• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1322327
異議申立番号 異議2016-700902  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-21 
確定日 2016-12-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第5892202号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5892202号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5892202号の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年7月29日(優先権主張 平成23年1月11日)に出願した特願2011-167142号の一部を平成26年7月4日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月4日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人海老原健雄(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5892202号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明は、以下のとおりのものである。
「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取り付けられる円形状の器具本体と;
前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体の前記開口の外側に配設された点灯装置と;
前記点灯装置を覆うとともに、前記器具本体に取り付けられ、器具本体から前面側に向かう側壁を有する略短円筒状の点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、前記開口を囲むように、かつ、少なくとも最外周が前記点灯装置よりも外側となるように前記本体に配設された複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
複数の発光素子を含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に取付けられる拡散カバー部材と;
前記複数の基板のうち特定の基板の前面の内周側に設けられ前記点灯装置から出力線を介して直流出力を発光素子に供給する電源供給接続部と;
特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板間を電気的に接続する配線接続部と;
前記電源供給接続部を含めて前記基板の全面を覆うとともに、半径方向に向かって形成された出力線通過開口を有して、前記基板と拡散カバー部材との間に設けられる拡散部材と;を具備し、
前記点灯装置から導出される出力線は、出力線通過開口を介して半径方向に延出して電源供給接続部に接続されることを特徴とする照明器具。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、次の甲第1?12号証を提出し、以下の申立理由1?4により、特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:登録実用新案第3154761号公報
甲第2号証:特開2008-124008号公報
甲第3号証:特開2008-300203号公報
甲第4号証:特開平8-329709号公報
甲第5号証:特開平11-39931号公報
甲第6号証:特開2001-338505号公報
甲第7号証:特開2010-3683号公報
甲第8号証:特開2010-15798号公報
甲第9号証:登録実用新案第3160808号公報
甲第10号証:登録実用新案第3097580号公報
甲第11号証:特開2010-80372号公報
甲第12号証:特開昭60-130001号公報

1 申立理由1(特許法第29条第2項)
本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?12号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2(特許法第36条第4項第1号)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

3 申立理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

4 申立理由4(特許法第36条第6項第2号)
本件発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第4 各甲号証の記載事項等
1 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本考案は、LED灯具に関するものであり、さらに詳しくは、修理可能な環境保全多機能モジュール式LED灯具に関するものである。」
(1b)「【0016】
図1乃至図3を参照しながら、本考案に係るLED灯具について詳細に説明する。
本考案に係るLED灯具は、灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されたものである。
【0017】
灯座10は、放熱し易いアルミニウム金属材質からなり、ほぼディスク状で、底板11と底板11の周縁から上へ伸びる周壁12があり、また、底板11の中心に、固定枠13が設けられ、上記固定枠13の上方に、リング状シート131が設置され、リング状シート131の中心に、バイアホール132が形成され、また、固定枠13のリング状シート131の両側から、それぞれ、下へスタンド133が設けられて、固定枠13が、そのスタンド133により、底板11に固定され、また、底板11において、周縁に沿って、一体的にプレスされて、中央が上へ突出するリング状突縁111が形成され、上記底板11にも、複数の、下へ突出し、一体的にプレスされるリブ112が形成されてある。
【0018】
灯笠20は、透過材質からなり、上記灯座10に対応して、ほぼ円弧面のディスク状であり、上記灯座10に設置され、また、中心に、開口21が形成されて、ロック蓋22があり、上記ロック蓋22が、灯笠20の開口21に通せる約筒状で、ロック蓋22の上段の外周に、突縁221が設けられ、灯笠20に対して位置付けでき、また、上記ロック蓋22の内壁に螺条222が形成されてある。
【0019】
LED発光モジュール30は、複数設けられてあり、灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され、それぞれに、基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられる。上記基板31が、上記底板11のリング状突縁111に対応して、扇形になり、基板31が、リング状突縁111の上に設置され、他のLED発光モジュール30と、リング状に囲み、また、それぞれの基板31に、複数のLED311が配列され、基板31の一側に、ともに、差込口金312が設けられてある。
【0020】
また、上記LED発光モジュール30の基板31の上方に、上記外蓋32が嵌設され、上記外蓋32が、基板31に対応して扇形になり、その両側に、それぞれ、ラグ321が形成され、これにより、その外蓋32で、底板11に固定され、また、簡単に交換できるようにしてある。上記外蓋32が、所定の色を有する透過材質からなり、それにより、光混合の作用が実現される。
・・・
【0022】
電源制御回路板40は、灯座10の底板11の中心に固定されてあり、上記LED発光モジュール30に対応して、LED発光モジュール30にある差込口金312が差し込まれる複数の差込ソケット41が設置され、また、一側に、更に、充電式電池42が設置されてある。
【0023】
検出センサ50は、筒体であり、その上段が、上記固定枠13のバイアホール132を通してリング状シート131に固定され、その上段の外周に、螺条51が設けられ、灯笠20の開口21を通してロック蓋22と螺着され、その上端が、灯笠20から露出でき、外部の環境を検出できる。また、電源制御回路板40と、電気的に接続され、また、非常照明や人体或いは各種類の災害の検出及び警報ができる多機能を有する。例えば、人体検出センサや音響制御検出センサ、火災検出センサ、地震検出センサ、停電検出センサ、一酸化炭素検出センサ等である。本実施例において、上記検出センサ50が停電検出センサであり、その上端に、光源52が設置され、上記検出センサで停電を検出できる。また、停電の場合、充電式電池42から電源を供給し、非常照明を実現できるようにしてある。
・・・
【0025】
図2で示すように、本考案のより良い実施例であるLED灯具は、天井式の円盤灯であり、上記灯座10の底板11を、一般の部屋の天井に組立てた場合、上記灯座10が、底板11のリブ112により、天井との間に、隙間が形成されて、放熱の効果が得られる。」
(1c)甲第1号証には、以下の図が示されている。


イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)甲第1号証には、LED灯具に関する技術について開示されているところ(摘示(1a))、その具体的な構成について、摘示(1b)によれば、
・LED灯具は、灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されること(段落【0016】)、
・灯座10は、ほぼディスク状で、灯座10の底板11は天井に設置可能であること(段落【0017】、段落【0025】)、
・電源制御回路板40は灯座10の底板11の中心に固定され、電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられていること(段落【0022】)
・灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられること、及び、固定枠13は、その上方にリング状シート131が設置され、リング状シート131の中心にバイアホール132が形成され、リング状シート131の両側からスタンド133が設けられて構成されていること(段落【0017】)
・検出センサ50は、その上段が固定枠13のバイアホール132を通してリング状シート131に固定されること(段落【0023】)、
・LED発光モジュール30は灯座10の底板11に複数設置され、各LED発光モジュール30はそれぞれ基板31を有すること、各基板31には複数のLED311が配列されるとともに、各基板31の一側に差込口金312が設けられていること、及び各基板31の差込口金312は電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれること(段落【0019】及び段落【0022】)、
・LED発光モジュール30の基板31の上方に外蓋32が嵌設され、該外蓋32は所定の色を有する透過材質からなること(段落【0020】)、
・灯笠20は透過材質からなり、灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、灯座10に設置されること(段落【0018】)、が明らかである。

してみると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されるLED灯具において、
前記灯座10は、ほぼディスク状で、前記灯座10の底板11は天井に設置可能であり、
前記電源制御回路板40は前記灯座10の底板11の中心に固定され、前記電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられ、
前記灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられ、前記固定枠13は、その上方にリング状シート131が設置され、前記リング状シート131の中心にバイアホール132が形成され、前記リング状シート131の両側からスタンド133が設けられて構成され、
前記検出センサ50は、その上段が前記固定枠13のバイアホール132を通して前記リング状シート131に固定され、
前記LED発光モジュール30は前記灯座10の底板11に複数設置され、各LED発光モジュール30はそれぞれ基板31を有し、各基板31には複数のLED311が配列されるとともに、各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ、
前記LED発光モジュール30の基板31の上方に外蓋32が嵌設され、該外蓋32は所定の色を有する透過材質からなり、
前記灯笠20は透過材質からなり、前記灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置される、LED灯具。」

