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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H02M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1322133
審判番号 不服2016-519  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-13 
確定日 2016-12-20 
事件の表示 特願2014- 84305「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日出願公開、特開2014-132826、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年7月29日に出願した特願2009-176933号の一部を平成26年4月16日に新たな特許出願としたものであって、平成27年2月10日付けの拒絶理由通知に対し、平成27年4月20日付けで手続補正がされたが、平成27年10月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年1月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「交流電源からの交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流手段を具備して、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、交流電圧を第1の直流電圧に変換して出力する第1の動作と、第1の直流電圧を交流電圧に逆変換して出力する第2の動作とを切り換え可能に構成されたAC-DC変換部と、
第1の直流電圧を第2の直流電圧に降圧する直流変換手段を具備して、前記直流変換手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して出力する第3の動作と、第2の直流電圧を第1の直流電圧に逆変換して出力する第4の動作とを切り換え可能に構成されたDC-DC変換部と、
前記交流電源と前記AC-DC変換部との間に介挿されたインダクタを含むフィルタ部とを備え、
前記AC-DC変換部と前記DC-DC変換部とを同一の筐体に一体に設けて、
前記AC-DC変換部は、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフして前記フィルタ部のインダクタにおけるエネルギーを蓄積・放出して昇圧動作を行うことで、交流電圧を第1の直流電圧に変換し、
前記DC-DC変換部は、互いに磁気結合する一対のコイルを具備したトランスを第1の直流電圧側と第2の直流電圧側との間に備えて、前記一対のコイルのうち一方のコイルには、コンデンサとインダクタとの直列回路が直列接続しており、
前記AC-DC変換部は、前記第2の動作を行うとき、第1の直流電圧を前記交流電源の周波数より高い周波数の交流電圧に逆変換して出力し、前記フィルタ部内のインダクタより前記AC-DC変換部側から導出した電路を介して交流機器が接続され、
前記AC-DC変換部のスイッチング素子は、双方向スイッチである
ことを特徴とする電力変換装置。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「DC-DC変換部」を、「前記DC-DC変換部は、互いに磁気結合する一対のコイルを具備したトランスを第1の直流電圧側と第2の直流電圧側との間に備えて、前記一対のコイルのうち一方のコイルには、コンデンサとインダクタとの直列回路が直列接続しており、」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)補正発明
補正発明は、上記「第2 1.補正の内容」に記載した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
ア.刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-174305号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の技術事項が記載されている(なお、下線は当審により付与した)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池上に積もった雪や氷を融雪する融雪動作を制御する融雪制御装置、それを用いたパワーコンディショナおよび太陽光発電システムに関する。」

