ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K |
---|---|
管理番号 | 1322258 |
異議申立番号 | 異議2015-700049 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-09-29 |
確定日 | 2016-09-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5764532号発明「粘膜適用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5764532号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、5-12〕、4について訂正することを認める。 特許第5764532号の請求項1?3、5?14に係る特許を維持する。 特許第5764532号の請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5764532号の発明についての出願は、平成17月3月3日を出願日とする特願2005-59757号の一部を、特許法第44条第1項の規定により、平成24年7月2日に新たな特許出願とした分割出願であって、平成27年6月19日にその発明について特許の設定登録がなされ、その特許に対し、平成27年9月29日にジュネスプロパティーズ株式会社より特許異議の申立てがなされた。 その後の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成27年10月26日 通知書 平成27年11月 6日 特許異議申立書を対象とする手続補正 (特許異議申立人) 平成28年 5月9日 取消理由通知 平成28年 6月24日 訂正請求(本件特許権者) 意見書の提出(本件特許権者) 平成28年 8月 3日 意見書の提出(特許異議申立人) 第2 訂正請求について 1. 訂正の内容 <訂正事項1> 特許請求の範囲の請求項1に、「含有する」とあるのを、「含有し、(B)成分の含有量が、(A)成分1重量部に対して0.01?5重量部である、」と訂正する。 <訂正事項2> 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 <訂正事項3> 特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1乃至4」とあるのを、「請求項1乃至3」と訂正する。 <訂正事項4> 特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1乃至5」とあるのを、「請求項1乃至3、5」と訂正する。 <訂正事項5> 特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1乃至6」とあるのを、「請求項1乃至3、5、6」と訂正する。 <訂正事項6> 特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1乃至7」とあるのを、「請求項1乃至3、5乃至7」と訂正する。 <訂正事項7> 特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1乃至8」とあるのを、「請求項1乃至3、5乃至8」と訂正する。 <訂正事項8> 特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1乃至9」とあるのを、「請求項1乃至3、5乃至9」と訂正する。 <訂正事項9> 特許請求の範囲の請求項11に、「請求項1乃至10」とあるのを、「請求項1乃至3、5乃至10」と訂正する。 <訂正事項10> 特許請求の範囲の請求項12に、「請求項1乃至11」とあるのを、「請求項1乃至3、5乃至11」と訂正する。 3. 訂正の適否の判断 以下、本件訂正請求が適法であるかについて検討する。 (1) 一群の請求項について 訂正後の請求項2、3、5?12は、訂正事項1を含む訂正後の請求項1の記載を直接引用するものである。 したがって、請求項1?3、5?12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の実質的な拡張又は変更の存否 (2-1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された(B)成分について、その含有量を「(A)成分1重量部に対して0.01?5重量部である」と限定するものである。 このため、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする。 また、本件特許明細書の【0014】には、 「本発明の粘膜適用組成物に用いるテルペノイドとしては、メントール、ボルネオール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール等のモノテルペン、ファルネソール、ネロリドールなどのセスキテルペン、フィトール、センブレンなどのジテルペンなどが挙げられ、これらのテルペノイドの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもメントール、ボルネオール、ゲラニオール又はカンフルから選択される少なくとも1種のテルペノイドが好ましい。これらのテルペノイドは、d体、l体、dl体のいずれでもよく、また、これらのテルペノイドを含有した精油(ペパーミント油やユーカリ油、ベルガモット油やローズ油など)としても配合することができる。」と記載されていて、 本件特許明細書における「テルペノイド」は、(B)成分である「メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオール」を含む用語と認められる。 そして、本件特許明細書の【0015】には、 「本発明に用いるテルペノイドの粘膜適用組成物への含有量は、種類や剤形などによって異なるので一概に規定できないが、通常、粘膜適用組成物中の濃度として、0.0001?10%、好ましくは0.0005?5%、より好ましくは0.001?3%、さらに好ましくは0.001?1%、特に好ましくは0.005?1%程度で用いることができる。また、テルペノイドは、カルボキシメチルセルロースナトリウム1重量部に対して、好ましくは0.001?10重量部、より好ましくは0.01?5重量部、さらに好ましくは0.02?3重量部、特に好ましくは0.05?2重量部程度で用いることができる。」と記載され、「テルペノイド」の含有量が、「カルボキシメチルセルロースナトリウム1重量部に対して」、「0.01?5重量部」という範囲が記載されている。 