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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1322246
異議申立番号 異議2016-700064  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-25 
確定日 2016-09-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5758355号発明「LED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物、前記組成物からなる粒状物、及び前記粒状物を成形してなるLED反射板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5758355号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3ないし13〕について訂正することを認める。 特許第5758355号の請求項1、3ないし13に係る特許を維持する。 特許第5758355号の請求項2に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5758355号の請求項1?13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成24年7月13日に出願されたものであって、平成27年6月12日にその特許権の設定登録がされ、平成28年1月25日付け(受理日:同年同月27日)で特許異議申立人南祐樹(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年3月31日付けの取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年5月31日付け(受理日:同年6月1日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年7月11日付け(受理日:同年同月13日)で異議申立人により意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体と、熱可塑性樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むことを特徴とするLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体と、熱可塑性樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステルと、前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体との合計量が97?60重量部、前記熱可塑性樹脂が3?40重量部であり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むことを特徴とするLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全量に対して10?35重量%であり、前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量が、組成物全量に対して50?80重量%であり、かつ前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?50重量%であることを特徴とする請求項1又は2項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全量に対して10?35重量%であり、前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量が、組成物全量に対して50?80重量%であり、かつ前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?50重量%であることを特徴とする請求項1記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記不飽和ポリエステル樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂を少なくとも含むことを特徴とする請求項1?3項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記不飽和ポリエステル樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は3項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記不飽和ポリエステル樹脂が、50℃以下の温度範囲において固体状であることを特徴とする請求項1?4項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記不飽和ポリエステル樹脂が、50℃以下の温度範囲において固体状であることを特徴とする請求項1、3又は4項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体の合計量に対して常温にて液体の前記共重合性単量体が50重量%以上であることを特徴とする請求項1?5項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体の合計量に対して常温にて液体の前記共重合性単量体が50重量%以上であることを特徴とする請求項1、3?5項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?29重量%であることを特徴とする請求項1?6項のいずれか1項記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?29重量%であることを特徴とする請求項1、3?6項のいずれか1項記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1?7項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1、3?7項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1?8項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1、3?8項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「前記無機充填材の平均粒径が0.1?50μmの範囲であることを特徴とする請求項1?9項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記無機充填材の平均粒径が0.1?50μmの範囲であることを特徴とする請求項1、3?9項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に「前記熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、及びそれらの共重合体からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1?10項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」とあるのを「前記熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、及びそれらの共重合体からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1、3?10項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる粒状物。」とあるのを「請求項1、3?11項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる粒状物。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物を「前記不飽和ポリエステルと、前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体との合計量が97?60重量部、前記熱可塑性樹脂が3?40重量部であ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、訂正前の明細書の段落【0043】等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3?12
