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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1323370
審判番号 不服2015-767  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-15 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2012-519713「電気用積層板組成物における使用のためのコア/シェルゴム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/005925、平成24年12月20日国内公表、特表2012-532963〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、2010年7月8日(パリ条約による優先権主張2009年7月10日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、以降の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成24年 2月24日 国際出願翻訳文提出書
平成25年11月21日付け 拒絶理由通知
平成26年 2月26日 意見書・手続補正書
平成26年 9月12日付け 拒絶査定
平成27年 1月15日 本件審判請求

第2 本願発明
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13に係る発明は、平成26年2月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び国際出願翻訳文提出書により提出された明細書の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
エポキシ樹脂;
硬化剤;及び
平均直径d50が0.1から3ミクロンの粒子を含むシリコーン-アクリレートコア/シェルゴム
を含む硬化性組成物であって、前記シリコーン-アクリレートコア/シェルゴムを、前記硬化性組成物の全重量に基づき0.1から5重量パーセント含む、前記組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である下記引用文献1及び引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である下記引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2009-073933号公報
引用文献2:特開2006-143973号公報」
というものを含むものである。

第4 引用文献の記載等
1 引用文献1の記載等
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献1には、「耐熱劣化性を有するエポキシ樹脂組成物」に関して次の記載(以下、順に「記載1a」、「記載1b」、「記載1c」及び「記載1d」という。)がある。

1a 「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、微粒子ゴム重合体を必須とするエポキシ樹脂組成物において、前記微粒子ゴム重合体はコア部分がシリコーンゴム微粒子でシェル部分がポリアクリレート類で、コア部分のシリコーンゴム微粒子の含有量が60?90重量%であるコアシェル構造のシリコーンゴム微粒子であり、かつ該微粒子ゴム重合体の一次粒子サイズが100nm以下であって、前記エポキシ樹脂組成物中に無機充填剤以外の全有機成分の5?15重量%の範囲で分散していることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。」

1b 「【0037】
実施例1
表1の配合の下でエポキシ樹脂Aにエポキシ樹脂Bを溶融混合した後、ゴム粒子成分Aを投入して、150℃保温下でホモミキサーによる分散でマスターバッチ(以降MBと称す)製造を行った。その後このMBと硬化剤、硬化促進剤、各種充填剤、カップリング剤、難燃剤、水酸化アルミ、顔料を加えて60℃加熱減圧下(0.1MPa以下)にて、ニーディングミキサーによる均一混合をすることで実施例1のエポキシ樹脂組成物を得た。」

1c 「【0047】
ゴム粒子成分A:コアシェル型シリコーン粒子、旭化成シリコーンワッカー製
ジェニオパールP22、一次粒子平均径0.1μm(シェル部:ポリメチルメタクリレート、コア部:シリコーンゴム、シリコーン含有率65重量%)」

1d 「【0058】
【表1】



(2)引用文献1の記載事項
記載1b及び1dの記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認める。

・記載1b及び1dの実施例1には、「ゴム粒子成分A」は「8.00」で用いることでエポキシ樹脂組成物を得ることが記載されるが、この【表1】の実施例1で用いられる全成分として「エポキシ樹脂A」、「エポキシ樹脂B」、「硬化剤A」、「硬化促進剤A」、「ゴム粒子成分A」、「溶融シリカA」、「溶融シリカB」、「溶融シリカC」、「結晶シリカ」、「アルミナA」、「カップリング剤」、「水酸化アルミ」、「難燃剤」及び「顔料他」の総含有量は200となることから、上記「ゴム粒子成分A」は、エポキシ樹脂組成物において、8.00/200×100=4重量パーセントで含まれる。

・記載1cには、「ゴム粒子成分A」が、一次粒子平均径が0.1μmであり、シェル部としてポリメチルメタクリレート、コア部がシリコーンゴムであることが記載されている。