このため、訂正事項1は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2-2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする。 また、訂正事項2は、新規事項を追加するものではないから、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2-3)訂正事項3?10について 訂正事項3?10は、多数項を引用している特許請求の範囲の請求項5?12の引用先である請求項4を削除し、引用請求項数を減少する訂正である。 このため、訂正事項3?10は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3?10は、新規事項を追加するものではないから、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3. 小括 したがって、請求項1?3、5?12からなる一群の請求項に係る訂正、及び、請求項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第4項、及び同法同条第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するので、請求項1?3、5?12からなる一群の請求項を訂正すること、及び、請求項4について訂正すること、を認める。 第3 本件発明 本件訂正請求が認められたので、本件特許の請求項1?14に係る発明は訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 (以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明14」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。) 「【請求項1】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 を含有し、 (B)成分の含有量が、(A)成分1重量部に対して0.01?5重量部である、コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項2】 (A)成分の含有量が0.001?10%である請求項1に記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項3】 (B)成分の含有量が0.0001?10%である請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 さらに、(C)非イオン性界面活性剤を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項6】 20℃での粘度が1.5mPa・s以上300mPa・s以下である請求項1乃至3、5のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項7】 (A)成分の25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?8000mPa・sである請求項1乃至3、5、6のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項8】 (A)成分のエーテル化度が0.1?3.0である請求項1乃至3、5乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項9】 さらに、緩衝剤、無機塩類、エチレンジアミン酢酸誘導体、エチレンジアミン酢酸誘導体の塩、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分、収斂薬成分、ビタミン類、アミノ酸、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、増粘剤、糖類、多糖類、糖アルコール類、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、及び安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1乃至3、5乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項10】 濡れ改善用である請求項1乃至3、5乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項11】 ドライアイの予防又は改善用である請求項1乃至3、5乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項12】 点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である請求項1乃至3、5乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項13】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 をコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物中に配合することにより、コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物にコンタクトレンズの濡れ改善作用を付与する方法。 【請求項14】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 をコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物中に配合することにより、コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物にコンタクトレンズ上での摩擦を低減させる作用を付与する方法。」 第4 取消理由通知の概要 当審が、平成28年5月9日付けで通知した取消理由の概要は、以下(1)(2)のとおりである。 (1)本件特許の請求項1?6、9?12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)本件特許の請求項7、8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1: 特開2004-359629号公報(平成27年11月9日に提出された異議申立書の手続補正書の「甲第1号証」。) 