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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41C
管理番号 1322854
審判番号 不服2016-5449  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-13 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2013-548261「単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/084927、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年12月5日(優先権主張平成23年12月7日)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月19日付けで意見書及び補正書が提出され、平成28年1月21日付けで拒絶の査定がなされ、同査定の謄本は同月26日に送達された。これに対して、同年4月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年4月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 本件補正の内容
本件補正の内容は、以下のとおりである。

(1)補正事項1
請求項1を以下のとおりに補正する。(下線は補正の内容を明らかにするために当審にて付した。以下同じ。)
「【請求項1】
被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システムの処理ユニットに用いられるグラビアシリンダチャック機構であり、
前記被製版ロールの両端面をチャックするため相対向して設けられた一対のチャックコーンと、
前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とするためのチャックコーン移動手段と、
前記チャックコーン移動手段を駆動させるための単一モータとを有し、
前記単一のモータで前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とし、前記被製版ロールをチャックしてなり、
前記チャックコーン移動手段が、螺子軸にボール螺子ナットを螺合してなる相対向して設けられた一対のボール螺子と、前記ボール螺子ナットに取り付けられ、チャックコーンの後端部を把持するためのチャックコーン把持部材と、を含み、
前記チャックコーン移動手段が、前記単一モータで回転せしめられる長尺ロッド部材をさらに含み、前記長尺ロッド部材に前記一対のボール螺子が係合せしめられることにより、前記一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し同期して接離自在とされてなることを特徴とする単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構。」

(2)補正事項2
明細書の段落【0010】の「前記長尺ロッド部材に前記一対のボール螺子が係合せしめられることにより、前記一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とされてなること」との記載を、「前記長尺ロッド部材に前記一対のボール螺子が係合せしめられることにより、前記一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し同期して接離自在とされてなること」に補正する。

2 本件補正の適否についての判断
(1)補正事項1
本件補正の補正事項1は、「一対のチャックコーン」が「接離自在とされてなること」との事項を、「同期して接離自在とされてなること」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、出願当初明細書の段落【0026】には、「前記一対のチャックコーン16a,16bが前記被製版ロール12の両端面14a,14bに対し接離自在とされている。このようにして、単一モータ20で前記一対のチャックコーン16a,16bが同期して接離自在となるようにされている。」との記載があるから、補正事項1は出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。したがって、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
また、特許法第17条の2第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項
(ア) 国際公開第2007/135898号
原査定で引用された国際公開第2007/135898号(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

「特許請求の範囲
[1] グラビア印刷に用いられるグラビア製版ロールを製造するための全自動製造システムであって、
中空ロールに銅メッキをするための銅メッキ形成手段と、
前記銅メッキがされた中空ロールにグラビアセルを形成するためのグラビアセル形成手段と、
前記グラビアセルが形成された中空ロールにDLC被膜を形成するためのDLC被膜形成手段と、
前記銅メッキ形成手段に中空ロールを自動的に移載する第一自動移載手段と、
前記銅メッキ形成手段において銅メッキされた中空ロールを前記グラビアセル形成手段に自動的に搬送する自動搬送手段と、
前記グラビアセル形成手段においてグラビアセルが形成された中空ロールを前記DLC被膜形成手段に自動的に移載するための第二自動移載手段と、
を含むことを特徴とするグラビア製版ロールの全自動製造システム。」(第12頁第1行ないし第14行)

したがって、刊行物1には、「グラビア印刷に用いられるグラビア製版ロールを製造するための全自動製造システム」の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

(イ)国際公開第2011/125926号
原査定で引用された国際公開第2011/125926号(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

「請求の範囲
[請求項1] 被製版ロールをチャックしてハンドリングする第一の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Aと、被製版ロールをチャックしてハンドリングする第二の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Bと、を有し、前記処理室A及び前記処理室Bを連通せしめ、前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに、ロールストック装置、感光膜塗布装置、電子彫刻装置、レーザ露光潜像形成装置、脱脂装置、砥石研磨装置、超音波洗浄装置、銅メッキ装置、表面硬化皮膜形成装置、現像装置、腐食装置、レジスト画像除去装置、ペーパー研磨装置から選ばれる処理装置の少なくとも一つを配置し、前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに、前記処理装置のうち前記処理室Aに配置しなかった処理装置の少なくとも一つを配置し、かつ前記処理室A及び前記処理室Bの前記処理装置は、設置及び撤去が可能とされてなり、前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すことにより、製版処理が行われるようにしたことを特徴とする全自動グラビア製版用処理システム。」(第10頁第1行ないし第17行)

