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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1323354
審判番号 不服2013-13650  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-16 
確定日 2017-01-07 
事件の表示 特願2010-184181号「同期化された水及びその製造並びに使用」拒絶査定不服審判事件〔平成23年3月3日出願公開、特開2011-41806号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年2月13日(パリ条約による優先権主張 2007年2月13日 スウェーデン、2007年2月13日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2009-549552号の一部を平成22年8月19日に新たな特許出願としたものであって、平成25年3月12日付けで拒絶査定され、それに対して平成25年7月16日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審より平成26年2月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年8月12日に意見書及び手続補正書が提出され、再度当審より平成26年8月27日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 特許請求の範囲
平成27年3月2日付け手続補正によって特許請求の範囲は、以下のように補正された。

「【請求項1】
特徴的幾何学的マトリックスおよび波長360?4000nmを有する入射光の電磁特性を変化させない支持体を含んでなる耳鳴り処置用の装置であって、
前記特徴的幾何学的マトリックスが、支持体上に配置されており、前記入射光が、特徴的幾何学的マトリックスを通過し、その後、水または水を含む媒体と接触した場合に、前記水が、蒸留された状態かつ大気圧で、下記の特性:
・22℃における密度0.997855?0.998836g/ml、
・凝固点における水温-6.7℃?-8.2℃、
・融点0.1℃?0.2℃、
・22℃における表面張力72.3?72.7dyn/cm、及び
・誘電率82.4?82.6F/m、
を有するように、前記特徴的幾何学的マトリックスが、前記入射光の電磁特性を変化させ、
前記特徴的幾何学的マトリックスが、下記(a)?(f)からなる群からより選択され、
(a)共通の中心または円弧上に共通の接点を有する一個以上の同心円を取り囲む円、
(b)より小さい閉じた円を含む円、
(c)2つの同心円であって、より小さい円が開いている、
(d)幾つかの同心円を含み、形成されたリングの一個以上が閉じている円、
(e)「フラワー オブ ライフ」のパターン、
(f)前記(a)?(e)の組合せ、
前記特徴的幾何学的マトリックスを構成する線が0.01?1.0mmの幅を有する、
装置。
【請求項2】
前記特徴的幾何学的マトリックスの、最外円の直径と、同心円の共通の中心に向かって数えて次の円の直径との比、および第二の最も外側にある円の直径と、共通の中心に向かって数えて次の円との比が、フィボナッチ数列Fn=θn/50.5(式中、Fnは0、1、1、2、3、5、8、13、21、34...の整数列を示す)に従う、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持体が、入射光の電磁特性を変化させず、ガラス、厚紙、紙、プラスチック、シート金属または天然材料からなる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持体が透明である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記支持体がプラスターである、請求項1?4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記特徴的幾何学的マトリックスが、前記支持体上に、被覆、インプリント、好ましくは凸版または金箔または銀箔でインプリント、エッチング、接着またはラミネート加工されている、請求項1?5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記支持体がラミネートまたはホイルからなる、請求項1?6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記特徴的幾何学的マトリックスが、金属、好ましくは銅または黄銅からなる、請求項1?7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記特徴的幾何学的マトリックス上に存在するフィールド及びラインが特定のスペクト
ル色を有するか金属ホイルであり、金、銀、銅、黒、緑、トルコ玉の色彩および赤から選択されるスペクトル色を有する、請求項1?8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記特徴的幾何学的マトリックスを構成する線が0.1?0.5mmの幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記特徴的幾何学的マトリックスが、開いた円とその第一の円の中心になる1個以上の閉じた円からなるSSマトリックスである、請求項1?9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記SSマトリックスの外側円直径が13mmであり、内側円直径が1mmであり、外側円の線幅が1/13mmである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記特徴的幾何学的マトリックスが、開いた円とその第一の円の中心になる1個以上の開いた円からなるSScマトリックスである、請求項1?9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記SScマトリックスの外側円直径が13mmであり、外側円の円幅が0.5mmであり、内側円直径が2mmまたは3mmで、内側円の線幅が0.1mmであるか、または、外側円直径が13mmであり、外側円の円幅が0.5mmであり、内側円直径が3mmで、内側円の線幅が0.35mmである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記特徴的幾何学的マトリックスが、六角形の格子点に中心を有する一群の円であり、
各円の半径が格子点間隔と等しく、合計4個の同心円が、格子点間隔の1、2、3及び4倍の半径で各格子点に描かれたものを含む「フラワー オブ ライフ」パターンとして形成されており、外側円直径が34mmであり、線幅が0.1mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記装置が患者の体の皮膚上に適用され、白色光が照射される、請求項1?15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置が、患部の耳付近に適用される、請求項16の記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋基底部に、皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置される、請求項16または17に記載の装置。」

