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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C09K
審判 全部無効 2項進歩性  C09K
管理番号 1322577
審判番号 無効2014-800067  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-04-30 
確定日 2016-10-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5311168号発明「液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5311168号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項1ないし7の一群の請求項ごとに訂正することを認める。 本件の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許に対する審判請求は、成り立たない。 本件の請求項2及び4に係る発明についての特許に対する審判請求は、不適法であるから、却下する。 審判費用は、7分し、請求人がその5、被請求人がその2をそれぞれ負担すべきものとする。 
理由 第1 請求の趣旨・手続の経緯

1.設定登録までの経緯
本件特許第5311168号に係る出願(特願2012-555222号)は、2012年10月5日の国際出願日になされたものとみなされる国際特許出願であり、平成25年7月12日に特許権の設定登録がなされたものである。

2.本件請求の趣旨及びその理由の概要
請求人は、平成26年4月30日付けで「特許第5311168号の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」という趣旨の本件審判を請求し、各特許を無効とすべき理由につき、概略、下記の理由を提示するとともに、下記証拠方法を提示した。

本件発明1ないし7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明、又は甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものである。よって、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。

請求人が請求時に提示の証拠方法:
甲第1号証:国際公開第2010/131614号
甲第2号証:国際公開第2010/090076号
甲第3号証:国際公開第2011/065299号
甲第4号証:特開2010-270178号公報
甲第5号証:特開2009-185285号公報
(以下、「甲1号証」などを「甲1」などと略していうことがある。)

3.第1回口頭審理までの手続の経緯
本件審判は、上記2.の請求の趣旨及び理由により請求されたものであり、以降の第1回口頭審理までの手続の経緯は、以下のとおりである。(なお、以下、審判被請求人を「被請求人」という。)
平成26年 5月21日付け 答弁指令・請求書副本の送付
平成26年 7月18日 答弁書・訂正請求書
平成26年 7月24日付け 弁駁指令(請求人あて)
・答弁書及び訂正請求書の各副本送付
平成26年 8月26日 弁駁書
平成26年10月16日付け 弁駁書副本送付
平成26年10月23日付け 審理事項通知書(両当事者あて)
平成26年12月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成26年12月25日 第1回口頭審理

4.答弁の趣旨
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」との趣旨の答弁をし、請求人が主張する上記無効理由は、いずれも理由がない旨の主張をしている。

5.弁駁書における請求人が主張する無効理由
請求人は、上記平成26年8月26日付け弁駁書において、本件特許の訂正が請求されたことに起因して必要となったとして、新たに下記(1)ないし(3)の各無効理由につき主張し、下記証拠方法を提示した。

(1)訂正後の請求項1?7は、甲第1号証、甲第2号証、又は甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とされるべきであり(無効理由A)
(2)訂正後の請求項1?4、6、7は、甲第1号証、甲第6号証に記載された発明に基いて、又は甲第3号証、甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とされるべきであり(無効理由B)
(3)訂正後の請求項1?4、7は、甲第7号証、又は甲第8号証に記載された発明であるから、またはそれらに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とされるべきである(無効理由C)。

<新たな証拠方法>
甲第6号証:国際公開第2012/020642号
甲第7号証:特開2010-53211号公報
甲第8号証:国際公開第2009/028367号

6.請求人による無効理由の撤回
請求人は、平成26年12月11日付け口頭審理陳述要領書において、本件審判請求書で主張する甲4及び甲5に基づく新規性違反に係る無効理由及び甲1の実施例5による「甲1発明1」に基づく新規性違反に係る無効理由につき撤回した。
また、請求人は、第1回口頭審理において、上記弁駁書及び口頭審理陳述要領書における「無効理由B」及び「無効理由C」につき撤回した。
(なお、上記各無効理由に係る主張の撤回につき、被請求人は上記口頭審理において同意した。)

7.第1回口頭審理以降の手続の経緯
第1回口頭審理以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 5月12日付け 審決の予告
平成27年 7月14日 訂正請求書・上申書(被請求人)
平成27年 7月31日付け 上申書副本送付(請求人あて)
平成27年 8月 3日付け 弁駁指令・訂正請求書副本送付
平成27年 9月 9日 弁駁書2
平成27年12月 3日付け 弁駁書2副本送付(被請求人あて)
平成27年12月 9日付け 審理終結通知
平成28年 1月15日付け 審理再開通知
平成28年 1月20日付け 審決の予告
平成28年 3月22日 訂正請求書・上申書(被請求人)
平成28年 3月29日付け 弁駁指令(請求人あて)
・訂正請求書及び上申書の各副本送付
平成28年 4月28日 弁駁書3
平成28年 6月 7日 上申書(被請求人・審理中止要請)
平成28年 6月 9日付け 上申書副本送付(請求人あて)
平成28年 6月16日 上申書(請求人・審理中止不採用)
平成28年 6月21日付け 通知書(両当事者あて・審理続行)
同日付け 弁駁書3副本送付(被請求人あて)
同日付け 上申書副本送付(被請求人あて)
同日付け 訂正拒絶理由通知
同日付け 職権審理結果通知(請求人あて)
平成28年 7月15日 意見書(請求人)
平成28年 7月25日 意見書(被請求人)・上申書(請求人)
同日 手続補正書(訂正請求書に係る)
平成28年 8月25日付け 審理終結通知

(なお、本件審判においては、平成28年3月22日に新たな訂正請求がなされたから、それ以前の平成26年7月18日及び平成27年7月14日になされた各訂正請求については、特許法第134条の2第6項の規定により、いずれも取り下げられたものとみなす。)

8.弁駁書3における証拠方法の新たな提示
請求人は、上記平成28年4月28日付け弁駁書3において、平成28年3月22日付け訂正請求に対する反論主張・立証を目的として下記の証拠方法を新たに提示した。

<新たな証拠方法>
甲第9号証 :国際公開第2008/102641号
甲第10号証:特開2010-275390号公報
甲第11号証:特開2008-7752号公報
甲第12号証:特開2011-213614号公報
甲第13号証:特開2008-144135号公報
甲第14号証:特開2005-35985号公報
甲第15号証:特開2004-2894号公報
甲第16号証:特開2003-183655号公報
甲第17号証:特開平7-101904号公報
甲第18号証:特開2003-307720号公報
甲第19号証:国際公開第2010/084823号

第2 訂正の適否についての当審の判断

1.訂正請求及びその手続補正について
平成28年3月22日付けの訂正請求は、願書に添付した特許請求の範囲(設定登録時のもの。)を、同訂正請求の請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであるが、平成28年7月25日付けの手続補正書により当該訂正請求書につき補正されたので、当該補正の適否につきまず検討する。

(1)手続補正書の補正内容
上記手続補正書では、以下のア.ないしウ.の点につき補正されている。

ア.訂正請求書の「(3)訂正事項(ア)訂正事項1」(第2頁第23行-第3頁第2行)に、
「前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を合物、のうち、前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を表す化合物」
とあるのを、
「前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を表す化合物」
と補正する。

イ.訂正請求書の「(3)訂正事項(カ)訂正事項6」(第5頁第2行-第8頁第6行)に、
「特許請求の範囲の請求項4に、「前記成分(A)として、・・・構成される、液晶組成物。」と訂正する。」
とあるのを、
「特許請求の範囲の請求項4を削除する。」
と補正する。

ウ.訂正請求書の「(3)訂正事項(コ)訂正事項10」(第9頁第12行-第10頁第11行)の、
「(コ)訂正事項10
請求項7に記載されていた「請求項4・・・液晶表示素子。」と訂正して、新たな請求項8に記載する。」
を削除する。

(2)各補正の適否
まず、上記ア.の補正につき検討すると、当該補正は、「訂正事項1」における重複誤記であることが明らかな記載を単に正すものであるから、当該「訂正事項1」に係る内容を実質的に変更するものではなく、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
次に、上記イ.の補正につき検討すると、当該補正により、「訂正事項6」に係る訂正対象である請求項4自体が削除されることとなり、本件無効審判に係る審理対象を変更拡張するものではないから、訂正請求書の要旨を変更するものとすべきものではない。
さらに、上記ウ.の補正につき検討すると、当該補正は、「新たな請求項8」なる増項訂正事項である「訂正事項10」を削除するものであり、本件無効審判に係る審理対象を変更拡張するものではないから、訂正請求書の要旨を変更するものとすべきものではない。
したがって、上記ア.ないしウ.の各補正は、いずれも訂正請求書の要旨を変更するものではなく、適法なものである。

(3)補正後の訂正請求の内容
上記(2)のとおり補正された平成28年3月22日付けの訂正請求は、願書に添付した特許請求の範囲(設定登録時のもの。)を、上記手続補正書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、具体的には下記訂正事項1ないし9からなるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「化合物を含有する誘電的に」とあるのを、「化合物、のうち、前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を表す化合物を含有する誘電的に」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「1種又は2種類以上の化合物を含む」とあるのを、「2種類以上の化合物を含む」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「含有する液晶組成物。」とあるのを、「含有する液晶組成物であって、
前記成分(A)として、式(12.2):
【化10】


で表される化合物をさらに含有し、
前記成分(B)として、式(4.4):
【化11】


で表される化合物をさらに含有し、
前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である、
液晶組成物(ただし、式
【化12】


(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに
液晶組成物の全重量に基づいて式
【化13】


(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、
を除く)。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1から4のいずれか一項」とあるのを、「請求項1または3」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1から5のいずれか一項」とあるのを、「請求項1、3、5のいずれか一項」と訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。」とあるのを、
「請求項1に記載の液晶組成物を用いたPSVAモード又はPSAモードのアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子であって、
前記液晶組成物は一般式(V)
【化24】


(式中、X^(51)及びX^(52)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp^(1)及びSp^(2)は単結合を表し、
Sp^(1)とSp^(2)の間の環構造
【化25】


は、式(Va-1)から式(Va-3)
【化26】


を表す。)で表される二官能モノマーを含有する、
アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。」と訂正する。

2.訂正の適否に係る判断

(1)特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするか否かについて

ア.訂正事項1ないし3について
請求項1に係る訂正事項である訂正事項1ないし3につき併せて検討すると、上記補正された訂正事項1に係る訂正により、請求項1の「一般式(2)」における並列的選択肢を減少させるとともに、訂正事項2に係る訂正により、請求項1の「一般式(9)」で表される化合物を2種以上使用することを規定し、訂正事項3に係る訂正により、当該訂正の前段部における「成分(A)」として「式(12.2)」で表される化合物と「成分(B)」として「式(4.4)」で表される化合物とを更に含有すること及び「式(40)」で表される化合物の含有量の下限値につき29重量%以上であることをそれぞれ直列的に付加すること並びに当該訂正の後段部における特定の化学構造を有する液晶化合物を含む液晶組成物の場合及び特定の化学構造を有する液晶化合物を一定量以上含有する液晶組成物の場合を除外する、いわゆる「除くクレーム」としているから、訂正事項1ないし3に係る各訂正により、請求項1に係る特許請求の範囲が実質的に減縮されていることが明らかである。
してみると、訂正事項1ないし3に係る各訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

イ.訂正事項4及び6について
訂正事項4及び6は、いずれも訂正前の請求項2及び4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

ウ.訂正事項5、7及び8について
訂正事項5、7及び8に係る各訂正は、引用する訂正前の請求項2及び4の削除に伴い、引用項番を削除して単に不整合を正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

エ.訂正事項9について
訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項7につき、上記ア.で示したとおりの訂正された請求項1を引用するものとし、更に液晶表示素子のモード種別について規定するとともに、「一般式(V)」で表される化合物を使用することを直列的に付加するものであるから、訂正事項9に係る訂正により、請求項7に係る特許請求の範囲が実質的に減縮されていることが明らかである。
してみると、訂正事項9に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

オ.小括
以上のとおり、本件訂正に係る訂正事項1ないし9に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるか、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであると認められる。