以上より、刊行物2には、「被製版ロールを製版処理が行われるようにした全自動グラビア製版用処理システム。」の発明が記載されている。

(ウ)特表平10-509383号号公報
原査定で引用された特表平10-509383号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。

(a)「実施の形態
1.図1-図6の実施の形態
図1に、一般に彫刻装置10と呼ばれる、彫刻装置の実施の形態を示す全体斜視図である。本実施の形態において、彫刻装置はグラビア用の彫刻装置であるが、本発明は如何なる彫刻装置に対しても適している。彫刻装置10は、周囲を囲む摺動可能な安全キャビネット構造を有するが、容易に図示するため描かれていない。彫刻装置10は、前方ストック16と後方ストック18が互いに接近したり離れたりする方向に移動可能なように、トラック20内に摺動可能に設けられた前方ストック16と後方ストック18を持つベース盤12を有する。これに関して、彫刻装置は、前方ストック16と後方ストック18をそれぞれ互いに近づいたり離したりする方向に駆動可能な複数の直線アクチュエータまたは第一の駆動モータ手段または第一の駆動モータ46と、および第二の駆動モータ手段または第二の駆動モータ48とを備えている。
例えば、駆動モータは、前方ストック16と後方ストック18を図2に示す最大離れた位置に戻すこともできるし、あるいは、図1に示すシリンダを支持する位置に動かすこともできる。駆動モータを選択的に駆動し、前方ストック16と後方ストック18を別々にまたは同時に作動させることができる。図示されていないが、反対のネジ(図示されていない)を有する単体の親ネジ(図示されていない)と共に単独の駆動モータを使うこともできる。この場合、親ネジが駆動されると、親ネジの両端が前方ストック16と後方ストック18を、同時に互いに接近する方向または離間する方向に動かす。前方ストック16と後方ストック18の両方を動かすと、例えば、彫刻装置の回転軸に対して垂直にしか動かないオーバーヘッドクレーンを用いて、種々の長さのシリンダを彫刻装置に装着することができる。しかし、例えば、彫刻装置の回転軸と一般に平行な方向にシリンダを移動させることによってシリンダを装着するシリンダ装着機構(図示されていない)に対しては、固定された前方ストック16または後方ストック18と、従動する後方ストック16または前方ストックとを組み合わせて用いることができる。
図2-図4に図示されているように、前方ストック16と後方ストック18は、それぞれ支持シャフト16aおよび18aを備えている。支持シャフト16aおよび18aは、それぞれ先端が円錐形端部16bと18bとされている。シリンダ14は第一と第二の端部14aおよび14bを持ち、それぞれ円錐型端部16a、18bを受け容れる開口部19(図2)を有する。図2-4に図示されているが、円錐型端部16bおよび18bとの良く嵌合するように、開口部19もまた断面が円錐形とされている。
シャフト付きシリンダ(図7の実施の形態に114として示される)を彫刻する場合、前方ストック116(図7)と後方ストック118(図7)には、シリンダ114(図7)を彫刻部位に回転可能に支持するため、それぞれ把持装置またはチャック154、156(図7)が取り付けられる。
彫刻装置10は、シリンダ14の表面13を彫刻するために、彫刻工具または彫刻針(図示されていない)を持つ彫刻ヘッド22を備えている。本実施の形態において、シリンダ表面13はグラビア彫刻に用いられる種類の銅被覆層を有することが望ましい。彫刻ヘッド22は、ヘッド保持台24上に摺動可能に設置され、第三の移動手段または第三のモータ21が、シリンダ14の中心軸に対して一般に半径方向に、シリンダ14中心軸に対して近接または離間させるように彫刻ヘッド22を駆動する。ヘッド保持台24はベース盤12上に摺動可能に設置され、シリンダ14の軸に対して一般に平行な、図1に示す矢印26の方向に、シリンダの全表面13に亘ってヘッド保持台24を往復運動可能とされている。
彫刻装置10は、また、親ネジ(図示されていない)と駆動モータを備え、ヘッド支持台24を矢印26の方向に移動させる。」(第14頁第2行ないし第15頁第23行)

(b)「本発明は彫刻装置10に彫刻されるシリンダ14を自動的に装着する優れた方法および装置を提供している。本方法および装置は、シリンダ14を装着したり取り外したりする間、作業者の必要な作業を減少または除去する。本発明は彫刻工程を全自動化するために使用したり、または、反対に、本発明の装置を半自動とすることによって、彫刻装置10の作業を作業者が手動で制御することも可能とする。本発明の方法および装置は、シリンダ14を彫刻位置14に自動で装着しセンタリングする手段を提供している。」(第20頁第17行ないし第23行)

(c)「記載された本発明から、本発明の真の精神あるいは見解から離れることなく、当業者は種々の変化や修正を想起されるであろう。例えば、本発明は、グラビア彫刻の領域に関して示され記述されたが、フレクソ印刷用ローラのレーザ彫刻、あるいは、シリンダ114の研磨といったその他の工程といったその他の彫刻工程にも利用することができることを認識されたい。」(第30頁第19行ないし第23行)

(d)(a)の記載から、単独の駆動モータにより駆動してグラビア用の彫刻装置に用いられるシリンダを装着する機構が記載されていることは自明である。

(a)ないし(d)より、刊行物3には、以下の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されている。
「単独の駆動モータにより駆動してグラビア用の彫刻装置に用いられるシリンダを装着する機構であって、
前方ストック16と後方ストック18が互いに接近したり離れたりする方向に移動可能なように、トラック20内に摺動可能に設けられた前方ストック16と後方ストック18を持つベース盤12を有し、
反対のネジを有する単体の親ネジと共に単独の駆動モータを使い、親ネジが駆動されると、親ネジの両端が前方ストック16と後方ストック18を、同時に互いに接近する方向または離間する方向に動かし、前方ストック16と後方ストック18の両方を動かすと、例えば、彫刻装置の回転軸に対して垂直にしか動かないオーバーヘッドクレーンを用いて、シリンダを彫刻装置に装着することができ、
前方ストック16と後方ストック18は、それぞれ支持シャフト16aおよび18aを備え、支持シャフト16aおよび18aは、それぞれ先端が円錐形端部16bと18bとされ、シリンダ14は第一と第二の端部14aおよび14bを持ち、それぞれ円錐型端部16a、18bを受け容れる開口部19を有し、
シリンダ14の表面13を彫刻し、
彫刻装置10に彫刻されるシリンダ14を自動的に装着し、彫刻工程を全自動化するために使用し、
フレクソ印刷用ローラのレーザ彫刻、あるいは、シリンダ114の研磨といったその他の工程にも利用することができる、
単独の駆動モータにより駆動してグラビア用の彫刻装置に用いられるシリンダを装着する機構。」

(エ)特開2002-283532号公報
原査定で引用された特開2002-283532号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラビア印刷機等の印刷機に関し、特に、軸なし版胴を用いる印刷機において、その軸なし版胴を印刷ユニットに設けているチャッキングコーンに対して着脱するために使用する軸なし版胴交換装置に関する。」

(b)「【0010】17は版胴支持部16を昇降させる昇降機構であり、版胴支持部16、16が所定位置で昇降するように案内するガイドレール等のガイド手段18と、版胴支持部16、16を昇降させるねじ軸19、19と、左右のねじ軸19、19を同期回転させるよう駆動連結する駆動伝達シャフト20と、ねじ軸19を回転駆動するサーボモータ21を備えている。23は、チャッキングコーン2、2の出し入れやサーボモータ21の動作を制御する制御装置である。この制御装置23は、図3に示すように、サーボモータ21に駆動電流を供給するモータドライバ24と、サーボモータ21に供給する電流値を検出する電流検出手段25と、制御回路26を備えている。制御回路26は、所定のプログラムに沿ってサーボモータ21の回転量を制御し、版胴支持部16の移動、停止を制御する機能を備える他、電流検出手段25からの検出電流を監視し、所定の電流レベルを越えたことを検知するとサーボモータ21を停止させる機能も備えている。ここで、サーボモータ21に供給する電流値は、サーボモータ21のトルク出力に関連した因子となっているので、検出電流が所定の電流レベルを越えたことを検知するとサーボモータ21を停止させるということは、結局は、サーボモータのトルク出力を監視し、そのトルク出力が所定のレベル(以下検出レベルという)を越える変化を生じた時にサーボモータを停止させて、版胴支持部16のの昇降位置を制御することとなる。所定の検出レベルとしては、版胴支持部16、16を所定の速度で上昇させる際のトルク出力(電流値)よりもある程度高いが、版胴支持部16の上昇が阻止された状態で通電を継続した場合のトルク出力(電流値)よりは低い値が採用される。」

上記(a)、(b)より、刊行物4には、以下の発明(以下「刊行物4発明」という。)が記載されている。
「グラビア印刷機等の印刷機に関し、特に、軸なし版胴を用いる印刷機において、その軸なし版胴を印刷ユニットに設けているチャッキングコーンに対して着脱するために使用する軸なし版胴交換装置に関し、
版胴支持部16、16が所定位置で昇降するように案内するガイドレール等のガイド手段18と、版胴支持部16、16を昇降させるねじ軸19、19と、左右のねじ軸19、19を同期回転させるよう駆動連結する駆動伝達シャフト20と、ねじ軸19を回転駆動するサーボモータ21を備えた、版胴支持部16を昇降させる昇降機構。」

(オ)特開昭64-12309号公報
原査定で引用された特開昭64-12309号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の記載がある。

「(作用)
この発明のロボット制御装置では、ロボットの手先が対象物との干渉を起す恐れのない作業域では切換手段が手先の位置信号に基いた制御手段側に切換えられ、位置信号に基いた制御を行なう。そして、ロボットの手先が対象物との干渉を起すす恐れがある動作域に入った時には、切換手段によりトルク信号を含む入力情報に基いた制御手段側に切換えて手先の動作制御を行ない、対象物や把持物に破損を起させることがないようにするのである。」(第2頁右下欄第第9行ないし第19行)

以上より、刊行物5には、以下の発明(以下「刊行物5発明」という。)が記載されている。
「ロボットの手先が対象物との干渉を起す恐れのない作業域では切換手段が手先の位置信号に基いた制御手段側に切換えられ、位置信号に基いた制御を行ない、ロボットの手先が対象物との干渉を起すす恐れがある動作域に入った時には、切換手段によりトルク信号を含む入力情報に基いた制御手段側に切換えて手先の動作制御を行なう、ロボット制御装置。」

ア 対比・判断
(ア)刊行物1発明を主引用例とした場合
補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「グラビア印刷に用いられるグラビア製版ロールを製造するための全自動製造システム」は、補正発明の「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システム」に相当する。
したがって、補正発明と刊行物1発明とは、「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システム」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
補正発明は、
「処理ユニットに用いられるグラビアシリンダチャック機構であり、
前記被製版ロールの両端面をチャックするため相対向して設けられた一対のチャックコーンと、
前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とするためのチャックコーン移動手段と、
前記チャックコーン移動手段を駆動させるための単一モータとを有し、
前記単一のモータで前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とし、前記被製版ロールをチャックしてなり、
前記チャックコーン移動手段が、螺子軸にボール螺子ナットを螺合してなる相対向して設けられた一対のボール螺子と、前記ボール螺子ナットに取り付けられ、チャックコーンの後端部を把持するためのチャックコーン把持部材と、を含み、
前記チャックコーン移動手段が、前記単一モータで回転せしめられる長尺ロッド部材をさらに含み、前記長尺ロッド部材に前記一対のボール螺子が係合せしめられることにより、前記一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し同期して接離自在とされてなることを特徴とする単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構。」
を備えているのに対し、刊行物1発明はこれを備えていることを特定していない点。

上記相違点について検討する。
刊行物3発明の「単独の駆動モータにより駆動してグラビア用の彫刻装置に用いられるシリンダを装着する機構」は、本件補正発明の「グラビアシリンダチャック機構」、及び「単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構」に相当する。
刊行物3発明の「先端が円錐形端部」とされた「支持シャフト16aおよび18a」は、本件補正発明の「被製版ロールの両端面をチャックするため相対向して設けられた一対のチャックコーン」に相当する。
刊行物3発明の「反対のネジを有する単体の親ネジ」は、「親ネジが駆動されると、親ネジの両端が前方ストック16と後方ストック18を、同時に互いに接近する方向または離間する方向に動かす」ものであり、また、「前方ストック16と後方ストック18は、それぞれ支持シャフト16aおよび18aを備え」るものであるから、刊行物3発明の「親ネジ」及び「前方ストックと後方ストック」は、本件補正発明の「一対のチャックコーンを被製版ロールの両端面に対し接離自在とするためのチャックコーン移動手段」に相当する。
刊行物3発明の「親ネジ」を「駆動」する「単独の駆動モータ」は、本件補正発明の「チャックコーン移動手段を駆動させるための単一モータ」に相当する。
刊行物3発明の「反対のネジを有する単体の親ネジと共に単独の駆動モータを使い、親ネジが駆動されると、親ネジの両端が前方ストック16と後方ストック18を、同時に互いに接近する方向または離間する方向に動かし、前方ストック16と後方ストック18の両方を動かすと、例えば、彫刻装置の回転軸に対して垂直にしか動かないオーバーヘッドクレーンを用いて、シリンダを彫刻装置に装着することができ、
前方ストック16と後方ストック18は、それぞれ支持シャフト16aおよび18aを備え、支持シャフト16aおよび18aは、それぞれ先端が円錐形端部16bと18bとされ、シリンダ14は第一と第二の端部14aおよび14bを持ち、それぞれ円錐型端部16a、18bを受け容れる開口部19を有」することは、本件補正発明の「単一のモータで前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とし、前記被製版ロールをチャックしてなり、」「一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し同期して接離自在とされてなること」に相当する。
したがって、刊行物3発明は、上記相違点に係る補正発明の発明特定事項のうち、以下の発明特定事項を備えている。

「グラビアシリンダチャック機構であり、
被製版ロールの両端面をチャックするため相対向して設けられた一対のチャックコーンと
一対のチャックコーンを被製版ロールの両端面に対し接離自在とするためのチャックコーン移動手段と、
チャックコーン移動手段を駆動させるための単一モータとを有し、
単一のモータで前記一対のチャックコーンを前記被製版ロールの両端面に対し接離自在とし、前記被製版ロールをチャックしてなり、
一対のチャックコーンが前記被製版ロールの両端面に対し同期して接離自在とされてなる単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構。」

一方、刊行物3発明は、上記相違点に係る補正発明の「前記チャックコーン移動手段が、螺子軸にボール螺子ナットを螺合してなる相対向して設けられた一対のボール螺子と、前記ボール螺子ナットに取り付けられ、チャックコーンの後端部を把持するためのチャックコーン把持部材と、を含み、
前記チャックコーン移動手段が、前記単一モータで回転せしめられる長尺ロッド部材をさらに含み、前記長尺ロッド部材に前記一対のボール螺子が係合せしめられること」の発明特定事項を備えていない。
また、刊行物4発明及び刊行物5発明についても、当該発明特定事項を備えていない。
そして、当該発明特定事項が、当業者が適宜選択できる設計的事項であるとする根拠もない。
よって、上記相違点については、刊行物3発明ないし刊行物5発明から当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、補正発明は、刊行物1発明及び刊行物3発明ないし刊行物5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)刊行物2発明を主引用例にした場合
補正発明と刊行物2発明とを対比すると、刊行物2発明の「被製版ロールを製版処理が行われるようにした全自動グラビア製版用処理システム」は、補正発明の「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システム」に相当するから、補正発明と刊行物2発明とは、「被製版ロールに対して一連の処理を行い製版ロールとする全自動グラビア製版処理システム」である点で一致し、上記相違点と同じ点で相違している。
そして、当該相違点について検討すると、上記(ア)のとおり、刊行物3発明ないし刊行物5発明から当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、補正発明は、刊行物2発明ないし刊行物5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

その他、補正発明について、拒絶すべき理由を発見しない。
よって、補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2
補正事項2について検討すると、出願当初明細書の段落【0026】に「前記一対のチャックコーン16a,16bが前記被製版ロール12の両端面14a,14bに対し接離自在とされている。このようにして、単一モータ20で前記一対のチャックコーン16a,16bが同期して接離自在となるようにされている。」との記載があるから、出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 補正の適否のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 原査定の理由について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、補正発明については、上記「第2」の「2」の「(1)」のとおり、刊行物1発明及び刊行物3発明ないし刊行物5発明に基づいて、又は刊行物2発明ないし刊行物5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、補正発明を引用する請求項2及び3に係る発明は、補正発明をさらに限定した発明であるから、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2013-548261(P2013-548261)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B41C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
吉村 尚
発明の名称 単一モータ駆動グラビアシリンダチャック機構  
代理人 石原 進介  

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