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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B26B
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する B26B
管理番号 1322558
審判番号 訂正2016-390002  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-01-06 
確定日 2016-10-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5374419号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5374419号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5374419号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は以下のとおりである。

平成22年 2月15日 特許出願(特願2010-47083号)
平成25年 9月27日 設定登録(請求項数:1)
平成28年 1月 6日 本件審判請求

第2 審判請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件訂正明細書」及び「本件訂正特許請求の範囲」という。)のとおり請求項ごとに訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものである。
以下、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を、それぞれ「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」及び「本件特許図面」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を総称して「本件特許明細書等」という。
そして、本件訂正の内容を、訂正箇所に下線を引いて示すと、以下のとおりである。なお、上記のとおり、請求人は、本件訂正明細書及び本件訂正特許請求の範囲の双方を提出したが、訂正箇所は特許請求の範囲のみに発生し、本件特許明細書に訂正は発生していない。

<本件訂正の内容>
本件訂正前の本件特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
第1の刃と、
第2の刃と、
前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と、
前記本体と可動的に接続されたガイド板とを有し、
前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る
ことを特徴とするカッター。」
とあるのを、
「【請求項1】
第1の刃と、
第2の刃と、
前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と、
前記本体と可動的に接続され、該本体と略平行に接続された平板状のガイド板とを有し、
前記ガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する状態で、前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に出る
ことを特徴とするカッター。」
と訂正するものである。そして、本件訂正は、以下の訂正事項1ないし4からなるものである。

1. 訂正事項1
本件訂正前の、請求項1の「前記本体と可動的に接続されたガイド板」のうちの「本体」と「ガイド板」の「接続」の態様について、本件訂正前の「可動的に」に加え、更に「略平行に」との態様を追加する。

2. 訂正事項2
本件訂正前の、請求項1の「ガイド板」について、更に「平板状の」との態様を追加する。

3. 訂正事項3
本件訂正前の、請求項1の「前記本体が前記ガイド板に対して動く」ことのうちの「動く」について、更に「前記ガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する状態」で、「前記本体が前記ガイド板に対して動く」、すなわち、「動く」に対して追加的に条件を課す。

4. 訂正事項4
本件訂正前の、請求項1の「前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る」の「出る」態様について、更に「該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に」との態様を追加する。

第3 当審の判断

1. 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について

(1) 訂正事項4について

ア.まず、訂正事項4から検討する。訂正事項4は、「前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る」の「出る」態様について、本件訂正によって、更に「該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に」との態様を追加するものである。したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 本件特許明細書等には、「ガイド板(4)」と「本体(1)」とが「シャフト(3)」を共通軸として可動に軸着されたものが記載されている。 また、本件特許図面の図2及び3をみると、「本体(1)」内部で、「カッターナイフの刃(2)」が「ガイド板(4)」に対して、図3において紙面の前後方向に隣接して配置されていることの図示がある。そして、図2の「カッターナイフの刃(2)」及び「ガイド板(4)」はそれぞれ平板状であることの図示、図3の「カッターナイフの刃(2)」と「ガイド板(4)」が重なって配置されていることの図示、並びに、図2及び3の「カッターナイフの刃(2)」が薄板の状態で「本体(1)」に設置されていることの図示もある。以上の図示を踏まえると、「本体(1)」と「ガイド板(4)」とが「シャフト(3)」に共通軸として可動に軸着された状態で、「本体(1)」が「ガイド板(4)」に対して動いた結果を考えてみると、本件特許明細書記載の「第1の刃」又は「第2の刃」が、「該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に」出ることは明らかである。
よって、「第1の刃」又は「第2の刃」が、「該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に」出るものは、本件特許明細書等に記載されているから、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ. さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2について

ア. 訂正事項2は、「ガイド板」について、本件訂正によって、更に「平板状の」との態様を追加するものである。したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 上記(1)イ.に示したように、図2には「ガイド板(4)」が平板状であることの図示がある。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ. さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項1について

ア. 訂正事項1は、「本体」と「ガイド板」の「接続」の態様について、本件訂正前の「可動的に」接続することに加え、更に「略平行に」接続することを付加するものである。したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 訂正事項4に係る訂正によって、本件訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された「第1の刃」または「第2の刃」の「動き」は、「ガイド板と略平行」である。また、訂正事項2に係る訂正によって、同「ガイド板」は、「平板状」である。そうすると、当該請求項1の「第1の刃」または「第2の刃」の「動き」は、「平板状のガイド板」と「略平行」である。一方、当該請求項1には「前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体」との記載があるところ、「本体」に「第1の刃」と「第2の刃」が設けられている以上、「本体」と「第1の刃」及び「第2の刃」は同じ動きをすることは当然のことである。したがって、「第1の刃」または「第2の刃」の「動き」が「平板状のガイド板」と「略平行」であれば、「本体」のガイド板に対して呈する「動き」も「平板状のガイド板」と略平行であるといえる。
そうすると、上記訂正事項4及び2に係る訂正によって、本件訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された「本体」の「動き」は「平板状のガイド板」と略平行であるといえるところ、訂正事項1はこの点を明示的に特定したにすぎない。

したがって、上記(1)及び(2)に示したとおり訂正事項4及び2が本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、訂正事項1も、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ. さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4) 訂正事項3について

ア. 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の「前記本体が前記ガイド板に対して動く」ことのうちの「動く」について、「前記ガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する状態で、」との事項を条件として課すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ. 本件特許明細書の段落【0008】には、「これを使用する時は、ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ、シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッターナイフの刃(2)を出す。後は凹凸に沿わせて滑らせ、ノンスリップシートなどを切断する。」との記載がある。「ノンスリップシート」は「切断対象物」であり、「表面の凹凸に合わせ」は「表面に接する」ことであるから、本件特許明細書には、ガイド板が切断対象物の表面に接する状態をとることが示されている。さらに、「シャフト(3)を軸にして本体を傾ける」ることは結果としてガイド板に対して本体が「動く」ことを示しているといえる。
したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ. さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5) 小括
上記(1)ないし(4)に示したとおり、訂正事項1ないし4は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

2. 独立特許要件について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。

[訂正発明]
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正発明」という。)は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は上記第2に示したとおりである。

2-1. 特許法第36条第6項第2号について

上記1.(3)イ.に示したように、本件訂正特許請求の範囲の請求項1における、「該本体と略平行に接続された平板状のガイド板」との記載は、「第1の刃または第2の刃」が、「ガイド板に隣接した位置からガイド板と略平行」に「ガイド板から出る」ようにするために、「本体」と「ガイド板」との接続を「可動的」であることに加え、「略平行に」したものである。そして、上記1.(3)イ.に示したとおり、本件特許請求の範囲の記載から、「本体」の「動き」は、「平板状のガイド板」と略平行であるから、「該本体と略平行に接続された平板状のガイド板」との記載は、明確である。そして、本件明細書及び図面の記載とも整合する。

2-2. 特許第29条第1項第3号及び同条第2項について

(1)刊行物等
請求人は本件審判請求書において、甲第1号証として、以下の刊行物を提示した。
刊行物 米国特許第7,178,246号明細書

ア. 刊行物に記載された事項及び発明
上記刊行物は、本件特許の出願日前に頒布された刊行物であり、以下の事項が記載されている。(日本語訳は、平成26年(ネ)第10124号判決文中の訳文を参考にして当審で付した仮訳である。)

(ア)
「A cutting assembly is slidably mounted on a T-Square. The T-Square may include a scale having multiple indicia for measured cutting based on the size of the wallboard sheet being cut.」(1ページABSTRACT 1ないし4行)
(切断部は、T定規の上にスライド可能に設置される。T定規は、切断される壁板のサイズに基づいて測定される切断のための多数の索引を有する目盛りを含み得る。)

(イ)
「This invention relates to tools and devices for accurately scoring or cutting wallboard or like material using a knife referenced to an edge surface of the wallboard being cut, and in particular to a combination of T-square and articulating knife. 」(1欄12ないし16行)
(この発明は、壁板に正確に切込み線を入れる又は壁板を正確に切断する道具及び装置、又は切断される壁板端部の表面に関連するナイフ、特にT定規と連設型ナイフを用いた材料に関する。)

(ウ)
「The present invention serves to improve the function and productivity of a wallboard scoring and cutting tool by way of a dual extending and retracting blade cutting assembly slidably attached to a T-Square wherein the T-Square may include a scale having multiple indicia for quick measured cutting based on the size of the wallboard sheet being cut. ・・・」(2欄3ないし8行)
(この発明は、2方向への拡張を図り、切断される壁板のサイズに基づいて測定される切断のための多数の索引を有する目盛りを含み得るT定規にスライド可能に接続される、後退する切断刃装置による方法によって、壁板に切込み線を入れたり切断したりする道具の機能性及び製品性の改良を提供する。)

(エ)
「In summary the wallboard cutter according to one aspect of the present invention may be characterized as including a rocker housing having oppositely disposed retractable cutting blade assemblies, the housing pivotally mounted about a pivot mount on a base, the base slidable along the ruler arm of a modified T-Square. In particular, the base is slidably mounted on the T-Square so as to selectively slide along an upper side of a ruler arm of the T-Square.・・・」(2欄43ないし50行)
(壁板カッターにおける本件発明の一つの側面によれば、対抗して配置され、後退可能な切断刃を有するロッカーハウジング、ベースに回動可能に接続されたハウジング、修正されたT定規のルーラーアームに沿ってスライド可能なベース、として特徴づけられる。特に、ベースは、T定規のルーラーアームの上面に沿って選択的にスライド可能なT定規に配置される。)

(オ)
「・・・The main body of the cutting head 1 is mounted on cutter head base 10 , which is slidably mounted on T-Square ruler arm 11 , and adjustably located and locked in position along T-Square arm 11 using a quick lock such as a cam lock 20 . The T-Square fence 12 is slid along, in contact with, wallboard edge 33 thereby maintaining constant the distance between the knife blade 17 and wallboard edge 33 as the blade is drawn across the wallboard surface 32 .」(5欄62行ないし6欄3行)
(カッティングヘッド1の主要部は、ベース10の上に取り付けられており、ベース10は、T定規のルーラーアーム11上に摺動可能に取り付けられており、そして、カムロック20のような迅速にロック可能な構成を用いて、ルーラーアーム11に沿って位置を調節しロック可能に構成されている。T定規フェンス12は、壁板の縁33に接触しながら、縁33に沿って摺動可能であり、それによって刃部17と壁板の縁33は、刃部を壁板32の表面上で引いた際にも、一定の間隔を保つことができる。)

(カ)
「 1 . A wallboard cutter comprising:
a rocker housing pivotally mounted about a pivot mount on a base;
said base slidably mounted on a T-Square so as to selectively slide along an upper side of a ruler arm of said T-Square, said rocker housing selectively pivotable about an axis of rotation parallel with said ruler arm;
an oppositely disposed pair of cutting blade assemblies slidably mounted in oppositely disposed coplanar array within a corresponding pair of cavities in said rocker housing, said pivot mount between said pair of cavities,
a drive linkage mounted so as to cooperate between said base and said pair of cutting blades alternatingly to drive a cutting edge of a first blade assembly of said pair of cutting blade assemblies from said rocker housing in a first direction upon pivoting of a corresponding first side of said rocker housing downwardly and retain a second blade assembly of said pair of cutting blade assemblies within said rocker housing, or to drive said second blade assembly from said rocker housing in a second direction opposite said first direction upon pivoting of a corresponding second side of said rocker housing, opposite said first side, downwardly and retain said first blade assembly within said rocker housing,
wherein when said first side of said rocker housing is pivoted downwardly about said pivot mount said first blade assembly is rotated downwardly into cutting engagement with a sheet of wallboard when said T-Square is mounted on an edge of said sheet so as to lay said ruler arm flush on the sheet of wallboard, and wherein when said second side of said rocker arm is pivoted downwardly about said pivot mount said second blade assembly is rotated downwardly into cutting engagement with the sheet of wallboard when said T-Square is mounted on the edge of the sheet so as to lay said ruler arm flush on the sheet of wallboard;
and wherein said rocker housing is adapted to provide a handle for gripping by a user so that the user when gripping the handle translates said housing, blade assemblies, base and T-Square over the sheet of wallboard with said first or second blade assemblies in corresponding said cutting engagement when said housing is simultaneously pivoted downwardly on said first or second side respectively.」 (9欄50行ないし10欄26行)
(1.ベース上のピボット台に回転可能に備え付けられたロッカーハウジングと、
T定規のルーラーアームの上部に沿って選択的に摺動するためにT定規上に摺動自在に備え付けられた前記ベースと、前記ルーラーアームと平行な回転軸で選択的に回転可能である前記ロッカーハウジングと、
前記ロッカーハウジング内の対応する一対の空洞内部で対置された同一平面上に摺動可能にはめ込まれている互いに逆を向いた一対の切断刃部材と、前記一対の空洞の間のピボット台と、前記ロッカーハウジングの対応する第1の端が下方へ回動した際に、
前記一対の切断刃部材の第1の刃部の刃先を前記ロッカーハウジング内に保つために、あるいは、ロッカーハウジングが前記第1の端と反対側の対応する第2の端が下方に回動した際に、前記第2の刃部を前記ロッカーハウジングから前記第1の方向と反対方向の第2の方向に出し、前記切断刃部材の第1の刃を前記ロッカーハウジング内に保つために、前記ベースと前記一対の切断刃部材との間で協働するために配置された伝動リンク機構とを備え、
前記ロッカーハウジングの第1の端がピボット台を軸として下方に回動した場合には、前記ルーラーアームを壁板シート上に平らに置くために前記T定規が前記シートの縁に取り付けられた時、前記第1の刃部は下方に回動して壁板シートの切断部に入り、前記ロッカーハウジングの第2の端がピボット台を軸として下方に回動した場合には、前記ルーラーアームを壁板シート上に平らに置くために前記T定規がシートの縁に取り付けられた時、前記第2の刃部は下方に回動して壁板シートの切断部に入り、
前記ハウジングがそれぞれ第1又は第2の端において下方へ回動するのと同時に、柄を握った時の使用者が、対応する前記切断部内の前記第1又は第2の刃部材と共に、前記ハウジング、刃部材、ベース及びT定規を壁板シート上で移動させるために、前記ロッカーハウジングが使用者に握られる柄を提供するように適応された、
壁板カッター。)

(キ) 図1


(ク) 図12


(ケ)
上記(キ)の図1には、ロッカーハウジング1を、ルーラーアーム11に対して傾けて、切断をおこなっていることの図示がある。
また、図1及び上記(ク)の図12から、ロッカーハウジング1を支持するブラケット9、ベース10、ルーラーアーム11及びT定規フェンス12とで構成される一体物が、全体として平たい形状であることが、看取できる。
そして、上記(ク)の図12には、ベース10が、ロッカーハウジング1と、ブラケット9によりピボットピン4を軸に回動可能に接続されていることの図示がある。
さらに、図1の切断線34の図示、厚さのある壁板32を切断する時に、壁板32の表面に対して直角をなすように切断することが通常であることからすると、全体として平たい形状をなしている一体物の平たい方向の平面に対して、直交する方向の面に沿ってロッカーハウジング1が傾くように動くことが、看取できる。
また、図1には、壁板32切断時に、ルーラーアーム11と「T」字状に取り付けられたT定規フェンス12の一辺が、壁板32の縁に接触していることの図示がある。そして、上記摘記事項(オ)の、「T定規フェンス12は、壁板の縁33に接触しながら、縁33に沿って摺動可能であり、それによって刃部17と壁板の縁33は、刃部を壁板32の表面上で引いた際にも、一定の間隔を保つことができる。」との記載を踏まえると、切断時には、T定規フェンス12の壁板32の縁33に沿う摺動に伴って、T字状に取付けられたルーラーアーム11の下面が壁板32の表面に接して摺動することは明らかである。さらに、ルーラーアーム11の底面よりも下側になる壁板32に図1に図示されたように切り込みが生じるためには、第1刃部17又は第2の刃部は、ルーラーアーム11の底面よりも下の位置に出なければならないことも明らかである。
そして、壁板32の表面と下面が接するルーラーアーム11と、一辺が壁板32の縁に接触するT定規フェンス12の接続は、段差を有するものであることが明らかである。

(コ) 刊行物記載発明
摘記事項(ア)ないし(カ)、(キ)及び(ク)の図示、並びに認定事項(ケ)を整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されている。
「第1の刃部17と、
第2の刃部17と、
前記第1の刃部17と前記第2の刃部17を設けたロッカーハウジング1と、
前記ロッカーハウジング1と、ブラケット9によりピボットピン4を軸に回動可能に接続されたベース10であって、当該ベース10は、T定規フェンス12とルーラーアーム11が段差を有して接続されて構成されたT定規のルーラーアーム11の上部に沿って選択的に摺動するためにT定規上に摺動自在に備え付けられ、
前記ブラケット9、ベース10、ルーラーアーム11及びT定規フェンス12とで構成される一体物は、全体として平たい形状であり、
前記ロッカーハウジング1は、前記一体物の平たい方向の平面に対して、直交する面に沿う方向に前記軸により回動可能であり、
前記T定規フェンス12の一辺が壁板の縁33に接する状態で、前記ロッカーハウジング1を前記一体物に対して傾けることにより、前記第1の刃部17又は第2の刃部17が、前記ルーラーアーム11の底面よりも下の位置に出る
壁板カッター。」

(2) 対比
訂正発明と刊行物記載発明とを対比する。
刊行物記載発明の「第1の刃部17」、「第2の刃部17」及び「ロッカーハウジング1」は、訂正発明の「第1の刃」、「第2の刃」及び「本体」にそれぞれ相当する。
刊行物記載発明の「ピボットピン4を軸に回動可能に接続され」は、「回動」は動作の一形態であるから、訂正発明の「可動的に接続され」に相当する。
刊行物記載発明の「ブラケット9、ベース10、ルーラーアーム11及びT定規フェンス12とで構成される一体物」は、第1の刃部17又は第2の刃部17が、壁板32を切断する際に、切断方向を案内する作用を奏し、全体として平たい形状であるから、訂正発明の「ガイド板」に相当する。
刊行物記載発明の「壁板」は、切断されるものであるから、訂正発明の「切断対象物」に相当する。
刊行物記載発明の「壁板カッター」は、「カッター」であるから、訂正発明の「カッター」に相当する。
さらに、刊行物記載発明の「T定規フェンス12の一辺が壁板に接する状態」は、訂正発明の「ガイド板の一辺が切断対象物」に「接する状態」に相当する。

そうすると、訂正発明と刊行物記載発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「第1の刃と、
第2の刃と、
前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と、
前記本体と可動的に接続されたガイド板とを有し、
前記ガイド板が切断対象物に接する状態で、前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る
ことを特徴とするカッター。」

<相違点1>
「ガイド板」について、訂正発明の「ガイド板」は、「平板状」であるのに対し、刊行物記載発明の「一体物」は、全体として平たい形状ではあるものの、「平板状」ではない点。

<相違点2>
訂正発明の「本体」と「ガイド板」の接続は、「可動的に接続され、該本体と略平行に接続された」ものであるのに対し、刊行物記載発明の「ロッカーハウジング」と「一体物」の接続は、「可動的」ではあるものの、「一体物」に対して「ロッカーハウジング」は、「一体物」の平たい方向に対して「直交」する面に沿う方向に「可動」する点。

<相違点3>
「ガイド板の一辺が切断対象物に接する状態」について、訂正発明は「平板状のガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する」ものであるのに対し、刊行物記載発明は、「一体物」のうち一部である「T定規フェンスの一辺」が、切断対象物である「壁板」の「縁」に接するものである点。

<相違点4>
「第1の刃または第2の刃が出る」について、訂正発明は平板状の「ガイド板に隣接した位置からガイド板と略平行に出る」ものであるのに対し、刊行物記載発明の「第1の刃部または第2の刃部」が出る位置が、「一体物」の底面よりも下の位置であり、出る方向も「一体物」と「略平行」でなく「直交する方向」である点。

(3) 検討

ア. 特許法第29条第1項第3号について

(ア) 相違点1について
本件特許明細書には、「ガイド板」について、以下の記載がある。
「従来の欠点は、直定規とカッターナイフでノンスリップシートなどの凹凸に沿って、真っすぐ切断する際、光の向きや照度により見づらく、きれいに切断しにくかった。」(段落【0004】)
「【発明の効果】・・・ このシートカッターはノンスリップシートなどの表面の凹凸に、ガイド板(4)を合わせ、シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで、設けてあるカッターナイフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わせ滑らせるだけで、光の向きや照度に左右される事なく、簡単できれい、かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。」(段落【0006】)
そうすると、訂正発明は、「ガイド板」を平板状としたことで、「第1の刃または第2の刃」が「ガイド板」に隣接した位置から「ガイド板」と「略平行」に出ることを可能とし、かつ、ノンスリップシートなどの表面の凹凸に、「ガイド板」の一辺を合わせ、「後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わせて滑らせる」こと、及び、「本体」に設けられた「第1の刃と第2の刃」により、光の向きや照度に左右される事なく、簡単できれい、かつ迅速にノンスリップシート等を切断できる」との格別な作用効果を奏する。
一方、刊行物には、「ブラケット9、ベース10、ルーラーアーム11及びT定規フェンス12とで構成される一体物」は全体として平たい形状であるものの、「ルーラーアーム11」と「T定規フェンス12」とが段差を有して接続されていることからして、全体形状が「平板状」であるとはいえない。また、刊行物には、「平板状」とすることができるとの記載はないし、示唆もされていない。
そして、刊行物記載発明は、訂正発明の上記格別とされた作用効果を奏するとは認められない。
したがって、相違点1は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。

(イ)相違点3について
訂正発明は、「平板状のガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する」ことにより、上記(ア)に示したように、ノンスリップシート等の表面の凹凸に「ガイド板」の一辺を合わせ、「後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わせて滑らせる」ことを可能とすることで、上記格別とされた作用効果を奏するものである。
一方、刊行物には、上記(1)ア.の摘記事項(オ)に「T定規フェンス12は、壁板の縁33に接触しながら、縁33に沿って摺動可能であり、それによって刃部17と壁板の縁33は、刃部を壁板32の表面上で引いた際にも、一定の間隔を保つことができる。」との記載がある。そうすると、刊行物記載発明は、「一体物」の一部である「T定規フェンスの一辺」が、「壁板の縁」に接触することで、「刃部」の「壁板の縁」からの位置を一定に保つものである。
よって、訂正発明の「ガイド板の一辺」と、刊行物記載発明の「一体物」のうちの「T定規フェンスの一辺」とは、切断方向を案内するという点で機能は一致するものの、「切断対象物」との接触箇所の点で明らかな相違がある。そして、刊行物には「一辺が切断対象物の表面に接する」ことの記載はないし、示唆もされていない。
そして、刊行物記載発明は、訂正発明の上記格別とされた作用効果を奏するとは認められない。
したがって、相違点3は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。

(ウ)相違点2及び4について
上記のとおり、刊行物記載発明は、「一体物」の一部である「T定規フェンスの一辺」が、「壁板の縁」に接触することで、「刃部」の「壁板の縁」からの位置を一定に保つものである。したがって、「一体物」は「刃部」と「壁板の縁」を含むように、切断対象物の表面に平行である必要がある。一方、訂正発明は「平板状のガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する」ことが必要であり、そのためには、「平板状のガイド板」が切断対象物の表面と平行であってはならない。
このように、訂正発明が相違点3に係る構成を備えることで、訂正発明と刊行物記載発明とは、「切断対象物」の表面に対する「ガイド板」の方向が相違するところ、相違点2及び4は、当該相違によって生じる、「ガイド板」と「本体」との接続関係、及び、「ガイド板」と「刃」との動きである。
したがって、相違点3が実質的な相違点である以上、相違点2及び4も形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。

(エ) 小括
上記(ア)ないし(ウ)に示したように、上記相違点1ないし4は、実質的な相違点であるといえるから、訂正発明は、刊行物に記載された発明であるということはできない。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるということはできない。

イ. 特許法第29条第2項について
訂正発明と刊行物記載発明とを対比すると、上記(2)に示したとおりの<一致点>で一致し、<相違点1>ないし<相違点4>で相違する。
そこで、以下に検討する。

(ア) 相違点1について
刊行物記載発明は、切断対象物である「壁板」の「縁」に接するために、ルーラーアーム11とT定規フェンス12が段差を有して接続されたものであり、これにより、「刃部」の「壁板の縁」からの位置を一定に保つものである。そうすると、ルーラーアーム11とT定規フェンス12を接続したもの全体が、「平板状」であるならば、「壁板」の「縁」に接することができなくなるのであるから、刊行物記載発明において「ガイド板」を「平板状」となすことには阻害要因が存在し、「ガイド板」を「平板状」となすことの動機付けがない。
したがって、刊行物記載発明に基づいて、相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

(イ) 相違点3について
上記ア.の(イ)に示したように、刊行物記載発明は、「一体物」の一部である「T定規フェンスの一辺」が、「壁板の縁」に接触することで、「刃部」の「壁板の縁」からの位置を一定に保つものであるから、「壁板の縁」に接触することが必要な構成であり、一体物を「壁板の縁」以外の箇所に接触させて切断方向を案内することの動機付けがない。
したがって、「ガイド板」が「切断対象物」に接する状態として、刊行物記載発明の「壁板の縁に接する状態」とすることに代えて、壁板の表面に接する状態とすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

(ウ)相違点2及び4について
上記ア.の(ウ)に示したように、相違点2及び4は、相違点3に係る構成を備えることで生じる相違点であるから、相違点3が、当業者が容易になし得た事項であるということはできない以上、相違点2及び4も、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。

(エ) 小括
上記(ア)ないし(ウ)に示したように、刊行物記載発明において、上記相違点1ないし4に係る構成を適用することは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。したがって、訂正発明は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

2-3. 独立特許要件についてのまとめ
上記2-1.で示したとおり、本件訂正特許請求の範囲の記載は、訂正発明が明確ではないということはできないから、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
また、上記2-2.で示したとおり、訂正発明は、刊行物に記載された発明であるということはできず、また当業者が刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反するものではない。
そして、他に訂正発明について特許を受けることができないとする理由を発見しないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シートカッター
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は主に床材のノンスリップシートなどの凹凸を利用して、シートを切断する道
具である。
【技術背景】
【0002】
従来、直定規とカッターナイフを使用して、シートを切断していた。
【先行技術文献】
【0003】
【発明概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の欠点は、直定規とカッターナイフでノンスリップシートなどの凹凸に沿って、真っすぐ切断する際、光の向きや照度により見づらく、きれいに切断しにくかった。
本発明は以上のような欠点をなくすために作られた作品である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本体(1)の中に、カッターナイフの刃(2)を設け、シャフト(3)の通ったガイド板(4)を設ける。
本発明は、以上の構成によりなるシートカッターである。
【発明の効果】
【0006】
このシートカッターはノンスリップシートなどの表面の凹凸に、ガイド板(4)を合わせ、シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで、設けてあるカッターナイフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わせ滑らせるだけで、光の向きや照度に左右される事なく、簡単できれい、かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明の斜視図である。
【図2】 本発明の分解斜視図である。
【図3】 本発明の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本体(1)の中にカッターナイフの刃(2)を設け、シャフト(3)を軸にスイングするガイド板(4)を設ける。
本発明は以上のような構造である。
これを使用する時は、ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ、シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッターナイフの刃(2)を出す。
後は凹凸に沿わせて滑らせ、ノンスリップシートなどを切断する。
その他の応用例として、壁紙の施工時、入り隅や枠の凹凸に沿わせ、後は同様にシートカッターを滑らせる事により、壁紙の余分な部分を、地ベラや定規を使用せず切り取る。
【符号の説明】
【0009】
1 本体
2 カッターナイフの刃
3 シャフト
4 ガイド板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の刃と、
第2の刃と、
前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と、
前記本体と可動的に接続され、該本体と略平行に接続された平板状のガイド板とを有し、
前記ガイド板の一辺が切断対象物の表面に接する状態で、前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が該ガイド板に隣接した位置から該ガイド板と略平行に出る
ことを特徴とするカッター。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-09-16 
結審通知日 2016-09-23 
審決日 2016-10-04 
出願番号 特願2010-47083(P2010-47083)
審決分類 P 1 41・ 841- Y (B26B)
P 1 41・ 856- Y (B26B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 西村 泰英
久保 克彦
登録日 2013-09-27 
登録番号 特許第5374419号(P5374419)
発明の名称 シートカッター  
代理人 山本 真祐子  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 幸谷 泰造  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 幸谷 泰造  
代理人 山本 真祐子  
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