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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1322167
審判番号 不服2015-13198  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-10 
確定日 2016-12-01 
事件の表示 特願2010-257978「電子モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日出願公開、特開2012-109447〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成22年11月18日の出願であって、平成26年5月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月29日付けで拒絶理由が通知され(最後の拒絶理由通知)、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年4月6日付けで、平成26年11月28日の手続補正書でした補正について、補正の却下の決定がされるとともに、拒絶査定(発送日:平成27年4月14日)がされ、これに対して、平成27年7月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において、平成28年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日に意見書が提出され、同年5月12日付けで拒絶理由(以下「第2回当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

そして、本願の請求項1?6に係る発明は、平成28年7月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「表面上に部品レイアウト可能領域が設定されており、かつ、厚み方向の内部にも部品内蔵が可能にされている基板と、
前記基板に設けられた、横方向の導電体である配線パターンおよび縦方向の導電体である層間接続導体と、
前記基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるには余りが生じ、一部が該部品レイアウト可能領域に実装され、残りが該基板の厚み方向の内部に実装された、表面実装型の複数の電気/電子部品と、を具備し、
前記基板の前記部品レイアウト可能領域には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるように配置できる電気/電子部品として2以上の数の電気/電子部品が振り分けられて実装されており、前記基板の厚み方向の内部には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記表面上に実装されない電気/電子部品が振り分けられて実装されており、しかも、前記基板の厚み方向の内部に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積が、前記基板の前記部品レイアウト可能領域に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積より小さく、
さらに、前記配線パターンは、前記基板の厚み方向の内部に実装された前記電気/電子部品が有する厚み内に含まれて該電子/電気部品の横方向に設けられた、前記厚み方向のレイアウト位置がそれぞれ異なる2層以上の内層配線パターンを含むこと
を特徴とする電子モジュール。」

2 引用文献及びその記載事項
(1) 第2回当審拒絶理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-45013号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、半導体集積回路素子(以下、ICとよぶ)を含む電子部品を実装して構成される高機能な回路モジュールとその製造方法に関する。」

イ 「【0008】
上記の課題を解決するために本発明の回路モジュールは、ICを含む電子部品と、少なくとも1個のキャビティーを有し、このキャビティー内に上記電子部品を実装し、電子部品とキャビティーとの空隙を熱硬化性樹脂で充填して表面を平坦化したセラミック多層基板と、一方の面に絶縁性接着層を有し、絶縁性接着層に設けられた開口部と、この開口部に充填された導電性樹脂とを含む樹脂配線基板とからなり、樹脂配線基板とセラミック多層基板とを絶縁性接着層により接着し、かつセラミック多層基板上の上面側配線層と導電性樹脂とを電気的に接続した構成からなる。
【0009】
この構成により、ICを含む電子部品をセラミック多層基板に内蔵させ、かつキャビティー領域を含めて樹脂配線基板を形成し、キャビティー上の樹脂配線基板上にも種々の電子部品を実装することができる。すなわち、キャビティー内部およびキャビティー上部エリアを含め、樹脂配線基板上にもICや受動部品を実装できる。この結果、実装密度が向上でき、かつ、これらの電子部品を最短距離で配線でき、小型でノイズが少なく、高密度、高速動作可能な回路モジュールを実現できる。」

ウ 「【0033】
(実施の形態1)
図1から図4を用いて、本発明の実施の形態1における回路モジュールおよびその製造方法について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態における回路モジュールを示す図で、(A)はその断面図、(B)は平面図である。
【0035】
セラミック多層基板10は、絶縁層12に形成された層間接続用の導電性ビア14、この導電性ビア14にそれぞれ接続する内層配線層16、上面側配線層18および下面側配線層20、さらに上面側に電子部品30を実装して収納するためのキャビティー22を有している。このようなセラミック多層基板10は、例えばガラスセラミック材料を絶縁層12として用いれば、900℃?1000℃程度の比較的低温で焼成が可能であるので、導電性ビア14や内層配線層16を形成する材料と同時焼成して作製できる。なお、上面側配線層18および下面側配線層20等も同時焼成して作製することもできるが、通常はセラミック多層基板10を同時焼成後、その上面と下面に配線パターン形成した後、再度焼成して形成する。また、このガラスセラミック材料は熱膨張係数も小さいので、IC等の電子部品30の実装部における信頼性を改善することもできる。
【0036】
なお、導電性ビア14と内層配線層16の材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀-パラジウム合金および金-パラジウム合金等、ガラスセラミック材料と同時に焼成可能な導体材料であれば、特に制約なく使用できる。さらに、上面側配線層18および下面側配線層20には、配線パターンを形成するだけでなく、回路基板にこの回路モジュールを実装するための端子電極(図示せず)も形成されている。この端子電極には、ハンダ付け性を改善するために表面に金メッキ等をする場合もある。」

エ 「【0037】
キャビティー22は、電子部品30として、例えばICを用いる場合、その外形寸法より大きい形状に形成されている。また、このキャビティー22の底部表面には、この電子部品30と接続するための電極パッド24が形成されている。このようなキャビティー22を有するセラミック多層基板10は、電子部品30を収納するキャビティー22となる開口部を設けたグリーンシートと、電極パッド24を形成したグリーンシートとを積層して焼成すれば容易に作製できる。
【0038】
キャビティー22内には、電子部品30が実装されている。本実施の形態においては、この電子部品30としてICを用いた例について説明するので、以下、電子部品30をIC30として説明する。IC30にはバンプ32が形成されており、このバンプ32とキャビティー22の底部表面に形成されている電極パッド24とが接続されるフリップチップ実装方式が用いられている。このフリップチップ実装方式としては、例えば突起電極と導電性樹脂を用いた接続方法、ハンダバンプを用いてハンダ溶融接合する接続方法、メッキバンプと導電性樹脂を用いた接続方法、あるいはバンプの材料として金(Au)を用い、電極パッド24の表面にスズ(Sn)を形成してAu-Sn共晶接続による接続方法等、一般的なフリップチップ実装方式が使用できる。
【0039】
IC30が実装されたキャビティー22には空隙部があるので、この空隙部を埋めるために熱硬化性樹脂40を充填してキャビティー22の表面をセラミック多層基板10の表面とほぼ同じになるように平坦化している。」

オ 「【0040】
セラミック多層基板10の表面に、樹脂配線基板70が接着されている。この樹脂配線基板70は、絶縁性接着層52と配線層54とからなるシート50、およびこのシート50上に積層された絶縁性接着層62と配線層64とからなる積層用シート60から構成されている。セラミック多層基板10に対しては、絶縁性接着層52により接着されるとともに、導電性樹脂56によりセラミック多層基板10の上面側配線層18の一部である端子電極に電気的に接続されている。なお、この絶縁性接着層52、62は層間絶縁層の役割も果たしている。
【0041】
配線層54、64は、例えば絶縁性接着層52、62上に貼り付けた銅箔をエッチングすることにより形成される。この場合、銅箔の厚さを10μm以下にすれば、配線幅と配線ピッチをそれぞれ20μm?30μmとすることができ、セラミック多層基板10に比べて高密度配線が可能である。」

カ 「【0042】
さらに、この回路モジュールは、キャビティー22が形成された領域部上を含めた樹脂配線基板70の表面に、さらに電子部品80が実装されている。この電子部品80としては、チップコンデンサ、チップ抵抗等の受動部品またはIC30とは別のICを実装してもよい。これらの電子部品80の実装方法として、受動部品の場合にはハンダリフロー接続や導電性接着剤による接続が可能であり、ICの場合にはフリップチップ実装やワイヤボンディング実装等を用いることができる。例えば、電子部品80としてチップコンデンサを用いれば、IC30に対して最短距離に接続したバイパスコンデンサとすることができ、IC30の高速化を実現することができる。図1では、電子部品80としてチップコンデンサを実装した場合を例として示しており、チップコンデンサと樹脂配線基板70の配線層64とはハンダ82により接続されている。」

キ 「【0043】
このように本発明の回路モジュールは、キャビティー22が形成された領域部を含めた樹脂配線基板70の表面にも種々の電子部品を実装できるので、実装可能な面積が広がるとともに、キャビティー22内に実装したIC30と樹脂配線基板70上に実装した電子部品80とを最短距離で配線できる。その結果、回路モジュールの高周波特性が向上し、電流の急激な変化によって発生するノイズ等も抑制できる。」

ク 上記各事項並びに図1(A)及び(B)を参照すると、下記の事項がみてとれる。

(ア) セラミック多層基板10の表面に接着された樹脂配線基板70の表面上には、電子部品80を実装可能な領域が設定され、該領域に複数の電子部品80が実装されていること。

(イ) セラミック多層基板10の厚み方向の内部に電子部品30が実装されていること。

(ウ) 各電子部品80及び電子部品30は、表面に実装されるものであること。

(エ) セラミック多層基板10及び該基板10の表面に接着された樹脂配線基板70には、横方向の内層配線層16、上面側配線層18及び配線層54、並びに縦方向の導電性ビア14及び導電性樹脂56が設けられていること。

また、上記(ア)及び(イ)より、各電子部品80及び電子部品30は、一部が樹脂配線基板70の実装可能な領域に実装され、残りがセラミック多層基板10の厚み方向の内部に実装されているといえる。

以上のことから、引用文献1には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、回路モジュールに関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「表面上に電子部品80を実装可能な領域が設定されており、かつ、厚み方向の内部にも電子部品30が実装されている、セラミック多層基板10及び該基板10の表面に接着された樹脂配線基板70と、
セラミック多層基板10及び該基板10の表面に接着された樹脂配線基板70に設けられた、横方向の内層配線層16、上面側配線層18及び配線層54、並びに縦方向の導電性ビア14及び導電性樹脂56と、
一部が該実装可能な領域に実装され、残りがセラミック多層基板10の厚み方向の内部に実装された、複数の電子部品80及び電子部品30を具備し、
前記樹脂配線基板70の該実装可能な領域には、複数の電子部品80が実装されており、
前記セラミック多層基板10の厚み方向の内部には、電子部品30が実装されている、回路モジュール。」

(2) 第2回当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-119147号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来方式の電子部品実装基板によれば、電子部品が平面的に並べて配置されるので、電子部品の高密度な実装要求に対して、部品搭載面積に限界を生ずるに至っている。従って、近年のプリント配線板の小型化、つまり、電子機器の小型化の要求に満足できなくなってきた。
【0004】この種の問題に対して、技術文献である特開平2-164096号公報の『多層電子回路基板とその製造方法』には、電子回路を構成する回路素子をプリント配線基板の層間に内蔵し、電子回路の高密度な実装を図ることが記載されている。また、特開平5-343856号公報の『多層プリント配線基板及びその製造方法』には、電子回路などを構成するハイブリッドモジュールをプリント配線基板間に挟み込み、電子回路などを高密度に実装することが記載されている。」

(3) 第2回当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-197849号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】近年の電子機器の高性能化・小型化の流れの中、回路部品の高密度、高機能化が一層求められている。回路部品を搭載したモジュールにおいても、高密度、高機能化への対応が要求されている。回路部品を高密度に実装する方法として、現在、配線板が多層化する傾向にある。従来のガラスクロス-エポキシ樹脂含浸基板では、ドリルによる貫通スルーホール構造を用いて多層化しており、信頼性は高いが、高密度実装には適していない。このため、最も回路の高密度化が図れる方法として、インナービアによる接続を用いた多層配線板も使用されている。インナービア接続により、LSI間や部品間の配線パターンを最短距離で接続でき、必要な各層間のみの接続が可能となり、回路部品の実装性にも優れている。また、配線パターンの微細化も高密度実装に不可欠な技術であり、ライン アンドスペースが年々小さくなってきている。加えて、受動部品を基板内部に形成した3次元実装が開発されている。
【0003】しかし、受動部品を基板内部に形成するためには、材料開発、形成精度、設備投資など課題が多く、開発スピードも遅くなってしまう。
【0004】また、本出願人はすでに受動部品を基板内部に内蔵することを提案している(特許文献1)。」

(4) 第2回当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-64052号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】
従来、能動素子と受動素子を含む各種の電子部品は、通常回路パターンの形成された基板上に搭載及び配線された。しかし、このような各種の電子部品は、電子製品の小型化及び集積化の趨勢に対応してプリント基板内に実装されている実情である。すなわち、積層基板内に電子部品を挿入して基板を小型化及び集積化している。
【0003】
このように、積層基板内に電子部品を挿入して実装する従来の技術は、既に出願された特許文献1(電子部品及びその製造方法)によると、光造形プロセッサにより光造形樹脂層を積層して光造形樹脂を形成し、光造形樹脂内に半導体素子、抵抗、キャパシタなどのインサート部品を一体的に内蔵したものがある。この技術は、図1のプロセッサによると、光造形プロセッサにより光造形樹脂層1を形成した後、前記樹脂層1にインサート部品2を搭載し、次に樹脂層1上に光造形樹脂層1cを積層し、ビアホールを通してインサート部品に配線3を行い、さらに樹脂層1dを積層したもので、インサート部品2を光造形樹脂層1、1c間に内蔵したものである。」

イ 「【0025】
図10はこのような積層基板内蔵型ノイズ吸収部品を実装する方法を示すものである。まず、図10(a)に示すように、積層基板104上に半導体チップ140と能動素子120及び受動素子130がそれぞれ搭載されている。図10(b)に示すように、積層基板104上に半導体チップ140と能動素子120などを搭載し、積層基板104内には受動素子を内蔵して、実質的に基板104の大きさ及び厚さを半分以上に減らすことができ、積層基板の製造単価を低めるものである。
【0026】
図11はこのような受動素子を積層基板内に実装した状態を示す断面図である。同図に示すように、積層基板105a?105eの上面に半導体チップ140を搭載し、積層基板間には受動素子として抵抗132、キャパシタ134及びインダクタ136を内蔵し、受動素子にそれぞれフェライト150を施した(鍍金又は蒸着)ものである。ここで、フェライトが施された受動素子は積層基板の各層ごとに実装され、各部品は回路パターンにより電気的に連結される。また、受動素子だけでなく、半導体チップなどのような能動素子も実装することができる。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「回路モジュール」は、本願発明の「電子モジュール」に相当する。
以下同様に、「電子部品80を実装可能な領域」は、「部品レイアウト可能領域」に、
「セラミック多層基板10及び該基板10の表面に接着された樹脂配線基板70」は、「基板」に、
「横方向の内層配線層16、上面側配線層18及び配線層54」は、「横方向の導電体である配線パターン」に、
「縦方向の導電性ビア14及び導電性樹脂56」は、「縦方向の導電体である層間接続導体」に
「複数の電子部品80及び電子部品30」は、表面に実装されるものであるから、「表面実装型の複数の電気/電子部品」に、それぞれ相当する。

引用発明では、「樹脂配線基板70の該実装可能な領域には、複数の電子部品80が実装され」ているから、引用発明は、本願発明の「基板の前記部品レイアウト可能領域には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるように配置できる電気/電子部品として2以上の数の電気/電子部品が振り分けられて実装され」ている構成を備えている。
更に、引用発明では、「セラミック多層基板10の厚み方向の内部には、電子部品30が実装され」ているから、引用発明は、本願発明の「基板の厚み方向の内部には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記表面上に実装されない電気/電子部品が振り分けられて実装され」る構成を備えている。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「表面上に部品レイアウト可能領域が設定されており、かつ、厚み方向の内部にも部品内蔵が可能にされている基板と、
前記基板に設けられた、横方向の導電体である配線パターンおよび縦方向の導電体である層間接続導体と、
一部が該部品レイアウト可能領域に実装され、残りが該基板の厚み方向の内部に実装された、表面実装型の複数の電気/電子部品と、を具備し、
前記基板の前記部品レイアウト可能領域には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるように配置できる電気/電子部品として2以上の数の電気/電子部品が振り分けられて実装されており、前記基板の厚み方向の内部には、前記複数の電気/電子部品のうちの、前記基板の前記表面上に実装されない電気/電子部品が振り分けられて実装されている、電子モジュール。

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「複数の電気/電子部品」に関して、本願発明では、「基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるには余りが生じ」るのに対して、引用発明では、電子部品80を実装可能な領域に収めるには余りが生じるか否か明らかでない点。

[相違点2]
本願発明では、「基板の厚み方向の内部に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積が、前記基板の前記部品レイアウト可能領域に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積より小さく」との構成を備えるのに対して、引用発明では、かかる構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点3]
本願発明では、「配線パターンは、前記基板の厚み方向の内部に実装された前記電気/電子部品が有する厚み内に含まれて該電子/電気部品の横方向に設けられた、前記厚み方向のレイアウト位置がそれぞれ異なる2層以上の内層配線パターンを含む」との構成を備えるのに対して、引用発明では、かかる構成を備えていない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
電子モジュールでは、小型化の要求があるとともに、電子部品搭載面積に限界を生じるような問題に対して、電子部品を内蔵すること(本願発明の「基板の厚み方向の内部に実装」することに相当。)により、高密度な実装を図っている(引用文献2?4についての前記2(2)?2(4)を参照。以下「周知の技術1」という。)。
引用発明は、複数の電気/電子部品を、基板の表面に設けるとともに、基板に内蔵するものであるから、その基板の大きさとしては、複数の電気/電子部品の全てを基板の表面に配置する際の大きさよりも、より小さくすることが可能である。すなわち、基板の表面と内蔵箇所とに、基板の表面に収めるには余りが生じる程の複数の電気/電子部品を搭載することが可能である。
すると、引用発明において、小型化の要求の下で、基板をできるだけ小型化し、結果的に「基板の前記部品レイアウト可能領域内に収めるには余りが生じ」る「複数の電気/電子部品」を具備するものとし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記周知の技術1から当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
基板の表面上が最も電子部品を実装しやすいことは明らかである。また、基板の表面上の実装可能領域には、その全域にわたって電子部品を実装することも行われている(例えば、第2回当審拒絶理由に引用された刊行物である特開2005-123909号公報の図2を参照。)。
すると、電子部品搭載面積に限界を生じるような問題に対して電子部品を内蔵すること、及び基板の表面は電子部品が実装しやすいことを考慮すれば、基板表面上に搭載する電子部品の総面積を内蔵する電子部品の総面積よりも大きくすること、すなわち上記相違点2に係る本願発明の構成である「基板の厚み方向の内部に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積が、前記基板の前記部品レイアウト可能領域に実装された電気/電子部品がそれぞれ有する面積を積算した総面積より小さ」くすることは、当業者が適宜行う設計事項である。

[相違点3]について
配線パターンが、基板の厚み方向の内部に実装された電気/電子部品が有する厚み内に含まれて電子/電気部品の横方向に設けられた内層配線パターンを含むようにする構成は、第2回当審拒絶理由に引用された刊行物である特開2010-258277号公報(特に、図1の配線パターン23を参照。)に記載されているところ、該構成に加えて更に、「厚み方向のレイアウト位置がそれぞれ異なる2層以上の内層配線パターンを含む」ようにして、「配線パターンは、前記基板の厚み方向の内部に実装された前記電気/電子部品が有する厚み内に含まれて該電子/電気部品の横方向に設けられた、前記厚み方向のレイアウト位置がそれぞれ異なる2層以上の内層配線パターンを含む」ように構成することも、例えば特開2002-111218号公報(特に、段落【0070】、【0108】、図3、図4及び図8を参照。「電極パターン12」(または「多層配線導体12」)が、本願発明の「配線パターン」に相当する。)及び特開2007-42706号公報(特に、図1、図6、図8、図10及び図12を参照。「配線層23」及び「配線層24」が、本願発明の「配線パターン」に相当する。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術である(以下「周知の技術2」という。)。
すると、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、上記周知の技術2から当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明並びに上記周知の技術1及び2から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

以上のことから、本願発明は、引用発明並びに上記周知の技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明並びに上記周知の技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-27 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-18 
出願番号 特願2010-257978(P2010-257978)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沼生 泰伸小川 悟史井出 和水  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 電子モジュール  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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