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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C07J
管理番号 1322590
審判番号 無効2014-800174  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2016-11-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3310301号発明「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は,1997年9月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 1996年9月3日 米国(US))を国際出願日とし,ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク及び中外製薬株式会社(以下「被請求人」という。)を出願人として,名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする発明について特許出願(特願平10-512795号)がされ,平成14年5月24日に,特許第3310301号として設定登録がなされた(請求項の数30。以下,その特許を「本件特許」といい,その明細書を「本件特許明細書」といい,特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)。
その後,本件特許に対して,本件無効審判請求と異なる無効審判の請求(無効2013-800080号)がなされ,平成26年8月4日に審決が送達され,本件特許の請求項29,30を削除する訂正が部分確定し,同年11月7日にその原簿登録がなされた。

本件特許について,セルビオス-ファーマ エス アー(以下「請求人」という。)から,本件無効審判の請求がなされた。その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年10月30日 審判請求書・甲第1?9号証提出(請求人)
平成27年 2月 3日 上申書(請求人)
同年 2月25日 答弁書(被請求人)
同日 訂正請求書(被請求人)
同年 4月20日 審判事件弁駁書・甲第10号証(請求人)
同年 5月11日 審理事項通知書
同年 6月18日 口頭審理陳述要領書・甲第11?15号証
(請求人)
同年 6月19日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 7月 3日 口頭審理
同年 7月10日 上申書・甲第16,17号証提出(請求人)
同年 7月 日 審理終結通知書

第2 訂正の可否についての当審の判断
1 訂正の内容
被請求人は,審判長が審判請求書の副本を送達し,被請求人が答弁書を提出するために指定した期間内である平成27年2月25日に訂正請求書を提出して,本件特許明細書を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。
訂正の内容は,以下のとおりである。

(1)請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1である,
「【請求項1】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、式

のCD環構造、式

のステロイド環構造、または式

のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法。」を,
「【請求項1】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(審決注:化学式は訂正前と同じであるので省略する。)
(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
のステロイド環構造、または式
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法。」に訂正する。

イ 訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2である,
「【請求項2】 Zが

,または

(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
である請求の範囲第1項記載の方法。」を,
「【請求項2】 Zが
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のステロイド環構造と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のビタミンD構造と同じなので省略する。)
(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
である請求の範囲第1項記載の方法。」に訂正する。

(2)請求項13?28からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項3
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項13である,
「【請求項13】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、式
(審決注:化学式は訂正前の請求項1のCD環構造と同じなので省略する。)
のCD環構造、式
(審決注:化学式は訂正前の請求項1のステロイド環構造と同じなので省略する。)
のステロイド環構造、または式
(審決注:化学式は訂正前の請求項1のビタミンD構造と同じなので省略する。)
のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法。」を,
「【請求項13】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
のステロイド環構造、または式
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は訂正前と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法。」に訂正する。

イ 訂正事項4
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項14である,
「【請求項14】 Zが
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のステロイド環構造と同じなので省略する。)
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のビタミンD構造と同じなので省略する。)
,または
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のCD環構造と同じなので省略する。)
(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
である、請求の範囲第13記載の方法。」を,
「【請求項14】 Zが
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のステロイド環構造と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は訂正前の請求項2のビタミンD構造と同じなので省略する。)
(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
である、請求の範囲第13記載の方法。」に訂正する。

2 判断
上記訂正事項の適否について検討する。

(1)請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1について
訂正事項1は,請求項1において,



」における「n」の「1?5」を「1」に,「R_(1)およびR_(2)」の「C1?C6アルキル」を「メチル」に,「WおよびX」の「C1?C6アルキル」を「メチル」に,「Y」の「O、SまたはNR_(3)」を「O」にするとともに,「Z」の選択肢から「CD環構造」を削除するものであるから,いずれも,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして,訂正事項1は,明らかに,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は,請求項2において,「Z」の選択肢の一つである


」(CD環構造)を削除するものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして,訂正事項2は,明らかに,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正後の請求項1?12及び訂正事項2に係る訂正後の請求項2については,訂正後の請求項2?8,10,12が訂正事項1に係る訂正後の請求項1の記載を引用して記載され,請求項9が請求項1の記載を引用する請求項8を引用し,請求項11が請求項1の記載を引用する請求項10を引用するものであるから,特許法施行規則第46条の2第1号又は第2号に掲げる関係に該当する。
よって,本件請求は,特許法第126条第3項に適合するものである。

エ 小括
以上のとおり,請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正は,特許法第134条の2第1項,第3項の規定に適合し,特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項,第6項の規定に適合するので,訂正を認める。

(2)請求項13?28からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項3について
訂正事項3は,請求項13において,


」における「n」の「1?5」を「1」に,「R_(1)およびR_(2)」の「C1?C6アルキル」を「メチル」に,「WおよびX」の「C1?C6アルキル」を「メチル」に,「Y」の「O、SまたはNR_(3)」を「O」にするとともに,「Z」の選択肢から「CD環構造」を削除するものであるから,いずれも特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして,訂正事項3は,明らかに,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項4について
訂正事項4は,請求項14において,「Z」の選択肢の一つであるCD環構造を削除するものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして,訂正事項4は,明らかに,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 一群の請求項について
訂正事項3に係る訂正後の請求項13?28及び訂正事項4に係る訂正後の請求項14については,訂正後の請求項14?20,22,24?26が訂正事項3に係る訂正後の請求項13の記載を引用して記載され,請求項21が請求項13の記載を引用する請求項20を引用し,請求項23が請求項13の記載を引用する請求項22を引用し,請求項27が請求項13の記載を引用する請求項26を引用し,請求項28が請求項13の記載を引用する請求項26を引用する請求項27を引用するものであるから,特許法施行規則第46条の2第1号又は第2号に掲げる関係に該当する。

エ 小括
以上のとおり,請求項13?28からなる一群の請求項に係る訂正は,特許法第134条の2第1項,第3項の規定に適合し,特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項,第6項の規定に適合するので,訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり,本件訂正が認められたので,本件特許の請求項1?28に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明28」といい,合わせて「本件発明」という。)は,訂正後の特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式

のステロイド環構造、または式

のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法。
【請求項2】 Zが

または

(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
である請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

または

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項7】化合物の回収が濾過またはクロマトグラフィーを含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】脱離基がハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項9】ハロゲンが臭素である、請求の範囲第8項記載の方法。
【請求項10】塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項11】アルカリ金属水素化物がNaHまたはKHである、請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項12】塩基がNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項13】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式
(審決注:化学式は,請求項1のステロイド環構造と同じなので省略する。)
のステロイド環構造、または式
(審決注:化学式は,請求項1のビタミンD構造と同じなので省略する。)
のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:
(審決注:化学式は,請求項1の対応する出発化合物と同じなので省略する。)
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は,請求項1の対応する反応化合物(エポキシ)と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項1の対応する反応化合物(アルコール)と同じなので省略する。)
(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は,請求項1の対応するエポキシド化合物と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法。
【請求項14】 Zが
(審決注:化学式は,請求項2のステロイド環構造と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項2のビタミンD構造と同じなので省略する。)
(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
である、請求の範囲第13記載の方法。
【請求項15】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:
(審決注:化学式は,請求項3の対応する出発化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は,請求項3の対応する反応化合物(エポキシド)と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項3の対応する反応化合物(アルコール)と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は,請求項3の対応するエポキシド化合物と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項16】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:
(審決注:化学式は,請求項4の対応する出発化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は,請求項4の対応する反応化合物(エポキシ)と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項4の対応する反応化合物(アルコール)と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は,請求項4の対応するエポキシド化合物と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項17】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:
(審決注:化学式は,請求項5の対応する出発化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は,請求項5の対応する反応化合物(エポキシ)と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項5の対応する反応化合物(アルコール)と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は,請求項5の対応するエポキシド化合物と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項18】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:
(審決注:化学式は,請求項6の対応する出発化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は,請求項6の対応する反応化合物(エポキシ)と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は,請求項6の対応する反応化合物(アルコール)と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
(審決注:化学式は,請求項6の対応するエポキシド化合物と同じなので省略する。)
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項19】化合物の回収が濾過またはクロマトグラフィーを含む、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項20】脱離基がハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項21】ハロゲンが臭素である、請求の範囲第20項記載の方法。
【請求項22】塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項23】アルカリ金属水素化物がNaHまたはKHである、請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項24】塩基がNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項25】還元剤が、LiAlH_(4)、Li(s-Bu)_(3)BH、またはLiEt_(3)BHである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項26】上記工程(b)が工程(a)の反応生成物から工程(a)で生成したエポキシド化合物を分離することなく行われる、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項27】上記工程(a)および(b)が溶媒としてのテトラヒドロフランの存在中で行われる、請求の範囲第26項記載の方法。
【請求項28】上記還元剤が、リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、カリウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、リチウムトリエチルボロハイドライド、およびリチウム9-BBNハイドライドから成る群から選択される、請求の範囲第27項記載の方法。」

第4 請求の趣旨並びにその主張の概要及び請求人が提出した証拠方法
1 審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書に記載した無効理由の概要
請求人が主張する請求の趣旨は,
「特許第3310301号の特許請求の範囲の請求項1?28に係る発明についての特許を無効にする。審判請求費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」であると認める(審判請求書第2頁「6.請求の趣旨」,第1回口頭審理調書「請求人 1」参照)。
そして,請求人が主張する無効理由は,概略以下のとおりである(審判請求書第2頁下から第3行?第9頁末行,第40頁第3行?第79頁第7行,審判事件弁駁書第4頁第10行?第17頁第24行,審理事項通知書「第1 2(1)」,口頭審理陳述要領書第3頁第11行?第11頁第15行,第1回口頭審理調書「請求人 3」参照)。

本件発明1?28は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本件発明1?28の特許が,特許法第29条に違反してされたものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

2 請求人の提出した証拠方法
請求人の提出した証拠方法は,以下のとおりである。

(1)審判請求書とともに提出した証拠方法
甲第1号証 特公平3-74656号公報
甲第2号証 Chemistry of Heterocyclic Compounds,
Vol.17, No.7, pp.642-644, 1982
甲第3号証 有機合成化学, 第48巻, 第12号,
第1082?1091頁, 1990年
甲第4号証 有機合成化学協会誌, 第54巻, 第2号,
第139?145頁, 1996年
甲第5号証 日本薬学会第112年会講演要旨集2, 第62頁,
平成4年3月5日
甲第6号証 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,
Vol.4, No.5, pp.753-756, 1994
甲第7号証 Chem. Pharm. Bull., Vo.40, No.6, pp.1494-1499, 1992
甲第8号証 有機合成化学協会編, 有機合成実験法ハンドブック,
第1075?1082頁, 丸善株式会社,
平成2年3月31日
甲第9号証 日本化学会編, 第4版 実験化学講座, 第20巻,
有機合成II アルコール・アミン, 第14?17頁,
丸善株式会社,平成4年7月6日

(2)審判事件弁駁書とともに提出した証拠方法
甲第10号証 特開平7-2820号公報

(3)口頭審理陳述要領書とともに提出した証拠方法
甲第11号証 John McMurry著, 児玉三明ら訳, 有機化学(上)
第3版, 第274?279頁,
株式会社東京化学同人, 1994年2月10日
甲第12号証 S. Warren著, 野村祐次郎ら訳,
プログラム学習 有機化学合成, xvi?xix頁,
株式会社講談社, 1979年12月10日
甲第13号証 ボルハルト,ショアー著, 古賀憲司ら訳,
現代有機化学(第3版)(上), 第363?367頁,
株式会社化学同人, 1999年11月10日
甲第14号証 国際公開93/21204号
甲第15号証 高橋浩, 標的化合物の有機合成, 第6?7頁,
三共出版株式会社, 昭和56年5月20日