「【0014】(実施の形態1)図1ないし図4を参照して、本発明の実施の形態1に従う太陽光発電システム(以下、「本システム」という)について説明する。
【0015】図1は、本システムの回路ブロック図であり、図2は、図1のパワーコンディショナ内の詳細回路図であり、図3は、図1および図2のパワーコンディショナ内において融雪動作時に必要とされる回路構成を、等価回路として示したものである。ただし、図3は、説明の都合でハードウェア的に示されているが、これをマイクロコンピュータ内のソフトウェアで構成している。勿論、ハードウェアで構成しても構わない。
【0016】これらの図を参照して、本システムは、太陽電池1と、本発明に係る融雪制御装置を内蔵したパワーコンディショナ2とを有している。パワーコンディショナ2は、太陽電池1と系統電源3との間において、太陽電池1の発電出力を交流変換する通常制御機能と、系統電源3を処理して太陽電池1に発熱電流を供給して融雪するための融雪制御機能とを備えたものであり、第1フィルタ2a、第1平滑コンデンサC3、DC/DCコンバータ2b、第2平滑コンデンサC4、インバータ2c、第2フィルタ2d、系統側開閉器2eおよび制御装置2fを備えている。
【0017】制御装置2fは、通常動作指令入力があると、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2をOFFにし、トランジスタTR1をスイッチング駆動し、インバータ2c内の各トランジスタTR3?TR6をスイッチング駆動するとともに、系統側開閉器2eを必要に応じてONまたはOFFに駆動する。
【0018】このような通常動作の駆動制御状態において、太陽電池1の発電出力は、第1フィルタ2aを介し、第1平滑コンデンサC3で平滑化された後、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR1のスイッチング動作によって、昇圧される。この場合、DC/DCコンバータ2bは昇圧チョッパとして機能する。このDC/DCコンバータ2bで昇圧された太陽電池1の発電出力は、第2平滑コンデンサC4で平滑化されて、インバータ2cに入力され、このインバータ2cより、交流に変換される。交流に変換された太陽電池1の発電出力は、第2フィルタ2dで正弦波にされて不図示の負荷に供給されたり、あるいは、系統側開閉器2eを介し、系統電源3側に逆潮流される。この場合、制御装置2fは、太陽電池1の発電出力とインバータ2c出力とを監視し、所要の制御動作を行うようになっている。
【0019】制御装置2fは、融雪動作指令入力があると、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2をスイッチング駆動するとともに、系統側開閉器2eをONに駆動する。
【0020】このような融雪動作の駆動制御状態において、系統電源3が、系統側開閉器2eおよび第2フィルタ2dを介し、インバータ2cに入力される。インバータ2c内の各トランジスタTR3?TR6それぞれはOFFのため、各トランジスタTR3?TR6それぞれに並列のダイオードD3?D6で系統電源3の出力は全波整流され、この後、第2平滑コンデンサC4で平滑化される。また、TR3?TR6を所定のタイミングでON,OFFし、交流電圧を昇圧した直流電圧を得る。この平滑化された融雪用電源出力は、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2のスイッチング動作で降圧される。この場合、DC/DCコンバータ2bは降圧チョッパとして機能する。こうしてDC/DCコンバータ2bで降圧された系統電源3出力は、第1平滑コンデンサC3および第1フィルタ2aを介し、太陽電池1に与えられる。太陽電池1は、系統電源3出力によって発熱し発熱体として融雪する。」

以上の記載、特に下線部を参照すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「太陽電池1と系統電源3との間において、太陽電池1の発電出力を交流変換する通常制御機能と、系統電源3を処理して太陽電池1に発熱電流を供給して融雪するための融雪制御機能とを備えたものであり、
第1フィルタ2a、第1平滑コンデンサC3、DC/DCコンバータ2b、第2平滑コンデンサC4、インバータ2c、第2フィルタ2d、系統側開閉器2eおよび制御装置2fを備えており、
制御装置2fは、通常動作指令入力があると、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2をOFFにし、トランジスタTR1をスイッチング駆動し、インバータ2c内の各トランジスタTR3?TR6をスイッチング駆動するとともに、系統側開閉器2eを必要に応じてONまたはOFFに駆動し、このような通常動作の駆動制御状態において、太陽電池1の発電出力は、第1フィルタ2aを介し、第1平滑コンデンサC3で平滑化された後、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR1のスイッチング動作によって、昇圧され、この場合、DC/DCコンバータ2bは昇圧チョッパとして機能し、このDC/DCコンバータ2bで昇圧された太陽電池1の発電出力は、第2平滑コンデンサC4で平滑化されて、インバータ2cに入力され、このインバータ2cより、交流に変換され、交流に変換された太陽電池1の発電出力は、第2フィルタ2dで正弦波にされて不図示の負荷に供給されたり、あるいは、系統側開閉器2eを介し、系統電源3側に逆潮流され、この場合、制御装置2fは、太陽電池1の発電出力とインバータ2c出力とを監視し、所要の制御動作を行うようになっており、
制御装置2fは、融雪動作指令入力があると、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2をスイッチング駆動するとともに、系統側開閉器2eをONに駆動し、このような融雪動作の駆動制御状態において、系統電源3が、系統側開閉器2eおよび第2フィルタ2dを介し、インバータ2cに入力され、インバータ2c内の各トランジスタTR3?TR6それぞれはOFFのため、各トランジスタTR3?TR6それぞれに並列のダイオードD3?D6で系統電源3の出力は全波整流され、この後、第2平滑コンデンサC4で平滑化され、また、TR3?TR6を所定のタイミングでON,OFFし、交流電圧を昇圧した直流電圧を得、この平滑化された融雪用電源出力は、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2のスイッチング動作で降圧され、この場合、DC/DCコンバータ2bは降圧チョッパとして機能し、こうしてDC/DCコンバータ2bで降圧された系統電源3出力は、第1平滑コンデンサC3および第1フィルタ2aを介し、太陽電池1に与えられ、太陽電池1は、系統電源3出力によって発熱し発熱体として融雪する、
パワーコンディショナ2。」

