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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1322949 |
審判番号 | 不服2015-11178 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-15 |
確定日 | 2016-12-15 |
事件の表示 | 特願2014- 30438「電力供給制御装置、画像処理装置、電力供給制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 99205〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月15日(国内優先権主張 平成24年10月15日)に出願した特願2013-214902号の一部を平成26年2月20日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として平成27年6月15日に本件審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後、当審により、平成28年2月9日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月14日付けで手続補正がなされ、平成28年5月13日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年7月13日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成28年7月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年7月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成28年7月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、補正前の請求項2を補正後の請求項2とする補正事項を含み、その補正前後の請求項2の記載は次のとおりである(下線部は補正により変更された箇所を示す)。 [補正前の請求項2] 画像処理装置が操作を受け付ける前に、操作許可者を登録する登録手段と、 前記画像処理装置の節電状態を解除する解除手段と、 前記画像処理装置の操作者が前記登録された操作許可者であるかを区別する区別手段と、 前記区別手段に対して、前記解除手段が節電状態を解除する以前に、操作者を前記区別することが可能な状態にする状態制御手段と、 を含む画像処理装置。 [補正後の請求項2] 画像処理装置が操作を受け付ける前に、操作許可者を登録する登録手段と、 前記画像処理装置の節電状態を解除する解除手段と、 前記画像処理装置の操作者が前記登録された操作許可者であるかを区別する区別手段と、 前記区別手段に対して、前記解除手段が節電状態を解除する以前に、操作者を前記区別することが可能な状態にする状態制御手段と、を含み、 前記解除手段は、前記区別手段の区別結果に応じて節電状態を解除する画像処理装置。 2.補正の適否 上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは図面に記載した事項の範囲において、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「解除手段」を、「前記解除手段は、前記区別手段の区別結果に応じて節電状態を解除する」と限定することにより特許請求の範囲を限定的に減縮するものであり、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとした課題は同一であるといえるから、この補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合し、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。 そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 2-1.本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.補正の内容」の[補正後の請求項2]に記載したとおりのものである。 2-2.刊行物の記載事項 平成28年5月13日付けの当審による拒絶理由で引用した特開2010-135993号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。なお、下線は、特に注目した箇所を示すために当審で付したものである。 「【0027】 情報サーバ3は、ユーザの現在地などを特定し、ユーザが複合機1に近づいていると判断すると、当該ユーザが複合機1に到着する時間を考慮して、事前にウォーミングアップを行うよう、複合機1にウォーミングアップ要求を送信する機能等を備える。情報サーバ3は、図3に示すように、制御部310、記憶部320、通信部330などから構成される。 【0028】 制御部310は、記憶部320に記憶されるプログラムやアプリケーションを実行することにより、システムに登録されているユーザの認証や、当該各ユーザの待ち時間の算出処理などを行う。 【0029】 記憶部320は、大容量記憶装置などから構成され、制御部310によって実行されるプログラムを記憶する。このほか、システムを利用することの出来るユーザについての様々な情報を記憶するユーザ情報記憶部321、受信装置情報記憶部322として機能する。 【0030】 ユーザ情報記憶部321のデータ構成例を図4(A)に示す。ユーザ情報記憶部321は、ユーザを特定するユーザ識別情報、当該ユーザの顔写真データ(例えば、JPEGなどの画像データ)、身長(車椅子を利用している場合は、座高)、平均待ち時間(ユーザが、苛立つことなく待つことのできる時間)、利用可能複合機(利用権限の与えられている複合機)の識別番号、複合機の利用可能機能(当複合機において、当該ユーザの利用可能な機能)、などを対応付けて記憶する。