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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M |
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管理番号 | 1323211 |
審判番号 | 不服2014-15499 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-06 |
確定日 | 2016-12-14 |
事件の表示 | 特願2008-261066「潤滑油組成物及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月22日出願公開、特開2010- 90250〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成20年10月7日の出願であって,平成25年5月16日付け拒絶理由通知書に対して,同年7月19日付けで意見書が提出され,平成26年4月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年8月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成27年6月3日付け拒絶理由通知書に対して,同年7月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年6月3日付け拒絶理由通知について 当審は,平成27年6月3日付けで拒絶理由を通知したが,その拒絶理由通知書の内容の概略は以下のとおりのものである。 「理由1:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2:この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・・(中略)・・ 記 [1]理由1/請求項1?6 本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明(特に段落【0006】)の記載からみて、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立することができ、特に潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供するという課題を解決するものであると認められる。 しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、尿素アダクト値を4質量%以下、40℃における動粘度を14?25mm^(2)/s、粘度指数を120以上の第1の潤滑油基油成分と40℃における動粘度を14mm^(2)/s未満の第2の潤滑油基油成分とを、潤滑油基油全量基準で、前記第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、前記第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%である潤滑油基油と、粘度指数向上剤と、を含有し、100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350であるとすることと上記課題の解決との関係(作用機序)が記載されていない。 また、実施例1?4に係る記載(【0149】【表4】、【0150】【表5】及び【0153】【表6】)を検討しても、尿素アダクト値が3.75,2.33,1.18であって、40℃での動粘度が15.78mm^(2)/s,15.88mm^(2)/s,15.92mm^(2)/s、粘度指数が140,142,142である第1の潤滑油基油成分と尿素アダクト値が3.33であって、40℃での動粘度が9.88mm^(2)/s、粘度指数が130である第2の潤滑油基油成分とを潤滑油基油全量基準で72質量%と28質量%含み、粘度指数向上剤としての「VM3」,「VM2」,「VM3」,「VM3」を潤滑油組成物全体で12.85質量%,7.21質量%,12.85質量%,12.85質量%含み、100℃における動粘度が7.49mm^(2)/s,9.08mm^(2)/s,7.52mm^(2)/s,7.56mm^(2)/sであり、粘度指数が272,264,269,271のものに限られ、当該実施例に係る記載に基づき、本願の各請求項に係る発明が包含し得る実施態様の全てについてまで、上記本願発明の課題を解決できるものと認識することはできない。 よって、本願の各請求項に係る発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができない(平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 [2]理由2 (1)上記[1]でも説示したとおり、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明(特に段落【0006】)の記載からみて、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立することができ、特に潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供するという課題を解決するものであると認められる。 しかるに、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、上記[1]でも説示したとおり、尿素アダクト値を4質量%以下、40℃における動粘度を14?25mm^(2)/s、粘度指数を120以上の第1の潤滑油基油成分と40℃における動粘度を14mm^(2)/s未満の第2の潤滑油基油成分とを、潤滑油基油全量基準で、前記第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、前記第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%である潤滑油基油と、粘度指数向上剤と、を含有し、100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350であるとすることと上記課題の解決との関係(作用機序)が記載されておらず、また、実施例に係る記載を検討しても、本願の各請求項に係る発明が包含し得る実施態様の全てについてまで、上記本願発明の課題を解決できるものと認識することはできない。 ・・(中略)・・ (3)してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載するものでない。」 第3 当審の判断 I.本願の請求項1に記載された発明 上記平成27年7月24日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 尿素アダクト値が2.5質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上である第1の潤滑油基油成分、及び、40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有し、潤滑油基油全量基準で、前記第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、前記第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%である潤滑油基油と、粘度指数向上剤と、を含有し、100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350であることを特徴とする潤滑油組成物。」 (以下の検討において、上記請求項1に記載された事項で特定される発明を「本願発明」という。) II.特許法第36条第6項第1号について 1.サポート要件 特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否かを検討して判断すべきものである。 このような観点に立って,以下本願明細書の記載について検討する。 2.明細書に記載された事項 本願明細書における,本願発明の,特に潤滑油基油に関連する主な記載事項は,次のとおりである。 ア 「【背景技術】 【0002】 従来、潤滑油の分野では、高度精製鉱油等の潤滑油基油に粘度指数向上剤、流動点降下剤等の添加剤を配合することによって、潤滑油の粘度-温度特性や低温粘度特性の改善が図られている(例えば、特許文献1?3を参照)。また、高粘度指数基油の製造方法としては、天然や合成のノルマルパラフィンを含む原料油について水素化分解/水素化異性化による潤滑油基油の精製を行う方法が知られている(例えば、特許文献4?6を参照)。 【0003】 潤滑油基油及び潤滑油の低温粘度特性の評価指標としては、流動点、曇り点、凝固点などが一般的である。また、ノルマルパラフィンやイソパラフィンの含有量等の潤滑油基油に基づき低温粘度特性を評価する手法も知られている。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 近時、潤滑油に求められる省燃費性は益々高くなっており、従来の潤滑油基油および粘度指数向上剤は粘度-温度特性及び低温粘度特性の点で必ずしも十分とは言えない。特に、SAE10クラスの潤滑油基油あるいはこれを主成分として含有する潤滑油組成物においては、高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と、低温粘度(CCS粘度、MRV粘度等)を高いレベルで両立することは困難である。 【0005】 なお、低温粘度を向上するだけであれば、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油などの低温粘度に優れる潤滑油基油を併用すれば可能となるが、上記合成油は高価であり、低粘度鉱油系基油は一般的に粘度指数が低くNOACK蒸発量が高い。そのため、それらの潤滑油基油を配合すると、潤滑油の製造コストが増加し、あるいは、高粘度指数化及び低蒸発性を達成することが困難となる。また、これら従来の潤滑油基油を用いた場合であっても、省燃費性の改善には限界がある。 【0006】 本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立することができ、特に潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明は、尿素アダクト値が2.5質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上である第1の潤滑油基油成分、及び、40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有し、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%である潤滑油基油と、粘度指数向上剤と、を含有し、100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350であることを特徴とする潤滑油組成物を提供する。 【0008】 ここで、本発明でいう「尿素アダクト値」とは、以下の方法により測定される値を意味する。秤量した試料油(潤滑油基油)100gを丸底フラスコに入れ、尿素200g、トルエン360ml及びメタノール40mlを加えて室温で6時間攪拌する。これにより、反応液中に白色の粒状結晶が生成する。反応液を1ミクロンフィルターでろ過することにより、生成した白色粒状結晶を採取し、得られた結晶をトルエン50mlで6回洗浄する。回収した白色結晶をフラスコに入れ、純水300ml及びトルエン300mlを加えて80℃で1時間攪拌する。分液ロートで水相を分離除去し、トルエン相を純水300mlで3回洗浄する。トルエン相に乾燥剤(硫酸ナトリウム)を加えて脱水処理を行った後、トルエンを留去する。このようにして得られた炭化水素成分(尿素アダクト物)の試料油に対する割合(質量百分率)を尿素アダクト値と定義する。 … 【0017】 また、本発明は、尿素アダクト値が2.5質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上である第1の潤滑油基油成分と、40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である第2の潤滑油基油成分と、粘度指数向上剤と、を混合して、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%である潤滑油基油を得、さらに、潤滑油基油に粘度指数向上剤を含有させて、100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350である潤滑油組成物を得ることを特徴とする、潤滑油組成物の製造方法を提供する。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 【0022】 (潤滑油基油) 本発明の潤滑油組成物は、尿素アダクト値が4質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上である第1の潤滑油基油成分、及び、40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有し、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1%?50質量%である潤滑油基油を含有する。 【0023】 第1の潤滑油基油成分は、尿素アダクト値、40℃における動粘度及び粘度指数が上記条件を満たすものであれば、鉱油系基油、合成系基油、または両者の混合物のいずれであってもよい。 【0024】 第1の潤滑油基油成分としては、粘度-温度特性、低温粘度特性および熱伝導性の要求を高水準で両立させることが可能であることから、ノルマルパラフィンを含有する原料油を、尿素アダクト値が4質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上となるように、水素化分解/水素化異性化することにより得られる鉱油系基油または合成系基油、あるいは両者の混合物が好ましい。 【0025】 第1の潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、粘度-温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善し、かつ高い熱伝導性を得る観点から、上述の通り4質量%以下であることが必要であり、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。また、潤滑油基油成分の尿素アダクト値は、0質量%でも良いが、十分な低温粘度特性と、より粘度指数の高い潤滑油基油を得ることができ、また脱ろう条件を緩和して経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。 【0026】 また、第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度は、14?25mm^(2)/sであることが必要であり、好ましくは14.5?20mm^(2)/s、より好ましくは15?19mm^(2)/s、さらに好ましくは15?18mm^(2)/s以下、特に好ましくは15?17mm^(2)/s、最も好ましくは15?16.5mm^(2)/sである。ここでいう40℃における動粘度とは、ASTM D-445に規定される40℃での動粘度を示す。第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度が25mm^(2)/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られないおそれがあり、第1の潤滑油基油成分の40℃動粘度が14mm^(2)/s未満の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなるおそれがある。 【0027】 第1の潤滑油基油成分の粘度指数は、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるよう、また低粘度であっても蒸発しにくいためには、その値は120以上であることが必要であり、好ましくは125以上、より好ましくは130以上、更に好ましくは135以上、特に好ましくは140以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような125?180程度のものや、コンプレックスエステル系基油やHVI-PAO系基油のような150?250程度のものも使用することができる。ただし、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油については、低温粘度特性を向上するために、180以下であることが好ましく、170以下であることがより好ましく、160以下であることがさらに好ましく、155以下であることが特に好ましい。 ・・(中略)・・ 【0049】 第1の潤滑油基油成分の含有割合は、潤滑油基油の全量を基準として、10?99質量%であり、好ましくは30?95質量%、より好ましくは50?90質量%、さらに好ましくは60?85質量%、最も好ましくは65?80質量%である。当該含有割合が10質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがある。 【0050】 また、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油の構成成分として、40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である第2の潤滑油基油成分を含有する。 ・・(中略)・・ 【0053】 本発明においては、第2の潤滑油基油成分として、以下の要件を満たす潤滑油基油を用いることが特に好ましい。 