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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1322943
審判番号 不服2015-9394  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-20 
確定日 2016-12-15 
事件の表示 特願2012-227652「回転電気機械」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 1日出願公開、特開2013-150539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成24年10月15日(優先日、平成23年12月22日)の出願であって、平成27年3月18日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成27年3月24日)、これに対し、平成27年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成28年2月12日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年2月16日)、これに対し、平成28年4月15日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年4月15日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
円柱状の回転子本体に複数の永久磁石が埋め込み状態に配置され、回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子の半径方向の外側に、前記回転子本体の外周縁部に対向するように該外周縁部から間隙を介して配置された円筒状の固定子とを備え、
前記固定子は、
前記固定子の周方向に間隔を隔てて配置された複数の歯部と、
前記各歯部と共に固定子磁路を形成する固定子ヨーク部と、
前記各歯部の周囲に配置された巻線と、
前記固定子ヨーク部と前記各歯部とで構成される前記固定子磁路を機械的に変更して該固定子磁路の磁気抵抗値を変更する磁気抵抗変更機構とを備え、
前記各歯部は、胴部と、該胴部の回転子側の端部における前記周方向の両側に側方突出状に延びた一対の側方突出部とを備え、
前記磁気抵抗変更機構は、前記固定子磁路の磁気抵抗が小さい第一状態と、該第一状態よりも相対的に前記固定子磁路の磁気抵抗が大きい第二状態との間で、前記固定子磁路を
機械的に変更するように構成され、
前記回転子は、隣接する前記永久磁石間の中間領域に、前記外周縁部の外周面から半径方向内側に向かってのびた切欠部が形成され、
前記第一状態において、
(主磁気回路の総磁気抵抗)<(短絡磁気回路の総磁気抵抗)≦(永久磁石間磁気回路の総磁気抵抗)
の関係式を満たすように構成されると共に、
前記第二状態において、
(短絡磁気回路C2の総磁気抵抗)<(主磁気回路C1の総磁気抵抗)、および
(短絡磁気回路C2の総磁気抵抗)≦(永久磁石間磁気回路C3の総磁気抵抗)
の両関係式を満たすように構成され、
前記主磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石のうちの一方の永久磁石の一方の磁極から、隣接する一対の前記歯部のうちの一方の歯部の前記固定子ヨーク部側を経て前記隣接する一対の歯部のうちの他方の歯部、および前記一対の永久磁石のうちの他方の永久磁石を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義され、
前記短絡磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石のうちの一方の永久磁石の一方の磁極から、前記歯部の胴部における前記回転子側の端部および前記側方突出部を除いた前記半径方向外側の部分を経由することなく、前記隣接する一対の永久磁石の他方の前記永久磁石を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義され、
前記永久磁石間磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石の一方の永久磁石の一方の磁極から、前記歯部の胴部における前記回転子側の端部および前記側方突出部を除いた前記半径方向外側の部分を経由することなく、前記隣接する一対の永久磁石の間の中間領域を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義される、回転電気機械。
【請求項2】
前記磁気抵抗変更機構は、前記歯部が前記回転軸の半径方向に分割された複数個の分割歯部を有し、これら複数個の分割歯部のうち少なくともいずれか1つの分割歯部が他の分割歯部に対して前記回転軸の周方向に相対移動自在な可動分割歯部を構成し、該可動分割歯部が、前記第一状態と前記第二状態との間で移動自在となされている、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項3】
前記回転子は、前記外周縁部に周方向に沿って複数の永久磁石嵌め込み用スリットが形成され、該スリットに前記永久磁石が挿入されている、請求項1又は2に記載の回転電気機械。
【請求項4】
前記各永久磁石における前記周方向の端部と前記切欠部との間に、前記永久磁石の半径方向外側に位置する前記回転子本体の外周縁部を構成する鉄心部分とその反対側に位置する鉄心部分とを連結する連結壁を有する、請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項5】
前記各永久磁石は、前記周方向に二分割され、互いに離間状態に配置された一対の分割永久磁石片からなり、前記一対の分割永久磁石片は、前記回転子本体の外周縁部にその外周面から前記半径方向内側に位置した状態で埋設状態に配置されると共に、
前記各分割永久磁石片の前記周方向の外側端部がそれぞれ前記切欠部に露出した状態となされている、請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項6】
前記各永久磁石の半径方向外側に配置された前記回転子本体の外周縁部が、前記一対の分割永久磁石片の間に延びた中央連結壁によって前記回転子本体に連結固定されている、請求項5に記載の回転電気機械。
【請求項7】
円柱状の回転子本体に複数の永久磁石が埋め込み状態に配置され、回転軸を中心に回転する回転子と、
前記回転子の半径方向の外側に、前記回転子本体の外周縁部に対向するように該外周縁部から間隙を介して配置された円筒状の固定子とを備え、
前記固定子は、
前記固定子の周方向に間隔を隔てて配置された複数の歯部を有し、
前記複数の歯部のそれぞれの歯部は、前記半径方向に複数個に分割され、少なくとも前記回転子本体の前記外周縁部に前記間隙を介して対向するように配置された第一歯部と、前記半径方向の最も外側に配置された第二歯部とを含む複数の分割歯部を有し、
前記固定子は、更に、前記第二歯部が固定された円筒状の固定子ヨーク部と、前記第一歯部の周囲に配置された巻線とを有し、
前記各歯部における前記第一歯部は、胴部と、該胴部の回転子側の端部における前記周方向の両側に側方突出状に延びた一対の側方突出部とを備え、
前記各歯部における前記複数の分割歯部のうちの少なくともいずれか1の分割歯部が、他の分割歯部に対して前記周方向に相対移動自在な可動分割歯部を構成し、
前記可動分割歯部は、前記各歯部における前記複数の分割歯部で形成される磁路の磁気抵抗が小さい第一位置と、該第一位置における前記磁気抵抗よりも相対的に磁気抵抗が大きい第二位置との間で相対移動自在となされ、
前記回転子は、隣接する前記永久磁石間の中間領域に、前記外周縁部の外周面から半径方向内側に向かってのびた切欠部が形成され、
前記可動分割歯部が前記第一位置に配置された状態において、
(主磁気回路の総磁気抵抗)<(短絡磁気回路の総磁気抵抗)≦(永久磁石間磁気回路の総磁気抵抗)
の関係式を満たすように構成されると共に、
前記可動分割歯部が前記第二位置に配置された状態において、
(短絡磁気回路C2の総磁気抵抗)<(主磁気回路C1の総磁気抵抗)、および
(短絡磁気回路C2の総磁気抵抗)≦(永久磁石間磁気回路C3の総磁気抵抗)
の両関係式を満たすように構成され、
前記主磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石のうちの一方の永久磁石の一方の磁極から、隣接する一対の前記歯部のうちの一方の歯部の前記固定子ヨーク部側を経て前記隣接する一対の歯部のうちの他方の歯部、および前記一対の永久磁石のうちの他方の永久磁石を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義され、
前記短絡磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石のうちの一方の永久磁石の一方の磁極から、前記第一歯部の胴部における前記回転子側の端部および前記側方突出部を除いた前記半径方向外側の部分を経由することなく、前記隣接する一対の永久磁石の他方の前記永久磁石を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義され、
前記永久磁石間磁気回路は、前記隣接する一対の永久磁石の一方の永久磁石の一方の磁極から、前記第一歯部の胴部における前記回転子側の端部および前記側方突出部を除いた前記半径方向外側の部分を経由することなく、前記隣接する一対の永久磁石の間の中間領域を経て、前記一方の永久磁石の他方の磁極に至る経路を主たる磁気経路とする磁気回路として定義される、回転電気機械。
【請求項8】
前記回転子は、隣接する前記永久磁石間の中間領域に、前記外周縁部の外周面から半径方向内側に向かってのびた切欠部が形成されている、請求項7に記載の回転電気機械。
【請求項9】
前記回転子は、前記外周縁部に周方向に沿って複数の永久磁石嵌め込み用スリットが形成され、該スリットに前記永久磁石が挿入されると共に、
隣接する一対の前記永久磁石間の中間領域に、前記外周縁部の外周面から半径方向内側に向かってのびた切欠部が形成されている、請求項7又は8に記載の回転電気機械。
【請求項10】
前記各永久磁石における前記周方向の端部と前記切欠部との間に、前記永久磁石の半径方向外側に位置する前記回転子本体の外周縁部を構成する鉄心部分とその反対側に位置する鉄心部分とを連結する連結壁を有する、請求項7ないし9のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項11】
前記各永久磁石は、前記周方向に二分割され、互いに離間状態に配置された一対の分割永久磁石片からなり、前記一対の分割永久磁石片は、前記回転子本体の外周縁部にその外周面から前記半径方向内側に位置した状態で埋設状態に配置されると共に、
前記各分割永久磁石片の前記周方向の外側端部がそれぞれ前記切欠部に露出した状態となされている、請求項7ないし9のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項12】
前記各永久磁石の半径方向外側に配置された前記回転子本体の外周縁部が、前記一対の分割永久磁石片の間に延びた中央連結壁によって前記回転子本体に連結固定されている、請求項11に記載の回転電気機械。
【請求項13】
前記各歯部は、前記半径方向に2分割されて、前記回転子本体の前記外周縁部に前記間隙を介して対向するように配置された第一歯部と、該第一歯部の前記半径方向外側に間隙を介して配置された第二歯部とを含み、
前記第二歯部が、前記第一歯部に対して前記周方向に相対移動自在となされている、請求項7ないし12のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項14】
前記第一位置は、前記複数の分割歯部が前記半径方向に整列してこれら分割歯部で構成される磁気回路の磁気抵抗が最小になる磁気抵抗最小位置として定義されると共に、
前記第二位置は、前記可動分割歯部が他の分割歯部に対して前記周方向に相対移動してこれら分割歯部で構成される磁気回路の磁気抵抗が最大になる磁気抵抗最大位置として定義され、
前記可動分割歯部が前記磁気抵抗最小位置と前記磁気抵抗最大位置との間の任意の位置で連続的または不連続的に相対移動可能となされている、請求項7ないし13のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項15】
前記回転子の前記外周縁部と前記歯部の前記第一歯部との間の磁気抵抗をRh、前記第一位置における前記第一歯部と前記第二歯部との間の磁気抵抗をRk1、前記第二位置における前記第一歯部と前記第二歯部との間の磁気抵抗をRk2、周方向に隣接する一対の第一歯部における隣接する前記側方突出部相互間の磁気抵抗をRj、前記隣接する永久磁石の間の中間領域の磁気抵抗をRxとそれぞれ定義した場合、
前記可動分割歯部が前記第一位置に配置された状態において、
(2Rh+2Rk1)<(2Rh+Rj)≦(Rx)
の関係式を満たすように構成されると共に、
前記可動分割歯部が前記第二位置に相対移動した状態において、
(2Rh+Rj)<(2Rh+2Rk2)、および
(2Rh+Rj)≦(Rx)
の両関係式が満たされる、請求項7ないし14のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項16】
前記永久磁石は、ネオジウム磁石である、請求項1ないし15のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械を備えた乗り物。
【請求項18】
請求項1ないし15のいずれか1つの請求項に記載の回転電気機械を備えた電気製品。」


3.当審の拒絶の理由
平成28年2月12日付の当審の拒絶の理由で以下の事項を通知した。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項1に「前記固定子ヨーク部と前記各歯部とで構成される前記固定子磁路を機械的に変更して該固定子磁路の磁気抵抗値を変更する磁気抵抗変更機構」、「前記磁気抵抗変更機構は、前記固定子磁路の磁気抵抗が小さい第一状態と、該第一状態よりも相対的に前記固定子磁路の磁気抵抗が大きい第二状態との間で、前記固定子磁路を機械的に変更するように構成」とあるが、機械的に変更とはどの様な変更を行うのか全く不明(固定子磁路を機械的に曲げること(形状変更)を意味するのか。明細書にこの様な開示はない。図5cの様なヨークと歯部の周方向への相対的移動しか開示がない。)である。
更に、請求項1に「永久磁石間磁気回路」とあるが、どの様な磁路であるのか構成を特定できず不明[審判請求書(3-1-2)記載の図のものでは永久磁石間磁気回路が所望の効果を奏さないのではないか。明細書には請求項3記載のものしか開示がない。]である。請求項8も同様である。
更に、請求項1末尾に「回転電気機械」とあり、発電機を含むこととなるが、発電機に、弱め界磁制御、高トルク低回転速度、低トルク高回転速度の状態が存在せず、どの様にして課題解決を図るのか不明である。他の請求項も同様である。
更に、請求項8に「前記固定子は、更に、前記第二歯部が固定された円筒状の固定子ヨーク部と、前記歯部の周囲に配置された巻線とを有し」とあるが、前記歯部とはどの歯部のことを意味するのか不明である。
更に、請求項9は請求項7を引用しているが、請求項8の誤記と考えられる。」


4.拒絶の理由に対する当審の判断
(1)請求項1に「前記固定子ヨーク部と前記各歯部とで構成される前記固定子磁路を機械的に変更して該固定子磁路の磁気抵抗値を変更する磁気抵抗変更機構」、「前記磁気抵抗変更機構は、前記固定子磁路の磁気抵抗が小さい第一状態と、該第一状態よりも相対的に前記固定子磁路の磁気抵抗が大きい第二状態との間で、前記固定子磁路を機械的に変更するように構成」とあるが、機械的に変更とは、固定子磁路に打撃等の外力を加え機械的に曲げること(形状変更)をも意味するから、どの様にして変更するのか明細書を参照しても構成を特定できず不明であり、しかもこの様な変更は明細書に何ら開示が無く不明(図5cの様なヨークと歯部の周方向への相対的移動しか開示がない。)である。
(2)請求項1末尾に「回転電気機械」とあり、発電機を含むこととなるが、発電機が、電動車両等の駆動源であって、弱め界磁、高トルク低回転速度、低トルク高回転速度の状態は存在せず、どの様にして課題解決を図る(【0001】、【0009】等参照。)のか何ら開示が無く不明である。他の請求項も同様である。
(3)したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-18の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-18の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-28 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-27 
出願番号 特願2012-227652(P2012-227652)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H02K)
P 1 8・ 537- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 祐介  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 回転電気機械  
代理人 特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所  

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