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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1322920
審判番号 不服2014-10571  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2016-12-14 
事件の表示 特願2009-512212「動的コンピュータ断層撮像」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日国際公開、WO2007/140094、平成21年11月 5日国内公表、特表2009-538205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年5月9日(パリ条約による優先権主張:2006年5月26日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成24年8月8日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月1日付けで拒絶理由が通知され、同年9月3日に意見書及び手続補正書が提出され、応対(平成26年1月16日格納の応対記録)がなされ、同手続補正が同年1月22日付けで却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年2月4日に請求人に送達された。
これに対し、同年6月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出された。
その後、当審から平成27年8月20日に説明依頼事項メモを送付しての面接要請により、同年10月8日に面接(同年11月27日格納の面接記録)がなされたうえで、同面接に引き続いて合議体の疑問点に関する審尋(同年11月11日格納の応対記録及び同年11月12日格納の応対記録)が複数回なされたうえで、当審において、同年11月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成28年5月17日に意見書(以下、「本件意見書」という。)及び誤訳訂正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年5月17日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。


第3 当審拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由の理由1(特許法第36条第4項第1号)
当審拒絶理由の理由1(特許法第36条第4項第1号)の概要は、以下のとおりである。
「<理由1>
この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



・・・・

2 請求項1-24に係る発明は、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影依存性重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」を含む発明であるが、発明の詳細な説明には、どのような工程であるのかについて当業者が理解できる程度に記載されているとはいえない。その理由はつぎの(1)ないし(3)のとおりである。

(1)段落[0051]において、「工程612では、同定された画像層の重みが算出される。より具体的には、各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との差を最小にするように画像層重みが算出される。」と記載されている。しかしながら、当該記載は、以下の理由により、どのような工程であるのかについて当業者が理解できる程度に記載されているとはいえない。
ア 「投影依存性重みプロファイル」が何を意味する用語であるのかが明らかでない。本願の明細書には、「投影依存性重みプロファイル」が何を意味する用語であるのかを説明する記載はなく、また、「投影依存性重みプロファイル」が当業者にとって周知の用語であるともいえない。
なお、この点につき、面接及び審尋によって出願人に釈明を促したところ、投影依存性重みプロファイルは、段落[0004]において提示した論文(Grass他、 Helical Cardiac Cone Beam Reconstruction Using Retrospective ECG Gating, Phys. Med. Biol. 48(2003) 3069-3084)の図4に示されている「Self-Normalized Weighting」に相当するものであるとの釈明を受けた。しかしながら、上記釈明において、請求人がその根拠として示す証拠によっても「投影依存性重みプロファイル」が当業者にとって周知の用語であると認めるに足りない。その理由は以下のとおりである。
(ア)前記論文の図4に示されている「Self-Normalized Weighting」と「投影依存性重みプロファイル」という用語との間の関連性について、前記論文全体の記載を参酌しても認められないし、「Self-Normalized Weighting」と「投影依存性重みプロファイル」とが同じことを意味することについて、請求人は何らの根拠も示していない。
(イ)発明の詳細な説明の段落[0049]には、「ECR手法においては、正規化重み付け関数512は通常、逆投影の過程で適用される。しかし、後述のとおり、正規化重み付け関数は、画像層の重み付けを算出するために使用される基準関数としての役目を担う。」と記載されおり、本願の請求項1-24に係る発明は、従来のECR手法で用いられる「正規化重み付け関数」を画像層の重み付けを算出するために流用することを前提としたものである。当該前提に立てば、段落[0051]の「工程612では、同定された画像層の重みが算出される。より具体的には、各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との差を最小にするように画像層重みが算出される。」という記載における、「ボクセルの投影依存性重みプロファイル」は、「正規化重み付け関数」とは異なる関数であると解することが自然である。なぜなら、同じ「正規化重み付け関数」同士の差を最小にすることに意味がないからである。
イ 「画像層重み」を算出するための手順については、その具体的な手順が記載されておらず、どのようにして画像層重みを算出しているのか明らかでない。」

2 当審拒絶理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)
当審拒絶理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)の概要は、以下のとおりである。
「 <理由2>
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



・・・・

2 請求項1、8、10、16における「画像層重み」について、発明の詳細な説明には、段落[0051]に「各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との差を最小にするように画像層重みが算出される。」とのみ記載されている。そして、上記<理由1>(2)(当審注:上記<理由1>2の誤記)で検討したとおり、「各ボクセルの投影依存性重みプロファイル」が何を意味する用語であるか明らかでないところ、請求項1、8、10、16における「画像層重み」について、発明の詳細な説明の記載によりサポートされているということはできないから、請求項1、8、10、16及び請求項1、8、10、16を引用する請求項2-7、9、11-15、17-24は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 」


第4 当審の判断
1 当審拒絶理由の理由1(特許法第36条第4項第1号)
(1)本願の請求項1に係る発明
ア 本願の請求項1(誤訳訂正前の請求項1に対応)に係る発明は、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」をその発明特定事項として含むものである。

イ 本願の請求項1に係る発明における上記記載により特定される算出工程を、当業者が実施をすることができる程度に、本願の発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか検討を行うために、まず本願の発明の詳細な説明の記載について確認する。本願の発明の詳細な説明には、画像層重みの算出に関連する記載として、以下のような記載が存在する(下線部は当審が付した。)。
「【0044】
しかし、上記手法の欠点の1つには、Δθの角増分単位(換言すれば、対応する時間増分単位)でしか心位相をシフトさせることが可能でないという点がある。次に、心位相の選択における更なる柔軟性を与える手法を図5及び図6に関して説明する。この目的は、各画像層の重み、及び各画像層を構成するために使用される投影の重みを考慮に入れることによって得られる、関心部分領域内の各ボクセルの投影依存性重みプロファイルが、任意の位相点について容易に算出することが可能な基準重み付け関数を近似するように画像層を重み付けることである。後述するように、これは、画像層を重み付けして、ECR手法を使用して得られる重み付けを近似することによって達成することができる。

・・・・

【0049】
608では、合成重み付け関数510を正規化して、ボクセル毎、又はボクセル・ブロック毎若しくはボクセル群毎に正規化重み付け関数512を生成する。より具体的には、重み付け関数は、すべての異なるπパートナーに対して正規化される。ECR手法においては、正規化重み付け関数512は通常、逆投影の過程で適用される。しかし、後述の通り、正規化重み付け関数は、画像層の重み付けを算出するために使用される基準関数としての役目を担う。
【0050】
工程610では、ボクセルを照射する投影のみから生成された画像層308が同定される。
【0051】
工程612では、同定された複数の画像層の複数の重みが算出される。より具体的には、各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との間の差を最小にするよう複数の画像層重みが算出される。このことは、非反復的な閉形式を使用して差を算出することによって(例えば、投影依存性差のI2ヒルベルト空間のノルムを最小にすることによって)、達成することができる。」
【0052】
工程614では、負の画像層重みはゼロに切り捨てられる。
【0053】
画像層重みは工程616で正規化される。より具体的には、πの倍数だけシフトされた取得ストリーム中の層の重みの和が1に等しくなるように、又は、さもなければ、共通の値に等しくなるように画像重みが正規化される。この正規化を行い、ガントリ回転の半分の時間にうまく分かれる連続した画像層間の角変位を選択することにより、最後の画像内のボクセルを再構成するために使用し、0とπとの間の同じ角度に属する投影全てに対して与えられる重みの和も1に等しくなることが確実にされる。やはり、ECR手法によって知られているように、画像重みの算出は、ボクセル毎の個々の重みを算出するよりも、ボクセルの領域又はブロックに対する重みを算出することにより、よりすばやく完了することが可能である。」

ウ 上記イから、本願の発明の詳細な説明にはそれぞれ以下の(ア)ないし(エ)について記載されていると認められる。
(ア)「第1の基準重み付け関数」が、「画像層の重み付けを算出するために使用される基準関数としての役目を担う」「正規化重み付け関数512」である点
(イ)「投影に依存する重みプロファイル」は、「各画像層の重み、及び各画像層を構成するために使用される投影の重みを考慮に入れることによって得られる」ものであり、「関心部分領域内の各ボクセル」毎に存在するものである点
(ウ)「画像層重み」は、「各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との間の差を最小にするよう」にして「算出される」点
(エ)「画像層重み」は、「πの倍数だけシフトされた取得ストリーム中の層の重みの和が1」又は「共通の値に等しくなるように」「正規化される」ものである点

エ 本願の発明の詳細な説明の記載に関する上記ウを踏まえても、本願の請求項1に係る発明における「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」を、当業者が実施をすることができる程度に、本願の発明の詳細な説明が、明確かつ十分に記載されているとはいえない。その理由は、以下の(ア)ないし(ウ)のとおりである。

(ア)「投影に依存する重みプロファイル」について
a 本願の発明の詳細な説明の記載に関する上記ウ(イ)のとおり、「投影に依存する重みプロファイル」は「各画像層の重み」及び「各画像層を構成するために使用される投影の重み」を「考慮に入れることによって得られる」ものであることは、本願の発明の詳細な説明の記載に一応記載されていると認められるものの、当該記載からは、「各画像層の重み」及び「各画像層を構成するために使用される投影の重み」の両者を具体的にどのように考慮するかといった「投影に依存する重みプロファイル」の導出の詳細について理解することはできないから、「投影に依存する重みプロファイル」が具体的にどのようにして得られ、また、どのようなものであるのか、すなわち、「投影に依存する重みプロファイル」が何を意味するのかについて、本願の発明の詳細な説明を参酌しても理解することはできないといわざるを得ない。
また、上記ウ(イ)及び上記ウ(ウ)の記載から、上記ウ(イ)では「投影に依存する重みプロファイル」が「画像層の重み」によって定義されるのに対して、上記ウ(ウ)では「画像層重み」が「投影に依存する重みプロファイル」によって定義されると理解されるが、上記ウ(イ)と上記ウ(ウ)の両定義の関係がいわゆる「循環定義」となっており、「投影に依存する重みプロファイル」の定義が本願の発明の詳細な説明において成立していないことからも、「投影に依存する重みプロファイル」の意味を本願の発明の詳細な説明から理解できないといえる。

b 請求人の主張について検討すると、本件意見書において、「本願発明の「投影に依存する重みプロファイル」はECR法により求められた最終的な重み関数であ」る旨を請求人は主張している。
しかしながら、その主張の根拠として挙げられた本願の段落0004ないし0006、0049、0051及び0056には、「投影に依存する重みプロファイル」が「ECR法により求められた最終的な重み関数」であることは明示的に記載されていないし、上記各段落からそのようなことを読み取ることもできない。
また、本願の段落0004において従来のECR法として例示された「論文(Grass他、 Helical Cardiac Cone Beam Reconstruction Using Retrospective ECG Gating, Phys. Med. Biol. 48(2003) 3069-3084)」には、複数種類の「重み関数」が記載されているが、そのうちのどの「重み関数」が「投影に依存する重みプロファイル」に当たるのかといった明示的な記載は存在しないし、上記論文の記載内容から「投影に依存する重みプロファイル」が「ECR法により求められた最終的な重み関数」であることを読み取ることはできない。そして、本件意見書においても、上記論文のどの「重み関数」が「最終的な重み関数」に当たるのか、さらにその「最終的な重み関数」がどのような論拠によって「投影に依存する重みプロファイル」であるといえるのかについても主張されていないし、当審による面接及び審尋においてもこの点に関して十分な説明はされていない。
また、上記論文は優先権主張日前に公知ではあるものの、請求人の主張内容が、優先権主張日前に当業者に一般的に知られていた技術常識であると認めるに足る根拠も特に示されていない。
以上のことを総合すると、請求人の主張は失当であるといわざるを得ないから採用することはできない。

c その他、本件意見書で「なお、「投影依存性重みプロファイル」が上記文献の図4に示された「Self-Normalized Weighting」に相当するものであるとの主張(当審注:平成27年11月12日作成の応対記録における平成27年11月4日付けのファクシミリを参照)は、正確性を欠いておりました。」と釈明するように、請求人自身の「投影に依存する重みプロファイル」の解釈が審理過程で二転三転していることからも、「投影に依存する重みプロファイル」が何を意味するか一義に特定することができないことが裏付けられる。

(イ)「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」について
a 本願の発明の詳細な説明の記載に関する上記ウ(ア)と上記ウ(ウ)から、「画像層重みを算出する工程」が「第1の基準重み付け関数」と「投影に依存する重みプロファイル」との間の差を最小にするものであることは、本願の発明の詳細な説明に一応記載されていると認められるものの、上記(ア)で検討したとおり、「投影に依存する重みプロファイル」との用語の意味が本願の発明の詳細な説明を参酌しても理解できず、その結果、「画像層重みを算出する工程」の「第1の基準重み付け関数」との間の差を最小にする「具体的な手順」において用いられる「投影に依存する重みプロファイル」も理解できないことになるので、本願の発明の詳細な説明を参酌しても「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」を理解することができない。

b 請求人の主張について検討すると、請求人は、本件意見書において「資料(「特願2009-512212補足説明書」)」を用い、本願の段落0049-0051の補足説明として、「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」について詳細に説明しているが、本願の段落0049-0051及びその他の発明の詳細な説明から把握できる事項はあくまで上記ウで示した程度であって、上記資料で説明しているような詳細な「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」が、本願の発明の詳細な説明から把握できるとはそもそもいえないから、本願の段落0049-0051の記載から「画像層重みを算出する工程」が当業者に明らかであるとの主張はその前提において失当である。
また、本願の段落0049-0051における「投影依存性重みプロファイル」、「正規化重み付け関数512」及び「画像層重み」といった各用語と、上記資料における様々な用語及び数式との対応関係が明らかでないので、上記資料を参酌したとしても「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」が本願の段落0049-0051の記載から理解することはできないといわざるを得ない。
さらに、上記資料の内容が優先権主張日前の技術常識であることの根拠も本件意見書において何ら示されていない。
以上のとおりであるから、請求人の主張を参酌しても、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」を理解することはできないし、そのような「具体的な手順」が優先権主張日前の技術常識であるともいえない。

(ウ)まとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明は、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」を当業者が実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえない。

(2)本願の請求項2ないし12に係る発明
ア 本願の請求項7(誤訳訂正前の請求項8に対応)に係る発明及び本願の請求項9(誤訳訂正前の請求項16に対応)に係る発明は、それぞれ「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する手段」、「画像ボリューム内の複数の領域の前記第1の角変動基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを、前記第1の角変動基準重み付け関数によって算出する工程」をその発明特定事項として含むものである。
本願の請求項7及び9に係る発明は、「投影に依存する重みプロファイル」という用語を含む点及び「投影に依存する重みプロファイル」を用いて画像層重みを算出する点で本願の請求項1に係る発明と共通するから、上記(1)と同様の理由により、本願の発明の詳細な説明は、その発明を当業者が実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえない。

イ 本願の請求項1、7及び9を直接的、間接的に引用する請求項2ないし6、8及び10ないし12に記載された発明は、本願の請求項1、7及び9に係る発明の発明特定事項を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、本願の発明の詳細な説明は、その発明を当業者が実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明には、本願の請求項1ないし12に記載された発明を、当業者が実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているものとはいえないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)
(1)本願の請求項1に係る発明
ア 上記1(1)アのとおり、本願の請求項1(誤訳訂正前の請求項1に対応)に係る発明は、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」をその発明特定事項として含むものである。

イ 上記1(1)イ及びウのとおり、「画像層重み」に関して、発明の詳細な説明には、以下の(ウ)及び(エ)が記載されていると認められる。
(ウ)「画像層重み」は、「各ボクセルの投影依存性重みプロファイルと、そのボクセルの正規化重み付け関数512との間の差を最小にするよう」にして「算出される」点
(エ)「画像層重み」は、「πの倍数だけシフトされた取得ストリーム中の層の重みの和が1」又は「共通の値に等しくなるように」「正規化される」ものである点

ウ 上記1(1)エを参照すると、「投影に依存する重みプロファイル」が何を意味するかは発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。また、「画像ボリューム内の複数の領域それぞれの前記第1の基準重み付け関数と、投影に依存する重みプロファイルとの間の差を最小にする画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」も発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

エ してみると、上記イ(ウ)及び(エ)によって「画像層重み」の特徴の一部が発明の詳細な説明に記載されているとは認められるものの、「画像層重み」のその他の特徴である、「画像層重みを算出する工程」に用いる「投影に依存する重みプロファイル」、及び、「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、「画像層重み」が発明の詳細な説明の記載からサポートされているものとはいえない。
また、上記1(1)エ(ア)及び(イ)の説示を参照すると、請求人の主張を参酌しても、「投影に依存する重みプロファイル」も、「画像層重みを算出する工程」の「具体的な手順」も、発明の詳細な説明に記載されているとも、優先権主張日前の技術常識であるともいえない。
その他に、本件意見書の「C.段落0051の記載について」及び「E.理由2について」において、「画像層重み」について説明しているが、「投影に依存する重みプロファイル」の意味については明らかにされていないから、本件意見書の「C.段落0051の記載について」及び「E.理由2について」を参酌しても、「投影に依存する重みプロファイル」が発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(2)本願の請求項2ないし12に係る発明
ア 本願の請求項7(誤訳訂正前の請求項8に対応)に係る発明及び本願の請求項9(誤訳訂正前の請求項16に対応)に係る発明は、上記1(2)アで示した発明特定事項を含み、「投影に依存する重みプロファイル」という用語を含む点及び「投影に依存する重みプロファイル」を用いて画像層重みを算出する点で本願の請求項1に係る発明と共通するものであるから、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

イ 本願の請求項1、7及び9を直接的、間接的に引用する請求項2ないし6、8及び10ないし12に記載された発明は、本願の請求項1、7及び9に係る発明の発明特定事項を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願の請求項1ないし12に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本願のそれらの請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、この出願は、特許法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-15 
結審通知日 2016-07-19 
審決日 2016-08-01 
出願番号 特願2009-512212(P2009-512212)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61B)
P 1 8・ 537- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉 卓也  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
小川 亮
発明の名称 動的コンピュータ断層撮像  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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