刊行物2: 薬事審査研究会、「医薬品製造指針 別冊 一般医薬品製造(輸入)承認基準 2000年版」、株式会社じほう、2000年、第94-105頁 (平成27年11月9日に提出された異議申立書の手続補正書の「甲第2号証」。) 刊行物3: 「大衆薬事典2004?’05(一般用医薬品集第9版)」、株式会社じほう、2004年、第233-262頁 (平成27年11月9日に提出された異議申立書の手続補正書の「甲第3号証」。) 刊行物4: 第一工業製薬株式会社が製造する商品名「セロゲン」(カルボキシメチルセルロースナトリウム)のカタログ、第一工業製薬株式会社発行 (平成27年11月9日に提出された異議申立書の手続補正書の「甲第6号証」。) 刊行物5: 特開2006-104114号公報 (平成27年11月9日に提出された異議申立書の手続補正書の「甲第10号証」。) 第5 当審の判断 請求項4は訂正により削除されたため、 請求項1?3、5、6、9?12に係る特許は、取消理由の理由(1)(特許法第29条第1項第3号)により、取り消すべきか否か(下記1.)、 請求項7、8に係る特許は、取消理由の理由(2)(特許法第29条第2項)により、取り消すべきか否か(下記2.)、 加えて、平成28年8月3日付けで特許異議申立人が提出した意見書において主張する、請求項1?3、5、6、9?12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるか否か(下記3.) について、以下で検討する。 1. 取消理由の理由(1)について(本件特許発明1?3、5、6、9?12) (1) 甲第1、2、6、10号証の記載事項 (1-1)甲第1号証の記載事項 (甲1-a) 「近年、パソコンの普及やコンタクトレンズ装用人口の増加等に伴い、いわゆるドライアイ症状に悩む人が増えている。そのような症状の緩和には、多くの場合点眼薬(または点眼剤)等の局所適用製剤が用いられる。目の乾燥を効果的に緩和するために、それらの製剤には、適用部位における滞留性の向上を目的として粘稠化剤を配合したり、ドライアイに起因する角膜上皮障害に対し治療効果の高い薬物が配合される機会が多いが、これらの効果を併せ持つ物質としてヒアルロン酸ナトリウムがしばしば用いられる。」 【0003】 (甲1-b) 「【発明が解決しようとする課題】 本発明は、界面活性剤とヒアルロン酸類とを含有する粘膜適用液状組成物の粘度を安定に維持することを目的とするものである。 具体的には、本発明は界面活性剤存在下でのヒアルロン酸類の分解が抑制された粘膜適用液状組成物を提供することを目的とするものである。 本発明はまた界面活性剤とヒアルロン酸類とが配合された粘膜適用液状組成物中のヒアルロン酸類を安定化する方法を提供することを目的とするものである。」 【0007】 (甲1-c) 「本発明の粘膜適用液状組成物は、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品等に使用される様々な成分や添加物を任意に選択、併用して製剤化することが可能である。以下に具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。 糖類:例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、セロビオース、ラクトース、プルラン、ラクツロース、ラフィノース、マルチトール等、及びその薬理学的に許容される塩類等。 増粘剤:例えば、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダルマンガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、セラミド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、リボ核酸、デオキシリボ核酸、カルボキシビニルポリマー等、及びその薬理学的に許容される塩類等。 防腐・抗菌・殺菌剤:例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、アクリノール、塩化メチルロザニリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、アルキルポリアミノエチルグリシン、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、クロロブタノール 、イソプロパノール、エタノール、フェノキシエタノール、リン酸ジルコニウムの銀等の担持体、チメロサール、ポビドンヨード、デヒドロ酢酸、クロルキシレノール、クロロフェン、フェノール、レゾルシン、オルトフェニルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール、スルファミン、リゾチーム、ラクトフェリン、トリクロサン、8-ヒドロキシキノリン、ウンデシレン酸、カプリル酸、プロピオン酸、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、ソルビン酸トリクロカルバン、ハロカルバン、チアベンダゾール、ポリミキシンB、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、ポリリジン、過酸化水素、第四級アンモニウムポリマー(塩化ポリドロニウム(ポリクォーテリウム-1)、Glokill(商品名、ローディア社製)、ユニセンスCP(商品名、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、センカ社製)、WSCP(商品名、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン-(ジメチルイミニオ)エトレンジクロリド]を約60重量%含有、バックマン・ラボラトリーズ社製))、ビグアニド化合物(コスモシルCQ(商品名、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩を約20重量%含有、アビシア社製))等、及びその薬理学的に許容される塩類等が挙げられる。 」 【0038】?【0041】 (甲1-d) 「さらに、必要に応じて香料または清涼化剤や局所麻酔剤等を加えることができる。 香料又は清涼化剤:例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、メントン等が挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよいが、清涼感や香りなどの官能面や安全性の面から、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール及びdl-ボルネオール、ゲラニオールが好ましい。また、l-メントール、d-カンフル及びd-ボルネオールが特に好ましい。また、前記モノテルペンは、精油に含有した状態で使用することもでき、好ましい精油は、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ハッカ油、ケイヒ油、ローズ油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油等、これらのモノテルペンを1種類または2種類以上組み合わせて用いることもできる。 局所麻酔剤:例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸オキシブプロカイン等。」 【0049】 (甲1-e) (実施例17) (甲1-f) 「【発明の効果】 本発明によれば、ヒアルロン酸類と界面活性剤とを含有する粘膜適用液状組成物中でのヒアルロン酸類の低分子化又は分解を抑制し該組成物の粘度低下を阻止し得るので、これらの成分を含有する粘膜適用液状組成物の薬効及び官能性を長期間良好に維持することができる。従って、より優れた品質の粘膜適用液状組成物の供給が可能となる。」 【0067】 (1-2)甲第2号証の記載事項 (甲2-a) 「d)用法及び用量 i)一般点眼薬,抗菌性点眼薬及び人工涙液にあっては,1日3?6回の範囲で点眼するものとし,1回の滴数は1?3滴の範囲内で滴数を明記すること。具体的には下記例を参考に申請されたい。 例 1日3?6回,1回1?3滴 点眼する。 ii)コンタクトレンズ装着液にあっては,具体的方法を記載するものとする。具体的には下記例を参考に申請されたい。 例 ・コンタクトレンズの両面を本液の1?2滴でぬらしたのち装着する。 ・コンタクトレンズの両面を本液の1?2滴でぬらしたのち,一度水洗いしてからレンズ内面に1滴つけて装着する。 iii)洗眼薬にあっては,1日3?6回の範囲で洗眼するものとし,「1回○?○mL」のように1回の使用量を明記すること。また,洗眼カップなど適切な用具の添付あるいはその使用は差し支えないが,その使用に当たっての具体的方法を記載するとともに,形状,大きさ等を記載した図面を添付すること。(H5.1.29 薬審85)」 (第96頁下から第14行?最下行) (甲2-b) 「e)効能又は効果 i)一般点眼薬の効能又は効果は,第7-4表のI欄の範囲とする。 ただし,次の表の右欄に掲げる有効成分のいずれか一種が配合されていない場合には,同表左欄に掲げる効能又は効果をうたうことはできない。 」 (第97頁第2?9行) (甲2-c) (第102頁第7-4表) (1-3)甲第6号証の記載事項 (甲6-1) (第3頁) (1-4)甲第10号証の記載事項 (甲10-1) 「 カルボキシメチルセルロースナトリウムは市販のものを利用することができ、例えば第一工業製薬株式会社から販売されているセロゲン(登録商標)シリーズPR-S(25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?40mPa・s、エーテル化度0.70?0.85)、P-715A(25℃、2%水溶液の粘度が80mPa・s?140mPa・s、エーテル化度0.60?0.70)、F-SC(25℃、2%水溶液の粘度が300mPa・s?400mPa・s、エーテル化度0.70?0.85)、AG-GUM(25℃、2%水溶液の粘度が900mPa・s?1500mPa・s、エーテル化度0.70?0.85)等、ダイセル化学工業株式会社から販売されているCMCダイセルシリーズ、日本製紙ケミカル株式会社から販売されているサンローズFシリーズ等が利用できる。」 (【0012】) (甲10-2) (表4) (甲10-3) (表5) (2) 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、実施例17として、 「酢酸トコフェロール 0.030%(w/v) 塩化カリウム 0.050%(w/v) 塩化ナトリウム 適量 カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.000%(w/v) ヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量200万) 0.005%(w/v) ホウ酸 0.500%(w/v) ホウ砂 0.050%(w/v) 塩酸 適量 水酸化ナトリウム 適量 l-メントール 0.003%(w/v) d-カンフル 0.001%(w/v) クールミント 0.003%(w/v) ソルビン酸カリウム 0.100%(w/v) エデト酸ナトリウム 0.010%(w/v) ポリソルベート80 0.100%(w/v) である組成の点眼薬」(以下、「甲1発明」という。) が記載されている(記載事項(甲1-e))。 (3) 本件特許発明1 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 ・甲1発明における「点眼薬」について 甲1発明における「点眼薬」なる用語は、本願明細書【0025】において、「本発明の粘膜適用組成物は、・・・医薬品、医薬部外品、雑品等の各種分野において、・・・粘膜に適用される組成物に利用することができる。例えば、眼科用組成物としては、点眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる点眼剤を含む、また、点眼薬ともいう。)、・・・」と記載されていることからみて、本件特許発明1における「眼粘膜適用組成物」なる用語に包含される。 ・甲1発明における「l-メントール」「d-カンフル」「クールミント」について 甲1発明における「l-メントール」「d-カンフル」は、本件特許発明1における「メントール」「カンフル」であって、本件特許発明1における(B)成分に相当する。また、甲1発明における「クールミント」は、甲第1号証には、メントール、カンフル等のモノテルペンを含有する精油であることが記載されているから、本件特許発明1における(B)成分を含有する精油であると理解できる。 そして、「クールミント」中の、(B)成分の含有量の正確な値が不明であるものの、甲1発明の「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の含有量を合計すると、0.007%(w/v)であるから、甲1発明における、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する、本件特許発明1における(B)成分の含有量は、0.007重量部よりも少ないと認められる。 したがって、本件特許発明1と、甲1発明とは、 「カルボキシメチルセルロースナトリウム、メントール、カンフルを含有する点眼薬」である点で一致し、以下i)、ii)の点で相違する。 