• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01C
管理番号 1322266
異議申立番号 異議2016-700085  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-02 
確定日 2016-09-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5757949号発明「種子の制御された湿潤化」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5757949号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、〔8?10〕、11、〔12?14〕、15、16、〔17?19〕、〔20、21〕、22、23、〔24、25〕、26、27、〔28、29〕について、訂正することを認める。 特許第5757949号の請求項1?10、12?26、28、29に係る特許を維持する。 特許第5757949号の請求項11、27に係る特許についての申し立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5757949号の請求項1?29に係る特許についての出願は、平成22年9月3日(パリ条約による優先権主張:外国庁受理 平成21年9月4日、欧州)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月12日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人山本英生より特許異議の申立てがされ、平成28年4月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年7月13日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その後、平成28年8月19日に異議申立人山本英生より意見書が提出されたものである。


2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?トのとおりである。

ア 訂正事項1
請求項1に「該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、」と記載されているのを、「該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、」に訂正する。

イ 訂正事項2
請求項2に「該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.95以上である、請求項1に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.95以上である、前記方法。」に訂正する。

ウ 訂正事項3
請求項3に「該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.98以上である、請求項2に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.98以上である、前記方法。」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項4に「該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.99?1.0の範囲である、請求項3に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.99?1.0の範囲である、前記方法。」に訂正する。

オ 訂正事項5
請求項5に「該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて20?50重量%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて20?50重量%である、前記方法。」に訂正する。

カ 訂正事項6
請求項6に「該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて25?40重量%である、請求項5に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて25?40重量%である、前記方法。」に訂正する。

キ 訂正事項7
請求項7に「該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて30?35重量%である、請求項6に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて30?35重量%である、前記方法。」に訂正する。

ク 訂正事項8
請求項8に「該水の量は、濡らすために使用された水の量の95?100重量%が、該種子の発芽の前に該種子により吸収される量である、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量は、濡らすために使用された水の量の95?100重量%が、該種子の発芽の前に該種子により吸収される量である、前記方法。」に訂正する。

ケ 訂正事項9
請求項11を削除する。

コ 訂正事項10
請求項12に「1以上のバインダーの量が、種子1kg当たり0.3?30gの範囲である、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
1以上のバインダーの量が、種子1kg当たり0.3?30gの範囲である、前記方法。」に訂正する。

サ 訂正事項11
請求項15に「該1以上の活性成分が、殺真菌剤、殺バクテリア剤、殺虫剤、殺線虫剤、消毒剤、殺微生物、殺齧歯動物剤、除草剤、誘引剤、防虫剤、植物成長制御剤、栄養素、植物ホルモン、ミネラル、植物抽出物、ダニ駆除剤又は殺ダニ剤、殺陸貝剤、発芽促進剤、フェロモン類、生物学的製剤、キトサン、キチンをベースとする製剤からなる群から選択される、請求項1?14のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該1以上の活性成分が、殺真菌剤、殺バクテリア剤、殺虫剤、殺線虫剤、消毒剤、殺微生物、殺齧歯動物剤、除草剤、誘引剤、防虫剤、植物成長制御剤、栄養素、植物ホルモン、ミネラル、植物抽出物、ダニ駆除剤又は殺ダニ剤、殺陸貝剤、発芽促進剤、フェロモン類、生物学的製剤、キトサン、キチンをベースとする製剤からなる群から選択される、前記方法。」に訂正する。

シ 訂正事項12
請求項16に「1以上の活性成分の量が、種子1kg当たり0.001?200gの範囲である、請求項1?15のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
1以上の活性成分の量が、種子1kg当たり0.001?200gの範囲である、前記方法。」に訂正する。

ス 訂正事項13
請求項17に「該種子が単子葉植物目から選択される、請求項1?16のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が単子葉植物目から選択される、前記方法。」に訂正する。

セ 訂正事項14
請求項20に「該種子が双子葉植物目から選択される、請求項1?16のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が双子葉植物目から選択される、前記方法。」に訂正する。

ソ 訂正事項15
請求項22に「該濡らす段階が、5分?72時間の範囲の間、行われる、請求項1?21のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、5分?72時間の範囲の間、行われる、前記方法。」に訂正する。

タ 訂正事項16
請求項23に「該濡らす段階が、10分?48時間の範囲の間、行われる、請求項22に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、10分?48時間の範囲の間、行われる、前記方法。」に訂正する。

チ 訂正事項17
請求項24に「該濡らす段階が、5?40℃において行われる、請求項1?23のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、5?40℃において行われる、前記方法。」に訂正する。

ツ 訂正事項18
請求項26に「該種子が、該濡らす段階の後にインキュベーション段階に付される、請求項1?25のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が、該濡らす段階の後にインキュベーション段階に付される、前記方法。」に訂正する。

テ 訂正事項19
請求項27を削除する。

ト 訂正事項20
請求項28に「該液体が、栄養素、遺伝子を誘発する剤、保護剤、及び成長調節剤からなる群から選択される1以上を含む水性溶液である、請求項1?26のいずれか1項に記載の方法。」と記載されているのを、「コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該液体が、栄養素、遺伝子を誘発する剤、保護剤、及び成長調節剤からなる群から選択される1以上を含む水性溶液である、前記方法。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「1以上のバインダー」について、「1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項2?8、10?18、20は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、さらに、「1以上のバインダー」について、「1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される」ことに限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 訂正事項9、19は、請求項を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)新規事項の追加の有無について
「1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される」ことは、訂正前の請求項11に記載されているから、訂正事項1?8、10?18、20は新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項9、19は、請求項を削除するものなので、新規事項の追加に該当しない。
したがって、訂正事項1?20は、特許法第120条5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
訂正事項1?20は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)一群の請求項について
訂正事項1?20は一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、〔8?10〕、11、〔12?14〕、15、16、〔17?19〕、〔20、21〕、22、23、〔24、25〕、26、27、〔28、29〕について訂正を認める。


3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?10、12?26、28、29に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲1?10、12?26、28、29に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし29に係る特許に対して平成28年4月8日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
ア 請求項2、3、5?7、12?14、16、22?25に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消されるべきものである。
イ 請求項27に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消されるべきものである。
ウ 請求項1、8?10、15?21、27に係る発明は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。
エ 請求項1?10、15?29に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づき、請求項11?14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術並びに甲第3号証(刊行物3)に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。

(3)刊行物(甲号証及び本件特許の審査過程における平成27年1月21日付け拒絶理由通知で引用された引用文献1)の記載

ア 刊行物1(甲第1号証:特表2007-522174号公報)について
(ア)刊行物1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
a 「【0003】
農民が直面する問題の1つは、種子処理のために使用した農薬が土壌または水中に急速に放出されることである。特に(例えば、種子浸漬法で)コメ種子を処理する場合、環境上の安全性だけでなく、土壌伝染菌類及び昆虫類に対する農薬による保護が喪失されるために農薬の放出は大きな問題である。
【0004】
国際特許出願公開第01/78507号は、種子処理剤用のポリマーとしてポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリウレタンの混合物を用いる非浸漬法で使用されるコメ種子処理剤を開示している。
・・・
【0006】
上記した製剤はいずれも農薬の環境への放出を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、農薬を種子上に保持し且つ環境(水または土壌)への相当量の放出、好ましくは種子浸漬及び/またはプライミング法中の放出を防止する種子処理剤を提供することである。」

b 「【0008】
上記した目的は、本発明において
(a)少なくとも1つの農薬、及び
(b)-40?5℃のガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムラテックスポリマー、アクリレートコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択されるカルボキシル基含有ポリマーまたはコポリマーを含む種子処理剤であって、
(i)前記アクリレートコポリマーが
(a’)アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸、或いはアクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸からなる群から選択される少なくとも2つのモノマーの組合せ、
(b’)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート;及び(メタ)アクリルアミド、例えばジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択されるモノマー、
(c’)2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマー、及び
(d’)スチレン及びスチレン誘導体、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-スチレンスルホン酸及びそのナトリウムまたはカリウム塩、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレンからなる群から選択されるモノマー
から構成され、-40?5℃のガラス転移温度を有するか、またはアクリレートコポリマーがコア/シェル構造を有しているならば内側コアは-60?5℃のガラス転移温度、外側コアは20?150℃のガラス転移温度を有し;
(ii)前記エチレン酢酸ビニルポリマーが酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸から構成され、-25?-5℃のガラス転移温度を有する前記種子処理剤を提供することにより達成される。」

c 「【0027】
農薬は、少なくとも1つの殺菌剤;少なくとも1つの殺虫剤;または殺菌剤と少なくとも1つの殺虫剤、少なくとも1つの除草剤及び/または薬害軽減剤からなる混合物;または除草剤及び/または薬害軽減剤と殺菌剤及び殺虫剤からなる群から選択される少なくとも1つの農薬からなる混合物のいずれかである。好ましくは、活性成分は少なくとも1つの殺菌剤、少なくとも1つの殺虫剤、または少なくとも1つの殺菌剤と少なくとも1つの殺虫剤からなる混合物である。」

d 「【0051】
本発明の製剤は、農作物種子、例えばコーン/トウモロコシ(スイートコーン及びフィールドコーン)、デュラムコムギ、大豆、小麦、大麦、エン麦、ライ麦、ライ小麦、コメ、ワタ、ヒマワリ、ジャガイモ、牧草地、アルファルファ、イネ科牧草、芝生、モロコシ、ナタネ、アブラナ属及びテンサイ;野菜種子、例えばトマト、レタス、アイスバーグレタス、コショウ、キュウリ、カボチャ、メロン、豆、ナシ、リーキ、ニンニク、タマネギ、キャベツ、ニンジン、サトウキビのような塊茎;特殊な作物種子、例えばタバコ;及び観賞植物種子、例えばパンジー、ホウセンカ、ペチュニア及びゼラニウムからなる群から選択されるような作物種子を処理するために使用され得る。好ましくは、種子プライミング法で種子処理剤を用いて処理され得る種子は、例えば野菜作物種子、タバコのような特殊な作物種子、観賞植物種子、テンサイ、コーン及びコメであり、最も好ましくはコメである。」

e 「【0060】
好ましい実施形態では、種子を本発明の製剤を用いて処理するためには基本的に4つの方法、すなわち湛水または浸漬、コーティング、乾式種子処理及び噴霧種子処理がある(検討のために、例えば日本植物防疫協会(“Pesticide Application Technology”,p.133-139(1998);ASGROW Reports:Seed treatments:Trends and Opportunities(2002)を参照されたい)。
・・・
【0062】
2.コーティングはコメ、野菜、ジャガイモ、球根に対して最も一般的に利用されている。この方法によれば、種子を清潔にした後、約3分間回転式ポットミキサーを用い、その後可逆回転させることにより希釈製剤(例えば、水中0.5%のWP製剤)をコートする。その後、種子を乾燥させる。
・・・
【0065】
本発明の特に好ましい実施形態では、種子は種子プライミング法で本発明の製剤を用いて処理され得る(検討のために、ASGROW Reports:Seed treatments:Trends and Opportunities(2002);Khanoら,International Journal of Agricultural Botany(2003);SeedQuest@seedquest.com.を参照されたい)。一般的には、前記方法は、
制御条件下で種子を水和した後種子を制御条件下で発芽させるステップ;
種子を本発明の製剤で処理するステップ;
を含み、各方法に応じて、まず水和を実施し、第2ステップで種子を本発明の製剤で処理しても、或いは種子を本発明の製剤で処理した後種子を水和してもよい。コメ種子処理の場合、まず種子を本発明の製剤で処理した後種子を水和することが好ましい。」

f 「【0070】
用語“播種前水和処理”、すなわちプライミングは、
a)非制御的水吸収(例えば、水が自由に利用可能であり、環境により制限されない浸漬方法)、及び
b)制御的水吸収(例えば、完全な発芽を防止する種子水分量を調節する方法)
を含む。
・・・
【0072】
制御的水吸収のためには、
(1)溶液を用いるプライミング、
(2)固体粒状系を用いるプライミング、及び/または
(3)水での制御水和によるプライミング
の3つの技術が使用され得る・・・。」

g 「【0081】
種子は、種子100kgあたり0.1g?10kgの農薬、望ましくは種子100kgあたり1g?5kgの農薬、より望ましくは種子100kgあたり1g?2.5kgの農薬で処理される。」

(イ)上記(ア)によると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「種子を農薬、及び-40?5℃のガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムラテックスポリマー、アクリレートコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択されるカルボキシル基含有ポリマーまたはコポリマーを含む種子処理剤でコーティングした後、水での制御水和によるプライミングが使用され種子を水和する方法。」

イ 刊行物3(甲第3号証:特開2002-3308号公報)について
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、稲の病虫害をほぼ完全に予防し得ると共に、ほぼ均一かつ良好な発芽を迅速に達成することができ、更には健康な苗を得ることができる農薬被覆稲種子を提供する。」

(イ)「【0024】上記の殺菌剤、殺虫剤等を、籾殻が除去された稲種子に結合するためにバインダーが使用される。該バインダーとしては公知のものを使用することができる。溶媒として水を使用するに際しては、好ましくは水溶性バインダー、又は水に乳化若しくは懸濁可能なバインダーが使用され得る。該バインダーとしては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースポリマー、キチン、ポリ塩化ビニリデン、水分散性ポリアクリル樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、多糖類、デンプン、ガムタイプバインダー等が挙げられる。好ましくはポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水分散性ポリアクリル樹脂、ポリウレタンが使用される。上記のバインダーは単独で使用してもよく又は二以上を組合せて使用してもよい。
【0025】上記の好ましいバインダーを使用することにより、バインダー中に含められる殺菌剤、殺虫剤の効力を徐々に発揮することができて、効力を長期間に亘って持続せしめることができる。また、複数のバインダー、例えば、ポリビニルアルコールとポリウレタンとを組合せることができる。好ましくは、ポリウレタン0?50重量%とポリビニルアルコール100?50重量%との混合物を使用することにより、殺菌剤、殺虫剤の放出速度を適宜コントロールすることができる。
【0026】稲種子表面に施与されるバインダー量は、バインダーの種類により多少異なるが、通常、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、通常0.3?30グラム、好ましくは0.5?10グラム、特に好ましくは1?6グラムである。例えば、ポリビニルアセテートでは、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは1?20グラム、より好ましくは2?10グラム、特に好ましくは3?6グラムであり、ポリビニルアルコールでは、好ましくは0.3?20グラム、より好ましくは0.5?4グラム、特に好ましくは1?2グラムであり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースでは、好ましくは0.5?14グラム、より好ましくは1?7グラム、特に好ましくは2?4グラムであり、そしてポリビニルピロリドンでは、好ましくは0.5?12グラム、より好ましくは1?6グラム、特に好ましくは1.5?3グラムである。上記下限未満では、殺菌剤、殺虫剤等の必要量を籾殻が除去された稲種子に良好に施与するのが困難である。」

ウ 刊行物4(甲第4号証:英国特許出願公開第2192781号明細書)について
刊行物4には、以下の事項が記載されている(訳文は、(ア)及び(ウ)については異議申立人が作成したもの、(イ)については当審にて作成したものを記載した。)。

(ア)「Accordingly the invention includes a method of priming seeds comprising contacting the seeds with a quantity of water sufficient to raise the water content thereof to a desired level and, after the required amount of water has been imbibed, maintaining the seeds in stirring motion for a period of one or more, preferably several days.」(第1頁第57行?第61行)

(訳文)
「従って、本発明は、所望の含水率となるに十分な水に種子を接触させ、必要量の水が吸収された後、1日以上、好ましくは数日間撹拌運動内で種子を保持する種子のプライミング方法に関するものである。」

(イ)「The seed priming process of the present invention avoids in use of excessive amounts of wetting fluid. In most applications the bulk of the added water, which may be condensed from the vapour phase, is imbibed into the seed leaving little or no surplus. 」(第2頁第64行?第3頁第1行)

(訳文)
「本発明の種子プライミング工程は過剰な量の流体の使用を回避する。ほとんどの適用において、加えられた水、これは水蒸気から凝縮したものであるが、の大部分は、ほとんどあるいは全く余ることなく種子に吸収される。」
(ウ)「EXAMPLE 1
A 10 g sample of leek seed, with an original water content of 9% (all water contents are expressed on a dry weight basis) was treated in the apparatus of FIGS. 1 to 6. The computer was programmed to give a linear increase in water content so that the seeds reached 90% water content over a 20 hour period. The water content of the seeds after treatment was 89.9%. The treated seeds were then incubated by being tumbled in a drum rotating on a horizontal axis at 22℃. for two weeks at a rotation rate of about 5 rpm.」(第4頁第63行?第5頁第4行)

(訳文)
「実施例1
初期含水率9%(含水率はすべて乾質量基準)のニラネギ種子10gを図1?図6に示す装置で処理した。コンピューターは、種子の含水率が20時間超で90%に直線的に増加するようプログラムされていた。処理後の種子の含水率は89.9%であった。処理した種子を、22℃で2週間、回転数約5rpmで水平軸を軸として回転するドラム内でタンブリングさせてインキュベートした。」

エ 刊行物8(平成27年1月21日付け拒絶理由通知で引用された引用文献1:国際公開第2008/107097号)について
刊行物8には、以下の事項が記載されている (訳文は、刊行物8の公表特許公報である特表2010-520244号公報の対応箇所を記載した。)。

「Hydropriming also includes those techniques that involve the continuous or staged addition of a limited amount of water. A sophisticated form of this concept is drum priming. Seeds are kept in a rotating drum, in which a limited amount of water (or water vapour) is slowly added to the seeds. The limited amount of water controls the extent of priming. Generally, the duration of a drum priming procedure ranges from 1 to 21 days, at temperatures between 5 and 30 ℃. Preferred durations range between 5 and 17 days, at temperatures between 10 and 30 ℃. Particularly preferred durations for drum priming are between 7 and 14 days, at a temperatures range of 15-25 ℃.」(第6頁第24行?同頁第31行)

(訳文)
「【0025】
ハイドロプライミングには、制限された量の水を連続的又は段階的に添加することを含む方法も包含される。この概念の精巧な形態は、ドラムプライミングである。種子を回転するドラムの中に維持し、そのドラムの中で、制限された量の水(又は、水蒸気)を当該種子にゆっくりと添加する。その制限された量の水によって、プライミングの程度を制御する。一般に、ドラムプライミング処理の持続期間は、温度5?30℃で、1?21日の範囲内である。好ましい持続期間は、温度10?30℃で、5?17日の範囲内である。ドラムプライミングについて特に好ましい持続期間は、15?25℃の温度範囲で、7?14日である。」

(4)判断
ア 特許法第36条第6項第1号について
本件発明2、3は、水分活性について、本件発明5?7は、水の量について、本件発明12?14は、バインダーの量について、本件発明16は、活性成分の量について、本件発明22、23は、濡らす段階の時間について、本件発明24、25は、濡らす段階の温度について、それぞれ、単に当業者が適宜採用し得る望ましい数値範囲を規定したに過ぎないので、当業者であれば、発明の詳細な説明に記載されたこれらに関する実施例を、上記発明の数値範囲にまで拡張ないし一般化できるといえる。
よって、本件発明2、3、5?7、12?14、16、22?25は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 特許法第36条第6項第2号について
本件訂正請求により、請求項27は削除されたので、取消理由の対象とした請求項27に係る特許は存在しなくなった。

ウ 特許法第29条第1項第3号及び第2項について
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。

[相違点1]:「液体」に関して
本件発明1が、「発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である」のに対し、
刊行物1発明は、そのような量の水を含むことが明らかでない点。

[相違点2]:「1以上のバインダー」に関して、
本件発明1が、「ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される」のに対して、
刊行物1発明は、「-40?5℃のガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムラテックスポリマー、アクリレートコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択されるカルボキシル基含有ポリマーまたはコポリマー」である点。

b 判断
(a)相違点1について
「水での制御水和によるプライミング」として、「発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量」の水を用いるドラムプライミングは周知技術であるから(例えば、刊行物4、刊行物8を参照。)、刊行物1発明において、「水での制御水和によるプライミング」としてそのような周知技術を採用して相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
なお、「水での制御水和によるプライミング」には、オスモプライミング、ハイドロプライミング等の、「種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量」よりも多い量の水を用いるプライミングも含まれるので、当該記載から、刊行物1に「種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量」の水を用いることが記載されているとまではいえない。

(b)相違点2について
刊行物3には、種子に結合するバインダーとして、「ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、・・・、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、・・・、ポリビニルピロリドン、・・・、多糖類、・・・等」を用いることが記載されている(段落【0024】を参照。)。
ここで、刊行物1発明は、「国際特許出願公開第01/78507号は、種子処理剤用のポリマーとしてポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリウレタンの混合物を用いる非浸漬法で使用されるコメ種子処理剤を開示している。・・・上記した製剤はいずれも農薬の環境への放出を示す。」との課題を解決すべく、「農薬を種子上に保持し且つ環境(水または土壌)への相当量の放出、好ましくは種子浸漬及び/またはプライミング法中の放出を防止する種子処理剤」(段落【0004】?【0007】を参照。)として、「-40?5℃のガラス転移温度を有するスチレンブタジエンゴムラテックスポリマー、アクリレートコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択されるカルボキシル基含有ポリマーまたはコポリマー」を用いるものである。
そして、刊行物3に記載された上記バインダーは、水に溶けやすく環境に放出されやすいので、刊行物1に記載された従来技術に位置づけられるものと解されるから、刊行物1発明において刊行物3に記載されたバインダーを採用することに、動機付けは存在しないといえる。
よって、刊行物1発明に刊行物3に記載された事項を適用し、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(c)意義申立人の主張について
意義申立人は、「刊行物1の背景技術の記述は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマーは、非制御的種子プライミングや浸漬法といった農薬が環境により放出されやすい処理方法においては不適応であることを述べているのであって、農薬が環境に放出されにくい制御的種子プライミングや非浸漬法において当該ポリマーの使用までをも否定するものではないと考えられる」旨主張する(意見書の7ページ3行ないし8行を参照。)。
しかしながら、刊行物1発明は、プライミング中の農薬の放出のみならず、土壌等の環境への農薬の放出も課題にしている(段落【0003】、【0007】を参照。)上、制御的種子プライミングを用いることで種子に対してコーティングされた農薬が環境に放出されなくなることは、取消理由通知にて引用した刊行物1ないし8の記載を踏まえても、技術常識とはいえないこと、また、刊行物1には刊行物1発明に非浸漬法を適用することが記載されていないこと、を踏まえると異議申立人の主張は採用できない。

(d)まとめ
以上から、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。
また、本件発明1は、刊行物1発明及び周知技術並びに刊行物3に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2?10、12?26、28、29について
本件発明2?10、12?26、28、29と刊行物1発明とは、少なくとも上記相違点1及び2によって相違する。
したがって、本件発明8?10、15?21は、刊行物1に記載された発明ではない。
そして、上記(ア)bに記載したとおり、刊行物1発明において上記相違点2に係る本件発明2?10、12?26、28、29の構成を採用することは当業者が容易になし得たことでないから、本件発明2?10、12?26、28、29は、刊行物1発明及び周知技術並びに刊行物3に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)訂正前の請求項11及び27に係る発明について
前記2(1)ケ及びテのとおり、訂正により請求項11及び27は削除された。その結果、請求項11及び27に係る発明についての特許異議の申立ては、その対象を欠くことになったので、不適法な申立てであり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

エ むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項1?10、12?26、28、29に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?10、12?26、28、29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項11、27に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、前記方法。
【請求項2】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.95以上である、前記方法。
【請求項3】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.98以上である、前記方法。
【請求項4】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子の水分活性が段階b)の終わりにおいて0.99?1.0の範囲である、前記方法。
【請求項5】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて20?50重量%である、前記方法。
【請求項6】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて25?40重量%である、前記方法。
【請求項7】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量が、濡れた種子の総重量に基づいて30?35重量%である、前記方法。
【請求項8】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該水の量は、濡らすために使用された水の量の95?100重量%が、該種子の発芽の前に該種子により吸収される量である、前記方法。
【請求項9】
該水の量は、濡らすために使用された水の量の98?100重量%が、該種子の発芽の前に該種子により吸収される量である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該水の量は、濡らすために使用された水の量の100重量%が、該種子の発芽の前に該種子により吸収される量である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】(削除)
【請求項12】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
1以上のバインダーの量が、種子1kg当たり0.3?30gの範囲である、前記方法。
【請求項13】
1以上のバインダーの量が、種子1kg当たり0.5?10gの範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1以上のバインダーの量が、種子1kg当たり1?6gの範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該1以上の活性成分が、殺真菌剤、殺バクテリア剤、殺虫剤、殺線虫剤、消毒剤、殺微生物、殺齧歯動物剤、除草剤、誘引剤、防虫剤、植物成長制御剤、栄養素、植物ホルモン、ミネラル、植物抽出物、ダニ駆除剤又は殺ダニ剤、殺陸貝剤、発芽促進剤、フェロモン類、生物学的製剤、キトサン、キチンをベースとする製剤からなる群から選択される、前記方法。
【請求項16】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
1以上の活性成分の量が、種子1kg当たり0.001?200gの範囲である、前記方法。
【請求項17】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が単子葉植物目から選択される、前記方法。
【請求項18】
該種子がイネの種子である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該イネの種子がOryza sativa japonica、Oryza glaherrima javanica、Oryza sativa indica、Zizania palustris、及びそれらの交配種からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が双子葉植物目から選択される、前記方法。
【請求項21】
該種子がニンジン(Daucus carota)の種子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、5分?72時間の範囲の間、行われる、前記方法。
【請求項23】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、10分?48時間の範囲の間、行われる、前記方法。
【請求項24】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該濡らす段階が、5?40℃において行われる、前記方法。
【請求項25】
該濡らす段階が、イネの種子の場合には25?30℃及びニンジンの種子の場合には15?20℃において行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該種子が、該濡らす段階の後にインキュベーション段階に付される、前記方法。
【請求項27】(削除)
【請求項28】
コーティングされた種子を調製する方法において、発芽していない種子を用意すること、及び
a)該種子を1以上のバインダー及び1以上の活性成分を含むコーティング組成物でコーティングすること、該1以上のバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、タンパク質、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、及び
b)該種子を液体中で濡らすこと、ここで該液体は、発芽を誘発するのに十分な量の水を含み、該水の量は、該種子の発芽の前に種子により実質的に全ての水が吸収されるような量である、
を含み、
該種子が濡らされる前に、該種子がコーティングされる、
該液体が、栄養素、遺伝子を誘発する剤、保護剤、及び成長調節剤からなる群から選択される1以上を含む水性溶液である、前記方法。
【請求項29】
該遺伝子を誘発する剤が、ハルピンタンパク質、キトサン五糖類、及びリポキトオリゴ糖からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-05 
出願番号 特願2012-527838(P2012-527838)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A01C)
P 1 651・ 121- YAA (A01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
谷垣 圭二
登録日 2015-06-12 
登録番号 特許第5757949号(P5757949)
権利者 インコテック ヨーロッパ ベー.フェー.
発明の名称 種子の制御された湿潤化  
代理人 松井 光夫  
代理人 松井 光夫  
代理人 村上 博司  
代理人 村上 博司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