ユーザ識別情報、顔写真データ、身長、利用可能複合機、複合機の利用可能機能、などは、システムを利用するユーザに対して予めシステム管理者などが登録する。一方、平均待ち時間は、初期値として所定の時間をシステム管理者などが登録した後、ユーザが複合機1を利用する毎に更新される。」 「【0037】 まず、複合機1の基本動作を図5を参照して説明する。カードリーダ150は、RFIDタグを持つユーザが所定の距離内にいると、RFIDタグから情報を受信する(即ち、カードリーダ150は受信部として機能する)。よって、制御部110は、RFIDタグから情報が受信されたか否かに応じて、ユーザが複合機1に到着したかどうかを判定する(ステップS101)。複合機1は、ユーザが到着した場合(ステップS101;Y)、当該ユーザが当該複合機1を利用する権限を有するか否かを判定する(ステップS102)。一方、ユーザが到着したと判断しない場合(ステップS101;N)、ステップS101を繰り返す。 【0038】 利用権限の判定処理(ステップS102)においては、制御部110が、通信部120を介して、カードリーダによって受信されたユーザ識別情報と、自複合機識別情報を指定して、情報サーバ3に利用権限判定要求を送信する(即ち、制御部110や通信部120が、ユーザ権限判定要求部として機能する)。そして、情報サーバ3の制御部310が、要求に応じて、ユーザの利用権限を判定する。即ち、ユーザ情報記憶部321に、送信されたユーザ識別情報に対応付けられて、送信された複合機識別情報が、「利用可能複合機の識別情報」として記憶されていれば、当該ユーザは当該複合機1の利用権限を有するものと判定し、記憶されていない場合は、権限がないものと判定する。そして、判定結果を複合機1へ返信する。 【0039】 制御部110は、権限を有さないとする結果が受信された場合(ステップS103;N)、当該結果を表示部140などに表示し、処理をステップS111に進める。一方、権限を有するとする結果が受信された場合(ステップS103;Y)、成りすまし防止のため、さらに、顔認証処理を実行する(ステップS104)。なお、顔認証処理等の実行のために、ユーザは複合機1に対して所定の位置(例えば、表示部140の前)に立って予め待機する。 【0040】 顔認証処理において、制御部110は、ユーザの識別情報に対応付けられた当該ユーザの顔写真データと、身長と、についての情報を情報サーバ3から取得する。制御部110は、駆動部180を制御して、ユーザの顔の位置に撮影部170を移動して、顔写真を撮影する。そして、当該撮影して生成された顔写真データと、認証結果とともに受信したユーザの顔写真データとを比較して、既知の顔認証手法を用いて、同一人物か否かを判定する。 【0041】 制御部110は、顔認証処理が失敗した場合(即ち、本人でないと判定した場合)(ステップS105;N)、顔認証が失敗した旨を表示部140などに表示して、後述のステップS111に処理を進める。一方、顔認証処理が成功した場合(即ち、本人であると判定した場合)(ステップS105;Y)、複合機1が現在画像形成可能なスタンバイモードでなければ、制御部110は、ウォーミングアップを開始するよう複合機1を制御する(ステップS106)。スタンバイモードであれば、ウォーミングアップは実行しない。 【0042】 次に、制御部110は、ユーザ情報記憶部321を参照して、認証されたユーザの利用可能機能を取得し、取得した結果に基づいて、例えば、「コピー」、「スキャナ」、「ファックス」、「印刷」、など、復号機の機能を選択できる操作画面を表示部140に表示する(ステップS107)。なお、ステップS107は、ステップS106に並行して実行してもよい。 【0043】 制御部110は、ウォーミングアップ終了後、ユーザの操作の入力があれば、当該操作入力に従って、所定の処理を行う(ステップS108)。即ち、ユーザがコピー機能を選択すれば、コピーを行うための処理を実行し、印刷機能を選択すれば、印刷を行うための処理を実行する。なお、ここでいう印刷処理とは、例えば、ユーザが印刷対象ファイルを指定して、端末からネットワーク5を介して、複合機1に印刷要求を行った場合に、ユーザの指定した印刷対象ファイルを印刷する処理である。」 以上の記載(特に、下線部)を参照すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。 [引用発明] 「制御部110は、ユーザが複合機1に到着した場合(ステップS101;Y)、当該ユーザが当該複合機1を利用する権限を有するか否かを判定し(ステップS102)、権限を有する場合(ステップS103;Y)、成りすまし防止のため、さらに、顔認証処理を実行し(ステップS104)、顔認証処理において、制御部110は、ユーザの識別情報に対応付けられた当該ユーザの顔写真データと身長についての情報を予め登録した情報サーバ3から取得し、駆動部180を制御して、ユーザの顔の位置に撮影部170を移動して、顔写真を撮影し、当該撮影して生成された顔写真データと、受信したユーザの顔写真データとを比較して、同一人物か否かを判定し、顔認証処理が成功した場合(ステップS105;Y)、複合機1が現在画像形成可能なスタンバイモードでなければ、制御部110は、ウォーミングアップを開始するよう複合機1を制御し(ステップS106)、ユーザ情報記憶部321を参照して、認証されたユーザの利用可能機能を取得し、取得した結果に基づいて、例えば、「コピー」、「スキャナ」、「ファックス」、「印刷」、など、複合機の機能を選択できる操作画面を表示部140に表示し(ステップS107)、ウォーミングアップ終了後、ユーザの操作の入力があれば、当該操作入力に従って、所定の処理を行う(ステップS108)複合機。」 2-3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「複合機」は、「画像処理装置」といえるから、本願補正発明と引用発明とは、「画像処理装置」である点で一致する。 引用発明における制御部110は、複合機1が現在画像形成可能なスタンバイモードでなければ、すなわち、低電力モードやスリープモードであれば、ステップS106で、ウォーミングアップを開始するよう複合機1を制御するから、本願補正発明の「画像処理装置の節電状態を解除する解除手段」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「画像処理装置の節電状態を解除する解除手段」を含む点で一致する。 