(4)平成27年7月10日付けの上申書とともに提出した証拠方法
甲第16号証 有機合成化学協会誌, 第54巻, 第2号,
表紙,第139-145頁, 平成8年2月1日
甲第17号証 ボルハルト,ショアー著, 古賀憲司ら訳,
現代有機化学(上), 第310?315頁,
株式会社化学同人, 1996年4月1日

第5 答弁の趣旨並びにその主張の概要
被請求人が主張する答弁の趣旨は,「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」であると認める(審判事件答弁書第3頁「7.答弁の趣旨」,第1回口頭審理調書「被請求人 1」参照)。
そして,被請求人は請求人が主張する上記無効理由は,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書において,理由がない旨の主張をしていると認める。

第6 無効理由についての当審の判断
当審は,以下に示すとおり,上記無効理由は,理由がないものと判断する。

1 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には以下の事項が記載されている。
(1a)「1 一般式

(式中R_(1),R_(2)およびR_(3)は各々同一または異なつて水素原子または水酸基を意味し、R_(4)は水素原子または水酸基で置換されているか若しくは非置換の炭素数4乃至6の低級アルキル基を意味する、但しR_(1),R_(2),およびR_(3)が共に水素原子の場合を除く)で示される9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン誘導体。」(特許請求の範囲)
(1b)「本発明は免疫調節作用および腫瘍細胞の分化誘導能を有し医薬、例えば抗アレルギー剤、抗リウマチ剤および抗腫瘍剤として有用な9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン誘導体に関する。」(第2欄第1?5行)
(1c)「前述したビタミンD類は強い分化誘導能等の活性は有しているものの一方では生体内カルシウム代謝に及ぼす影響も強く、投与量如何によつては高カルシウム血症を引き起し、場合によつては大量かつ連続的な投与が必要となる白血病等の腫瘍の治療薬または抗リウマチ剤としては難点を有している。本発明者等はこれらの事情を鑑み鋭意研究した結果9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン誘導体の中に免疫調節作用および骨髄性白血病細胞に対する強い分化誘導能を有しており、しかも生体内カルシウム代謝に対する影響が少ないものがあることを見い出し、更に検討を加え本発明に至つた。」(第3欄第7?19行)
(1d)「実施例 7
a) 1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-オキソブチルオキシ)-5,7-プレグナジエンの製造
実施例6a)で得た1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエン-20α-オール300mgを10mlのキシレンに溶かし、水素化ナトリウム500mgおよび1-ブロム-3-プロペン(審決注:プロペンは炭素数3であり,二重結合が3位にはならないし,生成物が「20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエン」であることから,「1-ブロム-3-ブテン」の誤記と認める。)6.0gを加えて18時間加熱還流する。次いで200μの水を加えて撹拌した後シリカゲルカラムクロマトグラフイー(溶媒:酢酸エチル)に付し固体を除く。次いで溶媒を留去し残渣を分取用薄層クロマトグラフイー(溶媒:4%酢酸エチル-ヘキサン)に付し、20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエンを含む混合物200mgを得る。この混合物をジメチルホルムアミド20mlに溶かし、水0.5mlを加える。次いで塩化第一銅29mgおよび2塩化パラジウム17mgを加え酸素雰囲気下で19時間激しく撹拌する。フロジルカラムクロマトグラフイー(溶媒:酢酸エチル-ヘキサン=1:1)に付し、金属塩を除いた後、酢酸エチル-ヘキサン(1:1)300mlに溶かし、食塩水で3回洗い、水層をバツクエクストラクシヨンし、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を留去後、残渣を分取用薄層クロマトグラフイーに付し目的化合物70mgを得る。」(第35欄第24行?第36欄第7行)
(1e)「b) 1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-5,7-プレグナジエンの製造
前記a)で得た化合物73mgをテトラヒドロフラン4mlに溶かし氷冷する。メチルマグネシウムブロマイドのエーテル溶液0.3ml(0.9mmol)を加え氷冷下1時間撹拌する。反応溶液を食塩水にあけ、200mlの酢酸エチルで抽出する。食塩水で更に洗い、水層を合わせてバツクエクストラクシヨンする。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を留去し残渣を分取用薄層クロマトグラフイー(溶媒:25%酢酸エチル-ヘキサン)に付し目的化合物45.8mgを得る。」(第36欄第17?30行)
(1f)「c) 1α,3β-ジヒドロキシ-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエンの製造
前記b)で得た化合物43mgをエタノール400mlに溶かし、アルゴンガスを導通しながら、200W高圧水銀灯で35分間光照射する。反応溶液をそのまま窒素ガス雰囲気下で2時間加熱還流する。溶媒を留去し残渣をフラツシユカラム(溶媒:25%酢酸エチル-ヘキサン)に付し、ビタミンD体を主成分とする留分7mgと出発物質を主成分とする留分30mgを得る。後者をエタノール400mlに溶かし同様に光照射を行いフラツシユカラムに付すとビタミンD体を含む成分16mgを得る。これを先に得た7mgと合わせて減圧乾燥する。次いで1mlのテトラヒドロフランに溶かしテトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液0.11ml(0.11mmol)を加え室温で19時間撹拌する。更にテトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液0.11ml(0.11mmol)を加えて4時間撹拌する。反応溶液をそのまま分取用薄層クロマトグラフイー(溶媒:酢酸エチル)に付し目的とするビタミンD体6.6mgを得る。これをフラツシユカラム(溶媒:10%クロロホルム-酢酸エチル)に付し純品とする。」(第36欄第41行?第38頁第5行)

(2)甲第2号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(2a)「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類とをアルカリ金属アルコキシドの存在下で反応させるとエポキシ環の関与なしにハロゲン原子の直接置換によりエポキシエーテルが生成する。
α-エピハロヒドリン類と求核試薬とを反応させるとハロゲンが置換された生成物となることが知られている。これらの反応のほとんどはハロヒドリンの生成に伴う付加反応と、それに続く脱離とエポキシド基の生成により進行するものである[1]。ハロゲン原子の直接置換はまれにしか観察されない。[2]」(第642頁第4?11行)
(2b)「この研究で得られた1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類との反応の研究により得られたデータはこの点に関して非常に興味深いものである。アルカリ金属アルコキシドを用いて反応が進行し、その結果、エポキシエーテルIが好収率で得られる(表1)。ビスエポキシ化合物Ijがエチレングリコールを2当量のブロミド化合物との反応により生成する。

」(第642頁第12行?第643頁第3行,第642頁Table1,第643頁第3行直下の反応式)
(2c)「4-ブトキシ-2-メチル-2-ブタノール(III).
30mlの無水エーテル中で3.9g(25mmo1)の4-ブトキシ-2-メチル-2,3-エポキシブタン(Ie)と1.0g(26mmol)のリチウム・アルミニウム・ハイドライドの混合物を3時間加熱還流し、その後に5mlの水を加えて混合物をろ過し、エーテルで洗浄して乾燥し,蒸留して沸点83-84℃(10mm)のIII(2.1g,52.4%)を得た。nD^(20) 1.4293,及びd_(4)^(20) 0.9601{bp82-85℃(10mm),nD^(20)1.4297,及びd_(4)^(20) 0.9603[4]}」(第643頁下から第5行?第1行)

(3)甲第3号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には以下の事項が記載されている。
(3a)「ビタミンD誘導体は古くはくる病治療薬として,最近は骨粗鬆症や白血病,乾癬などの治療薬として注目を集め、多くのグループにより合成研究がさかんに行われている。特に代謝研究の進歩^(1))により活性中心がD_(3)^(*1)の代謝産物1α,25(OH)_(2)D_(3)であることが示されて(1971年)からは,生化学者や医学者との協力のもと多数の代謝産物が単離・合成され,その生理作用の解明が行われてきた。現在の興味の中心は,より効率のよい限りなく実用的に近い合成法の開発と,作用の分離やさらに新しい作用の検討のための誘導体の合成^(2,3))である。」(第1082頁左欄第2?11行)
(3b)「


「後に中外グループは,8を用いた22-oxa-lα,25(OH)_(2)D_(3)9の合成^(10))を報告した。側鎖導入の後に光反応,熱異性化,脱保護により9が得られている。」(第1084頁左欄第15?18行,Fig.5)

(4)甲第4号証の記載事項
甲第16号証からみて,本件優先日前に頒布された刊行物であると認めることができる甲第4号証には以下の事項が記載されている。
(4a)「3.大量合成法の検討-従来法の問題点と改良点
・・・
当初,OCTの合成を行っていた工程を図5に示した^(9))。この方法の欠点はアルコール(8)のアルキル化の際に副生成物(9)を生成する点にある。9は次のWacker酸化の際,未反応物として分離されるが,ロスとして痛手であった。この副生成物(9)の生成は8の水酸基の立体障害に起因する反応性の低さから生じている。8のアルキル化反応を数十系統の反応で検討した結果,図6に示すようにMichael付加反応-メチル化反応を経由する改良法が効率的であることが判明し,現在はこの方法を採用している^(12))。しかしこのメチル化反応においても,CeCl_(3)・7H_(2)Oを250℃のオーブンで脱水・無水化して用いており,実験室レベルでは何ら問題はないが,大量合成には不利なことからさらに改良が検討されている。その他の従来法からの改良点としては,いろいろな副生物が生成し,精製のやっかいな5,7-dieneの導入の工程を,できるだけ小スケールでの精製となるように,合成過程の後に配した^(12))。しかし改良法においても,微生物酸化体(7)からの総収率が低く,これは最終工程の光照射-熱異性化反応の効率の悪さが大きく影響しているので,この点の改良を目指して現在でもさらに検討が続けられている。」


」(第140頁右欄Fig4の下から第1?2行,第141頁右欄第4行?第142頁左欄第16行,第141頁Fig.5,Fig.6)
(4b)「さらに26-hydroxylated OCT(12)および(13)は図9に示すようにkey stepにKatsuki-Sharpless反応を用いてepoxide(18)および(19)を得,それぞれ25位がR配位(12)およびS配位(13)の26-hydroxylated OCTに導いた。最後にpentanorOCT(15)はOCT合成の中間体であるアルコール(8)より合成した(図9)^(13))。」


」(第142頁右欄第16行?第143頁左欄第2行,第143頁Fig.9)

(5)甲第5号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には以下の事項が記載されている。
(5a)「【実験・結果】5-en体(1)及び5,7-diene体(2)の20位水酸基をアルキル化し25-ol体(5)を合成する方法について検討した結果、1または2にTHF中,NaH存在下,アクリル酸誘導体を反応させるとMichael付加反応により付加体(3)が高収率で得られることを見出した。統いて,3のカルボニル基への有機金属化合物によるメチル化を試みた。MeMgBr,MeLiを用いた場合には、3から1への逆Micheal反応が起こり低収率であったため、塩基性の弱いメチル化剤を検討した結果、MeCeCl_(2)を反応させるケトン体(4)が高収率で得られることが判った。4に再度MeCeCl_(2)を作用させることにより目的の25-ol体(5)が得られた。

」(第62頁左下欄第9?18行,その直下の反応式)

