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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1323119 |
審判番号 | 不服2015-4670 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-10 |
確定日 | 2016-12-27 |
事件の表示 | 特願2012-548442「巻取りスピンドル」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月21日国際公開、WO2011/086142、平成25年 5月16日国内公表、特表2013-517190〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年1月13日(パリ条約による優先権主張2010年1月14日,ドイツ)の出願であって,平成26年9月12日付けの拒絶理由の通知に対して同年11月26日に手続補正書が提出され,同年12月25日付けで拒絶の査定がなされ,これに対し,平成27年3月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 当審の判断 1 補正内容 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成26年11月26日付けで補正された特許請求の範囲における,【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。 「【請求項1】 巻取り機に用いられる巻取りスピンドルであって,少なくとも1つの巻管(24)を収容するための外側の周壁ブシュ(1)と,クランプ装置(6)とを有していて,該クランプ装置(6)が,周壁ブシュ(1)の下側で,駆動可能な中空スピンドル(2)の周面において同心的に配置されており,クランプ装置(6)が,複数のクランプ体(8)を有しており,該クランプ体(8)が,周壁ブシュ(1)の開口(7)内に案内されていて,クランプ体(8)が,軸方向に摺動可能な少なくとも1つの環状ピストン(12)によって,巻管(24)を緊締または緊締解除するために半径方向に可動であり,環状ピストン(12)が,周壁ブシュ(1)と,中空スピンドル(2)との間に形成された環状室(5)内に配置されていて,複数のばね(18)によって緊締位置に保持されている形式のものにおいて, ばね(18)が,それぞれ環状ピストン(12)の周方向に整列された,扁平な複数の曲折区分(25)を有しており,該曲折区分(25)のばね線材(26)の厚さによって,実質的に環状室(5)内の半径方向のばねの組込みスペースが規定されていることを特徴とする,巻取り機に用いられる巻取りスピンドル。」 2 刊行物に記載された事項 (1)刊行物1 平成26年9月12日付け拒絶の理由に引用し,本願の優先日前である平成17年5月12日に頒布された特表2005-512923号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。) ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 糸のための巻取り機において複数の巻管(10)を緊締するための巻取りスピンドルであって,回転可能な内管(3)が設けられており,該内管(3)がボス(6)により,内管(3)に対して同心的に配置された駆動軸(5)に相対回動不能に結合されていて,該駆動軸(5)を支承するための保持体(7)が設けられており,内管(3)を,間隔を置いて包囲する外管(1)が設けられており,内管(3)と外管(1)とが相対回動不能に互いに結合されていて,かつ内管(3)と外管(1)との間に配置されたクランプ装置(2)が設けられており,該クランプ装置(2)が,複数の,外管(1)の開口(9)を通して走出可能なクランプエレメント(4)を,巻管(10)を緊締するために有している形式のものにおいて,内管(3)と外管(1)との間に,複数の,互いに間隔を置いて位置する支持手段(12)が配置されており,該支持手段(12)が,半径方向で作用する緊締力を,内管(3)と外管(1)との間に生ぜしめることを特徴とする,高められた固有振動数を有する巻取りスピンドル。」 イ 「【0025】 内管3の周囲には,間隔を置いて,中空円筒状の外管1が配置されており,外管1は実質的に内管3の全長にわたって延在している。内管3と外管1との間に形成されたリング室26内に,クランプ装置2が配置されている。クランプ装置2は複数の緊締装置13から成っており,緊締装置13は複数の,半径方向で調節可能なクランプエレメント4を有している。