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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1323068
審判番号 不服2015-22144  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-15 
確定日 2016-12-22 
事件の表示 特願2011- 93545「診療データ入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-226552〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年4月19日の出願であって,平成26年4月16日に手続補正がなされ,同年12月8日付けで拒絶理由通知がなされ,平成27年2月13日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,同年5月27日付けでさらに最後の拒絶理由通知がなされ,同年6月15日に意見書の提出とともに手続補正なされたが,同年10月2日付けで当該補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成27年12月15日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年12月15日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成27年12月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,補正前の平成27年2月13日付け手続補正による特許請求の範囲が,
<本件補正前の特許請求の範囲>
「【請求項1】
診療内容表示欄において,診療行為の名称を表示し,カレンダー欄において,所定の期間に渡る日付を表示し,指示入力に応じて前記診療行為を実施する前記日付に対応させて所定の印を表示するようにした診療データ入力装置であって,
前記所定の印として,医師による診療行為の実施の指示と,看護スタッフによる指示受けと,診療行為の実施済みとをそれぞれ示す印を表示するものであり,表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合,所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,その指定された最初の日から前記設定された期日までのすべての日に一括して当該診療行為を指示入力し,前記カレンダー欄の前記入力対象の診療行為の表示欄において前記指示を示す印を表示可能であり,前記入力対象の診療行為の期日が設定された場合,前記カレンダー欄にその期日にあわせて線表示可能であることを特徴とする診療データ入力装置。
【請求項2】
使用者の属性に対応させて,前記カレンダー欄において表示する期間の長さを変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の診療データ入力装置。
【請求項3】
前記使用者の属性として,医師属性と看護スタッフ属性とを少なくとも備えることを特徴とする請求項2に記載の診療データ入力装置。」
から,
<本件補正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】
診療内容表示欄において,診療行為の名称を表示し,カレンダー欄において,所定の期間に渡る日付を表示し,指示入力に応じて前記診療行為を実施する前記日付に対応させて所定の印を表示するようにした診療データ入力装置であって,
前記所定の印として,医師による診療行為の実施の指示と,看護スタッフによる指示受けと,診療行為の実施済みとをそれぞれ示す印を表示するものであり,表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合,所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,その指定された最初の日から前記設定された期日までのすべての日に一括して当該診療行為を指示入力し,前記カレンダー欄の前記入力対象の診療行為の表示欄において前記指示を示す印を表示可能であり,期日が設定された場合,前記カレンダー欄にその期日にあわせて線表示可能であることを特徴とする診療データ入力装置。
【請求項2】
使用者の属性に対応させて,前記カレンダー欄において表示する期間の長さを変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の診療データ入力装置。
【請求項3】
前記使用者の属性として,医師属性と看護スタッフ属性とを少なくとも備えることを特徴とする請求項2に記載の診療データ入力装置。」(なお,下線は補正箇所を示すものとして出願人が付与したものである。)
へと補正された。