i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について、本件特許発明1は、0.01?5重量部であるのに対して、甲1発明は、0.007重量部よりも少ない点 ii)用途について、本件特許発明1は、「コンタクトレンズ用」であるのに対して、甲1発明は、「コンタクトレンズ用」であるとは特定していない点 そして、上記ii)の点について検討するまでもなく、本件特許発明1と甲1発明とは、少なくとも上記i)の点で相違するのは明らかである以上、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (4) 本件特許発明2?3、5、6、9?12 本件特許発明2?3、5、6、9?12は、本件特許発明1を引用するものであり、本件特許発明1の構成要件を全て備え、さらに特定事項を付加するものであるから、上記(3)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。 (5) 小括 したがって、取消理由の理由(1)によっては、請求項1?3、5、6、9?12に係る特許を取り消すことはできない。 2. 取消理由の理由(2)について(本件特許発明7、8) (1) 本件特許発明7、8 本件特許発明7、8と、甲1発明とを対比する。 本件特許発明7、8は、本件特許発明1を引用するから、本件特許発明7、8と、甲1発明とは、上記1.(3)のとおり、 「カルボキシメチルセルロースナトリウム、メントール、カンフルを含有する点眼薬」である点で一致し、 以下i)、ii)の点に加え、以下iii)の点でも相違する。 i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について、本件特許発明7、8は、0.01?5重量部であるのに対して、甲1発明は、0.007重量部よりも少ない点 ii)用途について、本件特許発明7、8は、「コンタクトレンズ用」であるのに対して、甲1発明は、「コンタクトレンズ用」であるとは特定していない点 iii)カルボキシメチルセルロースナトリウムについて、 本件特許発明7では、「25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?8000mPa・sである」、本件特許発明8では、「エーテル化度が0.1?3.0である」と特定するのに対して、甲1発明では、その特定がない点 i)?iii)の点について検討する。 i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について 甲第1号証では、「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」が香料又は清涼化剤であることは記載されているものの(記載事項(甲1-d))、香料又は清涼化剤の含有量の範囲は記載されていない。 加えて、甲第1号証には、解決しようとする課題として、界面活性剤とヒアルロン酸類とを含有する粘膜適用液状組成物の粘度を安定に維持すること(記載事項(甲1-b))、香料又は清涼化剤は、必要に応じて添加されることが記載されているから(記載事項(甲1-d))、甲1発明における香料又は清涼化剤である「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」は必須成分ではなく、甲1発明は特に清涼感が求められる点眼薬でもないと理解できる。また、点眼薬の分野において、香料又は清涼化剤を0.01%(w/v)以上にして清涼感を高めなければならないことが自明の課題であるともいえない。このため、甲1発明の「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の総含有量を、甲1発明よりも高い0.01%(w/v)以上に設定するという動機付けを見いだせない。 一方、甲第1号証では、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」が増粘剤の一つであることは記載されているものの、増粘剤の含有量の範囲は記載されていない(記載事項(甲1-c))。 さらに、具体的に実施例において、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」を含有する点眼剤が記載されているのは実施例17のみで、他の実施例で記載される点眼剤は「カルボキシメチルセルロースナトリウム」を含有すらしないから、甲1発明の「カルボキシメチルセルロースナトリウム」に特に着目し、当該成分の含有量を低くすることで、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の含有量を高めるという動機付けもない。 。 以上のことから、甲1発明において、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の含有量を、0.01%(w/v)以上に設定することは、当業者が容易に想到し得なかったと認められる。 ii)用途について 甲第2号証に記載される眼科用薬の一般用医薬品の製造(輸入)承認基準によると、点眼して使用する「点眼薬」に相当する製剤には「一般点眼薬」「抗菌性点眼薬」「人工涙液」があること(記載事項(甲2-a))が規定されている。中でも「一般点眼薬」は、「効能又は効果」として「ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感」とうたうことができ、ハードコンタクトレンズへの使用が適切であることを立証する資料を添付することを、当該基準では求めていない(記載事項(甲2-b)(甲2-c))。このため、「一般点眼薬」に分類される一般用医薬品は、ハードコンタクトレンズへの使用が適切であることを立証する資料なく、ハードコンタクトレンズ用として製造できることは、本件出願時の当業者の技術常識であったといえる。 言い換えると、「一般点眼薬」に分類される一般用医薬品は、ハードコンタクトレンズ用点眼薬と実質的に区別できないということができる。 そこで、甲1発明の点眼薬を検討する。 甲第3号証には、本件出願時前に市販されていた「一般点眼薬」が挙げられ、甲1発明における「酢酸トコフェロール」を有効成分として、甲1発明における「塩化カリウム」、「塩化ナトリウム」、「ホウ酸」、「ホウ砂」、「塩酸」、「水酸化ナトリウム」、「l-メントール」、「d-カンフル」、「エデト酸ナトリウム」、「ポリソルベート80」を添加物として含む「一般点眼薬」が多く記載されており、甲1発明のこれら成分は「一般点眼薬」の有効成分、添加物として広く使用されていた成分であるといえる。 また、これら有効成分、添加物以外の甲1発明の成分、「ヒアルロン酸ナトリウム」「カルボキシメチルセルロースナトリウム」「ソルビン酸カリウム」「クールミント」は、いずれも低濃度であるし、甲第1号証には、「ヒアルロン酸ナトリウム」は、粘稠剤として(記載事項(甲1-a))、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は増粘剤として(記載事項(甲1-c))、「ソルビン酸カリウム」は防腐・抗菌・殺菌剤として(記載事項(甲1-c))、「クールミント」は香料又は清涼化剤として(記載事項(甲1-d))、眼科用組成物において使用されていたことが、甲第1号証に記載されているから、これら成分は有効成分ではないと、当業者は理解するものである。 以上のことから、甲1発明は、医療用医薬品ではなく、一般用医薬品の「一般点眼薬」に分類される点眼薬に該当すると当業者は理解するものであって、ハードコンタクトレンズ用点眼薬である点で、本件特許発明7、8と実質的に区別できない。 よって、上記ii)の点は、実質的な相違点とはいえない。 iii)カルボキシメチルセルロースナトリウムについて 第一工業製薬株式会社のカタログである甲第6号証には、医薬品工業用のカルボキシメチルセルロースナトリウム「セロゲンPR-S」「セロゲンP-715A」「セロゲンF-SC」「セロゲン AGガムM」「セロゲンP-815C」が記載されているところ(記載事項(甲6-1))、出願日が平成16年10月4日である甲第10号証には、上記の製品が当該出願日時点において既に市販されていたことが記載されている(記載事項(甲10-1)?(甲10-3))。すなわち、甲第6号証に記載された、カルボキシメチルセルロースナトリウム「セロゲンPR-S」「セロゲンP-715A」「セロゲンF-SC」「セロゲン AGガムM」「セロゲンP-815C」は、本件特許発明の出願時において、医薬品工業用のカルボキシメチルセルロースナトリウムとして広く使用されていたものであると認められる。そして、これら製品は、いずれも本件特許発明7、8で特定する粘度、エーテル化度を有するから、本件特許発明7、8で特定する粘度、エーテル化度は、医薬品工業用のものとしては一般的なものといえる。 してみると、甲1発明の点眼薬に使用するカルボキシメチルセルロースナトリウムとして、「25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?8000mPa・sである」もの、「エーテル化度が0.1?3.0である」ものを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。 したがって、上記「ii)用途について」は、本件特許発明7、8と甲1発明との実質的な相違点ではなく、上記「iii)カルボキシメチルセルロースナトリウムについて」の検討のとおり、甲1発明の点眼薬に使用するカルボキシメチルセルロースナトリウムとして、「25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?8000mPa・sである」もの、「エーテル化度が0.1?3.0である」ものを当業者が適宜選択できたとしても、 上記「i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について」の検討のとおり、甲1発明において、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の含有量を、0.01%(w/v)以上に設定することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 次に、本件特許発明7、8の効果についても、以下で検討する。 甲第1号証には、点眼薬等の粘膜適用液状組成物において、ヒアルロン酸類の低分子化又は分解を抑制し、粘度を安定に維持できることが効果として記載され(記載事項(甲1-f))、コンタクトレンズ表面や角膜表面の濡れに関する記載はない。 一方、本件特許明細書【0009】には、本件特許発明1の効果について、「本発明の粘膜適用組成物は、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともにテルペノイドを含有することによってコンタクトレンズ表面や角膜表面の濡れを改善することができる。」と記載されており、試験例1では、酸素透過性ハードコンタクトレンズを用いて、カルボキシメチルセルロースナトリウムとl-メントールとを含有する試験溶液は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有しない試験溶液やl-メントールを含有しない試験溶液と比較して、濡れ持続時間が長いこと、試験例2では、含水率38%のポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルゲルを用いて、カルボキシメチルセルロースナトリウムとl-メントールとを含有する試験試料の摩擦を低減させる効果を実際に確認している。 このため、本件特許発明7、8の効果は、甲1発明の有する効果と異質なものであるといえ、当業者が予測できたものではない。 したがって、本件特許発明7、8は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 小括 したがって、取消理由の理由(2)によっては、請求項7、8に係る特許を取り消すことはできない。 3. 請求項1?3、5、6、9?12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるか否かについて (1) 本件特許発明1 上記1.で述べたとおり、本件特許発明1と、甲1発明とは、 「カルボキシメチルセルロースナトリウム、メントール、カンフルを含有する点眼薬」である点で一致し、以下i)、ii)の点で相違する。 i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について、本件特許発明1は、0.01?5重量部であるのに対して、甲1発明は、0.007重量部よりも少ない点 ii)用途について、本件特許発明1は、「コンタクトレンズ用」であるのに対して、甲1発明は、「コンタクトレンズ用」であるとは特定していない点 そして、i)、ii)の点の検討は、上記2.(1)の「i)(A)成分「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する(B)成分の含有量について」、「ii)用途について」で述べたとおりであって、甲1発明において、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」1重量部に対する「l-メントール」、「d-カンフル」、「クールミント」の含有量を、0.01%(w/v)以上に設定することは、当業者が容易に想到し得なかったと認められる。 