(6)甲第6号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,翻訳は請求人が提出したものに一部当審訳を加えた。
(6a)「次に、26-水酸化OCT(5及び6)を合成するために、我々は(R)-又は(S)-シトラリンゴ酸(14)の両エナンチオマーから合成した完全な官能基導入を完了したブロマイド(13)を用いて20(S)-アルコール(9)のアルキル化を試みたがうまくいかなかった^(13)。いくつかの反応条件下で試みたが20(S)-アルコール(9)の回収とブロマイド(13)の分解に終わってしまった。しかしながら、20(S)-アルコール(9)とブロマイド(15)^(14)とを水素化カリウムの存在下に反応させると、9の原料回収に基づいて94%の収率でエーテル(16)が生成した。それゆえ、我々は香月-シャープレスエポキシ化反応^(15)を用いる別のルートに注目点を変更した。16のTHP部分をメタノール中でピリジニウムp-トルエンスルホネートを用いて切断し、C-3位の脱シリル化を伴ってアリルアルコール(17)が82%の収率で生成した。続いて17の(-)-又は(+)-酒石酸ジイソプロピルとチタニウム(IV)テトライソプロキシドの存在下でtert?ブチルハイドロパーオキシドを用いた香月-シャープレスエポキシ化反応^(15)によりエポキシ体(18aまたは18b)がそれぞれ89%及び86%の収率で得られた。18a及び18bのジイソブチルアルミニウムハイドライドを用いたエポキシ環の位置選択的開裂は、より立体障害の少ないC-24位で起こり、トリオール(19a及び19b)を与えた。19a及び19bをそれぞれエポキシ体(18aと18b)から計算して86%と77%の収率で脱シリル化してトリオール(20aと20b)とし、それらを光照射及び熱異性化して、それぞれ18%と19%の収率で25(S)-と25(R)-配置を有する26-水酸化OTC(5^(16)と6^(17))とした。
最終の目的化合物はペンタノルOTC(7)であり、この化合物は代謝実験において23-ヒドロキシヘミアセタール(8)から得られるかもしれない。それゆえ20(S)-アルコール(9)に光照射し、熱異性化及び脱シリル保護してペンタノルOCT(7)^(18)を25%の収率で得た。」(第754頁第12?36行)
(6b)「

」(第754頁反応式)
(6c)「

」(第755頁反応式)

(7)甲第7号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,翻訳は請求人が提出したものによった。
(7a)「20(S)アルコール(11)は、エチルアクリレートと、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシドを触媒とした相間移動反応でアルキル化し、41%の原料回収を伴い56%の収率でエステル(12)へと導いた。」


」(第1494頁右欄第17行?21行,第1495頁Chart2)
(7b)「

」(第1496頁Chart3)
(7c)「1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(5,5-エチレンジオキシヘキシルオキシ)プレグナ-5,7-ジエン(19b)
11(1.20g, 2.14mmo1)、水素化ナトリウム(60%,295mg, 7.38mmol)と18b^(12))(1.66g, 7.44mmo1)をキシレン(60ml)中で、19aの合成と同様の操作で処理した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにてn-ヘキサン/酢酸エチル(5.7:1)の溶出部分で精製し、無色プリズム晶として、19b(1.48g、99%)を得た。」(第1498頁左欄第1?7行)
(7d)「20(S)アルコール(11)は、100℃でジベンゾ-18-クラウン6の存在下、t-ブトキシカリウムとイソブチレンオキシド(15)でアルキル化し、47%の収率でアルコール(16)を与え、次いで、脱シリル化し75%の収率でトリオール(17)を得た。」(第1495頁左欄第24?28行)

(8)甲第8号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には,以下の事項が記載されている。
(8a)「有機合成において特定化合物の合成に次いでよく行なわれるものに,特定化合物の合成デザインがある.その際には,特定化合物タイプの合成ルートの文献調査とか,ある化合物タイプから他の化合物タイプを合成する反応の文献調査などを行なう.具体的にいえば,前者は,例えば酸とかアルコールを合成するにはどんな方法があるか調べるもので,後者は,例えば二重結合を酸化してジケトンを合成する反応にどんな方法があるか調べるものである.」(第1078頁第11?15行)

(9)甲第9号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証には,以下の事項が記載されている。


」(第15頁 表1・6)

(10)甲第10号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証には,以下の事項が記載されている。
(10a)「【0025】本発明の一般式(I-1)のシス-エポキシ化合物は、下記反応式1、2および3により製造できる。
【0026】反応式1
【化38】

(前記反応式において、R^(1 )、AおよびBは前記に定義したのと同じであり;Pはアミノ保護基であって、好ましくはベンジルオキシカルボニル基である)。
前記反応式1によると、一般式(II)のエポキシ化合物を一般式(III )の化合物とカップリング反応させて、一般式(IV)の化合物を得、この一般式(IV)の化合物から保護基を除去した後、一般式(V)の化合物とカップリング反応させて、一般式(I-1)の目的化合物を得る。
【0027】反応式2
【化39】

(前記反応式中、R^(1) 、A、BおよびPは前記に定義したのと同じである)
反応式2によると、一般式(VI)の化合物を一般式(III)の化合物とカップリング反応させて一般式(VII)の化合物を得た後、この一般式(VII)の化合物をエポキシ化して一般式(VIII)の化合物を得、この一般式(VIII)の化合物から保護基を除去した後、一般式(V)の化合物とカップリング反応させて、一般式(I-1)の目的化合物を得る。」

(11)甲第11号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
(11a)「有機合成の計画には秘密はない.種々の反応の知識および多くの練習が,必要とするすべてである.けれども,ここに一つのヒントがある.それは逆行して考えろということである.最終生成物を見て“最終生成物の直接の前駆物質は何か”を考える.たとえば,最終生成物がハロゲン化アルキルであるならば,直接の前駆物質はアルケンであろう(HXの付加を経由).直接の前駆体を見付けたら,1段階ずつ,適当な出発物質が見付かるまで,再び逆行して考えていく.」(第276頁「解答」の化学式の下から第5?10行)

(12)甲第12号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第12号証には,以下の事項が記載されている。
(12a)「しかし,この化合物1がこれまでに合成されていないと仮定してみよう.どのような合成法をデザインすればよいだろうか.もちろん,出発物質にどんなものを使ったらよいかわからない.わかっていることは,この化合物-目的分子(target molecule)-の構造だけである.この構造から出発して,逆向きに作業を進めていかなければならないことは明らかである.問題を解くかぎは目的分子の官能基(functional group)にあり,上の例では,窒素原子,カルボニル基,二重結合,およびメトキシル基をもったベンゼン環である.このプログラム学習で学ぶことは,たいていの官能基には一つまたはそれ以上の合理的な切断(disconnection)方法があるということである.この切断は,実際に行なう化学反応とは逆向きの想像上の作業であり,目的の分子を合成するために必要な中間物質の構造を考え出すためのものである.」(第xvi頁化学式の下から第3行?末行)

(13)甲第17号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第17号証には,以下の事項が記載されている。
(17a)「アルコキシドは強塩基なので,これらを工ーテル合成に用いることができるのは立体障害のない第一級のアルキル化剤との反応に限られており,その他の場合にはかなりのE2反応生成物が生じる(7-8節参照).」(第311頁下から第7?5行)
(17b)「Williamson合成法はハロアルコールを出発物質とすると環状エーテルの合成にも適用できる.図9-3には,ブロモアルコールと水酸化物イオンの反応を示した.黒の曲線は官能基である酸素につながる炭素原子鎖を示している.反応機構は,まず初めにブロモアルコールから塩基への速いプロトン移動によりブロモアルコキシドが生じ,次いでこれが閉環して環状エーテルを与える.」(第312頁第2?6行)

(14)甲第14号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第14号証には,日本語にして以下の事項が記載されている。なお,翻訳は請求人が提出したものによった。
(14a)「

」(第13頁反応式)
(14b)「実施例4
・・・
手順:ディールスアルダーエポキシド体(12.9g、23.1g(審決注:「mmol」の誤記と認める。))をテトラヒドロフラン(275ml)に溶解し、(0-5℃)に冷やした溶液に、1M水素化アルミニウムリチウムの1Mテトラヒドロン溶液(90ml,90mmol)を撹拌下で滴下した。反応溶液は60℃で30分加熱された。(反応は2段階で進む:初めに保護基が外れ、次にエポキシドが開環される。)反応溶液は0-5℃に冷やされ、飽和塩化アンモニウム水溶液がゆっくり加えられた(過剰のLAH(水素化アルミニウムリチウム)が分解されるまで?25ml)。反応溶液は0-5℃で30分撹拌され、セライトろ過された。フィルターベッドは少量のテトラヒドロフランで洗浄された。減圧下で溶媒留去し粗生成物を与えた。粗生成物はメタノールより再結晶され、収率6.49g(70.2%)で、融点183-185℃の化合物を与えた。2度目の再結晶で融点を190-193℃に上げた。NMR、IR、MSスペクトルはすべて、提案された構造式(XXVII)を支持した。」(第22頁第1?26行)

(15)甲第15号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第15号証には,以下の事項が記載されている。
(15a)「1. 3 標的化合物の切断
標的化合物の合成を考えるには,その結合を切断しフラグメントにわけ,そして,でてきたフラグメントを現実の試薬になおして再結合してみる。このようにすると,標的化合物を合成するための原料とその反応がわかる。ここで重要なことは標的化合物のどの結合がどのように切断されるかである。そこで,はじめに切断の基本的なタイプを示し,以下の各章でこれを応用しながら個々の化合物の合成法について考えていく。
(1)切断のタイプ
○1(審決注:丸文字に1である。)炭素-ヘテロ原子結合の切断 (ヘテロ原子のα切断)
炭素-ヘテロ原子単結合はヘテロ原子を陰イオン,炭素を陽イオンにして切断する。

」(第6頁第4?14行,その下の化学式)

2 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には,「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエン-20α-オール・・・を・・・キシレンに溶かし、水素化ナトリウム・・・および1-ブロム-3-ブテン・・・を加えて・・・加熱還流する・・・20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエンを含む混合物・・・を得る」ことが記載されている(摘記1d参照)。
そうすると,甲第1号証には,「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルオキシ)-5,7-プレグナジエン-20α-オールを、キシレンに溶解し、水素化ナトリウムおよび1-ブロム-3-ブテンを加えて、加熱還流し、20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルオキシ)-5,7-プレグナジエンを得る方法」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
甲1発明の「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルオキシ)-5,7-プレグナジエン-20α-オール」は本件発明1の


」において,W及びXは水素とメチルであり,YはOであり,Zは,


」であるものに相当する。
また,甲1発明の「1-ブロム-3-ブテン」は,本件発明1の


または

」において,「E」が「Br」で脱離基であり,


または

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)
」の部分(以下「B」構造という。)が,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」であるものに対応する。
甲1発明の「20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエン」は,本件発明1の


」において,W及びXは水素とメチルであり,YはOであり,Zは,


」であり,


」の部分(以下「A」構造という。)が,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」であるものに対応する。
甲1発明の「水素化ナトリウム」は,本件発明1の「塩基」に相当する。

そこで,本件発明1と甲1発明とを対比すると,両者とも,
「下記の構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式

のステロイド環構造(以下「ステロイド環構造」という。)、または式

のビタミンD構造(以下「ビタミンD構造」という。)であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
E-B
を有する化合物(式中、Eは脱離基である)と反応させて化合物を製造すること;
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法」で一致し,以下の点で相違している。
(1-i)「

」の「A」に対応する部分構造が,
本件発明1では,「下記構造:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)」であるのに対して,
甲1発明では,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」である点
(1-ii)「E-B」の「B」に対応する部分構造が,本件発明1では,
「下記構造:

または

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチル、Eは脱離基である)」(以下,上に示した化学構造を「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」という。)であるのに対して,甲1発明では,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」である点

イ 相違点の検討
(ア)相違点の整理
相違点(1-i),相違点(1-ii)について検討すると,相違点(1-ii)における「E-B」の「B」構造を,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」から,「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」にすることによって,
相違点(1-i)における「A」も,必然的に,「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」から,「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」になる。
そうすると,甲1発明において,相違点(1-ii)の構成が満たされることで,必然的に相違点(1-i)の構成も満たされることになるので,以下,相違点(1-ii)について検討する。

(イ)動機付けについて
a 甲第1,2,4号証に基づく動機付けについて
甲第1号証には,甲1発明で得られた「20α-(3-ブテニルオキシ)-1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5,7-プレグナジエン」を,酸化させて「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-オキソブチルオキシ)-5,7-プレグナジエン」を得ることが記載され(摘記1d参照),さらに,それを,「メチルマグネシウムブロマイド」と反応させて,「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-5,7-プレグナジエン」を製造することが記載されている(摘記1e参照)。そして,この「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-5,7-プレグナジエン」(以下「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」という。)は,
本件発明1で得られる