【0054】 第2の潤滑油基油成分の40℃における動粘度は、14mm^(2)/s以下であることが必要であり、好ましくは13mm^(2)/s以下、より好ましくは12mm^(2)/s以下、さらに好ましくは11mm^(2)/s以下、特に好ましくは10mm^(2)/s以下である。一方、当該40℃動粘度は、5mm^(2)/s以上であることが好ましく、より好ましくは7mm^(2)/s以上、さらに好ましくは8mm^(2)/s以上、特に好ましくは9mm^(2)/s以上である。40℃における動粘度が5mm^(2)/s未満の場合には、潤滑部位における油膜保持性および蒸発性に問題を生ずるおそれがあるため好ましくない。また40℃における動粘度が14mm^(2)/s以上の場合には第1の潤滑油基油との併用効果が得られない。 ・・(中略)・・ 【0070】 本発明において、第2の潤滑油基油成分の含有量は、滑油基油全量を基準として、1質量%?50質量%、好ましくは10?48質量%、より好ましくは12?45質量%、さらに好ましくは15?40質量%、最も好ましくは18?36質量%である。当該含有割合が1質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがあることとなり、また、50質量%を超えると潤滑油の蒸発損失が大きく、粘度増加等の原因となるため好ましくないこととなる。 【0071】 本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油は第1の潤滑油基油成分と第2の潤滑油基油成分とのみからなるものであってもよいが、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分の各含有量が上記範囲内である限りにおいて、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分以外の潤滑油基油成分をさらに含有してもよい。 ・・(中略)・・ 【0078】 また、本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤を含有する。本発明の潤滑油組成物に含まれる粘度指数向上剤は特に制限はなく、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、オレフィンコポリマー系粘度指数向上剤、スチレンージエン共重合体系粘度指数向上剤等、公知の粘度指数向上剤を使用することができ、これらは非分散型あるいは分散型のいずれであっても良いが、非分散型であることがより好ましい。これらの中でも、粘度指数向上効果が高く、粘度-温度特性、低温粘度特性に優れる潤滑油組成物を得やすい点で、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましく、非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることがより好ましい。 ・・(中略)・・ 【0100】 本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油全量基準で、第1の潤滑油基油成分の含有量が10?99質量%、第2の潤滑油基油成分の含有量が1?50質量%となるように、また、得られる潤滑油組成物の100℃における動粘度が4?12mm^(2)/s、粘度指数が200?350となるように、第1の潤滑油基油成分と、第2の潤滑油基油成分と、粘度指数向上剤と、を混合することによって得られる。なお、粘度指数向上剤は、予め第1の潤滑油基油成分又は第2の潤滑油基油成分の一方と混合した後に、他方と混合してもよく、あるいは、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分を含有する混合基油と粘度指数向上剤とを混合してもよい。 ・・(中略)・・ 【0128】 本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、4?12mm^(2)/sであることが必要であり、好ましくは4.5mm^(2)/s以上、より好ましくは5mm^(2)/s以上、特に好ましくは6mm^(2)/s以上、最も好ましくは7mm^(2)/s以上である。また、好ましくは11mm^(2)/s以下、より好ましくは10mm^(2)/s以下、特に好ましくは9mm^(2)/s以下、最も好ましくは8mm^(2)/s以下である。100℃における動粘度が4mm^(2)/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、12mm^(2)/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な省燃費性能が得られないおそれがある。 【0129】 また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、200?300の範囲であることが必要であり、好ましくは210?300、より好ましくは220?300、さらに好ましくは240?300、特に好ましくは250?300、最も好ましくは260?300である。本発明の潤滑油組成物の粘度指数が200未満の場合には、HTHS粘度を維持しながら、省燃費性を向上させることが困難となるおそれがあり、さらに-35℃における低温粘度を低減させることが困難となるおそれがある。また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数が300以上の場合には、低温流動性が悪化し、更に添加剤の溶解性やシール材料との適合性が不足することによる不具合が発生するおそれがある。」 エ 「【実施例】 【0138】 以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。 【0139】 [原料ワックス] 溶剤精製基油を精製する工程において減圧蒸留で分離した留分を、フルフラールで溶剤抽出した後で水素化処理し、次いで、メチルエチルケトン-トルエン混合溶剤で溶剤脱ろうした。溶剤脱ろうの際に除去され、スラックワックスとして得られたワックス分(以下、「WAX1」という)の性状を表1に示す。 【0140】 【表1】 【0141】 WAX1をさらに脱油して得られたワックス分(以下、「WAX2」という。)の性状を表2に示す。 【0142】 【表2】 【0143】 パラフィン含量が95質量%であり、20から80までの炭素数分布を有するFTワックス(以下、「WAX3」という。)を用いたWAX3の性状を表3に示す。 【0144】 【表3】 【0145】 [潤滑油基油の製造] WAX1、WAX2およびWAX3を原料油とし、水素化処理触媒を用いて水素化処理を行った。このとき、原料油の分解率が5質量%以上かつ、被処理油の硫黄分が10質量ppm以下となるように反応温度および液空間速度を調整した。なお、「原料油の分解率が5質量%以上」とは、被処理油において、原料油の初留点よりも軽質となる留分の割合が原料油全量に対し5質量%以上であることを意味し、ガスクロ蒸留にて確認される。 【0146】 次に、上記の水素化処理により得られた被処理物について、貴金属含有量0.1?5重量%に調整されたゼオライト系水素化脱ロウ触媒を用い、315℃?325℃の温度範囲で水素化脱ロウを行った。 【0147】 更に、上記の水素化脱ロウにより得られた被処理物(ラフィネート)について、水素化生成触媒を用いて水素化精製を行った。その後蒸留により表4、5に示す組成及び性状を有する潤滑油基油1?4を得た。また、WVGOを原料とした水素化分解基油として、表5に示す組成及び性状を有する潤滑油基油5及び6を得た。表4、5中、「尿素アダクト物中のノルマルパラフィン由来成分の割合」は、尿素アダクト値の測定の際に得られた尿素アダクト物についてガスクロマトグラフィー分析を実施することによって得られたものである(以下、同様である)。 【0148】 次に、表4、5の潤滑油基油に、自動車用潤滑油に一般的に用いられているポリメタアクリレート系流動点降下剤(重量平均分子量:約6万)を添加した。流動点降下剤の添加量は、いずれも、組成物全量基準で0.3質量%、0.5質量%および1.0質量%の3条件とした。次に、得られた各潤滑油組成物について、-40℃におけるMRV粘度を測定し、得られた結果を表4、5に示す。 【0149】 【表4】 【0150】 【表5】 【0151】 [実施例1?4、比較例1?3] 実施例1?4及び比較例1?3においては、それぞれ上記の基油1?5、並びに以下に示す添加剤を用いて、表6、7に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。なお、潤滑油組成物の調製の際には、その150℃におけるHTHS粘度が2.55?2.65の範囲内となるようにした。得られた潤滑油組成物の性状を表6、7に示す。 (添加剤) PK:添加剤パッケージ(金属系清浄剤(Caサリシレート Ca量2000ppm)、無灰分散剤(ホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド)、酸化防止剤(フェノール系、アミン系)、摩耗防止剤(アルキルリン酸亜鉛 P量800ppm)、エステル系無灰摩擦調整剤、ウレア系無灰摩擦調整剤)、流動点降下剤、消泡剤等を含む)。 MoDTC:モリブデンジチオカーバメート。 VM-1:PSSI=45、MW=40万、Mw/Mn=5.5、Mw/PSSI=0.88×10^(4)の分散型ポリメタクリレート系添加剤(ジメチルアミノエチルメタクリレート及びアルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12?15の直鎖アルキル基)を主構成単位として重合させて得られる共重合体) VM-2:PSSI=40、MW=30万、Mw/PSSI=0.75×104の分散型ポリメタクリレート系添加剤(ジメチルアミノエチルメタクリレート及びアルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12?15の直鎖状アルキル基)を主構成単位として重合させて得られる共重合体) VM-3:PSSI=20、MW=40万、Mw/PSSI=2×104の非分散型ポリメタクリレート系添加剤(アルキルメタアクリレート混合物(アルキル基:メチル基、炭素数12?15の直鎖アルキル基、炭素数16?20の直鎖アルキル基)90モル%と、炭素数22の分岐アルキル基を有するアルキルメタアクリレート10モル%とを主構成単位として重合させて得られる共重合体) 【0152】 [潤滑油組成物の評価] 実施例1?4及び比較例1?3の各潤滑油組成物について、40℃又は100℃における動粘度、粘度指数、NOACK蒸発量(1h、250℃)、40150℃又は100℃におけるHTHS粘度、並びに-35℃におけるCCS粘度、-40℃におけるMRV粘度を測定した。各物性値の測定は以下の評価方法により行った。得られた結果を表5、6に示す。 (1)動粘度:ASTM D-445 (2)HTHS粘度:ASTM D4683 (3)NOACK蒸発量:ASTM D 5800 (4)CCS粘度:ASTM D5293 (5)MRV粘度:ASTM D3829 【0153】 【表6】 【0154】 【表7】 【0155】 表6、7に示したように、実施例1?4及び比較例1?3の潤滑油組成物は150℃におけるHTHS粘度が同程度のものであるが、比較例1?3の潤滑油組成物に比べて、実施例1?4の潤滑油組成物は、40℃動粘度、100℃動粘度、100℃HTHS粘度およびCCS粘度が低く、低温粘度および粘度温度特性が良好であった。この結果から、本発明の潤滑油組成物が、省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、150℃における高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立させることができ、特に潤滑油の40℃および100℃における動粘度を低減し、粘度指数を向上し、-35℃におけるCCS粘度を著しく改善できる潤滑油組成物であることがわかる。」 3.本願発明の解決すべき課題について 本願明細書【0006】において, 「省燃費性と低温粘度に優れ、ポリ-α-オレフィン系基油やエステル系基油等の合成油や低粘度鉱油系基油を用いずとも、高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立することができ、特に潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供することを目的とする。」 と記載されていることから,本願発明の課題は,「潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供すること」(以下,「本願発明の課題」ともいう。)であると解される。 4.発明の詳細な説明の記載の検討 ア 本願発明について,特に,潤滑油基油について着目すると, 「尿素アダクト値が2.5質量%以下、40℃における動粘度が14?25mm^(2)/s、粘度指数が120以上である」 と特定される第1の潤滑油基油成分(以下,「第1の基油成分」ともいう。)を10?99質量%(潤滑油基油全量基準),及び, 「40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である」 と特定される第2の潤滑油基油成分(以下,「第2の基油成分」ともいう。)を1?50質量%(潤滑油基油全量基準)含有するものとされている。なお、以下の記載において,「質量%」を単に「%」と表記する。 イ そこで,本願明細書【表6】の実施例1に係る潤滑油組成物(基油2:72%+基油4:28%)と本願明細書【表7】の比較例2に係る潤滑油組成物(基油5:12%+基油6:88%)とを,15%:85%の割合で混合した基油(以下,「ケースA」という。)について想定してみる。 ケースAは合計4種類の潤滑油基油「基油2」,「基油4」,「基油5」及び「基油6」から構成されることとなり,このうち,本願発明の「第1の基油成分」に相当するのは基油2のみであって,該基油2の含有量は10.8%(72%×0.15)となる。また,本願発明における「第2の基油成分」については,単に「40℃における動粘度が14mm^(2)/s未満である」と特定されているのみであることから,基油4のみならず基油5もこれに相当するものといえ,ケースAでは合計14.4%(28%×0.15+12%×0.85)となる。そうすると,ケースAについても,本願発明で特定された潤滑油基油組成物に相当するものとなる。 なお,本願発明では,潤滑油組成物全体について,「100℃における動粘度が4?12mm^(2)/sであり、粘度指数が200?350である」と特定されているが,実施例1に係る潤滑油組成物は元より,比較例2についてもこれら両事項(特性)は上記範囲内にあるものであるから,これら両組成物を15%:85%の割合で混合した場合でも,これら2つの特定事項については上記範囲内にあると合理的に解釈することができる。 ウ 次に,ケースAの潤滑油組成物が全体として,本願発明の課題である所望の低温特性を有するか否かを検討する。 本願明細書【表6】及び【表7】の「CCS粘度」及び「MRV粘度」は潤滑油組成物の低温特性を示す試験であり,両者はともに特定の低温環境下におけるエンジン始動時の潤滑油粘度を測定するものであって,小さな値ほど好ましいとされるものである。両試験についての結果は,実施例1については,それぞれ「2100mPa・s」と「5700mPa・s」であり,比較例2は,それぞれ「5000mPa・s」と「20600mPa・s」である。そして,このような結果を受けて,明細書【0155】では, 「比較例1?3の潤滑油組成物に比べて、実施例1?4の潤滑油組成物は、40℃動粘度、100℃動粘度、100℃HTHS粘度およびCCS粘度が低く、低温粘度および粘度温度特性が良好であった。この結果から、本発明の潤滑油組成物が、・・・150℃における高温高せん断粘度を維持しながら、省燃費性と-35℃以下における低温粘度とを両立させることができ、・・・-35℃におけるCCS粘度を著しく改善できる潤滑油組成物であることがわかる。」 と記載されている。 このように実施例1に係る潤滑油組成物と比較例2に係る潤滑油組成物とは,低温特性に大きな差があり,前者について高評価がなされていて,本願発明の課題が解決される旨の記載もなされているのに対して,後者については,本願発明の課題を解決し得ない旨の記載がなされているものである。 エ これらの実施例1及び比較例2に関する記載を踏まえて上記ケースAについて検討すると,実施例1に係る組成物と比較例2に係る組成物とを,前者を15に対して後者を85の割合で混合したものである,すなわち,低温特定が良好で本願発明の課題を解決することが示された実施例1に係る潤滑油組成物(15%)と,低温特性が大きく劣るため本願発明の課題を解決し得ないとされる比較例2に係る潤滑油組成物(85%)との混合物である。さらに,本願明細書には,実施例1?4と合計4つの実施例が記載されているが,何れの例においても,本願発明で特定されている「第1の基油成分」と「第2の基油成分」のみから構成される潤滑油基油を使用する例である。すなわち,本願発明で特定された2種類の基油成分が潤滑油基油全量に対して100%を占める例のみが示されているに留まり,例えば,これら2種類の基油成分が潤滑油基油全量に対して相対的に少量成分となる場合などについては,何ら示されていないものである。 このような状況を踏まえるならば,ケースAのような場合について,当業者が本願明細書の記載から本願発明の課題を解決し得るか否かを理解するに際して,否定的に解釈することはあっても,肯定的に解釈することは,通常はあり得ないというべきである。 オ 以上のことから,本願明細書の【実施例】の記載(【0138】?【0155】)を根拠に上記ケースAについて,本願発明の課題を解決することが,当業者に理解されるように記載されているものとすることができない。 カ そこで,次に本願明細書における他の記載をも斟酌して検討する。 