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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B |
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管理番号 | 1322315 |
異議申立番号 | 異議2016-700814 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-31 |
確定日 | 2016-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5882240号発明「ポリマー不織布を有する多軸積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5882240号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5882240号の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、平成23年3月11日に国際出願(優先権主張 平成22年3月18日(EP)欧州特許庁)され、平成28年2月12日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5882240号の請求項1ないし17の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.申立理由の概要 申立人は、特表2008-540766号公報(以下「甲1」という。)、特開2002-96413号公報(以下「甲2」という。)及び特開2009-19202号公報(以下「甲3」という。)を提出し、請求項1、3、5、8、11?15、17に係る特許は甲1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し(以下「申立ての理由1」という。)、請求項1?17に係る特許は甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項に基づき容易想到であるから特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり(以下「申立ての理由2」という。)、特許法113条第2号に該当するので、請求項1?17に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 4.判断 (1)申立ての理由1について 甲1には、不織布が、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に可溶の第1のポリマー成分と、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に不溶の第2のポリマー成分とを有すること、及び、第1のポリマー成分が第2のポリマー成分よりも低い溶融温度を有することが記載されていないから、甲1には、請求項1、3、5、8、11?15、17に係る発明の発明特定事項である「第1のポリマー成分は、第2のポリマー成分よりも低い溶融温度を有し、前記積層体にエポキシドマトリックス樹脂、シアナートエステルマトリックス樹脂又はベンゾオキサジンマトリックス樹脂又はこれらのマトリックス樹脂の混合物を含浸させる際に、第1のポリマーは、前記マトリックス樹脂又は前記マトリックス樹脂混合物中に可溶であり、第2のポリマー成分は不溶である」との事項は記載されておらず、当該事項を備えることが自明のことともいえない。 したがって、請求項1、3、5、8、11?15、17に係る発明は甲1に記載された発明ではない。 申立人は、甲1の段落【0113】の「本発明の樹脂可溶熱可塑性ベールは、硬化性樹脂マトリクス系と適合しかつそれを補完することを特徴とする。これに関して、前記樹脂マトリクスに更に適合または補完性熱可塑性強化材料を含有させることも可能であり、そのような材料は本ベールに入れる樹脂可溶熱可塑材と同じまたは異なる材料である。前記樹脂に取り込ませるそのような熱可塑材は可溶または不溶であってもよい。」との記載から、甲1発明の「ベールに入れられる樹脂可溶熱可塑材」は、本件請求項1に係る発明の「第1のポリマー成分」に相当し、甲1発明の「樹脂可溶熱可塑材に不溶な補完性熱可塑性強化材料」は、本件請求項1に係る発明の「第2のポリマー成分」に相当すると主張している。 しかし、上記甲1の段落【0113】の「前記樹脂マトリクスに更に適合または補完性熱可塑性強化材料を含有させることも可能であり」との記載によると、「補完性熱可塑性強化材料」は、樹脂マトリクス(本件請求項1に係る発明の「マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物」に相当)に含有させるものであり、ベール(本件請求項1に係る発明の「不織布」に相当)に含有させるものではないから、甲1発明の「樹脂可溶熱可塑材に不溶な補完性熱可塑性強化材料」は、本件請求項1に係る発明の「第2のポリマー成分」に相当しないので、請求人の上記主張には理由がない。 (2)申立ての理由2について 上述のとおり、甲1には、不織布が、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に可溶の第1のポリマー成分と、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に不溶の第2のポリマー成分とを有すること、及び、第1のポリマー成分が第2のポリマー成分よりも低い溶融温度を有することが記載されていない。 また、甲2には、不織布を構成する繊維の鞘部を構成する低融点ポリマー(本件請求項1に係る発明の「第1のポリマー成分」に相当)と芯部のポリマー(本件請求項1に係る発明の「第2のポリマー成分」に相当)の溶融温度が異なることは記載されているが、鞘部を構成する低融点ポリマーと芯部のポリマーのそれぞれが、成形の際に複合強化繊維基材の積層体に含浸する樹脂(本件請求項1に係る発明の「マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物」に相当)中に可溶であるか不溶であるか記載されていない。 さらに、甲3には、不織布が、第1のポリマー成分及び第2のポリマー成分とを有することが記載されていない。 よって、甲1?甲3のいずれにも、請求項1?17に係る発明の発明特定事項である「第1のポリマー成分は、第2のポリマー成分よりも低い溶融温度を有し、前記積層体にエポキシドマトリックス樹脂、シアナートエステルマトリックス樹脂又はベンゾオキサジンマトリックス樹脂又はこれらのマトリックス樹脂の混合物を含浸させる際に、第1のポリマーは、前記マトリックス樹脂又は前記マトリックス樹脂混合物中に可溶であり、第2のポリマー成分は不溶である」との事項は記載されておらず、当該事項を備えることが自明のことともいえない。 そして、本件特許の請求項1?17に係る発明は当該事項を備えることで、「良好なドレープ適性及びプリフォーム中での積層体の固定性、マトリックス樹脂での含浸の際の良好な透過性並びに高い機械強度及び高い耐衝撃性を有する部材を製造可能である」との格別な作用効果を奏するものである。 したがって、請求項1?17に係る発明は甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項に基づき容易に発明をすることができたものではない。 申立人は、甲1の段落【0113】の記載から、甲1発明は「前記積層体にエポキシドマトリックス樹脂、シアナートエステルマトリックス樹脂又はベンゾオキサジンマトリックス樹脂又はこれらのマトリックス樹脂の混合物を含浸させる際に、第1のポリマーは、前記マトリックス樹脂又は前記マトリックス樹脂混合物中に可溶であり、第2のポリマー成分は不溶である」ことを前提に、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分の融点の範囲を甲2記載事項に基づいて設定することは適宜なし得ると主張する。 しかし、(1)に示したとおり、甲1発明の不織布は、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に可溶の第1のポリマー成分と、マトリックス樹脂又はマトリックス樹脂混合物中に不溶の第2のポリマー成分とを有するものではないので、請求人の上記主張には理由がない。 5.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-11-30 |
出願番号 | 特願2012-557494(P2012-557494) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山本 昌広、平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 山田 由希子 |
登録日 | 2016-02-12 |
登録番号 | 特許第5882240号(P5882240) |
権利者 | トウホウ テナックス ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング |
発明の名称 | ポリマー不織布を有する多軸積層体 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 久野 琢也 |