選択され、さらに、前記医療用画像から前記病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引くものであるのに対して、引用発明は、そのような構成となっていない点。

[本願発明11について]
本願発明11と引用発明を対比する。

ア 本願発明11のH)の特定事項について
(ア)引用発明の「医用画像」は、本願発明11の「医療用画像データ」に相当する。
(イ)引用発明の「医用画像」は、b)「被写体の三次元領域を撮影して得られるもの」であり、当然に撮影装置により得られるものであることは明らかであるから、本願発明11と引用発明は、「医療用画像データ」が「撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる」ものである点で共通する。
(ウ)引用発明は、f)「画像処理アルゴリズムの処理対象である医用画像を画像収集条件に基づいて自動的に選択する画像選択手段」を有している。一方、本願発明11は、「医療用画像データについての該被写体の診断内容を示す診断情報に基づいて、一部の医療用画像データを前記医療用画像データから選択する選択手段」を有している。したがって、本願発明11と引用発明は、「医療用画像データ」から「一部の医療用画像データ」を選択する選択手段を備える点で共通する。
(エ)よって、本願発明11と引用発明は、「撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像データ」から「一部の医療用画像データ」を「選択する選択手段」を備える点で共通する。

イ 本願発明11のI)の特定事項について
引用発明において、b)「医用画像は、複数の断層画像で形成され」ていることから、引用発明の「断層画像」は、「医用画像」の一部をなしているといえる。そして、引用発明の「モニタ」は、n)「選択された断層画像がスライス番号と供に表示される」ものであり、「モニタ」は断層画像を出力する出力手段といえる。一方、本願発明11は「選択手段により選択される医療用画像データを出力する出力手段」を有している。
よって、本願発明11と引用発明は、「選択手段により選択される医療用画像データを出力する出力手段」を有する点で一致する。

ウ 本願発明11のJ)の特定事項について
引用発明は、本願発明11のJ)の特定事項を具備していない。

エ 本願発明11のK)の特定事項について、
(ア)引用発明は「コンピュータ支援診断システム」の発明であるが、「画像選択手段」を備えるものであり、画像の選択処理を行っていることから、処理装置であるといえる。
(イ)よって、本願発明11と引用発明は、「処理装置」といえる点で共通する。

したがって、本願発明11と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像データから一部の医療用画像データを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択される医療用画像データを出力する出力手段と、を有する、
処理装置。

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点3>
一部の医療用画像データを医療用画像データから選択する選択手段が、本願発明11は、撮影装置により被写体の三次元領域を撮影して得られる医療用画像データについての該被写体の診断内容を示す診断情報に基づいて選択するものであり、さらに、前記医療用画像データから病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引くものであるのに対して、引用発明は、そのような構成となっていない点。

(3)原査定の理由2についての判断

[本願発明1について]
まず、上記相違点2について、以下に検討する。
引用文献2ないし5には、それぞれ、上記「(1)各引用文献の記載事項」の「イ 引用文献2」、「ウ 引用文献3」、「エ 引用文献4」、及び、「オ 引用文献5」において指摘した事項が記載されている。
しかしながら、医療用画像から病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引く点は、引用文献2ないし5のいずれにも記載も示唆もされていない。
してみると、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

[本願発明2ないし10について]
本願発明2ないし10は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

[本願発明11について]
上記相違点3について、以下に検討する。
上記したように、引用文献2ないし5には、それぞれ、上記「(1)各引用文献の記載事項」の「イ 引用文献2」、「ウ 引用文献3」、「エ 引用文献4」、及び、「オ 引用文献5」において指摘した事項が記載されている。
しかしながら、医療用画像データから病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引く点は、引用文献2ないし5のいずれにも記載も示唆もされていない。
してみると、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。
したがって、本願発明11は、引用発明、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

[本願発明12について]
本願発明12は、本願発明11の発明特定事項をすべて含み、本願発明11をさらに限定したものであるので、本願発明11と同様に、引用発明1、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

[本願発明13及び14について]
本願発明13は、「処理装置」の発明である本願発明11のカテゴリーを「処理装置の作動方法」の発明に、また、本願発明14は、本願発明13のカテゴリーを「作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」に変更したものである。
したがって、本願発明13、及び、本願発明14は、本願発明11と同様に、引用発明1、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

[小括]
以上のことから、本願発明1ないし14は、引用発明1、引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、原査定の理由2によっては、本願を拒絶することはできなくなった。

(4)原査定の理由1についての判断

上記「(2)対比」において指摘したように、本願発明1と引用発明を対比すると、上記相違点1、及び、上記相違点2が存在し、本願発明11と引用発明を対比すると、上記相違点3が存在する。

そして、上記「(3)原査定の理由2の判断」において指摘したように、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用文献1ないし5のいずれにも記載されておらず、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできないのであるから、本願発明11が引用発明と同一の発明ではないことは明らかである。
また、上記相違点3に係る本願発明11の発明特定事項も、引用文献1ないし5のいずれにも記載されておらず、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点3に係る本願発明11の発明特定事項を容易に想起することはできないのであるから、本願発明11が引用発明と同一の発明ではないことは明らかである。

本願の請求項1ないし10に係る発明、及び、請求項12ないし14に係る発明についても同様である。

よって、原査定の理由1によっては、本願を拒絶することはできなくなった。

第4 当審拒絶理由について

1 当審の平成28年6月22日付け拒絶理由

当審の平成28年6月22日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりである。

「1 拒絶の理由1(特許法第36条第6項第1号違反について)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1には、「前記選択手段は、前記医療用画像から病変の領域を含む複数のスライス画像のそれぞれにおける該病変の領域の大きさに基づいてスライス画像を選択することを特徴とする」との記載がある。
そして、本願の明細書において、上記の記載に関する箇所を摘記すると、以下のとおりである(下線は当審において付与)。

「【0014】
・・・画像検索部4は診断情報に基づいて画像入力部1から入力された全ての撮影画像データ中から出力対象となる病変領域を検索し、当該病変領域に対応する撮影画像或いは撮影画像群をキー画像として画像出力部6から出力する。」
「【0030】
本実施形態においては、このコンピュータ診断支援技術により検出された病変候補の中から医師による最終診断と合致するものを選択することになる。
【0031】
パラメータ決定部5においては、最後に検出された病変を含むスライス位置の決定を行う。病変を含むスライス(断面)は通常複数枚あるので、これらの断面が全てキー画像として画像検索部4において検索される。
【0032】
また、画像検索部4においては、病変の面積或いは形状の変化の小さい断面を間引くようにしてもよい。
【0033】
画像検索部4にて検索されたキー画像は画像出力部6に出力され、画像出力部6から表示装置やネットワークコンピュータなどに出力される。尚、画像出力部6に出力される情報は、キー画像単体でも、キー画像に診断情報を添付して出力してもよい。」

上記の摘示した記載において、段落【0014】には、全ての撮影画像データ中から病変領域に対応する撮影画像或いは撮影画像群をキー画像として出力する点が記載されており、段落【0031】には、病変を含むスライス(断面)をキー画像とする点が記載されており、段落【0032】には、「病変の面積或いは形状の変化の小さい断面を間引く」点が記載されていることから、本願の明細書の発明の詳細な説明には、画像検索部(選択手段)が医療用画像から病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、病変の面積或いは形状の変化の小さい断面のスライス画像を間引く点が記載されていると認められる。
しかしながら、請求項1に係る発明は、医療用画像から病変の領域を含む複数のスライス画像のそれぞれにおける病変の領域の大きさに基づいてスライス画像を選択する点の特定のみであり、例えば、全ての撮影画像データ中から病変領域に対応する撮影画像或いは撮影画像群をキー画像とする際に、病変の領域の大きさに基づいてスライス画像を選択するものも含まれることになるが、そのようなものは、発明の詳細な説明には記載されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された内容を超えるものを含むことになる。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、請求項11における「前記選択手段は、前記医療用画像データから病変の領域を含む複数の医療用画像データのそれぞれにおける該病変の領域の大きさに基づいて一部の医療用画像データを選択することを特徴とする」の記載によって特定される構成、及び、請求項13における「前記選択工程では、前記医療用画像データから病変の領域を含む複数の医療用画像データのそれぞれにおける該病変の領域の大きさに基づいて一部の医療用画像データを選択することを特徴とする」との記載によって特定される構成についても同様であり、請求項11に係る発明、及び、請求項13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項1、11、13の記載を引用する他の請求項に係る発明についても同様である。
以上のことから、請求項1ないし14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 拒絶の理由2(特許法第29条第1項柱書違反について)

本願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。


請求項13に係る発明は、「前記医療用画像データから病変の領域を含む複数の医療用画像データのそれぞれにおける該病変の領域の大きさに基づいて一部の医療用画像データを選択する」工程を含む方法の発明であり、上記工程は、医療用画像データ上において、病変の領域の大きさを判断していることから、医療目的で人間の病状や健康状態等の身体状態について、判断する工程である。
また、請求項13に係る発明は医療機器の作動方法でなく、測定対象に生体が含まれており、かつ明細書中に測定対象として人間を除くことが明示されていないので、医療目的で人間の病状や健康状態等の身体状態若しくは精神状態について、又は、それらに基づく処方や治療・手術計画について、判断する工程を含む方法に該当し、実質的に人間を診断する方法を包含するものと認められる。
したがって、請求項13に係る発明は、産業上利用することができる発明には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。 」

2 当審拒絶理由の判断

(1)「拒絶の理由1」に関して
平成28年8月26日に提出された手続補正書によって、補正前の請求項1の「前記選択手段は、前記医療用画像から病変の領域を含む複数のスライス画像のそれぞれにおける該病変の領域の大きさに基づいてスライス画像を選択することを特徴とする」の記載が、「前記選択手段は、前記医療用画像から前記病変の領域を含む複数のスライス画像を選択し、前記選択された複数のスライス画像から、前記選択された複数のスライス画像において該病変の面積或いは形状の変化の大きさが閾値より小さいスライス画像を間引くことを特徴とする」に補正された。
よって、補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された内容を超えるものを含むものではなくなった。
同様の補正は、補正前の請求項11、13についてもなされた。
したがって、当審拒絶理由における「拒絶の理由1」は解消した。

(2)「拒絶の理由2」に関して
上記手続補正書により、補正前の請求項13に、「被写体の画像診断の診断レポートとともに出力されるスライス画像を該被写体の医療用画像から選択する処理装置の作動方法であって、」の記載が付加された。
よって、「処理装置の作動方法」の発明であることが明確になり、当審拒絶理由における理由(2)は解消した。

以上のことから、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-30 
出願番号 特願2013-180357(P2013-180357)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 14- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 幸仙  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 田中 洋介
▲高▼橋 祐介
発明の名称 処理装置およびその作動方法並びにプログラム  
代理人 木村 秀二  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