また、本件特許発明1の効果も、上記2.での検討と同様、甲第1号証には、コンタクトレンズ表面や角膜表面の濡れに関する記載はないから、甲1発明の有する効果と異質なものであるといえ、当業者が予測できたものではない。 したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 特許発明2、3、5、6、9?12 本件特許発明2、3、5、6、9?12は、本件特許発明1を引用するものであり、本件特許発明1の構成要件を全て備え、さらに特定事項を付加するものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3) 小括 よって、請求項1?3、5、6、9?12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。 第6 むすび したがって、取消理由(1)によっては、請求項1?3、5、6、9?12に係る特許を取り消すことはできない。また、取消理由(2)によっては、請求項7、8に係る特許を取り消すことはできない。 加えて、他に請求項1?3、5?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項4に係る特許は存在しなくなったので、当該特許に関しては、特許異議の申し立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 を含有し、 (B)成分の含有量が、(A)成分1重量部に対して0.01?5重量部である、 コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項2】 (A)成分の含有量が0.001?10%である請求項1に記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項3】 (B)成分の含有量が0.0001?10%である請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 さらに、(C)非イオン性界面活性剤を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項6】 20℃での粘度が1.5mPa・s以上300mPa・s以下である請求項1乃至3、5のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項7】 (A)成分の25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s?8000mPa・sである請求項1乃至3、5、6のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項8】 (A)成分のエーテル化度が0.1?3.0である請求項1乃至3、5乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項9】 さらに、緩衝剤、無機塩類、エチレンジアミン酢酸誘導体、エチレンジアミン酢酸誘導体の塩、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分、収斂薬成分、ビタミン類、アミノ酸、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、増粘剤、糖類、多糖類、糖アルコール類、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、及び安定剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1乃至3、5乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項10】 濡れ改善用である請求項1乃至3、5乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項11】 ドライアイの予防又は改善用である請求項1乃至3、5乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項12】 点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である請求項1乃至3、5乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物。 【請求項13】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 をコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物中に配合することにより、コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物にコンタクトレンズの濡れ改善作用を付与する方法。 【請求項14】 (A)カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに (B)メントール、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも一種 をコンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物中に配合することにより、コンタクトレンズ用眼粘膜適用組成物にコンタクトレンズ上での摩擦を低減させる作用を付与する方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-09-07 |
出願番号 | 特願2012-148564(P2012-148564) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 前田 亜希 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
服部 智 松澤 優子 |
登録日 | 2015-06-19 |
登録番号 | 特許第5764532号(P5764532) |
権利者 | ロート製薬株式会社 |
発明の名称 | 粘膜適用組成物 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 坂西 俊明 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 坂西 俊明 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 清水 義憲 |