(3)引用発明1
したがって、記載1aないし1dを整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、微粒子ゴム重合体を必須とするエポキシ樹脂組成物において、前記微粒子ゴム重合体はコア部分がシリコーンゴム微粒子でシェル部分がポリアクリレート類で、該微粒子ゴム重合体の一次粒子平均径が0.1μmであって、前記エポキシ樹脂組成物中に4重量パーセントで分散しているエポキシ樹脂組成物。」

2 引用文献2の記載等
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された引用文献2には、「エポキシ樹脂組成物、並びにプリプレグ、積層板、プリント配線板」に関して次の記載(以下、順に「記載2a」、「記載2b」、「記載2c」、「記載2d」、「記載2e」及び「記載2f」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。

2a 「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤および可とう成分を含有する樹脂組成物であって、硬化剤はフェノール類ノボラック樹脂であり、可とう成分として、コアシェル構造を有しシェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂で構成されている微粒子を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項5】
コアシェル構造のコア部分がシリコン樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。」

2b 「【0019】
上記第5の発明では、コアシェル構造のコア部分がシリコン樹脂であることにより、耐熱性、電気特性に優れた積層板とすることができる。」

2c 「【0031】
本願発明の可とう成分は、コアシェル構造を有しシェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂で構成されている微粒子を含有するものであるが、このコアシェル構造を有する微粒子において、シェル部分を構成する樹脂としては、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ポリスチレンなどが挙げられる。」

2d 「【0033】
コアシェル構造を有する微粒子の含有量としては、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して3?30重量部の範囲であることが好適である。これによって、さらに積層板の面方向および厚み方向の線膨張係数を小さく抑えることができる。3重量部未満では積層板の面方向の線膨張係数を小さくする効果が充分でない場合がある。30重量部より多いとエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させるために調製したワニスの増粘が著しくなり、基材への均一な含浸が困難になる場合がある。
【0034】
コアシェル構造を有する微粒子の大きさとしては、粒径が0.1?10μmの範囲が好ましい。これによって、可とう成分はエポキシ樹脂組成物中に効果的に分散され、積層板の面方向および厚み方向の線膨張係数をより小さく抑えることができる。」

2e 「【0042】
<実施例1?6>
表1に示した条件の配合物にメチルエチルケトンを加え、固形分が65重量%となるようエポキシ樹脂ワニスを調製した。これを厚み0.1mmのEガラスクロスに含浸させ、160℃で5分間乾燥して樹脂含有率45重量%のプリプレグを得た。製造したプリプレグを8枚重ね合わせ、その両側に厚さ18μmの銅箔を配置して被圧体とし、温度190℃、圧力5MPaの条件で100分加熱加圧して両面に銅箔が接着された銅張り積層板を得た。」

2f 「【0046】
【表1】


なお、表1において、*1?*11は次のものを表す。
・・・(略)・・・
*6 SLM445144(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)」

(2)引用発明2
したがって、記載2aないし2fを整理すると、特に下線部から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「エポキシ樹脂、硬化剤および可とう成分を含有する樹脂組成物であって、可とう成分として、コアシェル構造を有しシェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂であり、コア部分がシリコン樹脂で構成されている微粒子を含有し、該微粒子の粒径が0.1?10μmの範囲を有し、該微粒子の含有量がエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して3?30重量部の範囲で含有するエポキシ樹脂組成物。」

3 本願の優先日前の周知技術を示す文献
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、宮田清蔵編、「高分子材料・技術総覧」、株式会社産業技術サービスセンター、2004年9月7日発行、には「ブレンドによる高靭化」に関して次の記載(以下、「引用文献3の記載」という。)がある。

「熱可塑性と熱硬化性の両方の樹脂に対して破壊靭性を向上させる有効な方法として,ゴムを樹脂にブレンドする方法がある。ゴム成分は樹脂中で微細なゴム粒子となって分散するため,負荷を受けるとゴム粒子とマトリックス樹脂の弾性率の差により局所的な応力集中が生じる。き裂先端部の高応力領域では,この粒子周辺での局所的応力集中が原因となって,クレイズやせん断塑性変形などがゴム粒子周辺が起点となって発生し,新たなエネルギー散逸機構となることで破壊靱性が増加する。」(第109ページ右欄下から第2行?第110ページ左欄第9行)

