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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09J |
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管理番号 | 1322310 |
異議申立番号 | 異議2016-700669 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-03 |
確定日 | 2016-12-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5850682号発明「ホットメルト接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5850682号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5850682号(以下「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成23年9月16日を出願日として特許出願され、平成27年12月11日に特許権の設定登録がされ、平成28年2月3日にその特許公報が発行され、その後、同年8月3日に特許異議申立人出光興産株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」といい、それらを併せて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマー、 (B)エチレン系共重合体、 (C)粘着付与樹脂及び (D)オイル を含み、 (B)エチレン系共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、そのエチレン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/オクテンコポリマーから選択される少なくとも1種を含み、 (A)プロピレンホモポリマーと(B)エチレン系共重合体の合計の重量100重量部に対し、(A)プロピレンホモポリマーは60?95重量部である、ホットメルト接着剤。 【請求項2】 150℃以下の溶融粘度が7000mPa・s以下である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。 【請求項3】 (E)ワックスを更に含み、(E)ワックスは、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックスを含む、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。 【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた申立理由の概要は、以下のとおりである。 特許法第29条第2項(以下「理由」という。) 本件発明1?4は、本件特許出願日前に頒布された以下の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件発明1?4に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 甲第1号証:再公表特許 WO01/096490号公報 甲第2号証:特表2008-504430号公報 第4 当審の判断 1 各甲号証及び各参考文献の記載 なお、甲第2号証は、明細書中で、米国特許第5272236号明細書、米国特許第5278272号明細書および米国特許第5665800号明細書を、並列的に引用している箇所があるので、このうち米国特許第5665800号明細書を、「参考文献1」として、その記載事項を適示すると共に、上記参考文献1の記載事項を理解するために、当審で引用した特表2004-536895号公報を、「参考文献2」として、その記載事項を適示する。 (1) 甲第1号証 (1a)第2頁第2?第9行 「【請求項1】下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体[I]20?99質量%、 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 及び粘着性付与樹脂[II]80?1質量%からなるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂。」 (1b)第4頁第18行?第5頁第4行 「また、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの低極性物質に対する接着性にも劣るという欠点もあった。このような低極性物質向けには、従来からもポリプロピレンなどをベースとする樹脂は存在したが、これらは、熱安定性には優れるものの、ベースポリマーの硬度が高すぎ、流動性に劣るため高温下で塗工する必要が有り、高温下での熱安定性が低くかつ、充分な接着性が得られないという問題があった。 発明の開示 本発明は、ホットメルト接着剤用樹脂における前記のような問題点及び欠点を改良し、高温下での熱安定性や流動性に優れ、低極性物質への接着性にも優れ、かつ、その接着面が耐熱性にも優れるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂を提供することを目的とするものである。 