(2)特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて

ア.訂正事項1、2、4ないし9について
上記訂正事項1、2、4ないし9に係る訂正により、各請求項に加入された事項は、いずれも本件訂正に係る特許の願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された事項であることが明らかであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められる。
また、他の請求項の記載を引用する請求項における引用請求項の削除に係る訂正についても、本件特許明細書等に記載した事項に基づく複数の請求項の引用関係の一部を単に削除したものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められる。
したがって、訂正事項1、2、4ないし9に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものと認められる。

イ.訂正事項3について
上記訂正事項3に係る訂正につき検討すると、当該訂正の前段部における「成分(A)」として「式(12.2)」で表される化合物と「成分(B)」として「式(4.4)」で表される化合物とを更に含有すること及び「式(40)」で表される化合物の含有量の下限値につき29重量%以上であることをそれぞれ直列的に付加することは、本件特許明細書等に記載された事項であることが明らかであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められる。
また、当該訂正の後段部における特定の化学構造を有する液晶化合物を含む液晶組成物の場合及び特定の化学構造を有する液晶化合物を一定量以上含有する液晶組成物の場合を除外する、いわゆる「除くクレーム」とすることは、訂正前の請求項1に記載した事項で特定される発明における一部の態様を単に除外するものであって、当該除外によって、本件特許明細書等の記載に基づかない効果の発現等の新たな技術的事項が導入されるものでもない。
したがって、上記訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認められるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものと認められる。

ウ.新規事項の追加の有無に係るまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正事項1ないし9に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。

(3)特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するか否かについて

ア.訂正事項1ないし9について
訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも旧請求項1及び同項を引用する旧請求項2、3及び5ないし7を、新請求項1及び同項を引用する新請求項3及び5ないし7とするもの(請求項2及び4は削除)であるところ、訂正事項1ないし3により、旧請求項1について、「一般式(2)」の部分的化学構造に係る並列的選択肢を限定し(訂正事項1)、「一般式(9)」で表される化合物につき「1種又は2種以上の化合物を含む」としていたものを「2種以上の化合物を含む」と限定し(訂正事項2)、また、「成分(A)」として「式(12.2)」で表される化合物と「成分(B)」として「式(4.4)」で表される化合物とを更に含有すること及び「式(40)」で表される化合物の含有量の下限値につき29重量%以上であること(訂正事項3)を直列的に付加することにより特許請求の範囲を減縮するとともに、特定の化学構造を有する液晶化合物を含む液晶組成物の場合及び特定の化学構造を有する液晶化合物を一定量以上含有する液晶組成物の場合を除外する、いわゆる「除くクレーム」とすることにより(訂正事項3)、更に新請求項1のとおりに特許請求の範囲を減縮しようとするものと認められるものであるから、新請求項1及び同項を引用する新請求項3及び5ないし7についても、いずれも特許請求の範囲が減縮されているものと認められる。
また、上記(2)で示したとおり、訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
してみると、訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

イ.小括
以上のとおり、本件の訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

3.訂正に係るまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の各規定に適合するものである。
よって、本件訂正を認める。

第3 請求人主張の無効理由について
請求人が主張する無効理由の趣旨及び概略については、上記第1の2.で示したとおりであるが、その具体的な無効理由は、本件訂正を踏まえ、さらに請求人の一部の無効理由に係る撤回を含めると、以下の(1)及び(2)のとおりに整理することができる。

(1)訂正後の本件特許に係る請求項1、3及び5ないし7に記載された各発明は、いずれも甲1に記載された発明、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができるものではなく(以下「無効理由1」という。)、
(2)訂正後の本件特許に係る請求項1、3及び5ないし7に記載された各発明は、いずれも甲1に記載された発明、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができるものではないから(以下「無効理由2」といいかえる。)、
いずれにしても、訂正後の請求項1、3及び5ないし7に記載された各発明についての本件特許は、特許法29条の規定に違反してされたものであって、同法123条1項2号の規定に該当し、無効とすべきものである。

第4 当審の判断
当審は、
請求人が主張する無効理由1又は無効理由2につき、いずれも理由がないものであるから、訂正後の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許は、いずれも無効とすべきものでなく、
また、訂正後の請求項2又は4については、いずれも削除されたことにより、請求項2及び4についての無効審判請求は、不適法なものとして却下すべきもの、
と判断する。
以下、その理由につき詳述する。

I.本件特許に係る発明
本件特許に係る発明は、上記本件訂正で訂正された請求項1、3及び5ないし7に記載された事項で特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、
式(1):
【化1】


で表される化合物および一般式(2):
【化2】


(上記一般式(2)中、R^(2)は、炭素原子数2?5のアルキル基を表し、A^(2)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、X^(21)?X^(24)はそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表し、U^(2)は単結合を表し、Y^(2)はフッ素原子または-OCF_(3)を表す。)で表される化合物、のうち、前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を表す化合物を含有する誘電的に正の成分である成分(A)と、
式(40):
【化3】


で表される化合物および一般式(9):
【化4】


(式中、R^(91)、R^(92)はそれぞれ独立して炭素原子数2?5のアルキル基または炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、X^(91)、X^(92)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。)で表される2種類以上の化合物を含む、誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物であって、
前記成分(A)として、式(12.2):
【化10】


で表される化合物をさらに含有し、
前記成分(B)として、式(4.4):
【化11】


で表される化合物をさらに含有し、
前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である、
液晶組成物(ただし、式
【化12】


(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに
液晶組成物の全重量に基づいて式
【化13】


(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、
を除く)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
誘電的に正の成分(A)として、一般式(8)
【化6】


(式中、R^(8)は炭素原子数2?5のアルキル基を表し、A^(8)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、X^(86)?X^(89)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。)で表される1種又は2種類以上の化合物を含有する請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
式(10)
【化8】


で表される化合物を含有する請求項1または3に記載の液晶組成物。
【請求項6】
誘電的に中性な成分(B)として、一般式(16)
【化9】


(式中、R^(164)は炭素原子数2?5のアルキル基を表し、R^(165)は炭素原子数1?5のアルキル基またはアルコキシ基を表し、X^(161)およびX^(162)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表し、A^(16)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、m^(16)は0または1を表す。)で表される1種又は2種類以上の化合物を含有する請求項1、3、5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の液晶組成物を用いたPSVAモード又はPSAモードのアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子であって、
前記液晶組成物は一般式(V)
【化24】


(式中、X^(51)及びX^(52)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp^(1)及びSp^(2)は単結合を表し、
Sp^(1)とSp^(2)の間の環構造
【化25】


は、式(Va-1)から式(Va-3)
【化26】


を表す。)で表される二官能モノマーを含有する、
アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。」
(以下、項番に従い「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明7」といい、併せて「本件訂正発明」ということがある。)

II.各甲号証に記載された事項
請求人が提示した各甲号証には以下の事項が記載されている。

1.甲1
甲1には、以下の(a-1)ないし(a-10)の事項が記載されている。
(a-1)
「[請求項1]第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
Z^(5)は単結合またはエチレンであり;
X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;
式(1)において、Z^(1)およびZ^(2)の少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。
[請求項2]第一成分が式(1-1)から式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が式(3-1)および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4-1)および式(4-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;
R^(7)は独立して、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(4)は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
X^(1)、X^(2)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
[請求項3]第一成分が式(1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が式(3-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2に記載の液晶組成物。
[請求項4]第三成分が、式(3-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項2または3に記載の液晶組成物。
[請求項5]第四成分が式(4-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項6]液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、そして第四成分の割合が10重量%から85重量%の範囲である請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項7]第五成分として式(5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(6)およびZ^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;
mは、0、1または2であり;
mが0のとき、環Bは1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。
[請求項8]第五成分が式(5-1)から式(5-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項7に記載の液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項9]第五成分が式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項10]第五成分が、式(5-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項11]第五成分が、式(5-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(5-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項8に記載の液晶組成物。
[請求項12]第五成分の割合が5重量%から75重量%の範囲である請求項7から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項13]第六成分として式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;
環Dは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;
Z^(6)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;
X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;
nは1、2、または3であり;
nが2のとき、2つのZ^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、
nが3のとき、3つの環Dのうち少なくとも2つの環Dは独立して、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンである。
[請求項14]第六成分が式(6-1)から式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項15]第三成分が式(6-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項16]第三成分が式(6-10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項17]第三成分が式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項18]第三成分が、式(6-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(6-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項14に記載の液晶組成物。
[請求項19]液晶組成物の全重量に基づいて、第六成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項13から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項20]ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が2以上である請求項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項21]請求項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
[請求項22]液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項21に記載の液晶表示素子。」(59頁?68頁、「請求の範囲」)
(a-2)
「技術分野
[0001]本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するTN(twisted nematic)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モードまたはPSA(Polymer sustained alignment)モードの素子に関する。」(1頁3行?9行)
(a-3)
「背景技術
・・(中略)・・
[0003]これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。回転粘度も粘度と同様である。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
[0004]


[0005]組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
[0006]TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。・・(中略)・・
[0008]望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。」(1頁10行?4頁5行)
(a-4)
「発明が解決しようとする課題
[0009]本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。」(4頁7行?16行)
(a-5)
「[0038]本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
・・(中略)・・
[0041]第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
[0042]


[0043]成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。
化合物(1)は誘電率異方性を上げ、そして光学異方性を上げる。
化合物(2)は誘電率異方性を上げ、そして光学異方性を下げる。
化合物(3)は誘電率異方性を上げ、そして上限温度を上げる。
化合物(4)は上限温度を上げ、そして、下限温度を下げ、または粘度を下げる。
化合物(5)は下限温度を下げ、そして粘度を下げ、または光学異方性を最適にする。
化合物(6)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。
[0044]第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第五成分、
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第五成分+第六成分、および
第一成分+第二成分+第三成分+第四成分+第六成分、である。
・・(中略)・・
[0048]第四成分の好ましい割合は、上限温度を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約85重量%以下である。さらに好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約15重量%から約30重量%の範囲である。
・・(中略)・・
[0051]第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。
R^(1)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(1)は紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(2)およびR^(3)は、上限温度を上げるため、および粘度を下げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。好ましいR^(4)、R^(5)、およびR^(6)は、上限温度を上げるため、および粘度を下げるために、炭素数1から12のアルキルである。
R^(7)は独立して、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(7)は光学的異方性を上げるために炭素数2から12のアルケニルである。
[0052]好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
[0053]好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
[0054]好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
[0055]任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために、2,2-ジフルオロビニル、または4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
[0056]環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、mが0のとき、環Bは1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンであり、mが2である時の2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。2-フルオロ-1,4-フェニレンおよび2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンは、それぞれ両方の向きのどちらでもよい。好ましい環A、環Bおよび環Cは、粘度を下げるために1,4-シクロへキシレン、または光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
環Dは、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2または3のとき、そのうちの任意の2つの環Dは同じであっても、異なってもよく、nが3のとき、少なくとも2つの環Dは独立して、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンである。1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、および2,5-ピリミジンは、それぞれ両方の向きのどちらでもよい。好ましい環Dは、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
[0057]Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)はそれぞれ、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性を上げるために、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。特に、Z^(2)はジフルオロメチレンオキシが好ましく、Z^(4)は単結合が好ましい。
Z^(5)は単結合またはエチレンである。好ましいZ^(5)は粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンである。
Z^(6)およびZ^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり、nが2または3のとき、そのうちの任意の2つのZ^(6)は同じであっても、異なってもよく、nが2のとき、Z^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシである。好ましいZ^(6)およびZ^(7)は粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、上限温度をあげるためにカルボニルオキシである。
[0058]X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は誘電率異方性を上げるためにフッ素であり,上限温度を上げるために水素である。
[0059]Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいY^(1)は、下限温度を下げるためにフッ素である。
[0060]mは、0、1、または2である。好ましいmは、粘度を下げるために0であり,上限温度を上げるために2である。
[0061]nは、1、2、または3である。好ましいnは、下限温度を下げるために1であり,上限温度を上げるために3である。
[0062]第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R^(8)は、炭素数1から12の直鎖のアルキルまたは炭素数1から12の直鎖のアルコキシである。R^(9)、R^(10)、およびR^(11)は独立して、炭素数1から8を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から8を有する直鎖のアルコキシである。R^(12)は、炭素数2から8の直鎖のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から8のアルケニルである。R^(13)およびR^(14)は独立して、炭素数1から12の直鎖のアルキル、炭素数1から12の直鎖のアルコキシ、または炭素数2から12の直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
[0063]好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)から化合物(1-3-1)である。さらに好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)から化合物(1-1-3)である。特に好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)、および化合物(1-1-3)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)から化合物(2-3)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)、および化合物(2-3)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)から化合物(3-2-2)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)および化合物(3-2-1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)である。好ましい化合物(4)は、化合物(4-1-1)から化合物(4-2-1)である。さらに好ましい化合物(4)は、化合物(4-1-1)である。好ましい化合物(5)は、化合物(5-1-1)から化合物(5-9-1)である。さらに好ましい化合物(5)は、化合物(5-3-1)から化合物(5-5-1)および化合物(5-9-1)である。特に好ましい化合物(5)は、化合物(5-3-1)、化合物(5-5-1)、および化合物(5-9-1)である。好ましい化合物(6)は、化合物(6-1-1)から化合物(6-12-1)である。さらに好ましい化合物(6)は、化合物(6-1-1)、化合物(6-4-1)、および化合物(6-9-1)から化合物(6-12-1)である。特に好ましい化合物(6)は、化合物(6-9-1)から化合物(6-12-1)である。
[0064]