例えば,「第1の基油成分」に関しては,本願明細書【0049】に, 「第1の潤滑油基油成分の含有割合は、潤滑油基油の全量を基準として、10?99質量%であり、好ましくは30?95質量%、より好ましくは50?90質量%、さらに好ましくは60?85質量%、最も好ましくは65?80質量%である。当該含有割合が10質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがある。」 との記載があり,10%未満となる場合について言及はあるものの,例えば,実施例における含有量である72%から大きく離れた下限値である10%の近傍(例えば、ケースAの場合は、第1の基油成分の割合が10.8%である。)において,例えば,実施例1?4と同様な低温特性を示されるであろうことについて,当業者が首肯しうる合理的な説明がなされているものとすることができない。 キ また,「第2の基油成分」に関しては,本願明細書【0070】に 「本発明において、第2の潤滑油基油成分の含有量は、滑油基油全量を基準として、1質量%?50質量%、好ましくは10?48質量%、より好ましくは12?45質量%、さらに好ましくは15?40質量%、最も好ましくは18?36質量%である。当該含有割合が1質量%未満の場合には、必要とする低温粘度、省燃費性能が得られないおそれがあることとなり、また、50質量%を超えると潤滑油の蒸発損失が大きく、粘度増加等の原因となるため好ましくないこととなる。」 との記載があるところ,上記ケースAでは第2の基油成分の含有量は14.4%であって,この値が下限である1%に近いというものではなく,上記第1の基油成分とは異なる事情であるが,本願明細書のこの箇所の記載を見ても,上記ケースAについて,例えば,実施例1?4と同様な低温特性を示されるであろうことについて,当業者が首肯しうる合理的な説明がなされているものとすることができない。 ク さらに,第1の基油成分及び第2の基油成分以外の基油成分に言及した本願明細書【0071】において、 「本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油は第1の潤滑油基油成分と第2の潤滑油基油成分とのみからなるものであってもよいが、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分の各含有量が上記範囲内である限りにおいて、第1の潤滑油基油成分及び第2の潤滑油基油成分以外の潤滑油基油成分をさらに含有してもよい。」 との記載はあるものの,第1の基油成分と第2の基油成分の合計量が相対的に少量成分となる場合については,例えば,実施例1?4と同様な低温特性が示されることについての技術的根拠が説明されているものでもない。 ケ そして,これら明細書の記載に加えて,明細書の他の記載及び技術常識を考慮したとしても,上記ケースAの場合について,本願発明の課題を解決できることが,当業者にとって理解されるものであるとする根拠を見出せ得ないものである。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明において,本願発明の一部については本願発明の課題が解決できることが記載されているとしても,これを本願発明の全範囲にまで一般化できることについては当業者が理解できるように記載されているものとすることができない。 5.小括 よって,本願発明は発明の詳細な説明に記載されたものとすることができないから,本願特許請求の範囲の記載場,特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしているとすることができない。 III.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 1.実施可能要件 特許法第36条第4項第1号には,発明の詳細な説明の記載は,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」との規定がなされている。 2.発明の詳細な説明の記載の検討 本願発明に係る潤滑油組成物について,本願発明の課題である,「潤滑油の150℃のHTHS粘度を一定に維持しつつ、100℃におけるHTHS粘度を低減し、-35℃以下におけるCCS粘度を著しく改善できる高粘度指数の潤滑油組成物を提供すること」について,当業者が理解できるように記載されているものとすることができないことは,上記II.4においてケースAを例示として記載したとおりである。 したがって,本願発明の詳細な説明の記載は,本願発明(特にケースA)について,当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているものとすることができない。 3.小括 よって,本願明細書の記載は,特許法第36条第4項第1号の規定を満たしているものとすることができない。 第4 むすび 以上のとおり,本願は,特許法第36条第6項に規定する要件及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしているものではないから,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-09 |
結審通知日 | 2015-10-13 |
審決日 | 2015-12-28 |
出願番号 | 特願2008-261066(P2008-261066) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(C10M)
P 1 8・ 536- WZ (C10M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馬籠 朋広 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
星野 紹英 菅野 芳男 |
発明の名称 | 潤滑油組成物及びその製造方法 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 平野 裕之 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 池田 正人 |