第3 拒絶の理由
当審が平成26年8月27日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審による拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりである。

【理由1】本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているとはいえないから、特許を受けることができない。
すなわち、本願の請求項1ないし19に記載された発明は、本願発明の目的を達成せず、発明として未だ完成していないものといえるから、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当するとはいえない。

【理由2】本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
すなわち、本願の特許請求の範囲、請求項1の記載における「特徴的幾何学的マトリックス」に関して、その機能が特定されているのみであって、具体的な構成は何ら特定されていない。よって、発明の詳細な説明に記載されている、上記機能を付与するための「特徴的幾何学的マトリックス」の具体的な形状以外にどのようなものまで含まれるのか、当業者が認識できる程度に記載されておらず、技術常識などに照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。

【理由3】この出願は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。
(1)本願の特許請求の範囲、請求項1の記載において、「特徴的幾何学的マトリックス」の具体的構成、「入射光の電磁特性を変化させない」の意味、「特徴的幾何学的マトリックスが入射光に対して能力を有する」の意味が不明であり、さらに、水が、蒸留された状態かつ大気圧で、「凝固点における水温-6.7℃?-8.2℃、融点0.1℃?0.2℃」の特性が特徴的幾何学的マトリックスによってどのように得られるのか、その原理が不明である。
(2)請求項4、8、9の記載において「支持体」の材料が、遮光性のものであることが明らかなものを含んでいるから、請求項4、8、9の記載は不明確である。

【理由4】この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)段落【0008】の記載において、「全ての単一水分子が同時に、安定した均質な巨視的構造に同一の様式で配置されている同期化された水」の意味が明確でない。
(2)特徴的幾何学的マトリックスによって水の「同期化」を行うことができる、入射光の波長、特徴的幾何学的マトリックスの対向する末端間の最大間隔、線幅、マトリックス構造の組み合わせが明細書及び図面の記載において不明であって、それを見出すためには、当業者が過度の試行錯誤を行う必要があると認められるから、発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められない。
(3)本願の請求項1に記載された発明において、出願時の技術常識に照らしても、入射光を特定のマトリックスを通過させることで、大気圧における蒸留水の特性値を変化させることができるマトリックスを得ることは、発明の詳細な説明の記載によるのみからは当業者が実施できるとは認められない。さらに、そのマトリックスを耳鳴りの治療装置に用いたとしても、発明の詳細な説明に記載された、実施例(明細書段落【0178】の例14)における被験者4名については、その詳しい使用方法や使用状況も不明であって、また、実施例の4名のみでは、プラセボ(偽薬)効果の影響の排除もされているとはいえないから、耳鳴りの治療効果が得られたものとは認められない。

第4 当審の判断
1.当審による拒絶理由の【理由1】についての検討
本願の請求項1に記載された特徴的幾何学的マトリックスは、
「波長360?4000nmを有する入射光の電磁特性を変化させない支持体」上に配置されており、
「下記(a)?(f)からなる群からより選択され、
(a)共通の中心または円弧上に共通の接点を有する一個以上の同心円を取り囲む円、
(b)より小さい閉じた円を含む円、
(c)2つの同心円であって、より小さい円が開いている、
(d)幾つかの同心円を含み、形成されたリングの一個以上が閉じている円、
(e)「フラワー オブ ライフ」のパターン、
(f)前記(a)?(e)の組合せ、
前記特徴的幾何学的マトリックスを構成する線が0.01?1.0mmの幅を有」するものであって、
「入射光が、特徴的幾何学的マトリックスを通過し、その後、水または水を含む媒体と接触した場合に、前記水が、蒸留された状態かつ大気圧で、下記の特性:
・22℃における密度0.997855?0.998836g/ml、
・凝固点における水温-6.7℃?-8.2℃、
・融点0.1℃?0.2℃、
・22℃における表面張力72.3?72.7dyn/cm、及び
・誘電率82.4?82.6F/m、
を有するように、前記特徴的幾何学的マトリックスが、前記入射光の電磁特性を変化させ」る性質を有するというものである。
しかしながら、入射光の波長や強度が特定されないまま、単に上記(a)?(e)のパターンあるいは(a)?(e)のパターンの組合せ(f)からなる特徴的幾何学的マトリックスを通過した入射光が、蒸留された状態かつ大気圧の水に接触したというのみで、例えば、凝固点における水温を-6.7℃?-8.2℃と、融点0.1℃?0.2℃という通常の水と異なった特性とすることができる原理について、出願時の技術常識に照らしても不明である。
さらに、本願の請求項1に記載された発明は、耳鳴り処置用の装置に関するものであって、平成26年8月12日付け意見書における請求人の主張「本願発明は、TGMを透過した光が皮膚下の細胞内にある水に照射した際に、水の特性を請求項1に規定するような物性に変化させることを意図しているのでありません。光を水に入射させた際に、蒸留された状態かつ大気圧の水が請求項1に規定するような特定の物性に変化するように、TGMの形状(例えば請求項2等に規定するような形状)を規定するものです。」(平成26年8月12日付け意見書(4)、(iii)の欄)によれば、当該特徴的幾何学的マトリックスを透過した光が、患者の皮膚下の細胞内にある水に作用するというのではなく、単に、当該特徴的幾何学的マトリックス及び支持体を通過した光を患者の体上にあてがうことによって耳鳴り処置を行うことができるということであるが、そのような耳鳴り処置の原理あるいはそのような耳鳴り処置によって耳鳴りが解消する機序が不明であるから、耳鳴り処置の効果について発明の詳細な説明を参酌しても、患者の耳鳴りが消失した原因が本願の請求項1に記載された発明の特徴的幾何学的マトリックスの作用によるものであると、出願当時の技術常識に照らしても理解することはできない。
また、当該耳鳴り処置についての治験結果が、本願明細書段落【0178】において示されているが、被験者は4名のみであって、「マトリックスを、耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋基底部に、皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置した」ということ以外の詳しい使用方法や使用状況(例えば照射した入射光の波長や強度ほか)が不明である上に、耳鳴りが治癒したという治験結果に関して、自然治癒やプラセボ(偽薬)効果の影響が排除されているとはいえないから、当該特徴的幾何学的マトリックスを用いたことによる耳鳴りの治療効果が得られたかについて、この治験結果からは不明である。
よって、本願の請求項1に記載された発明は、その技術内容が、当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度まで具体的、客観的なものとして構成されていないといわざるを得ない。
また、本願の請求項1に記載された発明を直接あるいは間接的に引用する本願の請求項2ないし18に記載された発明においても、同様のことがいえる。
そうすると、本願の請求項1ないし18に記載された発明は、本願発明の目的を達成せず、発明として未だ完成していないものといえるから、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当するとはいえない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているとはいえないから、特許を受けることができない。

2.当審による拒絶理由の【理由3】についての検討
(1)請求項1の記載について
a)「入射光の電磁特性を変化させない」とは、具体的にどのようなことを意味するのか不明である。
b)水が、蒸留された状態かつ大気圧で、「・凝固点における水温-6.7℃?-8.2℃、・融点0.1℃?0.2℃」の特性を有するとされているが、技術常識からすると、水の凝固点と融点は、過冷却となった場合等を除いて、一般的には同一の温度となると解せられるので、そのような特性が、特徴的幾何学的マトリックスによってどのように得られるのか、その原理が不明である。

(2)請求項3、7の記載について
「厚紙」、「紙」、「シート金属」は、技術常識からみて遮光性のものとして認識できるところ、「入射光の電磁的特性を変化させ」ないものである原理が不明であり、そもそも、入射光が特徴的幾何学的マトリックスを通過して水や水を含む媒体と接触することができなくなるのは明らかであって、請求項1の記載内容と矛盾するから、支持体の材料を「厚紙」、「紙」、「シート金属」とした場合に、請求項3の記載内容が不明確なものとなる。請求項7の記載における「ホイル」についても同様である。

以上(1)、(2)のとおり、本願の請求項1、3、7に記載された発明が明確ではないから、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、拒絶されるべきものである。

3.当審による拒絶理由の【理由4】についての検討
(1)段落【0008】の記載において、「全ての単一水分子が同時に、安定した均質な巨視的構造に同一の様式で配置されている同期化された水」の意味が明確でない。
ここで、「同期化された水」の意味が不明であるばかりでなく、該同期化された水に、特徴的マトリックスを通過した波長360?4000nmの光を入射することにより、水に「同期化」する性質が付与できる原理について明細書の記載全体を通してみても不明である。

(2)水分子の「同期化」を行う際の、入射光の波長は「360?4000nm」の範囲内のものであり(段落【0024】の記載ほか)、特徴的幾何学的マトリックスの対向する末端間の最大間隔が「ナノメートル尺度で、数メートルまで変えることができ」(段落【0065】の記載ほか)、線幅が「nmレベル?mmレベル」であって(段落【0066】の記載ほか)、マトリックスの構造は、段落【0148】表6、図16A-1、2,図16B?Fに示されるとおりであるが、上記入射光の波長、特徴的幾何学的マトリックスの対向する末端間の最大間隔、線幅、マトリックス構造をどのように組み合わせれば水の「同期化」を行うことができるのか明細書及び図面において記載されておらず、それを見出すためには、過度の試行錯誤を行う必要があると認められるから、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められない。

(3)本願の請求項1に記載された発明において、出願時の技術常識に照らしても、入射光を特定のマトリックスを通過させることで、大気圧における蒸留水の特性値を変化させることができるマトリックスを得ることは、発明の詳細な説明の記載によるのみからは当業者が実施できるとは認められない。

(4)入射光を特徴的幾何学的マトリックスを通過させて患者の体上に作用させることによる耳鳴り処置用の装置を用いたところ、耳鳴りが解消したとする治験結果が明細書に以下のとおり記載されている。
「【0178】
例14
男性2名及び女性2名に、図16による、外径34mm、線幅0.1mmのマトリックスによる、耳鳴り処置のパイロット実験を行った。マトリックスを、耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋基底部に、皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置した。彼等は全て、数年間傷害に苦しんでおり、処置の前に大きな問題を経験している。
1.女性、55?60歳、鍼療法師。1週間以内に問題が消失した。
2.女性、55?60歳、歯科医。24時間以内に問題が消失し、非常に大きな改善。
3.男性、55?60歳、専務取締役。かなりのストレス。信号と音の高さに関連する問題が24時間以内に消失した。外国へ(飛行機で)旅行した。ナイトクラブ及びフォーミュラー1レースによる高音レベルにさらされた。次いで、耳鳴りが再発した。再度処置し、やはり問題が24時間以内に消失した。
4.男性、45歳。15年間耳鳴りに悩まされている。信号音に関連する問題が24時間以内に、低い振動音に関連する問題も定期的に消失した。」(明細書段落【0178】の記載)
しかしながら、上記実施例に記載の被験者4名についてみると、「マトリックスを、耳鳴り症状を示す耳の後部の頭蓋基底部に、皮膚に穏やかな接着剤で局所的に配置した」ということ以外の詳しい使用方法や使用状況(例えば照射した入射光の波長や強度ほか)が不明である上に、耳鳴りが治癒したという治験結果に関して、自然治癒やプラセボ(偽薬)効果の影響が排除されているとはいえないから、当該特徴的幾何学的マトリックスを用いたことによる耳鳴りの治療効果が得られたのか、発明の詳細な説明や図面の記載内容からは不明である。
なお、平成25年2月28日に提出された意見書に添付された資料"CLINICAL INVESTIGATION REPORT Version 4, 20 July 2012" 及び 平成25年8月27日に提出された手続補足書における資料1"CLINICAL INVESTIGATION REPORT Version 2, 16 June 2011" には、"The Akloma tinnitus patch"(アクロマ 耳鳴りパッチ)の治験結果が示されているが、治験に使用した"The Akloma tinnitus patch"(アクロマ 耳鳴りパッチ)が、具体的にどのような構成(模様、支持体の大きさや形状等)によるものであるのか、及び、照射される光の波長、強さ等についても示されておらず、本願発明のものであるか特定できないから採用できない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、拒絶されるべきものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているとはいえないから、特許を受けることができないものであり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-02 
結審通知日 2015-06-05 
審決日 2015-06-16 
出願番号 特願2010-184181(P2010-184181)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61F)
P 1 8・ 1- WZ (A61F)
P 1 8・ 121- WZ (A61F)
P 1 8・ 537- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 蓮井 雅之
松下 聡
発明の名称 同期化された水及びその製造並びに使用  
代理人 浅野 真理  
代理人 横田 修孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 中村 行孝  

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