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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1322950
審判番号 不服2015-13380  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-14 
確定日 2016-12-15 
事件の表示 特願2011- 77802「充電ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 1日出願公開、特開2012-213285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年3月31日の出願であって、平成26年8月26日付けの拒絶理由の通知に対し、平成26年11月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年7月14日に審判請求がなされたものである。
その後、当審において平成28年7月28日付けで拒絶理由の通知をしたところ、平成28年8月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成28年8月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 箱形の筐体と、前記筐体内に設けられて充電ケーブルの電源プラグが接続されるコンセントと、前記充電ケーブルの中間部に設けられる充電回路遮断装置と、前記筐体の前面の開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開放する開位置との間で回動自在な扉体と、前記筐体の内底面から前方に突出する突台部とを備え、前記筐体は、前記扉体と前記突台部との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成され、前記筐体の外面のうち何れか一面には、前記充電ケーブルを巻き取り保持する保持部が設けられることを特徴とする充電ボックス。」

第3 引用例

1.刊行物1
(1)当審において通知した拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-41779号公報(平成22年2月18日出願公開)(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
キャビネット筺体の内部に、充電接続ケーブルの先端に設けられた接続プラグが差し込まれる充電用コンセントと、充電接続ケーブルの接続プラグの近傍に設けられた漏電遮断リレー収納ボックスの重量を受けるボックス保持部とを配置したことを特徴とする電気自動車用充電キャビネット。
【請求項2】
ボックス保持部が漏電遮断リレー収納ボックスに形成されたフックを引っ掛ける構造のものであることを特徴とする請求項1記載の電気自動車用充電キャビネット。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
ボックス保持部に保持された漏電遮断リレー収納ボックスの表示部を視認できる窓孔を、キャビネット本体またはその扉に形成したことを特徴とする請求項1記載の電気自動車用充電キャビネット。」
(イ)「【0005】
・・・(中略)・・・人体を保護するためには充電接続ケーブルには漏電遮断機能を持たせることが必要である。このために充電接続ケーブルには、漏電遮断リレーやその他の機器が組み込まれた漏電遮断リレー収納ボックスが、接続プラグに近傍に設けられている。」
(ウ)「【0014】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1において、1は本発明の電気自動車用充電キャビネットのキャビネット筺体であり、キャビネット本体2と開閉可能な扉3とを備えている。」
(エ)「【0015】
キャビネット筺体1の内部上方には底面4を傾斜させたボックス5が設置されており、その内部には充電用の電源回路、避雷器(SPD)などが収納されているとともに、底面4には充電用コンセント6が配置されている。図1に示すように、この充電用コンセント
6に充電接続ケーブル7の先端に設けられた接続プラグ8を差し込んで充電が行われる。キャビネット本体2の下部前面には、充電接続ケーブル7を接続したままで扉3を閉じることができるように、弾性体を9配置しておくことが好ましい。」
(オ)「【0015】
・・・(中略)・・・充電接続ケーブル7はケーブル10の両端に接続プラグ8と自動車側の接続プラグ11とを備えるほか、接続プラグ8の近傍に漏電遮断リレー収納ボックス12を備えている。
【0016】
漏電遮断リレー収納ボックス12の内部には、漏電遮断リレーのほか、接続が完了したことが確認されてから充電を開始する充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどが収納されている。また、漏電検出リレー収納ボックスの表面には充電進行状況を示すインジケータが配置されており、漏電検出リレー収納ボックスの表示部として設けられている。このため漏電遮断リレー収納ボックス12はかなりの重量を持つこととなり、しかも接続プラグ8に近い部分に設けられているので、接続プラグ8を充電用コンセント6に差し込むと漏電遮断リレー収納ボックス12が接続プラグ8の下方にぶら下がった状態となる。