2.新規事項について
本件補正後の請求項1は,上記平成27年5月27日付けの最後の拒絶理由通知において,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えるものであると指摘された「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」との事項を依然として含むものであるので,当該事項を含む本件補正が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるかについて検討する。
(1)当初明細書等の記載
当初明細書等には以下の記載がある。
ア.「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,入院患者の場合,医師が治療計画に沿って投薬や点滴,食事等に係る指示を出すと,それを看護士らの看護スタッフが受けて実際に患者に薬を服用させたり,点滴をしたり,食事を提供する。また,その実施された医療行為に基づいて医事(医療事務)職員が診療費用を算定し,請求業務を行っていた。従来は,医師から看護スタッフへの指示は指示簿を介して行われ,実施された医療行為は看護日誌に記録されていた。これらは従来,紙書面により行われていたものをコンピュータ上のシステムでそれぞれの業務として実現されている。具体的に指示簿は,実施すべき診療内容を医師が指示入力し,その内容を看護師が指示受け/実施入力を行う業務であり,看護日誌は看護実践の一連の過程を記録する業務である。また,この外に温度板と呼ばれるものがあり,患者の体温や血圧等のバイタルデータをグラフ表示したり,検査/食事/処方等の看護記録を表示するための業務もある。そして,医師は,特に入院患者の診療行為を入力する場合,一週間単位に入力することが多いが,これを簡単に入力できる装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,所定の期間に渡る日付を表示し,指示入力に応じて診療行為を実施する前記日付に所定の印を表示するようにした診療データ入力装置であって,前記所定の印として,医師による診療行為の指示と,看護スタッフによる指示受けと,診療行為の実施済みとをそれぞれ示す印を表示するものであり,予め期日を設定して登録しておき,診療行為の入力に際して所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,指定された最初の日から前記登録された期日まで連続して当該診療行為を登録することで,上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の診療データ入力装置によれば,設定し登録した期日までの期間に渡って簡単に一括して診療行為を入力できるようになる。」
イ.「【0012】
図2は実施形態の診療データ入力画面20の表示例である。左側が診療内容表示欄であり,右側がカレンダー表示欄である。診療内容表示欄には,医師が治療計画に沿って入力した診療行為の名称やその量,回数等が表示される。例えば,処方や食事に関する内容である。カレンダー表示欄には,所定の期間の日付が表示され,診療内容表示欄に表示された診療行為を実施する日付に所定の印が付けられて表示されるものである。
【0013】
図示の例は1ケ月分,即ち1日から31日までの日付が表示されて,当月1ケ月の診療実績および予定が一覧できるようになっている。この1ケ月のカレンダー表示を基本とするが,本実施形態では,任意の期間を表示できるようにしている。例えば,医師が診療行為を指示入力する場合,1週間表示や10日間表示,あるいは2週間表示に切り替えることができる。その表示例を図3に示す。これは10日間表示の例である。このようにすることで,患者の容態/病態に応じて1?2週間のスパンで治療計画を立て易くなり,それに沿って細かな指示,即ち診療行為を入力できるようになる。診療行為の入力の方法は,先ず,診療行為を選択して診療内容表示欄にその名称を表示させ,次に,カレンダー表示欄の上でその診療行為を実施すべき日をマウスでクリックする。これに応じてシステム(主制御部11)は,その診療行為が指示入力されたことを示す「○」印を当該欄に表示する。尚,ここで診療行為を入力できるのは基本的にはログインIDが医師として登録された者だけである。」
ウ.「【0019】
ところで,医師が入院患者に薬剤を処方するとき,1週間単位で処方指示することが多い。また,院内の薬局が特定の曜日に締日,あるいは休日を設けている場合,その日を期日末としてその日まで一括して(連続して)処方指示するようなこともある。そこで,本実施形態では,特定の曜日あるいは日を予め期日設定しておき,所定の入力操作1回に応じて,指示された日から設定した期日までの全日に一括してその診療行為を指示入力することができるようにしている。これを期日指定入力と呼んでいる。具体的には,毎週火曜日を期日として設定しておき,診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までのすべての日にその診療行為を指示入力するのである。この結果,その日から火曜日まで連続して「○」印が表示される。
また,システムは,期日が設定されているときはカレンダー表示欄のその期日に合せて点線を表示する。図中に符号21で示す。従って,使用者(医師)は容易にそれとわかるものである。また,この点線は少なくとも直近の期日に合せて表示すればよい。例えば,火曜日が期日ならば次に到来する火曜日に点線を表示すればよい。あるいは,毎週火曜日に表示するようにしてもよいし,点線でなくてもよい。要は期日がいつに設定されているか使用者に分かればよいものである。」
エ.【図2】


オ.【図3】


(2)当審の判断
(2-1)本願は,上記アに記載されているように,「医師は,特に入院患者の診療行為を入力する場合,一週間単位に入力することが多いが,これを簡単に入力できる装置が求められていた。」との課題に対し,「予め期日を設定して登録しておき,診療行為の入力に際して所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,指定された最初の日から前記登録された期日まで連続して当該診療行為を登録することで,上記課題を解決するものである。」との解決手段により,「本発明の診療データ入力装置によれば,設定し登録した期日までの期間に渡って簡単に一括して診療行為を入力できるようになる。」との効果を奏するものである。
そして,本件補正後の請求項1における「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合,所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,その指定された最初の日から前記設定された期日までのすべての日に一括して当該診療行為を指示入力し」との事項は,上記の課題を解決するための手段に対応するものである。
ここで,上記「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」とは,入力対象の診療行為を,最初の日から設定された期日までのすべての日に一括して入力するための条件として,予め入力対象の診療行為についての期日が設定される必要があるということであり,言い換えれば診療行為毎に期日を設定するものであるということである。(なお,この点については,平成27年6月15日付け意見書における「3.(1)」の「つまり,この記載は,図中の符号21で示される期日を示す点線に対応するものではありません。この期日指定入力を行なう際には,表示されている複数の診療行為の名称全てについて行なうものではなく,通常は診療行為の種類を特定したうえで,その期日を入力することにより,特定された診療行為に対してのみ,その診療行為を行なう日付を連続入力するものであります。」との主張,及び,平成27年12月15日付け審判請求書における「4.(a)」の「つまり,この記載は,図中の符号21で示される期日を示す点線に対応するものではありません。この期日指定入力を行なう際には,表示されている複数の診療行為の名称全てについて行なうものではなく,通常は診療行為の種類を特定したうえで,その期日を入力することにより,特定された診療行為に対してのみ,その診療行為を行なう日付を連続入力するものであります。」との主張からも明らかである。)
そこで,上記「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」,つまり診療行為毎に期日を設定することが,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かを検討する。

(2-2)上記アの記載からは,「予め期日を設定して登録」しておくことは記載されているが,診療行為毎に期日を設定するものであることについては一切記載も示唆もない。

(2-3)上記ウで示した第【0019】段落には期日に関して,「ところで,医師が入院患者に薬剤を処方するとき,1週間単位で処方指示することが多い。また,院内の薬局が特定の曜日に締日,あるいは休日を設けている場合,その日を期日末としてその日まで一括して(連続して)処方指示するようなこともある。そこで,本実施形態では,特定の曜日あるいは日を予め期日設定しておき,所定の入力操作1回に応じて,指示された日から設定した期日までの全日に一括してその診療行為を指示入力することができるようにしている。これを期日指定入力と呼んでいる。」と記載されており,期日として予め特定の曜日あるいは日を設定することが記載されているが,診療行為毎に期日を設定することは記載されていないし示唆もなく,また,上記「院内の薬局が特定の曜日に締日,あるいは休日を設けている場合,その日を期日末としてその日まで一括して(連続して)処方指示するようなこともある。」との記載では,薬局の特定の曜日に締日や休日を設けている場合にその日を期日とすることが記載されており,この場合は各薬剤の処方,つまり各診療行為について共通の期日となると考えるのが普通である。
また,上記ウで示した第【0019】段落には,「具体的には,毎週火曜日を期日として設定しておき,診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までのすべての日にその診療行為を指示入力するのである。この結果,その日から火曜日まで連続して「○」印が表示される。」と記載されているが,ここでは「毎週火曜日を期日として設定しておき」と記載されるのみであって,診療行為を選択し,診療行為毎に期日を設定することは記載も示唆もないし,また,期日が設定された状態において,「診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までのすべての日にその診療行為を指示入力するのである。」としているのであるから,ここでの期日は選択可能な診療行為についての共通の期限と考えるのが普通である。
さらに,上記ウで示した第【0019】段落には,「また,システムは,期日が設定されているときはカレンダー表示欄のその期日に合せて点線を表示する。図中に符号21で示す。従って,使用者(医師)は容易にそれとわかるものである。また,この点線は少なくとも直近の期日に合せて表示すればよい。例えば,火曜日が期日ならば次に到来する火曜日に点線を表示すればよい。あるいは,毎週火曜日に表示するようにしてもよいし,点線でなくてもよい。要は期日がいつに設定されているか使用者に分かればよいものである。」と記載されており,期日が設定されているときにはカレンダー表示欄のその期日に合わせて点線を表示することが記載され,具体的には上記エで示す【図2】,及びオで示す【図3】における符号21で示される点線が表示されるものである。そして,図中の符号21で示される点線は,表示されている診療行為である薬剤の処方指示と食事の指示の全てに跨がった直線となっていることから,期日は全ての診療行為に共通して設定されていると考えるのが普通である。
以上のことから,上記「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」,つまり診療行為毎に期日を設定することは,当初明細書等には記載も示唆もされておらず当業者にとって自明であるといえる根拠もない。

(2-4)したがって,本件補正後の請求項1に記載された「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」との事項は,当初明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,本件補正は新規事項を追加する補正である。

(3)平成27年12月15日付け審判請求書における請求人の主張について
(3-1)請求人は,「4.特許法第17条の2第3項の規定違反について
(a)本願明細書の段落「0019」には,「そこで,本実施形態では,特定の曜日あるいは日を予め期日設定しておき,所定の入力操作1回に応じて,指示された日から設定した期日までの全日に一括してその診療行為を指示入力することができるようにしている。」と記載されており,この記載は,いわゆる期日指定入力の機能を開示するものであります。
つまり,この記載は,図中の符号21で示される期日を示す点線に対応するものではありません。この期日指定入力を行なう際には,表示されている複数の診療行為の名称全てについて行なうものではなく,通常は診療行為の種類を特定したうえで,その期日を入力することにより,特定された診療行為に対してのみ,その診療行為を行なう日付を連続入力するものであります。
このことは,本願明細書の同段落「0019」の「具体的には,毎週火曜日を期日として設定しておき,診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までのすべての日にその診療行為を指示入力するのである。この結果,その日から火曜日まで連続して「○」印が表示される。」という記載からも明らかであります。
従いまして,本願請求項1の「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」という記載は,本願の出願当初の明細書の記載に基づいて自明なものであります。」(なお,下線は当審で付与したものである。)と主張している。
しかしながら,上記ウで示した第【0019】段落における期日指定入力における期日と,同段落に記載されている図中の符号21で示される期日を示す点線は,同じ段落に続けて説明されていることから,これらは対応するものと考えるのが普通である。
また,上記ウで示した第【0019】段落における「具体的には,毎週火曜日を期日として設定しておき,診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までのすべての日にその診療行為を指示入力するのである。この結果,その日から火曜日まで連続して「○」印が表示される。」からは,上記(2)で示したように診療行為毎に期日を設定することは記載も示唆もされておらず,当業者が自明であるといえないから,当該主張は採用できない。

(3-2)請求人は,「ここで,平成27年10月6日付け(発送日)の補正の却下の決定において審査官殿がご指摘されている本願段落「0019」の箇所に記載されているような,医師が入院患者に薬剤を処方する際に,期日指定入力が行われる場合においては,処方する全ての薬剤に対して同一の日付である期日が設定される場合も想定され得ると考えます。しかしながら,この記載からみても,期日を必ずしも全ての診療行為に対して1の特定の曜日または日付を設定するものと解する必要は無いものであると考えます。以下に,そのことを推認する根拠について説明いたします。
まず,同段落「0019」に,期日指定入力の例として,「具体的には,毎週火曜日を期日として設定しておき,診療行為を選んで所定の入力操作,例えば,シフトキーを押しながら所望の日付をクリックすると,その日付から次の火曜日までの全ての日にその診療行為を指示入力するのである。この結果,火曜日まで連続して「○」印が表示される」と記載されております。この記載は,その期日指定入力(期日までの全ての日における対象の診療行為の指示入力)を行う際に,入力対象の診療行為を選んでいる旨の記載であり,この記載から,入力前に表示されている全ての診療行為のうち,ユーザによって選択された特定の診療行為に対する入力が行われることは明らかであります。例えば,本願図面の図2において,連続して表示された「○」印が直接的に記載されてはいないものの,同図において,例えば「メジコン散10%」の処方行為が22年7月16日まで連続して行われることは,その印によって明らかであり,このような表示が,いわゆる期日指定入力が行われた際の表示に該当し得ることは自明であると考えます。少なくとも,この処方行為の期日は他の処方行為の期日とは異なっており,この処方行為の期日指定入力が行われる際に,他の処方行為の期日が同時に入力されない仕様であることは,当業者にとって自明であると考えます。
さらに,本願明細書の段落「0013」の後段において,「診療行為の入力の方法は,先ず,診療行為を選択して診療内容表示欄にその名称を表示させ,次に,カレンダー表示欄の上でその診療行為を実施すべき日をマウスでクリックする。これに応じてシステム(種制御部11)は,その診療行為が指示入力されたことを示す「○」印」を当該欄に表示する。」と記載されております。この記載からも,診療行為を実施すべき日は,通常はその診療行為ごとにおいて1つずつ医師が定めるものであり,複数の診療行為をまとめて選択することを意図するものではないことは,当業者にとって自明であると考えます。」と主張している。
しかしながら,上記(2)で説明したように,上記ウで示した第【0019】段落の記載からは,診療行為毎に期日を設定することは記載も示唆もされておらず,当業者が自明であるといえないから,当該主張は採用できない。
また,【図2】における「メジコン散10%」の処方行為が22年7月16日まで連続して行われることについて,同図では符号21で示される点線の期日が7月20日であり(図中「Do ?7/20」との記載もある。),期日指定入力が行われるとすれば7月20日まで一括で入力されるところであるが,「メジコン散10%」の処方行為については22年7月16日までとなっている。
しかしながら,そもそも「メジコン散10%」が期日指定入力により入力されたものであるとの記載はなく,通常どおり第【0013】段落の手順で,まず診療行為として「メジコン散10%」を選択して診療内容表示欄にその名称を表示させ,次に,カレンダー表示欄の上でその診療行為を実施すべき日をマウスでクリックすることにより入力されたものであるともいえることから,請求人の【図2】に基づく「メジコン散10%」の処方行為の期日が他の処方行為の期日とは異なっているとの主張は根拠のないものであり,採用することはできない。

3.むすび
以上のとおり,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願について
上記のとおり,本件補正は却下されたので,本願の特許請求の範囲は,平成27年2月13日付け手続補正による特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。なお,下線は補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。
「【請求項1】
診療内容表示欄において,診療行為の名称を表示し,カレンダー欄において,所定の期間に渡る日付を表示し,指示入力に応じて前記診療行為を実施する前記日付に対応させて所定の印を表示するようにした診療データ入力装置であって,
前記所定の印として,医師による診療行為の実施の指示と,看護スタッフによる指示受けと,診療行為の実施済みとをそれぞれ示す印を表示するものであり,表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合,所定の入力操作により最初の日が指定されたことに応じて,その指定された最初の日から前記設定された期日までのすべての日に一括して当該診療行為を指示入力し,前記カレンダー欄の前記入力対象の診療行為の表示欄において前記指示を示す印を表示可能であり,前記入力対象の診療行為の期日が設定された場合,前記カレンダー欄にその期日にあわせて線表示可能であることを特徴とする診療データ入力装置。
【請求項2】
使用者の属性に対応させて,前記カレンダー欄において表示する期間の長さを変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の診療データ入力装置。
【請求項3】
前記使用者の属性として,医師属性と看護スタッフ属性とを少なくとも備えることを特徴とする請求項2に記載の診療データ入力装置。」

第4 原審の拒絶理由
原審の拒絶査定の理由である,平成27年5月27日付けの最後の拒絶理由通知に記載の理由は,次のとおりである。
「1.(新規事項) 平成27年 2月13日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規事項)について
・請求項 1-3
上記手続補正による請求項1の補正は,補正前の請求項2における「予め期日を設定しておき,」という事項を「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合,」と変更する補正を含む。
補正後の上記記載は,診療内容表示欄に表示された診療行為のうち入力対象とされた特定の診療行為それぞれに対して「期日」を設定することと解されるが,発明の詳細な説明には,表示されている複数の診療行為全体について期日が設定されることが記載されるのみである。(図中に符号21で示される期日を示す点線は,診療内容表示欄に表示された診療行為の名称全てに渡って1つの期日を示している。)また,表示されている複数の診療行為のうちの特定の診療行為(入力対象の診療行為)について期日を設定することの記載もない。
上記補正はまた,補正前の「前記期日が設定されている場合,その期日が使用者に識別可能に表示する」という事項を,「前記入力対象の診療行為の期日が設定された場合,前記カレンダー欄にその期日にあわせて線表示可能である」という記載に変更する補正を含む。
補正後の上記記載は,期日が設定された入力対象の診療行為のカレンダー欄に対して期日であることを「線」という表現で示すことを述べたものと理解されるが,発明の詳細な説明に記載されているのは,表示されている複数の診療行為全体に渡り期日を示す点線が表示されることのみである。
したがって,上記補正は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えるものである。」

第5 当審の判断
本願の請求項1における「表示されている複数の診療行為のうち,入力対象の診療行為の期日が設定された場合」との補正については,上記「第2 2.」において示したように,当初明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
また,本願の請求項1における「前記入力対象の診療行為の期日が設定された場合,前記カレンダー欄にその期日にあわせて線表示可能である」との補正についても,「前記入力対象の診療行為の期日が設定された場合」との事項を含むことから,上記「第2 2.」において示した判断と同様の理由により,当初明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,平成27年2月13日付けでした補正は,当初明細書等の範囲内においてしたものではないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおり,本願は,平成27年2月13日付けでした補正が,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-24 
結審通知日 2016-10-25 
審決日 2016-11-07 
出願番号 特願2011-93545(P2011-93545)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 金子 幸一
石川 正二
発明の名称 診療データ入力装置  
代理人 一色国際特許業務法人  

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