訂正事項3?12は、請求項3ないし12を請求項2を引用しないものとするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項3?12は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、訂正事項1?12は、特許請求の範囲についての訂正であるが、訂正後の請求項3?13は、訂正後の請求項1を引用するものであり、訂正後の請求項1、3?13は一群の請求項であるから、これらの訂正は一群の請求項ごとにされている。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正の請求による訂正後の請求項1、3?13について、訂正を認める。

第3 本件発明について
本件訂正の請求により訂正された請求項1、3?13に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明3」?「本件特許発明13」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体と、熱可塑性樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステルと、前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体との合計量が97?60重量部、前記熱可塑性樹脂が3?40重量部であり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むことを特徴とするLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全量に対して10?35重量%であり、前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量が、組成物全量に対して50?80重量%であり、かつ前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?50重量%であることを特徴とする請求項1記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は3項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、50℃以下の温度範囲において固体状であることを特徴とする請求項1、3又は4項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体の合計量に対して常温にて液体の前記共重合性単量体が50重量%以上であることを特徴とする請求項1、3?5項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?29重量%であることを特徴とする請求項1、3?6項のいずれか1項記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1、3?7項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1、3?8項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機充填材の平均粒径が0.1?50μmの範囲であることを特徴とする請求項1、3?9項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、及びそれらの共重合体からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1、3?10項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1、3?11項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる粒状物。
【請求項13】
請求項12に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物よりなる粒状物を成形してなることを特徴とするLED反射板。」

第4 取消理由の概要
取消理由の概要は、以下の通りである。
本件特許の請求項1?13に係る発明は、いずれも甲1?10及び甲25?27に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきものである。

第5 取消理由についての判断
1 刊行物
特許第4844699号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下、単に「甲1」という。)
特開平9-97512号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第2号証。以下、単に「甲2」という。)
特開2003-183368号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第3号証。以下、単に「甲3」という。)
特開平11-181073号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第4号証。以下、単に「甲4」という。)
特開2011-75903号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第5号証。以下、単に「甲5」という。)
「熱硬化性高分子の精密化-成形材料の低収縮化・低応力化-」遠藤剛監修、株式会社シーエムシー、1986年、121?156頁、248?257頁(特許異議申立書の証拠方法である甲第6号証。以下、単に「甲6」という。)
「FRP成形加工技術」村山宏著、株式会社工業調査会、1974年、27?37頁(特許異議申立書の証拠方法である甲第7号証。以下、単に「甲7」という。)
「プラスチック材料講座[10]ポリエステル樹脂」滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和45年、172?176頁(特許異議申立書の証拠方法である甲第8号証。以下、単に「甲8」という。)
「プラスチック読本」第20版、(地独)大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、株式会社プラスチックス・エージ、2009年、75?83頁(特許異議申立書の証拠方法である甲第9号証。以下、単に「甲9」という。)
「Low temperature cure of unsaturated polyester resins with thermoplastic additives I. Dilatometry and morphology study」W. Li, L.J. Lee、Polymer、41巻、2000年、685?696頁(特許異議申立書の証拠方法である甲第10号証。以下、単に「甲10」という。)