【0017】
そこで本発明ではキャビネット筺体1の内部に、漏電遮断リレー収納ボックス12の重量を受けるボックス保持部13を設けてある。この実施形態では、図2に示すように漏電遮断リレー収納ボックス12の上部側面にフック14が形成されており、ボックス保持部13はこのフック14を引っ掛けることができる構造のものである。・・・(中略)・・・このため、充電用コンセント6とボックス保持部13との距離を、接続プラグ8と漏電遮断リレー収納ボックス12との距離よりもやや短く設定しておけば、漏電遮断リレー収納ボックス12の重量をボックス保持部13で支え、コンセント接続部に荷重が作用することを防止することができる。」
(カ)「【0018】
図3に示すように、キャビネット筺体1の扉3には窓孔21が形成されている。この窓孔21は扉3を閉じた状態においてもボックス保持部13に保持された漏電遮断リレー収納ボックス12の表示部を視認できる位置に形成されている。・・・(中略)・・・このような構造としておけば、漏電遮断リレー収納ボックス12の表面に設けられた充電進行状況を示すインジケータの表示を扉3を閉じたままで外部から視認できるので便利である。なお窓孔21の位置はキャビネット本体2とすることもできる。」
(キ)「【0022】
上記した何れの実施形態においても、漏電遮断リレー収納ボックス12をボックス保持部13に保持させることによって荷重を支えることができるので、充電中にコンセント接続部に漏電遮断リレー収納ボックス12の重量が作用することがなく、コンセント接続部の耐久性が低下したり、充電が不安定になったりすることがない利点がある。」
(ク)「【図3】扉を閉じた状態を示す斜視図である。」
(ケ)図1及び3の記載から、キャビネット本体2は、箱形であること、及び扉3は、前記キャビネット本体2の開口を塞ぐ閉位置と該開口を開放する開位置とを取ることができ、該開位置を取っている時、その水平方向の一端が前記キャビネット本体2に支持されていることが看取できる。
さらに、前記扉3は開閉可能であるから(前記記載事項(ウ))、前記図1及び3の記載から看取される事項及び技術常識からみて、前記扉3は、前記キャビネット本体2に回動可能に支持されているといえる。
(コ)図1ないし3の記載から、ボックス5は、キャビネット本体2の内部上方に設置されていること、ボックス保持部13は、キャビネット本体2の内部下方に設置されていること、及び該ボックス保持部13に保持された漏電遮断リレー収納ボックス12は、扉3を閉じた状態において、前記キャビネット本体2と前記扉3との間の空間に収納されることが看取できる。
(2)前記記載からみて、刊行物1には次の技術的事項が記載されている。
(a)前記記載事項(ウ)、(エ)、(ケ)からみて、刊行物1には次の技術的事項が記載されている。
「キャビネット筺体は、箱形のキャビネット本体2と開閉可能な扉3とを備え、前記扉3は、前記キャビネット本体2に回動可能支持され、前記キャビネット本体2の開口を塞ぐ閉位置と該開口を開放する開位置とを取ることができる。」
(b)前記記載事項(エ)、(オ)、(コ)からみて、刊行物1には次の技術的事項が記載されている。
「キャビネット本体2の内部上方に、充電接続ケーブル7の先端に設けられた接続プラグ8を差し込んで充電が行われる充電用コンセント6が底面4に配置されているボックス5が設置され、前記キャビネット本体2の内部下方に、両端に接続プラグ8と自動車側の接続プラグ11とを備える前記充電接続ケーブル7が備える漏電遮断リレー収納ボックス12の重量を受けるボックス保持部13が設置され、前記漏電遮断リレー収納ボックス12を前記ボックス保持部13に保持させて前記キャビネット本体2と扉3との間の空間に収納するように構成されて、前記漏電遮断リレー収納ボックス12は、その内部に漏電遮断リレー、充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどが収納されるものである。」
(3)以上のことから、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「箱形のキャビネット本体2と、該キャビネット本体2の内部上方に設置され、充電接続ケーブル7の先端に設けられた接続プラグ8を差し込んで充電が行われる充電用コンセント6が底面4に配置されているボックス5と、前記キャビネット本体2に回動可能支持され、前記キャビネット本体2の開口を塞ぐ閉位置と該開口を開放する開位置とを取ることができる開閉可能な扉3と、前記キャビネット本体2の内部下方に設置され、両端に接続プラグ8と自動車側の接続プラグ11とを備える前記充電接続ケーブル7が備える漏電遮断リレー収納ボックス12の重量を受けるボックス保持部13と、を備え、
前記漏電遮断リレー収納ボックス12を前記ボックス保持部13に保持させて前記キャビネット本体2と扉3との間の空間に収納するように構成され、
前記漏電遮断リレー収納ボックス12は、その内部に漏電遮断リレー、充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどが収納されるものである、電気自動車用充電キャビネット。」

2.刊行物2
(1)当審において通知した拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-50125号公報(平成23年3月10日出願公開)(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(サ)「【0003】
一般に、電気自動車用充電装置には、先端に充電用コネクタを有する充電用ケーブルが備えられ、充電を行う際に、該電気自動車用充電装置から充電用コネクタを外して、電気自動車に設けたコネクタと接続して使用される。
【0004】
該充電用コネクタと充電用ケーブルを不使用時に収納しておく構造に関し、該電気自動車用充電装置の外側面に設けたコネクタ収納部とケーブル収納かごに保持させる構造(例えば、特許文献1)が開示されている。
【0005】
しかし、該電気自動車用充電装置の外側面にコネクタ収納部とケーブル収納かごを設ける構造では、充電用ケーブルの大きな重量が、該電気自動車用充電装置の片側面にかかり、重量バランスが悪いという問題があった。また、該電気自動車用充電装置本体に追加して前記収納用部品が必要となるため、該電気自動車用充電装置の組み付け作業が煩雑となる問題や、コスト高になる問題があった。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記問題を解決し、大きな重量を持つ充電用ケーブルを、簡易な構造により、重量バランスよく保持可能とした電気自動車用充電装置を提供することである。」
(シ)「【0017】
図3に示すように、該充電装置本体1は、電気自動車の充電時に該電源装置と電気自動車とを接続する充電用コネクタ2と充電用ケーブル3を備えている。また、その正面側に、非使用時に充電用コネクタ2を拘束する拘束手段4を備えている。また、該充電装置本体1には、高電圧受電設備等の電力供給源より引き込まれた電気を自動車に供給するため、内部に電源装置(図示しない)や各部を制御する制御部(図示しない)等が収納されている。」
(ス)「【0020】
・・・(中略)・・・また、ケーブル支持具7は、下部壁面取付け部材に取付けずに、直接、充電装置本体の底面または背面に取り付けてもよいし、箱本体に一体に形成してもよい。
【0021】
該ケーブル支持具7は、不使用時の充電用ケーブル3を巻き取って収納する機能を有する。該ケーブル支持具7は、該充電装置本体1の垂直下部中心付近で、床面に対して水平方向に延設されているため、充電用ケーブル3を該ケーブル支持具7に巻き取って収納することにより、大きな重量を持つ充電用ケーブルを重量バランスよく保持することができる。
・・・(中略)・・・
【0024】
該ケーブル支持具7の形状は、本実施形態のものに限定されず、例えば、図4?7に示すように、各種の形状を採用することができる。該ケーブル支持具7の形状を、図4では略コ状に形成し、図5では2本の腕状に形成し、図6および図7では円弧状に形成している。」
(2)以上の記載からみて、刊行物2には、次の技術が記載されている。
「高電圧受電設備等の電力供給源より引き込まれた電気を自動車に供給するため、充電装置本体1の内部に電源装置や各部を制御する制御部等が収納され、
前記充電装置本体1は、電気自動車の充電時に前記電源装置と電気自動車とを接続する充電用コネクタ2と充電用ケーブル3を備え、
前記充電装置本体の底面または背面に、不使用時の充電用ケーブル3を巻き取って収納する機能を有するケーブル支持具7を取り付けてなる、電気自動車用充電装置。」

第4 対比

(1)本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「キャビネット本体2」、「充電接続ケーブル7」、「接続プラグ8」、「充電用コンセント6」及び「扉3」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「筐体」、「充電ケーブル」、「電源プラグ」、「コンセント」及び「扉体」に相当する。
そうすると、引用発明の「箱形のキャビネット本体2」、「該キャビネット本体2の内部上方に設置され、充電接続ケーブル7の先端に設けられた接続プラグ8を差し込んで充電が行われる充電用コンセント6が底面4に配置されているボックス5」のコンセント、「前記キャビネット本体2に回動可能支持され、前記キャビネット本体2の開口を塞ぐ閉位置と該開口を開放する開位置とを取ることができる開閉可能な扉3」は、それぞれ、本願発明の「箱形の筐体」、「前記筐体内に設けられて充電ケーブルの電源プラグが接続されるコンセント」、「前記筐体の前面の開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開放する開位置との間で回動自在な扉体」に相当する。
引用発明の「漏電遮断リレー収納ボックス12」は、その内部に収納される漏電遮断リレー、充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどと合わせて、その構成及び機能からみて、本願発明の「充電回路遮断装置」に相当する。そして、引用発明において、前記漏電遮断リレー収納ボックス12を備える前記充電接続ケーブル7は、両端に接続プラグ8と自動車側の接続プラグ11とを備えるから、前記漏電遮断リレー収納ボックス12が前記充電接続ケーブル7の中間に設けられていることは明らかである。そうすると、引用発明の「両端に接続プラグ8と自動車側の接続プラグ11とを備える前記充電接続ケーブル7が備える漏電遮断リレー収納ボックス12」は、その内部に収納される漏電遮断リレー、充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどと合わせて、本願発明の「前記充電ケーブルの中間部に設けられる充電回路遮断装置」に相当する。
本願発明の「突台部」は、本願明細書及び図面の記載、特に明細書段落0026の記載からみて、前記充電回路遮断装置と当接することにより前記充電回路遮断装置が筐体内で後方に移動するのを規制するものである。一方、引用発明の「ボックス保持部13」は、前記漏電遮断リレー収納ボックス12を保持するものであるから、該漏電遮断リレー収納ボックス12の位置を規制していることは明らかである。
そうすると、引用発明の「ボックス保持部13」は、本願発明の「突台部」と、「充電回路遮断装置の位置を規制する部材」である点で一致する。
さらに、本願発明において、前記突台部は、「前記筐体の内底面から前方に突出」し、前記筐体は、「前記扉体と前記突台部との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成され」ているから、前記突台部が前記筐体内に設けられていることは明らかである。
してみれば、引用発明の「前記キャビネット本体2の内部下方に設置され、前記充電接続ケーブル7が備える漏電遮断リレー収納ボックス12の重量を受けるボックス保持部13と、を備え、前記漏電遮断リレー収納ボックス12を前記ボックス保持部13に保持させて前記キャビネット本体2と扉3との間の空間に収納するように構成され、前記漏電遮断リレー収納ボックス12は、その内部に漏電遮断リレー、充電制御回路、ノイズフィルター、タイマーなどが収納されるものである」ことと、本願発明の「前記筐体の内底面から前方に突出する突台部とを備え、前記筐体は、前記扉体と前記突台部との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成され」ることとは、「筐体内に設けられて、充電回路遮断装置の位置を規制する部材を備え、前記筐体は、扉体との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成され」ている点において一致している。
(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「箱形の筐体と、前記筐体内に設けられて充電ケーブルの電源プラグが接続されるコンセントと、前記筐体の前面の開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開放する開位置との間で回動自在な扉体と、前記筐体内に設けられて、前記充電回路遮断装置の位置を規制する部材とを備え、前記筐体は、前記扉体との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成される充電ボックス。」

【相違点1】
本願発明は、前記充電ボックスが前記充電ケーブルの中間部に設けられる充電回路遮断装置を備えるのに対し、引用発明は、前記筐体が前記扉体との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成されているものの、充電ボックス自体が前記充電回路遮断装置を備えてはいない点。
【相違点2】
本願発明は、筐体内に設けられて、充電回路遮断装置の位置を規制する部材が「前記筐体の内底面から前方に突出する突台部」であり、前記筐体は、「前記扉体と前記突台部との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成され」るのに対し、引用発明は、筐体内に設けられて、充電回路遮断装置の位置を規制する部材が前記筐体の内部下方に設置されるボックス保持部13であり、前記筐体は、扉体との間の空間に前記充電回路遮断装置を収納するように構成されるものの、該空間が前記扉と前記ボックス保持部との間の空間ではない点。
【相違点3】
本願発明は、前記筐体の外面のうち何れか一面には、前記充電ケーブルを巻き取り保持する保持部が設けられるのに対し、引用発明は、該保持部が設けられていない点。

第5 当審の判断

前記相違点について検討する。
刊行物2をみると、刊行物2に記載された技術の「充電用ケーブル3」及び「ケーブル支持具7」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本願発明の「充電ケーブル」及び「保持部」に相当する。
そして、刊行物2の記載、特に前記記載事項(ス)、図1及び2の記載並びに技術常識からみて、刊行物2に記載された技術の「充電装置本体1」が、本願発明の「筐体」に相当する部材を備え、当該部材の底面又は背面に、前記ケーブル支持具7が取り付けられていること、及び前記ケーブル支持具7は、前記充電用ケーブル3を巻き取って収納するにあたり、該充電用ケーブル3を保持していることは明らかである。
そうすると、刊行物2に記載された技術は、電気自動車の充電のための装置自体が充電ケーブルを備えるものであって、前記相違点1及び3について、「筐体の外面のうち何れか一面には、前記充電ケーブルを巻き取り保持する保持部が設けられる」点で一致する。
引用発明と刊行物2に記載された技術とは、電気自動車の充電のための装置である点で同一の技術分野に属するものである。そして、電気自動車の充電のための装置自体が充電ケーブルを備えることは周知であり(例えば刊行物2参照)、さらに刊行物2に記載された技術は、不使用時の充電ケーブルを簡易な構造により保持可能とするものであるから、刊行物2に記載された技術を引用発明に適用することは、当業者にとって容易である。
してみれば、引用発明において、前記充電ボックス自体が充電ケーブルを備えるとともに、筐体の外面のうち何れか一面に前記充電ケーブルを巻き取り保持する保持部が設けるようにすることは、刊行物2に記載された技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、引用発明は、その中間部に充電回路遮断装置が設けられる充電ケーブルと組み合せて使用されることを前提としているから、引用発明において充電ケーブルを備えるにあたり、該充電ケーブルをその中間部に前記充電回路遮断装置が設けられたものとすることは、当業者が当然に考慮する事項であり、結果として、前記充電ボックス自体が該充電回路遮断装置を備えることとなる。
したがって、引用発明において、相違点1及び3に係る本願発明の特定事項を備えるようにすることは、刊行物2に記載された技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
また、本願発明の「突台部」と引用発明の「ボックス保持部」は、前記のとおり、充電回路遮断装置の位置を規制する点で機能を同じくするものであって、それにより前記扉体が閉位置にある時に前記充電回路遮断装置の表示灯を前記扉体に設けられた窓を介して外部に臨ませることができるという同一の効果を奏するものである。機械装置の分野において、一の部材の位置を規制する他の部材をどこに設けるかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項であり、その構成も、前記一の部材の位置と前記他の部材が設けられる位置の関係に応じて、当業者が適宜定め得る事項である。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-17 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2011-77802(P2011-77802)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 永田 和彦
久保 竜一
発明の名称 充電ボックス  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 仲石 晴樹  

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