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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1321856 |
審判番号 | 不服2016-1959 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-08 |
確定日 | 2016-12-06 |
事件の表示 | 特願2014-519136「シャドーイングストレージゲートウェイ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 3日国際公開、WO2013/003713、平成26年10月30日国内公表、特表2014-529111、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年6月29日(パリ条約による優先権主張2011年6月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月6日)、これに対して平成28年2月8日に審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年2月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 (1)請求項1について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 少なくとも1つのプロセッサと、 プログラム命令を含むメモリであって、前記プログラム命令が、 ストレージゲートウェイが、顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから、前記顧客ネットワーク上のローカルデータストアに向けられた読取り要求および書込み要求を受信することと、 前記ストレージゲートウェイが、前記読取り要求および前記書込み要求を前記ローカルデータストアに渡すことと、 前記ストレージゲートウェイが、サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信することと、 前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、前記ストレージゲートウェイが、 前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータを書込みログにバッファリングすることと、 前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることと を行うように動作可能である、 ゲートウェイプロセスを実現するために、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である、メモリと を備える装置。」 とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。 (2)請求項8について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項8(補正前の請求項9)を、 「【請求項8】 サービスプロバイダから受信された設定情報に従って、コンピュータを顧客ネットワーク上でシャドーイングゲートウェイとして設定することを含む方法であって、シャドーイングゲートウェイは、ローカルデータストア上に格納されたデータを前記サービスプロバイダによって維持されるリモートデータストアにシャドーイングするストレージゲートウェイであり、 前記ローカルデータストア上に格納されたデータを前記リモートデータストアにシャドーイングするために、前記シャドーイングゲートウェイが、 前記顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから前記ローカルデータストアに向けられた書込み要求を受信することと、 前記リモートデータストア上で前記サービスプロバイダにより維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダにアップロードすることと、 前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダにアップロードするために、前記シャドーイングゲートウェイが、 前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータを書込みログにバッファリングすることと、 前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることと を行うように動作可能である、 方法。」 とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。 (3) 補正前の請求項6について 補正前の請求項6を削除し、それに伴い、補正前の請求項6以降の項番を1ずつ減じている(以下、「補正事項3」という。) (4) 請求項12について 請求項8を引用する請求項12(補正前の請求項13)を、 「【請求項12】 前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダにアップロードするために、前記シャドーイングゲートウェイが、 データ重複排除技術に従って、前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることと を行うようにさらに動作可能である、 請求項8に記載の方法。」 とする補正(以下、「補正事項4」という。)を含んでいる。 2.補正の適否 (1)補正事項1について 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「書込みデータを前記サービスプロバイダに送信すること」(アップロード処理)について、主に補正前の請求項6に基づいて、「前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、前記ストレージゲートウェイが、前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータを書込みログにバッファリングすることと、前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることと」を行うとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 引用例の記載事項・引用発明について 原査定の拒絶の理由で引用された、唯一の引用例である、特開2002-324000号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。 (ア) 段落【0011】 「【発明が解決しようとする課題】本発明は、ユーザ・サイトに信頼性の高い仮想ローカル・ストレージを使いやすい形で実現することができる。本発明はさらに、ユーザ向けの高速なアクセスを可能にする仮想ローカル・ストレージを使いやすい形で実現することができる。本発明はさらに、ローカル・ストレージで追跡されるユーザ統計データ及びユーザ・ログ・データを使用してローカル・ストレージをサービス・プロバイダ側で使いやすい形でチューンアップできるようにし、サービス・プロバイダはこのようなチューニング・サービスについてユーザに課金できる。」 (イ) 段落【0020】-【0027】 「【0020】ユーザ・サイト101では、第1のホスト104はストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)107を介してローカル・ストレージ106に接続され、第2のホスト105はローカル・エリア・ネットワーク(LAN)108を介してローカル・ストレージ106に接続されている。ホスト104及び105はローカル・ストレージ106にアクセスする。ホスト104及び105は、たとえば、サーバである。ユーザ・サイト101内のホストの数は異なっていてもよい。LAN 108は、たとえば、ルータ109を介してWAN 110に接続されている。本発明の教示から、SAN 107又はLAN 108のいずれか1つ、又はSAN 107及びLAN 108の両方を含むようにユーザ・サイト101を実装することができることを当業者は理解するであろう。 【0021】当業者には周知のように、SANは共有ストレージ・デバイスの高速サブネットワークであり、SANによりLAN又はWAN内のすべてのサーバからすべてのストレージ・デバイスが利用可能である。SANにさらにストレージ・デバイスを追加すると、その追加されたストレージ・デバイスも、さらに大きなネットワーク内の任意のサーバからアクセスできるようになる。 ・・・(中略)・・・ 【0026】ローカル・ストレージ106及びサービス・プロバイダ・サイト102及び103では、ATM上でiSCSI又はファイバ・チャネル、SONET上でファイバ・チャネル、又は独自ベンダ・プロトコルを使用できる。ローカル・ストレージ106は、仮想ストレージ111、コンフィギュレーション・テーブル112(図4も参照)、統計情報113(図5も参照)、アクセス・ログ114(図6も参照)、キャッシュ情報115、及びプログラム116を含む。コンポーネント112、113、114、115、及び116ではローカル・ストレージ106をキャッシュとして動作させることができる。ホスト104及び105は仮想ストレージ111にアクセスできる。仮想ストレージ111は、いくつかのボリューム117、118、119、及び120を含む。仮想ストレージ111内のボリュームの数は異なっていてもよい。これらのボリューム117?120の管理は、ローカル・ストレージ106が行う。ローカル・ストレージ106及びサービス・プロバイダ・サイト102及び103は、仮想ボリューム・ストレージ111の作成のため共同作業を行う。 【0027】ユーザは、ユーザ・サイト101に仮想ボリューム・ストレージ111(ローカル・ストレージ106内の)を配備することができる。仮想ボリューム・ストレージ111がユーザ・サイト101に配備されると、ホスト104及び/又はホスト105のユーザは仮想ボリューム・ストレージ111を使用することにより、巨大なサービス・プロバイダ・ストレージ(ボリューム121?124及び/又はボリューム125?128)にアクセスできる。仮想ボリューム・ストレージ111は通常、サービス・プロバイダ・ストレージ・ボリューム(ボリューム121?124及び/又はボリューム125?128)に比べてサイズが小さい。仮想ボリューム・ストレージ111は、たとえば以下で説明するようなブロックI/F(SCSI)、ファイルI/F(NFS、CIFS)などのいくつかのインタフェースを備える。仮想ボリューム・ストレージ111は、ユーザがWAN 110に毎回アクセスしなくてよいようにすると都合がよい。仮想ボリューム・ストレージ111ではさらに、サービス・プロバイダがユーザ向けに高速で信頼性の高いストレージ・システムを提供することもできる。」 (ウ) 段落【0028】-【0034】 「【0028】図2は、ローカル・ストレージ106の一実施形態の詳細を示すブロック図である。ローカル・ストレージ106は、マイクロプロセッサ201(たとえば、Intel CorporationやMotorola Corporation製)、ローカル(内部)バス202、SAN 107に結合されているSANインタフェース(I/F)203(図1)、LAN 108に結合されているLAN I/F 204(図1)、WAN 110に結合されているWAN I/F 205(図1)、メモリI/F206、メモリ207、ディスク・コントローラ208、及びローカル・ディスク209を備える。メモリ207は、コンフィギュレーション・テーブル112、統計情報113、アクセス・ログ114、キャッシュ情報115、及びプログラム116を格納する。マイクロプロセッサ201は、ローカル・ストレージ106内のすべてのリソースを制御し、プログラム116を使用してローカル・ストレージ106内のすべてのプロシージャを実行する。 【0029】図2は、ローカル・ストレージ106内のプロシージャを実行しているときのローカル・ディスク209のスナップショットを示している。当業者には周知のとおり、スナップショットとは、実際のストレージの全ボリューム又はボリュームの一部のコピーである。図2に示されている情報及びプログラムはローカル・ディスク209に格納されている。ローカル・ストレージ106のブート手順で、これらのデータ及びプログラムはローカル・ディスク209からメモリ207に移動される。 【0030】キャッシュ情報115は、キャッシュ・ディレクトリ210、保留データ・リスト211、及びキャッシュ・データ212で構成される。キャッシュ・ディレクトリ210は、メモリ207及びローカル・ディスク209内のキャッシュされたデータ212のディレクトリ(コンフィギュレーション情報)である。このキャッシュ・データ212は、LRU(Least Recently Used)管理法で管理することができる。しかし、近い将来再びアクセスする可能性がないことで、LRU管理の例外となるケースがある。このような例外の1つに順次アクセスがあり、ストレージ・アドレスが逐次的にアクセスされる。 【0031】保留データ・リスト211は、ローカル・ストレージ106に保存されている保留データのリストである。保留データ・リスト211は、保留データへのポインタ、サービス・プロバイダ・サイトへのポインタ、及び同期期間などの各保留データの情報を含む。同期期間は、データの特徴により定義される。データが重要でない場合、このデータは所定の期間、ローカル・ストレージ106内に格納することができる。この期間は、たとえば、1分、1時間、1日、1週間、又は1カ月とすることができる。データが重要な場合、データが仮想ストレージ111に格納された後、コンフィギュレーション・テーブル112(図4)を使用してデータを即座に(同期して)サービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に格納すべきである。たとえば、同期データはボリューム00 117に格納される。図4で、ボリューム00 117は識別番号ID 00で識別される。ボリューム00 117に格納されているデータは同期データなので、データはサービス・プロバイダ・サイト102(リモート・サイト1)のボリューム10 121(リモートID 10)に即座に格納される。 ・・・(中略)・・・ 【0034】一実施形態では、プログラム116は、サーバ・プログラム213、シンクロナイザ217、キャッシュ制御218、スケジューラ220、及びデバイス・ドライバ219を含む。サーバ・プログラム213では、ローカル・ストレージ106及びホスト104(及び/又はホスト105)が互いに通信できる。サーバ・プログラム213は、NFSサーバ214、CIFSサーバ215、及びSCSIサーバ216で構成される。NFSサーバ214は、従来のNFSサーバとして動作する。CIFSサーバ215、従来のCIFSサーバとして動作する。SCSIサーバ216は、SCSIターゲット・デバイスとして動作する。シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211を使用して、ローカル・ストレージ106とサービス・プロバイダ・サイト102及び/又は103の同期をとる。キャッシュ制御218は、キャッシュ・ディレクトリ210を使用して、メモリ207とローカル・ディスク209内のキャッシュ・データ212を制御する。スケジューラ220は、サーバ・プログラム213、シンクロナイザ217、キャッシュ制御218、及びデバイス・ドライバ219などのすべてのプロシージャをスケジュールする。デバイス・ドライバ219は、SAN I/F 203、LAN I/F 204、WAN I/F 205、メモリI/F 206、及びディスク・コントローラ208などのローカル・ストレージ106内のすべてのデバイスを制御する。」 (エ) 段落【0035】-【0037】 「【0035】図3は、本発明の実施形態によるデータ・レイアウトの一例を示すブロック図である。ローカル・ストレージ106の管理は、以下でさらに詳しく説明しているように、データの特徴を使用することに基づいている。仮想ボリューム・ストレージ111では、データが静的かキャッシュされているか、同期か非同期かに応じてデータの特徴を取り扱う。以下でさらに詳しく説明しているように、仮想ボリューム・ストレージ111は、ストレージ・ボリュームだけでなく、ディレクトリ、ファイル、シリンダ、及び/又はブロック・アドレスでもデータの特徴を取り扱える。ユーザ・サイト101では、仮想ストレージ111に4種類の仮想ボリューム(ボリューム00 117、ボリューム01 118、ボリューム02 119、及びボリューム03 120)がある。これらの仮想ボリュームの特徴である、(1)静的同期ボリューム、(2)静的非同期ボリューム、(3)キャッシュされた同期ボリューム、及び(4)キャッシュされた非同期ボリュームについて次に説明する。 ・・・(中略)・・・ 【0037】(2)静的非同期ボリューム(ボリューム01 118):ボリューム01 118は静的非同期ボリュームである。したがって、ボリューム001 118は、第1のサービス・プロバイダ・サイト102において実際のストレージ・ボリュームであるボリューム11 122と同じサイズを占有する。ホスト104及び/又は105は、ボリューム01 118からだけデータを読み込み、ボリューム11 122からはデータを読み込まない。アクセスされたデータがキャッシュ・データ212内にある場合、ローカル・ストレージ106はローカル・ディスク209にアクセスせず、メモリ207にアクセスするだけである。ホスト104及び/又は105は、ボリューム01 118にデータを書き込み、保留データ・リスト211(図2)に登録する。この保留データは、以下で説明するように、所定のスケジュールで同期処理される。」 (オ) 段落【0053】-【0058】 「【0053】読み込みプロセス ・・・(中略)・・・ 【0054】図7は、本発明の実施形態によるこの読み込みプロセスの流れ図である。ローカル・ストレージ106がホスト(たとえば、ホスト104又は105)から読み込みコマンドを受け取った後、ローカル・ストレージ106はデータのボリューム・タイプを調べる(ステップ701)。スケジューラ220は、ボリュームIDをチェックすることによりコンフィギュレーション・テーブル112内のボリューム・タイプ(たとえば、静的タイプ)を調べる。特に、スケジューラ220(図2)は、読み込みコマンドを分析して、データのボリューム・タイプを判別し、また読み込みコマンドを処理する(取り扱う)サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)を決定する。スケジューラ220は、コンフィギュレーション・テーブル112(図4)を見て読み込みコマンドを処理するためのボリューム・タイプと適切なサーバ・プログラムを調べる。ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ702、703、及び704を飛ばし、以下で説明するステップ705に進む。 ・・・(中略)・・・ 【0057】データをローカル・ディスク209に格納した後、ローカル・ストレージ106はローカル・ディスク209からキャッシュ・データ212へデータを移動する(書き込む)(ステップ705)。特に、キャッシュ制御218は、ローカル・ディスク209からキャッシュ・データ212にデータを移動する。続いてローカル・ストレージ106は、統計情報113(図5)を更新する(ステップ706)。特に、ローカル・ストレージ106のスケジューラ220は、統計情報113を更新する。統計情報113内のログ・ポインタ(ログPtr)(図5)が設定されている場合、ローカル・ストレージ106はこの読み込みコマンドのログ・データをアクセス・ログ114(図6)に追加する。スケジューラ220又はデバイス・ドライバ219は、統計情報113とアクセス・ログ114を作成する。通常、統計情報113とアクセス・ログ114の作成においてはスケジューラ220が用いられる。 【0058】その後、データ(読み込みコマンドで要求した)はキャッシュ・データ212から、読み込みコマンドを送ったホスト(たとえばホスト104又は105)に移動される。特に、キャッシュ制御218はキャッシュ・データ212からデータを適切なサーバ・プログラム(214、215、又は216)に移動し、適切なサーバ・プログラム(214、214、又は216)がデータを、読み込みコマンドを送ったホストに返す。」 (カ) 段落【0059】-【0066】 「【0059】書き込みプロセス ・・・(中略)・・・ 【0060】図8は、本発明の実施形態による書き込みプロセスの流れ図である。ローカル・ストレージ106がホストから書き込みコマンドを受け取った後、ローカル・ストレージ106は書き込みコマンドのデータのボリューム・タイプを調べる(ステップ801)。特に、スケジューラ220(図2)は、書き込みコマンドを分析して、データのボリューム・タイプを判別し、また読み込みコマンドを処理する(取り扱う)サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)を決定する。スケジューラ220は、コンフィギュレーション・テーブル112(図4)を見て書き込みコマンドを処理するためのボリューム・タイプと適切なサーバ・プログラムを調べる。ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ802、803、及び804を飛ばし、以下で説明するステップ805に進む。 ・・・(中略)・・・ 【0063】ローカル・ストレージ106は、キャッシュ・データ212を介して書き込みデータをローカル・ディスク209に書き込む。特に、適切なサーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はデータをローカル・ディスク209に書き込む。 【0064】ローカル・ストレージ106は、コンフィギュレーション・テーブル112(図4)を使用してデータを書き込む際のボリューム・タイプを調べる(ステップ806)。特に、サーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はコンフィギュレーション・テーブル112を使用してボリューム・タイプを調べる。ボリューム・タイプが同期領域の場合、ローカル・ストレージ106は即座にサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)とデータの同期をとり(書き込み)(ステップ808)、以下で説明するステップ809に進む。シンクロナイザ217(図2)はサービス・プロバイダ・サイトとの(ユーザ・サイト内の)データの同期処理を実行する。ローカル・ストレージ106内のキャッシュ制御218は、コンフィギュレーション・テーブル112を使用してサービス・プロバイダ・サイトに格納すべきデータを認識する。 【0065】ステップ806で、ボリューム・タイプが非同期領域の場合、ローカル・ストレージ106は保留データ・リスト211(図2)を更新する(ステップ807)。特に、サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)が保留データ・リストを更新する。 【0066】続いてローカル・ストレージ106は、統計情報113(図5)を更新する(ステップ809)。特に、スケジューラ220は、統計情報113を更新する。統計情報113内のログ・ポインタ(ログPtr)(図5)が設定されている場合、ローカル・ストレージ106はこの書き込みコマンドのログ・データをアクセス・ログ114に追加する。特に、スケジューラ220は書き込みコマンドのログ・データをアクセス・ログ114に追加する。これで書き込みプロセスは終了する。」 (キ)段落【0067】-【0071】 「【0067】同期プロセス ・・・(中略)・・・ 【0068】シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211(図2)内のヘッド・データを選択する(ステップ901)。最初に、シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211を調べる(ステップ902)。保留データ・リスト211にデータがなければ、シンクロナイザ217は同期プロセスを終了する。同期すべきデータが1つ又は複数(保留データ・リスト211内に)ある場合、シンクロナイザ217は以下で説明するようにステップ902?905を実行する。 【0069】シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211の情報を調べる(ステップ903)。保留データ・リスト211内のこの保留データの同期をとる必要があれば、シンクロナイザ217は保留データをサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に送り、保留データとサービス・プロバイダ・サイトとの同期をとる(ステップ904)。ローカル・ストレージ106内のキャッシュ制御218は、コンフィギュレーション・テーブル112(図4)内の「リモートID」及び「リモート・サイト」の値に基づいてサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に格納すべきデータを認識する。 【0070】シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211内の次のデータを選択する(ステップ905)。シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211内で選択するデータがなくなるまでステップ902?905を繰り返す。保留データ・リスト211に選択するデータがなくなったら、図9の方法は終了する。コンピュータが上述のいずれかの方法を実行できるようにコンピュータで読み取り可能な媒体に格納できるプログラム又はコードを実装することも本発明の範囲である。 【0071】そこで、本発明について特定の実施形態を引用しながら説明してきたが、前記開示においては修正、さまざまな変更、及び置き換えを許容することが意図されており、規定されているとおり本発明の範囲を逸脱することなく他の特徴の対応する使用がなくても場合によっては本発明のいくつかの特徴を採用することは認められるであろう。」 これらの記載から、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ユーザ・サイト101では、第1のホスト104はストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)107を介してローカル・ストレージ106に接続され、第2のホスト105はローカル・エリア・ネットワーク(LAN)108を介してローカル・ストレージ106に接続され、 ローカル・ストレージ106及びサービス・プロバイダ・サイト102及び103は、仮想ボリューム・ストレージ111の作成のため共同作業を行い、 ユーザは、ユーザ・サイト101に仮想ボリューム・ストレージ111(ローカル・ストレージ106内の)を配備することができ、仮想ボリューム・ストレージ111がユーザ・サイト101に配備されると、ホスト104及び/又はホスト105のユーザは仮想ボリューム・ストレージ111を使用することにより、巨大なサービス・プロバイダ・ストレージ(ボリューム121?124及び/又はボリューム125?128)にアクセスでき、 ローカル・ストレージ106は、マイクロプロセッサ201、ローカル(内部)バス202、SAN 107に結合されているSANインタフェース(I/F)203、LAN 108に結合されているLAN I/F 204、WAN 110に結合されているWAN I/F 205、メモリI/F206、メモリ207、ディスク・コントローラ208、及びローカル・ディスク209を備え、 メモリ207は、コンフィギュレーション・テーブル112、統計情報113、アクセス・ログ114、キャッシュ情報115、及びプログラム116を格納し、 マイクロプロセッサ201は、ローカル・ストレージ106内のすべてのリソースを制御し、プログラム116を使用してローカル・ストレージ106内のすべてのプロシージャを実行し、 キャッシュ情報115は、キャッシュ・ディレクトリ210、保留データ・リスト211、及びキャッシュ・データ212で構成され、 保留データ・リスト211は、ローカル・ストレージ106に保存されている保留データのリストであり、保留データ・リスト211は、保留データへのポインタ、サービス・プロバイダ・サイトへのポインタ、及び同期期間などの各保留データの情報を含み、 プログラム116は、サーバ・プログラム213、シンクロナイザ217、キャッシュ制御218、スケジューラ220、及びデバイス・ドライバ219を含み、 サーバ・プログラム213は、NFSサーバ214、CIFSサーバ215、及びSCSIサーバ216で構成され、 SCSIサーバ216は、SCSIターゲット・デバイスとして動作し、 シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211を使用して、ローカル・ストレージ106とサービス・プロバイダ・サイト102及び/又は103の同期をとり、 ユーザ・サイト101では、仮想ストレージ111に4種類の仮想ボリューム(ボリューム00 117、ボリューム01 118、ボリューム02 119、及びボリューム03 120)があり、これらの仮想ボリュームの特徴は、(1)静的同期ボリューム、(2)静的非同期ボリューム、(3)キャッシュされた同期ボリューム、及び(4)キャッシュされた非同期ボリュームであり、 ボリューム01 118は静的非同期ボリュームであり、したがって、ボリューム001 118は、第1のサービス・プロバイダ・サイト102において実際のストレージ・ボリュームであるボリューム11 122と同じサイズを占有し、ホスト104及び/又は105は、ボリューム01 118にデータを書き込み、保留データ・リスト211に登録し、この保留データは、所定のスケジュールで同期処理され、 「読み込みプロセス」において、 ローカル・ストレージ106がホスト(たとえば、ホスト104又は105)から読み込みコマンドを受け取った後、 ローカル・ストレージ106はデータのボリューム・タイプを調べ(ステップ701)、特に、スケジューラ220は、読み込みコマンドを分析して、データのボリューム・タイプを判別し、また読み込みコマンドを処理する(取り扱う)サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)を決定し、 ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ702、703、及び704を飛ばし、ステップ705に進み、 ローカル・ストレージ106はローカル・ディスク209からキャッシュ・データ212へデータを移動し(書き込み)(ステップ705)、特に、キャッシュ制御218は、ローカル・ディスク209からキャッシュ・データ212にデータを移動し、 続いてローカル・ストレージ106は、統計情報113を更新し(ステップ706)、特に、ローカル・ストレージ106のスケジューラ220は、統計情報113を更新し、 その後、データ(読み込みコマンドで要求した)はキャッシュ・データ212から、読み込みコマンドを送ったホスト(たとえばホスト104又は105)に移動され、特に、キャッシュ制御218はキャッシュ・データ212からデータを適切なサーバ・プログラム(214、215、又は216)に移動し、適切なサーバ・プログラム(214、214、又は216)がデータを、読み込みコマンドを送ったホストに返し、 「書き込みプロセス」において、 ローカル・ストレージ106がホストから書き込みコマンドを受け取った後、ローカル・ストレージ106は書き込みコマンドのデータのボリューム・タイプを調べ(ステップ801)、特に、スケジューラ220は、書き込みコマンドを分析して、データのボリューム・タイプを判別し、また読み込みコマンドを処理する(取り扱う)サーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)を決定し、 ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ802、803、及び804を飛ばし、ステップ805に進み、 ローカル・ストレージ106は、キャッシュ・データ212を介して書き込みデータをローカル・ディスク209に書き込み、特に、適切なサーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はデータをローカル・ディスク209に書き込み、 ローカル・ストレージ106は、コンフィギュレーション・テーブル112を使用してデータを書き込む際のボリューム・タイプを調べ(ステップ806)、特に、サーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はコンフィギュレーション・テーブル112を使用してボリューム・タイプを調べ、 ステップ806で、ボリューム・タイプが非同期領域の場合、ローカル・ストレージ106は保留データ・リスト211を更新する(ステップ807)、特に、サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)が保留データ・リストを更新し、 続いてローカル・ストレージ106は、統計情報113を更新し(ステップ809)、特に、スケジューラ220は、統計情報113を更新し、 スケジューラ220は書き込みコマンドのログ・データをアクセス・ログ114に追加し、これで書き込みプロセスは終了し、 「同期プロセス」において、 シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211内のヘッド・データを選択する(ステップ901)、 最初に、シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211を調べ(ステップ902)、 同期すべきデータが1つ又は複数(保留データ・リスト211内に)ある場合、シンクロナイザ217は、ステップ902?905を実行し、 シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211の情報を調べ(ステップ903)、 保留データ・リスト211内のこの保留データの同期をとる必要があれば、シンクロナイザ217は保留データをサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に送り、保留データとサービス・プロバイダ・サイトとの同期をとり(ステップ904)、 シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211内の次のデータを選択し(ステップ905)、 シンクロナイザ217は、保留データ・リスト211内で選択するデータがなくなるまでステップ902?905を繰り返し、 保留データ・リスト211に選択するデータがなくなったら、終了する、 コンピュータが上述のいずれかの方法を実行できるようにコンピュータで読み取り可能な媒体に格納できるプログラム又はコードを実装する、 ローカルストレージ。」 イ 対比 補正発明1と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明の「マイクロプロセッサ201」は、補正発明1の「少なくとも1つのプロセッサ」に相当する。 (イ) 引用発明の「プログラム116を格納」する「メモリ207」は、補正発明1の「プログラム命令を含むメモリ」に相当する。 (ウ) 引用発明の「ホスト104及び/又は105」は、「第1のホスト104はストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)107を介してローカル・ストレージ106に接続され、第2のホスト105はローカル・エリア・ネットワーク(LAN)108を介してローカル・ストレージ106に接続され」るから、「顧客ネットワーク上」にあるといえる。 また、引用発明において、「ローカルストレージ106」側で、「読み込みプロセス」や「書き込みプロセス」などの「プロセス」が実行されるときは、当然に、読み込み/書き込みを指示した「ホスト104及び/又はホスト105」側でも、これに対応する何らかの「プロセス」が実行されていると解される。 よって、引用発明の「第1のホスト104」、「第2のホスト105」で実行される「プロセス」は、補正発明1の「顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセス」に相当する。 引用発明の「ローカル・ストレージ106」は、「第1のホスト104はストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)107を介してローカル・ストレージ106に接続され、第2のホスト105はローカル・エリア・ネットワーク(LAN)108を介してローカル・ストレージ106に接続され」るから、「顧客ネットワーク上」にあるといえる。 引用発明の「仮想ボリューム・ストレージ111」は、「ローカル・ストレージ106及びサービス・プロバイダ・サイト102及び103は、仮想ボリューム・ストレージ111の作成のため共同作業を行」うことで実現された、仮想的なストレージではあるが、「ユーザは、ユーザ・サイト101に仮想ボリューム・ストレージ111(ローカル・ストレージ106内の)を配備することができ」るから、「ローカル・ストレージ106内の」ストレージといえる。 よって、引用発明の「仮想ボリューム・ストレージ111」は、補正発明1の「前記顧客ネットワーク上のローカルデータストア」に相当する。 また、引用発明の「ローカル・ストレージ106」の「仮想ボリューム・ストレージ111」は、具体的には、「ローカル・ディスク209」を用いて実現されることが明らかであるから、引用発明のローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分は、補正発明1の「ストレージゲートウェイ」と、「ストレージ・システムの構成要素」である点で共通するといえる。 したがって、引用発明の「仮想ストレージ111」に対する「読み込みプロセス」の具体的な手順において、(ローカル・ディスク209以外の)「ローカル・ストレージ106がホスト(たとえば、ホスト104又は105)から読み込みコマンドを受け取」ること、及び、「仮想ストレージ111」に対する「書き込みプロセス」の具体的な手順において、(ローカル・ディスク209以外の)「ローカル・ストレージ106がホストから書き込みコマンドを受け取」ることは、補正発明1の「ストレージゲートウェイが、顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから、前記顧客ネットワーク上のローカルデータストアに向けられた読取り要求および書込み要求を受信すること」と、「ストレージ・システムの構成要素が、顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから、前記顧客ネットワーク上のローカルデータストアに向けられた読取り要求および書込み要求を受信すること」である点で共通するといえる。 (エ) 以下、引用発明の「仮想ストレージ111」を構成する4種類の仮想ボリュームのうち、特に、「静的非同期ボリューム」(「ボリューム01 118」)に着目して、対比する。 引用発明の「仮想ストレージ111」に対する「読み込みプロセス」の具体的な手順における、「ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ702、703、及び704を飛ばし、ステップ705に進み、ローカル・ストレージ106はローカル・ディスク209からキャッシュ・データ212へデータを移動する(書き込む)(ステップ705)」、及び、「仮想ストレージ111」に対する「書き込みプロセス」の具体的な手順における、「ボリューム・タイプが静的ボリュームの場合、ローカル・ストレージ106はステップ802、803、及び804を飛ばし、ステップ805に進み、ローカル・ストレージ106は、キャッシュ・データ212を介して書き込みデータをローカル・ディスク209に書き込み、特に、適切なサーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はデータをローカル・ディスク209に書き込み」する「ステップ805」において、「ローカル・ディスク209」に渡される具体的な情報が何であるかは特定されていないが、「ローカル・ストレージ106」の「ローカル・ディスク209」以外の部分から「ローカルディスク209」に対して、「前記読取り要求および前記書込み要求に関連する情報」を渡していることは明らかであるといえる。 したがって、引用発明の「仮想ストレージ111」に対する「読み込みプロセス」、「書き込みプロセス」の具体的な手順である、「ローカル・ディスク209」の読み込みを行う「ステップ705」、及び、書き込みを行う「ステップ805」において、ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分から、「ローカルディスク209」に対して、上記の「読取り要求および前記書込み要求に関連する情報」を渡していることは、補正発明1の「前記ストレージゲートウェイが、前記読取り要求および前記書込み要求を前記ローカルデータストアに渡すこと」と、「前記ストレージ・システムの構成要素が、前記読取り要求および前記書込み要求に関連する情報を前記ローカルデータストアに渡す」点で共通するといえる。 (オ) 用語「スナップショット」の一般的な意味は、ある時点での、ストレージのボリュームの複製(コピー)である(引用例の上記摘記事項(イ)の段落【0029】の記載を参照。)。 引用発明の「第1のサービス・プロバイダ・サイト102」の「ボリューム11 122」は、「静的非同期ボリューム」である「ボリューム01 118」と、「同じサイズ」であり、かつ、「同期プロセス」によって「所定のスケジュールで同期処理され」ることで、常に、仮想ボリューム01での書き込み更新が、サービス・プロバイダのボリューム11に伝搬されているから、補正発明1の「サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショット」に相当する。 引用発明のサービス・プロバイダ・サイトとの「同期プロセス」の具体的な手順において、「保留データとサービス・プロバイダ・サイトとの同期をとる(ステップ904)」で用いられる「保留データ」とは、「同期プロセス」よりも前の「書き込みプロセス」の具体的な手順における、「ステップ805に進み、ローカル・ストレージ106は、キャッシュ・データ212を介して書き込みデータをローカル・ディスク209に書き込み、特に、適切なサーバ・プログラム(NFSサーバ214、CIFSサーバ215、又はSCSIサーバ216)はデータをローカル・ディスク209に書き込み」、その後、「ステップ806で、ボリューム・タイプが非同期領域の場合、ローカル・ストレージ106は保留データ・リスト211を更新する(ステップ807)、特に、サーバ・プログラム(サーバ214、215、又は216)が保留データ・リストを更新」するものであって、「保留データ・リスト211は、ローカル・ストレージ106に保存されている保留データのリストであり、保留データ・リスト211は、保留データへのポインタ、サービス・プロバイダ・サイトへのポインタ、及び同期期間などの各保留データの情報を含」むというものであるから、引用発明の「保留データ」とは、要するに、ローカル・ディスク209にデータを書き込む「ステップ805」において、既にローカル・ディスク209に書き込まれたデータであって、「保留データ・リスト」の「保留データへのポインタ」に基づいて管理されるデータと解される。 したがって、引用発明の「静的非同期ボリューム」の「同期プロセス」において、「ローカル・ストレージ106」の「シンクロナイザ217は保留データをサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に送り、保留データとサービス・プロバイダ・サイトとの同期をとる(ステップ904)」ことは、補正発明1の「前記ストレージゲートウェイが、サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信すること」と、「前記ストレージ・システムの構成要素が、サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信する」点で共通しているといえる。 さらに、引用発明の「静的非同期ボリューム」の「同期プロセス」において、「ローカル・ストレージ106」の「シンクロナイザ217は保留データをサービス・プロバイダ・サイト(たとえば、サイト102)に送り、保留データとサービス・プロバイダ・サイトとの同期をとる(ステップ904)」ことは、補正発明1の「前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、前記ストレージゲートウェイが、前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータを書込みログにバッファリングすることと、前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることとを行うように動作可能である」ことと、「前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、前記ストレージ・システムの構成要素が、前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータに関連するデータを記憶部に記憶することと、前記記憶された書込みデータに関連するデータを用いて前記記憶部に基づいて前記サービスプロバイダにアップロードすることとを行うように動作可能である」点で共通するといえる。 (カ) 引用発明の「プログラム116を格納」する「メモリ207」であって、「プログラム116」が、「読み込みプロセス」、「書き込みプロセス」、「同期プロセス」を実現するために、「マイクロプロセッサ201」によって実行可能である、「メモリ207」であることは、補正発明1の「プログラム命令を含むメモリであって、前記プログラム命令が」、「ゲートウェイプロセスを実現するために、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である、メモリ」と、「プログラム命令を含むメモリであって、前記プログラム命令が」、「プロセスを実現するために、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である、メモリ」である点で共通するといえる。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「少なくとも1つのプロセッサと、 プログラム命令を含むメモリであって、前記プログラム命令が、 ストレージ・システムの構成要素が、顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから、前記顧客ネットワーク上のローカルデータストアに向けられた読取り要求および書込み要求を受信することと、 前記ストレージ・システムの構成要素が、前記読取り要求および前記書込み要求に関連する情報を前記ローカルデータストアに渡すことと、 前記ストレージ・システムの構成要素が、サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信することと、 前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、前記ストレージ・システムの構成要素が、 前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータに関連するデータを記憶部に記憶することと、 前記記憶された書込みデータに関連するデータを用いて前記記憶部に基づいて前記サービスプロバイダにアップロードすることと を行うように動作可能である、 プロセスを実現するために、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能である、メモリと を備える装置。」である点。 [相違点1] 補正発明1では、「ストレージゲートウェイ」が、顧客ネットワーク上の1つまたは複数のプロセスから、前記顧客ネットワーク上のローカルデータストアに向けられた読取り要求および書込み要求を受信するのに対し、引用発明では、読取り/書込み要求を受信するのは、「ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分」であって「ストレージゲートウェイ」ではない点。 [相違点2] 補正発明1では、前記「ストレージゲートウェイ」が、「前記読取り要求および前記書込み要求」を前記ローカルデータストアに渡すのに対して、引用発明では、読取り/書込み要求を渡すのは、「ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分」であって「ストレージゲートウェイ」ではなく、また、「ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分」から「ローカル・ディスク209」に、「前記読取り要求および前記書込み要求に関連する情報」を渡すものではあるが、「前記読取り要求および前記書込み要求」それ自体を渡すことが特定されていない点。 [相違点3] 補正発明1では、「前記ストレージゲートウェイ」が、サービスプロバイダによりリモートデータストア上で維持される前記ローカルデータストアのスナップショットを前記書込みデータで更新するために、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するのに対して、引用発明では、書き込みデータを送信するのは、「ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分」であって「ストレージゲートウェイ」ではない点。 [相違点4] 補正発明1では、前記書込み要求によって示される書込みデータを前記サービスプロバイダに送信するために、「前記ストレージゲートウェイ」が、「前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータを書込みログにバッファリングすることと、前記バッファリングされた書込みデータを前記書込みログから前記サービスプロバイダにアップロードすることとを行うように動作可能である」のに対して、引用発明では、書き込みデータを送信するのは、「ローカル・ストレージ106のローカル・ディスク209以外の部分」であって「ストレージゲートウェイ」ではなく、また、引用発明では、「保留データへのポインタ」を含む、「ローカル・ストレージ106に保存されている保留データのリスト」を、「保留データ・リスト211」として記憶するものであって、「前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータ」それ自体を「書込みログ」に「バッファリング」するものではなく、引用発明では、「保留データ・リスト211」を参照して、既に書き込まれたデータを、アップロードするものであって、「バッファリング」された「書き込みデータ」それ自体を「書込みログから」前記サービスプロバイダにアップロードするものではない点。 [相違点5] 補正発明1では、プログラム命令が、「ゲートウェイプロセスを実現する」のに対して、引用発明では、プログラムによって「読み込みプロセス」、「書き込みプロセス」、「同期プロセス」を実現するものであって、「ゲートウェイプロセス」を実現するものではない点。 ウ 判断 上記相違点4について検討する。 引用発明は、4種類の仮想ボリュームのうちの「静的非同期ボリューム」(「ボリューム01 118」)に対する「同期プロセス」において、「ローカル・ストレージ106に保存されている保留データ」と、これを管理するための「保留データへのポインタ」を保持する「保留データ・リスト211」を前提として、保存されている書き込みデータを、非同期なタイミングで、サービス・プロバイダ・サイトへとアップロードするものである。 そして、このような手順によって、「ローカル・ストレージ106及びサービス・プロバイダ・サイト102及び103は、仮想ボリューム・ストレージ111の作成のため共同作業を行」うことで、「ユーザ向けの高速なアクセスを可能にする仮想ローカル・ストレージを使いやすい形で実現することができる」(引用例の段落【0011】の記載を参照。)などの課題を解決するものである。 引用例には、明細書末尾(段落【0071】)に、「修正、さまざまな変更、及び置き換えを許容する」旨の一般的な構成の変更に関する記載はあるが、実質的には唯一の実施例のみが記載されている。そして、引用例には、引用発明として認定した「静的非同期ボリューム」を含む4種類の仮想ボリュームを構築するための、ローカルストレージ106の具体的なハードウエア構成と、読み込みプロセス、書き込みプロセス、同期プロセスの具体的な手順が記載されているが、データ内容が静的か(キャッシュであり内容が変動する)動的か、更新伝搬が同期的か非同期的かによらず、書き込みデータを保存する前に、「前記1つまたは複数のプロセスから受信した前記書込みデータ」それ自体を「バッファリング」する「書込みログ」を設けて、「バッファリング」された「書き込みデータ」を「書込みログから」前記サービスプロバイダにアップロードする構成や手順は、記載も示唆もない。 なお、前置報告書で引用された特開2010-61559号公報(段落【0004】を参照。)、及び、特開2002-108640号公報(段落【0035】-【0051】を参照。)には、それぞれ、マスター・スレーブ(稼働系・待機系)の二重化冗長構成された「データベースシステム」において、「ログ情報」を用いて同期をとる周知技術は記載があるが、いずれの文献にも、引用発明において、上記相違点4に係る構成を採用することが容易であったことを根拠付ける記載は見当たらない。 ほかに、引用発明において、相違点4に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者が容易に想到しえたことというべき理由は見当たらない。 したがって、相違点1-3、5について検討するまでもなく、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ほかに、補正発明1を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2)補正事項2、4について 補正事項2について、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「補正発明8」という。)は、補正前の請求項13に基づく、請求項1に係る補正事項1と同様の特許請求の範囲の限定的な減縮を目的とする補正であって、実質的に請求項1の「装置」を、「方法」として記載したものであるから、請求項1と同様の理由により、当業者が引用例に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、補正事項4についても、補正事項2の限定的な減縮に伴う、他の請求項の形式的な補正であって、特許請求の範囲の限定的な減縮を目的とするものである。 よって、補正事項2、4についても、補正事項1と同様に、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 (3)補正事項3について 補正事項3は、請求項の削除及びそれに伴う他の請求項の形式的な補正であり、特許法17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当する。 よって、補正事項3についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-14に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、補正発明1及び補正発明8は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、補正発明1又は補正発明8を直接又は間接的に引用する補正発明2?7、9-14は、補正発明1又は補正発明8に係る発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-21 |
出願番号 | 特願2014-519136(P2014-519136) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治、野田 佳邦 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山田 正文 |
発明の名称 | シャドーイングストレージゲートウェイ |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 山川 政樹 |