」において,n=1,R_(1),R_(2)がメチル,YがOであり,Zがステロイド環(Zの構造の各々は、1以上の保護を有している)である化合物を還元して得られる本件発明13の


」において,n=1,R_(1),R_(2)がメチル,YがOであり,Zがステロイド環(Zの構造の各々は、1以上の保護を有している)である化合物に相当する。
そして甲第1号証には,上記「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」が光反応,異性化,脱保護の反応により,「1α,3β-ジヒドロキシ-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン」となることが記載され(摘記1f参照),これが特定の薬理作用のある化合物であって(摘記1a?1c参照),本件特許明細書に記載される「1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD_(3)」(以下「OCT」と略称する。)に相当するものである。
そうすると,甲1発明は,本件発明1と同じく


(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護の置換基を有し、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を有している)」(以下「ステロイド-20-アルコール」という。)を出発物質として,最終目的物であるOCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」を製造する方法の一工程である点で,本件発明1と目的が共通しているといえる。
次に,甲1発明の課題について検討すると,甲第4号証には,図5に甲第1号証の上述したOCTの製造方法が記載され(摘記4a参照),この方法の欠点は出発物質であるアルコールのアルキル化の際に副生成物を生成する点にあり,この副生成物の生成は出発物質であるアルコールの水酸基の立体障害に起因する反応性の低さから生じることが記載されている(摘記4a参照)。
そうすると,甲1発明を途中工程として含む甲第1号証に記載されたOCTの製造方法には,出発物質であるステロイド-20-アルコールの水酸基の立体障害に起因して副生物が生じ,収率の低減をもたらすことが当業者に理解でき,その一工程である甲1発明にも,このような課題があることを本件優先日の技術常識として当業者が認識できたということができる。
ところで,このような課題が甲1発明にあるとした場合の解決手段として,甲第4号証には,「図6に示すようにMichael付加反応-メチル化反応を経由する改良法が効率的であること」が記載されている(摘記4a参照)ものの,それ以外の解決手段は特に記載されていない。さらに,甲第4号証には,上記Micheal付加反応-メチル化反応を経由する改良法でも大量合成には不利なことからさらに改良が検討されていることも記載されているが(摘記4a参照),その課題を解決する手段については記載されていない。
一方,甲第2号証には,本件発明1の「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」を有する試薬に当たる「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」とアルコール類との反応が,アルカリ金属アルコキシドを用いて反応が進行し,その結果,エポキシエーテルが好収率で得られることが記載されている(摘記2b参照)。
しかしながら,甲第2号証に記載されるアルコールは,「ROH」の「R」が「CH_(3)」,「C_(2)H_(5)」,「C_(3)H_(7)」,「i-C_(3)H_(7)」,「CH_(2)C_(6)H_(5)」,「CH_(2)=C(CH_(3))CH_(2)CH_(2)-」,「C_(6)H_(5)」,


」であって,立体障害があるとされる甲1発明のステロイド-20-アルコールと構造が異なり,甲第2号証の記載から,甲1発明のようなステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとの間で実際に反応が進行することが直ちに理解できるものではない。実際,有機化学の教科書である甲第17号証には,ウィリアムソン合成反応によるエーテル合成は,立体障害のない第一級のアルキル化剤との反応に限られることが記載されている(摘記17a参照)ことからすれば,立体障害があるステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとの間で反応が必ず進行すると当業者が理解するとはいえない。

b その他の証拠に基づく動機付けについて
動機付けについてその他の証拠の記載も検討する。
甲第3号証は,甲第1号証に記載される上述のOCTの製造方法及びOCTのより効率のよい限りなく実用的に近い合成法の開発がなされていること(摘記3a,3b参照)が記載されているが,本件発明1のエポキシ化合物についての記載は見当たらない。
甲第4号証及び甲第6号証には,甲1発明と同じステロイド-20-アルコールと,二重結合を有する側鎖導入試薬を反応させた後,その二重結合部分をエポキシ化して,ステロイド環の一部と側鎖の部分構造が


」で示されるエポキシド化合物を製造する方法が記載されている(摘記4b,6a?6c参照)ものの,この化合物は,本件発明1の


(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造であり;nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)」のエポキシド化合物とは異なる化合物(25位のメチル基がヒドロキシメチル基となっている)であって,甲第1号証に記載される上述のOCTの製造方法の課題が,エポキシド化合物を経由して,OCTを製造することにより解決できることを示唆するものではない。
また,甲第5号証には,甲第4号証で甲第1号証に記載のOCTの製造方法の改良方法として示されたMicheal付加反応が記載されている(摘記5a参照)が,これも本件発明1のエポキシド化合物を得る反応ではない。
さらに,甲第7号証も,甲1発明と同じステロイド-20-アルコールと「エチルアクリレート」あるいは,エポキシ環造を有する化合物,以下の構造を有する化合物


(a:X=Cl,n=3;b:X=Br,n=4)」などが反応してエーテルを合成することが記載されているものの(摘記7a?7c参照),これらは,本件発明1の「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」を有する試薬ではなく,また本件発明1のエポキシド化合物も得ておらず,甲1発明の課題が,甲第2号証の「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を使用することで解決できることを示唆するものとはいえない。
一方,甲第10号証には,エポキシ基を有するカルボン酸とH-Bとのカップリング反応と,二重結合を有するカルボン酸H-Bとの反応の後に,二重結合をエポキシ化する反応が記載され(摘記10a参照),この記載から,二重結合を有する化合物とカップリング反応をしてからエポキシ化するよりも,エポキシ基を有する化合物を1段でカップリング反応させるほうが工程が少なくなることは理解できるとしても,そもそも,甲1発明を一工程として含む甲1号証のOCTを製造する方法では,途中段階でエポキシド化合物を経由することが何ら記載されていない以上,甲第10号証の上記記載を適用する根拠はなく,甲1発明において,「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を使用する動機付けを示唆するものとはいえない。
その他の証拠にも,本件発明1の「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」を有する試薬を使用することで,甲1発明における上記課題を解決することができることを示唆する記載は見当たらない。

c 動機付けのまとめ
してみると,甲1発明において,「E-B」の「B」構造を,「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」から,「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」にする動機付けがあったということはできない。

(ウ)構成の容易想到性について
上述のとおり,甲1発明において,相違点(1-ii)についての動機付けがあるとはいえないが,甲第2号証には,アルコールと「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」とが塩基の存在下で反応が進行することが記載されているので,このような反応を甲1発明のステロイド-20-アルコールと1-ブロモ-3ブテンとの塩基の存在下での反応に代えて適用することを当業者が容易に想到し得たかについて,さらに検討する。

甲第9号証には,様々なエポキシ化合物を還元してアルコールを合成する反応が記載され(摘記9a参照),
甲第4号証には,ステロイド環の一部と側鎖の部分構造が


」で示されるエポキシド化合物を還元して,


(R^(1)=CH_(3),R^(2)=OH,R^(3)=TBS)」のアルコールを合成する反応が記載され(摘記4b参照),
さらに,甲第14号証には,


」で示されるエポキシド化合物を還元して,


」のアルコールを合成する反応が記載されている(摘記14a,14b参照)。
また,甲第2号証にも,得られたエポキシド化合物を還元剤で還元してアルコールを合成する反応が記載されている(摘記2c参照)。
これらの反応は,エポキシド化合物の還元によるアルコールの製造方法であって,甲第4号証,甲第14号証に記載される上記エポキシド化合物は,ステロイド構造を有するものであるが,
本件発明1のエポキシド化合物(以下「エポキシステロイド化合物」という。)は,


(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造であり;nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)」で示されるもので,その側鎖の構造が上記甲第4,14号証のエポキシド化合物とは異なっている。
また,甲第11号証,甲第12号証には,目的とする化合物を得ようとする場合に,目的化合物の前駆物質,目的化合物を得るための中間物質を考えるべきことが記載されている(摘記11a,12a参照)が,このような技術常識を適用して,甲第1号証に記載される製造方法の最終目的物であるOCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」を得ようとする場合に,その前駆物質として,本件発明1の「エポキシステロイド化合物」を必ずしも想起するとはいえない。
すなわち,上記「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」の前駆物質としては,甲第1号証に記載される「1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-20α-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-5,7-プレグナジエン」をはじめとして多くの前駆物質とそれからの反応が想起されるものであって,上記甲第2,4,9,14号証のエポキシド化合物から還元剤でアルコール化合物を合成する反応が当業者に知られていたとしても,本件発明1の「エポキシステロイド化合物」はそのような多くの前駆物質の一つと結果的になり得るというだけであって,これら多数の前駆物質の中から本件発明1の「エポキシステロイド化合物」を当業者が選択する根拠がこれらの証拠に示されていない。
仮に,甲1発明を含む甲第1号証に記載された製造方法において,OCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」の前駆物質として本件発明1の「エポキシステロイド化合物」を選択することを想起したとしても,次に,この「エポキシステロイド化合物」を得るための前駆物質とその反応をさらに考えなければならないが,そのような反応として,甲第2号証に記載されるアルコールと「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」との塩基の存在下で反応を適用することを当業者が容易に想起することができるとはいえない。
すなわち,甲第4号証には,上述のとおり,ステロイド-20-アルコールと1-ブロム-3-ブテンとの反応において立体障害のため反応性が低く,この立体障害は反応する水酸基が置換している20位炭素原子に水素原子,メチル基のほかにステロイド環のような大きな置換基が存在することによるものであることは当業者であれば当然理解することであって,甲第2号証に記載される「ROH」の「R」が「CH_(3)」,「C_(2)H_(5)」,「C_(3)H_(7)」,「i-C_(3)H_(7)」,「CH_(2)C_(6)H_(5)」,「CH_(2)=C(CH_(3))CH_(2)CH_(2)-」,「C_(6)H_(5)」,


」といった,ステロイド環構造のような大きな置換基を水酸基が置換する炭素原子に持たないアルコールと「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」が反応したからといって,ステロイド-20-アルコールのような大きな置換基を有する立体障害があるアルコールも同様に反応すると当業者が理解するものとはいえない。
甲第4号証,甲6号証には,ステロイド-20-アルコールと「

」とが94%の収率で反応することが記載され(摘記4b,6a参照),甲第7号証もステロイド-20-アルコールと「エチルアクリレート」とが56%の収率で反応することが記載されている(摘記7a参照)が,これらは甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」のようにエポキシ環構造を有するものではない。
また,甲第7号証には,ステロイド-20-アルコールと環構造を有する以下の反応剤


(a:X=Cl,n=3;b:X=Br,n=4)」とが反応してエーテルを合成することが記載されているものの(摘記7b,7c参照),甲第6号証には,この反応剤(18a,18b)のnが2となったブロマイド(13)とステロイド-20-アルコールとは反応しないことが記載されており(摘記6a参照),環構造を有する反応剤では環構造が反応部位により近い位置に存在すると,ステロイド-20-アルコールと反応させても,反応が進行しない可能性があることが理解できる。
そして,甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」は,この反応しなかった甲第6号証のブロマイド(13)「

」よりも反応部位に近い位置にエポキシ環が存在し,さらに,甲第7号証には,同じエポキシ環を持つイソブチレンエポキシド15をステロイド-20-アルコールと反応させるとエポキシ環が開裂する付加反応が生じていること(摘記7b参照)が記載され,甲第2号証でも,α-エピハロヒドリン類と求核試薬とを反応させるとハロゲンが置換された生成物となる反応のほとんどはハロヒドリンの生成に伴う付加反応と,それに続く脱離とエポキシド基の生成により進行するもので,ハロゲン原子の直接置換はまれにしか観察されないことが記載されている(摘記2a参照)ことからすれば,ステロイド-20-アルコールと甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を反応させて,実際にエポキシ環を保持したままエポキシエーテルを合成できるかは当業者といえども直ちに予測できるものではなかったと認められる。