2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、LEDユニット、LEDユニットの製造方法、及びLEDユニットを用いた天井用照明器具に関し、詳しくは環状または略C状を成すLEDユニットに画期的な実用性及び経済性をもたらすものである。」
(2b)「【0007】
まず、図1と図2に示す天井用照明器具について説明する。この照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、好ましくは第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ例えば第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料(例えば合成樹脂)などによるグローブ6とを備えている。」
(2c)「【0008】
第一本体1、第二本体3の材質としては例えば、鉄、アルミなどを用いる。第一本体1、第二本体3の少なくとも下面側は例えば白色の塗装膜・樹脂コーティング膜・セラミック膜などの薄膜が形成されて光反射性を有し、光反射率を例えば90%以上としている。LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑えている。第一本体1の下面周部には図示されないグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持される。第二本体3の略中央には孔7が形成される。第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は外周側部分よりも低く形成された段差状を成している。また、第二本体3には点灯制御回路部5から突設されたリモコン信号受信部9が貫通されている。なお、リモコン信号受信部9が第二本体3の上面側に配置され、第二本体3にはリモコン信号受信部9に対応する孔を形成してもよいし、さらに、その孔にリモコン信号が通過可能な樹脂板などを装着しておいてもよい。」
(2d)「【0009】
第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ、LEDユニット4は、その本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものである。次に、その取り付け機構について述べる。天井Cには引掛ローゼット10が固定されており、引掛ローゼット10に対して本照明器具が取り付けられている。引掛ローゼット10はその下端に鍔状の係止部11があるタイプを例示している。第一本体1の中央付近の前記段差状部下面には例えば環状を成す被取付具12が固定され、その略逆L状の被係止部13がその背面側のバネ14により中心孔方向に付勢されて、被係止部13の先端下面が係止部11の上面に係止されることにより、本照明器具が天井Cにいわゆる直付け状態で取り付けられている。」

3 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
本発明は、発光ダイオード等の半導体発光素子を光源としたシーリングライト等の照明器具に関する。」
(3b)「【0029】
器具本体10は、鉄板等の金属に白色塗装を施した一辺が約500mmの正方形をなすシャーシーとして構成され、シャーシーの略中央部には天井等の器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設ける。さらに、アダプタ12の周囲の空間部に光源体20を点灯するための点灯装置13を取り付け、対向する辺の外縁部14、15に光源体20を設置するための設置部16、17を設ける。図中18は、リモコン受光部である。」
(3c)「【0030】
光源体20は、半導体発光素子、本実施例では発光ダイオード21(以下「LED」と称す)で構成し、複数個のLED21を発光素子基板22に配置した直線状の長さが約100mmの線状の発光モジュール23として構成し、必要な個数、本実施例では5本の発光モジュールが選択されて1本の長尺な光源体20を構成する。この長尺な光源体20を2本用意して、器具本体10の対向する辺の外縁部14、15に設けられた設置部16、17に1本ずつ、発光部である各LED21がそれぞれ対向するようにして器具本体の外縁部に配設される。すなわち、器具本体のそれぞれの設置部16、17にはシャーシーから一体に形成された支持板24が立設され、支持板に各発光モジュールの発光素子基板22を取り付けて支持する(図2)。この支持板24は、各LED21の放熱板の作用を兼ね、また支持板の後面と後述するグローブ50の外周部内面との間で形成される空間部s内に、各LED21と点灯装置13を配線するためのコード等を収納する。」
(3d)「【0032】
反射体40は、鉄板等の金属に白色塗装を施した平板状をなし、両端部を2本のそれぞれの光源体20における各LED21に対向し、中間部分から器具本体の略中央部に向かって連続的に徐々に傾斜させた傾斜部41を形成する。反射体は、器具本体10を構成するシャーシーの略中央部に、ネジ若しくはスポット溶接等の手段で固定される。」

