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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1323282
審判番号 不服2015-17837  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-01 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2014-502521号「燃料電池発電装置の制御」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/134442、平成26年 5月22日国内公表、特表2014-512651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、本願は、2011年3月29日を国際出願日とする出願であって、平成27年5月22日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成27年10月1日に本件審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年10月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の目的に関して
(1)請求人は、補正前の
「【請求項12】
燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させることを含み、
前記可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答することを特徴とする燃料電池発電装置を制御する方法。」を、
本件補正で
「【請求項4】
燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させることおよび前記電圧の減少の割合に対応した割合へと前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に減少させることを含み、前記可変抵抗装置の電気抵抗は、前記電圧の減少の割合に比例することを特徴とする燃料電池発電装置を制御する方法。」と補正している。
(2)この補正は、補正前の【請求項12】の発明特定事項である可変抵抗装置の電気抵抗について、「可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答すること」を、「可変抵抗装置の電気抵抗は、前記電圧の減少の割合に比例すること」に変更する補正を含むものである。
そして、当該「可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答すること」を、「可変抵抗装置の電気抵抗は、前記電圧の減少の割合に比例すること」に変更する補正は、可変抵抗装置の電気抵抗が「センサによって検出された電流レベルに応答する」ものであるという条件を削除するものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。
(3)請求人は、審判請求書「3.(2)補正の説明」において、
「請求項13に記載された発明の発明特定事項の一部及び請求項14に記載された発明の発明特定事項を加えて請求項12(補正後の請求項4)を減縮補正した。」旨主張している。
しかし、上記(1)の補正は、上記(2)に記載したように発明特定事項を削除するものであって、請求項12の減縮補正と認められるようなものではないので、当該請求人の主張は採用できない。
(4)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2.独立特許要件について
次に、仮に上記1.の補正が、請求人が主張するように特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであるとして、本件補正後の請求項1?5に記載された発明(以下「本願補正発明1」等という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについても検討する。
(1)補正後の請求項1、2に関して
ア.補正後の請求項1、2には、以下のように記載されている。
「【請求項1】
電力の流れを供給する電池スタックアッセンブリと、
前記電池スタックアッセンブリと作動的に関連する、選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置と、
望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択するコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、制御信号を用いて前記可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させ、
前記コントローラは、前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に対応した割合に、選択された電気抵抗を自動的に減少させるように構成され、前記選択された電気抵抗は前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に比例することを特徴とする燃料電池発電装置。」
「【請求項2】
前記コントローラは、前記センサによって検出される電流レベル又は前記コントローラにより計算された電力レベルに応答して前記電気抵抗を選択するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電装置。」
イ.そして、請求項1の記載によると、コントローラは、「望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択する」動作を前提とし、「前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に対応した割合に、選択された電気抵抗を自動的に減少させるように構成され」、「選択された電気抵抗は前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に比例する」ものである。
ウ.さらに、請求項1、2記載の「コントローラ」は、請求項2記載の「前記センサによって検出される電流レベル又は前記コントローラにより計算された電力レベルに応答して前記電気抵抗を選択するように構成される」ものである。
エ.そうすると、可変抵抗装置の電気抵抗は、「電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合」と「前記センサによって検出される電流レベル又は前記コントローラにより計算された電力レベル」とに応答して選択されるものとなりつつ、その値は「選択された電気抵抗は前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に比例する」もの(換言すると、電流レベル又は電力レベルが変化しても「電気抵抗は前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に比例する」もの)とされている。
オ.本願明細書には、「【0001】本発明は、燃料電池発電装置によって供給される電力に応じて燃料電池発電装置を制御することに関する。」「【0005】例示的な燃料電池発電装置の制御構成が、電力の流れを供給する電池スタックアッセンブリを備えている。可変抵抗装置が、電池スタックアッセンブリと作動的に関連している。可変抵抗装置は、選択的に可変な電気抵抗を備えている。コントローラが、望ましいレベルに電力の電流または電力の電力レベルを維持するように、可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択する。」と記載されており、本願発明の可変抵抗装置の電気抵抗の選択は、望ましいレベルに電力の電流または電力の電力レベルを維持する意図でなされるものと解される。
そして、燃料電池発電装置の出力電流や電力は、負荷(本願実施例においてはバッテリ30へと供給される電流)の影響を最も大きく受けると考えるのが通常である。
また、「比例する」ことに関しての記載は、「【0014】他の例・・」として記載された「【0020】・・電気抵抗の減少は、電池スタックアッセンブリ22の電圧減少モデルに比例している。」のみである。
さらに、「【0021】・・プログラムは、電池スタックアッセンブリ22によって供給される電流または電圧の変化に応答するのではなく、負荷時間に応答して、抵抗を徐々に減少させる。上記の例では、コントローラ32は、電池スタックアッセンブリ22の典型的な電圧の減少を追うようにして抵抗を徐々に減少させるようにプログラムされる。」(下線は当審で付与。)とも記載されている。
カ.そうすると、請求項1、2に記載された「望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択する」動作を前提とし、「前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に対応した割合に、選択された電気抵抗を自動的に減少させるように構成され」、「選択された電気抵抗は前記電池スタックアッセンブリの電圧の減少の割合に比例する」と特定された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、かつ、技術的観点から見ても不明確なものである。
(2)補正後の請求項2に関して
補正後の請求項2には、「前記センサによって検出される電流レベル」と記載されているが、請求項2の上記記載より前、及び、請求項1には、「センサ」なる記載が存在せず、「前記センサ」により特定される構成が不明確といわざる得ない。

(3)そうすると、本願は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、仮に上記1.の補正が、請求人の主張する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであるとしても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
[本願発明1について]
1.本願の請求項1に係る発明
平成27年10月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、平成26年11月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
電力の流れを供給する電池スタックアッセンブリと、
前記電池スタックアッセンブリと作動的に関連する、選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置と、
望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択するコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、制御信号を用いて前記可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させることを特徴とする燃料電池発電装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-193537号公報(以下「刊行物1」という。)には、「燃料電池発電装置」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「特許請求の範囲
1)燃料電池の出力側にバツクアツプ電源として蓄電池を接続し、負荷に通常時は燃料電池から給電し、バツクアツプ時には蓄電池からも給電し、また軽負荷時には前記燃料電池は負荷に給電するとともに前記蓄電池を充電するようにしたハイブリツド式の燃料電池発電装置において、燃料電池に開閉器を介して抵抗値が可変となるダミー抵抗を接続し、この開閉器を前記燃料電池の負荷への供給電流に関連してオン・オフ制御することを特徴とする燃料電池発電装置。」(第1頁下左欄2?13行)
(イ)「〔産業上の利用分野〕
この発明は、燃料電池の出力側にバツクアツプ電源として蓄電池を接続し、負荷に通常時は燃料電池から給電し、バツクアツプ時には蓄電池からも給電し、また軽負荷時には前記燃料電池は負荷に給電するとともに前記蓄電池を充電するようにしたハイブリツド式の燃料電池発電装置に関する。」(第1頁下左欄15行?下右欄1行)
(ウ)「〔発明が解決しようとする課題〕
ところで燃料電池はその構造からくる要因により、あまり負荷電流値が低いとその運転を継続することができない。そしてこの値は定格負荷(100%負荷)出力の約1/4と言われている。ここではこの値を便宜上運転継続最低電流値と呼ぶこととする。」(第2頁上右欄9?15行)
(エ)「〔課題を解決するための手段〕
上記課題を解決するために、この発明によれば、燃料電池の出力側にバツクアツプ電源として蓄電池を接続し、負荷に通常時は燃料電池から給電し、バツクアツプ時には蓄電池からも給電し、また軽負荷時には前記燃料電池は負荷に給電するとともに前記蓄電池を充電するようにしたハイブリツド式の燃料電池発電装置において、燃料電池に開閉器を介して抵抗値が可変となるダミー抵抗を接続し、この開閉器を前記燃料電池の負荷への供給電流に関連してオン・オフ制御するものとする。」(第2頁下右欄18行?3頁上左欄8行)
(オ)「〔作用〕
この発明の構成によると、燃料電池の出力側にバツクアツプ電源として蓄電池を接続し、負荷に通常時は燃料電池から給電し、バツクアツプ時には蓄電池からも給電し、また軽負荷時には前記燃料電池は負荷に給電するとともに前記蓄電池を充電するようにしたハイブリツド式の燃料電池発電装置において、燃料電池が運転継続最低電流値を維持出来なくなるような負荷供給電流になると、抵抗値が可変となるダミー抵抗を燃料電池の出力側に開閉器を介して接続することによって、燃料電池は負荷がどのように変動しても運転を停止することなく常に運転を継続させることが可能となり、運転停止にともなう再起動時の電流立上りの遅れがもたらす障害をとり除くことができる。
負荷電流が燃料電池の運転継続最低電流値よりも大きくて燃料電池の常時運転に支障のないときはダミー抵抗は回路より開閉器によって切り離なされるようになっている。」(第3頁上左欄9行?上右欄7行)
(カ)「第1図で燃料電池3の出力側に開閉器29を介してダミー抵抗器30が接続されている。このダミー抵抗器の抵抗値は可変にできて、この抵抗値の制御と、このダミー抵抗器を回路に入・切する開閉器29の開閉制御とは、燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、コントローラ25に送られ、そこのメモリ24にあらかじめ運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御される。
即ち燃料電池の出力電流が運転継続最低電流の近辺になるとコントローラ25で制御された開閉器29によってダミー抵抗器30が回路に投入され、その抵抗値はコントローラ25によって制御される。また燃料電池の出力電流が運転継続最低電流を越えるようになるとコントローラ25に制御されている開閉器29によってダミー抵抗器30は回路より切り離される。」(第3頁上右欄14行?下左欄10行)
(キ)「第2図は、この発明の実施例をグラフに表わしたもので、0?t_(6)の期間は燃料電池が負荷へ100%の電流を供給し,t_(6)?t_(7)の期間は負荷へ約50%の電流と蓄電池の充電とに燃料電池から電流を供給している状態は先に説明した第4図とまったく同じである。t_(7)時点で負荷が約5%に減少し、蓄電池もほぼ充電が完了して燃料電池は運転継続最低電流値を維持出来なくなるので開閉器29がコントローラ25の制御によって閉路され、ダミー抵抗器30が燃料電池3の負荷として接続され燃料電池の運転継続最低電流を維持する。したがって期間t_(7)?t_(8)では燃料電池は、約5%の負荷5への負荷電流と、燃料電池に運転継続最低電流を負担させるためコントローラ25にて抵抗値を制御されているダミー抵抗器30への電流とを供給している。」(第3頁下左欄11行?下右欄5行)
(ク)「〔発明の効果〕
この発明は前述のように燃料電池発電装置に抵抗値が可変となるダミー抵抗器を設けることによって、従来燃料電池の運転継続最低電流値を切る軽負荷時燃料電池を停止していたのを、その運転を停止せずに継続して、負荷が急激に復帰したときに備えるようにした。また蓄電池は前述のごとく燃料電池に代って負荷に給電する期間が減少するので、従来に比べ容量を小さく出来て装置の小型化とコストダウンがはかれるようになった。」(第3頁下右欄15行?4頁上左欄4行)
(ケ)第1図には、燃料電池3と、開閉器29を介して接続されているダミー抵抗器30と、DC/DCコンバータ4と、コントローラ25と、蓄電池26と、負荷5を有した発電装置が記載されている。
(コ)コントローラ25は、記載事項(カ)の「ダミー抵抗器の抵抗値は可変にできて、この抵抗値の制御と、このダミー抵抗器を回路に入・切する開閉器29の開閉制御とは、燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、コントローラ25に送られ、そこのメモリ24にあらかじめ運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御される。」制御を行うものであるので、燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御するコントローラ25といえる。

そうすると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「燃料電池3と、
開閉器29を介して接続され、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御されるダミー抵抗器30と、
DC/DCコンバータ4と、
燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御するコントローラ25と、
蓄電池26と、
負荷5と、
を有し、
0?t_(6)の期間は燃料電池が負荷へ100%の電流を供給し、t_(6)?t_(7)の期間は負荷へ約50%の電流と蓄電池の充電とに燃料電池から電流を供給し、t_(7)時点で負荷が約5%に減少し、蓄電池もほぼ充電が完了して燃料電池は運転継続最低電流値を維持出来なくなるので開閉器29がコントローラ25の制御によって閉路され、ダミー抵抗器30が燃料電池3の負荷として接続され燃料電池の運転継続最低電流を維持する発電装置」

3.本願発明1と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「燃料電池3」は、「0?t_(6)の期間は燃料電池が負荷へ100%の電流を供給し、t_(6)?t_(7)の期間は負荷へ約50%の電流と蓄電池の充電とに燃料電池から電流を供給し、」「t_(7)時点で・・ダミー抵抗器30が燃料電池3の負荷として接続され燃料電池の運転継続最低電流を維持する」ものであり、燃料電池が所謂セルスタックで構成されることは技術常識であるので、本願発明1の「電力の流れを供給する電池スタックアッセンブリ」に相当する。
(b)引用発明の「開閉器29を介して接続され、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御されるダミー抵抗器30」は、「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とをするコントローラ25」で制御されるものであって、燃料電池の出力と関連した作動を行うものであるので、引用発明の「開閉器29を介して接続され、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御されるダミー抵抗器30」と、本願発明1の「電池スタックアッセンブリと作動的に関連する、選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置」とは、「電池スタックアッセンブリと作動的に関連する、可変抵抗装置」である点で共通する。
(c)引用発明の「燃料電池の運転継続最低電流を維持する」ことは、本願発明1の「望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持する」ことに相当する。
そして、引用発明の「コントローラ25」は、「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御する」、「t_(7)時点で負荷が約5%に減少し、蓄電池もほぼ充電が完了して燃料電池は運転継続最低電流値を維持出来なくなるので開閉器29がコントローラ25の制御によって閉路され、ダミー抵抗器30が燃料電池3の負荷として接続され燃料電池の運転継続最低電流を維持する」制御を行うものであって、通常比較制御は自動的になされるのが普通であるので、引用発明の「コントローラ25」と、本願発明1の「望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に選択するコントローラ」とは、「望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に変化させるコントローラ」である点で共通する。
(d)引用発明の「コントローラ25」が「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御する」ことと、本願発明1の「コントローラは、制御信号を用いて前記可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させること」とは、「コントローラは、制御信号を用いて前記可変抵抗装置の電気抵抗を変化させる」ことで共通する。
(e)引用発明の「発電装置」は、本願発明1の「燃料電池発電装置」に相当する。

(2)両発明の一致点
「電力の流れを供給する電池スタックアッセンブリと、
前記電池スタックアッセンブリと作動的に関連する、可変抵抗装置と、
望ましいレベルに、前記電力の流れの電流または電力レベルの少なくとも一方を維持するように、前記可変抵抗装置の電気抵抗を自動的に変化させるコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、制御信号を用いて前記可変抵抗装置の電気抵抗を変化させる燃料電池発電装置。」

(3)両発明の相違点
相違点1:本願発明1は、可変抵抗装置が「選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置」であって、コントローラが「電気抵抗を自動的に選択するコントローラ」であって、「可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させる」ものであるのに対して、引用発明は、「開閉器29を介して接続され、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較されて制御されるダミー抵抗器30」、「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御するコントローラ25」である点。

4.相違点1についての検討
(a)選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置は、可変抵抗として周知の一態様(例えば、特開昭52-135830号公報には「抵抗器(14)は電源(12)及び各電動機に対して並列に挿入されてダミーロードをなし、・・・電磁開閉器(151)は・・ダミーロードの負荷値を切換える。」(第2頁左下欄1?8行)と、特開2011-23165号公報には「【0052】・・図5には、可変抵抗VR1として、幾つかの特定の抵抗値に切換え可能なものが模式的に示されているが、本実施形態における可変抵抗VR1は、抵抗値を特定の範囲内において連続的に切換え可能なものであってもよい。」と記載されている。)である。
(b)そして、引用発明のダミー抵抗器30を、上記可変抵抗として周知の一態様である選択的に可変な電気抵抗として具現化することは、当業者が適宜なし得るた計上の選択事項にすぎないものと認められる。
(c)また、引用発明のダミー抵抗器30の抵抗値の制御を行うコントローラ25は、刊行物1記載事項(カ)の「設定された電流値」を記憶した「メモリ24」を備えたものでものであって、実質的にデジタル的に動作する回路であることからしても、選択的に可変な電気抵抗による具現化は合理的なものである。
(d)なお、本願明細書の【発明の詳細な説明】においては、「選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置」としたことの技術的意義について、特段の説明はなされておらず、「選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置」が本来有する特性から予測できる意義以上の技術的意義は認識できない。
(e)そうすると、相違点1は実質的なものではなく、本願発明1と引用発明とは、その発明特定事項において相違しないので、本願発明1は、引用発明である。

(2)仮に、上記相違点1が実質的な相違点があると扱ったとしても、引用発明のダミー抵抗器30を、可変抵抗として周知の一態様である選択的に可変な電気抵抗として具現化して、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることにすぎないものと認められるので、本願発明1は、引用発明、及び、本願出願前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[本願発明12について]
5.本願の請求項12に係る発明
平成27年10月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項12に係る発明(以下「本願発明12」という。)は、平成26年11月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項12】
燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させることを含み、
前記可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答することを特徴とする燃料電池発電装置を制御する方法。」

6.本願発明12と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「発電装置」は、本願発明12の「燃料電池発電装置」に相当する。
そして、引用発明の「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値」は、本願発明12の「燃料電池発電装置によって供給される電流」に相当するので、引用発明の「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御する」ことと、本願発明12の「燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を選択的に変化させること」とは、「燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を変化させること」で共通する。
(b)引用発明の「ダミー抵抗器の抵抗値」は、本願発明12の「可変抵抗装置の電気抵抗」に相当し、同様に、「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値」は「センサによって検出された電流レベル」に相当する。
そして、引用発明の「ダミー抵抗器の抵抗値」が「運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され・・制御」されるものであることは、本願発明12の「可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答すること」に相当する。
(c)引用発明のコントローラ25の「燃料電池出力電流検出器27によって検出された電流値が、運転継続最低電流値を基準に設定された電流値と比較され、ダミー抵抗器の抵抗値と、開閉器29の開閉とを制御する」動作は、本願発明12の「燃料電池発電装置を制御する方法」に相当する。

(2)両発明の一致点
「燃料電池発電装置によって供給される電力、前記燃料電池発電装置によって供給される電流または電圧の減少の割合の少なくとも1つに応答して可変抵抗装置の電気抵抗を変化させることを含み、
前記可変抵抗装置の電気抵抗は、センサによって検出された電流レベルに応答する燃料電池発電装置を制御する方法。」

(3)両発明の相違点
相違点2:可変抵抗装置の電気抵抗を変化させる形態が、本願発明12は「選択的に変化させる」ものであるのに対して、引用発明は、「選択的に変化させる」と特定されていない点。

7.相違点2についての検討
上記「4.(a)」に記載したように、選択的に可変な電気抵抗を有した可変抵抗装置は、可変抵抗として周知の一態様であって、引用発明のダミー抵抗器30を、上記可変抵抗として周知の一態様である選択的に可変な電気抵抗とし、「ダミー抵抗器の抵抗値・・制御する」形態を抵抗値を選択的に変化させるものとして具現化することは、当業者が適宜なし得た設計上の選択事項にすぎないものと認められる。
そうすると、相違点2は実質的なものではなく、本願発明12と引用発明とは、その発明特定事項において相違しないので、本願発明12は、引用発明である。
また、仮に、上記相違点2が実質的な相違点があると扱ったとしても、引用発明のダミー抵抗器30を、上記可変抵抗として周知の一態様である選択的に可変な電気抵抗とし、「ダミー抵抗器の抵抗値・・制御する」形態を抵抗値を選択的に変化させるものとして具現化して、本願発明12の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることにすぎないものと認められるので、本願発明12は、引用発明、及び、本願出願前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.むすび
したがって、本願発明1、12は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明1、12と引用発明との間に実質的な相違点があると扱ったとしても、本願発明1、12は、引用発明、及び、本願出願前に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-03 
結審通知日 2016-08-09 
審決日 2016-08-22 
出願番号 特願2014-502521(P2014-502521)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
P 1 8・ 113- Z (H01M)
P 1 8・ 537- Z (H01M)
P 1 8・ 572- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上野 力  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
発明の名称 燃料電池発電装置の制御  
代理人 富岡 潔  
代理人 小林 博通  

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