そうすると,甲1発明を含む甲第1号証に記載された製造方法において,OCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」の前駆物質として「エポキシステロイド化合物」を選択することを想起したとしても,この「エポキシステロイド化合物」を得る反応としてステロイド-20-アルコールと甲第2号証に記載される「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」とを反応させることを当業者が容易に想到し得たとは認めることができない。

ウ 本件発明1の効果
上述のとおり,本件発明1は,甲1発明から当業者が容易になし得たものということができないが,念のため,本件発明1の効果についても検討する。
本件発明1の効果は,本件特許明細書の「本発明は、以下の式Iの構造を有する化合物の製造方法であって:
・・・
を含む方法を提供する。」との記載(訂正明細書第15頁第21行?第17頁第2行)からみて,本件発明1に係る新たな製造方法を提供することにあるものと認める。
そして,上記イで検討したとおり,本件発明1に係る構成とすることを当業者が容易に想到し得なかったものであるから,本件発明1の効果も同様に当業者が予測し得なかったものと認められる。

エ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張の概要
請求人は,要約すると以下の主張をしている(審判事件弁駁書第6頁第14行?第16頁第8行,口頭審理陳述要領書第3頁下から第3行?第10頁第19行)。
甲第1号証には,マキサカルシトール(審決注:「OCT」のことであるので,以下「OCT」に用語を統一して記載する。)を最終的に製造する方法が記載されているから,甲1発明と本件発明1とは,目的を同じくするものであって,甲第1号証に記載されるOCTの製造方法には,大量生産に不向きであるとの課題があり,その改良方法が本件優先日の時点で検討されていたことは甲第3?7号証の記載からも明らかであるから,甲1発明の製造方法よりも効率的な反応経路を探索する動機付けが存在する。
そして,既知の反応を同様の官能基を有する別の化合物に応用できるか検討することは技術常識であって(摘記8a参照),OCTという最終生成物を得るためには,その最終生成物を得るためにその前駆物質を考えるはずであるという当業者の技術常識(甲第11,12号証)にしたがえば,分子内で反応するおそれのある側鎖導入剤は避ける(摘記17b参照)とともに,甲第4,9,14号証の記載からエポキシ環の開環によってアルコールを合成するという技術常識を知っている当業者であれば,エポキシ環の開環によってOCTの25-水酸基を得ることのできる経路を探索し,OCTと同じ側鎖を導入することのできる甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を検討したはずである。
また,甲第15号証にも標的化合物の結合を切断して,フラグメントに分け,現実の試薬に直して再結合するとの逆合成解析の手法が記載され(摘記15a参照),これを本件発明1のエポキシエーテルに適用すると,20-アルコールと「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」とを反応させることを検討したはずである。
さらに,甲1発明のように二重結合を有する側鎖導入試薬を反応させてエポキシ化するよりも,エポキシ基を有する側鎖導入試薬を使用するほうが工程が少なくなる(甲第10号証)ので,この点からも甲第2号証に記載される「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を使用したはずである。
そして,甲第4?7号証には,甲1発明と同様に20-アルコールとその側鎖を形成するアルキル化剤とを反応させて高収率で反応させるウィリアムソン合成反応も記載されているから,甲1発明の1-ブロム-3-ブテンに代えて,同じウィリアムソン合成反応である「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」と,20-アルコールの22位の水酸基とを反応させることは当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)請求人の主張の検討
甲1発明と本件発明1とは,ともに最終目的物のOCTの製造方法の一工程である点で目的を同じくし,甲第1号証に記載されるOCTの製造方法には,副生物が生じて収率が低下するという技術課題があり,甲1発明の製造方法よりも効率的な反応経路を探索する動機付けは存在するといえる。
しかしながら,上記イ(イ)で述べたとおり,甲1発明を含む甲第1号証に記載されるOCTの製造方法の課題を解決する手段として,甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」による反応を適用することを示唆する証拠は見当たらない。
また,既知の反応を同様の官能基を有する別の化合物に応用できるか検討すること,その最終生成物を得るためにその前駆物質を考えるとの当業者の技術常識を,甲第1号証に記載されるOCTの製造方法に適用したとしても,上記イ(ウ)で述べたように,最終目的物であるOCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」を得ようとする場合,その前駆物質には多くの物質が考えられ,本件発明1の「エポキシステロイド化合物」は結果的にそのような多くの前駆物質の一つとなり得るというだけであって,この「エポキシステロイド化合物」を当業者が当然に選択するという根拠はいずれの証拠にも示されていない。
さらに,二重結合を有する側鎖導入試薬を反応させてエポキシ化するよりも,エポキシ基を有する側鎖導入試薬を使用するほうが工程が少なくなることは明らかではあるが,そのことによって必ずしも収率が向上するとはいえない上に,上記イ(イ)で述べたとおり,甲1発明を含む甲第1号証に記載されるOCTの製造方法において,OCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」の前駆物質として本件発明1の「エポキシステロイド化合物」を想起することができない以上,このことが,甲1発明において,「1-ブロム-3-ブテン」に代えて,甲第2号証の「1-ブロモ(またはクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」を使用する根拠とはならない。

仮に,甲1発明を含む甲第1号証に記載された製造方法において,OCTの中間物質である「25-ヒドロキシ-22-オキサステロイド」の前駆物質として本件発明1の「エポキシステロイド化合物」を選択することを想起し得たとしても,上記イ(ウ)で述べたとおり,ステロイド-20-アルコールの立体障害は反応する水酸基が置換している20位炭素原子に水素原子,メチル基のほかにステロイド環のような大きな置換基が存在することによるものと理解されるところ,甲第2号証に記載されるステロイド環構造のような大きな置換基を持たないアルコールと「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」が反応したからといって,ステロイド-20-アルコールのような大きな置換基を有する立体障害があるアルコールも同様に反応すると当業者が理解するとはいえない。
以上のとおりであるから,請求人の主張は採用できない。

オ 本件発明1のまとめ
以上のとおり,甲1発明において,甲第2号証及び甲第3?17号証の記載に基いて,本件優先日前に,相違点(1-ii)を構成することが当業者にとって容易になし得たものとはいえないから,本件発明1は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2?12について
本件発明2?12は,本件発明1の構成を,さらに限定したものであるから,本件発明2?12も本件発明1と同様に,本件発明1は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明13について
ア 対比
本件発明13と甲1発明を対比する。
本件発明13と甲1発明とは,上記(1)アで述べた本件発明1と甲1発明と同様の対応関係がある。
そこで,本件発明13と甲1発明とを対比すると,両者とも,
「下記の構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
E-B
を有する化合物(式中、Eは脱離基である)と反応させて下記構造:

を有する化合物を製造すること;
を含む方法」で一致し,以下の点で相違している。
(1-i’)「

」の「A」に対応する部分構造が,
本件発明13では,「下記構造:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)」であるのに対して,
甲1発明では,「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」である点
(1-ii’)「E-B」の「B」に対応する部分構造が,本件発明13では,
「下記構造:

または

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチル、Eは脱離基である)」であるのに対して,
甲1発明では,
「-CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」である点
(1-iii)「

」の「A’」に対応する部分が
本件発明13では,「

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルである)」であるのに対して,
甲1発明では,「CH_(2)-CH_(2)-CH=CH_(2)」である点
(1-iv)本件発明13では,「(b)

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
を有するエポキシド化合物を還元剤で処理して、下記構造式を有する化合物を製造すること;および

(式中、n、R_(1)およびR_(2)、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
(c)かくして製造された化合物を回収すること」を含んでいるのに対して,
甲1発明ではこのような工程がない点

イ 相違点の検討
(ア)相違点の整理
相違点(1-i’),相違点(1-ii’)について検討すると,上記(1)イ(ア)で述べたように,甲1発明において,相違点(1-ii’)の構成が満たされることで,必然的に相違点(1-i’)の構成も満たされることになる。
また,相違点(1-iii),相違点(1-iv)は,相違点(1-i’),(1-ii’)の構成が満たされることを前提とした相違点であるといえる。
よって,相違点(1-ii’)について検討する。

(イ)相違点(1-ii’)について
相違点(1-ii’)は,上記(1)イ(イ)(ウ)で検討した相違点(1-ii)と実質的に同じであるから,上記(1)イ(イ)(ウ)で述べたのと同様の理由により,甲1発明において,本件優先日前に,相違点(1-ii’)を構成することが当業者にとって容易になし得たものとはいえない。

ウ 本件発明13の効果
上述のとおり,本件発明13は,甲1発明から容易になし得たものということができないが,念のため,本件発明13の効果についても検討する。
本件発明13の効果は,上記(1)ウで述べたのと同様に,本件発明13に係る新たな製造方法を提供することにあるものと認める。
そして,上記イで検討したとおり,本件発明13の構成は当業者が容易に想到し得なかったものであるから,本件発明13の効果も同様に当業者が予測し得なかったものと認められる。

エ 本件発明13のまとめ
以上のとおり,甲1発明において,甲第2号証及び甲第3?17号証の記載に基いて,本件優先日前に,相違点(1-ii’)を構成することが当業者にとって容易になし得たものとはいえないから,本件発明13は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明14?28について
本件発明14?28は,本件発明13の構成を,さらに限定したものであるから,本件発明14?28も本件発明13と同様に,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 小括
以上のとおり,本件発明1?28は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における技術常識に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると,上記理由及び証拠によっては,本件発明1?28についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり,請求人が示した理由及び証拠によっては,本件発明1?28の特許を無効とすることはできない。
審判費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式

のステロイド環構造、または式

のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:


(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法。
【請求項2】Zが

(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
である請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】下記構造を有する化合物を製造するための方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項7】化合物の回収が濾過またはクロマトグラフィーを含む、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】脱離基がハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項9】ハロゲンが臭素である、請求の範囲第8項記載の方法。
【請求項10】塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項11】アルカリ金属水素化物がNaHまたはKHである、請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項12】塩基がNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである、請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項13】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1であり;R_(1)およびR_(2)はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式:

のステロイド環構造、または式:

のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法。
【請求項14】Zが

(式中、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
である、請求の範囲第13記載の方法。
【請求項15】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項16】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項17】下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項18】
下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて、下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項19】化合物の回収が濾過またはクロマトグラフィーを含む、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項20】脱離基がハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項21】ハロゲンが臭素である、請求の範囲第20項記載の方法。
【請求項22】塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項23】アルカリ金属水素化物がNaHまたはKHである、請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項24】塩基がNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項25】還元剤が、LiAlH_(4)、Li(s-Bu)_(3)BH、またはLiEt_(3)BHである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項26】上記工程(b)が工程(a)の反応生成物から工程(a)で生成したエポキシド化合物を分離することなく行われる、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項27】上記工程(a)および(b)が溶媒としてのテトラヒドロフランの存在中で行われる、請求の範囲第26項記載の方法。
【請求項28】上記還元剤が、リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、カリウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、リチウムトリエチルボロハイドライド、およびリチウム9-BBNハイドライドから成る群から選択される、請求の範囲第27項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
本出願を通じて、各種刊行物が引用される。これらの刊行物の開示はその全てが、本発明が属する技術の水準を十分に記載するために本出願中に引用により取り込まれる。
発明の背景
0ビタミンDおよびその誘導体は、重要な生理学的機能を有する。例えば、1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)は、カルシウム代謝調節活性、増殖阻害活性、腫瘍細胞等の細胞に対する分化誘導活性、および免疫調節活性などの広範な生理学的機能を示す。しかし、ビタミンD_(3)誘導体は高カルシウム血症などの望ましくない副作用を示す。
特定の疾患の治療における効果を保持する一方で付随する副作用を減少させるために、新規ビタミンD誘導体が開発されている。
例えば、日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)は、免疫調節活性と腫瘍細胞に対する分化誘導活性を示す9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン誘導体を開示している。さらに、日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)は、最終産物を製造するための2種類の方法も開示しており、一方は出発物質としてプレグネノロンを使用する方法で、他方はデヒドロエピアンドロステロンを使用する方法である。
1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD_(3)(OCT)、即ち、1α,25-ジヒドロキシビタミンD_(3)の22-オキサアナログ体は、強力なインビトロ分化誘導活性を有する一方、低いインビボカルシウム上昇作用(calcemicliability)を有する。OCTは、続発性上皮小体機能亢進症および幹癬の治療の候補として臨床的に試験されている。
日本特許公開公報平成6-072994(1994年3月15日発行)は、22-オキサコレカルシフェロール誘導体およびその製造方法を開示している。この公報は、20位に水酸基を有するプレグネン誘導体をジアルキルアクリルアミド化合物と反応させてエーテル化合物を得て、次いで得られたエーテル化合物を有機金属化合物と反応させて所望の化合物を得ることを含む、オキサコレカルシフェロール誘導体の製造方法を開示している。
日本特許公開公報平成6-080626号(1994年3月22日発行)は、22-オキサビタミンD誘導体を開示している。この公報はまた、出発物質としての1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグネ-5,7-ジエン-20(S又はR)-オールを塩基の存在下でエポキシドと反応させて20位からエーテル結合を有する化合物を得ることを含む方法を開示している。
さらに、日本特許公開公報平成6-256300号(1994年9月13日発行)およびKubodera他(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4(5):753-756,1994)は、1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグナ-5,7-ジエン-20(S)-オールを4-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-3-メチル-2-ブテン-1-ブロミドと反応させてエーテル化合物を得て、それを脱保護し、そして脱保護されたエーテル化合物をシャープレス酸化することを含む、エポキシ化合物を立体特異的に製造する方法を開示している。しかし、上記方法は、ステロイド基の側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を導入するのに1工程より多くの工程を必要とし、従って所望の化合物の収率が低くなる。
さらに、上記文献のいずれにも、アルコール化合物を末端に脱離基を有するエポキシ炭化水素化合物と反応させて、それによりエーテル結合を形成する合成方法は開示されていない。また、上記文献には、側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を有するビシクロ[4.3.0]ノナン構造(本明細書中以下においてCD環構造と称する)、ステロイド構造またはビタミンD構造は開示されていない。
発明の概要
本発明は、以下の式Iの構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、


であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
(a)以下の式IV:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で以下の式VまたはV’:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
の構造を有する化合物と反応させて式Iの化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法を提供する。
本発明はまた、式Iの構造を有する化合物を提供する:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、

であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
本発明はさらに、以下の式VIの構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、

であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
(a)以下の式IV:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で以下の式Vまたは式V’:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
の構造を有する化合物と反応させて式I:

の構造を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して式VIの化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。
本発明はさらに、以下の構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZ’は、1以上の保護された未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有するビタミンD構造であり、ここでZ’は好ましくは:

であり、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルである);
(a)下記構造:

(式中、W、XおよびYは上記定義の通りであり、そしてZ″は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有するステロイド構造を示し、Z″は最も好ましくは:

であり、ここでR_(4)、R_(5)、R_(8)、およびR_(9)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:


(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)かくして得られたエポキシド化合物を還元剤で処理して還元された化合物VIを製造すること;
(c)かくして得られた還元されたステロイド化合物を、Z″のステロイド構造をZ’のビタミンD構造に転換させるような条件下で紫外線照射および熱異性化に付すること;および
(d)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。
本発明はさらに、下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZ’は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有するビタミンD構造であり、ここでZ’は好ましくは:

であり、R_(10)、R_(11)、R_(12)およびR_(13)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルである);
(a)下記構造:

(式中、W、XおよびYは上記定義の通りであり、そしてZ’’’は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有するCD環構造を示し、Z’’’は最も好ましくは:

であり、ここでR_(14)、R_(15)、R_(16)、およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)かくして得られたエポキシド化合物を還元剤で処理して還元された化合物を製造すること;
(c)かくして得られた還元されたCD環化合物をビタミンDの環構造を製造できる構築ブロックとZ’’’のCD環構造をZ’のビタミンD構造に転換させるような条件下で反応させること;および
(d)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。
発明の詳細な説明
本発明は、下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、

であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;並びに
(b)かくして製造された化合物を回収すること、
を含む方法を提供する。
本明細書で使用する「脱離基」という用語は、上記定義した-YH基と反応してHEを脱離して-Y-結合を形成することができる基を意味する。脱離基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子、トシル基、メシル基、トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、およびイミデート基が挙げられ、ハロゲン原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
下記構造:

を有する化合物の製造方法は新規であり、細胞に対する分化誘導活性および増殖阻害活性などの多様な生理学的活性を有することができるビタミンD誘導体の合成に有用である。
本発明はまた、下記構造:

(式中、ZはCD環構造、ステロイド構造またはビタミンD構造を示し、これらは各々、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよい)
を有する化合物を提供する。本発明に関するCD環構造、ステロイド構造およびビタミンD構造は各々、特には下記する構造を意味し、これらの環は何れも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい。ステロイド構造においては、1個または2個の不飽和結合を有するものが好ましく、5-エンステロイド化合物、5,7-ジエンステロイド化合物、またはそれらの保護された化合物が特に好ましい。


CD構造、ステロイド構造、またはビタミンD構造であるZ上の置換基は特に限定されず、水酸基、置換または未置換の低級アルキルオキシ基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルキリデン基、カルボニル基およびオキソ基(=O)などを例示することができ、水酸基が好ましい。これらの置換基は保護されていてもよい。有用な保護基は特に限定されないが、アシル基、置換シリル基および置換または未置換アルキル基を挙げることができ、アシル基および置換シリル基が好ましい。アシル基の例としては、アセチル基、ベンゾイル基、置換アセチル基および置換ベンゾイル基、並びにカーボネート型およびカルバメート型のものが挙げられ、アセチル基が好ましい。アセチル基およびベンゾイル基上の置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基およびアリール基が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基およびエチリデン基が好ましい。置換されたアセチル基の好ましい例としては、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基およびクロトノイル基が挙げられる。置換ベンゾイル基の好ましい例としては、p-フェニルベンゾイル基および2,4,6-トリメチルベンゾイル基が挙げられる。置換シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基およびtert-ブチルジフェニルシリル基が挙げられ、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基が好ましい。置換または未置換のアルキル基の例としては、メチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、tert-ブチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、p-メトキシベンジルオキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、tert-ブチル基、アリル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、およびo-またはp-ニトロベンジル基が挙げられる。
ステロイド構造における不飽和結合のための保護基の例としては、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンおよびマレイン酸ジエチルが挙げられる。そのような保護基を有する付加物の例は以下のものである:

さらに、ビタミンD構造はSO_(2)の付加によって保護されていてもよい。そのような保護されたビタミンD構造の例を下記に示す:

本発明による式I、V、V’およびVIにおいて、R_(1)およびR_(2)は、同一でも異なっていてもよく、各々置換された未置換の低級アルキル基を示し、未置換の低級アルキル基が好ましい。R_(1)およびR_(2)の定義において、低級アルキル基とは、1?6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げられ、メチル基およびエチル基が特に好ましい。R_(1)およびR_(2)の定義において、置換されたアルキル基上の置換基の例としては水酸基およびアミノ基を例示することができ、水酸基が好ましい。
本発明による式I、IVおよびVIにおいて、WおよびXは、同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または直鎖または分枝の低級アルキル基を示す。好ましくは、WおよびXの一方はアルキル基、最も好ましくはメチル基であり、他方は水素原子である。特に好ましくは、Wはメチル基であり、Xは水素原子である。
本発明による式I、IVおよびVIにおいて、YはO、SまたはNR_(3)を示し、ここでR_(3)は水素原子または保護基を示す。R_(3)における保護基の例としては、置換または未置換のカルバメート基、置換または未置換のアミド基および置換または未置換のアルキル基が挙げられ、アルキルは好ましくはC1-C6アルキルであり、メチルカルバメート基、エチルカルバメート基、トリクロロエチルカルバメート基、t-ブチルカルバメート基、ベンジルカルバメート基、アセトアミド基、トリフルオロアセトアミド基、メチル基およびベンジル基が好ましい。Yは好ましくはOまたはSであり、Oが特に好ましい。
本発明による式I、V、V’およびVIにおいて、nは1、2、3または4であり、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。好ましくは、nが1であり、R_(1)およびR_(2)の一方がメチル基である場合、他方はヒドロキシメチル基ではない。
本発明による式Iで表される化合物の特に好ましい態様は、式Iにおいて、R_(1)およびR_(2)は同一であり、各々メチル基またはエチル基を示し、WおよびXは異なり、各々水素原子またはメチル基を示し、YはOを示し、そしてnは1または2を示すものである。
本発明による式Iで表される化合物のより好ましい例は、以下の式II AおよびII B:

(式中、R_(18)およびR_(19)は、同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または保護基を示す)
または以下の式III AおよびIII B:

(式中、R_(18)およびR_(19)は、同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または保護基を示す)
で表される。
本発明による式Iで表される化合物の最も好ましい例は、上記式II AおよびII Bで表される。
式Iの化合物の製造について本明細書に開示した反応の概略を以下の反応図Aに示す。

本発明による上記方法で出発化合物として使用される化合物の幾つかは、公知化合物である。例えば、「Y」がOである場合、以下のものを出発化合物として使用することができる:日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)に記載された1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグナ-5,7-ジエン-20(S)-オール;日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)および国際特許公開公報WO90-09991(1990年9月7日)およびWO90/09992(1990年9月7日)に記載された所望により水酸基が保護されている9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン-1α,3β,20β-トリオール;J.Org.Chem.,57,3173(1992)に記載されたオクタヒドロ-4-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-7-メチル-1H-インデン-1-オール;並びにJ.Am.Chem.Soc.,104,2945(1982)に記載されたオクタヒドロ-4-(アセチルオキシ)-7-メチル-1H-インデン-1-オール。
「Y」がSである場合、20位にチオール基(-SH-基)を有する出発化合物(式IV)を20位に水酸基を有する上記化合物の代わりに使用することができる。そのような化合物は、例えば、先に記載された方法(Journal of the American Chemical Society,102:10[1980]pp.3577-3583)に従ってケトン化合物をチオール化合物に転換することによって得ることができる。より具体的には、ケトン化合物を触媒の存在下で1当量の1,2-エタンジチオールと反応させて対応するエチレンチオケタール化合物を製造し、次いでかくして得られたエチレンチオケタール化合物を3?4当量のn-ブチルリチウムと反応させて対応するチオール化合物を産生させる。あるいは、そのようなチオール化合物は、国際特許公開公報WO94/14766(1994年7月7日)に記載された方法に従って20位にアルデヒド基または保護された水酸基を有する化合物から合成することができる。
さらに、「Y」がNR_(3)(ここでR_(3)は水素原子または保護基を示す)である出発化合物もまた公知であり、開示されている(Chem.Pharm.Bull.Vol.32,pp.1416-1422[1984])。
本発明による上記方法で反応物質として使用される下記構造:

を有する化合物の幾つかは公知化合物であり、末端に脱離基を有するアルケニル化合物をm-クロロ過安息香酸(m-CPBA)などの有機過酸と不活性有機溶媒中で反応させることにより公知の方法に従って製造することができる。「E」は脱離基を示す。本明細書で使用する「脱離基」という用語は、式IVの-YH基と反応してHEを脱離して-Y-結合を形成することができる基を意味する。脱離基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子、トシル基、メシル基、トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、およびイミデート基が挙げられ、ハロゲン原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
本発明による上記反応(図A)は、塩基の存在下で実施される。使用できる塩基の例としては、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属アルコキシドが挙げられ、アルカリ金属水素化物が好ましく、水素化ナトリウムが特に好ましい。
反応は好ましく不活性溶媒中で実施される。使用できる溶媒の例としては、エーテル系溶媒、飽和脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、およびそれらの組み合わせを挙げることができ、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、およびDMFとジエチルエーテルの混合物が好ましく、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランがより好ましい。
反応温度は適切に調節することができ、一般的には25℃から溶媒の還流温度、好ましくは40℃から65℃の範囲内である。
反応時間は適切に調節することができ、一般的には1時間から30時間、好ましくは2時間から5時間の範囲内である。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視することができる。
本発明の一態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:


を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;および
(b)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明の別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:


を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;そして
(b)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明のさらに別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;そして
(b)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明の別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて化合物を製造すること;そして
(b)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明のさらに別の態様では、化合物の回収は濾過またはクロマトグラフィーを含む。
本発明の別の態様では、脱離基はハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである。
本発明のさらに別の態様では、ハロゲンは臭素である。
本発明の別の態様では、塩基はアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである。
本発明のさらに別の態様では、アルカリ金属水素化物は、NaHまたはKHである。
本発明の別の態様では、塩基はNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである。
本発明はまた、下記構造を有する化合物を提供する:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、

であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する)
下記構造:

を有する化合物は新規化合物であり、細胞に対する分化誘導活性および増殖阻害活性などの多様な生理学的活性を有することができるビタミンD誘導体の合成のための有用な中間体である。
本発明の一態様では、本化合物は下記構造:

を有する。
本発明の別の態様では、本化合物は、下記構造:

を有する。
本発明のさらに別の態様では、本化合物は、下記構造:

を有する。
本発明の別の態様では、本化合物は、下記構造:

を有する。
本発明はさらに、下記構造を有する化合物の製造方法であって:

(式中、nは1?5の整数であり;R_(1)およびR_(2)は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR_(3)であり、ここでR_(3)は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、


であり、R_(4)、R_(5)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)、R_(12)、R_(13)、R_(14)、R_(15)、R_(16)およびR_(17)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR_(6)およびR_(7)は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
(a)下記構造:

(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

(式中、n、R_(1)およびR_(2)は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。
本発明は、本明細書中上記した新規な中間体を経てビタミンDまたはステロイド誘導体を製造する方法に関する。この反応の概略を以下の反応図Bに示す。

本発明による上記2工程の反応の工程(1)の反応は、本明細書中に既に記載した反応図Aの方法と同様に実施できる。
工程(2)の反応は工程(1)で得られたエポキシ化合物中のエポキシ環を開環する反応であり、これは還元剤を使用して実施される。工程(2)で使用できる還元剤は、工程(1)で得られたエポキシ化合物の環を開環して水酸基を生成できるもの、好ましくは第3アルコールを選択的に形成できるものである。
還元剤の例を下記に列挙する:
リチウムアルミニウムハイドライド[LiAlH_(4)];
リチウムトリエチルボロハイドライド[LiEt_(3)BH、スーパーハイドライド];
リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド[Li(s-Bu)_(3)BH、L-セレクトライド);
カリウムトリ-sec-ブチロボロハイドライド[K(s-Bu)_(3)BH、K-セレクトライド);
リチウムトリシアミルボロハイドライド[LiB[CH(CH_(3))CH(CH_(3))_(2)]_(3)H、LS-セレクトライド);
カリウムトリシアミルボロハイドライド[KB[CH(CH_(3))CH(CH_(3))_(2)]_(3)H、KB[Sia]_(3)H、KS-セレクトライド);
リチウムジメチルボロハイドライド[LiB(CH_(3))_(2)H_(2)];
リチウムテキシルボロハイドライド[Li[(CH_(3))_(2)CHC(CH_(3))_(2)]BH_(3)];
リチウムテキシルリモニルボロハイドライド;

リチウムトリ-tert-ブトキシアルミノハイドライド[LiAl[OC(CH_(3))_(3)]_(3)H];
カリウムトリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ボロハイドライド;

KB(C_(6)H_(5))_(3)H;
リチウム9-BBNハイドライド;

NaBH_(4);
NaBH_(3)CN:
さらに、特に還元剤がカリウムを含む場合には、リチウム塩、好ましくは臭化リチウム(LiBr)およびヨウ化リチウム(LiI)などのハロゲン化リチウム、特に好ましくはLiIなどの添加剤を還元剤に添加してもよい。
還元剤の好ましい例を下記に列挙する:
リチウムアルミニウムハイドライド[LiAlH_(4)];
カリウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド[K(s-Bu)_(3)BH、K-セレクトライド)+LiI;
リチウムトリエチルボロハイドライド[LiEt_(3)BH、スーパーハイドライド];
リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド[Li(s-Bs)_(3)BH、L-セレクトライド);
リチウム9-BBNハイドライド:
還元剤の特に好ましい例を下記に列挙する:
リチウムトリエチルボロハイドライド[LiEt_(3)BH、スーパーハイドライド];
リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド[Li(s-Bu)_(3)BH、L-セレクトライド);
リチウム9-BBNハイドライド:
例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL-H)などの好適な還元剤を選択することによってビタミンD化合物の24位に水酸基を有する化合物を優先的に得ることもできる。
工程(2)の反応は好ましく不活性溶媒中で実施される。使用できる溶媒の例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ベンゼンおよびトルエンが挙げられ、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランが好ましい。
工程(2)の反応温度は適切に調節することができ、一般的には10℃から100℃、好ましくは室温から65℃の範囲内である。
工程(2)の反応時間は適切に調節することができ、一般的には30分から10時間、好ましくは1時間から5時間の範囲内である。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視することができる。
工程(2)の反応は工程(1)の後に、より具体的にはシリカゲルクロマトグラフィーなどの適切な方法によって工程(1)の反応生成物を精製した後に実施することができ、あるいはまたそれは、工程(1)の反応生成物を精製することなくそれを含む混合物に還元剤を直接添加することによって実施することもできる。工程(2)を工程(1)の後に生成物を精製することなく実施する方法は「ワンポット反応」と称され、この方法は操作上の冗長さが少ないので好ましい。
比較的少量の式Vの反応物質並びに比較的少量の塩基を使用して、中間体化合物IVを最初に精製することなく、化合物Iから直接化合物VIを高い収率で得ることができる、非常に好ましく意外なほど優れたワンポット反応が見い出された。この改良された方法は、THFを溶媒として使用することによって得られる。DMFやDMFとジメチルエーテルの組み合わせではワンポット転換は生じない。還元剤の選択も最高のワンポット収率を達成するためには重要である。好ましいワンポット方法のためには、好ましい還元剤はL-セレクトライド;添加剤としてLiIを含むK-セレクトライド;リチウム9-BBNハイドライドまたはスーパーハイドライドである。LiALH_(4)もまた改良されたワンポット反応の還元剤として使用できるが、後者の還元剤を使用した場合、所望の生成物への転換率はそれほど高くはないであろう。好ましい塩基および溶媒(THF)を使用することによって、反応で使用する塩基のモル当量を1.5まで低下させることができ、基質に対する式Vの試薬のモル当量をわずか1.3まで低下させることができ、この場合でも所望の立体特異的生成物へのほぼ100%の転換が得られる。
以下の反応図Cは、本発明の化合物および方法を使用する反応経路を示す。対応するステロイド化合物からのビタミンD化合物の合成方法は、紫外線照射および熱異性化などの慣用的方法によって実施できる。対応するCD環化合物からのビタミンD化合物の合成方法もまた慣用的である。そのような方法は、例えば、E.G.Baggiolini他、J.Am.Chem.Soc,104,2945-2948(1982)およびWovkulich他、Tetrahedron,40,2283(1984)に記載されている。反応図Cに示した方法の一部または全部は本発明の範囲内であるものと理解すべきである。

(式中、W、X、Y、O、R_(1)およびR_(2)は上記定義と同一であり、構造の環は何れも1または2個の不飽和結合を所望により有していてもよい)
本発明を利用して得ることができる最終生成物のビタミンD誘導体の特に好ましい例は、以下の式VIIおよびVIIIで表される:

最も好ましい例は、式VIIで表される。
本発明の一つの好ましい態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は:
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)エポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること:
を含む。
本発明の別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)エポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明のさらに別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:


を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)エポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明のさらに別の態様では、下記構造:

を有する化合物の製造方法は、
(a)下記構造:

を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:

を有する化合物と反応させて下記構造:

を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)エポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む。
本発明のさらに別の態様では、化合物の回収は濾過またはクロマトグラフィーを含む。
本発明のさらに別の態様では、脱離基はハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである。
本発明の別の態様では、ハロゲンは臭素である。
本発明のさらに別の態様では、塩基はアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである。
本発明の別の態様では、アルカリ金属水素化物は、NaHまたはKHである。
本発明のさらに別の態様では、塩基はNaOR_(20)、KOR_(20)、R_(20)Li、NaN(R_(21))_(2)、KN(R_(21))_(2)、またはLiN(R_(21))_(2)であり;R_(20)はアルキルであり;そしてR_(21)はイソプロピルまたは(CH_(3))_(3)Siである。
本発明の別の態様では、還元剤は、LiAlH_(4)、Li(s-Bu)_(3)BH、またはLiEt_(3)BHである。
本発明は以下の詳細な実験からさらに良く理解されるであろう。しかし、当業者は記載した具体的方法および結果が実施例の後に続く請求の範囲においてより十分に記載される本発明の単なる例示にすぎないことを容易に理解するであろう。
実施例1:4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタンの合成

300mLの塩化メチレン(CH_(2)Cl_(2))中の市販の(96%)4-ブロモ-2-メチルブテン(化合物1)(10g、0.064モル)の撹拌溶液にm-クロロ過安息香酸(mCPBA)(80-85%)(20g、0.093-0.099モル)を室温で徐々に添加した。反応混合物を1時間撹拌し、得られた固体を濾過によって除去した。5%Na_(2)S_(2)O_(4)溶液(100mL)を濾液に添加し、30分間撹拌した。塩化メチレン層を分離し、飽和NaHCO_(3)(200mL、2回)水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO_(4)で乾燥した。溶媒の蒸発後、残存する液体を蒸留して8.9g(85%)の標題化合物(化合物2)を純粋な生成物として得た(無色液体、bp55℃/29mmHg)。
標題化合物(化合物2)のプロトン核磁気共鳴スペクトルは以下のシグナルを与えた。
400MHz^(1)H NMR(CDCl_(3)):
δ 3.52(dd,J=10.3,6.0Hz,1H),3.27(dd,J=10.3,7.5Hz,1H),3.09(dd,J=7.5,6.0Hz,1H),1.37(3,3H),1.33(s,3H).
エポキシドは塩基条件下でジブロモ化合物から製造できる(Journal of American Chemical Society,76,p.4374;1954)。以下の反応図は例示のものである。

従って、反応が塩基条件下である場合は上記反応図のジブロモ化合物をエポキシド化合物の代わりに使用することができる。上記定義した他の脱離基を、ブロモヒドリンの一方または両方のBr原子の代わりに使用してもよい。
実施例2:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5,7-ジエンの合成

氷水浴で冷却した20mlのDMF/ジエチルエーテル(1:1)の溶液中のアルコール化合物3(0.5g、0.89mmol)の激しく撹拌した溶液に、アルゴン下で水素化ナトリウム(60%オイル分散物、0.2g、5.0mmol)を添加した。一定の1:1DMF/ジエチルエーテル混合物を維持するために(蒸発のため)30分後に追加のジエチルエーテル(?5ml)を添加した。1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで暖め、強流のアルゴンを激しく撹拌した反応混合物上に吹き付け、ジエチルエーテルを除去した。ジエチルエーテルの除去後、アルゴン流を低レベルまで減少させ、実施例1で得た化合物2(1.5g、8.9mmol)を一度に添加した。反応混合物を50?55℃の間に加熱した。30分後、さらに1gの化合物2を添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は1時間後に反応の終結を示した。反応混合物を飽和NaCl水溶液に注入し、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水MgSO_(4)で乾燥した。溶媒を濃縮した後、ヘキサン:酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより0.58g(90%)の標題化合物(化合物4)が無色のオイルとして得られた(ジアステレオマーの混合物)。
標題化合物(化合物4)のプロトン核磁気共鳴スペクトルは以下のシグナルを与えた。
400MHz^(1)H NMR(CDCl_(3)):
δ 5.57(1H),5.31(1H),4.01(1H),3.65(2H),3.42-3.20(2H),2.90(1H),2.90(1H),2.77(1H),2.31(2H),1.31(sx2,3H),1.28(sx2,3H),1.19(dx2,3H),0.88(3Hx7),0.59(sx2,3H),0.10(3H),0.06(3H),0.05(3H),0.00(3H).
実施例3:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(R)-(2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンの合成

アルコール化合物5(5.0g、8.88mmol)、4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(2.2g、13.32mmol)、次いで水素化ナトリウム(乾燥95%、561mg、22.2mmol)を100mlの丸底ナス型フラスコに加えた。次いでTHF(20ml)をそれに添加した。反応を還流下で2時間行った。反応混合物を冷却後、反応を飽和NH_(4)Cl水溶液の添加により停止した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層をMgSO_(4)で乾燥して濃縮した。n-ヘキサン/酢酸エチル(20:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離および精製により、5.5g(95.7%)の標題化合物(化合物6)を白色粉末として得た。
標題化合物(化合物6)のプロトン核磁気共鳴スペクトルは以下のシグナルを与えた。
270MHz^(1)H NMR(δ:ppm)
5.42-5.44(m,1H),3.99-3.95(m,1H),3.75(br,1H),3.71-3.61(m,1H),3.41-3.28(m,2H),2.96-2.92(t,1H,J=5.61),2.28-2.06(m,3H),1.32(S,3H),1.28-1.27(3H),1.10-1.06(3H),0.95(3H,s),0.86(18H,s),0.72-0.63(3H),0.04,0.03,0.02,0.01(12H,Si-CH_(3)):
実施例4:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5,7-ジエンの合成

20mLの乾燥ジエチルエーテル中のエポキシステロイド化合物4(実施例2で得たもの、200mg、0.3mmol)の撹拌溶液に、アルゴン下で室温でリチウムアルミニウム水素化物(LiAlH_(4)、22mg、3.0mmol)を添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は数時間後に出発物質(化合物4)の完全かつ明白な転換を示した。反応混合物を100mLの酢酸エチル/飽和NaCl水溶液(1:1)の間で分画した。有機層を分離し、無水MgSO_(4)で乾燥した。濃縮およびヘキサン/酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより582mg(90%)の標題化合物(化合物7)が無色固体として得られた。
標題化合物(化合物7)のプロトン核磁気共鳴スペクトルは以下のシグナルを与えた。
400MHz^(1)H NMR(CDCl_(3)):
δ 5.56(1H),5.30(1H),4.02(1H),3.82(1H),3.73(1H,OH),3.67(1H),3.47(1H),3.24(1H),2.75(1H),2.33(2H),1.22(3H),1.21(3H),1.18(d,3H),0.88(s,3H),0.86(s,3Hx6),0.59(3H),0.08(s,3H),0.04(s,3H),0.03(s,3H),0.00(s,3H).
実施例5:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成

容器にアルコール化合物8(0.5g、0.89mmol)、水素化ナトリウム(60%オイル分散物、71.2mg、1.78mmol)、THF(3ml)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(220mg、1.34mmol)を順番に添加した。混合物を50?60℃の反応温度で4時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、混合物を精製することなく、1.8ml(1.8mmol)のLi(s-Bu)_(3)BH(L-セレクトライド、THF中1.0M溶液)を添加し、反応を室温で2時間行った。反応を飽和NH_(4)Cl水溶液の添加により停止した。有機層を飽和NaHCO_(3)水溶液、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機層を無水MgSO_(4)で乾燥した。有機層の濃縮およびn-ヘキサン/酢酸エチル(8:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により537mg(93%)の標題化合物(化合物9)が得られた。
270MHz^(1)H(CDCl_(3)):
δ 6.43(1H),3.97(1H),3.82(1H),3.77(1H),3.75(1H,OH),3.46(1H),3.23(1H),2.27-2.14(2H),1.21(6H),1.17(d,3H,J=6.3Hz),0.94(3H),0.86(9H),0.65(3H),0.054(3H),0.036(3H),0.026(3H),0.006(3H):
実施例6:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成

容器に水素化ナトリウム(アッセイ95%、179.5g、7.10mol)、THF(8L)、アルコール化合物8(2kg、3.55mol)次いで4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(762g、4.62mol)を順番に添加した。反応を還流下で3時間行った。反応混合物を室温まで冷却した後、Li(s-Bu)_(3)BH(L-セレクトライド、9.9L、8.88mol)をこれに添加し、反応を還流下で3時間行った。次いで、3NのNaOH水溶液および35%の過酸化水素水溶液を反応混合物に順番に添加し、反応を室温で2時間行った。この反応混合物をNa_(2)S_(2)O_(3)水溶液に注入し、反応を1時間行った。反応混合物を飽和NaHCO_(3)水溶液、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層を濃縮し、メタノールから再結晶して標題化合物(2.16kg、収率93.7%)が得られた。
実施例7:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(R)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成

アルコール化合物5(25g、44.4mmol)、水素化ナトリウム(2.24g)、4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(9.5g)、次いでTHF(100ml)をナス型フラスコに添加し、混合物を2.5時間還流した。混合物を冷却した後、L-セレクトライド(THF中1.0M溶液、100ml)をこれに添加し、反応を還流下で2時間行った。反応混合物を冷却した後、3NのNaOH水溶液(50ml)をこれに徐々に添加し、次いで35%のH_(2)O_(2)溶液(150ml)を徐々に滴加した。添加後、混合物を1時間撹拌した。次いで20%Na_(2)S_(2)O_(3)水溶液(100ml)を添加し、混合物を1時間撹拌した。
混合物の分離後、有機層を飽和NaCl水溶液(100mlで3回)で洗浄し、無水MgSO_(4)で乾燥した。MgSO_(4)を濾去し、有機層を減圧下で濃縮した。アセトニトリル(300ml)をこれに添加した。混合物を還流し、次いで室温まで冷却し、結晶化させた。得られた結晶を濾過し、乾燥して25.0g(86.7%)の標題化合物(化合物10)を白色結晶として得た。
270MHz^(1)H NMR(δ:ppm)
5.45-5.43(1H,m),4.02-3.94(1H,m),3.85-3.76(1H,m),3.78-3.76(1H,m),3.48-3.41(1H,m),3.29-3.23(1H,m),1.23(3H,s),1.22(3H,s),1.12-1.09(3H,d,J=5.94Hz),0.95(3H,s),0.87(9H,s,t-Bu-Si),0.86(9H,s,t-Bu-Si),0.69(3H,s),0.05(3H,s,Si-CH_(3)),0.04(3H,s,Si-CH_(3)),0.03(3H,s,Si-CH_(3)),0.01(3H,s,Si-CH_(3))
実施例8-21:エポキシ化合物と各種還元剤との反応の試験

実施例5と同様に、アルコール化合物8(0.5g、0.89mmol)、水素化ナトリウム(60%オイル分散物、71.2mg、1.78mmol)、THF(3ml)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(220mg、1.34mmol)を順番に容器に添加した。混合物を50?60℃の反応温度で4時間撹拌した。反応を飽和NaCl水溶液の添加により停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水MgSO_(4)で乾燥した。有機層の濃縮およびn-ヘキサン/酢酸エチル(20:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により化合物8’が得られた。
次いで、試験用の各還元剤を、上記で得たエポキシ化合物(化合物8’)(100mg、0.155mmol)を充填した容器に添加し、反応を以下の表1に記載した条件下で行った。反応混合物を後処理した後、生成物への転換率(%)および25-ヒドロキシ化合物(化合物9、最終生成物)および24-ヒドロキシ化合物(化合物11、副生物)の生成比を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
得られた結果を表1に示す。

a)所望化合物(化合物9):副生物(化合物11)の生成比
b)HPLCにより測定
c)所望化合物9が約5%の収率で産生し、副生化合物11も僅かに産生した。
d)副生化合物11が28.3%の収率で産生し、所望化合物9は産生しなかった。2種類の他の未知物質が産生した。
e)副生化合物11は42%の収率で産生し、所望化合物9は産生しなかった。他の未知物質が31.2%の収率で産生した。
f)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離および精製後に、得られた化合物が所望化合物9であることをNMR測定により確認した。
注:r.t.は室温を意味する。
上記データから分かるように、本発明の方法により、反応を完結して、還元の位置に関して高い選択性を有する所望化合物を合成することができた。
実施例22:(1S,3R,20S)-1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-(2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンの合成

DMF:Et_(2)O=1:1(40ml)中のアルコール(8)(1.0g、1.78mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(67mg、2.66mmol)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(3.5g、21.3mmol)を室温で添加した。反応混合物を激しく撹拌しながら5時間80℃で加熱し、次いでブラインで停止した。転換率を逆相HPLCで測定した(8’;20.7%)。
実施例23:(1S,3R,20S)-1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-(2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンの合成

DMF(5ml)中のアルコール(8)(1.0g、1.78mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(67mg、2.66mmol)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(0.38g、2.31mmol)を室温で添加した。反応混合物を激しく撹拌しながら5時間80℃で加熱し、次いでブラインで停止した。転換率を逆相HPLCで測定した(8’;15.1%)。
実施例24:(1S,3R,20S)-1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-(2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンの合成

DMF(5ml)中のアルコール(8)(1.0g、1.78mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(90mg、5.34mmol)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(0.44g、2.67mmol)を室温で添加した。反応混合物を激しく撹拌しながら2時間80℃で加熱した。2時間後、追加量の4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(0.44g、2.67mmol)を添加した。さらに1時間後、0.88gの4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(5.34mmol)を80℃で添加した。さらに1時間後、1.76gの4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(10.7mmol)を80℃で添加した。反応混合物を激しく撹拌しながら2時間80℃に加熱し、次いでブラインで停止した。転換率を逆相HPLCで測定した(8’;44.8%)。
具体的態様の上記記載は本発明の一般的性質を十分に明らかにするので、他者は現在の知識を適用することによって、過度の実験なしにかつ一般的概念から離れることなく上記のような具体的態様を多様な応用のために容易に改良および/または改造できるであろう。従って、そのような改造および改良は開示した態様の均等の意味および範囲内のものであるべきであり、またそのように意図される。各種の開示した機能を実施するための手段および材料は本発明から離れることなく多様な代替形態を取ることができる。本明細書で使用した表現または用語は説明のためのものであり限定のためのものではないことを理解すべきである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-07-29 
結審通知日 2015-08-03 
審決日 2015-08-19 
出願番号 特願平10-512795
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (C07J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 瀬良 聡機
中田 とし子
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3310301号(P3310301)
発明の名称 ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法  
代理人 膝舘 祥治  
代理人 津国 肇  
代理人 山内 真之  
代理人 坪倉 道明  
代理人 尾崎 英男  
復代理人 膝舘 祥治  
代理人 日野 英一郎  
代理人 膝舘 祥治  
代理人 尾崎 英男  
代理人 城山 康文  
代理人 津国 肇  
代理人 津国 肇  
代理人 日野 英一郎  
代理人 江黒 早耶香  
代理人 小國 泰弘  
代理人 津国 肇  
代理人 日野 英一郎  
代理人 小國 泰弘  
代理人 江黒 早耶香  
代理人 尾崎 英男  
代理人 江黒 早耶香  
代理人 小國 泰弘  
代理人 日野 英一郎  
代理人 小國 泰弘  
復代理人 膝舘 祥治  
代理人 小野 誠  
代理人 尾崎 英男  
代理人 並木 重伸  
代理人 江黒 早耶香  

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