このために,クランプエレメント4は外管1の開口9を通して半径方向外方に突出し,それにより,外管の周囲に被せ嵌められた巻管10を緊締する。この場合,緊締装置13は例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19607916号明細書から公知であるように形成されていることができる。つまり,緊締装置13において巻取りスピンドルの自由な端面に,クランプエレメント4が,内管3(原文では「内管1」と記載されているが,当審で誤記と認めて上記のとおり認定した。)に沿って軸方向で可動なピストン16のウェッジ面18を介して支持される。ピストン16は単数または複数のばね17を介して,内管3に固く結合されたストッパに支持される。図1に示された位置で,ピストン16はばね17によりクランプ位置に保持されている。クランプエレメント4は外管1から突出している。巻管10を緩解するために,ピストン16はばね17に対向して位置する面で圧力媒体,有利には圧縮空気により負荷されるので,ピストン16はばね17に抗してストッパ22の方向で摺動させられる。これにより,ウェッジ面18が摺動するので,クランプエレメント4は半径方向内方に運動することができる。封止のために,ピストン16は圧力負荷される面にシール19を有しており,シール19はその都度,ピストン16と内管3との間の封止ならびにピストン16と外管1との間の封止を生ぜしめる。」 ウ 【図1】乃至【図3】から,「クランプエレメント4」は,複数存在していて,外管1や内管3の周面において同心的に配置されている点が看て取れる。 上記ア乃至ウの記載を総合すると,刊行物1には,次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。 「巻取り機に用いられる巻取りスピンドルであって, 内管3の周囲には,間隔を置いて,中空円筒状の外管1が配置されており, 外管1の外側には,複数の巻管10が収容され, 内管3と外管1との間に形成されたリング室26内には,クランプ装置2が配置され, クランプ装置2は,複数の緊締装置13から成っており, 緊締装置13は,複数の,半径方向で調節可能なクランプエレメント4を有しており, 該複数のクランプエレメント4は,内管3に沿って軸方向で可動なピストン16のウェッジ面18を介して支持されるとともに,外管1や内管3の周面において同心的に配置され, ピストン16は,複数のばね17を介して,内管3に固く結合されたストッパ22に支持され,ばね17によりクランプ位置に保持され,ばね17によりクランプ位置に保持された状態においては,クランプエレメント4は,外管1の開口9を通して半径方向外方に突出して巻管10を緊締し, ピストン16は,ばね17に対向して位置する面で圧力媒体により負荷されると,ばね17に抗してストッパ22の方向で摺動させられることにより,ウェッジ面18が摺動して,クランプエレメント4は半径方向内方に運動して巻管10を緩解する,巻取り機に用いられる巻取りスピンドル。」 3 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 後者の「外管1」は,前者の「周壁ブシュ(1)」に相当する。 以下同様に,「内管3」は,「中空スピンドル(2)」に, 「巻管10」は,「巻管(24)」に, 「クランプ装置2」又は「緊締装置13」は,「クランプ装置(6)」に, 「クランプエレメント4」は,「クランプ体(8)」に, 「開口9」は,「開口(7)」に, 「リング室26」は,「環状室(5)」に, 「ばね17」は,「ばね(18)」に, 「(巻管10を)緊締」は,「(巻管(24)を)緊締」 「(巻管10を)緩解」は,「(巻管(24)を)緊締解除」に,それぞれ相当する。 後者の外管1や内管3の周面において同心的に配置される「クランプエレメント4」は,複数の緊締装置13毎に備えられていることは自明であって,「緊締装置13」も,外管1や内管3の周面において同心的に配置されていることになるから,後者のものは,前者の「クランプ装置(6)が,周壁ブシュ(1)の下側で,駆動可能な中空スピンドル(2)の周面において同心的に配置」に相当する構成を有するものである。 本願発明において「クランプ体(8)が,周壁ブシュ(1)の開口(7)内に案内」されるとは,本願の発明の詳細な説明の段落【0030】の「クランプ体8は,それぞれ周壁ブシュ1に設けられた周壁開口7内に半径方向に案内される。」を参酌すると,「クランプ体(8)が,周壁ブシュ(1)の開口(7)を通して半径方向に出没動作する」ことである。 ここで,後者の「クランプエレメント4」は,「外管1の開口9を通して半径方向外方に突出」したり「半径方向内方に運動」したりするものであるから,「外管1の開口9内に案内」されているといえ,後者のものは,前者の「クランプ体(8)が,周壁ブシュ(1)の開口(7)内に案内される」に相当する構成を有するものである。 後者の「ピストン16」と,前者の「環状ピストン12」とは,「ピストン」という概念で共通している。 本願発明において「緊締位置」とは,本願の発明の詳細な説明の段落【0004】の「この場合,環状ピストンは,通常複数のばねによって緊締位置に保持される。たとえば巻取りスピンドルから満管ボビンを引き出すことができるように,巻管を緊締解除するためにだけ,クランプ装置の作動が必要である。」の記載を参酌すると,巻管24が周壁ブシュに固定されるように,クランプ体8が突出状態となることであって,その突出状態が通常の状態であって,後者のクランプエレメント4の動作の態様も同じであるから,刊行物1発明は「(クランプエレメント4が)ばねによって緊締位置に保持されている形式のもの」であるといえる。 後者の「ばね17」は,リング室26内に配置されたクランプ装置2を構成する部材の一であるから,リング室26内に配置されていることは自明であり,【図1】を参照するに,「ばね17」の短手方向の幅は,内管3と外管1との間隔,つまり,リング室26の半径方向の寸法にほぼ等しく,ばね17の所定部分の大きさによって,実質的にリング室26内の半径方向のばねの組込みスペースが規定されていると認められる。 以上のことより,両者は, 〈一致点〉 「巻取り機に用いられる巻取りスピンドルであって,少なくとも1つの巻管を収容するための外側の周壁ブシュと,クランプ装置とを有していて,該クランプ装置が,周壁ブシュの下側で,駆動可能な中空スピンドルの周面において同心的に配置されており,クランプ装置が,複数のクランプ体を有しており,該クランプ体が,周壁ブシュの開口内に案内されていて,クランプ体が,軸方向に摺動可能な少なくとも1つのピストンによって,巻管を緊締または緊締解除するために半径方向に可動であり,ピストンが,周壁ブシュと,中空スピンドルとの間に形成された環状室内に配置されていて,複数のばねによって緊締位置に保持されている形式のものにおいて, ばねの所定部分の大きさによって,実質的に環状室内の半径方向のばねの組込みスペースが規定されている,巻取り機に用いられる巻取りスピンドル。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 <相違点1> ピストンに関して,本願発明は「環状ピストン」であるところ,刊行物1発明では,環状であるか明らかではない点。 <相違点2> ばねの整列方向に関して,本願発明は「環状ピストンの周方向」であるところ,刊行物1発明では,どのような方向であるか明らかではない点。 <相違点3> ばねに関して,本願発明は「扁平な複数の曲折区分を有」しているところ,刊行物1発明では,どのような形状のばねであるか明らかではない点。 <相違点4> 環状室内の半径方向のばねの組込みスペースを規定するばねの所定部分の大きさに関して,本願発明は「曲折区分のばね線材の厚さ」であるところ,刊行物1発明では「ばねの短手方向の幅」である点。 4.判断 相違点1について 本願発明において「環状ピストン」とは,本願の発明の詳細な説明の段落【0033】の「図1,図2および図3から判るように,環状ピストンは,中空スピンドル2の周面に配置されていて,軸方向では環状室5において軸方向に摺動可能である。環状ピストン12は,各クランプ体8に対して緊締シュー14を支持している。」, 【0037】の「図1および図2の図面から判るように,ばね18は,カバー20により形成されたストッパと,環状ピストン12との間で緊締されている。図1に図示された状態において,ばね18は,中空シリンダ2の周面の環状ピストンを支承端部の方向に押圧しているので,環状ピストン12の緊締シュー14は,クランプ体8を周壁ブシュ1から突出するように押圧している。この状態において,巻管24は緊締されている。」, 【0039】の「巻管24において満管のボビンが得られた場合のためには,中空スピンドルがボビンを交換するために制動される。中空スピンドル2の停止後に,圧力源がクランプ装置を弛緩させるために接続されるので,圧力室21内に圧力流体が導入される。圧力流体によって,環状ピストン12がばね18のばね力に抗して自由端の方向に摺動させられる。これにより,巻管の緊締が解除され,クランプ体8は,周壁ブシュ1の内部に戻ることができる。」から理解されるように,「中空スピンドル2の周面に配置されて,ばね18によって支承端部の方向に押圧されているときは,環状ピストン12に設けられた緊締シュー14がクランプ体8を周壁ブシュ1から突出するように押圧することで巻管24は緊締される。また,圧力室21内に圧力流体が導入されると,環状ピストン12がばね18のばね力に抗して(巻取りスピンドルの)自由端の方向に摺動させられ,クランプ体8が周壁ブシュ1の内部に戻ることによって,巻管の緊締が解除される部材であって,全体として環状をなすもの」であると理解できる。 そして,刊行物1発明のピストンは,「複数のばね17を介して,内管3に固く結合されたストッパ22に支持され,ばね17によりクランプ位置に保持され,ばね17によりクランプ位置に保持された状態においては,クランプエレメント4は,外管1の開口9を通して半径方向外方に突出して巻管10を緊締し,ピストン16は,ばね17に対向して位置する面で圧力媒体により負荷されると,ばね17に抗してストッパ22の方向で摺動させられることにより,ウェッジ面18が摺動して,クランプエレメント4は半径方向内方に運動して巻管10を緩解する」ものであるから,ピストンという概念で共通する本願発明の環状ピストンと刊行物1発明のピストンとは,その全体の形状以外の機能や動作態様においても共通している。 また,刊行物1発明において,複数のクランプエレメント4は,外管1や内管3の周面において同心的に配置され,それぞれ対応するピストンのウェッジ面18の摺動動作によって出没動作することで巻管の緊締または緩解を行うことを踏まえると,巻管の緊締または緩解に際して,該巻管の緊締または緩解に係る複数のクランプエレメント4が,同時に出没動作すること,及び,該複数のクランプエレメント4を同時に出没動作せしめるウェッジ面18が同時に摺動することは自明である。 とすれば,複数のクランプエレメント4にそれぞれ対応するウェッジ面18を連結するようにピストン16を一体のものとすること,及び,一体とするときにピストン16が配置されるリング室26は環状をなす部材(空間)であるから,該一体としたピストン16を環状とすることは,当業者が容易に想到しうる程度の技術的事項にすぎない。 また,ピストンを環状としたことによって,格別な作用効果が生じるものではないから,相違点1に係る本願発明の構成は,刊行物1発明から,当業者が容易に想到し得たものである。 相違点2について 刊行物1の【図1】には,内管3と外管1との間に形成されたリング室26内において,ばね17が,内管3や外管1の長手方向の同位置の上下に配置されている点が記載されている。 そして,リング室26は環状の部材(空間)であるから,上下に配置されたばね17は,リング室26の周方向に整列していることになる。 ここで,本願発明の環状ピストンの周方向と環状室の周方向は,「方向」としては同じである。 したがって,刊行物1発明のばね17がリング室26の周方向に整列していることは,該リング室26が,本願発明の環状室に相当することを踏まえると,本願発明の環状ピストンの周方向に整列している「方向」として同じとなる。 よって,刊行物1発明は,相違点2に係る本願発明の構成を有している。 相違点3について 平成26年9月12日付け拒絶の理由に周知の事項を示す文献として引用し,本願の優先日前である平成8年6月4日に頒布された特開平8-145100号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 エ 「【0003】また,ばねの収納スペースを高さ方向に十分に確保できないときには,ばね鋼線を同一平面内でジグザグに曲げた図3のようなばねが用いられることもある。」 オ 「【0011】 【実施例】図1に本発明のばねの一例を示す。このばね1は,素材となる条材を同一平面内で一端を出発点にして他端が出発点近くに戻るように曲げ加工して作られるものであって,平行な横行き部2,3の両側に縦行き部4,4と,各縦行き部4からの延伸部を逆向きに曲げ戻して横行き部2に連ならせたU字状の応力吸収部5,5を左右対称に設けた形になっている。 【0012】条材は,反発力の面でばね鋼から成るものが好ましいが,ばね材として利用されている他の金属や樹脂,樹脂と補強用フィラメントの複合材料等からなるものも使用できる。」 カ 「【0021】 【発明の効果】以上述べたように,本発明のばねは,条材を同一平面内で枠状に,かつコーナに応力吸収部が存在する形に曲げ加工したものであるから,コイルばねや竹の子ばねに比べて薄型化が図れ,また,ジグザグばねに比べて数倍も大きなばね定数が得られ,さらに,方形ばねに比べて変位(圧縮量)を非常に大きくし得る。 【0022】従って,このバネを用いれば,小型の反発機構の更なる小型化,信頼性向上が図れ,スペース不足に起因した反発機構の使用制限の緩和,反発機構を組込む機器,部品の更なる小型化等に貢献できる。」 