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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1321829
審判番号 不服2015-21374  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-02 
確定日 2016-12-08 
事件の表示 特願2012-150083号「車両用キーレス受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月23日出願公開、特開2014-12431号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりある。
平成27年7月10日付け :拒絶理由の通知
平成27年8月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年10月2日付け :拒絶査定
平成27年12月2日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年12月21日 :手続補正書(方式)の提出
平成28年2月16日付け :前置報告書
平成28年7月22日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という 。)の通知
平成28年9月16日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1、2」という。)は、平成28年9月16日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「送信機より送信された信号を受信し、車両ドアの鍵の開閉制御を行う電子制御装置の第1の制御基板と、
該第1の制御基板とは異なる他の制御を行い、前記第1の制御基板と対向するように離れて配置された第2の制御基板と、
前記第1の制御基板と前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段と、で構成された車両用キーレス受信装置において、
前記第1の制御基板と前記第2の制御基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、
前記接続手段は、フレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成され、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする
ことを特徴とする車両用キーレス受信装置。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明1及び2は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:国際公開第2009/131137号
2:特開2003-229776号公報

2.原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献1には以下の事項が記載されている。
ア.「近時、自動車のドアの解錠および施錠を、キー穴にキーを差し込むことなく行えるリモートキーレスエントリシステムが提供されている。該システムは、乗員が携帯する送信用のリモートキーや送受信用のスマートキーを用い、これらキーから送信する信号を無線受信機で受信し、受信した信号を無線受信機に接続したワイヤハーネスを介して、ドアロック制御部を含むボディ用電子制御ユニットに送信し、該ボディ用電子制御ユニットでドアロック機構を自動制御して、ドアの解錠および施錠を行っている。・・・」(段落【0002】)
イ.「プリント基板10にドアロック制御部11となる回路を設けると共にICチップ13を実装している。該ドアロック制御部11として、リモートキーからの受信回路12を備え、該受信回路12一端をプリント基板10の一辺縁の外側隅部に設けて、アンテナ20と接続する給電部12aとしている。・・・」(段落【0028】)
ウ.「図7乃至図9に第2実施形態を示す。第2実施形態では、アンテナ専用の金属棒を用いず、電気接続箱1内に収容するバスバーの1つを板状アンテナとして利用し、該板状アンテナとするバスバー40の一端を中継用金属棒20-Aと接続し、該中継用金属棒20-Aを前記プリント基板10の受信回路12の給電部12aと接続している。第1実施形態と同一部材は同一符号を付して説明を省略する。」(段落【0044】)
エ.「ケース2の内部には、図7に概略的に示すように、ワイヤハーネス(図示せず)の端末のコネクタとコネクタ接続されるバスバー3を絶縁板4上に加締め固定したものを複数組積層した積層体5をケースの下層部に収容している。最上層のバスバー3Aの上方の一方側に、統合ボディ用ECUのプリント基板10を配置している。・・・」(段落【0045】)
オ.「前記プリント基板10の受信回路12の給電部12aに設けたスルーホールにアンテナとする中継用金属棒20-Aの上端を挿入して半田付けで接続している。該アンテナとする中継用金属棒20-Aは、図7に示すように、給電部12aと接続した上端から下向きに高さL3だけ突出させている。前記中継用金属棒20-Aの下端は、前記積層体5の最上層のバスバー3Aのうち、絶縁板4の外周縁に沿って配置し、ケース2内の隅部まで延在させたバスバー40の先端部と半田付けで接続し、該バスバー40を板状アンテナとして用いている。」(段落【0046】)