[0065]


[0066]


[0067]


[0068]


[0069]
・・(中略)・・

」(17頁4行?27頁末行)
(a-6)
「[0079]最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約-10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
[0080]この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCBまたはIPSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」(31頁6行?25行)
(a-7)
「[0100]実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物には不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
[0101]


」(37頁2行?38頁末行)
(a-8)
「[0121][実施例5]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-1-1) 12%
3-HHXB(F,F)-F (2-1) 6%
2-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 4%
3-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 3%
4-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 3%
2-HH-3 (4-1-1) 10%
2-HH-5 (4-1-1) 5%
3-HH-V (4-2-1) 3%
3-HH-VFF (4-2-1) 3%
5-HB-O2 (5-1-1) 5%
V-HHB-1 (5-3-1) 8%
3-HHB-1 (5-3-1) 7%
2-BB(F)B-3 (5-5-1) 4%
2-BB(F)B-5 (5-5-1) 4%
3-BB(F)B-5 (5-5-1) 4%
1-BB(F)B-2V (5-5-1) 4%
3-HBB-F (6-7-1) 3%
3-HBB(F,F)-F (6-8-1) 12%
NI=92.8℃;Tc≦-30℃;Δn=0.121;Δε=5.6;η=20.4mPa・s;VHR-1=98.6%;VHR-2=98.1%.」(52頁5行?26行)
(a-9)
「[0125][実施例9]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-1-1) 5%
3-BBXB(F,F)-F (1-3-1) 3%
3-HHXB(F,F)-F (2-1) 10%
2-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 4%
3-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 4%
2-HH-3 (4-1-1) 5%
3-HH-V (4-2-1) 7%
3-HH-V1 (4-2-1) 5%
1-BB(F)B-2V (5-5-1) 4%
2-BB(F)B-2V (5-5-1) 4%
3-BB(F)B-2V (5-5-1) 4%
V2-BB(F)B-1 (5-5-1) 3%
5-HBB(F)B-2 (5-9-1) 2%
3-HHB-CL (6-4-1) 3%
3-HHB(F,F)-F (6-5-1) 5%
2-HBB(F,F)-F (6-8-1) 2%
3-HBB(F,F)-F (6-8-1) 25%
5-GHB(F,F)-F (6) 5%
NI=92.0℃;Tc≦-30℃;Δn=0.128;Δε=8.1;η=20.9mPa・s;VHR-1=98.1%;VHR-2=97.8%.」(55頁1行?22行)
(a-10)
「[0128][実施例12]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-1-1)10%
3-HHXB(F,F)-F (2-1) 17%
2-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 3%
3-HHBB(F,F)-F (3-1-1) 3%
2-HH-3 (4-1-1) 5%
3-HH-4 (4-1-1)10%
V2-BB-1 (5-2-1) 5%
1-BB(F)B-2V (5-5-1) 5%
2-BB(F)B-2V (5-5-1) 5%
V2-BB(F)B-1 (5-5-1) 5%
5-HB-CL (6-1-1) 4%
3-HHB-CL (6-4-1) 5%
3-HHB(F,F)-F (6-5-1) 3%
5-HHB(F,F)-F (6-5-1) 3%
5-HBB-F (6-7-1) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-9-1) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F(6-12-1)5%
3-HHB-F (6) 3%
3-H2HB(F,F)-F (6) 3%
NI=94.1℃;Tc≦-30℃;Δn=0.127;Δε=8.1;η=18.5mPa・s;VHR-1=98.7%;VHR-2=98.3%.」(57頁5行?27行)

2.甲2
甲2には、以下の(b-1)及び(b-8)の事項が記載されている。
(b-1)
「請求の範囲
[請求項1]第一成分として、式(1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;Z^(5)およびZ^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;mは、0、1、または2である。ここで式(1-1)において、Z^(1)およびZ^(2)のどちらか少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。
[請求項2]第一成分が、式(1-1-1)および式(1-1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(1-3-1)および式(1-3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
[請求項3]第一成分が式(1-1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(1-1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(1-3-1)および式(1-3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項2に記載の液晶組成物。
[請求項4]第二成分が式(2-1)から式(2-10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項5]第二成分が式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶組成物。
[請求項6]第二成分が、式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項4に記載の液晶組成物。
[請求項7]第二成分が、式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2-6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項4に記載の液晶組成物。
・・(中略)・・
[請求項9]第二成分が、式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(2-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2-6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項4に記載の液晶組成物。
[請求項10]液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から65重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が35重量%から85重量%の範囲である請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項11]第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R^(4)は、炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Dは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;Z^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;nは1または2である。ここで、nが2でZ^(7)が共に単結合のとき、少なくとも1つの環Dが、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2で少なくとも1つのZ^(7)が単結合でないとき、少なくとも1つの環Dが、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。
[請求項12]第三成分が式(3-1)から式(3-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項11に記載の液晶組成物。
・・(中略)・・


ここで、R^(4)は、炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルである。
・・(中略)・・
[請求項15]第三成分が式(3-11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項12に記載の液晶組成物。
[請求項16]第三成分が、式(3-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3-11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項12に記載の液晶組成物。
・・(中略)・・
[請求項19]ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が2以上である請求項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[請求項20]請求項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
[請求項21]液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項20に記載の液晶表示素子。」(44頁?51頁)
(b-2)
「技術分野
[0001]本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するTN(twisted nematic)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モードまたはPSA(Polymer sustained alignment)モードの素子に関する。」(1頁3行?9行)
(b-3)
「背景技術
・・(中略)・・
[0003]これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。回転粘度も粘度と同様である。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
[0004]


[0005]組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn・d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
[0006]TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。・・(中略)・・
[0008]望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。」(1頁10行?3頁20行)
(b-4)
「発明が解決しようとする課題
[0009]本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。」(3頁22行?4頁4行)
(b-5)
「[0037]本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
・・(中略)・・
[0040]第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。
[0041]


[0042]成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1-1)から化合物(1-3)は上限温度,光学異方性を上げ、そして誘電率異方性を上げる。化合物(2)は上限温度を上げる、または粘度を下げる。化合物(3)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。
[0043]第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、および第一成分+第二成分+第三成分である。
[0044]第一成分の好ましい割合は、光学異方性を上げるため、および誘電率異方性を上げるために5重量%以上であり、下限温度を下げるために65重量%以下である。さらに好ましい割合は5重量%から40重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から30重量%の範囲である。
[0045]第二成分の好ましい割合は、上限温度を上げる、または粘度を下げるために35重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために85重量%以下である。さらに好ましい割合は40重量%から80重量%の範囲である。特に好ましい割合は45重量%から80重量%の範囲である。
[0046]第三成分は、特に大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適している。この成分の好ましい割合は5重量%から40重量%の範囲である。さらに好ましい割合は5重量%から30重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から20重量%の範囲である。
[0047]第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。R^(1)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(1)は紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(2)は下限温度を下げるため、または粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(3)は紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。R^(4)は炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(4)は紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。
[0048]好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
[0049]好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
[0050]好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
[0051]任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために、2,2-ジフルオロビニル、または4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
[0052]環A、環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、mが2である時の2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。2-フルオロ-1,4-フェニレンの時は、両方の向きのどちらでもよい。好ましい環A、環Bおよび環Cはそれぞれ、粘度を下げるために1,4-シクロへキシレン、または光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。環Dは、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2または3である時の任意の2つの環Dは同じであっても、異なってもよく、nが2でZ^(7)が共に単結合のとき、少なくとも1つの環Dが、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2で少なくとも1つのZ^(7)が単結合でないとき、少なくとも1つの環Dが、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。環Dが,1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンの時は、それぞれ両方の向きのどちらでもよい。好ましい環Dは、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
[0053]Z^(1)、Z^(2)およびZ^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり、式(3)においてnが2である時の2つのZ^(7)は同じであっても、異なってもよい。そして、式(1-1)は、Z^(1)およびZ^(2)の少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ^(1)、Z^(2)およびZ^(7)はそれぞれ、誘電率異方性を上げるためにジフルオロメチレンオキシである。Z^(5)およびZ^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、mが2である時の2つのZ^(6)は同じであっても、異なってもよい。好ましいZ^(5)およびZ^(6)はそれぞれ、粘度を下げるために単結合である。
[0054]X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)はそれぞれ、誘電率異方性を上げるためにフッ素であり,上限温度を上げるために水素である。
[0055]Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいY^(1)は、下限温度を下げるためにフッ素である。
[0056]mは、0、1、または2である。好ましいmは、粘度を下げるために0であり,上限温度を上げるためには2である。
[0057]nは、1、2、または3である。好ましいnは、下限温度を下げるために1であり,上限温度を上げるためには3である。
[0058]第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R^(5)は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルである。R^(6)は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシである。R^(7)およびR^(8)は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
[0059]好ましい化合物(1-1)から化合物(1-3)は、化合物(1-1-1-1)から化合物(1-1-1-2)、化合物(1-1-2-1)から化合物(1-1-2-4)、化合物(1-2)、化合物(1-3-1-1)から化合物(1-3-1-2)、および化合物(1-3-2-1)から化合物(1-3-2-2)である。さらに好ましい化合物(1-1)から化合物(1-3)は、化合物(1-1-1-2)、化合物(1-1-2-2)、化合物(1-1-2-4)、化合物(1-2-1)、化合物(1-3-1-2)、および化合物(1-3-2-2)である。特に好ましい化合物(1-1)から化合物(1-3)は、化合物(1-1-1-2)、化合物(1-1-2-4)、化合物(1-2-1)、化合物(1-3-1-1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2-1-1)から化合物(2-10-1)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2-1-1)、化合物(2-3-1)、化合物(2-4-1)、化合物(2-6-1)、および化合物(2-10-1)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2-1-1)、化合物(2-4-1)、および化合物(2-6-1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)から化合物(3-12-1)、および化合物(3-13)から(3-17)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)、化合物(3-5-1)、化合物(3-8-1)、化合物(3-9-1)、および化合物(3-11-1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3-5-1)、化合物(3-9-1)、および(3-11-1)である。
[0060]


・・(中略)・・
[0062]


[0063]
・・(中略)・・


[0064]


・・(後略)」(15頁7行?25頁下から9行)
(b-6)
「[0074]最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、-10℃以下の下限温度、70℃以上の上限温度、そして0.07から0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、0.08から0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには0.10から0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
[0075]この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCBまたはIPSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」(28頁22行?29頁13行)
(b-7)
「[0095]実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含有している。最後に、組成物の特性値をまとめた。
[0096]