刊行物2の上記記載事項を含め,刊行物2の全記載を総合すると,刊行物2には以下の事項(以下,「刊行物2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「条材を同一平面内で枠状に曲げ加工したばね。」 そして,「条材を同一平面内で枠状に曲げ加工したばね」は,複数の曲折区分を有しているから,刊行物2には,相違点2に係る本願発明の構成である「扁平な複数の曲折区分を有するばね」という周知事項(以下「周知事項1」という。)が記載されている。 なお,本願の【図4】に記載されるメアンダ状のばねと同様の形状のバネについては,刊行物2の【図3】に記載されている。 上記周知事項1に関して,必要であれば以下の刊行物を参照されたい。 刊行物3:特開昭48-84251号公報(特に第5図実施例参照) 第2頁左上欄第3?7行に「又第5図は本発明に係る圧縮及び引張りばねであって,素線4を加工して扁平状の,連続彎曲部10を形成したものである。一例として巾23mmを有し,彎曲部10を半径4mmでカーブを描いたものを示してある。」 第2頁右上欄第13?16行に「形状が扁平であるから狭い間隙やバネ取付部位の容積の少ない場所等小型の機器に装置でき,コンパクトな機器を提供することができる」と記載されている。 刊行物4:実願昭54-173993号(実開昭56-90526号)のマイクロフィルム(特に第2図実施例参照) 第2頁第11?15行に「ばね2の厚みは線径のみの厚みとなり,扁平形状となる。そしてこの扁平状となったことにより,例えば2枚の狭い間隔をもった板の間に配することができるため,全体の構成を薄くすることができる。」と記載されている。 刊行物5:実願昭55-36930号(実開昭56-138235号)のマイクロフィルム(特に第2図実施例参照) 第2頁第1?10行に「本考案の薄型バネは,第2図に示す如く,バネ本体(1)をS字状に曲成してこれを長手方向に連続させ,バネ厚さをバネ材たる線材径と同一に形成したものであり…その厚みはバネ材の外径と同じに形成できるため,僅かなスペースの機器内にも配設使用することが可能」と記載されている。 そして,刊行物1発明におけるばねを,周知事項1である「扁平な複数の曲折区分を有するばね」とすることに何ら技術的困難性はない。 また,適用したことによって,本願発明において格別な作用効果が生じるものではないから,相違点3に係る本願発明の構成は,刊行物1発明と周知事項1とから,当業者が容易に想到し得たものである。 相違点4について 刊行物2乃至5には,ばねの収容スペースをできるだけ小さくするという周知の目的を達成するために,周知事項1である「扁平な複数の曲折区分を有するばね」を用いることで,「ばね材の線材径程度の狭いスペースに配する」ことができるという周知事項(以下,「周知事項2」という。)についても記載されている。 とすれば,周知事項1のような「扁平な複数の曲折区分を有するばね」を用いた場合,「ばね線材の厚さ」によってばねの組込みスペースを規定することは,当然のことである。 つまり,本願発明のような「環状室内の半径方向のばねの組込みスペース」を考えたとき,そこに組み込まれる「ばねの厚さ」,つまり「ばね線材の厚さ」を基準として組込みスペースを規定することは,当然のことである。 したがって,刊行物1発明におけるばねを,周知事項1である「扁平な複数の曲折区分を有するばね」とすれば,リング室の半径方向のばねの組込みスペースも,周知事項2を踏まえると,本願発明と同じく「ばね線材の厚さ」によって規定されるものとなる。 また,相違点4に係る本願発明の構成としたことによって,本願発明において格別な作用効果が生じるものではないから,相違点2に係る本願発明の構成は,刊行物1発明と周知事項1及び2から,当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願発明の全体構成によって奏される作用効果も,刊行物1発明,周知事項1及び2から,当業者が予測しうる程度のものである。 第3 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1発明,周知事項1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する |
審理終結日 | 2016-07-26 |
結審通知日 | 2016-08-01 |
審決日 | 2016-08-15 |
出願番号 | 特願2012-548442(P2012-548442) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 吉村 尚 |
発明の名称 | 巻取りスピンドル |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |