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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1322122 |
審判番号 | 不服2015-17092 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-17 |
確定日 | 2016-11-29 |
事件の表示 | 特願2007- 96450「診断医学画像の相互参照測定装置およびコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-275588〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年4月2日(パリ条約による優先権主張日;平成18年3月31日、米国;平成19年3月26日、米国)に出願された特許出願であって、平成25年3月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月27日に意見書と手続補正書が提出され、さらに、平成26年6月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月26日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成27年5月13日付けで拒絶査定がなされ、その謄本は同月18日に請求人に送達された。これに対し、同年9月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成26年12月26日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 診断医学画像での相互参照測定装置であって、該装置は、 ・領域を表す第1のタイプの第1のデータを収集する(50)手段; ・該領域を表す第2のタイプの第2のデータを収集する(50)手段、 ただし該第1のタイプは該第2のタイプとは異なっており; ・第1の画像を前記第1のデータに依存して発生させる(52)手段; ・第2の画像を前記第2のデータに依存して発生させる(52)手段; ・第1の測定に対する第1のマーク位置を前記第1の画像上で検出する(56)手段; ・第2の測定に対する第2のマーク位置を前記第2の画像上で検出する(56)手段、 ただし前記第1の測定と前記第2の測定とは同じ測定であるが、異なる前記第1の画像と前記第2の画像とに対して行われたものである; ・前記第1のマーク位置を前記第2の画像上に反映する(60)手段、および; ・前記第2のマーク位置を前記第1の画像上に反映する(60)手段 を有する、装置において、 前記第1の測定と前記第2の測定との間の測定値の差を検出する(62)手段をさらに有する ことを特徴とする、相互参照測定装置。」 第3 引用例について 1 本願の最先の優先権主張日(以下、単に「優先日」という。)前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-55266号(以下、「引用例1」という。)には、つぎの事項が記載されている。 (1)引用例1に記載された事項(下線は当審により付加したものである。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、心臓などの運動組織から得られたドプラ情報を処理する超音波診断装置に関する。」 イ 「【0031】 まず、図1?図3を用いて本実施形態に係る画像処理について説明する。この画像処理は超音波診断装置(システム)において実行されるものであるが、超音波診断装置本体からデータを取得するコンピュータ上において実行されてもよい。 【0032】 図1には、抽出ラインの設定方法が示されている。2D画像10は、表示器の画面上に表示された画像であり、その2D画像10は、例えば、白黒の2D組織エコー画像(Bモード断層画像)、カラーの2D組織速度画像(TDI法に従った画像)、あるいは、それらを合成した画像である。ちなみに、三次元画像上において抽出ラインの設定を行うことも可能である。図1に示す例において、超音波ビームの電子セクタ走査により、超音波ビームが各ビームアドレスにおいて形成され、これによって扇状のデータ取込領域(走査面)が形成される。その走査面上で得られたデータ群を画像化したものが2D画像10である。図1においてr方向は深さ方向を表しており、φ方向はビームの偏向方向(電子走査方向)を表している。図示されるように、各ビームアドレスごとにビーム偏向角度は異なっている。 【0033】 2D画像10には、図1に示す例において、心臓(左室)14の断面が現れている。符号14Aは左室の内側エッジ(内膜)を表しており、符号14Bは左室の外側エッジ(外膜)を表している。抽出ラインの設定に際して、2D画像10は動画像であるのが望ましい。ただし、指定された時相(時刻)の静止画像上において抽出ラインの設定を行うこともできる。 【0034】 抽出ラインLの設定について具体的に説明する。抽出ラインLは2D画像10上において任意の位置で任意の傾きをもって設定することができる。その長さは本実施形態において固定的に設定されているが、もちろん、その長さをユーザー設定させるようにしてもよい。抽出ラインLは、本実施形態においてユーザーにより設定されているが、場合によっては画像解析結果などから自動的に設定することも可能である。抽出ラインLは本実施形態において直線である。 【0035】 図1に示す例において、左室14の特定部位を横切って1本の抽出ラインLが設定されている。その場合において、その特定部位の収縮及び拡張の運動方向にできる限り合致するように抽出ラインLが設定されるのが望ましい。したがって、2D画像10が動画像として表示されるのが望ましく、そのような構成によれば、特定部位の運動方向に適切に抽出ラインLを合わせることが可能であり、また抽出ラインLの長さ範囲内に特定部位の運動全体がカバーされていることを容易に確認することができる。抽出ラインLの設定に当たっては、トラックボールなどのポインティングデバイスを用いてその位置及び傾き角度を設定するようにしてもよいし、抽出ラインLにおける2つの端点X,Yの座標を指定することにより、その指定を行うようにしてもよい。 【0036】 後述するMモード表示方式に従った組織速度画像(M-組織速度画像)に加えてトレースライン群を表示する場合には、抽出ラインL上に1又は複数のトラッキング点がユーザーによりあるいは自動的に設定される。この図1に示す例では、内膜14A上にトラッキング点Rが設定されており、外膜14B上にトラッキング点Tが設定されており、それらのトラッキング点R,Tの間の距離を均等に2分割する分割点としてトラッキング点Sが自動設定されている。