」(34頁21行?35頁末行)
(b-8)
「[0100][実施例2]
実施例2の組成物は、比較例1,2のそれと比較して、高いNI点を有する。
2-BBB(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1-1) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1-2) 6%
5-BB(F,F)XBB(F,F)-F
(1-1-2-1) 3%
3-B(F)B(F,F)XBB(F,F)-F
(1-1-2-2) 4%
3-HHXB(F,F)-F (1-2-1) 3%
4-HHB(F)B(F,F)-F (1-3-1-2) 4%
3-HH2B(F)B(F,F)-F (1-3-2-2) 4%
V-HH-3 (2-1-1) 35%
1V-HH-3 (2-1-1) 7%
2-HH-3 (2-1-1) 4%
V2-BB-1 (2-3-1) 3%
3-HBB-2 (2-5-1) 3%
2-BB(F)B-2V (2-6-1) 3%
5-HB(F)BH-3 (2-9-1) 3%
5-HBB(F)B-2 (2-10-1) 5%
3-HHB(F,F)-F (3-5-1) 4%
3-HGB(F,F)-F (3-16) 3%
5-GHB(F,F)-F (3-17) 3%
NI=91.6℃;Tc≦-30℃;Δn=0.1110;Δε=5.4;Vth=1
.81V;η=14.6mPa・s;γ1=71mPa・s;τ=9.8ms;VHR-
1=99.1%;VHR-2=98.2%;VHR-3=98.1%
[0101][実施例3]
実施例3の組成物は、比較例1,2のそれと比較して、高いNI点を有する。
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1-2) 8%
3-HHXB(F,F)-F (1-2-1) 5%
2-HHBB(F,F)-F (1-3-1-1) 3%
3-HHBB(F,F)-F (1-3-1-1) 4%
V-HH-3 (2-1-1) 30%
3-HH-O1 (2-1-1) 5%
VFF-HH-3 (2-1) 5%
V-HHB-1 (2-4-1) 10%
V2-HHB-1 (2-4-1) 4%
3-HHB-1 (2-4-1) 3%
1-BB(F)B-2V (2-6-1) 4%
2-BB(F)B-2V (2-6-1) 4%
3-HHB(F,F)-F (3-5-1) 3%
3-HBB-F (3-7-1) 4%
2-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-11-1) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-11-1) 5%
NI=91.0℃;Tc≦-40℃;Δn=0.107;Δε=4.7;Vth=2.03V;η=12.5mPa・s;γ1=65mPa・s;τ=10.6ms;VHR-1=99.0%;VHR-2=98.2%;VHR-3=98.1%
[0102][実施例4]
実施例4の組成物は、比較例1,2のそれと比較して、高いNI点を有する。
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F(1-1-1-2)3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F(1-1-1-2)6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F(1-1-1-2)4%
3-B(F)B(F,F)XBB(F,F)-F(1-1-2-2)3%
3-HHXB(F,F)-F (1-2-1) 6%
3-HHBB(F,F)-F (1-3-1-1)4%
4-HHB(F)B(F,F)-F (1-3-1-2)4%
3-HH2BB(F,F)-F (1-3-2-1)4%
V-HH-3 (2-1-1) 19%
1V-HH-3 (2-1-1) 6%
V-HH-5 (2-1-1) 20%
V-HHB-1 (2-4-1) 4%
2-BB(F)B-3 (2-6-1) 4%
1V2-BB-F (3-2-1) 3%
3-HHB(F,F)-F (3-5-1) 6%
3-HBB(F,F)-F (3-8-1) 4%
NI=91.0℃;Tc≦-20℃;Δn=0.105;Δε=6.1;Vth=1.80V;η=12.5mPa・s;γ1=77mPa・s;τ=12.5ms;VHR-1=99.1%;VHR-2=98.2%;VHR-3=98.1%」(38頁16行?41頁11行)

3.甲3
甲3には、以下の(c-1)ないし(c-9)の各事項が記載されている。
(c-1)
「請求の範囲
[請求項1]液晶表示素子の動作モードがFFSモードであり、駆動方式がアクティブマトリックス方式であり、かつ正の誘電率異方性を有する液晶組成物を含有する液晶表示素子であって、この液晶組成物が、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、液晶組成物の全重量に基づいて第一成分の割合が10重量%以上である、液晶表示素子。


ここで、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシであり;mは、1、2、または3である。
[請求項2]液晶組成物の第一成分が式(1-1)および式(1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶表示素子。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項3]液晶組成物の第一成分が式(1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2に記載の液晶表示素子。
[請求項4]液晶組成物の第二成分が式(2-1)から式(2-13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項5]液晶組成物の第二成分が式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶表示素子。
[請求項6]液晶組成物の第二成分が式(2-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2-5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項4に記載の液晶表示素子。
[請求項7]液晶組成物が、液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から50重量%の範囲であり、第二成分の割合が20重量%から90重量%の範囲である請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
[請求項8]液晶組成物が、第三成分として式(3-1)および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶表示素子。


ここで、R^(4)およびR^(5)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環C、環D、および環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;Z^(2)、Z^(3)、Z^(4)、およびZ^(5)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X^(3)およびX^(4)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(2)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;nは1または2である。
[請求項9]液晶組成物の第三成分が式(3-1-1)から式(3-1-29)および式(3-2-1)から式(3-2-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、請求項8に記載の液晶表示素子。
・・(中略)・・


・・(中略)・・


・・(中略)・・


・・(中略)・・
ここで、R^(4)およびR^(5)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
[請求項10]液晶組成物の第三成分が式(3-1-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項11]液晶組成物の第三成分が式(3-1-20)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項12]液晶組成物の第三成分が式(3-1-24)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項13]液晶組成物の第三成分が式(3-1-28)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項14]液晶組成物の第三成分が式(3-2-6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項15]液晶組成物の第三成分が、式(3-1-9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3-1-20)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項16]液晶組成物の第三成分が、式(3-1-28)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3-2-6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項9に記載の液晶表示素子。
[請求項17]液晶組成物が、液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が15重量%から60重量%の範囲である請求項8から16のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
・・(中略)・・
[請求項22]請求項1から21のいずれか1項に記載の液晶表示素子中に含まれる液晶組成物。
[請求項23]ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が10以上である請求項28に記載の液晶組成物。
[請求項24]請求項23に記載の液晶組成物の、液晶表示素子への使用。」(57頁?69頁)
(c-2)
「技術分野
[0001]本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するFFS(Fringe Field Switching)モードの素子に関する。」(1頁3行?7行)
(c-3)
「背景技術
[0002]液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、PSA(polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とアクティブマトリックス(AM;active matrix)である。・・(中略)・・
[0003]これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するFFSモードの素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているFFSモードの素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。組成物の弾性定数は素子のコントラストに関連する。素子においてコントラストを上げるためには、組成物における大きな弾性定数がより好ましい。組成物の誘電率異方性は素子のしきい値電圧に関連する。好ましい誘電率異方性は、約10以上である。
[0004]


[0005]組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。組成物における大きな弾性定数は素子における大きなコントラスト比と短い応答時間に寄与する。したがって、大きな弾性定数が好ましい。
[0006]TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。・・(中略)・・IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。正の誘電率異方性を有する液晶組成物の例は次の特許文献に開示されている。
・・(中略)・・
[0008]望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などである。」(1頁8行?3頁25行)
(c-4)
「発明が解決しようとする課題
[0009]本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性、大きな弾性定数などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。」(3頁末行?4頁10行)
(c-5)
「[0040]本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
・・(中略)・・
[0043]第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。
[0044]表2. 化合物の物性


[0045]成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。化合物(2)は上限温度を上げる、または粘度を下げる。化合物(3-1)および化合物(3-2)は、下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。化合物(4)は、光学異方性を上げ、そして誘電率異方性を上げる。
[0046]第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第二成分+第三成分、第一成分+第二成分+第四成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。好ましい組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。
[0047]第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、粘度を下げるために約50重量%以下である。さらに好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約30重量%の範囲である。
[0048]第二成分の好ましい割合は、上限温度を上げるため、または粘度を下げるために約20重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約25重量%から約75重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約60重量%の範囲である。
[0049]第三成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約15重量%以上であり、粘度を下げるために約60重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約55重量%の範囲である。特に好ましい割合は約25重量%から約50重量%の範囲である。
・・(中略)・・
[0051]第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR^(1)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、またはR^(6)は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキルである。好ましいR^(2)は、下限温度を下げるため、または粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルである。
[0052]好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
[0053]好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
[0054]好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
[0055]任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、および6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2-ジフルオロビニル、および4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
[0056]環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレンまたは2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。mが2または3である時、任意の2つの環Aは同じであっても、異なっていてもよい。好ましい環Aまたは環Bは、上限温度を上げ、粘度を下げるために、1,4-シクロヘキシレン、または光学異方性を上げるために、1,4-フェニレンである。環C、環D、および環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンである。nが2である時、任意の2つの環Cは同じであっても、異なっていてもよい。好ましい環C、環D、および環Eは、光学異方性を上げるために、1,4-フェニレンである。環F、環G、環H、および環Iは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレンまたは2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。好ましい環F、環G、環H、および環Iは、光学異方性を上げるために、1,4-フェニレンである。
[0057]Z^(1)は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、mが2または3である時の任意の2つのZ^(1)は同じであっても、異なっていてもよい。好ましいZ^(1)は粘度を下げるために単結合である。Z^(2)、Z^(3)、Z^(4)、Z^(5)、Z^(6)、Z^(7)、Z^(8)、およびZ^(9)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり、nが2である時の任意の2つのZ^(2)は同じであっても、異なっていてもよい。
[0058]X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、X^(8)、X^(9)、X^(10)、X^(11)、X^(12)、およびX^(13)は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、X^(8)、X^(9)、X^(10)、X^(11)、X^(12)、またはX^(13)は、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
[0059]Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである。好ましいY^(1)は、下限温度を下げるためにフッ素である。Y^(2)およびY^(3)は独立して、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいY^(2)またはY^(3)は、下限温度を下げるためにフッ素である。
[0060]mは、1、2、または3である。好ましいmは、粘度を下げるために1である。
[0061]nは、1または2である。好ましいnは、下限温度を下げるために2である。
[0062]第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R^(7)は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルである。R^(8)は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシである。R^(9)およびR^(10)は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
[0063]好ましい化合物(1)は、化合物(1-1-1)および化合物(1-2-1)である。さらに好ましい化合物(1)は化合物(1-1-1)である。好ましい化合物(2)は、
化合物(2-1-1)から化合物(2-13-1)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2-1-1)、化合物(2-5-1)、化合物(2-7-1)、および化合物(2-13-1)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2-1-1)および化合物(2-5-1)である。好ましい化合物(3-1)は、化合物(3-1-1-1)から化合物(3-1-29-1)である。さらに好ましい化合物(3-1)は、化合物(3-1-9-1)、化合物(3-1-16-1)、化合物(3-1-17-1)、化合物(3-1-20-1)、化合物(3-1-24-1)、化合物(3-1-26-1)、および化合物(3-1-28-1)である。特に好ましい化合物(3-1)は、化合物(3-1-9-1)、化合物(3-1-20-1)、化合物(3-1-24-1)、および化合物(3-1-28-1)である。好ましい化合物(3-2)は、化合物(3-2-1-1)から化合物(3-2-8-1)である。さらに好ましい化合物(3-2)は、化合物(3-2-6-1)、化合物(3-2-7-1)、および化合物(3-2-8-1)である。特に好ましい化合物(3-2)は、化合物(3-2-6-1)である。・・(中略)・・
[0064]


[0065]


・・(中略)・・
[0066]・・(中略)・・


・・(中略)・・
[0067]・・(中略)・・


・・(中略)・・
[0069]・・(中略)・・


・・(後略)」(19頁16行?30頁下から2行)
(c-6)
「[0079]第八に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は主として、約-10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
[0080]この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。FFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」(35頁22行?36頁13行)
(c-7)
「[0106]実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物には不純物が含まれている。最後に、この液晶組成物およびこの液晶組成物を含有する液晶表示素子の特性値をまとめた。
[0107]


」(43頁2行?44頁末行)
(c-8)
「[0112][実施例3]
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 4%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 10%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-OCF3
(1-2-1) 9%
V-HH-3 (2-1-1) 15%
1V-HH-3 (2-1-1) 3%
V2-BB-1 (2-3-1) 5%
V-HHB-1 (2-5-1) 4%
3-HBB-2 (2-6-1) 3%
2-BB(F)B-3 (2-7-1) 3%
3-B(F)BB-2 (2-8-1) 3%
7-HB(F,F)-F (3-1-3-1) 6%
5-HXB(F,F)-F (3-1-7-1) 6%
3-HHXB(F,F)-F (3-1-9-1) 5%
2-HHB(F,F)-F (3-1-16-1)3%
3-HHB(F,F)-F (3-1-16-1)3%
3-HBB(F,F)-F (3-1-17-1)5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-1-20-1)7%
3-HHBB(F,F)-F (3-2-3-1) 3%
4-HHBB(F,F)-F (3-2-3-1) 3%
NI=70.3℃;Tc≦-20℃;Δε=11.5;Δn=0.121;Vth=1.21V;η=23.2mPa・s;τ=21.4ms.」(47頁27行?48頁23行)
(c-9)
「[0114][実施例5]
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 9%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)-OCF3
(1-2-1) 5%
V-HH-4 (2-1-1) 12%
V-HH-5 (2-1-1) 11%
1V-HH-4 (2-1-1) 5%
1-BB(F)B-2V (2-7-1) 4%
2-BB(F)B-2V (2-7-1) 4%
5-HEB-F (3-1-5-1) 4%
3-HHB-F (3-1-11-1) 4%
3-BB(F,F)XB(F)-OCF3 (3-1-21-1)12%
3-HHEB-F (3-1-22-1) 3%
3-HHEB(F,F)-F (3-1-23-1) 3%
3-HGB(F,F)-F (3-1-25-1) 6%
3-H2GB(F,F)-F (3-1-27-1) 6%
3-HHEBB-F (3-2-1-1) 3%
3-HBB(F,F)XB(F,F)-F (3-2-7-1) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F)-OCF3
(4-5-1) 3%
NI=84.0℃;Tc≦-20℃;Δε=10.6;Δn=0.121;Vth=1.26V;η=24.5mPa・s;τ=22.0ms.
[0115][実施例6]
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 5%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-1-1) 10%
V-HH-3 (2-1-1) 20%
3-HH-VFF (2-1) 6%
1V2-BB-1 (2-3-1) 5%
1V2-HBB-1 (2-5-1) 5%
3-HBB-F (3-1-10-1)3%
3-HBB(F)-F (3-1-13-1)3%
3-H2BB(F)-F (3-1-15-1)3%
3-HBB(F,F)-F (3-1-17-1)5%
3-PyBB-F (3-1-18-1)3%
5-PyBB-F (3-1-18-1)3%
3-HH2B(F,F)-F (3-1-19-1)3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-1-20-1)9%
3-HH2BB(F,F)-F (3-2-5-1) 3%
3-HBBXB(F,F)-F (3-2-6-1) 8%
5-PyB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(4-8) 3%
1O1-HBBH-5 (-) 3%
NI=93.5℃;Tc≦-30℃;Δε=12.0;Δn=0.138;Vth=1.17V;η=23.9mPa・s;τ=21.2ms.」(50頁18行?51頁13行)

III.各甲号証に記載された発明

1.甲1
甲1には、「第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から80重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、・・または炭素数2から12のアルケニルであり;
R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、・・炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、・・またはジフルオロメチレンオキシであり;
Z^(5)は単結合・・であり;
X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、・・またはトリフルオロメトキシであり;
式(1)において、Z^(1)およびZ^(2)の少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。」であって、「第五成分として式(5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する・・液晶組成物。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、・・炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;
Z^(6)およびZ^(7)は独立して、単結合、・・またはジフルオロメチレンオキシであり;
環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;
mは、0、1または2であり;
mが0のとき、環Bは1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。」及び「第六成分として式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する・・液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル・・であり;
環Dは独立して、1,4-シクロへキシレン、・・1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン・・であり;
Z^(6)は独立して、単結合、・・またはジフルオロメチレンオキシであり;
X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;
Y^(1)は、フッ素、・・またはトリフルオロメトキシであり;
nは1、2、または3であり;
nが2のとき、2つのZ^(6)は独立して、単結合、・・またはカルボニルオキシであり、
nが3のとき、3つの環Dのうち少なくとも2つの環Dは独立して、・・1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン・・である。」が記載されている(摘示(a-1)の[請求項1]、[請求項7]及び[請求項13]を参照)。
そして、甲1には、当該「第一成分」として「式(1-1)」で表される化合物、「第三成分」として「式(3-1)」で表される化合物、「第四成分」として「式(4-1)」及び「式(4-2)」で表される化合物、「第五成分」として「式(5-1)」及び「式(5-3)」ないし「式(5-5)」のいずれかで表される化合物又は「式(5-3)」で表される化合物と「式(5-5)」で表される化合物との混合物及び「第六成分」として「式(6-5)」、「式(6-7)」、「式(6-8)」又は「式(6-12)」のいずれかで表される化合物をそれぞれ使用することもそれぞれ記載されており(摘示(a-1)の[請求項2]、[請求項8]、[請求項10]及び[請求項14]を参照)、当該「第四成分」の割合が液晶組成物の全重量に基づいて10重量%から85重量%の範囲であることも記載されている(摘示(a-1)の[請求項6]参照)。
また、甲1には、上記液晶組成物が2以上の誘電率異方性を有すること(摘示(a-1)[請求項20]参照)及び上記のとおりの液晶組成物を含有する液晶表示素子についても記載されており、さらに当該液晶表示素子が駆動方式としてアクティブマトリックス方式であることも記載されている(摘示(a-1)[請求項21]及び[請求項22]参照)。
さらに、甲1には、「式(1-1)」で表される化合物の具体例である「式(1-1-1)」においてR^(8)基が炭素数3の直鎖アルキル基である「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物、「式(4-2)」で表される化合物の具体例である「式(4-2-1)」においてR^(11)基が炭素数3の直鎖アルキル基でR^(12)基が炭素数2又は3の(2,2-ジフッ素置換)直鎖アルケニル基である「V-HH-3」(審決注:骨格構造が「HH」で対称構造であり左右を反転することができるから、「3-HH-V」であるものといえる。)、「3-HH-V1」又は「3-HH-VFF」なる記号表記で表される化合物及び「式(6-12)」で表される化合物の具体例である「式(6-12-1)」においてR^(8)基が炭素数4の直鎖アルキル基である「4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物がそれぞれ具体的に記載されており、具体的実験例において各化合物が必要に応じて組み合わされて使用されることも記載されている(摘示(a-5)、(a-7)ないし(a-10)参照)。
してみると、甲1には、上記摘示(a-1)ないし(a-10)の記載からみて、
『第一成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)で表される化合物などの式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、
第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、
第三成分として式(3-1)で表される化合物などの式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、
第四成分として「3-HH-V」、「3-HH-V1」及び「3-HH-VFF」などの式(4-2)で表される化合物などの式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はそれらの混合物、
第五成分として式(5-1)及び式(5-3)ないし式(5-5)のいずれかで表される化合物又は式(5-3)で表される化合物と式(5-5)で表される化合物との混合物を含む式(5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はそれらの混合物
及び
第六成分として「式(6-5)」、「式(6-7)」、「式(6-8)」又は「4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(6-12-1)」で表される化合物などの「式(6-12)」のいずれかで表される化合物などの式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はそれらの混合物を含有し、
液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から80重量%の範囲、第四成分の割合が10重量%から85重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する2以上の誘電率異方性を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合またはジフルオロメチレンオキシであり;Z^(5)は単結合であり;X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシであり;式(1)において、Z^(1)およびZ^(2)の少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。






ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;R^(4)、R^(5)、およびR^(6)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;R^(7)は独立して、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Z^(4)は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X^(1)、X^(2)、X^(5)、およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。






ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。








ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。』
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)及び
『甲1発明1の液晶組成物を含有するアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示素子。』
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

2.甲2
甲2には、「第一成分として、式(1-1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(1-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(1-3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、および環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)、およびZ^(4)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;Z^(5)およびZ^(6)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;mは、0、1、または2である。ここで式(1-1)において、Z^(1)およびZ^(2)のどちらか少なくとも一方はジフルオロメチレンオキシである。」であって、「第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する・・液晶組成物。


ここで、R^(4)は、炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Dは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;Z^(7)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;nは1または2である。ここで、nが2でZ^(7)が共に単結合のとき、少なくとも1つの環Dが、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり、nが2で少なくとも1つのZ^(7)が単結合でないとき、少なくとも1つの環Dが、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。」が記載されている(摘示(b-1)の[請求項1]及び[請求項11]参照)。
そして、甲2には、当該「第一成分」として「式(1-1-1)」で表される化合物、「式(1-2)」で表される化合物及び「式(1-3-1)」で表される化合物の混合物、「第二成分」として「式(2-1)」で表される化合物と「式(2-4)」で表される化合物又は「式(2-6)」で表される化合物との混合物及び「第三成分」として「式(3-11)」で表される化合物と「式(3-5)」で表される化合物又は「式(3-9)」で表される化合物との混合物をそれぞれ使用することもそれぞれ記載されており(摘示(b-1)の[請求項3]、[請求項6]、[請求項7]、[請求項16]及び[請求項17]を参照)、当該「第二成分」の割合が液晶組成物の全重量に基づいて35重量%から85重量%の範囲であることも記載されている(摘示(b-1)の[請求項10]参照)。
また、甲2には、上記液晶組成物が2以上の誘電率異方性を有すること(摘示(b-1)[請求項19]参照)及び上記のとおりの液晶組成物を含有する液晶表示素子についても記載されており、さらに当該液晶表示素子が駆動方式としてアクティブマトリックス方式であることも記載されている(摘示(b-1)[請求項20]及び[請求項21]参照)。
さらに、甲2には、上記「式(1-1-1)」で表される化合物の具体例である「式(1-1-1-2)」で表される化合物においてR^(5)基(R^(1)基)が炭素数3の直鎖アルキル基である「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物、「式(3-11)」で表される化合物の具体例においてR^(4)基が炭素数3の直鎖アルキル基である「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物、「式(2-1)」で表される化合物の具体例においてR^(3)基が炭素数3の直鎖アルキル基でR^(2)基が炭素数2又は3の(2,2-ジフッ素置換)直鎖アルケニル基である「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「VFF-HH-3」なる記号表記で表される化合物及び「式(2-6)」で表される化合物の具体例において「2-BB(F)B-2V」がそれぞれ具体的に記載されており、具体的実験例において各化合物が必要に応じて例えば「式(2-6)」で表される化合物である「1-BB(F)B-2V」などの化合物と組み合わされて使用されることも記載されている(摘示(b-5)及び(b-8)参照)。
してみると、甲2には、上記摘示(b-1)ないし(b-8)の記載からみて、
『第一成分として式(1-1-1-2)などの式(1-1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物及び式(1-3-1)で表される化合物の混合物、
第二成分として「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「VFF-HH-3」などの式(2-1)で表される化合物あるいはそれらの混合物と式(2-4)で表される化合物又は式(2-6)で表される化合物の1種又は2種以上との混合物
及び
第三成分として式(3-11)で表される化合物と式(3-5)で表される化合物又は式(3-9)で表される化合物との混合物を含有し、
液晶組成物の全重量に基づいて、第二成分の割合が液晶組成物の全重量に基づいて35重量%から85重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する2以上の誘電率異方性を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)、X^(2)、X^(3)、X^(4)、X^(5)、X^(6)、X^(7)、およびX^(8)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。


ここで、R^(4)は、炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルである。』
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)及び
『甲2発明1の液晶組成物を含有するアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示素子。』
に係る発明(以下「甲2発明2」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

3.甲3
甲3には、「液晶表示素子の動作モードがFFSモードであり、駆動方式がアクティブマトリックス方式であり、かつ正の誘電率異方性を有する液晶組成物を含有する液晶表示素子であって、この液晶組成物が、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、液晶組成物の全重量に基づいて第一成分の割合が10重量%以上である液晶表示素子。


ここで、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシであり;mは、1、2、または3である。」であって、「第三成分として式(3-1)および式(3-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、・・液晶表示素子。


ここで、R^(4)およびR^(5)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環C、環D、および環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ピリミジンであり;Z^(2)、Z^(3)、Z^(4)、およびZ^(5)は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X^(3)およびX^(4)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(2)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;nは1または2である。」も記載されている(摘示(c-1)の[請求項1]及び[請求項8]参照)。
そして、甲3には、液晶組成物における、当該「第一成分」として「式(1-1)」又は「式(1-2)」で表される化合物、「第二成分」として「式(2-1)」で表される化合物、「式(2-7)」で表される化合物又は「式(2-1)」で表される化合物と「式(2-5)」で表される化合物との混合物及び「第三成分」として「式(3-1-20)」で表される化合物、「式(3-2-3)」で表される化合物又は「式(3-1-20)」で表される化合物と「式(3-1-9)」で表される化合物との混合物をそれぞれ使用することもそれぞれ記載されており(摘示(c-1)の[請求項2]、[請求項4]ないし[請求項6]、[請求項9]、[請求項11]及び[請求項15]を参照)、当該「第二成分」の割合が液晶組成物の全重量に基づいて20重量%から90重量%の範囲であることも記載されている(摘示(c-1)の[請求項7]参照)。
また、甲3には、上記のとおり、液晶組成物を含有する液晶表示素子についても記載されており、さらに当該液晶表示素子が駆動方式としてアクティブマトリックス方式であることも記載されている(摘示(c-1)[請求項1]参照)。
さらに、甲3には、上記「式(1-1)」で表される化合物の具体例においてR^(1)基が炭素数3の直鎖アルキル基である「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物、「式(3-1-20)」で表される化合物の具体例においてR^(4)基が炭素数3の直鎖アルキル基である「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる記号表記で表される化合物、「式(2-1)」で表される化合物の具体例においてR^(3)基が炭素数3の直鎖アルキル基でR^(2)基が炭素数2又は3の(2,2-ジフッ素置換)直鎖アルケニル基である「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「3-HH-VFF」(審決注:骨格構造が「HH」で対称構造であり左右を反転することができるから、「VFF-HH-3」であるものといえる。)なる記号表記で表される化合物及びがそれぞれ具体的に記載されており、具体的実験例において各化合物が必要に応じて組み合わされて使用され、式(2-5)で表される化合物の2種を併用することも記載されている(摘示(c-5)、(c-7)、(c-8)及び(c-9)参照)。
してみると、甲3には、上記摘示(c-1)ないし(c-9)の記載からみて、
『正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、この液晶組成物が、第一成分として「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物、
第二成分として「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「VFF-HH-3」などの式(2-1)で表される化合物、式(2-7)で表される化合物又は式(2-5)で表される化合物の2種以上の混合物を含む混合物
及び
第三成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(3-1-20)で表される化合物と式(3-2-3)で表される化合物又は式(3-1-9)で表される化合物との混合物を含有し、
液晶組成物の全重量に基づいて、第二成分の割合が液晶組成物の全重量に基づいて20重量%から90重量%の範囲であり、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。


ここで、R^(2)およびR^(3)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。


ここで、R^(4)およびR^(5)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。』
に係る発明(以下「甲3発明1」という。)及び
『甲3発明1の液晶組成物を含有するアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示素子。』
に係る発明(以下「甲3発明2」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

IV.本件訂正発明1、3及び5ないし7との対比・検討

1.本件訂正発明1について

(1)甲1発明1との対比・検討

ア.対比
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における
(a)「第一成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)で表される化合物などの式(1)で表される化合物」、
(c)「第三成分として式(3-1)で表される化合物などの式(3)で表される化合物(Z^(4)が単結合の場合)」、
(d)「第四成分として「3-HH-V」、「3-HH-V1」などの式(4-2)で表される化合物などの式(4)で表される化合物の混合物」、
(e)「第五成分として式(5-5)で表される化合物である式(5)で表される化合物又はその混合物」及び
(f)「第六成分として「式(6-5)」、「式(6-7)」、「式(6-8)」又は「4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(6-12-1)」で表される化合物などの「式(6-12)」のいずれかで表される化合物などの式(6)で表される化合物又はそれらの混合物」
は、本件訂正発明1における
(a)「式(1)で表される化合物」、
(c)「一般式(2)で表される化合物」、
(d)「式(40)で表される化合物」及び「式(4.4)で表される化合物」(の混合物)、
(e)「一般式(9)で表される2種以上の化合物(すなわち「混合物」)」
並びに
(f)「式(12.2)で表される化合物」
をそれぞれ包含することが明らかである。
そして、甲1発明1における「第一成分」、「第三成分」及び「第六成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的に正の成分であり、「第四成分」及び「第五成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的にほぼ中性の成分であることが、その技術常識に照らして当業者に自明であって、甲1発明1に係る液晶組成物が2以上の誘電率異方性を有するものであること、すなわち組成物全体の誘電率異方性は正であることからみると、甲1発明1における「第一成分」、「第三成分」及び「第六成分」と本件訂正発明1における「誘電的に正である成分(A)」、甲1発明1における「第四成分」及び「第五成分」と本件訂正発明1における「誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)」及び甲1発明1における「2以上の誘電率異方性を有する液晶組成物」と本件訂正発明1における「正の誘電率異方性を有する液晶組成物」は、それぞれ相当するものといえる。
してみると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、
「正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、
一般式(2)で表される化合物を含む誘電的に正の成分である成分(A)と、一般式(9)で表される化合物又はそれらの混合物を含む誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1-1:本件訂正発明1では、「式(1):(式は省略)で表される化合物および一般式(2):(式は省略)で表される化合物を含有する誘電的に正の成分である成分(A)と、式(40):(式は省略)で表される化合物および一般式(9):(式は省略)で表される2種類以上の化合物を含む、誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物であって、前記成分(A)として、式(12.2):(式は省略)で表される化合物をさらに含有し、前記成分(B)として、式(4.4):(式は省略)で表される化合物をさらに含有」するのに対して、甲1発明1では、『第一成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)で表される化合物などの式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、・・第三成分として式(3-1)で表される化合物などの式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第四成分として「3-HH-V」、「3-HH-V1」及び「3-HH-VFF」などの式(4-2)で表される化合物などの式(4)で表される化合物の群から選択された化合物の2種以上の混合物、第五成分として式(5-1)及び式(5-3)ないし式(5-5)のいずれかで表される化合物又は式(5-3)で表される化合物と式(5-5)で表される化合物との混合物を含む式(5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はそれらの混合物及び第六成分として「式(6-5)」、「式(6-7)」、「式(6-8)」又は「4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(6-12-1)」で表される化合物などの「式(6-12)」のいずれかで表される化合物などの式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物又はそれらの混合物の第一成分ないし第六成分を組み合わせて含有」する点
相違点1-2:本件訂正発明1では、「前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である」のに対して、甲1発明1では、「第四成分の割合が10重量%から85重量%の範囲であ」る点
相違点1-3:本件訂正発明1では、「(ただし、式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに液晶組成物の全重量に基づいて式【化13】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、を除く)」のに対して、甲1発明1では、「第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」を必須に含有する点

イ.相違点に係る検討

(ア)相違点1-1について
上記相違点1-1につき検討すると、甲1には、甲1発明1の液晶組成物が、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、・・少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物」を提供することを目的とすることが記載されているところ(摘示(a-4)参照)、甲1発明1では、上記「第一成分」ないし「第六成分」を組み合わせて液晶組成物を構成することにより当該目的を達成するという技術的思想が開示されているのであって、さらに、甲1には、
(a)「第一成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」の化合物、
「第三成分」としての「3-HHBB(F,F)-F」などの「式(3-1-1)」の化合物の2種の混合物、
「第四成分」としての「3-HH-V」及び「3-HH-V1」なる「式(4-2-1)」の化合物の混合物、
「第五成分」としての「2-BB(F)B-2V」などの「式(5-5-1)」の化合物の3種の混合物
並びに
「第六成分」としての「式(6)」の化合物
を組み合わせた具体例(摘示(a-9)参照)、
(b)「第一成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」の化合物、
「第三成分」としての「3-HHBB(F,F)-F」などの「式(3-1-1)」の化合物の3種の混合物、
「第四成分」としての「3-HH-V」及び「3-HH-VFF」なる「式(4-2-1)」の化合物の混合物、
「第五成分」としての「2-BB(F)B-3」などの「式(5-5-1)」の化合物の3種の混合物
並びに
「第六成分」としての「式(6)」の化合物
を組み合わせた具体例(摘示(a-8)参照)
及び
(c)「第一成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」の化合物、
「第三成分」としての「3-HHBB(F,F)-F」などの「式(3-1-1)」の化合物の2種の混合物、
「第四成分」としての「式(4)」の化合物、
「第五成分」としての「2-BB(F)B-2V」などの「式(5-5-1)」の化合物の3種の混合物
並びに
「第六成分」としての「4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(6-12-1)」の化合物
を組み合わせた具体例(摘示(a-10)参照)
がそれぞれ記載されているのであるから、これらを総合すると、甲1には、
「第一成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)で表される化合物」、「第三成分」としての「式(3-1-1)で表される化合物」、「第四成分」としての「式(4-2-1)で表される化合物」である「3-HH-V」及び「3-HH-V1」の混合物又は更に「3-HH-VFF」を含む混合物、「第五成分」としての「2-BB(F)B-3」などの「式(5-5)で表される化合物」の2種以上の混合物並びに「第六成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(6-12-1)」で表される化合物」をそれぞれ選択して組み合わせて液晶組成物を構成する態様についても、上記目的を達成すべき甲1発明1における具体的な下位概念として開示されているものと認められる。
そして、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性に関して適切なバランスを有する」甲1発明1の液晶組成物であれば、当該組成物を使用することにより、表示品位に優れ、焼き付きや滴下痕等の表示不良の発生し難い液晶表示素子を歩留まりよく提供できるものと当業者が理解するのが自然であるから、本件訂正発明が、甲1発明1のものに比して、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
してみると、甲1発明1において、上記「第一成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」、「第三成分」としての「式(3-1)で表される化合物」、「第四成分」としての「3-HH-V」及び「3-HH-V1」の混合物、「第五成分」としての「式(5-5)で表される化合物」の2種以上の混合物並びに「第六成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(6-12-1)」で表される化合物を組み合わせて下位概念である液晶組成物を構成することは、単なる成分選択をしたに過ぎず、格別な技術的意義が存するものではないか、当業者が所望に応じて単に選択することにより、適宜なし得ることと認められる。
したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点であるとはいえないか、仮に相違点であるとしても、いずれも当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点1-2について
上記相違点1-2につき検討すると、甲1には、「第四成分」につき、ネマチック相の上限温度を上げ、下限温度を下げるとともに、組成物の粘度を下げる特性を有することが記載されており、組成比範囲が10重量%から85重量%であることも記載されている(摘示(a-5)の[0043]及び[0048]参照)から、ネマチック相の高い上限温度及び低い下限温度、小さな粘度、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性を充足する液晶組成物を目的とする(摘示(a-4)参照)甲1発明1において、上記特性を有する「第四成分」である「3-HH-V」なる化合物の組成比範囲を29重量%以上とする点は、当業者が適宜なし得ることである。
また、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、式(40)で表される化合物の含有量を液晶組成物の総量に対して29質量%以上としたことにより、有意な効果上の差異が存するものとも認められず、上記化合物の含有量を29重量%以上とした点に、格別な臨界的意義が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点1-2は、実質的な相違点であるものとはいえない。

(ウ)相違点1-3について
上記相違点1-3につき検討すると、甲1発明1において使用される「第二成分として」の「式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」は、本件訂正発明1における「式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物」であり、本件訂正発明1では、当該「化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物」の態様を意図的に除外していることが明らかであるから、当該相違点1-3は、実質的な相違点であるものと認められる。
そして、甲1発明1において、「第二成分として」の「式(2)で表される化合物」は、「誘電率異方性を上げ、そして光学異方性を下げる」(摘示(a-5)[0043]参照)として、意図的に使用されているのであるから、甲1発明1において、「第二成分として」の「式(2)で表される化合物」を使用しない態様が包含されると認識すること又は甲1発明1に基づき当該態様に想到することが、当業者にとって適宜なし得ることとは認められない。
また、他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明1において、「第二成分として」の「式(2)で表される化合物」を使用しないことを想起し得る記載又は示唆がなく、甲1発明1に他の甲号証の開示を組み合わせたとしても、当業者が「第二成分として」の「式(2)で表される化合物」を使用しない態様に想到することは困難であるものと認められる。
してみると、相違点1-3の点につき、実質的な相違点であると認められるとともに、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件訂正発明1と甲1発明1とは同一であるということはできず、また、本件訂正発明1が、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(2)甲2発明1との対比・検討

ア.対比
本件訂正発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1における
(a)「第一成分として式(1-1-1-2)などの式(1-1-1)で表される化合物及び式(1-3-1)で表される化合物を含む混合物」、
(b)「第二成分として「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「VFF-HH-3」などの式(2-1)で表される化合物あるいはそれらの混合物と式(2-4)で表される化合物又は式(2-6)で表される化合物の1種又は2種以上との混合物、
(c)「第三成分として式(3-11)で表される化合物と式(3-5)で表される化合物又は式(3-9)で表される化合物との混合物」
は、それぞれ、本件訂正発明1における
(a)「式(12.2)で表される化合物」及び「一般式(2)で表される化合物」を含む混合物、
(b)「「式(40)で表される化合物」、「式(4.4)で表される化合物」及び「一般式(9)で表される化合物の2種以上」の混合物、
(c)「式(1)で表される化合物」を含む混合物、
を包含することが明らかである。
そして、甲2発明1における「第一成分」及び「第三成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的に正の成分であり、「第二成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的にほぼ中性の成分であることが、その技術常識に照らして当業者に自明であって、甲2発明1に係る液晶組成物が2以上の誘電率異方性を有するものであること、すなわち組成物全体の誘電率異方性は正であることからみると、甲2発明1における「第一成分」及び「第三成分」と本件訂正発明1における「誘電的に正である成分(A)」、甲2発明1における「第二成分」と本件訂正発明1における「誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)」及び甲2発明1における「ネマチック相を有する2以上の誘電率異方性を有する液晶組成物」と本件訂正発明1における「正の誘電率異方性を有する液晶組成物」は、それぞれ相当するものといえる。
してみると、本件訂正発明1と甲2発明1とは、
「正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、
一般式(2)で表される化合物を含む誘電的に正の成分である成分(A)と、一般式(9)で表される化合物又はそれらの混合物を含む誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点2-1:本件訂正発明1では、「式(1):(式は省略)で表される化合物および一般式(2):(式は省略)で表される化合物を含有する誘電的に正の成分である成分(A)と、式(40):(式は省略)で表される化合物および一般式(9):(式は省略)で表される2種類以上の化合物を含む、誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物であって、前記成分(A)として、式(12.2):(式は省略)で表される化合物をさらに含有し、前記成分(B)として、式(4.4):(式は省略)で表される化合物をさらに含有」するのに対して、
甲2発明1では、『第一成分としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(3-11)で表される化合物」及び「式(1-3-1)で表される化合物」の混合物』、「第二成分としての『「3-HH-V」及び「3-HH-V1」なる「式(4-2)」の化合物の混合物又はその混合物と更に「3-HH-VFF」なる「式(4-2)」の化合物とを含む混合物』と『「式(2-6)」の化合物2種以上との混合物』」ないし『第三成分としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(6-12-1)」の化合物』を組み合わせた液晶組成物に係る具体的開示がない点
相違点2-2:本件訂正発明1では、「前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である」のに対して、甲2発明1では、「第二成分の割合が液晶組成物の全重量に基づいて35重量%から85重量%の範囲であ」る点
相違点2-3:本件訂正発明1では、「(ただし、式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに液晶組成物の全重量に基づいて式【化13】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、を除く)」のに対して、甲2発明1では、「第一成分として式(1-1-1-2)などの式(1-1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物及び式(1-3-1)で表される化合物の混合物」を使用する点

イ.相違点に係る検討

(ア)相違点2-1について
上記相違点2-1につき検討すると、甲2には、甲2発明1の液晶組成物が、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、・・少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物」を提供することを目的とすることが記載されているところ(摘示(b-4)参照)、甲2発明1では、上記「第一成分」ないし「第三成分」を組み合わせて液晶組成物を構成することにより当該目的を達成するという技術的思想が開示されているのであって、当該「第一成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」の化合物と「3-HHBB(F,F)-F」なる「式(1-3-1)」の化合物との混合物(摘示(b-8)「実施例4」参照)、当該「第二成分」としての『「式(2-1)」の化合物である「V-HH-3」、「1V-HH-3」及び「式(2-6)」の化合物である「2-BB(F)B-2V」又は「2-BB(F)B-3」の混合物』(摘示(b-8)「実施例2」又は「実施例4」参照)あるいは『「式(2-1)」の化合物である「V-HH-3」、「VFF-HH-3」及び「式(2-6)」の化合物である「1-BB(F)B-2V」並びに「2-BB(F)B-2V」の2種の混合物』(摘示(b-8)「実施例3」参照)、当該「第三成分」としての『「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(3-11)」の化合物」』(摘示(b-8)「実施例4」参照)がそれぞれ具体例として例示されているのであるから、当該具体例として例示された各化合物を選択して組み合わせて液晶組成物を構成する態様については、当業者にとって甲2に記載されているに等しいものと理解するか又は当業者が甲2の記載に基づき適宜なし得ることと認めるのが自然である。
そして、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性に関して適切なバランスを有する」甲2発明1の液晶組成物であれば、当該組成物を使用することにより、表示品位に優れ、焼き付き等の表示不良の発生し難い液晶表示素子を歩留まりよく提供できるものと当業者が理解するか、甲2発明1のものから予期し得るものと理解するのが自然であるから、本件訂正発明が、甲2発明1のものに比して、格別顕著な効果を奏しているものとは認められない。
してみると、甲2発明1において、上記「第一成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-Fなどの式(1-1-1)で表される化合物」及び「3-HHBB(F,F)-Fなどの式(1-3)で表される化合物」の混合物、「第二成分」としての『「3-HH-V」及び「3-HH-V1」を含む「式(2-1)で表される化合物の混合物」と「「式(2-6)」で表される化合物の2種以上の混合物」との混合物』並びに「第三成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの「式(3-11)で表される化合物を含む混合物」を組み合わせて下位概念である液晶組成物を構成することは、単なる成分選択をしたに過ぎず、格別な技術的意義が存するものではないか、当業者が所望に応じて単に選択することにより、適宜なし得ることと認められる。
したがって、上記相違点2-1は、実質的な相違点であるとはいえないか、仮に相違点であるとしても、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点2-2について
上記相違点2-2につき検討すると、甲2には、「第二成分」につき、ネマチック相の上限温度を上げ、または組成物の粘度を下げる特性を有することが記載されており、特に好適な組成比範囲が45重量%から80重量%であることも記載されている(摘示(b-5)の[0042]及び[0045]参照)から、ネマチック相の高い上限温度及び低い下限温度、小さな粘度、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性を充足する液晶組成物を目的とする(摘示(b-4)参照)甲2発明1において、上記特性を有する「第二成分」である「3-HH-V」なる化合物の組成比範囲を29重量%以上とする点は、当業者が適宜なし得ることである。
また、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、式(40)で表される化合物の含有量を液晶組成物の総量に対して29質量%以上としたことにより、有意な効果上の差異が存するものとも認められず、上記化合物の含有量を29重量%以上とした点に、格別な臨界的意義が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点2-2は、実質的な相違点であるものとはいえない。

(ウ)相違点2-3について
上記相違点2-3につき検討すると、甲2発明1において使用される「第一成分」としての「式(1-2)で表される化合物」は、本件訂正発明1における「式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物」であり、本件訂正発明1では、当該「化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物」の態様を意図的に除外していることが明らかであるから、当該相違点2-3は、実質的な相違点であるものと認められる。
そして、甲2発明1において、「第一成分」としての「式(1-2)で表される化合物」は、「(ネマチック)上限温度、光学異方性を上げ、そして誘電率異方性を上げる」(摘示(b-5)[0042]参照)ものとして、意図的に使用されているのであるから、甲2発明1において、「第一成分」としての「式(1-2)で表される化合物」を使用しない態様が包含されると認識すること又は甲2発明1に基づき当該態様に想到することが、当業者にとって適宜なし得ることとは認められない。
また、他の甲号証の記載を検討しても、甲2発明1において、「第一成分」としての「式(1-2)で表される化合物」を使用しないことを想起し得る記載又は示唆がなく、甲2発明1に他の甲号証の開示を組み合わせたとしても、当業者が「第一成分」としての「式(1-2)で表される化合物」を使用しない態様に想到することは困難であるものと認められる。
してみると、相違点2-3の点につき、実質的な相違点であると認められるとともに、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件訂正発明1と甲2発明1とは同一であるということはできず、また、本件訂正発明1が、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(3)甲3発明1との対比・検討

ア.対比
本件訂正発明1と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1における
(a)「第一成分として「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物」、
(b)「第二成分として「V-HH-3」、「1V-HH-3」又は「VFF-HH-3」などの式(2-1)で表される化合物と式(2-7)で表される化合物及び/又は式(2-5)で表される化合物の2種以上の混合物を含む混合物」、
(c)「第三成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(3-1-20)で表される化合物と式(3-2-3)で表される化合物又は式(3-1-9)で表される化合物との混合物」
は、それぞれ、本件訂正発明1における
(a)「式(12.2)で表される化合物」、
(b)「「式(40)で表される化合物」、「式(4.4)で表される化合物」及び「一般式(9)で表される化合物の2種以上」の混合物、
(c)「式(1)で表される化合物」と「一般式(2)で表される化合物」とを含む混合物
を包含することが明らかである。
そして、甲3発明1における「第一成分」及び「第三成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的に正の成分であり、「第二成分」がいずれもその化学構造からみて、誘電的にほぼ中性の成分であることが、その技術常識に照らして当業者に自明であるから、甲3発明1における「第一成分」及び「第三成分」と本件訂正発明1における「誘電的に正である成分(A)」、甲3発明1における「第二成分」と本件訂正発明1における「誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)」はそれぞれ相当するといえるとともに、甲3発明1における「正の誘電率異方性を有する液晶組成物」は、本件訂正発明1における「正の誘電率異方性を有する液晶組成物」に相当する。
してみると、本件訂正発明1と甲3発明1とは、
「正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、
一般式(2)で表される化合物を含む誘電的に正の成分である成分(A)と、一般式(9)で表される化合物又はそれらの混合物を含む誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点3-1:本件訂正発明1では、「式(1):(式は省略)で表される化合物および一般式(2):(式は省略)で表される化合物を含有する誘電的に正の成分である成分(A)と、式(40):(式は省略)で表される化合物および一般式(9):(式は省略)で表される2種類以上の化合物を含む、誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物であって、前記成分(A)として、式(12.2):(式は省略)で表される化合物をさらに含有し、前記成分(B)として、式(4.4):(式は省略)で表される化合物をさらに含有」するのに対して、
甲3発明1では、「第一成分」としての『「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」で表される化合物』、「第二成分」としての『「V-HH-3」と「1V-HH-3」との混合物又は当該混合物と「VFF-HH-3」との更なる混合物からなる「式(2-1)」の化合物の混合物及び「式(2-7)」の化合物の2種以上の混合物とを含む混合物』並びに「第三成分」としての『「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(3-1-20)」の化合物と「3-HHBB(F,F)-F」なる「式(3-2-3)」の化合物との混合物』を組み合わせた液晶組成物に係る具体的開示がない点
相違点3-2:本件訂正発明1では、「前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である」のに対して、甲3発明1では、「第二成分の割合が液晶組成物の全重量に基づいて20重量%から90重量%の範囲であ」る点
相違点3-3:本件訂正発明1では、「(ただし、式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに液晶組成物の全重量に基づいて式【化13】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、を除く)」のに対して、甲3発明1では、「第三成分として「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」などの式(3-1-20)で表される化合物と式(3-2-3)で表される化合物又は式(3-1-9)で表される化合物との混合物」を使用する点

イ.相違点に係る検討

(ア)上記相違点3-1について
上記相違点3-1につき検討すると、甲3には、甲3発明1の液晶組成物が、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、・・少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物」を提供することを目的とすることが記載されているところ(摘示(c-4)参照)、甲3発明1では、上記「第一成分」ないし「第三成分」を組み合わせて液晶組成物を構成することにより当該目的を達成するという技術的思想が開示されているのであって、当該「第一成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(1-1-1)」の化合物(摘示(c-8)及び(c-9)参照)、当該「第二成分」としての『「式(2-1)」の化合物である「V-HH-3」と「1V-HH-3」との混合物及び「式(2-7)」の化合物である「2-BB(F)B-3」の混合物』(摘示(c-8)参照)、『「式(2-1)」の化合物の3種の混合物及び「式(2-7)」の化合物である「1-BB(F)B-2V」と「2-BB(F)B-2V」との混合物からなる混合物』(摘示(c-9)「実施例5」参照)並びに『「式(2-1)」の化合物である「V-HH-3」と「3-HH-VFF」との混合物』(摘示(c-9)「実施例6」参照)、当該「第三成分」としての『「3-BB(F,F)XB(F,F)-F」なる「式(3-1-20)」の化合物と「3-HHBB(F,F)-F」なる「式(3-2-3)」の化合物との混合物』(摘示(c-8)参照)がそれぞれ具体例として例示されているのであるから、当該具体例として例示された各化合物又は混合物を選択して組み合わせて液晶組成物を構成する態様については、当業者にとって甲3に記載されているに等しいものと理解するか又は当業者が甲3の記載に基づき適宜なし得ることと認めるのが自然である。
そして、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物」を提供することを目的とする」甲3発明1の液晶組成物であれば、当該組成物を使用することにより、表示品位に優れ、焼き付きや滴下痕等の表示不良の発生し難い液晶表示素子を歩留まりよく提供できるものと当業者が理解するか、甲3発明1のものから予期し得るものと理解するのが自然であるから、本件訂正発明が、甲3発明1のものに比して、格別顕著な効果を奏しているものとは認められない。
してみると、甲3発明1において、上記「第一成分」としての「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-Fなどの式(1-1-1)で表される化合物」、「第二成分」としての「「3-HH-V」及び「3-HH-V1」を含む「式(2-1-1)で表される化合物の混合物」と「「式(2-7-1)」で表される化合物の2種以上の混合物」との混合物」、並びに「第三成分」としての「3-BB(F,F)XB(F,F)-Fなどの式(3-1-20)で表される化合物」と「3-HHBB(F,F)-Fなどの式(3-2-3)で表される化合物」とを含む混合物をそれぞれ選択して組み合わせて液晶組成物を構成することは、単なる成分選択をしたに過ぎず、格別な技術的意義が存するものではないか、当業者が所望に応じて単に選択することにより、適宜なし得ることと認められる。
したがって、上記相違点3-1は、実質的な相違点であるとはいえないか、仮に相違点であるとしても、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点3-2について
上記相違点3-2につき検討すると、甲3には、「第二成分」につき、ネマチック相の上限温度を上げ、または組成物の粘度を下げる特性を有することが記載されており、特に好適な組成比範囲が30重量%から60重量%であることも記載されている(摘示(c-5)の[0045]及び[0048]参照)から、ネマチック相の高い上限温度及び低い下限温度、小さな粘度、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性を充足する液晶組成物を目的とする(摘示(c-4)参照)甲3発明1において、上記特性を有する「第二成分」である「3-HH-V」なる化合物の組成比範囲を29重量%以上とする点は、当業者が適宜なし得ることである。
また、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、式(40)で表される化合物の含有量を液晶組成物の総量に対して29質量%以上としたことにより、有意な効果上の差異が存するものとも認められず、上記化合物の含有量を29重量%以上とした点に、格別な臨界的意義が存するものとも認められない。
してみると、上記相違点3-2は、実質的な相違点であるものとはいえない。

(ウ)相違点3-3について
上記相違点3-3につき検討すると、甲3発明1において使用される「第三成分」としての「式(3-1-9)で表される化合物」は、本件訂正発明1における「式【化12】(式は省略)(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物」に相当するところ、甲3発明1における「第三成分」としての「式(3-1-9)で表される化合物」は必須に使用すべき化合物ではないから、甲3発明1には、「式(3-1-9)で表される化合物」を使用しない態様をも包含するものと認められる。
してみると、上記相違点3-3に係る事項のうち、前段部に係る「式【化12】(式・説明は省略)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物・・を除く」点については、実質的な相違点であるとは認められない。
しかしながら、甲3発明1において、「第一成分」として使用される「「3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F」などの式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物」などの「式(1)で表される化合物」は、本件訂正発明1における「式【化13】(式・説明は省略)で表される化合物」に相当するものであるところ、甲3には、当該「第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、粘度を下げるために約50重量%以下である。さらに好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約30重量%の範囲である」と記載されており(摘示(c-5)[0047])、専ら「第一成分」である「式(1)で表される化合物」を10重量%以上含有されることを指向するものと認められるから、甲3発明1は、上記相違点3-3における後段部の「液晶組成物の全重量に基づいて式【化13】(式・説明は省略)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物」に該当するものである。
そして、本件訂正発明1では、当該態様を意図的に「除く」ものであるから、上記相違点3-3(の後段部の点)は実質的な相違点であるものと認められ、甲3発明1において、「第一成分」を10重量%未満の量で使用する態様が包含されると認識すること又は甲3発明1に基づき当該態様に想到することが、当業者にとって適宜なし得ることとは認められない。
また、他の甲号証の記載を検討しても、甲3発明1において、「第一成分」を10重量%以上の量で使用すべきではないことを想起し得る記載又は示唆がなく、甲3発明1に他の甲号証の開示を組み合わせたとしても、当業者が「第一成分」を10重量%以上の量で使用しない態様に想到することは困難であるものと認められる。
したがって、相違点3-3の点につき、実質的な相違点であると認められるとともに、当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件訂正発明1と甲3発明1とは同一であるということはできず、また、本件訂正発明1が、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(4)他の証拠方法について
さらに、請求人が提示した他の証拠方法(甲4ないし甲19)を検討しても、上記甲1発明1、甲2発明1又は甲3発明1に対して、動機をもって組み合わせて、本件訂正発明1における「(ただし、式【化12】(式・説明は省略)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶化合物、並びに液晶組成物の全重量に基づいて式【化13】(式・説明は省略)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、を除く)」を具備すべきことに想到し得る事項は開示又は示唆されておらず、上記甲1発明1、甲2発明1又は甲3発明1に対して、他の証拠方法(甲4ないし甲19)に係る知見を組み合わせたとしても、本件訂正発明1に想到することができるものと認めることはできない。

(5)本件訂正発明1に係るまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1、甲2又は甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲3に記載されたいずれかの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

2.本件訂正発明3及び5ないし7について
本件訂正発明3及び5ないし7は、いずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、上記1.で説示した理由と同一の理由により、本件訂正発明3及び5ないし7についても、甲1、甲2又は甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲3に記載されたいずれかの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

3.対比・検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1、3及び5ないし7は、いずれも、甲1、甲2又は甲3に記載された発明であるということはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、甲1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

V.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、3及び5ないし7については、いずれも、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず、特許法第123条第1項第2号に該当するものではないから、いずれも無効とすべきものではない。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許は、請求人主張の理由及び証拠方法により無効とすべきものとすることはできない。
また、現時点において、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許を無効とすべき他の理由が存するものとも認められない。
なお、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2及び4に係る発明についての特許は、その発明を特定する技術事項が訂正により全部削除されたことによって、当該各特許に係る本件無効審判請求が不適法となり、却下すべきものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1、3及び5ないし7に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、成り立たない。
また、本件訂正後の請求項2及び4に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、却下すべきものである。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条及び同法第62条の規定により、7分し、請求人がその5、被請求人がその2をそれぞれ負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電率異方性を有する液晶組成物であって、
式(1):
【化1】

で表される化合物および一般式(2):
【化2】

(上記一般式(2)中、R^(2)は、炭素原子数2?5のアルキル基を表し、A^(2)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、X^(21)?X^(24)はそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表し、U^(2)は単結合を表し、Y^(2)はフッ素原子または-OCF_(3)を表す。)で表される化合物、のうち、前記A^(2)は1,4-フェニレン基を表し、前記Y^(2)は-OCF_(3)を表す化合物を含有する誘電的に正の成分である成分(A)と、
式(40):
【化3】

で表される化合物および一般式(9):
【化4】

(式中、R^(91)、R^(92)はそれぞれ独立して炭素原子数2?5のアルキル基または炭素原子数2?5のアルケニル基を表し、X^(91)、X^(92)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。)で表される2種類以上の化合物を含む、誘電率異方性が-2より大であり、かつ+2より小である誘電的に中性な成分(B)と、を含有する液晶組成物であって、
前記成分(A)として、式(12.2):
【化10】

で表される化合物をさらに含有し、
前記成分(B)として、式(4.4):
【化11】

で表される化合物をさらに含有し、
前記式(40)で表される化合物の含有量は、前記液晶組成物の総量に対して29質量%以上である、
液晶組成物(ただし、式
【化12】

(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;X^(5)およびX^(6)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物、並びに
液晶組成物の全重量に基づいて式
【化13】

(ここで、R^(1)は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)およびX^(2)は独立して、水素またはフッ素であり;Y^(1)は、フッ素またはトリフルオロメトキシである)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の割合が10重量%以上である、正の誘電率異方性を有する液晶組成物、を除く)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
誘電的に正の成分(A)として、一般式(8)
【化6】

(式中、R^(8)は炭素原子数2?5のアルキル基を表し、A^(8)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、X^(86)?X^(89)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。)で表される1種又は2種類以上の化合物を含有する請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
式(10)
【化8】

で表される化合物を含有する請求項1または3に記載の液晶組成物。
【請求項6】
誘電的に中性な成分(B)として、一般式(16)
【化9】

(式中、R^(164)は炭素原子数2?5のアルキル基を表し、R^(165)は炭素原子数1?5のアルキル基またはアルコキシ基を表し、X^(161)およびX^(162)はそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表し、A^(16)は1,4-フェニレン基または1,4-シクロヘキシレン基を表し、m^(16)は0または1を表す。)で表される1種又は2種類以上の化合物を含有する請求項1、3、5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の液晶組成物を用いたPSVAモード又はPSAモードのアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子であって、
前記液晶組成物は、一般式(V)
【化24】

(式中、X^(51)及びX^(52)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
Sp^(1)及びSp^(2)は単結合を表し、
Sp^(1)とSp^(2)の間の環構造
【化25】

は、式(Va-1)から式(Va-3)
【化26】

を表す。)で表される二官能モノマーを含有する、
アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-08-25 
結審通知日 2016-08-29 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2012-555222(P2012-555222)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (C09K)
P 1 113・ 121- YAA (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 邦久  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 橋本 栄和
岩田 行剛
登録日 2013-07-12 
登録番号 特許第5311168号(P5311168)
発明の名称 液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 石井 良夫  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 河野 通洋  
代理人 城戸 博兒  
代理人 河野 通洋  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 正人  
代理人 吉住 和之  
代理人 池田 正人  
代理人 清水 義憲  
代理人 城所 宏  

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