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン重合体と粘着性付与樹脂からなるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂が、本目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下のポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂を提供するものである。」 (1c)第6頁第6行?第26行 「本発明に用いられる特定のプロピレン重合体[I]は、下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体である。 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 本発明におけるプロピレン重合体としては、前記(1)及び(2)を満たせばよいが、メソペンタッド分率(mmmm)が0.3?0.6が好ましく、0.4?0.5がさらに好ましく、ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が [rrrr/(1-mmmm)]≦0.08であることが好ましく、 [rrrr/(1-mmmm)]≦0.06であることがさらに好ましく、 [rrrr/(1-mmmm)]≦0.05であることが特に好ましい。 前記プロピレン重合体[I]が、上記の関係を満たすと、得られるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂の弾性率の低さと耐熱性とのバランスが優れる。すなわち、弾性率が低く軟質性(柔軟性とも言う)と接着性に優れ、耐熱性にも優れるという利点がある。 前記プロピレン重合体のメソペンタッド分率(mmmm)が0.2未満では、耐熱性が十分でない。0.6を越えると弾性率が高くなり好ましくなく、また、融点も高くなるため塗布に高温を要するようになる。前記プロピレン重合体の[rrrr/(1-mmmm)]が0.1を越えると耐熱性低下の原因となる。」 (1d)第9頁第4行?第11頁第22行 「本発明に用いられるプロピレン重合体[I]の製造方法としては、(A)2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と(B)助触媒を組み合わせて得られるメタロセン触媒を用いてプロピレンを重合または共重合する方法が好ましい。具体的に例示すれば、 一般式(I) 〔式中・・・(中略)・・・を示す。〕で表される遷移金属化合物(A)、及び該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物(B-1)及びアルミノキサン(B-2)から選ばれる助触媒成分(B)を含有する重合用触媒の存在下、プロピレンを重合又は共重合させる方法が挙げられる。 一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)ビス(3-n-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド・・・(中略)・・・など及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。 次に、(B)成分のうちの(B-1)成分としては・・・(中略)・・・などを挙げることができる。 (B-1)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。 一方、(B-2)成分のアルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。 前記重合用触媒としては、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。 ここで、(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム・・・(中略)・・・等が挙げられる。 これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。」 (1e)第12頁第3行?第13頁第4行 「本発明のポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂に用いられる粘着性付与樹脂[II]としては、生松ヤニを原料としたロジン樹脂、松の精油から得られるα-ピネン、β-ピネンを原料としたテルペン樹脂、石油ナフサなどの熱分解により副産物として生成する不飽和炭化水素を含む留分を重合して樹脂化して得られる石油樹脂、および、それらの水素添加物などが挙げられる。粘着性付与樹脂[II]としては、出光石油化学製 アイマーブ P-125、同アイマーブ P-100、同アイマーブ P-90、三洋化成工業製 ユーメックス 1001、三井化学製 ハイレッツ T1115、ヤスハラケミカル製 クリアロンK100、トーネックス製 ECR227、同エスコレッツ2101、荒川化学製 アルコンP100、ハーキュレス(Hercules)製 Regalrez 1078などを挙げることができる。 本発明では、ベースポリマーとの相溶性を考慮し、水素添加物を用いることが好ましい。中でも、熱安定性に優れる石油樹脂の水素化物がより好ましい。 また、本発明において、必要に応じて(C)可塑剤、(D)無機フィラー、(E)酸化防止剤などの各種添加剤、などを配合することができる。(C)可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ポリオレフィン系ワックス、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、脂肪酸エステル類、グリコール類、エポキシ系高分子可塑剤、ナフテン系オイル、など、(D)無機フィラーとしては・・・(中略)・・・などを例示できる。」 (1f)第15頁第5行?第15行 「(2)プロピレンの重合 攪拌機付き、内容積10リットルのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン4リットル、トリイソブチルアルミニウム2ミリモル、さらに、メチルアルミノキサン(アルベマール社製)2ミリモルと、前記で得た(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド2マイクロモルを、順次投入した。次いで、水素を0.2MPa(gauge)導入した後、60℃まで温度を上昇させながら、全圧で0.8MPa(gauge)までプロピレンガスを導入した。重合中、全圧が0.8MPa(gauge)になるように調圧器によりプロピレンを供給した。重合温度60℃で、30分間重合を行なった後、内容物を取り出し、減圧下、乾燥することにより、プロピレン重合体(P1)を得た。」 (1g)第16頁第20行?第26行 「(5)DSC測定 示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製,DSC-7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下120℃で3分間溶融した後、1℃/分で-40℃まで降温したときに得られる結晶化発熱カーブの最大ピークのピークトップを結晶化温度:Tcとした。さらに、-40℃で3分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量をΔHとした。また、このときに得られる融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップを融点:Tmとした。」 (1h)第17頁第28行?第18頁第14行 「〔実施例1〕 前記で得たP1のペレットを60質量%、出光石油化学製水添石油樹脂 アイマーブ P-125(以下、B1とも記す)を40質量%の割合で配合し、プラストミル(東洋精機社製)にて180℃、30分間混練し、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂を得た。この樹脂をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に50μmの厚みで塗布し、次いで延伸ポリプロピレンフィルムをこの上に120℃でヒートシールし、ホットメルト接着体を作成した。 以下に述べる「評価方法」に従い評価した結果を第2表に示す。 「評価方法」 (1)ホットメルト接着剤用樹脂の溶融粘度 JIS K 6862に準拠し測定した。 ・粘度計:ブルックフィールド型粘度計 ・温度:180℃ (2)ホットメルト接着体の剥離接着強さ ・JIS K 6854に準拠し測定した。 ・試験片:巾25mm、長さ100mm」 (1i)第18頁第28行?第19頁第2行 「〔実施例2〕 実施例1のポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂の製造において(B1)を30質量%に変え、パラフィン系プロセスオイルを10質量%加えたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた結果を第2表に示す。」 (1j)第21頁第1表 「 」 (1k)第22頁第2表 「 」 (2) 甲第2号証 (2a)「【請求項1】 少なくとも2つの成分を含むラミネーション接着剤であって、前記2つの成分が:少なくとも一つのプロピレンをベースとしたポリマーを含む成分A)であり、ASTM D1238の条件230℃/2.16kgにより測定したときに、0.5g/10分から100g/10分までの間のメルトフローレートを有する少なくとも一つのプロピレンをベースとしたポリマーを含む成分A);および 少なくとも一つのエチレンをベースとしたポリマーを含む成分B)であり、好適には0.85g/ccから0.90g/ccまでの間、より好適には0.855g/ccから0.89g/ccまでの間、最も好適には0.87g/ccから0.88g/ccまでの間の密度を有し、且つ、350°F(177℃)におけるASTM D3236により測定したときに、300cPから50,000cPまでの間、好適には1000cPから30,000cPまでの間、より好適には5000cPから25,000cPまでの間の粘度を有する少なくとも一つのエチレンをベースとしたポリマーを含む成分B);であり、 ここで、成分A)は60パーセントから95パーセントまで、好適には70パーセントから90パーセントまで、より好適には70パーセントから80パーセントまでであり;成分B)は40パーセントから5パーセントまで、好適には30パーセントから10パーセントまで、より好適には30パーセントから20パーセントまでであって、上記パーセンテージが当該ラミネーション接着剤の総合重量をベースとした重量百分率である;ラミネーション接着剤。」 (2b)「【0086】 (実施例1-それぞれが結合層を含有するフィルム組成物の調製および試験) キャストフィルムラインを用い、一つはポリエチレンをベースとし、一つはポリプロピレンをベースとした二つのフィルムを調製した。これらのフィルムは以下の通りであった:a)4g/10分のメルトインデックス(ASTM D1238、条件190℃/2.16kg)および0.94g/ccの密度(ASTM D 792)を有するチーグラー・ナッタ産生エチレン/1-オクテンポリマー;ならびにb)8.8g/10分のメルトフローレート(ASTM D 1238、条件230℃/2.16kg)を有するホモポリマーポリプロピレン。これらのフィルムを押出しコーターで試験した。 【0087】 フィルム1は、上で検討されている通りのエチレン/1-オクテンコポリマー(チーグラー・ナッタ産生またはZN-EO)の単層の2ミルフィルム(0.051mm)である。 【0088】 フィルム2は、上で検討されている通りのポリプロピレンホモポリマー(PP)の単層の2ミル(0.051mm)のフィルムである。」 (2c)「【0089】 サンプル1は、上で検討されている通りのエチレン/1-オクテンコポリマー(ZN-EO)である。 【0090】 サンプル2は、上で検討されている通りのポリプロピレンホモポリマーである。 【0091】 サンプル3は、米国特許第5,272,236号、第5,278,272号および第5,665,800号の教示により製作され、500g/10分の見掛けメルトインデックス、350°F(177℃)における17,000cPの溶融粘度、0.874g/ccの密度および2から3までのMw/Mnを有するエチレン/1-オクテンコポリマーである。 【0092】 サンプル4は、米国特許第5,272,236号、第5,278,272号および第5,665,800号の教示により製作され、1000g/10分の見掛けメルトインデックス、350°F(177℃)における8,200cPの溶融粘度、0.87g/ccの密度および2から3までのMw/Mnを有するエチレン/1-オクテンコポリマーである。」 (2d)「【0093】 結合層混合物は以下の通りに調合された。 混合物1:10wtパーセントのサンプル3および90wtパーセントのサンプル2(PP)。 混合物2:25wtパーセントのサンプル3および75wtパーセントのサンプル2(PP)。 混合物3:10wtパーセントのサンプル4および90wtパーセントのサンプル1(ZN-EO)。 混合物4:25wtパーセントのサンプル4および75wtパーセントのサンプル1(ZN-EO)。 (2e)「【0098】 表4に示されている通りの以下のフィルム組成物から1インチ幅(25.4mm)のストリップを切断し、剥離引裂き強度(結合層によって接合された外側の層を引き離すのに必要な引張り力の量)について試験した。三つの異なるシートから合計で10個のサンプルを試験した結果、以下に報じられている平均値が本結合層の接着強度を表している。これらの結果は、結合層が10wtパーセントのサンプル3を含んでいた場合、密着性(平均剥離値)が著しく(25パーセント以上)改善されたことを示している。結合層に25wtパーセントのサンプル3を使用したときには、更なる密着性の増大(35パーセント以上)が観測されている。 表4:三層化されたフィルム組成物の平均剥離値(10個のサンプルを試験した) 【表4】 」 (3) 参考文献1(米国特許第5665800号明細書) (3a)第6欄第24?第7欄第8行 「ここで用いられる適当な触媒は、1990年7月3日に出願された米国特許出願第545403号・・・(中略)・・・に記載されるような、拘束された幾何形状を有する触媒(幾何拘束触媒)を含む。 ・・・(中略)・・・ 好ましい触媒錯体は、下記式 式中、 Mは、元素の周期律表の第3?10族、又はランクナイト系列の金属であり、 Cp^(*)は、Mにη^(5)結合様式で結合しているシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタシエニル基であり、 Zは、ホウ素、又は元素の周期律表の第14族の元素、付加的に硫黄又は酸素からなる原子団であり、前記原子団は、20個までの水素でない原子を有し、付加的に、Cp^(*)及びZと共に縮合環系を形成し、 Xは、それぞれ独立して、30個までの水素でない原子を有するアニオン性の配位子又は中性ルイス塩基配位子であり、nは、0、1、2、3又は4であり、Mの原子価より2少なく、 Yは、Z及びMと結合するアニオン性又は非アニオン性配位子であり、窒素、リン、酸素又は硫黄を含んでなり、20個までの水素でない原子を有し、付加的にYとZは共に縮合環系を形成する。」 (3b)第21欄第51行?第22欄第33行 「1.長鎖の分岐を有し、メルトフロー比I_(10)/I_(2)が5.63であり、下記式 Mw/Mn≦(I_(10)/I_(2))-4.63 で定義される分子量分布Mw/Mnを有するエチレンとC_(3)-C_(20)α-オレフィンの共重合体であって、 該共重合体は、連続的な定常状態の重合条件のもとで、エチレンとC_(3)-C_(20)α-オレフィンを、重合反応器内の触媒組成物に連続的に接触させることにより、製造されるものであり、 前記連続的な工程の条件は、反応器の流出口を介して前記共重合体を取り出すことにより、前記共重合体を回収することを含み、 前記触媒組成物は、下記の成分からなる共重合体。 (a)下記式からなる金属配位錯体 式中 Mは、元素の周期律表の第3?10族、又はランタナイド系列の元素であり、 R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、シリル、ジャーミル、シアノ、ハロゲン及びそれらの組合せからなる群から選択され、20個までの水素でない原子を有し、 Zは、水素、ホウ素、又は元素の周期律表の第14族の元素、付加的に硫黄又は酸素からなる原子団であり、前記原子団は、20個までの水素でない原子を有し、 Xは、それぞれ独立して、30個までの水素でない原子を有するアニオン性の配位子又は中性ルイス塩基配位子であり、nは、0、1、2、3又は4であり、Mの原子価より2少なく、 Yは、Z及びMと結合するアニオン性又はノニオン性配位子であり、窒素、リン、酸素又は硫黄を含んでなり、20個までの水素でない原子を有し、付加的にYとZは共に縮合環系を形成する (b)活性化共触媒」 (4) 参考文献2(特表2004-536895号公報)) (4a)「【0079】 適切な種類の触媒類の一つは、米国特許第5,064,802号、第5,132,380号、第5,703,187号、第6,034,021号、EP0468 651、EP0514828、WO93/19104およびWO95/00526に開示されている幾何拘束性触媒類であり、これらの全ては、完全に本明細書に参照により援用される。他の適切な種類の触媒類は、米国特許第5,044,438号、第5,057,475号、第5,096,867号、および、第5,324,800号に開示されているようなメタロセン触媒類であり、これらの全ては、完全に、本明細書に参照により援用される。幾何拘束性触媒類は、メタロセン触媒類であると考えてもよく、両方は場合によりシングルサイト触媒類として先行文献中に言及されていることに留意しなければならない。 【0080】 例えば、触媒類は式 【0081】 【化1】 の金属配位錯体類から選択されてもよい。 (式中、Mは元素周期表の、3、4?10族、またはランタノイド系列の金属であり、 Cp*は、Mにη5結合モードで結合したシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基であり、 Zはホウ素、または、元素周期表の14族の元素、および、場合により、イオウまたは酸素を含む原子団であり、前記原子団は最大40までの水素でない原子を含み、および、場合により、Cp*およびZは互いに縮合環系を形成し、 Xは独立にそれぞれの場合アニオン性リガンド基であり、前記Xは30までの水素でない原子を有し、Yがアニオン性の場合nはMの原子価より2小さく、Yが中性の場合はMの原子価より1小さく、 Lは独立にそれぞれの場合中性ルイス塩基リガンド基であり、前記Lは20までの水素でない原子を有し、mは0、1、2、3または4であり、 YはZおよびMに結合し、窒素、リン、酸素またはイオウおよび40までの水素でない原子を含む、アニオン性または中性のリガンド基であり、場合によりYおよびZは相互に縮合環系を形成していてもよい。)」 2 甲第1号証に記載された発明 上記(1a)の【請求項1】の「下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体[I]20?99質量%、 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1 及び粘着性付与樹脂[II]80?1質量%からなるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂。」に関し、この「ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂」として、上記(1k)の第2表の「実施例2」には、上記[I]成分として、「P1」が60質量%、上記[II]成分として、「B1」が30質量%、「他成分」として、「パラフィン系プロセスオイル」が10質量%の「ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂」が記載されているといえる。 ここで、上記「P1」は、上記(1j)の第1表によれば、上記「メソペンタッド分率(mmmm)」が0.45、上記[rrrr/(1-mmmm)]が0.04、「Tm」が「75℃」のプロピレン重合体であり、さらに、上記「Tm」は、上記(1g)の記載によれば、「融点」である。 また、上記「P1」は、上記(1f)の記載によれば、「トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン(アルベマール社製)、(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド」を用い、プロピレンガスを重合して得られた「プロピレン重合体(P1)」である。 さらに、上記「B1」は、上記(1h)及び(1j)の記載によれば、「出光石油化学製水添石油樹脂 アイマーブ P-125」である。 そうすると、甲第1号証には、 「トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン(アルベマール社製)、(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いて、プロピレンガスを重合して得られた、メソペンタッド分率(mmmm)が0.45、[rrrr/(1-mmmm)]が0.04、融点が75℃のプロピレン重合体が60質量%、 出光石油化学製水添石油樹脂 アイマーブ P-125が30質量%、 パラフィン系プロセスオイルが10質量%である、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 3 甲第2号証に記載の事項 甲第2号証には、上記(2a)の「少なくとも2つの成分を含むラミネーション接着剤であって、前記2つの成分が:少なくとも一つのプロピレンをベースとしたポリマーを含む成分A) 少なくとも一つのエチレンをベースとしたポリマーを含む成分B)を含むラミネーション接着剤。」に関し、 上記(2b)に記載されるエチレン/1-オクテンコポリマーのフィルムと、ポリプロピレンホモポリマーのフィルムとの結合層混合物として、上記(2d)の記載によれば、「混合物1」、「混合物2」として、10wtパーセントの「サンプル3」および90wtパーセントの「サンプル2(PP)」の混合物、及び、25wtパーセントの「サンプル3」および75wtパーセントの「サンプル2(PP)」の混合物が記載されている。 そして、上記「サンプル2」及び「サンプル3」に関する上記(2c)の記載によれば、「サンプル2」は、「ポリプロピレンホモポリマー」であり、「サンプル3」は、「米国特許第5,272,236号、第5,278,272号および第5,665,800号の教示により製作され、500g/10分の見掛けメルトインデックス、350°F(177℃)における17,000cPの溶融粘度、0.874g/ccの密度および2から3までのMw/Mnを有するエチレン/1-オクテンコポリマーである。」であるとされている。 ここで、上記米国特許明細書のうち、参考文献1とした第5,665,800号に関する上記(3a)及び(3b)の記載によれば、オレフィンポリマーの合成に、上記(3a)及び(3b)に記載される各式(当審注:構造の記載は省略する。)で表される「幾何学拘束触媒」を用いるものである。 そして、この「幾何学拘束触媒」(幾何拘束性触媒)は、参考文献2の上記(4a)の記載によれば、メタロセン触媒の一種とされるものであるから、上記「サンプル3」とは、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマーであるといえる。 また、上記(2d)及び(2e)の記載によれば、上記結合層組成物において、「サンプル2」(ポリプロピレンホモポリマー)に、「サンプル3」(メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマー)を含むことにより、エチレン/1-オクテンコポリマーのフィルムと、ポリプロピレンホモポリマーのフィルムとの密着性が増大するといえる。 そうすると、甲第2号証には、エチレン/1-オクテンコポリマーのフィルムと、ポリプロピレンホモポリマーのフィルムとの結合層混合物として、両層の密着性を向上させるために、ポリプロピレンホモポリマーと、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマーを含むラミネーション接着剤を用いることが記載されているといえる。 4 対比・判断 (1) 本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 以下、本件発明1と甲1発明を対比する。 ここで、上記(1d)の記載によれば、「メタロセン触媒」とは、「(A)2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と(B)助触媒を組み合わせて得られる」もので、上記(A)は、一般式(I)(当審注:構造の記載を省略する。)で表される遷移金属化合物であるところ、一般式(I)で表される遷移金属化合物として、「(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド」((1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド)が例示されている。 また、同上記(1d)の記載によれば、上記「(B)助触媒」を構成する「該(A)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物(B-1)及びアルミノキサン(B-2)から選ばれる助触媒成分」の「アルミノキサン(B-2)」として、「メチルアルミノキサン」が例示されている。 さらに、同上記(1d)の記載によれば、重合用触媒(「メタロセン触媒」)は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができるところ、上記(C)成分として、「トリイソブチルアルミニウム」が例示されている。 これら「メタロセン触媒」に関する上記(1d)の記載事項を踏まえると、甲1発明の「トリイソブチルアルミニウム((C)成分)、メチルアルミノキサン(アルベマール社製)((B-2)成分)、(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド((A)成分)」は、本件発明1の「メタロセン触媒」に相当する。 また、甲1発明の「プロピレン重合体」は、プロピレンガス(のみ)を重合して得られたものであるから、本件発明1の「プロピレンホモポリマー」に相当し、上記(1e)の記載によれば、甲1発明の「アイマーブ P-125」は、粘着性付与樹脂として例示されるものであるから、本件発明1の「粘着付与樹脂」に相当する。 さらに、上記(1h)及び(1i)の記載によれば、甲1発明の「ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂」は、そのまま接着に用いるものであるから、本件発明1の「ホットメルト接着剤」に相当し、甲1発明の「パラフィン系プロセスオイル」は、本件発明1の「オイル」に相当し、甲1発明の「プロピレン重合体」の融点は、本件発明1の「プロピレンホモポリマー」の融点と、「75℃」で一致している。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が75℃のプロピレンホモポリマー、 (C)粘着付与樹脂及び (D)オイル を含む、ホットメルト接着剤。」という点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 (相違点1) ホットメルト接着剤に関し、本件発明1は、(B)エチレン系共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、そのエチレン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/オクテンコポリマーから選択される少なくとも1種を含む(B)エチレン系共重合体を、含むのに対し、甲1発明は、この様なエチレン系共重合体を含むのか明らかでない点。 (相違点2) (A)プロピレンホモポリマーの含有量に関し、本件発明1は、(A)プロピレンホモポリマーと(B)エチレン系共重合体の合計の重量100重量部に対し、60?95重量部であるのに対し、甲1発明は、そもそも、上記(相違点1)で述べたように、「ポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂」が、「(B)エチレン系共重合体」を含むのか明らかでないから、本件発明1に特定される様な、プロピレン重合体と(B)エチレン系共重合体の合計の重量100重量部に対するプロピレン重合体を特定することができない点。 イ 上記(相違点1)及び(相違点2)に関する判断 (ア) 上記(相違点1)に関して 甲1発明は、上記(1b)の記載によれば、高温下での熱安定性や流動性に優れ、低極性物質への接着性にも優れ、かつ、その接着面が耐熱性にも優れるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂を提供することを目的とし、特定のプロピレン重合体と粘着性付与樹脂からなるポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂を用いるものである。 そして、この「特定のプロピレン重合体」とは、上記(1c)の記載によれば、 「下記の(1)及び(2)を満たすプロピレン重合体 (1)メソペンタッド分率(mmmm)が0.2?0.6である (2)ラセミペンタッド分率(rrrr)と(1-mmmm)が下記の関係を満たす [rrrr/(1-mmmm)]≦0.1」であり、上記「プロピレン重合体」が、上記(1)、(2)の関係を満たすことにより、弾性率が低く軟質性(柔軟性とも言う)と接着性に優れ、耐熱性にも優れるという作用を発揮するものである。 これを踏まえると、甲1発明のポリオレフィン系ホットメルト接着剤用樹脂は、上記(1)、(2)の関係を満たす「プロピレン重合体」を所定の含有量で含むことにより、「低極性物質への接着性」を含め甲1発明の上記の目的を達成するものであるといえる。 ここで、上記「第4」、「3」で述べたように、甲第2号証によりエチレン/1-オクテンコポリマーのフィルムと、ポリプロピレンホモポリマーのフィルムとの結合層混合物として、ポリプロピレンホモポリマーと、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマーを含むラミネーション接着剤を用いるという技術が、当業者に既に知られていたとしても、それは上記両フィルム層の密着性を向上させることを目的とするというものであるから、甲1発明と必ずしも課題が共通していないので、この技術を、甲1発明に適用するということは困難であるといえる。 すなわち、甲1発明には、甲1発明の上記の目的を達成する上で必須の「プロピレン重合体」の含有割合を敢えて減らしてまで、プロピレン重合体に、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマーを含むものとする動機があるとはいえない。 してみると、甲第2号証に記載される上記の技術が既に知られていたとしても、甲1発明に適用することができるとはいえないから、上記(相違点1)は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (イ) 上記(相違点2)について 上記「ア (相違点1)について」で述べたように、甲1発明の「プロピレン重合体」を、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/1-オクテンコポリマーを含むものとすることは、当業者が容易に想到し得るものではないから、このエチレン/1-オクテンコポリマーの存在を前提とした「プロピレン重合体」の上記(相違点2)における含有量の範囲も、当然、当業者が容易に想到し得ることができるとはいえない。 してみると、上記(相違点2)も、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 ウ 本件発明1の効果について 上記「イ 上記(相違点1)及び(相違点2)に関する判断」で述べたように、上記(相違点1)及び(相違点2)が、当業者が容易に想到し得るものとはいえないから、本件発明1は、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないが、仮に、甲1発明に、甲第2号証に記載の事項を組み合わせることができたとして、さらに検討する。 本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0008】の「本発明は、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れるホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤によって得られる使い捨て製品を提供することを目的とする。」、同段落【0009】の「本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、分子量分布が狭く、かつ、融点の低いプロピレンホモポリマーにエチレン系共重合体を配合すると、高速塗工に優れ、低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れたホットメルト接着剤が得られることを見出し、そのようなホットメルト接着剤は使い捨て製品用途に好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。」、及び同段落【0095】の「表1に示すように、実施例1?11のホットメルト接着剤は、熱安定性、塗工適性、高速塗工適性に優れており、さらに、不織布に対する強度にも優れるので、オムツ、ナプキン等の不織布を用いる使い捨て製品用途に好適である。」等の記載によれば、「高速塗工に優れ、低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れる」というものである。 具体的にみると、本件明細書の段落【0094】【表2】の「比較例3」は、「チーグラーナッタ触媒で重合して得られた融点145℃のプロピレンホモポリマー」(A’4)(段落【0078】)に本件発明1の「メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/オクテンコポリマーから選択される少なくとも1種」(B2)(段落【0079】)(以下、「(B)成分という。)を含むホットメルト接着剤であるが、上記【表2】によると、「塗工適正」が「×」、「高速塗工適正」が「×」となっている。 これに対し、本件発明の「メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマー」(以下、「(A)成分」という。)と「(B)成分」を含む本件発明1のホットメルト接着剤である「実施例1」から「実施例8」では、「塗工適正」及び「高速塗工適正」がいずれも、「◎」又は「○」となっている。 そうすると、本件発明1には、「塗工適正」及び「高速塗工適正」に関し、上記「(B)成分」と組み合わせる「プロピレンホモポリマー」を、「メタロセン触媒を用いて重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマー」とすることによる選択的な効果があるといえ、この効果は、上記「第4」、「3」で述べたような、「プロピレンホモポリマー」(ポリプロピレンホモポリマー)が、メタロセン触媒を用いて重合して得られた融点が100℃以下のものであるのか明らかでない甲第2号証の記載からは、予測することはできないし、また、本件発明1の「(B)成分」に相当する成分が含まれていない甲1発明からも、当然、予測することができない。 してみると、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載の事項から予測することのできない格別な効果を奏するものであるといえる。 エ 小括 よって、本件発明1は、甲1発明と、甲第2号証に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。 (2) 本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項を、さらに限定したものである(本件発明2、3)か、本件発明1の発明特定事項にさらに他の発明特定事項を付加したものである(本件発明4)。 そして、本件発明1が、当業者が容易に発明をすることができたものあるとはいえないから、本件発明1の発明特定事項を、さらに限定したものであるか、本件発明1の発明特定事項にさらに他の発明特定事項を付加したものである本件発明2?4も、甲1発明と、甲第2号証に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明2?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1?4についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではなく、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-11-22 |
出願番号 | 特願2011-203063(P2011-203063) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C09J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岩田 行剛、小久保 敦規 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 原 賢一 |
登録日 | 2015-12-11 |
登録番号 | 特許第5850682号(P5850682) |
権利者 | ヘンケルジャパン株式会社 |
発明の名称 | ホットメルト接着剤 |
代理人 | 福政 充睦 |
代理人 | 大谷 保 |