引用発明における制御部110は、成りすまし防止のため、ステップS104で、ユーザの識別情報に対応付けられた当該ユーザの顔写真データについての情報を予め登録した情報サーバ3から取得し、駆動部180を制御して、ユーザの顔の位置に撮影部170を移動して、顔写真を撮影し、当該撮影して生成された顔写真データと、受信したユーザの顔写真データとを比較して、同一人物か否かを判定(顔認証処理を実行)するから、該制御部110、駆動部180、および撮影部170は、本願補正発明の文言を用いれば、「画像処理装置の操作者が登録された操作許可者であるかを区別する区別手段」といえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「画像処理装置の操作者が登録された操作許可者であるかを区別する区別手段」を含む点では一致する。 引用発明における制御部110は、ウォーミングアップを開始するよう複合機1を制御するステップS106以前に、ユーザの顔写真データと身長についての情報を情報サーバ3から取得し、駆動部180を制御して、ユーザの顔の位置に撮影部170を移動して、顔写真を撮影し、当該撮影して生成された顔写真データと、受信したユーザの顔写真データとを比較して、同一人物か否かを判定するものであって、撮影部170に対して、顔認証処理のための顔写真を撮影可能な状態にすることは明らかであるから、該制御部110は、本願補正発明の「前記区別手段に対して、前記解除手段が節電状態を解除する以前に、操作者を前記区別することが可能な状態にする状態制御手段」といえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記区別手段に対して、前記解除手段が節電状態を解除する以前に、操作者を前記区別することが可能な状態にする状態制御手段」を含む点で一致する。 引用発明において、制御部110は、ステップS104、S105、S106で、該制御部110、駆動部180、および撮影部170による顔認証処理が成功した場合、ウォーミングアップを開始するよう複合機1を制御するものであるから、このことは本願補正発明の「前記解除手段は、前記区別手段の区別結果に応じて節電状態を解除する」ことに相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記解除手段は、前記区別手段の区別結果に応じて節電状態を解除する」点で一致する。 よって、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 画像処理装置の節電状態を解除する解除手段と、 前記画像処理装置の操作者が登録された操作許可者であるかを区別する区別手段と、 前記区別手段に対して、前記解除手段が節電状態を解除する以前に、操作者を前記区別することが可能な状態にする状態制御手段と、を含み、 前記解除手段は、前記区別手段の区別結果に応じて節電状態を解除する画像処理装置。 (相違点) 本願補正発明では、「画像処理装置が操作を受け付ける前に、操作許可者を登録する登録手段」を「画像処理装置」が含むのに対し、引用発明では、「画像処理装置が操作を受け付ける前に、操作許可者を登録する登録手段」を「複合機」が含まず、ユーザの顔写真データと身長についての情報を情報サーバ3に予め登録する点。 2-4.判断 上記相違点について検討する。 ユーザを認証するためのユーザデータを予め登録する登録手段を備えた複合機は、例を挙げるまでもなく周知のものであり、また、刊行物1の複合機においてユーザの顔写真データを予め登録する登録手段を情報サーバ3ではなく複合機本体に備えることを妨げる理由もないから、引用発明において、ユーザを認証するためのユーザデータを予め登録する登録手段(本願発明でいう「電力供給対象が操作を受け付ける前に、操作許可者を登録する登録手段」)を複合機本体に備えることは当業者が容易に想到し得ることである。 本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願補正発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。 したがって、本願補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2-5.まとめ(独立特許要件) よって、本願補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび(補正却下の決定) したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 上述のとおり平成28年7月13日付けの手続補正は却下されるので、本願の請求項に係る発明は、平成28年4月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-5の記載により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 1.補正の内容」の[補正前の請求項2]に記載したとおりのものと認める。 2.刊行物の記載事項 刊行物1の記載事項は、上記「第2 2. 2-2.刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が上記「第2 2.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-10-11 |
結審通知日 | 2016-10-18 |
審決日 | 2016-10-31 |
出願番号 | 特願2014-30438(P2014-30438) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 緑川 隆、脇水 佳弘 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 千葉 輝久 |
発明の名称 | 電力供給制御装置、画像処理装置、電力供給制御プログラム |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |