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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1322671
審判番号 不服2016-1810  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-05 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2014- 43619「移動通信システムにおけるスケジューリング要請を受信する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日出願公開、特開2014-147079、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明

1.手続の経緯
本願は,2010年(平成22年)10月11日(優先権主張 2009年(平成21年)10月9日 韓国)を国際出願日とする特願2012-533094号の一部を平成26年3月6日に新たな特許出願としたものであって,平成27年1月6日付けで拒絶理由が通知され,同年4月3日付けで意見書が提出され,同年9月29日付けで拒絶査定され,平成28年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年7月6日付けで拒絶理由が当審から通知され,同年10月11日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1から18に係る発明は,平成28年10月11日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1から18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明」から「本願第18発明」を併せて「本願発明」という。

【請求項1】
移動通信システムにおいて端末と基地局がスケジューリング要請を送受信する方法であって、
スケジューリング要請(SR)送信リソースと関連した情報を基地局が端末に送信するステップと、
前記端末から送信されるSRを前記基地局が受信するステップと、を含み、
前記基地局に受信されるSRは、前記端末が少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否かを検査し、前記少なくとも一つのBSRがトリガーされ、取り消されない場合に前記端末により送信されることを特徴とするスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのBSRが正規BSRであり、
前記少なくとも一つの正規BSRがトリガーされ、取り消されない場合に前記SRを前記基地局が受信することを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項3】
前記端末から前記少なくとも一つのBSRを含むMAC PDUを前記基地局が受信するステップをさらに含み、
前記基地局は、前記MAC PDUを受信した場合、前記SRを受信しないことを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項4】
高い優先順位を有するデータがアップリンク送信のために利用可能な場合、前記正規BSRがトリガーされることを特徴とする請求項2に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項5】
前記端末のSR送信回数が最大値に到達した場合に、ランダムアクセス過程が開始されることを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項6】
前記SRを受信する前にランダムアクセス過程が開始されると、前記基地局に前記SRが受信されないことを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項7】
前記端末のSR送信回数が最大値に到達した場合に、アップリンク送信リソースを解除することを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項8】
係留中である他のSRが存在しなく、前記SRがトリガーされると、前記端末のSR送信回数を0に設定することを特徴とする請求項7に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項9】
前記BSRが取り消されるか否かに対する検査は、送信時間間隔(TTI)ごとに実行されることを特徴とする請求項1に記載のスケジューリング要請信号送受信方法。
【請求項10】
端末と基地局がスケジューリング要請を送受信する移動通信システムであって、
スケジューリング要請(SR)送信リソースと関連した情報を端末に送信する送信部と、
前記端末から送信されるSRを受信する受信部と、を基地局が含み、
前記基地局に受信されるSRは、前記端末が少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否かを検査し、前記少なくとも一つのBSRがトリガーされ、取り消されない場合に前記端末により送信されることを特徴とする移動通信システム。
【請求項11】
前記受信部は、前記少なくとも一つのBSRが正規BSRであり、前記少なくとも一つの正規BSRがトリガーされ、取り消されない場合に前記SRを受信することを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項12】
前記受信部は、前記端末から前記少なくとも一つのBSRを含むMAC PDUを受信し、前記SRを受信しないことを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項13】
高い優先順位を有するデータがアップリンク送信のために利用可能な場合、正規BSRがトリガーされることを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項14】
前記端末のSR送信回数が最大値に到達した場合に、ランダムアクセス過程が開始されることを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項15】
前記SRを受信する前にランダムアクセス過程が開始されると、前記受信部は前記SRを受信しないことを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項16】
前記端末のSR送信回数が最大値に到達した場合に、アップリンク送信リソースを解除することを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。
【請求項17】
係留中である他のSRが存在しなく、前記SRがトリガーされると、前記端末のSR送信回数を0に設定することを特徴とする請求項16に記載の移動通信システム。
【請求項18】
前記BSRが取り消されるか否かに対する検査は、送信時間間隔(TTI)ごとに実行されることを特徴とする請求項10に記載の移動通信システム。

(なお,請求人の附した下線は省略。)


第2 当審拒絶理由に関する当審判断

1.当審拒絶理由の概要

当審から,平成28年7月6日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は,原査定の理由で引用された「国際公開第2009/116939号」(2009年(平成21年)9月24日国際公開。以下「引用文献」という。)を基に「引用発明」を特定し,次の事項<あ>及び<い>を通知した。

<あ> 理由
[理由1](新規性)
本件出願の請求項1から18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2](進歩性)
本件出願の請求項1から18に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<い> 引用文献記載事項(下線は当審が付与)
(1) 記載事項1
[0003] The technology in this application is related to UL scheduling in LTE and in systems that employ uplink scheduling similar to LTE. One of the challenges in assigning resources for UL transmissions is that the UE must make the eNodeB aware that there is data pending or waiting in the UE buffer for UL transmission. One way to do this in LTE for example is for the UE to transmit a scheduling request (SR) to the eNodeB. The SR can be sent on a dedicated SR channel (D-SR) or on a contention based Random Access Channel (RACH). A D-SR requires that the UE be UL-synchronized and that the UE has been assigned a SR channel on the Physical Uplink Control Channel (PUCCH). Both of these procedures result in delay. Then, the eNodeB responds with a grant including information on what time/frequency resources the UE will use for the UL transmission. The grant is sent on the Physical Downlink Control Channel (PDCCH). With support from the link adaptation function in the eNodeB, the transport block size, modulation, coding, and antenna scheme are selected, and the selected transport format is signaled together with user ID information to the UE.

[0004] The resource granted by the eNodeB can be of variable size so that the UL transmission that follows from the UE can contain various numbers of bits. At a minimum, the UL transmission should include a buffer status report (BSR). Other information may be included along with the BSR.

[0005] Sending a scheduling request (SR) informs the eNodeB uplink scheduler of the UE's need for UL transmission resources. In LTE, triggering a scheduling request (SR) is related to the different logical channels in LTE. Those logical channels are normally grouped together into logical channel groups (LGC) that share similar characteristics. More specifically, a transmission of a buffer status report (BSR) is triggered when UL data arrives in the UE transmission buffer and that data belongs to a logical channel group (LCG) with a higher priority than the priority for data already existing in the UE transmission buffer. In turn, a scheduling request (SR) is triggered if the UE does not have an UL resource allocated for the current transmission time period. A dedicated scheduling request (SR) (D-SR) is transmitted on the PUCCH if this resource is allocated to the UE, or alternatively, a random access scheduling request (SR) (RA-SR) is transmitted on the RACH.

[0006] LTE also offers the opportunity to use semi-persistent scheduling in which a UE is allocated an UL resource with some periodicity. A benefit of semi-persistent scheduling is that it saves scarce radio resources on the Physical Downlink Control Channel (PDCCH) by avoiding the transmission of UL grants for every resource allocation. One service likely to benefit from a semi-persistent scheduling configuration is voice over IP (VoIP). When a UE has an UL semi-persistent radio resource configured for a VoIP flow or the like, each packet arriving to an empty buffer triggers a RA-SR or a D-SR unless the timing of the resource is perfectly aligned with the arrival of the VoIP data. In other words, there will likely be many instances when each packet arriving to an empty buffer triggers a RA-SR or a D-SR - even though a SR is unnecessary given the semi-persistent scheduling of UL resource for the VoIP flow.
(1ページ-3ページ)
(当審訳
[0003]
この出願における技術は,LTE,及びLTEに類似したアップリンクスケジューリングを使用するシステムにおけるULスケジューリングに関連している。UL送信のためのリソースを割り当てる際の課題の1つは,UEには,UL送信のためUEバッファ内保留中又は待機中のデータが存在することを,eNodeBに認識させる必要がある。LTEで例えば,これを行う1つの方法は,UEがeNodeBにスケジューリング要求(SR)を送信することである。SRは,専用SRチャネル(D-SR)上で,又はコンテンションベースのランダムアクセスチャネル(RACH)上で送信することができる。D-SRは,UEはUL同期していること,及びUEは物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)上でSRチャネルが割り当てられてることを要求する。これらの手順の両方は遅延という結果になる。その後,eNodeBは,UEがUL送信のために使用する時間/周波数リソースがどのようなものであるかの情報を含むグラントで応答する。グラントは,物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される。eNodeB内のリンク適応機能からのサポートにより,トランスポートブロックサイズ,変調,符号化,及びアンテナ方式が選択され,選択されたトランスポートフォーマットは,UEのユーザID情報とともにシグナリングされる。
[0004]
eNodeBによってグラントされたリソースは,可変サイズのものとすることができ,そのため,UEからの次のUL送信は,様々な数のビットを含むことができる。少なくとも,UL送信はバッファ状態報告(BSR)を含むべきである。他の情報は,BSRとともに含まれ得る。
[0005]
スケジューリング要求(SR)を送信することは,UL送信リソースのためUEの必要性を,eNodeBのアップリンクスケジューラに通知することである。LTEにおいて,スケジューリング要求(SR)をトリガーすることは,LTE内の異なる論理チャネルに関連する。これらの論理チャネルは,通常,同様の特性を共有する論理チャネルグループ(LGC)にグループ化されている。具体的には,バッファ状態報告の送信(BSR)がトリガーされるのはULデータがUEの送信バッファに到着し,そのデータがUEの送信バッファに既に存在するデータの優先順位よりも高い優先度の論理チャネルグループ(LCG)に属する場合である。同様に,スケジューリング要求(SR)がトリガーされのは,UEが現在の送信期間のために割り当てられたULリソースを有していない場合である。専用スケジューリング要求(SR)(D-SR)がPUCCH上で送信されるのは,このリソースがUEに割り当てられている場合,又は代替的に,ランダムアクセススケジューリングリクエスト(SR)(RA-SR)がRACH上で送信される場合である。
[0006]
LTEはまた,半永続スケージューリングを利用する機会を提供し,そのスケージューリングにおいて,UEは周期性を有するULリソースが割り当てられる。半永続スケージューリングの利点は,すべてのリソース割当てのためULグラントの送信を回避することによって,物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)上で乏しい無線リソースを節約することである。半永続スケージューリング構成から利益を得そうなサービスの一つはボイスオーバーIP(VoIP)である。UEがVoIPフローなどのために構成したUL半永続無線リソースを有する場合,リソースのタイミングが完全にVoIPデータの到着と合わない限り,空のバッファに到着する各パケットはRA-SR又はD-SRをトリガーする。言い換えると,おそらく多くの事例が存在することになるのは,空のバッファに到着する各パケットがRA-SR又はD-SRをトリガーする場合-たとえSRが不要でも,VoIPフローのためULリソースの半永続スケージューリング与えられる場合である。
(【0003】-【0006】))

(2) 記載事項2
[0027] Figure 2 is an example signaling diagram showing non-limiting example procedures associates with an uplink scheduling request. The UE is shown on the left side of the figure, and the base station (BS) is shown on the right side. Initially, the UE receives uplink data for transmission in a transmission buffer. In response to receipt of that data in the buffer, the UE generates an uplink scheduling request (SR), and sends that scheduling request to the base station. The base station detects that UE's scheduling request, and in response, schedules an uplink grant of radio resources for the UE to use, and then sends that uplink grant to the UE. Upon receiving the uplink grant from the base station, the UE generates a buffer status report (BSR) and sends the buffered data along with the buffer status report using the uplink grant to the base station. Because the BSR triggers the SR, so there is always a BSR ready for transmission following the transmission of a SR. But the BSR can be cancelled if the UL resource can fit all the data (but not the BSR); otherwise, the BSR is sent together with data if there is room.
(8ページ)
(当審訳
[0027]
図2は,非限定的な例の手順を示すシグナリング図の例であり,そのシグナリング図はアップリンクスケジューリング要求に関連する。UEは,図の左側に示されており,基地局(BS)は,右側に示されている。最初に,UEは,送信バッファ内の送信のためにアップリンクデータを受信する。バッファ内のデータの受信に応答して,UEは,アップリンクスケジューリング要求(SR)を生成し,基地局へスケジューリング要求を送信する。基地局は,UEのスケジューリングを要求することを検出し,それに応答して,使用するUEのため無線リソースのアップリンクグラントをスケジュールし,そしてその後,UEにそのアップリンクグラントを送信する。基地局からアップリンクグラントを受信すると,UEは,バッファ状態報告(BSR)を生成し,アップリンクグラントを用いてバッファ状態報告とともに,バッファされたデータを基地局へ送信する。BSRは,SRをトリガーするので,SRの送信後,送信の準備ができたBSRが常に存在する。しかし,ULリソースが,すべてのデータ(BSRは除いて)を収めることができる場合,BSRをキャンセルすることができ,そうでない場合,余裕がある場合,BSRはデータとともに送信される。
(【0021】))

(3) 引用発明
上記(1)及び(2)によると,引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

UL送信のためのリソースを割り当てる際の課題の1つは,UEには,UL送信のためUEバッファ内保留中又は待機中のデータが存在することを,eNodeBに認識させる必要があり,
LTEで,これを行う1つの方法は,UEがeNodeBにスケジューリング要求(SR)を送信することであり,
SRは,専用SRチャネル(D-SR)上で,又はコンテンションベースのランダムアクセスチャネル(RACH)上で送信することができ,
D-SRは,UEはUL同期していること,及びUEは物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)上でSRチャネルが割り当てられてることを要求し,
eNodeBは,UEがUL送信のために使用する時間/周波数リソースがどのようなものであるかの情報を含むグラントで応答し,
専用スケジューリング要求(SR)(D-SR)がPUCCH上で送信されるのは,このリソースがUEに割り当てられている場合であり,
ULリソースが,すべてのデータ(BSRは除いて)を収めることができる場合,BSRをキャンセルすることができ,そうでない場合,余裕がある場合,BSRはデータとともに送信される
方法。

(4) 当審拒絶理由において記した当審判断
当審拒絶理由においては,上記(3)に記したように,引用発明を特定し,補正前の請求項1に係る発明を「本件発明」として,次のように「一致点」及び「相違点」を記すとともに,該相違点について次の「(5) 当審拒絶理由における検討」のように記した。

[一致点]
移動通信システムにおけるスケジューリング要請を受信する方法であって,
スケジューリング要請(SR)送信リソースと関連した情報を端末に送信するステップと,
前記端末からSRを受信するステップと,を含む,
スケジューリング要請信号受信方法。

[相違点]
本件発明においては,「受信されたSR」は,「端末」が「少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否か」を検査し,「少なくとも一つのBSRがトリガーされ,取り消されない」場合に受信されるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

(5) 当審拒絶理由における検討
相違点に関し,「少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否か」を検査するのが,「端末」であることは明らかである。
一方,本件発明は,「端末」が送信した「スケジューリング要請信号」を受信する「方法」に係るものであることは明らかである。
そうすると,当該「方法」は,本件明細書に記載された「ENB」あるいは「基地局」において実施されることが想定されたものであると解することができる。
そして,「受信されたSR」が受信されるのは,「前記端末が少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否かを検査し,前記少なくとも一つのBSRがトリガーされ,取り消されない場合」であることを,本件発明の特定事項としているが,当該事項は,上記のごとき「場合」に,「端末」が「SR」を送信することを単に特定したに過ぎず,受信される「SR」自体には何らの技術的特徴も有さず,上記のごとく受信された「SR」に対して「基地局」が特別の処理を行うことの発明特定事項もない。

これらのことから,上記相違点,つまり,「前記受信されたSRは,前記端末が少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否かを検査し,前記少なくとも一つのBSRがトリガーされ,取り消されない場合に受信されること」は,本件発明を特定するための意味を有さない事項であるといわざるを得ない。

以上により,本件発明は,引用発明に記載された事項であるということができる。
また,本件発明と引用発明に,仮に,相違があったとしても,その相違は,上記のごとく引用文献に記載された事項であるといい得る程度,又は,引用文献に記載された事項に基づいて,当業者が適宜なしえた程度のものに過ぎない。

よって,本件発明は,特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に該当し,特許を受けることができない。

2.当審拒絶理由に関する当審判断
本願第1発明と,上記「1.<い> (3)」に記した引用発明とを比較すると,少なくとも次の点で相違する。

本願第1発明においては,「基地局に受信されるSR」は,「端末」が「少なくとも一つのバッファ状態報告(BSR)がトリガーされるか否か及び取り消されるか否か」を検査し,「少なくとも一つのBSRがトリガーされ,取り消されない」場合に「端末により送信される」のに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

ここで,本願第1発明は「移動通信システムにおいて端末と基地局がスケジューリング要請を送受信する方法」に係る発明である。
このことにより,当審拒絶理由に述べたように(上記「1.<い> (5)」参照。),相違点が,本願第1発明を特定するために意味を有さない事項であるということはできない。

そして,本願第1発明のように構成したことによる効果が,引用発明から予測しうるものであるということもできない。

したがって,本願第1発明は,引用発明に記載されたものであるということはできず,また,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
そして,本願第1発明を引用する本願第2発明から本願第9発明についても,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

以上のことは,本願第10発明についても該当するので,本願第10発明についても,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
そして,本願第10発明を引用する本願第11発明から本願第18発明についても,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3.まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるということはできず,また,同条第2項に該当する発明であるということもできない。


第3 原査定の理由に関する当審判断

原査定の理由は,当審拒絶理由において提示した引用文献に基づいて,請求項に係る発明を,当業者が容易に発明をすることができたというものである。
しかし,上記「第2」に述べたとおり,本願発明は,拒絶の理由を発見しない事項を含むものである。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。


第4 むすび

以上のとおりであって,原査定の理由によっても,また,当審拒絶理由によっても,本願を拒絶すべきものであるとすることはできない。
そして,ほかに本願を拒絶すべき理由も発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2014-43619(P2014-43619)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田畑 利幸  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
北岡 浩
発明の名称 移動通信システムにおけるスケジューリング要請を受信する方法及び装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  

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