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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1322154
審判番号 不服2014-23281  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-14 
確定日 2016-11-30 
事件の表示 特願2012-513617「特定の官能基有機珪素化合物の、補強無機充填剤を含むイソプレンエラストマー組成物におけるカップリング剤としての使用」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日国際公開、WO2010/139743、平成24年11月15日国内公表、特表2012-528912〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、2010年6月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月2日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月6日付けで拒絶理由が通知され、平成25年11月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年7月10日付け(発送日:平成26年7月15日)で拒絶査定され、これに対し、平成26年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成26年12月25日付けで前置報告書が作成されたものである。

第2 平成26年11月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年11月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成26年11月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された
「 【請求項1】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・補強充填剤として少なくとも1種の無機充填剤
を含むエラストマー組成物における無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物の使用であって、該化合物が少なくとも1個のC=C又はC=N二重結合を有し、かつ、電子環化型の反応に従ってイソプレン単位と反応する官能化有機珪素化合物から選択されることを特徴とする使用。
【請求項2】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・補強充填剤として少なくとも1種の無機充填剤
を含むエラストマー組成物における無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物の請求項1に記載の使用であって、該官能化有機珪素化合物が、少なくとも1個のC=C又はC=N二重結合を有し、かつ、[2+1]、[2+2]、[3+2]若しくはディールス・アルダー[4+2]型の付加環化反応又はイソプレン単位とC=C-C=O若しくはN=N官能基とのエン合成反応とは異なるエン合成反応に従ってイソプレン単位と反応する官能化有機珪素化合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記官能化有機珪素化合物が、次の結合:C=C-C=O及びN=Nのいずれかを有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・補強充填剤として少なくとも1種の無機充填剤、
を含むエラストマー組成物における無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物の使用であって、該化合物が次式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の一つに相当することを特徴とする使用:
【化1】

該式(I)において、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
Aは、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル又はアルカリル基を表し;
Bは、水素原子、又は少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル若しくはアルカリル基を表し;
基-Wは随意であり又は式 -Z-SiR’_(3-n)(OR)_(n)を含む;
【化2】

該式(II)中、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、N、N^(+)、CH及びCR”から選択される基を表し;
Yは、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
A及びBは、異なるもの又は同一のものであってよく、それぞれアルキル基、アルキレン基又はC=Oを表し、ここで、A及びBは、それぞれY=Cの場合にはC=Oとは異なるものとする;
【化3】

式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;
ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
【化4】

式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;
ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を-保持するものとし;
R”はアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、ハロゲン原子である;
【化5】


【化6】

該式(V)及び(VI)において、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;
ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ少なくとも1個のヘテロ原子を有するアルキル基、又は水素原子Hを表し;
Xは、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
X_(1)は、N、N^(+)、S^(+)、CH及びCR”から選択される基を表し;
X_(2)及びX_(3)は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、N、CH及びCR’から選択される基を表し;
Aはアルキル基、アリール基又はC=Oを表し;
Bはアルキル基、アリール基又はC=Oを表す;
【化7】

式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
Xは、O、N、NH、NR”、CH及びCR”から選択される基を表し、R”はアルキル基である。
【請求項5】
前記官能化有機珪素化合物が次式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の一つに相当することを特徴とする、請求項4に記載の使用:
【化8】

【請求項6】
前記官能化有機珪素化合物が次式(IIIa)及び(IVa)に相当することを特徴とする、請求項4に記載の使用:
【化9】


(N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール)
【化10】


【請求項7】
前記官能化有機珪素化合物が次式(VIa)、(Vlb)、(VIc)及び(VIIa)の一つに相当することを特徴とする、請求項4に記載の使用:
【化11】


【請求項8】
補強充填剤として使用する前記無機充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項1?7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記官能化有機珪素化合物を補強充填剤として使用される無機充填剤と予め混合しておくことを特徴とする、請求項1?8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記エラストマー組成物が前記補強充填剤として使用される無機充填剤用の少なくとも1種の被覆剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1?9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記エラストマー組成物が少なくとも1種の他の無機充填剤-エラストマーカップリング剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1?10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記エラストマー組成物が少なくとも1種のイソプレンエラストマー及びイソプレン以外の少なくとも1種のジエンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1?11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記エラストマー組成物が、
(1)イソプレン又は2-メチル-1,3-ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって、
(2.1)4?22個の炭素原子を有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体;
(2.2)8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニル単量体;
(2.3)3?12個の炭素原子を有するビニルニトリル単量体;
(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体;
(2.5)上記単量体(2.1)?(2.4)のうち少なくとも2種の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;20?99重量%
のイソプレン単位と、80?1重量%のジエンと、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位とを有するポリイソプレン共重合体;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテン及びイソプレンの共重合によって得られる共重合体並びにこれらの共重合体の水素化変種;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、イソプレン以外の1種以上のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択される少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1?12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記エラストマー組成物が、
(1)単独重合合成ポリイソプレン;
(2)ポリ(イソプレン-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-スチレン)及びポリ(イソプレン-ブタジエン-スチレン)からなる共重合合成ポリイソプレン;
(3)天然ゴム;
(4)ブチルゴム;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、ポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)又は三元共重合体からなるイソプレン以外のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択される少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記エラストマー組成物がイソプレンエラストマーとして少なくとも天然ゴムを含むことを特徴とする、請求項1?14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記エラストマー組成物が硬化剤、加硫促進剤、加硫活性剤、カーボンブラック、保護剤、可塑剤から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1?15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
靴底、床仕上げ材、ガスバリヤ、耐火材料、空中ケーブルローラー、家電機器の密封材、液体又は気体用パイプの密封材、ブレーキシステムの密封材、シース、ケーブル、伝動ベルト又はタイヤにおける請求項1?16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
重量物運搬車用のタイヤにおける請求項1?17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・少なくとも1種の補強無機充填剤、
・無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物
を含むエラストマー組成物であって、該化合物が請求項1?7のいずれかに記載のものであることを特徴とする、エラストマー組成物。
【請求項20】
前記補強無機充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記官能化有機珪素化合物が補強無機充填剤と予め混合された、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
前記補強無機充填剤用の少なくとも1種の被覆剤をさらに含むことを特徴とする、請求項19?21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種の他の無機充填剤-エラストマーカップリング剤をさらに含むことを特徴とする、請求項19?22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記エラストマー組成物がイソプレン以外の少なくとも1種のジエンエラストマーをさらに含むことを特徴とする、請求項19?23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記イソプレンエラストマーが
(1)イソプレン又は2-メチル-1,3-ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって、
(2.1)4?22個の炭素原子を有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体;
(2.2)8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニル単量体;
(2.3)3?12個の炭素原子を有するビニルニトリル単量体;
(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体;
(2.5)上記単量体(2.1)?(2.4)のうち少なくとも2種の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;20?99重量%のイソプレン単位と、80?1重量%のジエンと、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位とを有するポリイソプレン共重合体;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテン及びイソプレンの共重合によって得られる共重合体並びにこれらの共重合体の水素化変種;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、イソプレン以外の1種以上のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択されることを特徴とする、請求項19?24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記イソプレンエラストマーが
(1)単独重合合成ポリイソプレン;
(2)ポリ(イソプレン-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-スチレン)及びポリ(イソプレン-ブタジエン-スチレン)からなる共重合合成ポリイソプレン;
(3)天然ゴム;
(4)ブチルゴム;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、ポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)又は 三元共重合体からなるイソプレン以外のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記エラストマー組成物がイソプレンエラストマーとして少なくとも天然ゴムを含むことを特徴とする、請求項19?26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
前記エラストマー組成物が硬化剤、加硫促進剤、加硫活性剤、カーボンブラック、保護剤、可塑剤から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項19?27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
請求項19?28のいずれかに記載の少なくとも1種の組成物を含む物品であって、該物品が靴底、床仕上げ材、ガスバリヤ、耐火材料、空中ケーブルローラー、家電機器の密封材、液体若しくは気体用パイプの密封材、ブレーキシステムの密封材、ホース、ケーブルシース、ケーブル、エンジン取付部材、コンベヤーベルト、伝動ベルト、又はタイヤからなる物品。
【請求項30】
重量物運搬車用の、請求項29に記載のタイヤ。
【請求項31】
前記Bが前記Aに等しいことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項32】
前記結合X-BがC=C又はN=Cであることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項33】
補強充填剤として使用する前記無機充填剤が沈降シリカであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項34】
前記補強無機充填剤が沈降シリカであることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。」を、

補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された
「 【請求項1】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・補強充填剤として少なくとも1種の無機充填剤
を含むエラストマー組成物における無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物の使用であって、該化合物が次式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の一つに相当することを特徴とする使用:
【化1】

該式(I)において、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
Aは、硫黄以外の少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル又はアルカリル基を表し;
Bは、水素原子、又は少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル若しくはアルカリル基を表し;
基-Wは随意であり又は式 -Z-SiR’_(3-n)(OR)_(n)を含む;
【化2】

該式(II)中、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、N、N^(+)、CH及びCR”から選択される基を表し;
Yは、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
A及びBは、異なるもの又は同一のものであってよく、それぞれアルキル基、アルキレン基又はC=Oを表し、ここで、A及びBは、それぞれY=Cの場合にはC=Oとは異なるものとする;
【化3】

式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
【化4】


式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”はアルキル基又は水素原子Hを表し;
Xは、ハロゲン原子である;
【化5】


【化6】

該式(V)及び(VI)において、
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
R”は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ少なくとも1個のヘテロ原子を有するアルキル基、又は水素原子Hを表し;
Xは、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、N、CH及びCR”から選択される基を表し;
X_(1)は、N、N^(+)、S^(+)、CH及びCR”から選択される基を表し;
X_(2)及びX_(3)は、同一のもの又は異なるものであってよく、それぞれ、N、CH及びCR’から選択される基を表し;
Aはアルキル基、アリール基又はC=Oを表し;
Bはアルキル基、アリール基又はC=Oを表す;
【化7】


式中:
nは1、2又は3の整数であり;
Rは水素原子H又はアルキル基若しくはアルカリル基を表し;
R’は、少なくとも1個のヘテロ原子を有していてよいアルキル基、又はアルカリル基を表し;
Zは、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基;飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分と上で定義した炭素環式部分とを有する基から選択される基を表し;ここで、該基は、硫黄原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子で置換又は中断されていてよく、該窒素原子は、水素原子、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を有する又は有しない飽和又は不飽和及び/又は芳香族の単環式又は多環式炭素環式基及び飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分を有する基から選択される1価の基を保持するものとし;
Xは、O、N、NH、NR”、CH及びCR”から選択される基を表し、R”はアルキル基である。
【請求項2】
前記官能化有機珪素化合物が次式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の一つに相当することを特徴とする、請求項1に記載の使用:
【化8】

【請求項3】
前記官能化有機珪素化合物が次式(IIIa)及び(IVa)に相当することを特徴とする、請求項1に記載の使用:
【化9】

(N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール)
【化10】

【請求項4】
前記官能化有機珪素化合物が次式(VIa)、(VIb)、(VIc)及び(VIIa)の一つに相当することを特徴とする、請求項1に記載の使用:
【化11】


【請求項5】
補強充填剤として使用する前記無機充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記官能化有機珪素化合物を補強充填剤として使用される無機充填剤と予め混合しておくことを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記エラストマー組成物が少なくとも1種の他の無機充填剤-エラストマーカップリング剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1?6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記エラストマー組成物が少なくとも1種のイソプレンエラストマー及びイソプレン以外の少なくとも1種のジエンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1?7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記エラストマー組成物が、
(1)イソプレン又は2-メチル-1,3-ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって、
(2.1)4?22個の炭素原子を有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体;
(2.2)8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニル単量体;
(2.3)3?12個の炭素原子を有するビニルニトリル単量体;
(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体;
(2.5)上記単量体(2.1)?(2.4)のうち少なくとも2種の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;20?99重量%のイソプレン単位と、80?1重量%のジエンと、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位とを有するポリイソプレン共重合体;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテン及びイソプレンの共重合によって得られる共重合体並びにこれらの共重合体の水素化変種;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、イソプレン以外の1種以上のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択される少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1?8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記エラストマー組成物が、
(1)単独重合合成ポリイソプレン;
(2)ポリ(イソプレン-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-スチレン)及びポリ(イソプレン-ブタジエン-スチレン)からなる共重合合成ポリイソプレン;
(3)天然ゴム;
(4)ブチルゴム;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、ポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)又は三元共重合体からなるイソプレン以外のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択される少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含むことを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記エラストマー組成物がイソプレンエラストマーとして少なくとも天然ゴムを含むことを特徴とする、請求項1?10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記エラストマー組成物が硬化剤、加硫促進剤、加硫活性剤、カーボンブラック、保護剤、可塑剤から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1?11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
靴底、床仕上げ材、ガスバリヤ、耐火材料、空中ケーブルローラー、家電機器の密封材、液体又は気体用パイプの密封材、ブレーキシステムの密封材、シース、ケーブル、伝動ベルト又はタイヤにおける請求項1?12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
重量物運搬車用のタイヤにおける請求項1?13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・少なくとも1種の補強無機充填剤、
・無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物
を含むエラストマー組成物であって、該化合物が請求項1?4のいずれかに記載のものであることを特徴とする、エラストマー組成物。
【請求項16】
前記補強無機充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の他の無機充填剤-エラストマーカップリング剤をさらに含むことを特徴とする、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記エラストマー組成物がイソプレン以外の少なくとも1種のジエンエラストマーをさらに含むことを特徴とする、請求項15?17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記イソプレンエラストマーが
(1)イソプレン又は2-メチル-1,3-ブタジエンの単独重合によって得られる合成ポリイソプレン;
(2)イソプレンと、1種以上のエチレン系不飽和単量体であって、
(2.1)4?22個の炭素原子を有する、イソプレン以外の共役ジエン単量体;
(2.2)8?20個の炭素原子を有する芳香族ビニル単量体;
(2.3)3?12個の炭素原子を有するビニルニトリル単量体;
(2.4)アクリル酸又はメタクリル酸と1?12個の炭素原子を有するアルカノールとから誘導されるアクリル酸エステル単量体;
(2.5)上記単量体(2.1)?(2.4)のうち少なくとも2種の混合物
から選択されるものとの共重合によって得られる合成ポリイソプレン;20?99重量%のイソプレン単位と、80?1重量%のジエンと、芳香族ビニル、ビニルニトリル及び/又はアクリル酸エステル単位とを有するポリイソプレン共重合体;
(3)天然ゴム;
(4)イソブテン及びイソプレンの共重合によって得られる共重合体並びにこれらの共重合体の水素化変種;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、イソプレン以外の1種以上のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択されることを特徴とする、請求項15?18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記イソプレンエラストマーが
(1)単独重合合成ポリイソプレン;
(2)ポリ(イソプレン-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-スチレン)及びポリ(イソプレン-ブタジエン-スチレン)からなる共重合合成ポリイソプレン;
(3)天然ゴム;
(4)ブチルゴム;
(5)上記エラストマー(1)?(4)の少なくとも2種の混合物;
(6)上記エラストマー(1)又は(3)を50重量%超含有し、かつ、ポリブタジエン、ポリクロルプレン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)又は 三元共重合体からなるイソプレン以外のジエンエラストマーを50重量%未満含有する混合物
から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記エラストマー組成物がイソプレンエラストマーとして少なくとも天然ゴムを含むことを特徴とする、請求項15?20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
請求項15?21のいずれかに記載の少なくとも1種の組成物を含む物品であって、該物品が靴底、床仕上げ材、ガスバリヤ、耐火材料、空中ケーブルローラー、家電機器の密封材、液体若しくは気体用パイプの密封材、ブレーキシステムの密封材、ホース、ケーブルシース、ケーブル、エンジン取付部材、コンベヤーベルト、伝動ベルト、又はタイヤからなる物品。
【請求項23】
前記補強無機充填剤が沈降シリカであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。」
と補正するものである。
なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。

本件補正は、請求項1についてみると、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「官能化有機珪素化合物」を「式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の一つに相当する」と特定の構造を有する化合物に限定し、式(I)における「Z」及び「A」の定義から「硫黄原子」を削除するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開昭64-20246号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「タイヤ用ゴム組成物」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「1.天然ゴム、ジエン系合成ゴムおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたゴム成分100重量部に対して、窒素吸着法により測定した比表面積(N_(2)SA)が70?250m^(2)/gでジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が80?150ml/100gの範囲内のカーボンブラックであって、該カーボンブラック表面に導入された全酸性基の濃度が0.25?2.0μeq/m^(2)、全酸性基中の弱酸性基の割合が少なくとも65%であり、PH値が3?5.5の範囲内の補強性カーボンブラック30?150重量部と、シリカ0?40重量部と、次の一般式(1)および(2):
Y_(3)-Si-C_(n)H_(2n)S_(m)C_(n)H_(2n)Si-Y_(3) または
Y_(3)-SiC_(n)H_(2n)X ……(1)
(式中のXはニトロソ基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、塩素原子、イミド基、Yは炭素数1?4個のアルキル基またはアルコキシル基、あるいは塩素原子、nおよびmは夫々1?6の整数を示す)
Y_(3)SiC_(n)H_(2n)S_(m)X′ ……(2)
(式中のX′は

または

、Y、mおよびnは夫々前記のものと同じものを示す)
で表わされる化合物から成る群から選択されたシランカップリング剤の少なくとも1種を4.65×10^(-5)m・s?4.65×10^(-3)m・s(mはカーボンブラックの添加重量部数、sはカーボンブラックのN_(2)SA値を示す)の範囲内で添加・混合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。」(特許請求の範囲)

イ 「本発明において使用することのできるジエン系合成ゴムとしては、合成イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴムおよびニトリルゴム等がある。」(第3頁左下欄第1行?第5行)

上記記載事項アおよびイを総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「天然ゴム、ジエン系合成ゴムおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれたゴム成分100重量部に対して、窒素吸着法により測定した比表面積(N_(2)SA)が70?250m^(2)/gでジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が80?150ml/100gの範囲内のカーボンブラックであって、該カーボンブラック表面に導入された全酸性基の濃度が0.25?2.0μeq/m^(2)、全酸性基中の弱酸性基の割合が少なくとも65%であり、PH値が3?5.5の範囲内の補強性カーボンブラック30?150重量部と、シリカ0?40重量部と、次の一般式(1):
Y_(3)-SiC_(n)H_(2n)X ……(1)
(式中のXは、ビニル基、Yは炭素数1?4個のアルコキシル基、nは2?6の整数を示す)
で表される化合物であるシランカップリング剤を4.65×10^(-5)m・s?4.65×10^(-3)m・s(mはカーボンブラックの添加重量部数、sはカーボンブラックのN_(2)SA値を示す)の範囲内で添加・混合したタイヤ用ゴム組成物におけるシランカップリング剤の使用。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「天然ゴム、ジエン系合成ゴムおよびこれらの混合物」は、本願補正発明の「イソプレンエラストマー」に相当し、同様に、「カーボンブラック」および「シリカ」は「無機充填剤」に、「シランカップリング剤」は「無機充填剤-エラストマーカップリング剤」として使用される「官能化有機珪素化合物」に、「タイヤ用ゴム組成物」は「エラストマー組成物」に、相当する。

以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、

[一致点]

「次の物質:
・少なくとも1種のイソプレンエラストマー、
・補強充填剤として少なくとも1種の無機充填剤
を含むエラストマー組成物における無機充填剤-エラストマーカップリング剤としての少なくとも1種の官能化有機珪素化合物の使用。」

である点で一致し、

次の点で一応相違する。
[相違点]
官能化有機珪素化合物に関して、本願補正発明では、「式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の一つに相当する」と特定するのに対して、引用発明では、「次の一般式(1):Y_(3)-SiC_(n)H_(2n)X ……(1) (式中のXは、ビニル基、Yは炭素数1?4個のアルコキシル基、nは2?6の整数を示す)」との特定である点。

4 判断
(1)相違点について
引用発明の一般式(1)
Y_(3)-SiC_(n)H_(2n)X ……(1)
(式中のXは、ビニル基、Yは炭素数1?4個のアルコキシル基、nは2?6の整数を示す)
で表される官能化有機珪素化合物について、ビニル基は「-CH=CH-H」、炭素数1?4個のアルコキシル基は「RO(Rは炭素数1?4個のアルキル基を表す)」であるから、書き下すと以下のとおりである。
(RO)_(3)Si-C_(k)H_(2k)-C_(j)H_(2j)-CH=CH-H_( ) ……(1)
該式(1)において、
Rは炭素数1?4個のアルキル基を表し;
k+j=2?6の整数であり、k、jは整数である;

そうすると、本願補正発明の式(I)の化合物において、


nは3の整数であり;
Rは、アルキル基を表し;
Zは、飽和脂肪族炭化水素基を表し(=C_(k)H_(2k));
R”は、水素原子Hを表し;
Xは、CHを表し;
Aは、アルキル基を表し(=C_(j)H_(2j));
Bは、水素原子を表し;
基-Wは随意、すなわち、基-Wはない:
ものに相当する。

そうすると、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

(2)まとめ
よって、本願補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし34に係る発明は、平成25年11月12日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の「1」に補正前の特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物の記載事項及び引用発明は、上記「第2」の「2」に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明に係る「官能化有機珪素化合物」につき、「式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の一つに相当する」との発明特定事項、および、式(I)における「Z」及び「A」の定義から「硫黄原子」を削除する発明特定事項を省いたうえで、「少なくとも1個のC=C又はC=N二重結合を有し、かつ、電子環化型の反応に従ってイソプレン単位と反応する」とより広い概念で特定するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明である。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-28 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-07-19 
出願番号 特願2012-513617(P2012-513617)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟北澤 健一  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大島 祥吾
上坊寺 宏枝
発明の名称 特定の官能基有機珪素化合物の、補強無機充填剤を含むイソプレンエラストマー組成物におけるカップリング剤としての使用  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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