イ.刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された特許第3150968号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の技術事項が記載されている(なお、下線は当審により付与した)。

「【発明の詳細な説明】
本発明は、少なくとも2つの異なる周波数を用いて、複雑な形状の回転対称部品、例えば歯車、を誘導加熱しその表面に焼入れする方法および装置に関するものである。包囲型円形コイル(an enclosed round coil)による歯車の誘導表面加熱に関する先行技術から、歯先と歯元の両方において均等の深さの焼入れを実現するのは難しいことが知られている。中周波を用いると、歯元における焼入れは受け入れられるものであるが、歯先ではそうではない。高周波を用いれば、歯先の焼入れは受け入れられるものであるが、歯元における焼入れは満足ゆくものではない。
・・・中略・・・
本発明によれば、この課題は単一の共通な誘導コイルに同時に異なる2つの周波数を供給するという方法より解決される。
・・・中略・・・
異なる周波数の2つの変換器の相互連結のためには、異常動作を避けるために、生じ得る変換器間の相互影響を最小にするように設計された装置が必要である。直列共振回路と共に機能する高周波変換器6を考慮して、補償コンデンサ7は低い方の周波数の帰還が十分に減衰することを可能にするものである(図3および図4を参照)。理論的には、並列共振回路タイプの形態の高周波変換器を用いることも可能である。中周波帰還を抑制するために、コンデンサとそのコンデンサを補償するためのインダクタンスからなるフィルタユニットを導入することがいつでも必要である。この解決方法は、付加的なフィルタを全く必要としない直列補償タイプの実施例に比べれば、経済的な観点から満足ゆくものではない。それに加えて、そのフィルタユニットは並列補償高周波変換器の周波数制御をかなり複雑にする。
低い方の周波数の変換器8に対する高周波帰還を抑制するために、接合点10と低い方の周波数の変換器との間にインダクタンスLf9が用いられている。」(第2頁第3欄第13行-第3頁第5欄第25行)

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

・引用発明は、「インバータ2c」(補正発明の「AC-DC変換部」に相当)を備えている。
引用発明の「インバータ2c」は、「融雪動作の駆動制御状態」において、「系統電源3が、系統側開閉器2eおよび第2フィルタ2dを介し、インバータ2cに入力され、インバータ2c内の各トランジスタTR3?TR6それぞれはOFFのため、各トランジスタTR3?TR6それぞれに並列のダイオードD3?D6で系統電源3の出力は全波整流され、この後、第2平滑コンデンサC4で平滑化され、また、TR3?TR6を所定のタイミングでON,OFFし、交流電圧を昇圧した直流電圧を得」る動作を行うものであり、この融雪動作は、補正発明の「交流電源からの交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流手段を具備して、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、交流電圧を第1の直流電圧に変換して出力する第1の動作」に相当する。
また、引用発明の「インバータ2c」は、「通常動作の駆動制御状態」において、「DC/DCコンバータ2bで昇圧された太陽電池1の発電出力は、第2平滑コンデンサC4で平滑化されて、インバータ2cに入力され、このインバータ2cより、交流に変換され」る動作を行うものであり、この通常動作は、補正発明の「第1の直流電圧を交流電圧に逆変換して出力する第2の動作」に相当する。
これら「融雪動作」と「通常動作」は、「制御装置2f」への「指令入力」により切り換えられるものであるから、補正発明と引用発明とは、「交流電源からの交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流手段を具備して、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、交流電圧を第1の直流電圧に変換して出力する第1の動作と、第1の直流電圧を交流電圧に逆変換して出力する第2の動作とを切り換え可能に構成されたAC-DC変換部」を備える点で一致する。

・引用発明は、「DC/DCコンバータ2b」(補正発明の「DC-DC変換部」に相当)を備えている。
引用発明の「DC/DCコンバータ2b」は、「融雪動作の駆動制御状態」において、「平滑化された融雪用電源出力は、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR2のスイッチング動作で降圧され、この場合、DC/DCコンバータ2bは降圧チョッパとして機能」する動作を行うものであり、この融雪動作は、補正発明の「第1の直流電圧を第2の直流電圧に降圧する直流変換手段を具備して、前記直流変換手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して出力する第3の動作」に相当する。
また、引用発明の「DC/DCコンバータ2b」は、「通常動作の駆動制御状態」において、「太陽電池1の発電出力は、第1フィルタ2aを介し、第1平滑コンデンサC3で平滑化された後、DC/DCコンバータ2b内のトランジスタTR1のスイッチング動作によって、昇圧され、この場合、DC/DCコンバータ2bは昇圧チョッパとして機能し、このDC/DCコンバータ2bで昇圧された太陽電池1の発電出力は、第2平滑コンデンサC4で平滑化されて、インバータ2cに入力され」る動作を行うものであり、この通常動作は、補正発明の「第2の直流電圧を第1の直流電圧に逆変換して出力する第4の動作」に相当する。
これら「融雪動作」と「通常動作」は、「制御装置2f」への「指令入力」により切り換えられるものであるから、補正発明と引用発明とは、「第1の直流電圧を第2の直流電圧に降圧する直流変換手段を具備して、前記直流変換手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して出力する第3の動作と、第2の直流電圧を第1の直流電圧に逆変換して出力する第4の動作とを切り換え可能に構成されたDC-DC変換部」を備える点で一致する。

・引用発明は、「第2フィルタ2d」(補正発明の「フィルタ部」に相当)を備えている。
引用発明では、「インバータ2cより、・・交流に変換された太陽電池1の発電出力は、第2フィルタ2dで正弦波にされて不図示の負荷に供給されたり、あるいは、系統側開閉器2eを介し、系統電源3側に逆潮流され」、また、「系統電源3が、系統側開閉器2eおよび第2フィルタ2dを介し、インバータ2cに入力され」るから、引用発明の「第2フィルタ2d」は、系統電源3とインバータ2cとの間に介挿されているといえ、また、図2から、インダクタを含むものである。
したがって、補正発明と引用発明とは、「前記交流電源と前記AC-DC変換部との間に介挿されたインダクタを含むフィルタ部とを備え」る点で一致する。

・引用発明の「インバータ2c」は、「TR3?TR6を所定のタイミングでON,OFFし、交流電圧を昇圧した直流電圧を得」るものであり、昇圧した直流電圧を得るためには、第2フィルタ2dのインダクタにおけるエネルギーを蓄積・放出する動作を行わなければならないことは当業者に明らかであるから、補正発明と引用発明とは、「前記AC-DC変換部は、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフして前記フィルタ部のインダクタにおけるエネルギーを蓄積・放出して昇圧動作を行うことで、交流電圧を第1の直流電圧に変換する」点で一致する。

・引用発明の「パワーコンディショナ2」は、電力を変換する装置であるから、補正発明と引用発明とは、「電力変換装置」である点で一致する。

以上をまとめると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
交流電源からの交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流手段を具備して、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、交流電圧を第1の直流電圧に変換して出力する第1の動作と、第1の直流電圧を交流電圧に逆変換して出力する第2の動作とを切り換え可能に構成されたAC-DC変換部と、
第1の直流電圧を第2の直流電圧に降圧する直流変換手段を具備して、前記直流変換手段を構成するスイッチング素子をオン・オフすることによって、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して出力する第3の動作と、第2の直流電圧を第1の直流電圧に逆変換して出力する第4の動作とを切り換え可能に構成されたDC-DC変換部と、
前記交流電源と前記AC-DC変換部との間に介挿されたインダクタを含むフィルタ部とを備え、
前記AC-DC変換部は、前記整流手段を構成するスイッチング素子をオン・オフして前記フィルタ部のインダクタにおけるエネルギーを蓄積・放出して昇圧動作を行うことで、交流電圧を第1の直流電圧に変換する、
ことを特徴とする電力変換装置。

[相違点]
相違点1
補正発明では、「前記AC-DC変換部と前記DC-DC変換部とを同一の筐体に一体に設けて」いるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

相違点2
「DC-DC変換部」が、補正発明では、「互いに磁気結合する一対のコイルを具備したトランスを第1の直流電圧側と第2の直流電圧側との間に備えて、前記一対のコイルのうち一方のコイルには、コンデンサとインダクタとの直列回路が直列接続して」いるものであるのに対し、引用発明では、そのようなものではない点。

相違点3
補正発明では、「前記AC-DC変換部は、前記第2の動作を行うとき、第1の直流電圧を前記交流電源の周波数より高い周波数の交流電圧に逆変換して出力し、前記フィルタ部内のインダクタより前記AC-DC変換部側から導出した電路を介して交流機器が接続され」るものであるのに対し、引用発明では、そのようなものではない点。

相違点4
「AC-DC変換部のスイッチング素子」が、補正発明では「双方向スイッチ」であるのに対し、引用発明では双方向スイッチではない点。

(4)判断
上記相違点3について検討する。
引用発明では、「交流に変換された太陽電池1の発電出力は、第2フィルタ2dで正弦波にされて不図示の負荷に供給されたり、あるいは、系統側開閉器2eを介し、系統電源3側に逆潮流され」るから、第2フィルタ2dと系統側開閉器2eとの間、すなわち、系統側開閉器2eよりインバータ2c側から導出した電路を介して交流機器が接続されているとはいえるが、補正発明のように、「前記AC-DC変換部は、前記第2の動作を行うとき、第1の直流電圧を前記交流電源の周波数より高い周波数の交流電圧に逆変換して出力し、前記フィルタ部内のインダクタより前記AC-DC変換部側から導出した電路を介して交流機器が接続され」るものではない。引用発明の構成に代えてそのような構成にすることは、刊行物1には、記載乃至示唆はない。
また、刊行物2には、上記下線部を参照すれば、少なくとも2つの異なる周波数を用いて、複雑な形状の回転対称部品、例えば歯車、を誘導加熱しその表面に焼き入れする方法および装置に関し、単一の共通な誘導コイルに2つの変換器から同時に異なる周波数を供給し、低い方の周波数の変換器と高い方の周波数の変換器の接合点と、低い方の周波数の変換器との間にインダクタンスを設けることが記載されており、換言すれば、2つの変換器から同時に異なる周波数を供給するものにおいて、インダクタンス(補正発明でいう「フィルタ部内のインダクタ」)より高い方の周波数の変換器(補正発明でいう「前記AC-DC変換部」)側から導出した電路を介して誘導コイル(補正発明でいう「交流機器」)が接続されたものが記載されているとはいえる。しかしながら、引用発明は、負荷に2つの変換器から同時に異なる周波数を供給するものではないから、引用発明において、刊行物2に記載された技術を適用する動機付けはない。
また、拒絶理由で引用された他の刊行物や、拒絶査定、前置審査で周知技術を示す文献として引用された刊行物にも、上記相違点3に係る補正発明の構成(「前記AC-DC変換部は、前記第2の動作を行うとき、第1の直流電圧を前記交流電源の周波数より高い周波数の交流電圧に逆変換して出力し、前記フィルタ部内のインダクタより前記AC-DC変換部側から導出した電路を介して交流機器が接続され」るようにすること)についての記載乃至示唆はない。
ほかに、引用発明において、上記相違点3に係る補正発明の構成を採用する動機付けがあったことを示す証拠は見当たらない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ほかに、補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由はない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-05 
出願番号 特願2014-84305(P2014-84305)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02M)
P 1 8・ 575- WY (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
発明の名称 電力変換装置  
代理人 北出 英敏  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  

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