第5 本願発明と引用発明1との対比・判断
本願発明と引用発明1を対比する。

引用発明1における「微粒子ゴム重合体はコア部分がシリコーンゴム微粒子でシェル部分がポリアクリレート類」は、本願発明における「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴム」に相当する。
また引用発明1における「エポキシ樹脂組成物」は、「エポキシ樹脂」に「硬化剤」を作用させて硬化させて用いることから、本願発明における「硬化性組成物」に相当する。
そして、引用発明1では、該シリコーンゴム微粒子が「エポキシ樹脂組成物中に4重量パーセントで分散」しているが、これは上記のとおり「硬化性組成物中に4重量パーセントで分散」と読み替えられることから、本願発明における 「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴムを、前記硬化性組成物の全重量に基づき0.1から5重量パーセント」として示される重量範囲に包含される。
また、引用発明1における「一次粒子平均径」は、その算定法を明らかにしないが、「平均直径d50」は代表的な平均径の算定法であり、上記「一次粒子平均径」の算定法として採用されている蓋然性が高いものと認められることから、本願発明における「平均直径d50」に相当するといえる。そうしてみると、引用発明1における「一次粒子平均径が0.1μm」は、本願発明における「平均直径d50」の下限値である「0.1」ミクロンの場合と一致する。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致し、相違するところが存するものではない。
「エポキシ樹脂;
硬化剤;及び
平均直径d50が0.1ミクロンの粒子を含むシリコーン-アクリレートコア/シェルゴムを含む硬化性組成物であって、前記シリコーン-アクリレートコア/シェルゴムを、前記硬化性組成物の全重量に基づき4重量パーセント含む、前記組成物。」

よって、本願発明は、引用発明1、すなわち引用文献1に記載された発明である。

なお、念のために上記「一次粒子平均径」が「平均直径d50」で算定されたものではなかった場合について検討すると、上記のとおり平均径の算定法として「平均直径d50」は一般的に知られたものであるから、引用発明1において、「一次粒子平均径」の算定法として「平均直径d50」を採用して、0.1ミクロンの「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴム」を用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることでもある。そして、本願発明の効果についても、引用発明1におけるエポキシ樹脂組成物からみて格別の顕著な効果を奏するともいえない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

第6 本願発明と引用発明2との対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明2を対比する。

引用発明2における「可とう成分として、コアシェル構造を有しシェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂であり、コア部分がシリコン樹脂で構成されている微粒子」について、記載2fの「可とう成分」欄で挙げられている全ての可とう成分は「ゴム」と記載されていることを鑑みれば、本願発明における「シリコーン」の「コア/シェルゴム」に相当する。ここで、本願明細書の翻訳文では、「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴム強化剤は、シリコーンゴムコア及びアクリレートポリマーシェルを含むゴム化合物」(【0030】)と記載されていることから、上記「シリコーン」は「コア/シェルゴム」のコア部分に相当する。
そして、引用発明2における当該コアシェル構造を有する微粒子の「粒径」は、その算定法を明らかにしないが、「平均直径d50」は代表的な粒径の算定法であり、上記「粒径」の算定法として採用されている蓋然性が高いものと認められることから、本願発明における「平均直径d50」に相当するといえる。そうしてみると、引用発明2における「粒径が0.1?10μm」は、本願発明における「平均直径d50が0.1から3ミクロン」とは、共に0.1から3ミクロンで重複している。
また、引用発明2における「エポキシ樹脂組成物」は、「エポキシ樹脂」に「硬化剤」を作用させて硬化させて用いることから、本願発明における「硬化性組成物」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明2は、以下の点で一致し、相違点1及び2の点で相違する。

「エポキシ樹脂;
硬化剤;及び
平均直径d50が0.1から3ミクロンであり、コア部分がシリコーンのコアシェルゴム
を含む硬化性組成物。」

<相違点1>
コアシェルゴムについて、本願発明においては、シェル部分が「アクリレート」であるのに対して、引用発明2においては、「シェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂」である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
コア/シェルゴム(コアシェル構造を有する微粒子)の含有量について、本願発明においては、「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴムを、前記硬化性組成物の全重量に基づき0.1から5重量パーセント含む」のに対して、引用発明2においては、「該微粒子の含有量がエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して3?30重量部の範囲で含有」する点(以下、「相違点2」という。)。


2 相違点についての判断
そこで、相違点1及び2について、以下に検討する。

ア 相違点1について
引用文献2には、「シェル部分を構成する樹脂としては、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)」(記載2c)と例示されていることから、引用発明2における「コアシェル構造を有しシェル部分がエポキシ樹脂と相溶する樹脂」のシェル部分として、PMMAすなわちアクリレートポリマーを用いるようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
まず、引用発明2では、エポキシ樹脂と硬化剤との合計値を基準として、コアシェル構造を有する微粒子の含有量を特定するものであるが、エポキシ樹脂と硬化剤以外の他の成分も含み得る総重量を基準として上記微粒子の含有量を特定する点は、それは単に調製段階において成分を如何なる割合で含有すべきか、教示手段の一形態でしかなく、任意に選択される程度のことでしかないことから、本願発明で示されるように「硬化性組成物の全重量」に基いて上記微粒子の含有量を特定することは、当業者であれば適宜なし得ることである。
そのうえで、記載2dには、「コアシェル構造を有する微粒子の含有量としては、エポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して3?30重量部の範囲」とあり、3重量部未満では「積層板の面方向の線膨張係数を小さくする効果が充分でない」点が示唆され、30重量部より多いと「基材への均一な含浸が困難」となることから、上記「3?30重量部」の範囲はその全域に対して上記線膨張、含浸の観点から優れた性能を発揮すると理解できる。してみると、上記性能に優れたエポキシ樹脂組成物を得るべく本願所定の含有量を用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の効果として、本願明細書の発明の詳細な説明の【0006】、【表5】、【表6】及び【表7】等に挙げられる熱膨張性、靱性、耐熱性、電気特性について検討した場合、記載2bには、コアシェル構造のコア部分としてシリコン樹脂を用いることで耐熱性、電気特性が得られることが示されており、記載2dでは所定の範囲でコアシェル構造を有する微粒子を含有することで線膨張係数を小さく抑える点が触れられており、更に熱硬化性樹脂に対してゴムをブレンドすることで破壊靱性が向上することは本願の優先日前に周知(必要であれば、引用文献3の記載等を参照。)である。また、本願明細書の発明の詳細な説明では、上記「シリコーン-アクリレートコア/シェルゴム」を含む場合を実施例、含まない場合を比較例として各種性能を対比するに留まるものであって、その含有量の範囲やアクリレートの選択性について技術的な臨界的意義を明示するものでもない。これらを踏まえると、本願発明の効果は、引用発明2におけるエポキシ樹脂組成物からみて格別の顕著な効果であるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明2、すなわち引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、念のために上記「粒径」が「平均直径d50」で算定されたものではなかった場合について検討すると、上記のとおり平均径の算定法として「平均直径d50」は一般的に知られたものであるから、引用発明2において、「粒径」の算定法として「平均直径d50」を採用して、0.1から3ミクロンのコアシェル構造を有する微粒子を用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることでもある。そして、本願発明の効果についても、引用発明2におけるエポキシ樹脂組成物からみて格別の顕著な効果であるともいえない。

第7 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

更に、上記第6のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-08 
結審通知日 2016-08-09 
審決日 2016-08-25 
出願番号 特願2012-519713(P2012-519713)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 勲松本 淳柳本 航佑  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 小野寺 務
山本 英一
発明の名称 電気用積層板組成物における使用のためのコア/シェルゴム  
代理人 吉光 真紀  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 浩  
代理人 鈴木 康仁  

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