上記ア.?オ.の記載事項及び図面から、引用文献1には、「リモートキーから送信される信号を受信する受信回路12を備えるドアロック制御部11が設けられたプリント基板10と、前記プリント基板10と対向するように離れて配置された絶縁板4と、その上端が前記受信回路12に半田付けで接続され、その下端が絶縁板4上のバスバー40に半田付けで接続される中継用金属棒20-Aと、で構成された電気接続箱1において、前記絶縁板4上のバスバー40は板状アンテナとして用いられ、前記中継用金属棒20-Aはアンテナとして用いられる、電気接続箱1。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比
ア.本願発明1と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて引用発明1の「リモートキーから送信される信号を受信する受信回路12を備えるドアロック制御部11が設けられたプリント基板10」、「中継用金属棒20-A」は、それぞれ、本願発明1の「送信機より送信された信号を受信し、車両ドアの鍵の開閉制御を行う電子制御装置の第1の制御基板」、「導電性の接続手段」に相当する。
また、引用発明1の「電気接続箱1」は「リモートキーから送信される信号を受信する受信回路12を備えるドアロック制御部11」を有しているから、本願発明1の「車両用キーレス受信装置」に相当する。
イ.引用発明1の「絶縁板4」は、段落【0049】及び図9に記載されるように、バスバー3A、4が配線されているものであり、配線基板ということができるので、本願発明1の「第2の制御基板」と、「第2の基板」という限度で一致する。そうすると、引用発明1の「その上端が前記受信回路12に半田付けで接続され、その下端が絶縁板4上のバスバー40に半田付けで接続される中継用金属棒20-A」と、本願発明1の「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段」は、「前記第1の制御基板と前記第2の基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段」という限度で一致する。
ウ.引用発明1の「板状アンテナとして用いられ」る「バスバー40」は、段落【0048】及び図9に記載されるように、L形状であり、所定のパターン形状を有しているといえるから、本願発明1の「パターンアンテナ」に相当する。そうすると、引用発明1の「その上端が前記受信回路12に半田付けで接続され、その下端が絶縁板4上のバスバー40に半田付けで接続される中継用金属棒20-Aと、で構成された電気接続箱1において、前記絶縁板4上のバスバー40は板状アンテナとして用いられ、前記中継用金属棒20-Aはアンテナとして用いられる」と、本願発明1の「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、前記接続手段は、フレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成され、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする」は、「前記第1の制御基板と前記第2の基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、前記接続手段は、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする」という限度で一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「送信機より送信された信号を受信し、車両ドアの鍵の開閉制御を行う電子制御装置の第1の制御基板と、前記第1の制御基板と対向するように離れて配置された第2の基板と、前記第1の制御基板と前記第2の基板に取付けられた導電性の接続手段と、で構成された車両用キーレス受信装置において、前記第1の制御基板と前記第2の基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、前記接続手段は、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする車両用キーレス受信装置。」の点で一致している。
他方、本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
<相違点1>
「第2の基板」に関し、本願発明1では、「該第1の制御基板とは異なる他の制御を行」う「第2の制御基板」であるのに対し、
引用発明1では、単なる「絶縁板4」である点。
<相違点2>
「導電性の接続手段」に関し、本願発明1では、「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられ」ているのに対し、
引用発明1では、「その上端が前記受信回路12に半田付けで接続され、その下端が絶縁板4上のバスバー40に半田付けで接続される」点。
<相違点3>
「導電性の接続手段」に関し、本願発明1では、「前記接続手段は、フレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成され」るのに対し、
引用発明1では、そのように特定されていない点。