4 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(4a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状蛍光ランプを用いた照明器具に関する。」
(4b)「【0027】11は器具本体で、この器具本体11は、外観が円形でかつ薄型に形成され、天板12を備えており、この天板12の上面が後述する天井面27への取付面12a となる。器具本体11の中央には円形の開口部13が上下方向に開口形成され、この開口部13の周囲に環状の空間14を内部に有する収納部15が形成され、この収納部15の周囲に環状蛍光ランプ1が配設される環状の凹部16が形成されている。」
(4c)「【0030】器具本体11の収納部15の環状の空間14には、インバータ回路を有する放電灯点灯装置(インバータ点灯装置)25が配設されている。この放電灯点灯装置25の電源入力側にはアダプタ26が電線などで電気的に接続され、出力側には各ソケット18が電線などで電気的に接続されている。」
(4d)「【0033】また、器具本体11の凹部16の位置には、制光手段としての環状の反射板32が取り付けられている。この反射板32の反射面33は収納部15の下端周縁部から天板12の周縁部にかけて傾斜状に配設され、この反射面33に各環状蛍光ランプ1の上面側の一部が入り込む凹面部34が環状に形成されている。この凹面部34の断面形状は、環状蛍光ランプ1とほぼ同心円状になるように形成されている。
【0034】各凹面部34の各ソケット18に対向する位置には、ソケット18に挿入される環状蛍光ランプ1の口金ピン4が挿通する挿通孔35が形成されているとともに、環状蛍光ランプ1の口金3の外周に嵌合して保持するホルダ36が取り付けられている。各凹面部34のホルダ36とは反対側に環状蛍光ランプ1のガラスバルブ2の外周に嵌合して保持するランプホルダ21が取り付けられている。」

5 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電線処理を合理的に考慮した照明器具に関する。」
(5b)「【0006】図示の実施形態による天井直付型照明器具は、中央に天井Cへの取付部1が設けられその周囲において下面側に電気部品、例えば、インバータ回路基板2、直流電源回路基板3、外部より無線送信されるリモコン制御信号の受信部4、ソケット5などを配置した本体6と、この本体6の下面を覆うように設けられ中央に前記取付部1に対応する窓孔7が形成された反射板8と、前記取付部1と窓孔7間に設けられて前記電気部品と取付部1を隔離する絶縁筒9を備えている。そして、この絶縁筒9の外側には前記電気部品、この場合は受信部4に接続されたテープ電線10の係止部11を設けている。また、前記絶縁筒9の上面に前記電気部品、この場合は直流電源回路基板3に接続された電線12の通し溝13を設けている。なお、テープ電線10の他端はインバータ回路基板2または直流電源回路基板3に接続される。」
(5c)「【0008】反射板8はその周縁がビスなどで本体6の下面に取付けられ、反射板8によりインバータ回路基板2、直流電源回路基板3、テープ電線10、電線12の根元側などが覆われ、合成樹脂などの絶縁性ケースで覆われた受信部4は反射板8の孔18に通され、合成樹脂やセラミック製などの絶縁性外殻で覆われたソケット5は反射板8の孔19に通される。環状の蛍光ランプ20はソケット5に接続されるとともに、反射板8に取付けられた支持片21に支持される。」

第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「灯座10」は、本件発明の「器具本体」に相当する。
また、甲1発明の「灯座10」は、「ほぼディスク状」をなし、それは図2(摘示(1c))にも示されるとおり円形状をなすことが明らかであるから、本件発明の「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取り付けられる円形状の器具本体」とは、「円形状の器具本体」の限度で共通するものといえる。
イ 甲1発明の「電源制御回路板40」は、「前記灯座10の底板11の中心に固定され」るものであり、「LED311」を点灯させるための点灯装置として機能することは技術的に明らかであるから、本件発明の「前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体の前記開口の外側に配設された点灯装置」とは、「前記器具本体に配設された点灯装置」の限度で共通するものといえる。
ウ 甲1発明の「各基板31」は、本件発明の「複数の基板」に相当する。
また、甲1発明の「各基板31」には「複数のLED311が配列され」、基板31を有する「LED発光モジュール30」は「前記灯座10の底板11に複数設置され」るものであるから、各基板31は、その前面側がLED311の実装面をなし、その裏面側が灯座10に配設されることも明らかである。
さらに、甲1発明は、「各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ」て構成されるものであるところ、そのような各基板31と電源制御回路板40との配設態様に照らして、各基板31の少なくとも最外周が電源制御回路板40よりも外側となるように灯座10に配設されていることも明らかである(図2(摘示(1c))にも、そのような配設態様が示されている。)。
したがって、甲1発明の「各基板31」と、本件発明の「前面側に実装面が設けられ、前記開口を囲むように、かつ、少なくとも最外周が前記点灯装置よりも外側となるように前記本体に配設された複数の基板」とは、「前面側に実装面が設けられ、少なくとも最外周が前記点灯装置よりも外側となるように前記本体に配設された複数の基板」の限度で共通するものといえる。
エ 甲1発明の「複数のLED311」は、「基板31」に「配列される」ものであるから、本件発明の「前記基板上に実装された複数の発光素子」に相当する。
オ 甲1発明の「灯笠20」は、「透過材質からなり、前記灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置される」ものであり、図1及び図3(摘示(1c))にも示されているように、複数のLED311を含めた灯座10の前面側を覆うように灯座10に取付けられているカバー部材をなすことが明らかであるから、本件発明の「複数の発光素子を含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に取付けられる拡散カバー部材」とは、「複数の発光素子を含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に取付けられるカバー部材」の限度で共通するものといえる。
カ 甲1発明の「外蓋32」は、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に」「嵌設され」「該外蓋32は所定の色を有する透過材質からな」るものであるから、基板31の全面を覆う部材として機能することが明らかである。
したがって、甲1発明の上記「外蓋32」と、本件発明の「前記電源供給接続部を含めて前記基板の全面を覆うとともに、半径方向に向かって形成された出力線通過開口を有して、前記基板と拡散カバー部材との間に設けられる拡散部材」とは、「前記基板の全面を覆う部材」の限度で共通するものといえる。
キ 甲1発明の「LED灯具」は、本件発明の「照明器具」に相当する。

以上によれば、本件発明と甲1発明とは、
「円形状の器具本体と;
前記器具本体に配設された点灯装置と;
前面側に実装面が設けられ、少なくとも最外周が前記点灯装置よりも外側となるように前記本体に配設された複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
複数の発光素子を含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に取付けられるカバー部材と;
前記基板の全面を覆う部材と;を具備した、照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「器具本体」について、本件発明は、器具本体が「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取り付けられる」ものであるのに対し、甲1発明は、灯座10が「ほぼディスク状」をなし、「前記灯座10の底板11は天井に設置可能であ」る点。

<相違点2>
「点灯装置」について、本件発明は、点灯装置が「前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体の前記開口の外側に配設され」るものであるのに対し、甲1発明は、電源制御回路板40が「前記灯座10の底板11の中心に固定され」るものである点。

<相違点3>
本件発明は、「前記点灯装置を覆うとともに、前記器具本体に取り付けられ、器具本体から前面側に向かう側壁を有する略短円筒状の点灯装置カバー」を具備するものであるのに対し、甲1発明は、そのような点灯装置カバーを具備するものではなく、「前記灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられ」ている点。

<相違点4>
「基板」の設置態様について、本件発明は、複数の基板が「前記開口を囲むように」配設されているのに対し、甲1発明は、そのように構成されていない点。

<相違点5>
「カバー部材」について、本件発明は「拡散カバー部材」であるのに対し、甲1発明は、「透過材質からな」る「灯笠20」である点。

<相違点6>
本件発明は、「前記複数の基板のうち特定の基板の前面の内周側に設けられ前記点灯装置から出力線を介して直流出力を発光素子に供給する電源供給接続部と;特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板間を電気的に接続する配線接続部と」を備え、「前記点灯装置から導出される出力線は、出力線通過開口を介して半径方向に延出して電源供給接続部に接続される」ものであるのに対し、甲1発明は、「前記電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられ」、「各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ」ている点。

<相違点7>
「基板の全面を覆う部材」について、本件発明は、「前記電源供給接続部を含めて前記基板の全面を覆うとともに、半径方向に向かって形成された出力線通過開口を有して、前記基板と拡散カバー部材との間に設けられる拡散部材」であるのに対し、甲1発明は、「前記LED発光モジュール30の基板31の上方に」「嵌設され」る「外蓋32」であって、「該外蓋32は所定の色を有する透過材質からな」る点。

(2)判断
ア 本件発明は、「器具本体」が「中央部に開口を有し」て構成されることを前提として(相違点1)、「点灯装置」が「前記開口の外側に配設され」(相違点2)、また、「複数の基板」が「前記開口を囲むように」配設されるものであり(相違点4)、さらに、上記「点灯装置」を「覆う」ように「略短円筒状の点灯装置カバー」が配設されるものであるから(相違点3)、上記相違点1?4に係る本件発明の構成は、器具本体に開口を設けることに起因した、それぞれ相互に関連した技術事項を特定したものということができる。
イ ここで、異議申立人は、上記相違点1?4に関し、上記相違点1及び2に係る本件発明の構成は、甲第2?4号証に記載された周知の技術事項を適用することで容易想到である旨、上記相違点3に係る本件発明の構成は、甲第2?5号証に記載された周知の技術事項を適用することで容易想到である旨、及び、上記相違点4に係る本件発明の構成は設計的事項にすぎない旨主張するので(特許異議申立書29頁9行?30頁20行)、まずは、上記アのとおりそれぞれ相互に関連する相違点1?4に係る本件発明の構成が、甲1発明及び甲第2?5号証に開示された技術に基づいて容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。
ウ 甲第2?5号証には、天井に設置される照明器具に関する技術について開示されるところ、具体的には、器具本体、点灯装置、点灯装置カバー、及び基板の配設構造に関連し、
甲第2号証には、第一本体1及び第二本体3を含む本体の略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられること(摘示(2d))、第一本体1は、その略中央に孔8が形成されていること(摘示(2c))、及び、第一本体1の下面に点灯制御回路部5が設けられるとともに、該点灯制御回路部5は第二本体3の上方空間に収められ、また、第二本体3の下面に接してLEDユニット4が設けられること(摘示(2b))が記載され、
甲第3号証には、シーリングライト等の照明器具として(摘示(3a))、器具本体10を構成するシャーシーの略中央部に、器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設け、該アダプタ12の周囲の空間部に点灯装置13を設けること(摘示(3b))、前記シャーシーの略中央部に反射体40を設けること(摘示(3d))、及び、各LED21がそれぞれ対向するようにして器具本体の外縁部に配設されること(摘示(3c))が記載され、
甲第4号証には、環状蛍光ランプを用いた照明器具として(摘示(4a))、器具本体11の中央に円形の開口部13を形成すること(摘示(4b))、器具本体11の収納部15の環状の空間14に、放電灯点灯装置25を設けること(摘示(4c))、及び、器具本体11の凹部16の位置に環状の反射板32が設けられるとともに、該反射板33に形成された凹面部34に環状蛍光ランプ1が配設されること(摘示(4d))が記載され、
甲第5号証には、電線処理を合理的に考慮した照明器具として(摘示(5a))、本体6の中央に天井Cへの取付部1を設け、該取付部1の周囲に、インバータ回路基板2及び直流電源回路基板3を設けるとともに、本体6の下面を覆うように反射板8を設けること(摘示(5b))、及び、反射板8によりインバータ回路基板2及び直流電源回路基板3が覆われるとともに、反射板8に取付けられた支持片21に蛍光ランプ20が支持されること(摘示(5c))が記載されている。
エ ここで、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、「本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。」(段落【0014】)、「取付部6は、略円筒状に形成されたアダプタガイドであり、このアダプタガイドの中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。」(段落【0047】)、及び「なお、取付部6は、必ずしもアダプタガイド等と指称される部材である必要はない。例えば、本体1等に形成される開口であってもよく、要は、配線器具としての引掛けシーリングボディCbに対向し、アダプタAが係合される部材や部分を意味している。」(段落【0048】)と記載されているから、本件発明の「器具本体」に設けられる「開口」は、「器具取付面に配設された配線器具(引掛けシーリングボディCb)」への器具本体の取付けを目的として設けられることが明らかである。
そして、甲第2?4号証には、上記ウのとおり、天井に設置される照明器具に関し、器具本体の中央部に、配線器具への取付けを目的とした開口を設けることが記載されているところ、甲1発明の「灯座10」は、その底板11の中心に「電源制御回路板40」が固定されるものであるから、直接的には、上記甲第2?4号証に記載されるような配線器具への取付けを目的とした開口を設けることはできない。
オ そうすると、甲1発明の灯座10において、その中央部に開口を設けるためには、灯座10の底板11の中心に固定された電源制御回路板40を再配置する必要があるが、電源制御回路板40には、複数の差込ソケット41が設けられ、差込ソケット41は、各基板31の一側に設けられた差込口金312に差し込まれていることから、単に電源制御回路板40のみを再配置し得る構成とはいえないし、さらに、甲1発明は、固定枠13及び検出センサ50をも具備して構成されるものであるところ、その配設態様は「前記灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられ、前記固定枠13は、その上方にリング状シート131が設置され、前記リング状シート131の中心にバイアホール132が形成され、前記リング状シート131の両側からスタンド133が設けられて構成され、前記検出センサ50は、その上段が前記固定枠13のバイアホール132を通して前記リング状シート131に固定され」るというものであり、灯座10の底板11の中心には、固定枠13及び検出センサ50も配設されていることからして、もはや甲1発明の灯座10に、配線器具への取付けを目的とした開口を設けることには阻害要因があるというべきである。
カ そして、上記甲第2?4号証は、そのような固定枠13や検出センサ50をも備えた照明装置において、器具本体の中央部に開口を設け、それに伴う各構成部材の配設態様として、点灯装置を前記開口の外側に配設すること、複数の基板を前記開口を囲むように配設すること、さらに、かかる配設下の点灯装置を略短円筒状の点灯装置カバーで覆う技術を開示するものではない。
また、上記甲第5号証にも、甲第6?12号証にもそのような技術は開示されていない。
キ したがって、甲1発明に甲第2?5号証に開示された技術事項を適用したとしても、さらには甲第6?12号証に記載された技術事項を参考としても、上記相違点1?4に係る本件発明の構成に至るものではなく、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(3)小活
以上のとおり、本件発明は甲1発明と相違点1?7において相違するものであるところ、相違点1?4は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点5?7を検討するまでもなく、本件発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 申立理由2について
本件発明は、本件特許明細書の段落【0007】に記載されるとおり、「配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供すること」を技術課題とするものである。
そして、かかる課題を解決するために、本件発明は、少なくとも、「前記複数の基板のうち特定の基板の前面の内周側に設けられ前記点灯装置から出力線を介して直流出力を発光素子に供給する電源供給接続部」と「特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板間を電気的に接続する配線接続部」とを設けて構成されるものであるところ、そのような「電源供給接続部」と「配線接続部」とを用いた配線接続構造は、本件特許明細書に「基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。・・・そして、これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。」(段落【0015】)として、また、「さらに、図3及び図8を併せて参照して示すように、特定の基板21aの内周側には、電源供給接続部23が設けられている。この電源供給接続部23は、具体的には、コネクタであり、後述する点灯装置4から導出される出力線Wが、拡散部材3に半径方向に向かって形成された出力線通過開口23aを介して半径方向に延出して電源供給接続部23に接続され、基板21の配線パターンを介して主光源としての各発光素子22や補助光源としての発光素子22aに電力が供給されるようになっている。」(段落【0024】)として、明確に記載されている。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

3 申立理由3
上記2で述べたとおり、本件特許明細書には、「配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供すること」との技術課題を、「電源供給接続部」と「配線接続部」とを用いた配線接続構造にて解決することが記載されている。
したがって、本件特許発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていない発明であるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

4 申立理由4
上記2で述べたとおり、本件特許明細書には、「配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供すること」との技術課題を、「電源供給接続部」と「配線接続部」とを用いた配線接続構造にて解決することが記載されており、かかる配線接続構造は、請求項1に「前記複数の基板のうち特定の基板の前面の内周側に設けられ前記点灯装置から出力線を介して直流出力を発光素子に供給する電源供給接続部」及び「特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板間を電気的に接続する配線接続部」として明確に記載されている。
そして、上記「配線接続部」が、その実施の態様として、本件特許明細書の段落【0015】に記載される「コネクタCn」として構成されることも技術的に明らかである。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-12-01 
出願番号 特願2014-138245(P2014-138245)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F21S)
P 1 651・ 121- Y (F21S)
P 1 651・ 536- Y (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 良隆柿崎 拓  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
出口 昌哉
登録日 2016-03-04 
登録番号 特許第5892202号(P5892202)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 熊谷 昌俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