すなわち図1に示す例では、抽出ラインL上に2つの区間(R-S,S-T)が設定されている。抽出ラインL上に設定する区間の数(分割数)kについてはユーザーによって任意に設定することができる。図1に示す例では、2D画像10上に表示された抽出ラインL上において複数のトラッキング点R,S,Tが設定されていたが、後述するM-組織速度画像上における特定時相の組織速度データ列上においてそれらのトラッキング点の指定を行うことも可能である。トラッキング処理及びトレースライン群の形成については後に図2及び図3を用いて説明する。」 ウ 「【0042】 図2には、角度補正及びそれに基づく画像形成の内容が概念図として示されている。ここで、(A)にはフレーム列が示されている。このフレーム列は時系列順で取得された複数の2D組織速度画像16によって構成されるものである。図2においては、それらの2D組織速度画像16に対してフレーム番号としてF_(1),F_(2),・・・,F_(n)のラベルが付されている。各2D組織速度画像16には、抽出ラインL及びトラッキング点R,S,Tが表されている。ちなみに、このフレーム列は、本実施形態において、後述するシネメモリ上に保存されたものであるが、リアルタイムで取得されるものであってもよい。なお、図2においては2D組織エコー画像(Bモード画像)のフレーム列については図示省略されている。 【0043】 抽出ラインLが設定された後、各2D組織速度画像(フレーム)16から、抽出ラインLに相当する組織速度データ列q_(1),q_(2),・・・,q_(n)が抽出される。そして、複数の組織速度データ列q_(1),q_(2),・・・,q_(n)に対してそれぞれ角度補正18が実行され、これによって補正後の組織速度データ列Q_(1),Q_(2),・・・,Q_(n)が生成される。その角度補正18に当たっては、抽出ラインLについて演算された交差角度セットが用いられる。具体的には、角度補正前の観測組織速度をvとし、実際の組織速度をVとし、交差角度をθとすると、v=Vcosθの関係があるため、V=v/cosθの計算を実行することにより各組織速度データごとに角度補正が行われる。 【0044】 (B)に示すM-組織速度画像は、各時相すなわち各フレームごとに求められた角度補正後の組織速度データ列Q_(1),Q_(2),・・・,Q_(n)を時系列順に並べた画像である。すなわちその縦軸は抽出ラインに相当し、その横軸は時間軸に相当する。各組織速度データ列は、抽出ライン上に並ぶ複数の組織速度データで構成されている。それらの組織速度データのマッピングにあたって、必要に応じて、補間処理あるいは間引き処理が適用される。(B)に示すM-組織速度画像は、その全体にわたって適正な角度補正が行われた後の画像であるため、抽出ライン上における組織速度分布の時間的な変化を正確に観察することが可能である。通常は、M-組織速度画像はカラー画像として表示される。すなわち、組織速度データの正負及び大きさに応じて所定の色相及び輝度が割り当てられる。」 エ 「【0054】 次に、図4?図7を用いて本実施形態に係る超音波診断装置の構成及び動作について説明する。図4には超音波診断装置の機能ブロック図が示されており、図5及び図6には超音波診断装置における2つの表示例が示されており、図7には、超音波診断装置の動作例が示されている。 【0055】 図4において、プローブ40は、超音波を送受波する送受波器である。本実施形態において、プローブ40内には複数の振動素子からなるアレイ振動子が設けられており、そのアレイ振動子によって超音波ビームが形成される。超音波ビームは本実施形態において電子セクタ走査方式によって電子走査され、これによって扇状の走査面が構築されている。ちなみに、いわゆる1つの送信ビーム当たり複数の受信ビームを同時形成する制御を適用することも可能であり、またプローブ40がいわゆる3Dプローブであってもよい。例えば心臓の超音波診断を行う場合には、生体の胸部表面上に当接されるプローブ40の位置及び姿勢が適正に調整される。その場合においては表示器に表示される例えばBモード画像などが観察される。組織ドプライメージング法(TDI法)を実行するために、各ビームアドレスごとに複数回の超音波の送受信が実行される。 【0056】 送受信部42はデジタルビームフォーマーとして構成されている。すなわち送受信部42は送信ビームフォーマー及び受信ビームフォーマーを有している。送信ビームフォーマーによってアレイ振動子に対して複数の送信信号が供給され、これによって送信ビームが形成される。一方、アレイ振動子から出力される複数の受信信号が受信ビームフォーマーにおいて整相加算処理され、これによって整相加算後の受信信号が得られる。すなわち受信ビームに対応した受信信号が得られることになる。送受信部42から出力される受信信号は図4に示されるように組織エコー処理部46及び組織速度処理部48へ出力される。ちなみに、図示のように、送受信部42の後段にシネメモリ44を設けるようにしてもよい。すなわち座標変換前の受信信号をシネメモリ44に格納しておき、必要に応じて、そのシネメモリ44からデータを読み出して必要な画像を実行するものである。」 オ 「【0057】 組織エコー処理部46は、組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行している。その処理には、例えば対数変換処理などが含まれ、更に座標変換処理、補間処理などが含まれる。組織エコー処理部46はいわゆるDSC(デジタルスキャンコンバータ)を有する。組織エコー処理部46から各フレームのデータが出力される。組織エコー処理部46の後段にはシネメモリ50が設けられている。このシネメモリ50は座標変換後の各フレームのデータを保存するメモリであり、そこには時系列順でフレーム列が格納される。 【0058】 組織速度処理部48は、ドプラ処理部として機能するものであり、送受信部42から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算している。更に、組織速度処理部48は座標変換処理や補間処理なども実行している。組織エコー処理部46と同様に、組織速度処理部48も上記のDSCを有している。組織速度処理部48の後段にはシネメモリ52が設けられる。このシネメモリ52には、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータが時系列順で格納される。本実施形態において、シネメモリ50とシネメモリ52は同期して動作している。すなわち、それらのシネメモリ50,52には一定の時間範囲内における時系列順の複数のフレームデータが互いに対応付けられて格納されている。シネメモリ44,50,52はそれぞれリングバッファ構造を有しており、最新のフレームから過去一定時間前のフレームまでの時間範囲内にわたってフレーム列を格納する機能を有する。シネメモリ44においては送受波座標系にしたがった各フレームのデータが格納されており、シネメモリ50,52においては表示座標系にしたがった各フレームのデータが格納されている。シネメモリ44の配置を省略するようにしてもよいし、あるいは、シネメモリ50,52の配置を省略するようにしてもよい。いずれにしても、上記のようなシネメモリを利用することにより、そこに格納されているフレーム列を後に読み出してループ再生させることなどが可能である。本実施形態にはそのようなループ再生にしたがって表示される動画像上において上述した抽出ラインの設定が行われる。 【0059】 フレームメモリ54上には、2D組織エコー画像すなわちBモード画像が格納される。フレームメモリ56には、本実施形態において、シネメモリ50から読み出された各時相の組織速度データ列(当審注:「組織エコーデータ列」の誤記であると認める。)が格納される。すなわち、フレームメモリ56上にはM-組織エコー画像が構築される。それらの2D組織エコー画像及びM-組織エコー画像はいずれも白黒画像である。 【0060】 組織速度処理部48から出力される各フレームのデータはカラー演算器57によってカラー演算処理され、その後にフレームメモリ58に格納される。フレームメモリ58上にはカラーの2D組織速度画像が格納される。カラー演算器57はルックアップテーブル(LUT)として構成されており、入力される組織速度の正負及びその値に応じたRGBの値を出力する。カラー演算器57をフレームメモリ58の後段に設けることもできる。そのような構成において、フレームメモリ58から出力される白黒のデータをカラー演算器57を経ることなく合成処理部76に対してそのまま出力できるように構成してもよい。 【0061】 シネメモリ52から、抽出ラインに対応付けられた各時相の組織速度データ列が抽出され、それらのデータ列は角度補正部60に入力され、上述した角度補正が実行される。角度補正後の組織速度データ列はカラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納される。フレームメモリ62の後段にカラー演算器61を設けることもできる。そのような構成において、フレームメモリ62から出力される白黒のデータをカラー演算器61を経ることなく合成処理部76に対してそのまま出力できるように構成してもよい。また、角度補正後の組織速度データ列はトラッキング部64及び必要に応じて速度プロファイル作成部74に出力される。カラー演算器61は、上記のカラー演算器57と同様に、LUTによって構成されており、本実施形態においてカラー演算器57におけるカラー演算条件とカラー演算器61におけるカラー演算条件は同一である。したがってそれらのLUTを共通利用することも可能である。もちろん2D組織速度画像とM-組織速度画像とで別々のカラー演算条件を適用することもできる。 【0062】 ちなみに、シネメモリ50及びシネメモリ52から抽出される組織エコーデータ列及び組織速度データ列に対して補間処理や間引き処理を適用するデータ処理器を設けるようにしてもよい。本実施形態において、角度補正部60は、入力される組織速度データ列を構成する各組織速度データに対して、それに対応付けられた交差角度に基づく角度補正演算を適用することにより角度補正結果を得ている。しかし、そのような独立した角度補正部60を設けることなく、カラー演算器61が有するLUTの内容を書き換えることにより、結果として角度補正が行われるようにしてもよい。2D組織速度画像とM-組織速度画像はカラー画像として構成されている。」 カ 「【0066】 合成処理部76は、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成するモジュールである。図示されるように、合成処理部76にはフレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM-組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM-組織速度画像のデータ、トレースライン形成部66から出力されるトレースラインのデータ、フレームメモリ70から出力されるM-ストレイン画像のデータ、ストレイングラフ作成部72から出力されるストレイングラフのデータ、速度プロファイル作成部74から出力される速度プロファイルのデータがそれぞれ入力されており、更に後に説明する制御部82からのグラフィックデータも入力されている。 【0067】 合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上には後に図5及び図6を用いて示すような画像が表示されることになる。表示器80は例えばCRTによって構成されてもよいし、液晶ディスプレイによって構成されてもよい。あるいは、合成処理部76の後段にCRT及び液晶ディスプレイの2つのディスプレイを接続し、一方をメインディスプレイとし、他方をサブディスプレイとしてもよい。」 キ 「【0071】 図5には、第1表示モードにおける表示例が示されており、図6には第2表示モードにおける表示例が示されている。図5に示す第1表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示されている。もちろん両者を合成した画像を表示するようにしてもよい。いずれかの画像上において1又は複数の抽出ラインLが設定され(その設定内容はもう一方の画像にも反映される)、図5に示す例ではA,B,C,Dで特定される4つの抽出ラインLが設定されている。本実施形態において、複数の抽出ラインを設定する場合、各抽出ラインの長さは固定値であるが、もちろん各抽出ラインごとにその長さを可変設定するようにしてもよい。その場合において、各抽出ラインごとに、表示する画像の縦軸のスケールをそれぞれ一定にしてもよいし、可変してもよい。図5に示す例では、各抽出ラインLごとにその抽出ライン上における内膜点及び外膜点にそれぞれトラッキング点がユーザーにより設定されている。上述したように、各抽出ラインを設定する場合、その抽出ラインを設定しようとする局所部位の運動方向にできる限り合致するようにそれぞれの抽出ラインを設定するのが望ましい。一般に、心臓壁に対して抽出ラインを設定する場合には、その心臓壁を横切る方向すなわち厚さ方向に抽出ラインを設定すれば、同時に運動方向に抽出ラインを設定したことになる。上述したように、2D組織速度画像102及び2D組織エコー画像104はループ再生を用いて動画像として表示されるのが望ましい。 【0072】 以上のように設定された4つの抽出ラインに対応して、4つ第1複合画像106A,106B,106C,106Dが表示される。それぞれの第1複合画像106A,106B,106C、106Dにはそれに対応づけられた抽出ラインを識別するラベル(A,B,C,D)が付されている。それぞれの第1複合画像106A,106B,106C,106Dは、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した画像である。この場合において、M-組織速度画像107-2は角度補正後の組織速度データを基礎として構築されているため、より正確な速度情報を表現することができる。なお、背景としての白黒のM-組織エコー画像107-1についてはその表示を省略するようにしてもよい。 【0073】 図5に示されるように、各第1複合画像106A,106B,106C,106D上にはトレースライン群108,108B,108C,108Dが合成表示されている。そのようなトレースライン群108A,108B,108C,108Dを表示することにより、例えば心臓壁の内側の層と外側の層とについて時間的な動きや厚みの変化を個別的に明瞭に表示することが可能となる。 【0074】 符号110は心電波形を表している。ちなみに、第1複合画像106A,106B,106C,106D及び心電波形110のそれぞれの時間時間は互いに平行でその両端が一致している。その時間軸上において時相カーソル112を用いてユーザーが所定の時相を指定すると、図5に示されるように、4つの抽出ラインに対応して4つの速度プロファイル114A,114B,114C,114Dが表示される。速度プロファイル114A,114B,114C,114Dにおける横軸116は速度軸であり、正負の速度の大きさを表している。その縦軸118は抽出ライン上の位置を表している。ある時相における各抽出ライン上の速度プロファイルを観察することにより、当該時相において組織運動のより詳細な観察を行えるという利点がある。上記説明では、ユーザーによって時相の指定を行ったが、その指定がなされない場合においては、計測開始時点をデフォルトの時相として指定して各速度プロファイルを表示させることもできる。」 ク 「【0093】 以上のように、本実施形態によれば、設定された抽出ラインを組織運動方向とみなして、抽出ラインから抽出された各組織速度データに対して適切な角度補正を行った上で画像処理を行えるという利点がある。したがって、例えば心臓壁における各部位について組織運動を観測する場合においても、演算された複数の組織速度を互いに比較することも可能であり、すなわち定量的な解析を実現できるという利点がある。従来においては、例えば左室内に設定されたある点を基準として心臓壁上の各部位の運動方向が推定されていたが、そのような手法によると正常例においては正しいとしても、疾患例については必ずしも上記の仮定が当てはまらないという問題があるが、本実施形態によれば、実際にユーザーが心臓壁の動きを観測した上で抽出ラインを設定するので、上記従来法で指摘されていたような問題を解消あるいは改善できるという利点がある。」 ケ 図1 コ 図4 サ 図5 (2)引用例1に記載された発明 ア 上記(1)イには、引用例1の「抽出ライン」が「カラーの2D組織速度画像」あるいは、「白黒の2D組織エコー画像」などの表示器の画面上に表示された「心臓(左室)の断面を含む」「2D画像10」上において、ユーザが設定することができるものであることが記載されている。 イ 上記(1)エによれば、超音波を送受波する送受波器であるプローブ40に接続された送受信部42から出力される受信信号が組織エコー処理部46及び組織速度処理48に出力されることが記載されている。 ウ 上記(1)ウ及びオによれば、引用例1に記載の超音波診断装置の「組織エコー処理部46」が、組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行し、各フレームのデータを出力し、そのフレーム列が時系列順に「シネメモリ50」に格納され、組織エコー処理部46の出力する各フレームのデータが格納される「フレームメモリ54」上には、2D組織エコー画像すなわちBモード画像が格納され、シネメモリ50から設定された抽出ラインLの位置における2D組織エコー画像の各時相の各フレームのデータがフレームメモリ56に読み出され、フレームメモリ56上にはM-組織エコー画像が構築されることが、 「組織速度処理部48」が、送受信部42から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算し、各フレームのデータが出力され、「シネメモリ52」に、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータが時系列順で格納され、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータはカラー演算器57によってカラー演算処理され、その後にフレームメモリ58に格納され、「フレームメモリ58」上にはカラーの2D組織速度画像が格納され、シネメモリ52から、抽出ラインLに対応付けられた各時相の組織速度データ列が抽出され、それらのデータ列は角度補正部60に入力され、角度補正が実行され、角度補正後の組織速度データ列はカラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納されM-組織速度画像が構築されることが記載されている。 エ 上記(1)カによれば、超音波診断装置の「合成処理部76」は、合成処理部76にはフレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM-組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM-組織速度画像のデータが入力されるものであり、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成し、合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上に画像が表示されることが記載されている。 オ 上記(1)キによれば、図4で示される超音波診断装置が、第1表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において複数の抽出ラインLが設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映されることが記載されている。 また、複数の抽出ラインLの各抽出ラインLに対応して、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した複合画像が複数表示されるように構成されているものであることが記載されている。 カ また、上記アにおいて説示した「抽出ライン」の設定は、上記イの「抽出ラインL」の設定を説明するものと解されることは明らかである。 キ 上記(1)アないしサの記載事項や図面並びに上記アないしカによれば、引用例1にはつぎの発明が記載されているものと認めることができる。 「超音波診断装置であって、 超音波を送受波する送受波器であるプローブ40に接続された送受信部42から出力される受信信号が組織エコー処理部46及び組織速度処理部48に出力され、 組織エコー処理部46が、組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行し、各フレームのデータを出力し、そのフレーム列が時系列順にシネメモリ50に格納され、組織エコー処理部46の出力する各フレームのデータが格納されるフレームメモリ54上には、2D組織エコー画像すなわちBモード画像が格納され、シネメモリ50から設定された抽出ラインLの位置における2D組織エコー画像の各時相の各フレームのデータがフレームメモリ56に読み出され、フレームメモリ56上にはM-組織エコー画像が構築され、 組織速度処理部48が、送受信部42から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算し、各フレームのデータが出力され、シネメモリ52に、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータが時系列順で格納され、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータはカラー演算器57によってカラー演算処理され、その後にフレームメモリ58に格納され、フレームメモリ58上にはカラーの2D組織速度画像が格納され、シネメモリ52から、抽出ラインLに対応付けられた各時相の組織速度データ列が抽出され、それらのデータ列は角度補正部60に入力され、角度補正が実行され、角度補正後の組織速度データ列はカラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納されM-組織速度画像が構築され、 合成処理部76は、フレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM-組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM-組織速度画像のデータが入力されるものであり、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成し、合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上に画像が表示される装置において、 第1表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映され、 各抽出ラインLに対応して、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した複合画像が複数表示されるように構成されている超音波診断装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 2 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-250834号公報(以下、「引用例3」という。)には、つぎの事項が記載されている。 (1)引用例3に記載された事項(下線は当審により付加したものである。) ア 「【0021】更に、変位履歴画像の任意の直線上における画像情報を抽出する抽出手段を設け、この画像情報を経時的に表示すれば、表示された任意の直線上の領域の運動方向や速度、運動量等の比較等が容易となる。また、任意の時間における画像情報に基づいて所定の演算処理を行う手段を設けることにより、被検体の運動を定量化することができる。例えば、設定した直線上における変位履歴画像の幅、すなわち被検体の運動量や運動速度、他の領域との比等を自動的に求めることができ、運動情報の定量化が可能となる。」 イ 「【0059】図6は、心室の拡張期から収縮期における変位履歴画像50と、この変位履歴画像50に対して設定した設定ラインA-A´,B-B´上の画像情報の全期間の経時変化(Mモード画像)とを表示した場合の概略の表示例である。なお、図中Mモード画像は、縦軸を距離、横軸を時間として表示されている。 【0060】心筋の収縮運動の鈍い領域60におけるMモード画像(設定ラインA-A´に対応)の幅は、正常に運動している領域のMモード画像(設定ラインB-B´に対応)の幅よりも狭く表示されており、2つのMモード画像を比較することによって容易に運動量の相違を認識することができる。更に、この2つのMモード画像について、所定時間Tにおける幅ΔA,ΔB及び比ΔB/ΔA等の値を演算すれば、これらの値から領域60の心筋の異常運動(冠動脈の狭窄)を、より定量的に把握することができる。 【0061】図7は、図6とは異なる異常運動をしている心室の拡張期から収縮期における変位履歴画像50と、そのMモード画像の概略の表示例である。 【0062】図7の変位履歴画像50においても、心室の拡張期における変位画像52は低輝度で表示されており、新しくなるにつれて表示輝度が高くなり、最新の心室の収縮期における変位画像54は最も高い輝度で表示されている。心室が正常な方向に運動していれば、変位履歴画像50の最外に、収縮期の初期の変位画像52が表示される。そして、心室の収縮が進行するにつれ変位履歴画像50のより内側に変位画像が表示され、最新の変位画像54が最も内側に表示されることとなる。 【0063】ところが、心室の収縮運動中に、例えば収縮期に心壁の一部が外に飛び出すような異常運動(ディスカイネシス:dyskinesis)が発生している場合、変位履歴画像50は図7の領域62のようになる。すなわち、ディスカイネシス領域62では、最新の変位画像54が拡張期の変位画像52よりも外側に表示される。心室におけるディスカイネシスの発生は、実施例2で既に説明したように、変位画像の抽出処理期間を心室の拡張期から収縮期に設定して、変位履歴画像50を表示することによって発見できる。しかし、運動方向が異なるディスカイネシス領域62(設定ラインB-B´)と、正常領域(設定ラインA-A´)とについてのMモード画像の表示をそれぞれ行うと、図7に示すように互いのMモード画像の位相が相違していることが容易に認識できる。従って、複数の設定ラインについてのMモード画像を比較すれば、それらの領域の運動方向に関する情報が位相のずれとして得ることができる。更に、その位相差を距離計測回路等で演算すれば、被検体組織の運動をより一層定量化することができ、診断の精度の向上に貢献できる。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明1との対比 (1)引用発明1の「超音波を送受波する送受波器であるプローブ40に接続された送受信部42」は、その「受信信号」を「組織エコー処理部46」及び「組織速度処理部48」に出力するものであり、「組織エコー処理部46」は、組織エコー画像を形成するための信号処理を実行し、2D組織エコー画像の各フレームのデータを出力し、また、抽出ラインLに対応する各時相の「M-組織エコー画像」のデータを生成するためのものであり、「組織速度処理部48」は、「組織の速度情報を演算し、組織速度画像である「2D組織速度画像」を生成する各フレームのデータを出力し、抽出ラインLに対応する「M-組織速度画像」のデータを生成するためのものである。 また、引用発明1の組織エコー画像の各フレームのデータと組織速度画像の各フレームのデータが、同じ領域を表す画像を形成するために収集されたデータであることは技術的に明らかであるし、この2つのデータは、それぞれ組織エコー画像を生成するデータである点、組織速度画像を生成するためのデータである点で、異なるタイプのものであるといえる。 以上のことからすれば、引用発明1の「超音波を送受波する送受波器であるプローブ40に接続された送受信部42」に接続される「組織エコー処理部46」は、本願発明の「領域を表す第1のタイプの第1のデータを収集する手段」に相当し、「超音波を送受波する送受波器であるプローブ40に接続された送受信部42」に接続される「組織速度処理部48」は、「該領域を表す第2のタイプの第2のデータを収集する手段」に相当するとともに、引用発明1のそれぞれの「処理部」で収集される「データ」は、本願発明の「該第1のタイプは該第2のタイプとは異なって」いるものである点においても相当するものである。 (2)引用発明1の「組織エコー画像」は「組織速度画像」とは異なるタイプの画像であること、そして、組織エコー画像を形成するための各フレームのデータを上記(1)では、本願発明の「第1のタイプの第1のデータ」に相当するものとしていることを前提とすれば、引用発明1は、その「組織エコー処理部46」が、「組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行し、各フレームのデータを出力し、そのフレーム列が時系列順にシネメモリ50に格納され、組織エコー処理部46の出力する各フレームのデータが格納されるフレームメモリ54上には、2D組織エコー画像すなわちBモード画像が格納され」る点で、本願発明の「第1の画像を前記第1のデータに依存して発生させる手段」に相当する手段を備えているものといえる。 (3)同様に、引用発明1は、その「組織速度処理部48」が、「送受信部42から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算し、各フレームのデータが出力され、シネメモリ52に、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータが時系列順で格納され、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータはカラー演算器57によってカラー演算処理され、その後にフレームメモリ58に格納され、フレームメモリ58上にはカラーの2D組織速度画像が格納され」る点で、本願発明の「第2の画像を前記第2のデータに依存して発生させる手段」に相当する手段を備えているものといえる。 (4)引用発明1の「シネメモリ50から設定された抽出ラインLの位置における2D組織エコー画像の各時相の各フレームのデータがフレームメモリ56に読み出され、フレームメモリ56上にはM-組織エコー画像が構築され」、「シネメモリ52から、抽出ラインに対応付けられた各時相の組織速度データ列が抽出され、それらのデータ列は角度補正部60に入力され、角度補正が実行され、角度補正後の組織速度データ列はカラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納されM-組織速度画像が構築され」るように構成されていることからすれば、「抽出ラインL」と本願発明の「第1の測定に対する第1のマーク位置」及び「第2の測定に対する第2のマーク位置」のそれぞれとは、「測定に対するマーク位置」である点で共通するものといえる。 (5)引用発明1の「抽出ラインL」の位置におけるところの「M-組織エコー画像」を構築することは、抽出ラインLにおける組織エコー像を測定することであるといえ、また、「抽出ラインL」に対応付けられたところの「M-組織速度画像」を構築することは、抽出ラインLにおける組織速度画像を測定することであるといえることからすれば、ここでの「抽出ラインL」での測定は、「2D組織エコー画像」及び「2D組織速度画像」という異なる画像に対して行われるものである。 してみると、引用発明1の「抽出ラインL」での測定と、本願発明の第1のマーク位置に対している「第1の測定」と第2のマーク位置に対している「第2の測定」が「異なる」「第1の画像」と「第2の画像とに対して行われるものである」こととは、「測定に対するマーク位置での測定が異なる第1の画像と第2の画像とに対して行われるものである」点で共通するものといえる。 そして、この「抽出ラインL」における測定は、「各抽出ラインL」に対応して、「白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した複合画像が複数表示される」のであるから、「複数」の「抽出ラインL」での測定は、それぞれ同じ内容の測定、すなわち、本願発明でいう「同じ測定」であるといえる。 また、引用発明1においては、「各抽出ラインLに対応して、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した複合画像が複数表示される」ものであるから、「各抽出ラインL」に対応して、「複合画像」がそれぞれ「測定」されるものである。 (6)引用発明1の「第1表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において1又は複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映される」ためには、ユーザにより設定される抽出ラインLの画像上の位置を検出することができる手段を備えていることは明らかであるし、また、その設定内容がもう一方の画像に反映する手段を備えていることもまた、明らかである。 そして、「合成処理部76は、フレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM-組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM-組織速度画像のデータが入力されるものであり、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成し、合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上に画像が表示される」のであるから、引用発明1の第1モードにおいて、表示器80上に画像合成処理部76から出力される画像データとして、本願発明の「第1の画像」に相当する「白黒画像としての2D組織エコー画像104」及び本願発明の「第2の画像」に相当する「カラー画像としての2D組織速度画像102」が合成して表示されており、当該いずれかの画像上において、「抽出ラインL」の設定がされるものである。 そして、上記(4)及び(5)での対比を加味すると、引用発明1は、その「合成処理部76」が「フレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM-組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM-組織速度画像のデータが入力されるものであり、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成し、合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上に画像が表示される」ものであること、そして、その表示は「第1の表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において1又は複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映され」るものであるのに対して、本願発明は、「第1の測定に対する第1のマーク位置を前記第1の画像上で検出する(56)手段、第2の測定に対する第2のマーク位置を前記第2の画像上で検出する(56)手段、ただし前記第1の測定と前記第2の測定とは同じ測定であるが、異なる前記第1の画像と前記第2の画像とに対して行われたものである;前記第1のマーク位置を前記第2の画像上に反映する(60)手段、および;前記第2のマーク位置を前記第1の画像上に反映する(60)手段」を備えるものであるから、本願発明と引用発明1とは、共に「測定に対するマーク位置を第1の画像上で検出する手段、測定に対するマーク位置を第2の画像上で検出する手段、第1の画像上でのマーク位置を第2の画像上に反映する手段、第2の画像上でのマーク位置を第2の画像上に反映する手段」を備えるものであるといえる点で共通する。 (7)引用発明1は、「超音波診断装置」であるところ、上記のとおり、「カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において1又は複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映され、それぞれの画像において抽出ラインLに対応するM-画像が抽出される」のであるから、「診断医学画像での相互参照測定装置」といい得ることは明らかである。 (8)上記(1)ないし(7)の対比をまとめると、本願発明と引用発明1とはつぎの一致点で一致し、つぎの各相違点において相違する。 <一致点> 「診断医学画像での相互参照測定装置であって、該装置は、 領域を表す第1のタイプの第1のデータを収集する手段、 該領域を表す第2のタイプの第2のデータを収集する手段、 ただし、該第1のタイプは該第2のタイプとは異なっており、 第1の画像を前記第1のデータに依存して発生させる手段、 第2の画像を前記第2のデータに依存して発生させる手段、 複数の測定に対するマーク位置を第1の画像上で検出する手段、 複数の測定に対するマーク位置を第2の画像上で検出する手段、 ただし、複数の測定は、同じ測定であるが、異なる前記第1の画像と前記第2の画像とに対して行われたものである; 第1の画像上でのマーク位置を第2の画像上に反映する手段、 第2の画像上でのマーク位置を第1の画像上に反映する手段、 を有することを特徴とする、相互参照測定装置」である点 <相違点1> 本願発明では、「第1の測定に対する第1のマークを第1の画像上」で、「第2の測定に対する第2のマークを第2の画像上」で検出し、「第1のマーク位置」を「第2の画像上に反映」し、「第2のマーク位置」を「第1の画像上に反映する」ものであるのに対して、引用発明1では、「カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示され、いずれかの画像上において複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映される」ものである点 <相違点2> 本願発明は、「第1の測定」と「第2の測定」との間の測定値の差を検出する手段を備えているものであるのに対して、引用発明1は、そのような手段を備えていることが特定されない点 2 当審の判断 (1)相違点1について ア 相違点1についての検討その1 (ア)引用例1には、複数の「抽出ラインL」がそれぞれ、「カラー画像としての2D組織速度画像102」と「白黒画像としての2D組織エコー画像104」のいずれの画像において設定されるのかについて具体的な記載はないが、いずれかの画像で設定される旨記載されている以上、引用発明1において、「抽出ライン」は、いずれの画像上においてもユーザが設定可能であることは明らかである。 また、引用発明1においては、「各抽出ラインLに対応して、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した複合画像が複数表示される」ものであることから、「各抽出ラインL」に対応して、「複合画像」がそれぞれ「測定」されるものであるといえる(上記1(5)参照)。 (イ)引用発明1の「複数の抽出ラインL」の一つを「第1」の「抽出ラインL」(例えば、引用例1の実施例における「ラインA」)とし、もう一つを「第2」の「抽出ラインL」(例えば、引用例1の実施例における「ラインB」)とした場合、これらの「抽出ラインL」に対応する「複合画像」の測定は、それぞれ「第1の測定」、「第2の測定」と称されることとなる。 そうすると、引用発明1の複数の「各抽出ラインL」は、それぞれ、本願発明の「第1の測定に対する第1のマーク」、「第2の測定に対する第2のマーク」に対応するものとなる。 (ウ)このように称した引用発明1の「第1」の「抽出ラインL」及び「第2」の「抽出ラインL」は、「2D組織速度画像」と「2D組織エコー画像」のいずれにおいても設定可能なものであることは、上記(ア)で検討したとおりであるから、引用発明1において、抽出ラインLの設定を、どちらの画像で行うようにするかは、ユーザが適宜選択し得ることは明らかである。 そうすると、ユーザが、「第1」の「抽出ラインL」を本願発明の「第1の画像」と対応させたところの「2D組織エコー画像」上で設定し、「第2」の「抽出ラインL」を本願発明の「第2の画像」と対応させたところの「2D組織速度画像」上で設定するようにすれば、その結果、引用発明1も「第1の測定に対する第1のマーク位置」を「第1の画像上で検出」し、「第2の測定に対する第2のマーク位置」を「第2の画像上で検出する」ことになる。 (エ)また、引用発明1においては、「いずれかの画像上において複数の抽出ラインLがユーザにより設定され、その設定内容はもう一方の画像にも反映される」のであるから、上記(ウ)の場合には、「第1のマークの位置」が本願発明の「第2の画像」と対応させたところの「2D組織速度画像」に反映され、「第2のマーク位置」が本願発明の「第1の画像」と対応させたところの「2D組織エコー画像」に反映されることになる。 (オ)以上のことからすれば、上記相違点1は、実質的な構成上の相違ではなく、第1のマーク、第2のマークをそれぞれどちらの画像上で設定するかという、ユーザの具体的な操作の場面の相違に起因した表現上の相違にすぎないのであるから、実質的な相違ではないというべきである。 イ 相違点1についての検討その2 上記アで検討したように、相違点1が実質的な相違でないといえないとしても、引用発明1において、複数の抽出ラインLのうちの一つを「2D組織エコー画像」上で設定し、別の一つを「2D組織速度画像」上で設定するようにすることは当業者が適宜なし得る程度のことであり、そのようにすることで、引用発明1を相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることができることは、上記アで検討したとおりである。 してみると、上記相違点1は当業者が適宜なし得る程度のことであるといえる。 (2)相違点2について ア 引用例3には、心筋の異常運動を定量的に把握することを目的とし、心臓の変位履歴画像上に設定された設定ラインA-A’及びB-B’におけるそれぞれのMモード画像の測定結果を比較する技術が記載されているものと認められる。 イ 引用発明1は、複数の「抽出ラインL」において測定されたMモード画像である複合画像を並べて表示するものであり、それにより「心臓壁における各部位について組織運動を観測する場合においても、演算された複数の組織速度を互いに比較することも可能であり、すなわち定量的な解析を実現できるという利点がある」(上記1(1)ク)ことからすれば、引用例3に記載の技術を適用し、引用発明1の「抽出ラインL」に対応してそれぞれ測定された複合画像の同じ時相における測定値を比較するために、それぞれの測定の差を検出するようにして、本願発明の相違点2に係る構成の如く構成することは当業者であれば容易に想到し得る程度のことにすぎない。 ウ 請求人は、審判請求書において、「引用文献1(当審注:引用例1のこと)の段落0073には、心臓壁の内側の層と外側の層とについて時間的な動きや厚みの変化を検出するには、複合画像106A、106B、106C、106Dを作成し、その複合画像に、トレースライン群108A、108B、108C、108Dを合成表示する必要がある、と記載されています。 そして、引用文献1の段落0072に「それぞれの第1複合画像106A、106B、106C、106Dは、白黒画像としてのM-組織エコー画像107-1とカラー画像としてのM-組織速度画像107-2とを合成した画像である。」と記載されていることからわかるように、この複合画像106A乃至106Dは、組織エコー画像および組織速度画像という2枚の画像を合成(加算)して作成したものです。つまり、引用文献1においても、心臓壁の内側の層と外側の層とについて時間的な動きや厚みの変化を検出するためには、2枚の画像を合成する必要があります。 以上の説明から、拒絶査定において、「引用文献1に記載の発明に引用文献3の技術的事項を適用することにより本願発明に想到する」とした審査官殿の見解は誤りであり、当業者であれば、画像を合成する(加算する)引用文献1に記載の発明に、第1の測定および第2の測定を表す2枚の画像間で測定値の差を検出する(減算する)引用文献3(引用例3)の技術を適用することに想到することは困難であるものと思料いたします。」と主張している。 しかしながら、上記に説示したとおり、引用例3から「設定ラインA-A’とB-B’とについてのMモード画像上の位相差などの測定値の比較を行う技術」を引用しているのであるから、請求人が引用例3の技術を「第1の測定および第2の測定を表す2枚の画像間で測定値の差を検出する(減算する)技術」であることを前提に、引用発明1の技術に適用できないとする主張は、上記の判断に影響するものではない。 なお、請求人の主張は、本願発明が「第1の測定」を「第1の画像上」のみで、「第2の測定」を異なる「第2の画像上」のみで行なうものであることを前提としているようである。 しかしながら、請求項1の「ただし前記第1の測定と前記第2の測定とは同じ測定であるが、異なる前記第1の画像と前記第2の画像とに対して行われたものである」との規定は、「第1の測定」と「第2の測定」とが「同じ測定である」こと、「第1の測定」と「第2の測定」とが「異なる」「第1の画像」と「第2の画像とに対して行われたもの」であること、すなわち、「第1の測定」と「第2の測定」が「第1の画像」と「第2の画像」とに対して行われた同じ測定であると解されるものであって、請求人が前提とするものに限定されるものとは解されないことから、請求人の主張は前提において失当である。 3 本願発明の効果についても、引用例1及び引用例3に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。 4 小括 上記で検討したとおり、本願発明は、引用発明1及び引用例3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用例3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-28 |
結審通知日 | 2016-07-04 |
審決日 | 2016-07-15 |
出願番号 | 特願2007-96450(P2007-96450) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋熊 政一 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
小川 亮 尾崎 淳史 |
発明の名称 | 診断医学画像の相互参照測定装置およびコンピュータプログラム |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 久野 琢也 |