(3)判断
事案にかんがみ、相違点1について検討する。
引用文献2(段落【0037】及び図1-3等参照)には、車両用キーレス受信装置において、第1の制御基板(受信回路基板6)とは異なる他の制御を行い、前記第1の制御基板と対向するように離れて配置された第2の制御基板(メーター回路基板4)を設けるという技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用発明1は電気接続箱に関するものであるから、上記引用文献2に記載の技術的事項を、引用発明に適用し、単なる基板である「絶縁板4」を、敢えて、プリント基板10(「第1の制御基板」に相当する)とは異なる他の制御を行う第2の制御基板として構成する動機付けはないといえる。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明1及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本願発明1及び2は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2003-229776号公報
2:特開2011-114996号公報

2.当審拒絶理由の判断
(1)刊行物の記載事項及び刊行物発明
ア.本願の出願前に頒布された刊行物1には、「メータ装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はキーレスエントリー受信機等の電波受信機を内蔵した車両のメータ装置に関する。」
(イ)「【0037】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1に本発明を適用した、キーレスエントリー受信機を内蔵した受信機内蔵型のメータ装置の分解した状態を示す。メータ装置11は、車室のインストゥルパネル内に嵌め込まれるアッパーハウジング21、ロアハウジング22を有し、乗員と対向するアッパーハウジング21には表示部3が設けられる。表示部3には、メータ3A,3B,3C,3D,3E等のメータ類が設けられ、車両の乗員に車両の走行情報等を表示する。アッパーハウジング21の背後には、メータ回路基板4および電波受信機であるキーレスエントリー受信機5が配設される。キーレスエントリー受信機5のメータ回路基板6はメータ回路基板4の隅部に、メータ回路基板4と重ねて固定される。」
(ウ)「【0042】キーレスエントリー受信機5は、受信回路基板6にアンテナ7が接続されて、後述するキーレスエントリー送信機からの電波を受信するようになっており、キーレスエントリー受信機5とキーレスエントリー送信機とで電波方式のキーレスエントリシステムを構成する。」
(エ)「【0044】キーレスエントリー受信機5は、受信回路基板6上に受信回路である復調回路部61、信号処理回路部62が形成されており、アンテナ7の受信信号は給電点63を介して復調回路部61に入力するようになっている。復調回路部61は、運転者の操作によってキーレスエントリー送信機12が操作されてキーレスエントリー送信機12からの前記電波の入感があると、これを復調し、復調信号に基いて信号処理回路部62は、IDコードが自身と対になるキーレスエントリー送信機12からのものか否かを判定する。肯定判断すると、操作指令コードに対応した制御信号を車両各部の制御ECUに出力して、ドアの開閉やエンジン始動等を行う。」
(オ)「【0045】アンテナ7はモノポール型のもので、受信回路基板6の給電部63からロアハウジング22側に突出する垂直部71と、先端側の水平部72とからなる形状である。水平部72は、受信回路基板6の表面に対して一定の距離をとって略ロ字状に屈曲せしめてある。受信回路基板6はメータ回路基板4に、これと積層するように固定され、受信回路基板6とメータ回路基板4とは平行である。したがって、アンテナ7の水平部72はメータ回路基板4に対しても平行である。」

(カ)上記(ウ)には、「受信回路基板6にアンテナ7が接続されて」と記載されており、併せて図1-3を参照すると、受信回路基板6はアンテナ7を有しているといえる。

これらの記載事項(ア)?(エ)、認定事項(カ)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物1発明」という。)。
「キーレスエントリー送信機12からの電波を受信し、ドアの開閉を行う、復調回路部61、信号処理回路部62が形成されている受信回路基板6と、該受信回路基板6が積層するよう固定され、かつ、該受信回路基板6と平行であるメータ回路制御基板4と、で構成されたキーレスエントリー受信機5を内蔵した受信機内蔵型のメータ装置11において、前記受信回路基板6はアンテナ7を有している、キーレスエントリー受信機5を内蔵した受信機内蔵型のメータ装置11。」