特開昭52-57282号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第25号証。以下、単に「甲25」という。)
特開昭55-92719号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第26号証。以下、単に「甲26」という。)
特開2007-277309号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第27号証。以下、単に「甲27」という。)

2 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14?40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44?74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とするLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記白色顔料の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して100?300質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して500質量部以下であり、前記無機充填剤の平均粒径が250μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記補強材がガラス繊維であり、前記補強材の配合量が前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して10?100質量部であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とするLEDリフレクター。
【請求項9】
射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項8に記載のLEDリフレクター。
【請求項10】
成形後、ブラスト処理によりバリ取りが行われていることを特徴とする請求項8又は9に記載のLEDリフレクター。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のLEDリフレクターが装着されていることを特徴とするLED照明器具。」(【特許請求の範囲】)
(2)「本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、熱劣化による変色が小さく耐熱変色性に優れ、これを用いたLEDランプが長寿命であって、比較的安価でしかも材料の保存安定性、ハンドリング性、加工性に優れた汎用のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたLEDリフレクター、LED照明器具を提供することを課題とする。」(【0010】)
(3)「本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、LEDリフレクターとしたときの熱劣化による変色が小さく耐熱変色性に優れ、LEDランプが長寿命であって、安価で、樹脂組成物の保存安定性、ハンドリング性が良好で、トランスファー成形とともに射出成形が可能である等の加工性に優れたLEDリフレクター用樹脂組成物を得ることができる。」(【0023】)
(4)「以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂として、50℃以上で軟化を開始する不飽和アルキッド樹脂を用いている。
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物である。ここで乾式とは30℃以下の温度範囲において固体であり、粉砕加工や押出しペレット加工により粒状に加工できることを意味する。」(【0025】?【0026】)
(5)「不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和アルキッド樹脂と共重合性モノマー等の架橋剤とを混合して得られる。共重合性モノマーは、樹脂組成物作成時に他の混合物と共に樹脂に混合されるが、樹脂組成物作成前に樹脂と混合されていても良い。
不飽和アルキッド樹脂は、不飽和多塩基酸類、飽和多塩基酸類とグリコール類とを脱水縮合反応させて得られるものである。
不飽和多塩基酸類としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。
飽和多塩基酸類としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
本発明では、不飽和アルキッド樹脂の中でも、溶融粘度1000?2500cPの不飽和アルキッド樹脂を好適に用いることができ、特に、イソフタル酸系不飽和アルキッド樹脂、テレフタル酸系不飽和アルキッド樹脂を好適に用いることができる。
これらの不飽和アルキッド樹脂を用いることにより、成形性及び耐熱変色性に優れたLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。
不飽和アルキッド樹脂と混合する架橋剤としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニル系共重合性モノマーを用いることができる。
また、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの共重合性モノマーを用いることができる。さらにまた、これらのプレポリマーを用いることができる。
本発明では、特にジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマー、スチレンモノマーを好適に用いることができる。また、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
不飽和ポリエステル樹脂中の不飽和アルキッド樹脂と架橋剤の比率は質量比で99/1?50/50の範囲である。なお、架橋剤としてモノマーを用いる場合、モノマーの配合量が多くなると常温固形の乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物にならないため、モノマーの配合量は不飽和ポリエステル樹脂100質量部中10質量部以下とするのが好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して14?40質量%の範囲内である。」(【0027】?【0038】)
(6)「本発明では、白色顔料として酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上を配合する。
本発明では、これらの白色顔料のなかでも、特に酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムを好適に用いることができる。
酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンを挙げることができる。これらの中でも熱安定性に優れたルチル型酸化チタンを好適に用いることができる。
酸化アルミニウム、チタン酸バリウムは、例えば、公知のものであれば特に制限なく用いることができる。
白色顔料の平均粒径は、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは0.1?1.0μm、さらに好ましくは0.3?0.7μmの範囲である。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
本発明において、白色顔料の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは100質量部以上、より好ましくは100?300質量部の範囲である。
白色顔料の配合量をこの範囲内とすることにより、耐熱変色性に優れ、白色で高い反射率を有するLEDリフレクターとすることができる。
また本発明では、無機充填剤としてシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上を配合する。
本発明では、これらの無機充填剤のなかでも特にシリカを好適に用いることができ、これらのものとしては、例えば、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、破砕シリカ粉末、結晶シリカ粉末を挙げることができる。
無機充填剤の平均粒径は、好ましくは250μm以下、より好ましくは10?100μmの範囲である。平均粒径をこの範囲とすることにより、良好な成形性と、耐熱変色性及び耐湿性に優れたLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。なお、平均粒子径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
本発明において、無機充填剤の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは50質量部以上、より好ましくは50?250質量部の範囲である。
この配合範囲とすることにより、優れた成形性を有するLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができ、これを用いて成形することにより、優れた耐熱変色性と高い反射率を有するLEDリフレクターを得ることができる。
白色顔料と無機充填剤の配合量の合計は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して44?74質量%、好ましくは50?72質量%の範囲内である。
また、白色顔料と無機充填剤の配合量の合計に占める白色顔料の割合は30質量%以上、好ましくは40?85質量%の範囲内である。
さらに、白色顔料と無機充填剤を合わせた場合の配合量の合計量は不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは500質量部以下、より好ましくは100?400質量部の範囲である。白色顔料と無機充填剤の配合量の合計量をこの範囲とすることにより、適正な樹脂の流動性とすることができ、良好な成形性が得られる。」(【0042】?【0056】)
(7)「本発明に用いられる補強材としては、通常、BMC、SMC等のFRPに用いられる不飽和ポリエステル樹脂組成物の補強材として使用されるものであれば制限なく用いることができる。
これらものとしては、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー等を挙げることができ、これらの中でも、ガラス繊維を好適に用いることができる。
ガラス繊維としては、珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維を挙げることができ、これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものを用いることができる。
さらに、これらのガラス繊維に対して表面処理を施したものを用いることもできる。
本発明では、特に、繊維径10?15μmのEガラス繊維を酢酸ビニル等の収束剤にて収束し、シランカップリング剤にて表面処理した後、3?6mmにカットされたチョップドストランドを好適に用いることができる。
補強材の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは10?200質量部、より好ましくは10?100質量部、さらに好ましくは20?80質量部の範囲である。
この条件で補強材を用いることにより、強度特性に優れ、硬化収縮を抑え、優れた反射率を有するLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。」(【0060】?【0066】)
(8)「これに対し、本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式のペレット状であるため保存安定性に優れ、射出成形機のホッパーから投入するのみで成形が可能であるためハンドリング性に優れている。また、製造コストを低く抑えることができる。
また、熱硬化性樹脂のため、成形したLEDリフレクターのフレーム上にバリが発生するが、密着性が低いため容易にバリを除去することが可能である。
発生したバリの除去は、例えば、公知の方法により行うことができるが、なかでも不飽和ポリエステル樹脂組成物のバリ除去に広く実施されているブラスト処理により行うことが好ましい。
ブラスト処理としては、通常、バリ取りに用いられるブラスト処理法を用いることができ、これらのものとしては、例えばショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等を挙げることができる。
本発明のLED照明器具は、上記のようにして得られるLEDリフレクターを装着して構成されている。図1に、本発明のLED照明器具の例としてLED電球の概略断面図を示す。LEDリフレクター3は、リードフレーム1上に実装されたLED素子2の発光を効率よく反射するための反射板であり、その形状は実装されるLED素子2の光量や色、指向性特性等を考慮して適宜設計することができる。」(【0078】?【0082】)
(9)「<LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造>
表1に示す実施例1?9及び表2に示す比較例1?6のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、各配合成分、配合量にて配合し、配合物をシグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールにて混練しシート状の混練物を作成し、これを冷却・粉砕・整粒し粒状の樹脂組成物を作製した。
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)樹脂
不飽和アルキッド樹脂:テレフタル酸系不飽和アルキッド樹脂 日本ユピカ社製 ユピカ8552
エポキシ樹脂:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100) 日産化学工業(株)製 TEPCIC-S
ナイロン樹脂:ナイロン46樹脂(STANYL)
(2)架橋剤
架橋剤1:ジアリルフタレートプレポリマー ダイソー(株)製 ダップポリマー
架橋剤2:ジアリルフタレートモノマー ダイソー(株)製 ダップモノマー
架橋剤3:スチレンモノマー
(3)重合開始剤
ジクミルパーオキサイド(40%マスターバッチ) 日油(株)製 パークミルD40
(4)エポキシ樹脂硬化剤
ヘキサヒドロ無水フタル酸 新日本理化(株)製 リカシッドHH
(5)白色顔料
白色顔料1:酸化チタン(ルチル型酸化チタン 平均粒径0.4μm) タイオキサイドジャパン(株)製 Tioxide R-TC30
白色顔料2:酸化アルミニウム(平均粒径0.5μm)
白色顔料3:チタン酸バリウム(平均粒径0.4μm)
(6)無機充填剤
無機充填剤1:シリカ(溶融シリカ 平均粒径25μm) 電気化学工業(株)製 FB820
無機充填剤2:水酸化アルミニウム(平均粒径29μm)
(7)離型剤
離型剤:ステアリン酸亜鉛 堺化学工業(株)製 SZ-P
(8)補強材
補強材:ガラス繊維(3mm長) オーエンスコーニングジャパン社製 CS03IE830A」(【0086】?【0093】)

3 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】不飽和ポリエステル樹脂、ガラス繊維、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含有することを特徴とするランプ反射鏡用成形組成物。
【請求項2】不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移点が150℃以上、熱可塑性樹脂のガラス転移点が150℃以下である請求項1記載のランプ反射鏡用成形組成物。
【請求項3】不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移点が160℃以上であり、熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂(共重合体含む)及び酢酸ビニル樹脂(共重合体含む)から選択される少なくとも1つの樹脂を含有することからなり且つそのガラス転移点が120℃?-10℃である、請求項2記載のランプ反射鏡用成形組成物。
【請求項4】ガラス繊維の繊維径が6?18μmである請求項1記載のランプ反射鏡用成形組成物。
【請求項5】請求項1?4のいずれかに記載の組成物を成形硬化して反射鏡基体を得、該基体の内部表面に金属性反射被膜を形成するランプ反射鏡の製造方法。
【請求項6】請求項1?4のいずれかに記載の組成物を成形硬化してなる反射鏡基体と、その内部表面に金属性反射被膜とを有することを特徴とするランプ反射鏡。」(【特許請求の範囲】)
(2)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ランプ反射鏡として用いられる不飽和ポリエステル樹脂には、ランプ点灯時の発熱温度(約180℃)に耐え得る耐熱性が要求されるにもかかわらず、これら提案されるポリエステル成形組成物をランプ反射鏡基体材料として用いると、ランプ点灯時の灯室内の熱上昇による熱変形が発生する。また、ランプ反射鏡を射出成形する時発生する熱硬化収縮により基材が収縮し、寸法安定性や表面平滑性が損なわれることが判明した。その結果、反射鏡表面に歪みが発生し、その歪みによって反射鏡表面が凹凸面となって電球からの照射光が正確に制御できず、従って対向車両に対する眩光を生じたり、配光規格を満足しないという問題があった。特に、この種の高強度ランプ反射鏡は光学的に狂いのない精度の高い反射面を有することが要求されることから、優れた耐熱性、寸法安定性、表面平滑性及び強度を有する反射鏡基体を提供できる熱硬化性プラスチック成形材料の開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、不飽和ポリエステル樹脂、ガラス繊維、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含有する組成物によって、ランプ反射鏡を成形することを特徴とするものである。本発明に従い特に熱可塑性樹脂を配合することにより、成形組成物の熱硬化時に発熱により熱可塑性樹脂が膨張して系全体の硬化収縮を補償し、得られる反射鏡の体積を一定に保ち、光学的に狂いのない高精度な反射面を構成することができる。」(【0003】?【0004】)
(3)「上述の通り、本発明では、不飽和ポリエステル樹脂の硬化時の収縮を抑制する目的で熱可塑性樹脂を添加する。熱可塑性樹脂の例としては、スチレン系共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル又はポリメタクリル酸メチル系共重合体、変性ABS樹脂、セルロースアセテートブチレート、ポリカプロラクトン、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、変性ポリウレタン等を挙げることができる。特に、ポリメチルメタクリレート等の如きアクリル系樹脂(共重合体を含む。例えばスチレン-アクリル共重合体、スチレン-ポリエステル共重合体等)及びポリ酢酸ビニル等の如き酢酸ビニル樹脂(共重合体を含む。例えばスチレン-酢酸ビニル共重合体等)が、分散性、低収縮性、剛性の点で好ましい。熱可塑性樹脂の添加量は、本成形組成物中、好ましくは2?12質量%、より好ましくは2.4?8質量%である。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂の硬化時の自己発熱温度(140?180℃)により熱膨張を起こす。熱可塑性樹脂のかかる性能を充分に発揮するには、そのガラス転移点が150℃以下、特に120℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が150℃以下であると、成形時に熱可塑性樹脂の充分な熱膨張が得られ、不飽和ポリエステルの硬化収縮を充分に抑制することができる。
本発明では、基材の収縮量と熱可塑性樹脂の膨張量をそれぞれコントロールすることにより、ランプ反射鏡の寸法安定性及び表面平滑性を高めることができる。
特に、不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移点を150℃以上とすることで、ランプ点灯時の反射鏡基体の弾性率の低下を防止し、反射鏡基体の熱変形を有効に防止することができるとともに、ガラス転移点150℃以下の熱可塑性樹脂を混合することにより、熱硬化性樹脂の硬化収縮を有効に防止し、精度良い反射面を形成できる。即ち、耐熱性と寸法安定性の相反する性能をバランスよく両立できるものである。」(【0010】?【0012】)

4 甲1に記載された発明
上記2(1)からみて、甲1には「不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14?40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44?74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであり、射出成形法によりLEDリフレクターを成形するための不飽和ポリエステル樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

5 甲1発明との対比
(1)本件特許発明1
ア 甲1発明の「不飽和ポリエステル樹脂」は、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであり、上記2(5)にあるように、当該不飽和アルキッド樹脂は、不飽和多塩基酸類、飽和多塩基酸類とグリコール類とを脱水縮合反応させて得られるものであり、また、当該架橋剤としては、特にジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマー、スチレンモノマーを好適に用いることができる。
そうしてみると、甲1発明の「不飽和ポリエステル樹脂」、「不飽和アルキッド樹脂」、「架橋剤」は、それぞれ、本件特許発明1の「不飽和ポリエステル樹脂」、「不飽和ポリエステル」、「共重合性単量体及び/又は共重合性多量体」に相当すると認められる。
イ 甲1発明の「無機充填剤」、「射出成形法によりLEDリフレクターを成形するための不飽和ポリエステル樹脂組成物」は、それぞれ、本件特許発明1の「無機充填材」、「LED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物」に相当する。
ウ 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体とからなり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。」
[相違点]
本件特許発明1では、不飽和ポリエステル樹脂が熱可塑性樹脂を含むのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。
エ 上記相違点について検討する。
不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化時の収縮を防ぐために、不飽和ポリエステル樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含有させることは周知の技術事項である(例えば、上記3(2)?(3)参照、甲6の126頁及び143頁参照、甲7の27?29頁参照、甲8の174?175頁、甲9の79頁、甲10の685頁左欄2?11行の訳文参照)が、LED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物の分野において、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化時の収縮を防ぐために、不飽和ポリエステル樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含有させることは、特許異議申立書に添付されたいずれの刊行物にも記載も示唆もされていない。
そうしてみると、LED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する甲1発明において、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化時の収縮を防ぐために、不飽和ポリエステル樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含有させることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
仮に、甲1発明において、不飽和ポリエステル樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含有させることが当業者にとって容易であったとしても、それにより奏される造粒性や保存形状安定性に優れるという本件特許発明1の効果は、いずれの刊行物からも、当業者が容易に予測し得たものとはいえない。本件特許の明細書の実施例の記載からみて、熱可塑性樹脂の配合量が3?40重量部である本件特許発明1において造粒性や保存形状安定性に優れることが技術的に裏付けられており、この効果はいずれの刊行物からも、当業者が容易に予測し得たものであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲1、甲2及び甲6?10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件特許発明3?13
本件特許の訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項3?13に係る本件特許発明3?13は、本件特許発明1と同様に、甲1?10及び甲25?27に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 結語
上記第5のとおりであるから、取消理由によっては、訂正後の請求項1、3ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1、3ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項2に対してする特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体と、熱可塑性樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステルと、前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体との合計量が97?60重量部、前記熱可塑性樹脂が3?40重量部であり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むことを特徴とするLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全量に対して10?35重量%であり、前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量が、組成物全量に対して50?80重量%であり、かつ前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?50重量%であることを特徴とする請求項1記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は3項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、50℃以下の温度範囲において固体状であることを特徴とする請求項1、3又は4項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合性単量体及び/又は共重合性多量体の合計量に対して常温にて液体の前記共重合性単量体が50重量%以上であることを特徴とする請求項1、3?5項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機充填材と前記白色顔料の配合量の合計量に占める前記白色顔料の割合が10?29重量%であることを特徴とする請求項1、3?6項のいずれか1項記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1、3?7項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1、3?8項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機充填材の平均粒径が0.1?50μmの範囲であることを特徴とする請求項1、3?9項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、及びそれらの共重合体からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1、3?10項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1、3?11項のいずれか1項に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる粒状物。
【請求項13】
請求項12に記載のLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物よりなる粒状物を成形してなることを特徴とするLED反射板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-24 
出願番号 特願2012-157440(P2012-157440)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 忠  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 守安 智
前田 寛之
登録日 2015-06-12 
登録番号 特許第5758355号(P5758355)
権利者 日本ユピカ株式会社
発明の名称 LED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物、前記組成物からなる粒状物、及び前記粒状物を成形してなるLED反射板  
代理人 坂野 博行  
代理人 坂野 博行  

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