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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22D
管理番号 1322313
異議申立番号 異議2016-700790  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-31 
確定日 2016-12-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5873728号発明「ガスシール式スライディングノズル装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5873728号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5873728号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成24年1月31日に特許出願され、平成28年1月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人品川リフラクトリーズ株式会社により特許異議の申立てがされたものである。


2.本件発明
特許第5873728号の請求項1ないし4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。


3.申立理由の概要
特許異議申立人品川リフラクトリーズ株式会社は、証拠として実願昭57-77413号(実開昭58-4269号)のマイクロフィルム、特開平10-109156号公報、特開平5-115966号公報、特開平5-115965号公報を各々甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証(以下、各々を単に「甲1」、・・・「甲4」という。)として提出し、以下の3つの理由を挙げ、請求項1ないし4に係る特許(以下、各々を単に「本件特許発明1」、・・・「本件特許発明4」という。)を取り消すべきものである旨主張している。
理由1:本件特許発明1ないし4は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであること
理由2:本件特許発明1ないし4は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであること
理由3:本件特許発明1ないし4は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであること


4.刊行物の記載
(1)甲1には、「スライディングノズル装置」の発明であって、特許異議申立書第12ページ第8行?21行にA?I、Kにて分説された発明が記載されている。
(2)甲2には、「スライドゲート用スライドプレート及び該プレートの取付け装置」に関して、凹部(収納空間3a)の内周面とノズルプレート(スライドプレート7)の外周面との間に間隙を有するという技術的事項が記載されており、甲3には、カバー穴(丸い穴)を備え、カバー穴(丸い穴)を矩形状に取り囲む溝(ガス供給通路4)と、カバー穴を矩形状に取り囲む溝(ガス供給通路4)から外周端に向かって延びる複数の直線状の溝(ガス供給通路4)とを備えるハウジングを有するという技術的事項が記載され、甲4には特許異議申立書第14ページ下から4行?第15ページ第13行にAA?ANにて分説された発明が記載されている。


5.判断
(1)理由1(進歩性)について
(1-1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1ないし甲4に記載された発明ないし技術的事項とを対比すると、当該甲1ないし甲4のいずれにも、特許異議申立書で申立人が本件特許発明1を分説記号A?Kを使用して分説したところの「(J)カバープレート」をスライディングノズル装置が有するとした点が記載も示唆もされていない。また、スライディングノズル装置がカバープレートに該当する部材を備えるとした事項は、本件特許の出願前に周知あるいは慣用されていたものでもない。
したがって、本件特許発明1は、上記甲1ないし甲4に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
特許異議申立人は、(J)カバープレートを備える点は、特許異議申立書の第18ページ?19ページの「次に、相違点3について検討すると・・・当業者の技術的常識を付加したものに過ぎない。」と述べ、容易に発明できたものであると主張しているが、甲3号証に記載の凹溝配置は、外部からのガス供給を受けるハウジング、即ち本件特許発明1の「穴あき固定金枠体」に凹溝が配置されることを示したものであって、カバープレートに相当する別部材の存在を前提としたものではない。そうすると、仮に溝の形成に共通する事実があるとしても、構成上の前提が異なる以上、甲1発明に甲3技術を単純に適用しても、本件特許発明1に至り得ないのは明らかである。
また、特許異議申立人が別途主張する「ハウジングを水平方向に上下2つの部材に切断」することを試みるには、「穴あき固定金枠体」自体を、上下に重なる複数の部材に分割された集合体で形成することが元々慣用であったとする前提事実を要するが、かかる「ハウジングを水平方向に上下2つの部材に切断」することを試みる着想が慣用であったとする事実を特許異議申立人はなんら示していないところからみて、着想への十分な動機付けを欠くと共に、「ハウジングを水平方向に上下2つの部材に切断」することを試みること自体に相当の着想の困難性を要するというべきである。
以上を総合すると、「カバープレート」を有さないことによる相違は、上記証拠によって特許異議申立人が主張する「当業者の技術常識」の付加に相当するということはできない。よって、かかる主張はこれを是とする理由がない。

(1-2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、いずれも上述の「カバープレート」を、何らかの形で備えたスライディングノズル装置であるとした点で、上記した本件特許発明1と構成を共通するものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、上記甲1ないし甲4に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(1-3)小括
以上のとおり、本件特許発明1ないし4は、甲1ないし甲4に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)理由2(明確性)について
特許異議申立人は、本件特許発明1ないし4の「カバープレート」に係る発明特定事項の「外形が・・・固定ノズルプレートに類似」との記載は、「類似」という記載は、全く同じではなく互いに異なる形状を有するものであることを意味しているが、どの程度異なるのかが明確ではなく、本件特許発明1ないし4の発明の範囲を不明瞭にする表現であると主張している。
当該「カバープレート」及び「固定ノズルプレート」の関係を「外形」が「類似」と記載した点について、【図5】の図示とともに本件特許明細書の【0039】?【0046】に説明がなされており、「カバープレート」、「固定ノズルプレート」、及び「摺動ノズルプレート」によって、「幅d2の隙間」、「幅d1の間隙」、「d0」を形成する関係であることが示されるとともに、本件特許発明1ないし4で「外形が・・・固定ノズルプレートに類似」とされる事項は、【0044】に「吐出されたガスはリング状凹溝5bを通り、複数の直線状凹溝5cに分かれてカバープレート5と固定金枠体2Aとの間の幅d2の隙間に達する。幅d2の隙間に達したガスは、固定ノズルプレート1と固定金枠体2Aとの間の幅d1の間隙21Abに達するので固定ノズルプレート1の下面12と摺動ノズルプレート31の上面(摺動面)31aとの間がガスシールされる。」とされた内容の達成が求められると理解できる。
そうすると、当該類似とされる事項は、上述のガスシール機能を達成するために必要な幅d2の隙間を形成し、その隙間から幅d1の隙間へとガスが到達できるような形状を備えることが、当業者には十分理解できるため、カバープレートの外形に対して「固定ノズルプレートに類似」とされても直ちに不明確とはならない。
よって、かかる主張は理由がない。

(3)理由3(サポート要件)について
特許異議申立人は、本件特許発明1ないし4の「カバープレート」に係る発明特定事項の「外形が・・・固定ノズルプレートに類似」との記載に対して、「類似」という記載から、外形が同じではないことを表現しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、外形が同じ実施形態しか開示されておらず、外形が異なる実施形態は開示されていない。よって、本件特許発明1?4は、発明の詳細な説明に記載されたものではないと主張しているが、上記(2)で述べた「カバープレート」の「外形」を理解するための開示の中には、「幅d2の隙間に達したガスは、固定ノズルプレート1と固定金枠体2Aとの間の幅d1の間隙21Abに達するので固定ノズルプレート1の下面12と摺動ノズルプレート31の上面(摺動面)31aとの間がガスシールされる。」を満足する外形を有すれば事足りるのであって、多くの「類似」と言える相対的な寸法関係が成立することを当業者であれば当然に理解できる。そのため、かかる主張は理由がない。


6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-11-29 
出願番号 特願2012-17460(P2012-17460)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B22D)
P 1 651・ 537- Y (B22D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 英夫藤長 千香子  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 西村 泰英
刈間 宏信
登録日 2016-01-22 
登録番号 特許第5873728号(P5873728)
権利者 東京窯業株式会社 豊栄興業株式会社
発明の名称 ガスシール式スライディングノズル装置  
代理人 曾我 道治  
代理人 大川 宏  
代理人 大川 宏  
代理人 田口 雅啓  

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