イ.本願の出願前に頒布された刊行物2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0028】
ケース2の内部には、分離接続用の回路材としてバスバーと単芯線とプリント基板を収容している。図1に概略的に示すように、下層はバスバー4を絶縁板5上に固定した層とし、中間層は単芯線6を絶縁板7に配線した層とし、上層はプリント基板10とした三層構造としている。
前記プリント基板10はケース2の周壁2bの内面から突設した支持枠(図示せず)で支持して搭載し、プリント基板10は前記単芯線6を配置した絶縁板7より高さL3(5?50mm)を隔てた上方に配置している。」
(イ)「【0030】
プリント基板10は図1(B)に示すように、ドアロック制御部11となる回路を設けると共にICチップ13を実装している。該ドアロック制御部11として、リモートキーからの無線受信回路12を備え、該無線受信回路12の一端をプリント基板10の一辺縁の外側隅部に設けて、アンテナと接続する給電部12aとしている。該無線受信回路12と接続したICチップ13に送信回路14を接続し、該送信回路14をプリント基板10の他辺の下面に実装したコネクタ15と接続し、該コネクタをドアロック駆動部(図示せず)と接続したワイヤハーネス端末のコネクタ(図示せず)と接続し、ドアロック駆動部をドアロック制御部11により制御するようにしている。
【0031】
前記プリント基板10の無線受信回路12の給電部12aに、図1(C)に示すように、前記中間層の絶縁板7上に配線した単芯線からなるアンテナ本体20を縦バスバーからなる中継アンテナ部材21を介して接続している。即ち、本発明では、アンテナとして専用アンテナ材を用いず、ジャンクションボックスを含めて車載用電気接続箱において回路材として汎用されている単芯線をアンテナ本体20として利用し、縦バスバーを中継アンテナ部材21として利用している。」
(ウ)「【0036】
前記単芯線からなるアンテナ本体20と縦バスバーからなる中継アンテナ部材21とは、図4に示すように、縦バスバーで形成した中継アンテナ部材21の下端を圧接スロット23aを有する圧接端子部23とし、前記単芯線からなるアンテナ本体20に上方から圧接接続して連結している。
該中継アンテナ部材21の上端はプリント基板20の無線受信回路12の給電部12aと半田Hで接続している。
【0037】
なお、図5に示すように、縦バスバーからなる中継アンテナ部材21の上端にオスタブ端子24を設ける一方、プリント基板10の給電部12aに半田接続した音叉端子25をプリント基板10に実装したコネクタ26に挿入しておき、前記音叉端子25にオスタブ端子24を嵌合して接続してもよい。」
(エ)「【0040】
図6(A)(B)に第二実施形態を示す。
第二実施形態では、単芯線からなるアンテナ本体20の一端側を屈曲して立設し、中継アンテナ部20mとして、縦バスバーからなる中継アンテナ部材を不要としている。
前記中継アンテナ部20mの垂直部分の先端をオスタブ端24として加工形成し、第一実施形態と同様に給電部に接続した端子とコネクタ接続している。」

(2)対比
ア.本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて刊行物1発明の「キーレスエントリー送信機12」は本願発明1の「送信機」に相当し、以下同様に、「ドアの開閉を行う、復調回路部61、信号処理回路部62が形成されている受信回路基板6」は「車両ドアの鍵の開閉制御を行う電子制御装置の第1の制御基板」に、「該受信回路基板6が積層するよう固定され、かつ、該受信回路基板6と平行であるメータ回路制御基板4」は「該第1の制御基板とは異なる他の制御を行い、前記第1の制御基板と対向するように離れて配置された第2の制御基板」に相当する。
イ.刊行物1発明の「キーレスエントリー受信機5を内蔵した受信機内蔵型のメータ装置11」の「キーレスエントリー受信機5」は、本願発明1の「車両用キーレス受信装置」に相当する。
ウ.刊行物1発明の「アンテナ7」と本願発明1の「パターンアンテナ」は、「アンテナ」という限度で一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「送信機より送信された信号を受信し、車両ドアの鍵の開閉制御を行う電子制御装置の第1の制御基板と、
該第1の制御基板とは異なる他の制御を行い、前記第1の制御基板と対向するように離れて配置された第2の制御基板と、で構成された車両用キーレス受信装置において、
前記第1の制御基板と前記第2の制御基板の少なくとも一方にアンテナを有する車両用キーレス受信装置。」

そして、本願発明1と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
「車両用キーレス受信装置」に関して、本願発明1では、「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段」を備えるとともに、「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、前記接続手段は、フレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成され、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする」のに対し、
刊行物1発明では、受信回路基板6はアンテナ7を有しているとしか規定されていない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
上記(1)イ.(ア)?(エ)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「刊行物2に記載の技術的事項」という。)。
「絶縁板7上に配線されたアンテナ本体20に圧接接続して連結されるとともに、ドアロック制御部11となる回路が設けられたプリント基板10の給電部12aにコネクタ接続された、縦バスバーからなる中継アンテナ部材21。」

ア.刊行物2に記載の技術的事項の「ドアロック制御部11となる回路が設けられたプリント基板10」、「縦バスバーからなる中継アンテナ部材21」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明1の「第1の制御基板」、「導電性の接続手段」に相当する。
また、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7」は、上記(1)イ.(ア)(段落【0028】)及び図2に記載されるように、単芯線6が配線されているものであるから、配線基板ということができる。そうすると、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7」と本願発明1の「第2の制御基板」は、「第2の基板」という限度で一致する。
イ.中継アンテナ部材21はプリント基板10の給電部12aにコネクタ接続されるので、中継アンテナ部材21はプリント基板10に着脱可能に取付けらていると認められる。
したがって、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7上に配線されたアンテナ本体20に圧接接続して連結されるとともに、ドアロック制御部11となる回路が設けられたプリント基板10の給電部12aにコネクタ接続された、縦バスバーからなる中継アンテナ部材21」と本願発明1の「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段」は、「前記第1の制御基板に着脱可能に取付けられ、前記第2の基板に取付けられた導電性の接続手段」という限度で一致する。
ウ.刊行物2に記載の技術的事項の「(絶縁板7上に配線された)アンテナ本体20」は、刊行物2の段落【0035】及び図2(A)、図3(A)、(B)に記載されるように、L形状、U形状、又は、複数回Uターンする形状を有する、すなわち、所定のパターン形状を有しているから、本願発明1の「パターンアンテナ」に相当する。また、上記ア.で述べたとおり、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7」と本願発明1の「第2の制御基板」は、「第2の基板」という限度で一致する。
そうすると、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7上に配線されたアンテナ本体20」と本願発明1の「前記第1の制御基板と前記第2の制御基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し」は、「前記第1の制御基板と前記第2の基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し」という限度で一致する。
エ.刊行物2に記載の技術的事項の「中継アンテナ部材21」は、アンテナ本体20に連結されるので、アンテナ本体20に電気的に接続されているといえる。そうすると、刊行物2に記載の技術的事項の「・・・アンテナ本体20に圧接接続して連結された・・・中継アンテナ部材21」は、本願発明1の「前記接続手段は」「前記パターンアンテナと電気的に接続し」に相当する。
オ.アンテナが信号を受信可能であるのは当然であるから、刊行物2に記載の技術的事項の「絶縁板7上に配線されたアンテナ本体20」及び「縦バスバーからなる中継アンテナ部材21」は、本願発明1の「前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする」という構成を有しているといえる。

以上から、刊行物2には、相違点1に係る発明特定事項のうちの、「前記第1の制御基板に着脱可能に取付けられ、前記第2の基板に取付けられた導電性の接続手段を備えるとともに、前記第1の制御基板と前記第2の基板の少なくとも一方にパターンアンテナを有し、前記接続手段は、前記パターンアンテナと電気的に接続し、前記パターンアンテナと前記接続手段の両方で前記信号を受信可能とする」点が記載されていると認められる。
しかしながら、中継アンテナ部材21はアンテナ本体20に圧接接続して連結されるものであり、通常、圧接とは、「溶接継手に大きな機械的圧力を加えて行う溶接方法の総称。加圧溶接の略称」(JIS工業用大辞典第5版)を意味することを考慮すると、中継アンテナ部材21はアンテナ本体20に着脱可能に取付けられているとは認められない。
また、刊行物2には、中継アンテナ部材21がフレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成されている点について何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物2には、相違点1に係る発明特定事項のうちの、「前記第2の制御基板に着脱可能に取付けられた導電性の接続手段」及び「前記接続手段は、フレキシブルフラットケーブル又はフレキシブル基板で構成され」という構成が開示されていないといえる。

したがって、上記刊行物2に記載の技術的事項を、刊行物1発明に適用したとしても、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者にとって困難であるといわざるを得ない。

なお、付言すると、前置報告書で新たに引用された引用文献3(特開2005-45625号公報)(段落【0038】、【0039】及び図1、2等参照)には、キーレスエントリー受信機のケース20に所定のパターンを有するアンテナ50を形成するという技術的事項が記載されているにすぎず、当該技術的事項を考慮したとしても、刊行物1発明において、相違点1に係る発明特定事項を想到することは、当業者にとって容易とはいえない。

(4)小括
以上から、本願発明1は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1発明及び刊行物2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2012-150083(P2012-150083)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永冨 宏之  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森林 宏和
和田 雄二
発明の名称 車両用キーレス受信装置  

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